説明

誘導測定用の装置ならびに方法

【課題】特に渦電流測定あるいは漏れ磁束測定を使用して被検体内の欠陥を非破壊および非接触式に検出するための装置ならびに方法、または管部材内を通流する液体中の導電性の粒子を検出するための同様な装置ならびに方法を低コストに提供する。
【解決手段】デジタル化された受信コイル信号の曲線形状を信号処理ユニットによって監視することにより受信コイル信号によるA/Dコンバータ段の過励振が判定された場合にA/Dコンバータ段によって切除された受信コイル信号の部分をデジタル化された受信コイル信号内に数学的近似法によって再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、渦電流測定あるいは漏れ磁束測定を使用して非破壊ならびに非接触式に被検体中の欠陥を検査するための装置ならびに方法に関する。本発明はさらに、管部材内を流動する導電性の粒子内に誘導される渦電流を測定することによって前記粒子を検出する装置ならびに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に金属半加工品等の被検体内の欠陥を非破壊ならびに非接触式に検出する一般的な測定方法として被検体内における渦電流の誘導ならびに測定がある。その際に正弦波電流が通流する送信コイルを使用して被検体に周期性の電磁交流磁界がかけられる。それによって被検体内に誘導された渦電流が再びプローブとして使用されるコイル構成内に周期的な電気信号を誘導し、それが発信搬送波周波数に相当する搬送波を含み、その振幅および/または位相はプローブの感知範囲内に被検体の欠陥が到達した場合にその欠陥に応じて特徴的な方式で変調される。通常被検体を走査するためにその被検体に沿って直線状にプローブが移動するが、回転式のプローブの構成も知られている。直線状に移動する被検体を伴った渦電流測定装置の一例が米国特許第5175498号明細書に記載されている。
【0003】
同様な作用でコイルの中央を通過する液体内の導電性の粒子が渦電流損を発生させ、これも測定可能なコイルのインピーダンス変化を生じさせる。この方式により誘導コイル構成を使用して管部材内を通流する液体中の導電性の粒子を検出することができる。このことは、機械の状態を判定するために機械内の潤滑油循環系中の金属粒子の濃度を測定したい場合に極めて有用である(金属粒子の濃度は通常機械の摩耗の指標となる)。
【0004】
非破壊ならびに非接触式に被検体中の欠陥を検査するための別の一般的な測定方法として漏れ磁束測定(あるいは漏れ磁界測定)が知られており、それによればヨークを備えた誘導コイルを使用して被検体の磁性化が実施されその際被検体によって生成された漏れ磁束が適宜なセンサを使用して測定される。被検体内の欠陥は漏れ磁束への影響を利用して検出される。その種の漏れ磁束測定の一例が米国特許第4445088号明細書に記載されている。
【0005】
被検体の外周を周回するプローブを備えた渦電流測定機器において、例えば被検体断面の偏心性あるいは非対称性のため外周の経移に従って変動する距離に関して測定結果を校正することができるように、プローブヘッドと被検体の間の距離測定を実施することが知られている。その種の構成の一例が独国特許出願公開第4003330A1号明細書に記載されている。
【0006】
国際公開第2006/007826A1号パンフレットによりディジタルフロントエンドを有する渦電流測定機器が知られており、それにおいてはA/Dコンバータ段が搬送波の周波数のn番目の整数分割においてトリガされ、その際nは欠陥周波数、すなわち被検体とプローブの間の相対速度とプローブの作用幅から得られる商に従って選択される。
【0007】
米国特許第4209744号明細書には、電子回路の基本的な検査を実施するために被検体の欠陥を特徴付ける信号をシミュレートする試験装置を備えた渦電流測定機器が記載されている。しかしながら、特定の振幅と特定の欠陥実質周波数を有するケースのみしかシミュレートすることができない。シミュレートする欠陥信号を可変にしたとしても、電子回路全体を検査することは通常できない。また、そのようなシミュレートされた欠陥信号は電子回路を分解して検定機関に持ち込まない限り検定された基準デバイスと比較することができない。
【0008】
国際公開第01/22075A2号パンフレットには、システムの自動校正の枠内において無欠陥の被検体断片に起因する信号の信号強度を検出する渦電流測定機器が記載されている。
【0009】
英国特許第2192064号明細書には、欠陥をシミュレートするためにLEDの点入による自己検査装置を使用して機器の調子を狂わせる誘導検査機器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5175498号明細書
【特許文献2】米国特許第4445088号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第4003330A1号明細書
【特許文献4】国際公開第2006/007826A1号パンフレット
【特許文献5】米国特許第4209744号明細書
【特許文献6】国際公開第01/22075A2号パンフレット
【特許文献7】英国特許第2192064号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の目的は、特に渦電流測定あるいは漏れ磁束測定を使用して被検体内の欠陥を非破壊および非接触式に検出するための装置ならびに方法、または管部材内を通流する液体中の導電性の粒子を検出するための同様な装置ならびに方法を低コストに提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題は、本発明に従って請求項1記載の方法ならびに請求項4記載の方法、または請求項10記載の装置ならびに請求項12記載の装置によって解決される。
【0013】
本発明に係る解決方式によれば、デジタル化された受信コイル信号の曲線形状を信号処理ユニットによって監視することにより受信コイル信号によるA/Dコンバータ段の過励振が判定された場合にA/Dコンバータ段によって切除された受信コイル信号の部分をデジタル化された受信コイル信号内に数学的近似法によって再生することによって、特に前記の信号再生の結果A/Dコンバータに対する動作性能要求が低くなり従って低価格のA/Dコンバータが使用可能になるため必要とされるハードウェアのコスト削減が可能になることが好適である。また、その種の信号再生によりハードウェアによって定義されている測定範囲を拡大することが可能になる。さらに、構成部品の故障に起因するA/Dコンバータの過励振に際して発生したエラーを前記信号再生によってより定量的に判定することができ、その結果エラーを迅速に位置特定できる可能性が高まる。
【0014】
A/Dコンバータ段をトリガ可能とすることが好適であり、デジタル化されまた場合によって再生された受信コイル信号を周波数フィルタによってフィルタリングすることによって復調された有効信号を生成し、その際送信コイル構成のための信号の搬送波の周波数のn番目の整数分割においてA/Dコンバータ段がトリガされ、ここでnは被検体と受信コイル構成の間の相対速度と受信コイル構成の作用幅の商として得られる欠陥周波数に相関して選択され、また周波数フィルタも前記欠陥周波数に相関して設定される。
【0015】
次に、本発明について添付図面を参照しながら実施例によってさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】自己検査機能と校正機能を備えた本発明に係る誘導測定装置のブロック線図である。
【図2】移動する被検体内の欠陥を検出するために使用される本発明に係る誘導測定装置の一例を示したブロック線図である。
【図3】流動する液体中の導電性の粒子を検出するために使用される本発明に係る誘導測定装置の一例を示したブロック線図である。
【図4】図3の測定装置を使用するために送信コイルまたは受信コイルが設けられていて液体が貫流している管部材を概略的に示した縦断面図である。
【図5】図4のコイルの結線を示したブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には自己検査機能と校正機能を有する本発明に係る誘導測定装置のブロック線図が示されている。信号プロセッサ60がA/DコンバータおよびD/Aコンバータの制御用に設けられたPAL(プログラマブルアレーロジック)要素68と通信する。PAL要素68は、電流センサ72を有していてプローブ11(計測ヘッド)の送信コイル構成(図1には示されていない)のための信号を供給する送信コイル駆動回路70を動作させる。プローブ11の受信コイル構成(図1には示されていない)から送信される受信コイル信号が低ノイズ増幅器(LNA)74に供給され、それがプリアンプとして機能するとともにその増幅率はプロセッサ60によりPAL要素68を介して制御あるいは可変設定される。増幅器74によって増幅された信号が共振フィルタ78を通過し、例えば18ビットの設計とすることができるA/Dコンバータ80内でデジタル化された後処理あるいは評価のためにPAL要素68ならびにプロセッサ60に供給される。この方式によって受信コイル信号からプロセッサ60および/または外部のPC(パーソナルコンピュータ)64等の形式で構成することができる評価ユニットによって評価するための有効信号が形成される。
【0018】
さらに、このシステムは送信コイルと受信コイル(図示されていない)を有する距離センサ82を備えることができ、この距離センサ82の受信コイル信号から被検体とプローブ11の間の距離の大きさを示す距離信号が形成される。そのため距離センサ82の送信コイルのための駆動回路84が設けられ、その駆動回路が電流センサ86を備えるとともにPAL要素68から入力が行われる。距離センサ82の受信コイル信号は、距離信号の増幅、オフセット、ならびに整流を行うよう作用するユニット88に供給される。このユニット88は増幅器74と同様にPAL要素68によって制御される。上記のように処理された距離信号は、例えば16ビットで設計することができるA/Dコンバータ90を介して評価のためにPAL要素68およびプロセッサ60に供給される。距離センサ82は複数個設けることができる。
【0019】
要素68,70,74,76,78,80、および場合によって60、さらに要素84,86,88ならびに90は、受信コイル信号から評価ユニットによる評価のための有効信号を形成する信号処理ユニットの一部である。
【0020】
プロセッサ60内に自己検査ユニット62が設定されており、それが例えばシステムの起動の度またはPC64および/またはタッチディスプレイ65等のユーザインタフェースを介した要求に応じてフロントエンドの信号処理ユニットの信号処理機能の体系的かつ定量的な検査ならびに距離センサ82とプローブ11の体系的かつ定量的な検査を自律的に実施する。
【0021】
信号処理ユニットの検査のために3個のスイッチ63,67,69を備えた回路構成66が設けられ、それがプローブ11の送信コイルのための信号をその送信コイルを迂回して周期性の入力信号として直接信号処理ユニット、すなわち増幅器74の入力側に入力するように自己検査ユニット62によって操作され得る(その際スイッチ63および67が開放されスイッチ69は閉じられる)。
【0022】
自己検査に際して自己検査ユニット62は送信コイルのための信号を周波数と振幅に関して変化させるように作用し、それにより測定された増幅器74の増幅率と測定された周波数フィルタ78の遮断周波数とスルーレートが所与の仕様の範囲内に収まっているかどうかを検査し、仕様を満たしていない場合にユーザインタフェース64あるいは65に適宜なエラー信号が発信される。
【0023】
この装置は多チャネル式に構成することができ、その場合送信コイル駆動回路70とプローブ11と自己監視回路構成66が各チャネル対して1つずつ設けられ、増幅器74にマルチプレクサ76が前置接続される(従って各送信コイルに対して固有の周波数が存在する)。
【0024】
駆動回路84とユニット88の間に3個のスイッチ89,91,93を備えた自己検査回路構成92が設けられ、それがユニット88あるいはA/Dコンバータ90の自己検査を実施するように自己検査ユニット62によって操作可能であり(その際スイッチ89および91が開放されスイッチ93は閉じられる)、そこで送信コイル駆動回路84によって発信された信号を距離センサ82の送信コイルを迂回して直接ユニット88の入力側に供給しその際にコイル駆動回路信号の周波数と振幅を自己検査ユニット62によって体系的に変化させることによって前記の自己検査を実施する。
【0025】
A/Dコンバータ90にはマルチプレクサ94が前置接続され、それにユニット88の出力信号に加えて電流センサ72の電流信号と電流センサ86の電流信号が供給され、この方式によって電流センサ信号が評価のために自己検査ユニット62に供給される。電流センサ72あるいは86によって検出された送信コイル電流と送信コイル電圧から自己検査ユニット62によって当該送信コイルの複素インピーダンスを算定して監視することができ、必要に応じてユーザインタフェース64あるいは65を介してエラー信号を発信することができる。送信コイル電圧は“1”あるいは“3”の参照符号で示された位置で測定され、マルチプレクサ94とA/Dコンバータ90を介してPAL要素に供給される。
【0026】
さらに、自己検査ユニット62によってプローブ11の受信コイルの不正電圧(差動コイルの場合のみ不正電圧が生じ得る)の監視を実施することができる(両方のコイルが正確に同一であることはあり得ないので全ての差動コイル構成においてコイル不正電圧が発生し得る)。
【0027】
不正電圧は受信信号からハイパスフィルタを使用して検出することができ;ハイパスフィルタ前後の電圧の差が不正電圧を示す。
【0028】
自己検査ユニット62は、送信コイルと受信コイルの長期間変化の監視を可能にするために送信コイル電流と受信コイル不正電圧を時間に対する関数として記憶するように構成することが好適である。この監視はシステムが誘導式粒子計数装置として構成されている場合にコイルを容易には取り外し検査することができないため特に重要となる。
【0029】
さらに自己検査ユニット62は、プローブ11の代わりに使用される検定された校正標準96を使用して信号処理回路の校正を可能にするように構成される。前記校正標準96は入力側が送信コイル駆動回路70に接続され、出力側はマルチプレクサ76あるいは増幅器74に接続される。校正標準96が例えば多様な抵抗器等の校正の進行中に切り換えられる複数の基準要素を有する場合、校正標準96は基準要素の適宜な切換えを行うためにプロセッサ60あるいは自己検査ユニット62と結合される例えばICバス等の接続端子98を備えることができる。
【0030】
参照符号“2”および“4”で示された点が増幅器74あるいはユニット88の入力チャネルの前の直接的な電圧測定を可能にする。それによって例えば、該当するコイルの代わりに設定された基準要素あるいは校正標準96を介した電圧降下を直接測定することが可能になる。
【0031】
好適には校正標準が少なくとも1つの校正された測定抵抗を含んだ少なくとも1つのRC回路を備えてなり、それによって信号処理回路のA/Dコンバータをその精度に関して検査することができる。正確に既知であるRC回路の遮断周波数を利用してプロセッサ60のサンプリング速度を検査することもできる。校正標準の測定抵抗は障害を抑制するためにローパスフィルタとして設けられる。これが基準要素としてA/Dコンバータ80の入力に所定の電圧が形成されるよう作用し、それによってさらにサンプリング速度の不要な変動も検出することができる。
【0032】
校正は例えば毎年1回実施することができる。
【0033】
校正標準96は、校正に際して初めて測定装置上の所定の場所に接続される測定独立したユニットとすることができる。この実施形態は認定された校正検査場により簡便な方式で校正標準の校正機能を検査することが可能になるという利点を有する。
【0034】
それに代えて、校正標準96を例えば測定装置の回路基板上に設けられ必要に応じて所定のコイルに代えて接続される構成要素等の測定装置の一部として形成することもできる。この実施形態は校正の準備のために測定装置を開放することが不要になるという利点を有する。勿論この場合校正標準の校正機能の検査は不可能になる。
【0035】
校正標準96は特に調節可能なプリアンプ74の校正のために有用である。経済的な理由から校正標準96が1個の抵抗のみあるいは少数の抵抗のみを有する場合、以下のように機能することができる。校正標準96のRC回路が送信コイル駆動回路70から固定的な信号電圧を受信し、その電圧は増幅器74が最も鈍感な設定であってもA/Dコンバータ80によって所要の精度をもって正弦波信号をデジタル変換し得る程に高いものになる。PAL要素68によって増幅率が高められるといずれかの時点で正弦波が切除されるが、その切除された正弦波を例えば曲線あてはめ計算等の数学的近似法によって再生することができ、その結果から実際の信号の振幅を検出することができる。この方式の前提条件は、使用される電子回路がラッチアップ現象を伴わないことと例えばA/Dコンバータ80の入力段が過電圧による破壊から保護されていることである。
【0036】
例えば以下の正弦波の曲線あてはめ計算の式を解明することができる:
A0*n+A1*[sin(x)]+A2*[cos(x)]=[yi]
A0*[sin(x)]+A1*[sin(x)]+A2*[sin(x)*cos(x)]=[yi*sin(x)]
A0*[cos(x)]+A1*[sin(x)*cos(x)]+A2*[cos(s)]=[yi*cos(x)]
yiを測定値、
y(i)=A0+A1*sin(x)+A2*cos(x)、
x=2*π*f*i*dt
とし、fは周波数を示す。角括弧は数学統計上一般的な変数iを0からnまで変化させた場合の総和を示す。ここで許容範囲外にある測定値、すなわち“切除された”数値は使用することができない。xは実角度を示す。これは等距離である必要はない。
【0037】
A1とA2の数値計算によって元の振幅A=SQRT(A1*A1+A2*A2)と位相ずれPHI=arctan(A2/A1)が得られる。
【0038】
上述の信号再生は可変増幅器74の検査のみに使用可能なものではなく、何らかの理由によってA/Dコンバータを過励振する受信コイル信号が発生した場合に渦電流測定全般においても使用可能であることが理解される。さらに、この種の信号再生によってソフトウェアを使用して測定範囲を拡大することができる。
【0039】
前述した可変増幅器74の比較的単純な検査によって例えば各時点の増幅率に対する補正値を記憶して適用することが可能になり、それによって所与の性能の増幅器を低コストに構成することが可能になる。
【0040】
共振フィルタ(あるいはハイパスフィルタとローパスフィルタの組合せ)78のような共振フィルタは可変の送信周波数に対応して動作することができるように設けられ、その際好適なサンプリング速度は被検体速度、コイル作用範囲、および送信周波数の関数から得られる。前述したように、入力電圧の周波数および振幅を変化させる自己検査によってフィルタの遮断周波数とスルーレートを判定することができる。
【0041】
前述した自己検査ユニット62を使用した送信および受信コイルのインピーダンス測定によってセンサ装置の変化、特に破壊を早期に検知することができ、その結果破壊されたセンサ装置によって検査される時間が可能な限り排除され、従って測定の信頼性が高まる。
【0042】
前述した自己検査ユニット62による受信コイル不正電圧の測定によって例えば特定の被検体材料との組合せによる過励振問題を早期に検知することが可能になり、それに対して予防措置を講じて検査の信頼性を高めることができる。
【0043】
自己検査ユニット62と校正標準96を使用したシステムの校正の可能性によって現場での簡便なシステムの校正が可能になり、特にシステムの分解および検査アダプタへの取り付けが不要となる。また、検査装置へのフロントエンドの適合が不要となるためシステムの製造あるいは保守が低コストになる。
【0044】
校正標準96はそれ自体独立したユニットとして形成することもでき、その場合は勿論前述と同様に認定された校正検査場で定期的に校正することができる。
【0045】
図2は、移動する被検体内の欠陥を検出するために適用されるもので図1に関連して記述したA/Dコンバータ段の過励振に際しての信号再生を含んだデジタル復調方法を使用する、本発明に係る誘導測定装置の一例を示したブロック線図である。自己検査機能を除いてこの種の装置は国際公開第2006/007826A1号パンフレットに記載されている。ここで可変速度νをもってプローブ11上を直線的に通過移動する例えば段付き鋼材等の半加工材料の形式の被検体13が検査され、その際例えば前記速度νに実質的に比例する信号を発信することが可能な速度検出器21によって速度を検出することができる。これは例えば被検体13が5mm前進する毎に1個のパルスを含んだ矩形信号(場合によっては前進と後退を区別するためにダブルトラックとされる)とすることができる。
【0046】
プローブ11は送信コイル18の形式の送信器と受信コイル15を備える。送信コイル18は少なくとも1つの所与の搬送周波数を有する電磁性交流磁界によって被検体13内に渦電流を誘導するよう作用し、それがさらに受信コイル15内に前記送信コイル18の搬送周波数を有する搬送波を含んだプローブ信号として機能する交流電圧を誘導し、ここで受信コイル15の作用範囲WB内に欠陥23が到達するとその欠陥23によってプローブ信号の振幅と位相が変調される。受信コイル15は差動コイル、すなわち逆方向に巻かれた2本の導線からなるコイルとして形成することが好適であり、それが欠陥23の存在による被検体の電気特性の変化のみに反応する。差動コイルは被検体13内の急激な変化を検出するために特に適している。しかしながらそれに代えて、同方向に巻かれた複数の導線からなり特に長期で均一な被検体13内の変化を検出するために適しているアブソリュートコイルを受信コイル15として使用することもできる。
【0047】
送信コイル18のための電圧は、例えばタイマーユニット44によって形成されたバイナリ信号を基準周波数として発生(発電)器48に送信しそれを元に矩形信号あるいは正弦波信号を形成して曲線発生器(KF)40を通過させた後送信コイル18に供給する前に電力増幅器42によって増幅することによって形成することができる。好適にはその信号は正弦波の形式で単純なケースにおいては単一の搬送周波数を有するものとされるが、同時に複数の搬送周波数を有するものおよび/または正弦波から顕著に逸脱した搬送信号による測定も原則的に可能である。通常搬送周波数は1kHzないし5MHzの範囲となる。
【0048】
原則的に送信コイルをデジタル信号に基づいてパルス幅変調によって駆動することもできる。このことは駆動回路段内の出力損失を大幅に低減できるという利点を有する。
【0049】
受信コイル15によって受信されたプローブ信号はA/Dコンバータ段35に供給される前にバンドパスフィルタ(BP)19と調節可能なプリアンプ17を通過する。このバンドパスフィルタ19は一方でA/Dコンバータ段35による信号のデジタル化に関して(アンチ)エイリアシングフィルタとして機能するとともに他方で低周波および高周波妨害信号を消去するように機能する。調節可能なプリアンプ17はアナログのプローブ信号の振幅をA/Dコンバータ段35に最適な振幅に変換するよう機能する。
【0050】
A/Dコンバータ段35は、並列に接続された2個のA/Dコンバータ32および34を含み、それらは大きなビット幅、特に少なくとも16ビット、特に少なくとも22ビットのビット幅を有しまた1秒間に少なくとも500回のA/D変換を行うことができるものとされる。A/Dコンバータ32,34はフラッシュコンバータあるいはSAR(逐次比較レジスタ)コンバータとして形成することが好適である。
【0051】
2個のA/Dコンバータを備えた実施形態は1つの例である。重要なことは欠陥信号が直交的に走査されることである。原則的にこの機能は単一のコンバータによって実施することもできる。
【0052】
A/Dコンバータ35は、前記のタイマーユニット44、余弦発生器48、それに並列に配置された正弦発生器46、ならびに周波数分割器30を備えた制御装置37によってトリガされる。周波数分割器30の入力側には、余弦発生器48によって形成され送信コイル18の供給信号の搬送周波数を有する信号と余弦発生器48の信号と等しいが90°の位相差を有する正弦発生器46の信号が存在する。周波数分割器30内においてそれらの両方の信号が周波数について整数nによって分割される。それによって周波数が低減された出力信号がA/Dコンバータ32あるいはA/Dコンバータ34をトリガするように作用する。分割器30に対する数値nの選択はデジタル信号プロセッサ60によって欠陥周波数、すなわち実際の被検体速度νと受信コイル15の作用幅WBの商に相関して実施される。A/Dコンバータ段35のトリガ速度が少なくとも欠陥中心周波数に略比例することを達成できるように、nを欠陥中心周波数に反比例して選択することが好適である。この方式によって、第1の近似において作用幅WBが一定であると仮定した場合に被検体速度νが高くなりそれに従って欠陥周波数も高くなるとそれに対応してアナログのプローブ信号がより頻繁に走査されることが達成される。
【0053】
トリガ信号が余弦発生器48と正弦発生器46の出力信号に対して可能な限り遅延せず(すなわち同期して)かつ位相ジッタを伴わずにA/Dコンバータ段35に到達することが保証されるように、分割器30をPAL(プログラマブルアレーロジック)チップとして形成することが好適である。
【0054】
分割器30の両方の入力信号の間の前記の位相ずれのため、両方のA/Dコンバータ32,34のトリガも90°の固定された位相ずれをもって実施される。この方式によってアナログのプローブ信号を2成分、すなわち振幅および位相の両方に関して評価することができる。A/Dコンバータ段35のトリガ信号と送信コイル18の信号の間の位相遅延は可能な限り小さくすべきであり、さらにその際にいわゆる位相ジッタも防止し、すなわち位相関係を時間的に可能な限り一定にすべきであることが理解される。
【0055】
図示されている制御装置37によってアナログのプローブ信号が各A/Dコンバータ32あるいは34によって搬送周波数の全周期1回につき最大1回走査されることが保証される(このケースの場合nが1である)。実際の欠陥周波数すなわち被検体速度νに応じてnを1よりも大幅に大きくすることができ、その場合搬送周波数の全周期n回につき1回のみの走査が実施される。
【0056】
前述したように走査は直交的に実施される。0°と90°で走査すれば欠陥信号の複素成分が得られる。180°と270°においても同じ成分が反転して得られる。この成分の反転によって平均値を形成し従って高められた走査速度で動作することができる。このことはノイズおよび入力フィルタの設計に関して有利になる。
【0057】
A/Dコンバータ段35の復調されたデジタルの2チャネル出力信号は、信号プロセッサ60によって実施することができるとともに欠陥信号の帯域幅の範囲外にある障害信号を消去するよう作用するデジタルバンドパスフィルタ52を通過する。欠陥に関する情報を含んでいる信号成分が消去されることを防止するために、ハイパスフィルタ(ソフトウェアフィルタ)の遮断周波数は欠陥周波数の1/4よりも小さくなるように選択することが好適であり、一方ローパスフィルタの遮断周波数は少なくとも欠陥周波数の2倍となるように選択することが好適である。
【0058】
デジタルバンドパスフィルタ52は、A/Dコンバータ段35の走査速度すなわちそのトリガ速度でクロックされ、その結果デジタルバンドパスフィルタの遮断周波数がクロック速度に比例するとともにそのクロック速度が制御装置37によって設定される走査速度を通じて欠陥周波数の変化に自動的に適応するため欠陥周波数の変化、すなわち被検体速度νの変化に際してバンドパスフィルタの遮断周波数が自動的に欠陥周波数と連動するという大きな利点が得られる。
【0059】
このことは同じく送信周波数が変化した際にも該当する。それによって多様なフィルタ段に関するデジタルフィルタリングの労力が削減される。
【0060】
欠陥周波数の判定のために必要な作用幅WBに関する情報は信号プロセッサ60に手動で入力するか、または例えば欧州特許第0734522B1号明細書に記載されているようにプローブ11によって直接作成することができる。
【0061】
測定システムも同様に、被検体速度νは一定に保持されるが受信コイル15が異なった作用幅WBを有するものと交換されたことによって生じる欠陥周波数の変化に応答することが理解される。
【0062】
被検体13の欠陥23を検出および位置特定するためにデジタルバンドパスフィルタ52によるフィルタリング後に得られる有効信号が既知の方式によって評価ユニット50内で評価され、その際通常欠陥信号の振幅ならびに位相情報の両方が使用される。
【0063】
特に比較的大きなnの数値、すなわち比較的小さな数の搬送周波数の全周期が走査される場合、走査中に例えば送信コイル18および/または評価電子回路、すなわち特に信号プロセッサ60を停止あるいは低出力状態にして電力消費を削減することができ、このことは特に携帯型の測定装置について効果的である。
【0064】
プロセッサ60内において図1に関して説明した監視および校正機能のための自己検査ユニット62が実行される。従って、自己検査ユニット62はプローブ11の送信コイル18のための信号が送信コイル18と受信コイル15を迂回して周期性の入力信号として信号処理機構、すなわちバンドパスフィルタ19の入力側に直接供給されるようにスイッチ63,67,69からなる回路構成66を制御する。
【0065】
図3ないし図5には、流動する液体中の導電性の粒子の検出とデジタル復調方法のために使用される、本発明に係る誘導測定装置の一例が示されている。自己検査機能を除いてこの種の装置は独国特許出願第102007039434.0号明細書に記載されている。原則的に信号処理、および特にA/Dコンバータ段の過励振に際しての信号再生、ならびに自己検査機能は前述の図2に示された解決方式と同様に構成されている。
【0066】
図4によれば、管部材10が第1の誘導受信コイル12とそれから軸方向に離間して配置された第2の誘導受信コイル14によって包囲されており、従ってこの管部材10内を流動する液体16がコイル12および14の中を軸方向に貫流する。両方のコイル12,14の間の軸方向の距離とコイル12,14の軸方向の寸法は例えば2mmとすることができる。両方の受信コイル12,14はそれらの受信コイル12,14と同軸に配置されていてより大きな直径を有する送信コイル18によって外側で包囲されている。送信コイル18の軸方向寸法は両方の受信コイル12,14が完全に送信コイル18によって遮蔽されるように設定される。好適には送信コイル18の軸方向の延伸は受信コイル12,14の組合せの軸方向の延伸、すなわちコイル12,14の長さと離間距離の和の2倍の大きさにされる。コイル12,14,18は管部材10を被包する外装材22内に配置されプローブ11を形成している。
【0067】
典型的に管部材10は機械の潤滑剤循環系の一部とすることができ、その場合液体16は潤滑剤とされ、その中に特に機械の可動部分から発生した摩耗による金属粒子が存在する。主流路内の潤滑剤流量の典型的な数値は10L/分である。流量が大幅に大きい場合は主流路ではなく支流内で測定することが好適である。
【0068】
図5によれば、両方の受信コイル12,14が差動コイル15として減磁的に接続、すなわち互いに逆方向に配置され、従って両方のコイル12,14内に同じ大きさであるが逆の極性を有する電圧がそれぞれ誘導される。全体として送信コイル18と受信コイル12,14が変圧器の構成を有しており、その際送信コイル18が一次側を形成し受信コイル12,14は二次側を形成している。その種の構成において変圧器の芯はコイル12,14,18を貫通する材料あるいは媒体、すなわち空気、外装材22、管部材10、ならびに粒子20を含んだ液体16によって形成される。
【0069】
粒子20によって発生するコイル12,14内のインピーダンス相違、すなわち両方のコイル12,14のいずれかの一方の中の粒子20の存在によって発生する両方のコイル12,14間のインピーダンスの差(粒子20はコイル12,14間の距離より大幅に小さい)はコイル12およびコイル14によって発信される測定信号に反映される。
【0070】
図3にはプローブ11を使用した本発明に係る渦電流測定装置の一構成例が示されている。
【0071】
送信コイル18は少なくとも1つの所与の搬送周波数を有する電磁性交流磁界によって粒子20内に渦電流を誘導するように作用し、それがさらに差動コイルとして形成された受信コイル15内に前記送信コイル18の搬送周波数を有する搬送波を含んだプローブ信号として機能する交流電圧を誘導し、ここで受信コイル15の作用範囲WB内に粒子20が到達するとその粒子によってプローブ信号の振幅と位相が変調される。
【0072】
送信コイル18のための電圧は、例えばタイマーユニット44によって形成されたバイナリ信号を基準周波数として発生(発電)器48に送信しそれを元に矩形信号あるいは正弦波信号を形成して曲線発生器(KF)40を通過させた後送信コイル18に供給する前に電力増幅器42によって増幅することによって形成することができる。好適にはその信号は正弦波の形式で単純なケースにおいては単一の搬送周波数を有するものとされるが、同時に複数の搬送周波数を有するものおよび/または正弦波から顕著に逸脱した搬送信号による測定も原則的に可能である。好適には搬送周波数は5kHzないし1MHzの範囲となる。
【0073】
受信コイル15によって受信されたプローブ信号はA/Dコンバータ段35に供給される前にバンドパスフィルタ19と調節可能なプリアンプ17を通過する。このバンドパスフィルタ19は一方でA/Dコンバータ段35による信号のデジタル化に関してローパスフィルタによって(アンチ)エイリアシングフィルタとして機能するとともに他方でハイパスフィルタによって低周波妨害信号を消去するように機能する。調節可能なプリアンプ17はアナログのプローブ信号の振幅をA/Dコンバータ段35に最適な振幅に変換するよう機能する。
【0074】
A/Dコンバータ段35は並列に接続された2個のA/Dコンバータ32および34を含み、それらは大きなビット幅、特に少なくとも16ビット、特に少なくとも22ビットのビット幅を有しまた1秒間に少なくとも500回のA/D変換を行うことができるものとされる。A/Dコンバータ32,34はフラッシュコンバータあるいはSAR(逐次比較レジスタ)コンバータとして形成することが好適である。
【0075】
しかしながら、追加的なD/Aコンバータおよび減算器によって不正電圧補償が実施される場合A/Dコンバータのビット幅は12ビットで充分である。
【0076】
A/Dコンバータ35は、前記のタイマーユニット44、余弦発生器48、それに並列に配置された正弦発生器46、ならびに周波数分割器30を備えた制御装置37によってトリガされる。周波数分割器30の入力側には、余弦発生器48によって形成され送信コイル18の供給信号の搬送周波数を有する信号と余弦発生器48の信号と等しいが90°の位相差を有する正弦発生器46の信号が存在する。周波数分割器30内においてそれらの両方の信号が周波数について整数nによって分割される。それによって周波数が低減された出力信号がA/Dコンバータ32あるいはA/Dコンバータ34をトリガするように作用する。分割器30に対する数値nの選択はデジタル信号プロセッサ60によって液体16の流速ν、すなわち粒子20の速度と受信コイル15の作用幅WBの商として得られる“粒子周波数”に相関して実施される。A/Dコンバータ段35のトリガ速度が少なくとも粒子周波数に略比例することを達成できるように、nを粒子周波数に反比例して選択することが好適である。この方式によって、第1の近似において作用幅WBが一定であると仮定した場合に流速/粒子速度νが高くなりそれに従って粒子周波数も高くなるとそれに対応してアナログのプローブ信号がより頻繁に走査されることが達成される。
【0077】
トリガ信号が余弦発生器48と正弦発生器46の出力信号に対して可能な限り遅延せず(すなわち同期して)かつ位相ジッタを伴わずにA/Dコンバータ段35に到達することが保証されるように、分割器30をPAL(プログラマブルアレーロジック)チップとして形成することが好適である。
【0078】
分割器30の両方の入力信号の間の前記の位相ずれのため、両方のA/Dコンバータ32,34のトリガも90°の固定された位相ずれをもって実施される。この方式によってアナログのプローブ信号を2成分、すなわち振幅および位相の両方に関して評価することができる。A/Dコンバータ段35のトリガ信号と送信コイル18の信号の間の位相遅延は可能な限り小さくすべきであり、さらにその際にいわゆる位相ジッタも防止し、すなわち位相関係を時間的に可能な限り一定にすべきであることが理解される。
【0079】
図示されている制御装置37によってアナログのプローブ信号が各A/Dコンバータ32あるいは34によって搬送周波数の全周期1回につき最大1回走査されることが保証される(このケースの場合nが1である)。実際の粒子周波数すなわち粒子速度νに応じてnを1よりも大幅に大きくすることができ、その場合搬送周波数の全周期n回につき1回のみの走査が実施される。
【0080】
しかしながらいずれのケースにおいても各A/Dコンバータ32,34について全周期1回につき最大でも1回しか走査されないため、そのアンダーサンプリングによってデジタル信号から搬送波の周波数、すなわち搬送周波数が判定され、すなわちアンダーサンプリングによってアナログのプローブ信号の復調が実施される。
【0081】
粒子信号内に含まれている情報をさらに確実な粒子検出のために充分な方式で得るために、意義のある粒子信号が観察される時間間隔、すなわち粒子20の一点が受信コイル15の作用幅WBを介して移動する時間間隔、言い換えると実質的に粒子周波数の逆数に相当する時間間隔の間に少なくとも5回、特に少なくとも20回の走査が各A/Dコンバータ32あるいは34によって実施されるようにnを選択することが好適である。通常そのような時間間隔の間に50回、あるいは最高でも100回を超える走査は不要であり、また最少は10回の走査である。
【0082】
搬送波の周波数は少なくとも粒子周波数の10倍となるように選択する必要があり、そうでないと粒子信号に含まれる搬送波の全周期の数が少な過ぎて粒子検出の再現性が困難になるためである。
【0083】
A/Dコンバータ段35の復調されたデジタルの2チャネル出力信号は、信号プロセッサ60によって実施することができるとともに粒子信号の帯域幅の範囲外にある障害信号を消去するよう作用するデジタルバンドパスフィルタ52を通過する。粒子移動に関する情報を含んでいる信号成分が消去されることを防止するために、ハイパスフィルタの遮断周波数は粒子周波数の1/4よりも小さくなるように選択することが好適であり、一方ローパスフィルタの遮断周波数は少なくとも粒子周波数の2倍となるように選択することが好適である。
【0084】
デジタルバンドパスフィルタ52は、A/Dコンバータ段35の走査速度すなわちそのトリガ速度でクロックされ、その結果デジタルバンドパスフィルタの遮断周波数がクロック速度に比例するとともにそのクロック速度が制御装置37によって設定される走査速度を通じて粒子周波数の変化に自動的に適応するため粒子周波数の変化、すなわち粒子速度νの変化に際してバンドパスフィルタの遮断周波数が自動的に粒子周波数と連動するという大きな利点が得られる。
【0085】
粒子周波数の判定のために必要な作用幅WBに関する情報は信号プロセッサ60に手動で入力するか、または例えば欧州特許第0734522B1号明細書に記載されているようにプローブ11によって直接作成することができる。
【0086】
測定システムも同様に、粒子速度νは一定に保持されるが受信コイル15が異なった作用幅WBを有するものと交換されたことによって生じる粒子周波数の変化に応答することが理解される。
【0087】
特に比較的大きなnの数値、すなわち比較的小さな数の搬送周波数の全周期が走査される場合、走査中に例えば送信コイル18および/または評価電子回路、すなわち特に信号プロセッサ60を停止あるいは低出力状態にして電力消費を削減することができ、このことは特に携帯型の測定装置について効果的である。
【0088】
粒子20の移動を検出するためにデジタルバンドパスフィルタ52によるフィルタリング後に得られる有効信号が既知の方式によって評価ユニット50内で評価され、その際粒子信号の振幅ならびに位相情報の両方を使用することができる。
【0089】
液体16中の粒子濃度、従って場合によっては機械の状態を判定するために、検出された移動粒子の計数を行うように評価ユニット50を構成することが好適である。
【0090】
原則的に差動コイルにおいては較差発生の結果(差動コイルの個々のコイルは実用上正確に同一ではありえない)本来の欠陥信号を例えば複数桁程(例えば100倍ないし30000倍)も上回るコイル不正電圧が発生し得る。それによって生じる本来の有効信号に比べて比較的大きな受信コイル信号の振幅のため電子回路、特にA/Dコンバータに対し特にその分析精度に関して高い性能が要求される。
【0091】
プロセッサ60内において図1に関して説明した監視および校正機能のための自己検査ユニット62が実行される。従って、自己検査ユニット62はプローブ11の送信コイル18のための信号が送信コイル18と受信コイル15を迂回して周期性の入力信号として信号処理機構、すなわちバンドパスフィルタ19の入力側に直接供給されるようにスイッチ63,67,69からなる回路構成66を制御する。
【符号の説明】
【0092】
10 管部材
11 プローブ
12,14 受信コイル
13 被検体
15 受信コイル
16 液体
17 プリアンプ
18 送信コイル
19 バンドパスフィルタ
20 粒子
21 速度検出器
22 外装材
23 欠陥
30 周波数分割器
32,34,80,90 A/Dコンバータ
35 A/Dコンバータ段
40 曲線形成器
42 電力増幅器
44 タイマーユニット
46 正弦発生器
48 余弦発生器
50 評価ユニット
52 デジタルバンドパスフィルタ
60 デジタル信号プロセッサ
62 自己検査ユニット
63,67,69,89,91,93 スイッチ
64 PC
65 タッチディスプレイ
66 回路構成
68 PAL要素
70 送信コイル駆動回路
72 電流センサ
74 増幅器
76,94 マルチプレクサ
78 共振フィルタ
82 距離センサ
84 駆動回路
86 電流センサ
88 ユニット
92 自己検査回路構成
96 校正標準
98 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置に対して相対的に移動する被検体(13)内の欠陥(23)を特に渦電流を使用して非破壊および非接触式に検出する方法であり、
送信コイル構成(18)を使用して前記被検体に周期性の電磁交流磁界を印加し;
受信コイル構成(15)が前記被検体内の欠陥を捕捉した際にその欠陥によって振幅および/または位相が変調される搬送波を含んだ周期性の電気信号を前記受信コイル構成によって検出し;
受信コイル信号をA/Dコンバータ段によってデジタル化し;
信号処理ユニット(17,19,35,37,52,60,68,74,76,78,80,88,90,94)を使用してデジタル化された受信コイル信号から有効信号を形成し;
前記被検体内の欠陥を検出するために評価ユニット(50,60,64)を使用して前記有効信号を評価する方法において、
デジタル化された受信コイル信号の曲線形状を信号処理ユニットによって監視することにより受信コイル信号によるA/Dコンバータ段の過励振が判定された場合にA/Dコンバータ段によって切除された受信コイル信号の部分をデジタル化された受信コイル信号内に数学的近似法によって再生することを特徴とする方法。
【請求項2】
A/Dコンバータ段(35)をトリガ可能なものとし、復調された有効信号を得るためにデジタル化および場合によって再生された受信コイル信号を周波数フィルタ(52,78)によってフィルタリングし、その際送信コイル構成(18)のための信号の搬送波の周波数のn番目の整数分割によってA/Dコンバータ段をトリガすることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
nは被検体(13)と受信コイル構成(15)の間の相対速度と受信コイル構成の作用幅の商として得られる欠陥周波数に相関して選択し、周波数フィルタも前記欠陥周波数に相関して設定することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
管部材(10)内を流速(ν)で流動する液体中の導電性の粒子(20)を検出する方法であり、
前記粒子内に渦電流を誘導するために送信コイル構成(18)を使用して前記液体に周期性の電磁交流磁界を印加し;
受信コイル構成(15)の作用幅内に前記粒子が到達した際にその粒子によって振幅および/または位相が変調される搬送波を含んだ周期性の電気信号を前記受信コイル構成を使用して前記渦電流に従って検出し;
受信コイル信号をA/Dコンバータ段によってデジタル化し;
信号処理ユニット(17,19,35,37,52,60,68,74,76,78,80,88,90,94)を使用してデジタル化された受信コイル信号から有効信号を形成し;
前記管部材内の導電性の粒子の通過を検出するために評価ユニット(50,60,64)を使用して前記有効信号を評価する方法において、
デジタル化された受信コイル信号の曲線形状を信号処理ユニットによって監視することにより受信コイル信号によるA/Dコンバータ段の過励振が判定された場合にA/Dコンバータ段によって切除された受信コイル信号の部分をデジタル化された受信コイル信号内に数学的近似法によって再生することを特徴とする方法。
【請求項5】
切除された受信コイル信号の部分を曲線あてはめ計算によって再生することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
受信コイル信号は正弦波形状の振幅変移を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
信号処理ユニット(17,19,35,37,52,60,68,74,76,78,80,88,90,94)の信号処理機能の体系的かつ定量的な検査および/または送信コイル構成(18)および/または受信コイル構成(15)の体系的かつ定量的な検査を自律的あるいは外部要求に応じて実施し、および/または前記送信コイル構成および/または前記受信コイル構成を校正標準(96)によって代替して前記信号処理ユニットの校正を実施することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
信号処理ユニット(17,19,35,37,52,60,68,74,76,78,80,88,90,94)の信号処理機能の体系的な検査および/または前記送信コイル構成(18)および/または受信コイル構成(15)の体系的かつ定量的な検査が信号処理ユニットの起動の度に自律的に実施されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
校正標準(96)が少なくとも1個のRC回路を含むとともに信号処理ユニット(17,19,35,37,52,60,68,74,76,78,80,88,90,94)は受信コイル信号のための調節可能なプリアンプ(17,74)を含んでなり、その際前記RC回路に固定的な正弦電圧をかけその振幅を前記プリアンプの最も低感度の設定においても正弦波信号がA/Dコンバータ(80)によって所要の精度でデジタル変換され得るように選定することによって前記プリアンプを検査し、従ってプリアンプの増幅率をより高くすると正弦波信号が過励振され、前記プリアンプをより敏感な設定にした場合にA/Dコンバータ段によって切除された受信コイル信号の部分を再生することによって実際の信号振幅を判定することを特徴とする請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
装置に対して相対的に移動する被検体(13)内の欠陥(23)を非破壊および非接触式に検出する装置であり、
前記被検体に周期性の電磁交流磁界を印加するための少なくとも1個の送信コイル(18)からなる送信コイル構成(18)と、
前記被検体内の欠陥を捕捉した際にその欠陥によって振幅および/または位相が変調される搬送波を含んだ周期性の電気信号を検出するための少なくとも1個の受信コイル(12,14,15)からなる受信コイル構成(15)と、
受信コイル信号をデジタル化するためのA/Dコンバータ段と、
デジタル化された受信コイル信号から有効信号を形成するための信号処理ユニット(17,19,35,37,52,60,68,74,76,78,80,88,90,94)と、
被検体内の欠陥を検出するために前記有効信号を評価する評価ユニット(50,60,64)を備えてなる装置において、
デジタル化された受信コイル信号の曲線形状を信号処理ユニットによって監視することにより受信コイル信号によるA/Dコンバータ段の過励振が判定された場合にA/Dコンバータ段によって切除された受信コイル信号の部分をデジタル化された受信コイル信号内に数学的近似法によって再生するよう前記信号処理ユニットを構成したことを特徴とする装置。
【請求項11】
装置を多チャネル式に構成し、送信コイル構成(18)および受信コイル構成(15)がいずれも特定の測定周波数に割り当てられた複数のコイルをそれぞれ備えることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
管部材(10)内を流速(ν)で流動する液体(16)中の導電性の粒子(20)を検出する装置であり、
前記粒子内に渦電流を誘導するために前記液体に周期性の電磁交流磁界を印加するための少なくとも1個の送信コイルからなる送信コイル構成(18)と、
前記粒子が受信コイル構成の作用幅内に到達した際にその粒子によって振幅および/または位相が変調される搬送波を含んだ周期性の電気信号を前記誘導された渦電流に従って捕捉するための少なくとも1個の受信コイル(12,14)からなる受信コイル構成(15)と、
受信コイル信号から有効信号を形成するための信号処理ユニット(17,19,35,37,52,60,68,74,76,78,80,88,90,94)と、
管部材内の導電性粒子の通過を検出するために前記有効信号を評価する評価ユニット(50,60,64)を備えてなる装置において、
デジタル化された受信コイル信号の曲線形状を信号処理ユニットによって監視することにより受信コイル信号によるA/Dコンバータ段の過励振が判定された場合にA/Dコンバータ段によって切除された受信コイル信号の部分をデジタル化された受信コイル信号内に数学的近似法によって再生するよう前記信号処理ユニットを構成したことを特徴とする装置。
【請求項13】
A/Dコンバータ段がその入力に関して過電圧防止手段を備えることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
信号処理ユニット(17,19,35,37,52,60,68,74,76,78,80,88,90,94)の信号処理機能の体系的かつ定量的な検査および/または送信コイル構成(18)および/または受信コイル構成(15)の体系的かつ定量的な検査を自律的あるいは外部要求に応じて実施し、および/または前記送信コイル構成および/または前記受信コイル構成を代替する校正標準(96)によって前記信号処理ユニットの校正を外部要求に応じて実施するように構成された自己検査ユニット(62)を有することを特徴とする請求項10ないし13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
信号処理機能の検査のために送信コイル構成(18)のための信号を周期性の入力信号として直接的に信号処理ユニットに入力するよう信号処理ユニット(17,19,35,37,52,60,68,74,76,78,80,88,90,94)を接続しその際自己検査ユニットが前記入力信号を体系的に変化させるよう自己検査ユニット(62)を構成することを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項16】
信号処理ユニット(17,19,35,37,52,60,68,74,76,78,80,88,90,94)が増幅器(17,74)と周波数フィルタ(19,52,78)を備え、送信コイル構成(18)のための信号の周波数および振幅を変化させることによって測定された増幅器の増幅率ならびに測定された周波数フィルタの遮断周波数およびスルーレートが所与の仕様の範囲内に収まっているかどうかを検査し、仕様を満たしていない場合は適宜なエラー信号を発信するように自己検査ユニットを構成することを特徴とする請求項15記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−271318(P2010−271318A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116806(P2010−116806)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(594144670)プリューフテヒニーク ディーター ブッシュ アクチェンゲゼルシャフト (5)
【Fターム(参考)】