説明

誘導性NOシンターゼ阻害剤としてのイミダゾ[4,5−b]ピリジン誘導体

式(I)で示され、その式中、R1、R2、R3、R4及びR11が明細書中に記載の意味を有する化合物は新規の効果的なiNOS阻害剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の適用分野
本発明は、医薬品組成物の製造のための医薬品工業で使用される新規のイミダゾ[4,5−b]ピリジン誘導体に関する。
【0002】
公知の背景技術
ドイツ国特許出願DE2504252号及び欧州特許出願EP0125756号においては、抗潰瘍活性を有する3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンが記載されている。国際出願WO0049015号は、窒素酸化物の産生に対する阻害活性を有するピリジン化合物を記載している。
【0003】
発明の開示
目下、以下に非常に詳細に説明するイミダゾ[4,5−b]ピリジン誘導体が、予想されない、かつ非常に複雑な構造的特徴と意想外かつ特に有利な特性を有することが判明した。
【0004】
式I
【0005】
【化1】

[式中、
R1は水素又はC〜C−アルキルであり、
R2は水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、C〜C−アルキル、トリフルオロメチル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−シクロアルキル−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、完全にもしくは大部分がフッ素で置換されたC〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノスルホニル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルスルホニルアミノ、フェニル、R21及び/又はR211で置換されたフェニル、フェニル−C〜C−アルキル、フェニル部がR22により置換されているフェニル−C〜C−アルキル、フェニル−C〜C−アルコキシ、ピリジル、R23により置換されているピリジル、ピリジル−C〜C−アルキル、ピリジル部がR24により置換されているピリジル−C〜C−アルキルであり、その際、
R21はシアノ、ハロゲン、カルボキシル、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、アミノカルボニル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルコキシカルボニル、アミノスルホニル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノスルホニル、アミノ、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシル、フェニルスルホニルアミノ又はフェニル−C〜C−アルコキシであり、
R211はハロゲン又はC〜C−アルコキシであり、
R22はハロゲン、C〜C−アルキル又はC〜C−アルコキシであり、
R23はハロゲン、C〜C−アルキル又はC〜C−アルコキシであり、
R24はハロゲン、C〜C−アルキル又はC〜C−アルコキシであり、
R3は水素、ハロゲン、C〜C−アルキル又はC〜C−アルコキシであり、
R4はC〜C−アルキルであり、
R11はC〜C−アルキルである]で示される化合物、それらの塩、N−オキシド並びにこれらの化合物のN−オキシドの塩に関する。
【0006】
〜C−アルキルは、直鎖状又は分枝鎖状の1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。例は、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、プロピル基、イソプロピル基、特にエチル基及びメチル基である。
【0007】
〜C−アルキルは、直鎖状又は分枝鎖状の1〜7個の炭素原子を有するアルキル基である。例は、ヘプチル基、イソヘプチル(5−メチルヘキシル)基、ヘキシル基、イソヘキシル(4−メチルペンチル)基、ネオヘキシル(3,3−ジメチルブチル)基、ペンチル基、イソペンチル(3−メチルブチル)基、ネオペンチル(2,2−ジメチルプロピル)基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、プロピル基、イソプロピル基、エチル基又はメチル基である。
【0008】
〜C−アルコキシは、酸素原子の他に直鎖状又は分枝鎖状の1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する基である。本文中で挙げられる1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基は、例えばブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、特にエトキシ基及びメトキシ基である。
【0009】
〜C−シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルを表し、そのうちシクロプロピル、シクロブチル及びシクロペンチルが有利である。
【0010】
〜C−シクロアルキル−C〜C−アルキルは、前記のC〜C−シクロアルキル基の1つによって置換されている前記のC〜C−アルキル基の1つを表す。これに関連して、C〜C−シクロアルキル−C〜C−アルキル基、特にC〜C−シクロアルキルメチル基が強調されるべきである。挙げられる例は、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシルメチル基及びシクロヘキシルエチル基である。
【0011】
本発明の意味上の範囲内ではハロゲンは、ヨウ素、臭素、塩素又はフッ素である。
【0012】
完全にもしくは大部分がフッ素で置換されたC〜C−アルコキシは、例えば2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロポキシ基、ペルフルオロエトキシ基、1,2,2−トロフルオロエトキシ基、特に1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、トリフルオロメトキシ基及びジフルオロメトキシ基であり、そのうちジフルオロメトキシ基が好ましい。この関連での“大部分が”とは、C〜C−アルコキシ基中の水素原子の半分より多くがフッ素原子により置換されていることを意味する。
【0013】
〜C−アルコキシ−C〜C−アルコキシは、同じ又は別の前記のC〜C−アルコキシ基によって置換されている前記のC〜C−アルコキシ基の1つを表す。挙げられる例は、2−(メトキシ)エトキシ(CH−O−CH−CH−O−)基及び2−(エトキシ)エトキシ(CH−CH−O−CH−CH−O−)基である。
【0014】
〜C−アルコキシ−C〜C−アルキルは、前記のC〜C−アルコキシ基の1つによって置換されている前記のC〜C−アルキル基の1つを表す。挙げられる例は、2−エトキシエチル基及び3−メトキシプロピル基である。
【0015】
モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノ基は窒素原子の他に、前記のC〜C−アルキル基の1つ又は2つを含有する。ジ−C〜C−アルキルアミノ基、特にジメチルアミノ、ジエチルアミノ及びジイソプロピルアミノ基が有利である。
【0016】
モノ−又はジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル基はカルボニル基の他に、前記のモノ−又はジ−C〜C−アルキルアミノ基の1つを含有する。挙げられる例は、N−メチルアミノカルボニル基、N,N−ジメチルアミノカルボニル基、N−エチルアミノカルボニル基、N−プロピルアミノカルボニル基、N,N−ジエチルアミノカルボニル基及びN−イソプロピルアミノカルボニル基である。
【0017】
モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノスルホニル基は、スルホニル基であって、そこに前記のモノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノ基の1つが結合されている基を表す。挙げられる例は、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基及びエチルアミノスルホニル基である。
【0018】
〜C−アルキルカルボニルアミノ基は、例えばプロピオニルアミノ[CC(O)NH−]基及びアセチルアミノ[CHC(O)NH−]基である。
【0019】
〜C−アルキルスルホニルアミノ基は、例えばプロピルスルホニルアミノ[CS(O)NH−]基及びメチルスルホニルアミノ[CHS(O)NH−]基である。
【0020】
〜C−アルコキシカルボニルは、前記C〜C−アルコキシ基の1つが結合されているカルボニル基を表す。例は、メトキシカルボニル[CHO−C(O)−]及びエトキシカルボニル[CHCHO−C(O)−]基である。
【0021】
フェニル−C〜C−アルコキシは、フェニル基によって置換されている前記のC〜C−アルコキシ基の1つを表す。挙げられる例は、ベンジルオキシ基及びフェネトキシ基である。
【0022】
フェニル−C〜C−アルキルは、フェニル基によって置換されている前記のC〜C−アルキル基の1つを表す。挙げられる例は、フェネチル基及びベンジル基である。
【0023】
ピリジル−C〜C−アルキルは、ピリジル基によって置換されている前記のC〜C−アルキル基の1つを表す。挙げられる例は、ピリジルエチル基及びピリジルメチル基である。
【0024】
N−オキシドは、OR4によって置換されたピリジンでのN−オキシドを示す。
【0025】
挙げることができる本発明による化合物には、例えば式Ia
【0026】
【化2】

[式中、
R1、R4及びR11は前記の意味を有し、かつAには適宜、3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−メチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、5,7−ジメチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、5−メトキシ−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−ブロモ−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−メトキシ−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−ヒドロキシ−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−エトキシ−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−(2−メトキシ−エトキシ)−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−(1,1,1−トリフルオロエトキシ)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−(フェニルエトキシ)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−(フェニルエチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−(トリルエチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−(ピリド−4−イルエチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−(ピリド−2−イルエチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−(ピリド−3−イルエチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、7−(4−メトキシピリド−2−イルエチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−フェニル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−n−ブチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−メトキシフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−メチルフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−ニトロ−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(ピリド−3−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−シアノフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−メチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−トリフルオロメチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−ヨード−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−アミノフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−ジメチルアミノフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−ヒドロキシフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−フェニルスルホニルアミノフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(3,4−ジメトキシフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(3,4−ジクロロフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(3,5−ジクロロフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−ベンジルオキシフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−ベンジルオキシ−3−フルオロ−フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(3−メチル−ブチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−シクロヘキシルメチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−ベンジル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−エチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−イソプロピル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−n−ペンチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−クロロフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−フルオロフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(2−フルオロフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−ブロモフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(3−ブロモフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(3−メチルフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−フェネチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(3−フェニルプロピル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−ブロモ−フェニル−メチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−アセトアミド−フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−メトキシカルボニル−フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−カルボキシ−フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−メトキシカルボニル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−ジメチルアミノ−カルボニル−フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−ジメチルアミノスルホニル−フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−ジエチルアミノスルホニル−フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−メチルアミノ−スルホニル−フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−アミノスルホニル−フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル、6−(4−エチルアミノスルホニル−フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル又は6−(3−フルオロ−4−ジメチルアミノスルホニル−フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルが含まれる]で示される化合物が含まれる。
【0027】
式Iの化合物についての適当な塩(置換基に依存して)は全ての酸付加塩又は塩基との全ての塩である。薬学で慣用に使用される薬理学的に認容性の無機及び有機の酸及び塩基のそれが特に挙げられる。これらの好適なものは、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、D−グルコン酸、安息香酸、2−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、エンボン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又は3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のような酸との、一方では、水不溶性の酸付加塩、特に水溶性の酸付加塩であり、その際、前記の酸は塩調製において(一塩基酸又は多塩基酸のどちらが考慮されるかに依存して、そしてどの塩が望ましいかに依存して)等モル量比又はそれとは異なる比で使用される。
【0028】
他方で、置換によっては塩基との塩も適当である。塩基との塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、チタン、アンモニウム、メグルミン又はグアニジニウムの塩であり、その際、この場合にも塩基は塩調製において等モル量比又はそれとは異なる比で使用される。
【0029】
本発明による化合物の工業的規模での製造の間に、例えばプロセス生成物として得ることができる薬理学的に非認容性の塩は当業者に公知の方法によって薬理学的に認容性の塩に変換される。
【0030】
専門知識によれば、本発明の化合物並びにそれらの塩は、例えば結晶形で単離された場合に、種々の量の溶剤を含有してよい。従って本発明の範囲内では、式Iの化合物の全ての溶媒和物及び、特に全ての水和物、及びまた式Iの化合物の塩の全ての溶媒和物及び、特に全ての水和物が包含される。
【0031】
当業者は、その専門知識に基づいて、本発明による化合物が、縮合イミダゾ環に関して、種々の互変異性形で、例えば1−H形で、又は有利には式Iに示される3−H形で存在しうることを認識している。従って本発明は純粋形並びに任意の混合比での全ての考えられる互変異性体を含む。特に、本発明は、純粋な1−H形、有利には3−H形並びにそれらの混合物を含む。
【0032】
挙げるに値する本発明による化合物は、式Iで示され、式中、
R1は水素又はC〜C−アルキルであり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4はメチルであり、
R11はC〜C−アルキルである化合物、並びにそれらの塩、N−オキシド及びこれらの化合物のN−オキシドの塩である。
【0033】
より挙げるに値する本発明による化合物は、式Iで示され、式中、
R1は水素であり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4はメチルであり、かつ
R11はメチル又はエチルであるか、又は
R1はメチルであり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4はメチルであり、かつ
R11はメチルである化合物、並びにそれらの塩、N−オキシド及びこれらの化合物のN−オキシドの塩である。
【0034】
本発明による式Iの化合物は、R1及びR11の意味によってはキラル化合物である。従って本発明は、純粋形並びに任意の混合比での全ての考えられるエナンチオマー、例えばラセミ体を含む。
【0035】
本発明の化合物の特定の一実施態様には、式Iで示され、その式中、R4がメチルである化合物が含まれる。
【0036】
本発明の化合物の特定の一実施態様には、式Iで示され、その式中、R3が水素である化合物が含まれる。
【0037】
本発明の化合物の特定の一実施態様には、式Iで示され、その式中、R4がメチルであり、かつR3が水素である化合物が含まれる。
【0038】
本発明の化合物の特定の一実施態様には、式Iで示され、その式中、R1が水素であり、かつR11がメチルである化合物が含まれる。
【0039】
本発明の化合物の特定の一実施態様には、式Iで示され、その式中、R1が水素であり、R4がメチルであり、かつR11がメチルである化合物が含まれる。
【0040】
本発明の化合物の特定の一実施態様には、式Iで示され、その式中、R1が水素であり、R3が水素であり、R4がメチルであり、かつR11がメチルである化合物が含まれる。
【0041】
本発明の化合物の特定のもう一つの実施態様には、式Iで示され、その式中、置換基R2がイミダゾピリジン環系で結合されている化合物が含まれる。
【0042】
本発明による式Iの化合物の置換基R2及びR3は、3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン環系のピリジン部の任意の可能な環炭素原子で結合されていてよく、従って、本発明の特定の一実施態様には、式Iで示され、その式中、R2がイミダゾピリジン環系の6位に結合されており、かつR3が水素である化合物が含まれる。
【0043】
置換基R21及びR211は、フェニル環がイミダゾピリジン環系に結合されている結合位に関してオルト位、メタ位又はパラ位で結合されていてよく、それにより特定の一実施態様では置換基R21はパラ位で結合されている。
【0044】
本発明による式Iの化合物は、例えば以下に特記されかつ示される合成経路に従って、又は以下の実施例に例として記載したように、又はそれらと類似に又は同様にして製造することができる。
【0045】
以下の反応式1は、式Iで示され、その式中、R1が水素であり、かつR2、R3、R4及びR11が前記の意味を有する化合物の製造を例示している。
【0046】
反応式1:
【0047】
【化3】

【0048】
第一の反応工程において、式VIで示され、その式中、R2及びR3が前記の意味を有するジアミノ化合物を、文献から公知のように、又は文献から公知の方法を類似に又は同様に使用して3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン誘導体に変換させる。例えば、前記の式VIの化合物を、式Vで示され、その式中、R1が水素であり、R11が前記の意味を有し、Yが好適な離脱基、有利には塩素であり、かつXがシアノ基又はカルボキシル基であるカルボン酸又はカルボン酸誘導体と反応させて、縮合反応において、式IVで示され、その式中、R1が水素であり、かつR2、R3、R11及びYが前記の意味を有する化合物を得ることができる。前記の縮合反応は、当業者に公知のように、又は以下の実施例に例として記載されるように、例えば好適な縮合剤、例えば有利にはポリリン酸を使用することによって、好適な不活性溶剤中で、又は有利には更なる溶剤を使用せずに過剰の縮合剤を使用して、有利には高められた温度で、特に130℃〜170℃で実施できる。
【0049】
式VIの化合物は市販されているか、又は例えばS.-X. Cai et al., J. Med. Chem. 1997, 40(22), 3679-3686から公知であるか、又は公知の手順に従って又はそれと同様に又は類似にして得ることができる。
【0050】
また式Vの化合物は市販されているか、又は公知のように得ることができる。
【0051】
選択的に、式IVで示され、その式中、R1、R2、R3及びYが前記の意味を有し、かつR11が水素である化合物は、文献より当該技術から公知の方法(例えばL. Bukowski et al., Pharmazie 1999, 54(9), 651-654又はG. Cleve et al., Liebigs Ann. Chem. 1971, 747, 158-171に記載される)によって得ることができる。
【0052】
式IVで示され、その式中、R1が水素であり、かつR2、R3、R11及びYが前記の意味を有する化合物は一定のホスファンにより相応のホスホニウム塩に変換することができる。有利には、式IVの化合物を、トリブチルホスファン又はトリフェニルホスファンと反応させると、式IIIで示され、その式中、R1が水素であり、かつR2、R3、R11及びYが前記の意味を有し、かつRがブチル又はフェニルである相応の化合物が得られる。前記反応は、自体慣習のように、又は以下の実施例に記載されるように、好適な溶剤、例えばアセトニトリル又はN,N−ジメチルホルムアミド又はそれらの混合物中で、高められた温度で、有利には90℃〜150℃で、場合により助剤、例えばテトラブチルアンモニウムヨージドの存在下に実施することができる。
【0053】
式IIIで示され、その式中、R1が水素であり、かつR2、R3、R11及びYが前記の意味を有し、かつRがブチル又はフェニルである化合物を、式VIIで示され、その式中、R4が前記の意味を有する化合物と反応させる。前記反応は、以下の実施例に記載のように、又は当業者に公知のように、ウィッティヒ反応に従って実施することができる。本発明の範囲では、前記のウィッティヒ反応は、有利には、好適な溶剤、例えばメタノール又はテトラヒドロフラン中で、好適な塩基、例えば水素化ナトリウム又はナトリウムメタノレートを使用して、室温又は高められた温度で、有利には50〜80℃で実施される。ウィッティヒ反応によって得られる環外二重結合の立体配置に関しては、その結果は、Z立体配置生成物又はE立体配置生成物、又は特にそれらの混合物であってよい。
【0054】
前記の環外二重結合を脱保護反応の後に還元することにより、式IIで示され、その式中、R1が水素であり、かつR2、R3、R4及びR11が前記の意味を有する所望の化合物が得られる。前記反応は、水素か反応として、当該技術分野の当業者に公知の手法に従って、又は以下の実施例に従って、好適な触媒、例えばパラジウム付活性炭又は二酸化白金の存在下に、好適な溶剤(例えば低級アルコール、例えばメタノール)中で実施することができる。必要に応じて、トリフルオロ酢酸又は酢酸のような酸を反応混合物に添加することができる。
【0055】
式VIIで示され、その式中、R4が前記の意味を有する化合物は、例えばAshimori et al. CHem. Pharm. Bull. 1990, 38, 2446-2458に記載されるように又はそれと同様に又は類似にして、当業者に公知の工程段階を用いて得ることができる。
【0056】
以下の反応式2は、式Iで示され、その式中、R1が水素又は、有利にはC〜C−アルキルであり、かつR2、R3、R4及びR11が前記の意味を有する化合物の製造を例示している。第一の反応工程において、式VIIで示され、その式中、R4が前記の意味を有する化合物を、式IXで示され、その式中、R1が水素又は、有利にはC〜C−アルキルであり、かつR4及びR11が前記の意味を有し、かつR′が適宜メチルであるエステル化合物、有利にはメチルエステル化合物へと、文献から公知のように(例えばアルドール反応に従って)又は文献から公知の方法を同様にもしくは類似に用いて転化させる。例えば、前記の式VIIの化合物を、式VIIIで示され、その式中、R1が水素又は、有利にはC〜C−アルキルであり、かつR11が前記の意味を有し、かつTMSがトリメチルシリルを表す好適な化合物と反応させて、アルドール反応において、式IXで示され、その式中、R1が水素又は、有利にはC〜C−アルキルであり、かつR4及びR11が前記の意味を有するエステル化合物、有利にはメチルエステル化合物を得ることができる。このアルドール反応は、以下の実施例に記載されるように、又は当業者に公知のように実施される。ヒドロキシル基が結合している炭素原子の立体配置に関しては、前記アルドール反応の結果として、反応条件に依存して、R立体配置又はS立体配置の原子又は、特にそれらが混ざったものになりうる。
【0057】
前記の式VIIIの化合物は公知及び/又は市販されているか、又はこれらの化合物は当該技術分野で知られる手順に従って又はそれに類似に又は同様にして製造することができる。
【0058】
第二工程において、式IXで示され、その式中、R1が水素又は、有利にはC〜C−アルキルであり、かつR4及びR11が前記の意味を有するエステル化合物、有利にはメチルエステル化合物のヒドロキシル基の脱酸素をして、相応の式Xの化合物が得られる。前記の脱酸素は、当業者によく知られるように又は以下の実施例に例として記載されるようにして達成できる。有利には、該ヒドロキシル基は、まず容易に還元しうる官能基に変換され、次いでこれを還元反応によって離脱させて、所望の式Xの化合物が得られる。こうして例えば、式IXの前記化合物のヒドロキシル基を当該分野で知られるようにしてヨウ素基に変換できる(例えばヒドロキシル基を好適な離脱基、有利にはトリフルオロメタンスルホニル基で誘導体化させ、そして引き続き該離脱基をヨウ素求核試薬によって求核置換反応において置換することによって)。次いで、得られたヨウ素基を当業者に知られるようにして、例えば好適な水素供与体又は好適な水素生成混合物、例えば好適な金属、有利には亜鉛を含有する混合物を用いて還元させて、所望の式Xの化合物を得ることができる。最も有利には、前記の脱酸素反応は、以下の実施例に記載されるように、最終工程でヨウ化ナトリウムと亜鉛を用いて、好適な溶剤、例えばジメトキシエタン中で高められた温度において実施される。
【0059】
反応式2:
【0060】
【化4】

【0061】
第三工程において、式Xで示され、その式中、R1が水素又は、有利にはC〜C−アルキルであり、かつR4及びR11が前記の意味を有するエステル化合物、有利にはメチルエステル化合物を以下の実施例に記載されるように又は当業者に公知のようにして鹸化させて、相応の式XIの化合物が得られる。
【0062】
後続工程において、式XIIで示され、その式中、R1が水素又は、有利にはC〜C−アルキルであり、かつR2、R3、R4及びR11が前記の意味を有する化合物を、式XIで示され、その式中、R1が水素又は、有利にはC〜C−アルキルであり、かつR4及びR11が前記の意味を有する化合物と、式VIで示され、その式中、R2及びR3が前記の意味を有する化合物とから、当業者に自体慣用のようにして、例えば当業者に公知のアミド結合架橋試薬を用いた反応によって製造する。挙げることができる当業者に公知のアミド結合架橋試薬の例は、例えばカルボジイミド、アゾジカルボン酸誘導体、ウロニウム塩、N,N′−カルボニルジイミダゾール又は、有利にはホスホニウム塩、例えばベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートである。
【0063】
最終工程において、式XIIで示され、その式中、R1が水素又は、有利にはC〜C−アルキルであり、かつR2、R3、R4及びR11が前記の意味を有する化合物を、式Iで示され、その式中、R1が水素又は、有利にはC〜C−アルキルであり、かつR2、R3、R4及びR11が前記の意味を有する化合物へと、縮合環化反応によって転化させる。前記の環状縮合は、当業者に自体公知のように又は以下の実施例に例として記載されるように、Bischler-Napieralski(例えばJ.Chem.Soc., 1956, 4280-4282に記載されるように)に従って適当な縮合剤、例えばポリリン酸、五塩化リン、五酸化リン又はオキシ塩化リンの存在下に、適当な不活性溶剤、例えば塩素化炭化水素、例えばクロロホルム中で又は環状炭化水素、例えばトルエン又はキシレン中で、又は別の不活性溶剤、例えばイソプロピルアセテート又はアセトニトリル中で、又は更なる溶剤を使用せず、過剰の縮合剤を使用して、低減された温度で、又は室温で、又は高められた温度で、又は使用される溶剤又は縮合剤の沸点で実施される。
【0064】
選択的に、式XIの化合物は、式VIの化合物と好適な条件下(例えばポリリン酸中で高められた温度で)で直接環化させて、所望の式Iの化合物を得ることができる。
【0065】
式Iで示され、その式中、R2がフェニル又はR21及び/又はR211で置換されたフェニルである化合物は、例えば以下の実施例に例として記載されるようにして又は文献から公知の方法に従って又はそれと同様に又は類似にして、例えば式Iで示され、その式中、R2又はR3が有利にはヨウ素又は臭素である相応の化合物から出発して、例えば公知の金属触媒によるC−Cカップリング反応、例えばSuzuki反応に従って製造することができる。Suzuki反応は、当業者に公知のようにして、例えば好適なホウ酸又はホウ酸誘導体及び好適な金属触媒、有利には遷移金属触媒(例えばパラジウム触媒)を用いて、場合により無機リチウム塩、有利には塩化リチウムの存在下に実施することができる。前記のホウ酸又はホウ酸誘導体は、当該技術分野で公知のようにして、例えばR21及び/又はR211で置換されたフェニルのハロゲン化物又はトリフルオロメタンスルホン酸エステルから、例えばビス(ピナコラト)ジボロンを用いて製造することができる。
【0066】
式Iで示され、その式中、R2がC〜C−アルコキシカルボニルである化合物は、例えば当業者に公知のようにして、例えば式Iで示され、その式中、R2又はR3が有利にはヨウ素又は臭素である相応の化合物の好適なアルコール中での、金属触媒(例えば遷移金属触媒、有利にはパラジウム触媒)によるカルボニル化反応に従って得ることができる。
【0067】
式Iで示され、その式中、R21がC〜C−アルキルカルボニルアミノ又はフェニルスルホニルアミノである化合物は、例えば文献から公知の方法に従って又はそれと同様に又は類似にして、式Iで示され、その式中、R21がアミノである相応の化合物から出発して、例えば当業者に自体慣用のアシル化反応又はスルホニル化反応によって製造することができる。
【0068】
本発明による化合物は、場合により、例えば過酸化水素を用いてメタノール中で又はm−クロロペルオキシ安息香酸を用いてジクロロメタン中でそのN−オキシドに変換することができる。当業者は、その専門知識に基づいて、N−オキシド化のために特に必要とされる反応条件に精通している。
【0069】
当業者には、多数の反応中心が出発化合物又は中間体化合物に存在する場合には、1つ以上の反応中心を反応が所望の反応中心だけで行われるように保護基で封鎖する必要があることもあることは知られている。多数の証明された保護基の使用のための詳細な記載は、例えばT.Greene and P.Wuts著“Protective Groups in Organic Synthesis”(John Wiley & Sons, Inc. 1999, 3rd Ed)又はP.Kocienski著“Protecting Groups(Thieme Foundations Organic Chemistry Series N Group)”(Thieme Medical Publishers, 2000)で述べられている。
【0070】
本発明による物質は、自体公知の方法で、例えば真空中で溶剤を留去し、そして得られた残留物を適当な溶剤から再結晶させるか、又は慣用の精製法の1つ、例えば適当な担体材料上でのカラムクロマトグラフィーを実施することによって単離及び精製される。
【0071】
塩は、遊離の化合物を所望の酸を含有する適当な溶剤(例えばケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン、エーテル、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン、塩素化炭化水素、塩化メチレン又はクロロホルム又は低分子量の脂肪族アルコール、例えばエタノール又はイソプロパノール)中に、又は所望の酸がその後に添加される溶剤中に溶解させることによって得られる。塩は、付加塩のための非溶剤を用いる濾過、再沈殿、沈殿又は溶剤の蒸発によって得られる。得られた塩を、塩基性化によって遊離の化合物に変換してよく、該化合物はまた塩に変換してもよい。前記のように、薬理学的に非認容性の塩を薬理学的に認容性の塩に変換できる。
【0072】
適宜、本発明に挙げられる転化は、当業者に自体公知の方法と類似にもしくは同様に、例えば以下の実施例で記載されるように実施できる。
【0073】
当業者はその知識に基づいて、本発明の明細書中に示され記載されたこれらの合成経路に基づいて、本発明による化合物に関して他の可能な合成経路をどのように見いだすかを知っている。全てのこれらの他の可能な合成経路もまた本発明を構成する部分である。
【0074】
本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの記載される特性又は実施態様のみに制限されるものではない。当業者に明らかなように、記載される本発明に対する改変、類推、変更、誘導、対応及び適合はこの分野で知られる知識及び/又は、特に本発明の開示(例えば明示、暗示又は本来の開示)に基づき、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなくなされてよい。
【0075】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するものであり、それを制限するものではない。同様に、製造が詳細に記載されていない本発明による更なる化合物も、類似の方法又は当業者に公知の方法で、慣用の製造方法及びプロセス技術を用いて製造することができる。
【0076】
実施例において、m.p.は融点を表し、hは時間を表し、dは日を表し、minは分を表し、TLCは薄層クロマトグラフィーを表し、Rfは保持比を表し、MSは質量スペクトルを表し、Mは分子イオンを表し、他の略記は当業者に自体慣用の意味を有する。
【0077】
この実施例に挙げられる化合物及びそれらの塩は本発明の有利な化合物である。
【0078】
実施例
最終生成物
1. (R,S)−2−[3−(4−メトキシピリジン−2−イル)プロピ−2−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン塩酸塩
0.59gの4−メトキシピリジン−2−カルバルデヒド(Ashimori et al., Chem. Pharm. Bull. 38, 2446-2458 (1990))を19mlのメタノール中に溶かした溶液を1.9gの{1−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−エチル}−トリフェニル−ホスホニウムクロライド(化合物A1)で処理する。ナトリウムメタノレートをメタノール中に溶かした溶液(1.3M)3.3mlを50℃で滴加する。その反応混合物を50℃で4時間撹拌し、そして蒸発乾涸させる。得られた残留物をシリカゲル上でジクロロメタン/メタノール(20:1)を用いたクロマトグラフィーにより、1.75gの無色の非晶質の固体が得られ、これを190mlのメタノール中に溶解させる。1.5mlの氷酢酸及び388mgのパラジウム付活性炭(10%Pd)を添加し、そして該懸濁液を室温で水素雰囲気下に2.5日間撹拌する。次いで触媒を濾過分離し、そして該反応混合物を濃縮乾涸させる。残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール(25:1))を行い、そして溶出液を蒸発させた後に、837mgの油状物が得られ、これを160mlのジクロロメタン中に溶解させる。該溶液に2mlのエーテル性塩酸溶液(2.0M)を冷却下に添加する。ジオキサンから凍結乾燥させた後に、0.951gの表題化合物が無色の凍結乾燥物として得られる。融点:61〜64℃。MS:269.1(MH)。TLC:Rf=0.44(ジクロロメタン/メタノール(10:1))。
【0079】
2. (R,S)−2−[4−(4−メトキシピリジン−2−イル)ブト−2−イル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン
7.2gのトリブチル−{1−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロピル}−ホスホニウムクロライド(化合物A2)をテトラヒドロフラン中に溶かした溶液を、720mgの水素化ナトリウム(パラフィン中60%濃度の懸濁液)を180mlのテトラヒドロフラン中に入れた懸濁液に添加する。15分間撹拌した後に、0.500gの4−メトキシピリジン−2−カルバルデヒド(Ashimori et al., Chem. Pharm. Bull. 38, 2446-2458 (1990))をテトラヒドロフラン中に溶かした溶液を滴加し、そして該反応混合物を80℃で6時間加熱する。該混合物を次いで蒸発乾固させ、そして得られた残留物をシリカゲル上でジクロロメタン/メタノール(20:1)を用いたクロマトグラフィーに供することにより、3.58gの無色の非晶質の固体が得られ、これを得られた状態で200mlのメタノール中に溶解させる。2.9mlのトリフルオロ酢酸及び788mgのパラジウム付活性炭(10%Pd)を添加し、そして該懸濁液を室温で水素雰囲気下に2.5日間撹拌する。次いで触媒を濾過分離し、そして該反応混合物を濃縮乾涸させる。残留物をシリカゲル上(ジクロロメタン/メタノール(10:1〜5:1))でクロマトグラフィーにより精製し、そして溶出液を蒸発させた後に、1.4gの表題化合物が油状物として得られる。MS:283.1(MH)。TLC:Rf=0.48(ジクロロメタン/メタノール(10:1))。
【0080】
3. 2−[2−(4−メトキシピリジン−2−イル)−1,1−ジメチル−エチル]−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン
3.56gの3−(4−メトキシピリジン−2−イル)−2,2−ジメチル−プロピオン酸(化合物A3)、2.05gの2,3−ジアミノピリジン及び12.42gのベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを178mlのピリジン中に溶かした溶液を、3.5mlのN,N′−ジイソプロピルエチルアミンを滴下して処理する。添加が完了した後に、該反応混合物を40℃で22時間にわたって撹拌する。次いで該反応混合物を濃縮乾涸させ、そして残留物をシリカゲル上でのクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール(10:1))に供することで、4.19gのアミド中間体が得られ、これを得られたままで51.5mlのオキシ塩化リン中に懸濁させる。該反応混合物を19時間還流させ、蒸発乾固させ、得られた残留物を190mlの水中に溶解させ、2Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHをpH6に調整し、そして該混合物をそれぞれ100mlのジクロロメタンで4回抽出する。有機層を回収し、100mlの水と100mlのブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、そして濃縮する。残留物をシリカゲル上(ジクロロメタン/メタノール(20:1))でクロマトグラフィーにより精製し、そして溶出液を蒸発させた後に、0.624gの表題化合物が無色の蝋状の固体として得られる。融点:149℃〜151℃。MS:283.3(MH)。TLC:Rf=0.27(ジクロロメタン/メタノール(10:1))。
【0081】
出発材料
A1. {1−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−エチル}−トリフェニル−ホスホニウムクロライド
8.66gの2−(1−クロロエチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(化合物B1)を40mlのN,N−ジメチルホルムアミド及び120mlのアセトニトリル中に懸濁させる。12.6gのトリフェニルホスフィンを添加し、そして該混合物を150℃に17時間にわたって加熱する。該混合物を濃縮乾涸させ、そして粗生成物をシリカゲル上(溶出液:ジクロロメタン/メタノール(20:1))でクロマトグラフィーによって精製することで、4.16gの表題化合物が油状物として得られる。MS:408.0(M)。
【0082】
A2. トリブチル−{1−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イル)−プロピル}−ホスホニウムクロライド
8.66gの2−(1−クロロプロピル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(化合物B2)を18mlのN,N−ジメチルホルムアミド及び61mlのアセトニトリル中に懸濁させる。6.3mlのトリフェニルホスフィンを40℃で添加し、そして該混合物を90℃に16時間にわたって加熱する。該混合物を濃縮乾涸させることで、11.9gの表題化合物が油状物として得られる。MS:362.2(M)。
【0083】
A3. 3−(4−メトキシピリジン−2−イル)−2,2−ジメチル−プロピオン酸
1.0gの3−(4−メトキシピリジン−2−イル)−2,2−ジメチル−プロピオン酸メチルエステル(化合物B3)を52mlのジオキサン中に溶かした溶液を、12.1mlの水酸化リチウム水溶液(12.1mlの水中の290mgの水酸化リチウム)で滴下により処理する。50℃で3.5時間撹拌した後に、pHを、水性塩酸(1M)を添加することによってpH6に調整する。溶剤を真空中で除去し、そして得られた残留物をシリカゲル上でのクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール(15:1)に供することで、0.864gの表題化合物が無色の非晶質の固体として得られる。融点:150℃〜151℃。MS:210.2(MH)。TLC:Rf=0.27(ジクロロメタン/メタノール(10:1))。
【0084】
B1. 2−(1−クロロエチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン
5.2gの2,3−ジアミノピリジンを209gのポリリン酸中で120℃で0.5時間加熱する。該溶液を80℃に冷却し、そして4.6mlの2−クロロプロピオニトリルを添加する。次いで、反応混合物を180℃で2.5時間にわたって加熱する。冷却後に、ポリリン酸を水により加水分解し、該混合物を活性炭とセライトを用いて濾過し、そして濾液のpHを、9Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4に調整する。該混合物を、それぞれ250mlの酢酸エチルで2回抽出し、合した有機相を硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、濃縮し、エタノール/水から凍結乾燥させることで、3.56gの表題化合物が淡褐色の非晶質の固体として得られる。融点:132℃。TLC:Rf=0.60(ジクロロメタン/メタノール(8:1))。
【0085】
B2. 2−(1−クロロプロピル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン
5.0gの2,3−ジアミノピリジンを200gのポリリン酸中で120℃で0.5時間加熱する。その溶液を80℃に冷却し、そして5.7mlの2−クロロ酪酸を添加する。次いで、反応混合物を130℃で22時間にわたって加熱する。冷却後に、ポリリン酸を水により加水分解し、該混合物を活性炭とセライトを用いて濾過し、そして濾液のpHを、9Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4に調整する。該混合物を、それぞれ200mlの酢酸エチルで3回抽出し、合した有機相を硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、濃縮し、残留物をシリカゲル上でのクロマトグラフィー(溶出液:トルエン/酢酸エチル(1:1))によって精製することで、5.19gの表題化合物が無色の非晶質の固体として得られる。融点:137℃。TLC:Rf=0.50(ジクロロメタン/メタノール(10:1))。
【0086】
B3. 3−(4−メトキシピリジン−2−イル)−2,2−ジメチル−プロピオン酸メチルエステル
3.0gの3−ヒドロキシ−3−(4−メトキシピリジン−2−イル)−2,2−ジメチル−プロピオン酸メチルエステル(化合物C3)、0.153gの4−ジメチルアミノピリジン及び2.58mlのN,N′−ジイソプロピルエチルアミンを80mlのジクロロメタン中に溶解させる。トリフルオロメタンスルホン酸無水物を氷冷下に滴加する。冷却浴を取り除き、そして該混合物を室温で2.5時間撹拌する。真空中で蒸発させた後に、残りの残留物を得られたままで100mlの1,2−ジメトキシエタン中に溶解させる。9.37gのヨウ化ナトリウムと16.3gの活性化亜鉛を添加し、そして該混合物を100℃で1.5時間撹拌する。固体を濾過分離し、そして濾液を800mlのジクロロメタンで希釈し、そして塩化ナトリウムの半飽和水溶液で数回抽出する。有機層を硫酸ナトリウムを使用して乾燥させ、そして濃縮させる。残留物を、シリカゲル上でのクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル(2:1))によって精製することで、1.6gの表題化合物が油状物として得られる。MS:224.2(MH)。TLC:Rf=0.26(トルエン/アセトン(2:1))。
【0087】
C3. 3−ヒドロキシ−3−(4−メトキシピリジン−2−イル)−2,2−ジメチル−プロピオン酸メチルエステル
0.58gの4−メトキシピリジン−2−カルバルデヒド(Ashimori et al., Chem. Pharm. Bull. 38, 2446-2458 (1990))と21mgのトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウムを14mlのジクロロメタン中に溶かした溶液を、0.9mlの1−メトキシ−2−メチル−1−トリメチルシリルオキシプロパンで氷冷下に滴加により処理する。10分後に冷却浴を取り除き、そして該混合物を18時間撹拌する。次いで、12mlのメタノールと12mlの水性塩酸(3M)を添加し、そして撹拌を更に14時間継続する。溶剤を真空中で除去し、残留物をジクロロメタン中に溶解させ、そして炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で洗浄する。有機層を硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、そして濃縮することで、0.845gの表題化合物が無色の油状物として得られる。MS:240.0(MH)。TLC:Rf=0.46(トルエン/アセトン(2:1))。
【0088】
産業上利用可能性
本発明による化合物は、商業的利用を可能にする有用な薬理学的特性を有する。これらの化合物は、誘導性窒素酸化物シンターゼといった酵素の選択的阻害剤である。窒素酸化物シンターゼ(NOシンターゼ、NOS)は、NOとシトルリンとをアミノ酸であるアルギニンから生成させる酵素である。一定の病態生理学的状況、例えばアルギニン欠乏又はテトラヒドロビオプテリン欠乏において、NOシンターゼによりNOの代わりに又はNOと一緒にOが発生することが報告されている。NOは、哺乳動物及びヒトを含む殆どの生物におけるシグナル伝達分子として長い間知られている。NOの最も重要な作用は、その平滑筋弛緩活性であり、これは可溶性グアニル酸シクラーゼの活性化によって分子レベルで引き起こされる。昨年、多くの他の酵素がNO又はNOの反応産物によって調節されることが示された。
【0089】
NOシンターゼには3種のアイソフォームが存在し、これは2つのクラスに分かれ、その生理学的機能と分子特性の点で異なっている。構成的NOシンターゼとして知られる第一のクラスは、内皮NOシンターゼ及びニューロン性NOシンターゼからなる。両者のイソ酵素は種々の細胞型で構成的に発現されるが、血管壁の内皮細胞(従って内皮NOシンターゼ、eNOS又はNOS−IIIと呼ばれる)及びニューロン細胞(従ってニューロン性NOシンターゼ、nNOS又はNOS−Iと呼ばれる)において最も顕著である。これらの2種の酵素の活性化はCa2+/カルモジュリンに依存し、後者は細胞内の遊離Ca2+の一過的な増加によって生ずる。
【0090】
構成的なアイソフォームの活性化により窒素酸化物の一過的な急増が引き起こされ、これにより細胞又は組織のNO濃度がナノモラー濃度となる。内皮アイソフォームは血圧の生理学的調節に必要とされる。ニューロン性のアイソフォームにより生成されたNOは神経伝達物質機能を有すると考えられ、そしてニューロン性のアイソフォームは記憶機能(長期相乗作用)に関与する他の調節過程の中にある。
【0091】
構成的アイソフォームに対して、誘導性NOシンターゼ(iNOS、NOS−II)、つまり第二のクラスの唯一のメンバーの活性化は、iNOSプロモーターの転写活性化によって行われる。
【0092】
炎症誘発性刺激は、誘導体NOシンターゼの遺伝子の転写を引き起こし、そのシンターゼは細胞内Ca2+濃度の増大なくして触媒活性を示す。誘導性NOシンターゼの半減期が長いことと、酵素活性が調節されないことのため、高マイクロモラー濃度のNO濃度が長時間にわたって生ずる。これらの高濃度のNO濃度は、単独で又はOのような他の反応性ラジカルと共同で細胞毒性である。従って、微生物感染の状況では、iNOSはマクロファージ及び他の免疫細胞による早期の非特異的免疫応答にあたっての細胞致死に関与する。
【0093】
とりわけ誘導性NOシンターゼの高い発現とそれに付随する高いNO濃度又はO濃度を特徴とする病態生理学的状況は数多く存在する。これらの高いNO濃度は単独で又は他のラジカル種と組み合わせて組織及び器官に損傷をもたらすことと、その濃度が前記の病態生理学に結果として関与するということが示された。炎症は、誘導性NOシンターゼを含む炎症誘発性酵素の発現を特徴とするので、急性と慢性の炎症過程は誘導性NOシンターゼの選択的阻害剤の治療的使用に期待が持てる疾病である。誘導性NOシンターゼによる高いNO産生を伴う他の病態生理学は、幾つかの形のショックである(敗血症ショック、出血性ショック及びサイトカイン誘発性ショック)。非選択的なNOシンターゼ阻害剤は、構成的NOシンターゼのアイソフォームの付随した阻害のため心血管及びニューロンに副作用をもたらす。
【0094】
敗血症ショックのインビボ動物モデルでは、NOスカベンジャーによる循環血漿NO濃度の低下又は誘導性NOシンターゼの阻害が体血圧を回復させ、器官損傷を減らし、かつ生存性を高めることが示された(deAngelo Exp. Opin. Pharmacother. 19-29, 1999; Redl et al. Shock 8, Suppl. 51, 1997; Strand et al. Crit.Care Med. 26, 1490-1499, 1998)。また、敗血症ショックに際して高まるNO産生が心臓抑制と心筋不全の原因であるとも示された(Sun et al. J. Mol.Cell Cardiol. 30, 989-997, 1998)。更にまた、NOシンターゼ阻害剤の存在下に左前冠状動脈の閉塞後に梗塞サイズが縮小することを示す報告もある。ヒト心筋疾患及び心筋炎において見られるかなり高い誘導性NOシンターゼ活性は、NOが少なくとも部分的にこれらの病態生理学における拡張と収縮障害の原因であるといった仮説を支持するものである。
【0095】
急性又は慢性の炎症の動物モデルにおいて、アイソフォーム選択的又は非選択的な阻害剤による誘導性NOシンターゼの遮断又は遺伝子ノックアウトが治療結果を改善する。実験的な関節炎(Connor et al. Eur. J. Pharmacol. 273, 15-24, 1995)及び骨関節炎(Pelletier et al. Arthritis & Rheum. 41, 1275-1286, 1998)、実験的な胃腸管の炎症(Zingarelli et al. Gut 45, 199-209, 1999)、実験的な糸球体腎炎(Narita et al. Lab. Invest. 72, 17-24, 1995)、実験的な糖尿病(Corbett et al. PNAS 90, 8992-8995, 1993)、LPS誘発性の実験的な肺損傷は、誘導性NOシンターゼの阻害によるか又はiNOSノックアウトマウスにおいて軽減されることが報告されている(Kristof et al. Am. J. Crit. Care. Med. 158, 1883-1889, 1998)。誘導性NOシンターゼに誘導されたNO又はOの病態生理学的役割は、喘息、気管支炎及びCOPDのような慢性炎症性疾患においても議論されている。
【0096】
更に、CNSの神経変性疾患、例えばMPTP誘発性パーキンソン症候群、アミロイドペプチド誘発性アルツハイマー病(Ishii et al., FASEB J. 14, 1485-1489, 2000)、マロン酸誘発性ハンチントン病(Connop et al. Neuropharmacol. 35, 459-465, 1996)、実験的な髄膜炎(Korytko & Boje Neuropharmacol. 35, 231-237, 1996)及び実験的な脳炎(Parkinson et al. J. Mol. Med. 75, 174-186, 1997)のモデルにおいて、NOと誘導性NOシンターゼの因果的関与が示されている。
【0097】
iNOS発現の増大は、AIDS患者の脳内に見られるので、AIDS関連痴呆におけるiNOSの役割を推定することが合理的である(Bagasra et al. J. Neurovirol. 3 153-167, 1997)。
【0098】
他の研究は、窒素酸化物を、多発性硬化症の証である小グリア細胞依存性の原発性脱髄の潜在的メディエーターとして関連付けている。
【0099】
炎症反応とそれに付随する誘導性NOシンターゼの発現は、脳虚血と再潅流の間にも生ずる(Iadecola et al. Stroke 27, 1373-1380, 1996)。浸潤好中球からOと一緒に生ずるNOは細胞と器官の損傷の原因であると考えられる。また、外傷的脳損傷(Mesenge et al. J. Neurotrauma 13, 209-214, 1996; Wada et al. Neurosurgery 43, 1427-1436, 1998)のモデルにおいて、NOシンターゼ阻害剤は保護特性を有することが示された。誘導性NOシンターゼについての調節的役割は、種々の主要細胞系統で報告されている(Tozer & Everett Clin Oncol. 9. 357-264, 1997)。
【0100】
それらの誘導性NOシンターゼ阻害特性のため、本発明による化合物は、誘導性NOシンターゼの活性の増大のため過剰のNO又はOが関与しているヒト医学及び獣医学並びにそれらの治療において使用できる。これらの化合物は、制限されないが、以下の疾病の治療及び予防のために使用することができる:急性炎症性疾病:敗血性ショック、敗血症、SIRS、溶血性ショック、サイトカイン治療(IL−2、TNF)によって誘導されたショック状態、臓器移植及び移植拒絶反応、脳の外傷、急性肺疾患、ARDS、炎症性皮膚疾患、例えば日焼け、炎症性眼疾患、例えばブドウ膜炎、緑内障及び結膜炎。
【0101】
末梢器官及びCNSの慢性炎症性疾患:胃腸性炎症性疾患、例えばクローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、肺炎症性疾患、例えば喘息及びCOPD、関節性疾患、例えば関節リューマチ、変形性関節症及び痛風性関節炎、心臓疾患、例えば心筋症及び心筋炎、関節硬化症、神経性炎症、皮膚疾患、例えば乾癬、皮膚炎及び湿疹、糖尿病、糸球体腎炎;痴呆、例えばアルツハイマー型痴呆、血管性痴呆、全身性医学的症状による痴呆、例えばAIDS−、パーキンソン病、ハンチントン病誘発性痴呆、ALS、多発性硬化症;壊死性脈管炎、例えば多発性動脈炎、血清病、ウエーグナー肉芽腫症、川崎病、頭痛、例えば偏頭痛、慢性緊張性頭痛、群発性頭痛及び血管性頭痛、外傷後ストレス障害、疼痛疾患、例えば神経性疼痛、心筋虚血及び大脳虚血/再潅流障害。
【0102】
またこれらの化合物は、窒素酸化物シンターゼを発現する癌の治療において有用なこともある。
【0103】
更に本発明は前記の疾患の1つ以上に罹患するヒトを含む哺乳動物の治療のための方法に関する。本方法は、治療学的に有効な、かつ薬理学的に効果的かつ認容される量の本発明による1種以上の化合物を病気の哺乳動物に投与することを特徴とする。
【0104】
更に本発明は病気、特に前記の病気の治療及び/又は予防における使用のための本発明による化合物に関する。
【0105】
また本発明は、前記の病気の治療及び/又は予防のために使用される医薬品組成物の製造のための、本発明による化合物の使用に関する。
【0106】
本発明はまた、本発明による化合物の、iNOS阻害活性を有する医薬品組成物の製造のための使用に関する。
【0107】
更に本発明は、前記の病気の治療及び/又は予防のための、1種以上の本発明による化合物を含有する医薬品組成物に関する。
【0108】
更に本発明は、iNOS阻害活性を有する本発明による医薬品組成物に関する。
【0109】
該医薬品は、自体公知かつ当業者によく知られた方法によって製造される。医薬品組成物としては、本発明による化合物(=有効化合物)はそれ自体で、又は有利には適当な医薬品助剤及び/又は賦形剤と組み合わせて、例えば錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、カプレット剤、坐剤、パッチ剤(例えばTTS)、乳剤、懸濁剤、ゲル剤又は液剤の形で使用され、その際、有効化合物の含有率は有利には0.1〜95%であり、かつ助剤及び/又は賦形剤の適当な選択によって、有効化合物に厳密に適合された、及び/又は作用の所望の開始に厳密に適合された医薬品投与形(例えば遅延放出形又は腸溶形)を達成できる。
【0110】
当業者はその専門知識により所望の医薬品製剤に適した助剤又は賦形剤に精通している。溶剤、ゲル形成剤、軟膏基材及び他の有効化合物の他に、賦形剤、例えば酸化防止剤、分散剤、乳化剤、保存剤、溶解剤、着色剤、錯化剤又は侵透促進剤を使用してよい。
【0111】
本発明による医薬品組成物の投与は、この分野で利用できる一般的に許容される任意の様式で実施できる。好適な投与様式の実例は、例えば静脈内、経口、経鼻、非経口、局所、経皮及び直腸内の送達である。経口及び静脈内の送達が好ましい。
【0112】
呼吸管の疾患の治療のために、本発明による化合物を、有利には吸入によってエーロゾルの形で投与する;固体、液体又は混合組成のエーロゾル粒子は有利には0.5〜10μm、有利には2〜6μmの直径を有する。
【0113】
エーロゾルの発生は、例えば圧力駆動のジェット噴霧器又は超音波噴霧器、有利には噴射剤駆動の定量噴霧式エーロゾルによるか、又は吸入カプセルからの微粉化有効化合物の噴射剤不使用の投与によって実施できる。
【0114】
使用される吸入系に依存して、有効化合物の他に該投与形は付加的に所望の助剤、例えば噴射剤(例えば定量噴霧式エーロゾルの場合にFrigen)、界面活性剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、フレーバー又は増量剤(例えば粉末吸入器の場合にラクトース)又は、適宜更なる有効化合物を含有する。
【0115】
吸入の目的のために、多くの装置を利用でき、それを用いて最適な粒度を有するエーロゾルを発生させ、かつ患者にできる限り正しい吸入技術を使用して投与できる。アダプタ(スペーサ、エキスパンダ)及び洋ナシ型容器(例えばNebulator(登録商標)、Volumatic(登録商標))並びに計量供給エーロゾルのための、特に粉末吸入器の場合に吹き付け噴霧(puffer spray)を放出する自動装置(Autohaler(登録商標))を使用する他に、種々の技術的解決策(例えばDiskhaler(登録商標)、Rotadisk(登録商標)、Turbohaler(登録商標)又はEP0505321号に記載される吸入器)が利用でき、それを用いて有効化合物の最適な投与を達成できる。
【0116】
皮膚病の治療のためには、本発明による化合物を、特に局所適用のために適当な医薬品組成物の形で適用する。該医薬品組成物の製造のために、本発明による化合物(=有効化合物)を有利には適当な製薬学的賦形剤と混合し、更に加工して適当な医薬品製剤を得る。適当な医薬品製剤は、例えば粉剤、乳剤、懸濁剤、スプレー剤、オイル剤、軟膏剤、脂肪軟膏剤、クリーム剤、ペースト剤、ゲル剤又は液剤である。
【0117】
本発明による医薬品組成物は自体公知の方法によって製造される。有効化合物の投与は、iNOS阻害剤について慣用のオーダーで行われる。従って皮膚病の治療のための局所適用形(例えば軟膏)は有効化合物を、例えば0.1〜99%の濃度で含有する。吸入による投与のための用量は慣用に1日あたり0.1〜10mgである。全身療法の場合の慣用の用量は、経口で0.3〜30mg/kg/日であり、静脈内で0.3〜30mg/kg/時間である。
【0118】
生物学的調査
誘導性NOシンターゼ活性の測定
アッセイは、96ウェルの平底マイクロタイタープレート(Greiner, Frickenhausen, FRG)において、全容量100μlで、100nMのカルモジュリン、226μMのCaCl、477μMのMgCl、5μMのフラビン−アデニン−ジヌクレオチド(FAD)、5μMのフラビンモノヌクレオチド(FMN)、0.1mMのNADPH、7mMのグルタチオン、10μMのBH4及び100mMのHEPES(pH7.2)の存在下で実施する。アルギニン濃度は酵素阻害試験については0.1μMである。そのアッセイ混合物に150000dpmの[H]アルギニンを添加する。酵素反応はヒトの誘導性NOシンターゼを含有する4μgの粗製細胞質分画を添加することによって開始させ、そして該反応混合物を37℃で45〜60分間にわたってインキュベートする。酵素反応は、10μlの2MのMESバッファー(pH5.0)の添加によって停止させる。インキュベートした混合物50μlを、既に50μlのAG−50W−X8型カチオン交換樹脂(バイオラッド社、ミュンヘン、FRG)を含有しているMADP N65型の濾過型マイクロタイタープレート中に移す。Na負荷型の樹脂を水中で事前に平衡化させ、70μl(50μlの乾燥ビーズに相当する)を、激しく撹拌しながら8チャネルピペットを用いて該濾過型プレート中にピペットで加える。50μlの酵素反応混合物を濾過型プレートにピペットで加えた後に、そのプレートを濾過用マニホルド(Porvair, Shepperton, UK)に設置し、そして流液をPico型シンチレーションプレート(Packard, Meriden, CT)中に回収する。濾過型プレート中の樹脂を75μlの水(1×50μl及び1×25μl)で洗浄し、これをまた試料として同じプレートに回収する。全流液125μlを175μlのMicroscint−40型のシンチレーションカクテル(Packard)と混合し、そしてそのシンチレーションプレートをTopSeal P薄膜(Packard)でシールする。シンチレーションプレートの計数をシンチレーション計数器で行う。
【0119】
化合物の誘導性NOシンターゼ阻害能の測定のために、インキュベートされる混合物中に含まれる阻害剤の濃度を増加させた。IC50値は、所定の濃度での阻害のパーセンテージから非線形の最小二乗フィットによって計算した。
【0120】
本発明による化合物について測定された代表的な阻害値は以下の表Aからわかり、そこでは化合物の番号は実施例の番号に相当する。
【0121】
表A
iNOS活性の阻害[−logIC50(モル/l)として測定した]
【0122】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
R1は水素又はC〜C−アルキルであり、
R2は水素、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、C〜C−アルキル、トリフルオロメチル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−シクロアルキル−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、完全にもしくは大部分がフッ素で置換されたC〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシカルボニル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノスルホニル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルキルスルホニルアミノ、フェニル、R21及び/又はR211で置換されたフェニル、フェニル−C〜C−アルキル、フェニル部がR22により置換されているフェニル−C〜C−アルキル、フェニル−C〜C−アルコキシ、ピリジル、R23により置換されているピリジル、ピリジル−C〜C−アルキル、ピリジル部がR24により置換されているピリジル−C〜C−アルキルであり、その際、
R21はシアノ、ハロゲン、カルボキシル、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、アミノカルボニル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノカルボニル、C〜C−アルキルカルボニルアミノ、C〜C−アルコキシカルボニル、アミノスルホニル、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノスルホニル、アミノ、モノ−もしくはジ−C〜C−アルキルアミノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシル、フェニルスルホニルアミノ又はフェニル−C〜C−アルコキシであり、
R211はハロゲン又はC〜C−アルコキシであり、
R22はハロゲン、C〜C−アルキル又はC〜C−アルコキシであり、
R23はハロゲン、C〜C−アルキル又はC〜C−アルコキシであり、
R24はハロゲン、C〜C−アルキル又はC〜C−アルコキシであり、
R3は水素、ハロゲン、C〜C−アルキル又はC〜C−アルコキシであり、
R4はC〜C−アルキルであり、
R11はC〜C−アルキルである]で示される化合物、それらの塩、N−オキシド並びにこれらの化合物のN−オキシドの塩。
【請求項2】
式Iで示され、式中、
R1は水素又はC〜C−アルキルであり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4はメチルであり、
R11はC〜C−アルキルである、請求項1記載の化合物、並びにそれらの塩、N−オキシド及びこれらの化合物のN−オキシドの塩。
【請求項3】
式Iで示され、式中、
R1は水素であり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4はメチルであり、かつ
R11はメチル又はエチルであるか、又は
R1はメチルであり、
R2は水素であり、
R3は水素であり、
R4はメチルであり、かつ
R11はメチルである、請求項1記載の化合物、並びにそれらの塩、N−オキシド及びこれらの化合物のN−オキシドの塩。
【請求項4】
式Iで示され、式中、R4はメチルである、請求項1記載の化合物、並びにそれらの塩、N−オキシド及びこれらの化合物のN−オキシドの塩。
【請求項5】
式Iで示され、式中、R1は水素であり、R4はメチルであり、かつR11はメチルである、請求項1記載の化合物、並びにそれらの塩、N−オキシド及びこれらの化合物のN−オキシドの塩。
【請求項6】
療法における、例えば疾病の治療のための請求項1記載の式Iの化合物。
【請求項7】
請求項1記載の式Iの1種以上の化合物と一緒に通常の医薬品助剤及び/又は賦形剤を含有する医薬品組成物。
【請求項8】
急性炎症性疾患の治療のための医薬品組成物の製造のための、請求項1記載の式Iの化合物の使用。
【請求項9】
末梢器官及びCNSの慢性炎症性疾患の治療のための医薬品組成物の製造のための、請求項1記載の式Iの化合物の使用。
【請求項10】
患者における病気の治療方法において、該患者に治療学的有効量の請求項1記載の式Iの化合物を投与すること含む方法。
【請求項11】
患者における急性炎症性疾患の治療方法において、該患者に治療学的有効量の請求項1記載の式Iの化合物を投与すること含む方法。

【公表番号】特表2007−507463(P2007−507463A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530260(P2006−530260)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052370
【国際公開番号】WO2005/030768
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(390019574)アルタナ ファルマ アクチエンゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】ALTANA Pharma AG
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2、 D−78467 Konstanz、 Germany
【Fターム(参考)】