説明

誘導灯点灯装置および誘導灯

【課題】通常時、表示面の輝度を寿命期間に亘って一定にすることのできる誘導灯点灯装置および誘導灯を提供する。
【解決手段】誘導灯点灯装置1は、通常時には、計時手段8が計時した累積点灯時間に応じて発光ダイオード6に流れる順電流を増加させて発光ダイオード6の光出力が一定となるように通常用点灯回路4を制御し、停電時には、バッテリ3からの電源により発光ダイオード6が点灯するようにバッテリ3と非常用点灯回路5を接続させる制御手段9と、発光ダイオード6の異常状態を報知する報知手段10とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常時にバッテリから給電されて半導体発光素子を点灯する誘導灯点灯装置および誘導灯に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子としての発光ダイオード(LED)は、消費電力が少なく、長寿命であって、灯具を小形にすることができるので、発光ダイオードを用いた誘導灯およびその誘導灯点灯装置が提案されている。例えば、通常時には、商用交流電源を直流電源に変換した常用時電源回路により発光ダイオードを点灯させ、非常時には、バッテリからの電源供給により発光ダイオードを点灯させる誘導灯点灯装置が提案されている(特許文献1参照。)。この従来技術の誘導灯点灯装置は、通常時に、発光ダイオードに短絡異常またはオープン異常が発生すると、定電流回路への電源供給を停止し、非常時に、発光ダイオードに短絡異常が発生すると、定電流回路の保護よりも、誘導灯としての役目を果たすべく定電流回路への電源供給を継続させるものである。
【0003】
従来技術の誘導灯点灯装置のように、通常時に発光ダイオードを点灯させると、非常の発生前から人に対して誘導灯器具の存在、避難口や誘導路などを認識させることができる。ここで、通常時、昼光や周辺の照明器具からの残光により、誘導灯器具の周囲は明るいので、人に避難口や誘導路などを認識してもらうためには、発光ダイオードに大電流を供給し、発光ダイオードの光出力を大きくして、誘導灯器具の表示面を明るくする必要がある。
【特許文献1】特開2006−286339号公報(第9頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の誘導灯点灯装置は、発光ダイオードに短絡異常やオープン異常が発生しなく正常に点灯している場合には、発光ダイオードに直列的に接続されている定電流回路に所定の電圧で電流が流れる。ここで、発光ダイオードは、蛍光ランプと同様に、累積点灯時間にしたがって光束が低下するものである。これにより、誘導灯器具の表示面の輝度が発光ダイオードの累積点灯時間にしたがって低下し、誘導灯器具全体がしだいに暗くなり、人に認識されにくくなるという欠点を有する。
本発明は、通常時、表示面の輝度を寿命期間に亘って一定にすることのできる誘導灯点灯装置および誘導灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の誘導灯点灯装置の発明は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して出力する直流電源回路と;この直流電源回路から出力された直流電圧により充電されるバッテリと;通常時に直流電源回路に接続され、直流電源回路からの電流を所定の電流に調整して半導体発光素子に供給する通常用点灯回路と;交流電源の停電時にバッテリに接続され、バッテリからの電源を半導体発光素子に供給する非常用点灯回路と;通常時に通常用点灯回路により点灯され、停電時に非常用点灯回路により点灯される半導体発光素子と;半導体発光素子の累積点灯時間を計時する計時手段と;通常時には、計時手段が計時した累積点灯時間に応じて半導体発光素子に流れる順電流を増加させて半導体発光素子の光出力が一定となるように通常用点灯回路を制御し、停電時には、バッテリからの電源により半導体発光素子が点灯するようにバッテリと非常用点灯回路を接続させる制御手段と;を具備していることを特徴とする。
本発明および以下の各発明において、特に言及しない限り、各構成は以下による。
【0006】
半導体発光素子は、例えば発光ダイオードや有機EL(エレクトロルミネッセンス)などである。順電流とは、順方向に流れる電流であり、順電圧とは、順電流が流れるように印加される電圧である。
半導体発光素子は、複数個を並列接続、直列接続または直並列接続したもののいずれであってもよい。
【0007】
半導体発光素子は、寿命時間に達するまでに初期電流から定格電流または最大許容電流まで徐々に順電流が増加される。ここで、初期電流は、誘導灯の表示面を明るく照明することができて、寿命期間に亘って流れる電流に設定され、例えば定格電流または最大許容電流の70%の電流値とすることができる。
【0008】
本発明によれば、通常時には、半導体発光素子の光出力が一定となるように累積点灯時間に応じて半導体発光素子に流れる順電流が増加されるので、この順電流の増加期間に亘って半導体発光素子の消費電力が低減されて省電力化が図られ、非常時には、バッテリからの電源により半導体発光素子が点灯されるので、制御手段は、複雑な回路構成とならず、非常灯点灯回路を制御する消費電力が低減される。
【0009】
請求項2に記載の誘導灯点灯装置の発明は、請求項1記載の誘導灯点灯装置において、半導体発光素子は、発光ダイオードからなり;発光ダイオードの順電圧を検出する電圧検出手段と;異常信号に応じて発光ダイオードの異常状態を報知する報知手段と;を具備し、制御手段は、電圧検出手段が検出した順電圧と基準値を比較し、計時手段が計時した累積点灯時間および交流電源の停電の有無に応じて前記基準値を変化させ、前記順電圧が前記基準値の範囲以外となったときに報知手段に異常信号を出力することを特徴とする。
【0010】
発光ダイオードは、順電流が増加されるにしたがい順電圧が増加していくので、制御手段において、当該順電圧と比較される所定値も増加される。また、発光ダイオードは、交流電源の停電時(非常時)、JIL(社団法人 日本照明器具工業会規格)などによる所定の照度および点灯時間を確保するように点灯されるので、通常時の順電流よりも低い順電流が流されるものであり、これに応じて当該順電流が流れるときの順電圧と比較される基準値が減少される。
報知手段は、可視光の出射による他、音声によってもよい。
【0011】
本発明によれば、累積点灯時間および交流電源の停電の有無に応じて発光ダイオードの順電圧と比較される基準値が変化されるので、発光ダイオードの短絡または開放に対する検出の信頼性が向上される。
【0012】
請求項3に記載の誘導灯点灯装置の発明は、請求項2記載の誘導灯点灯装置において、計時手段が計時した累積点灯時間をリセットするリセット手段と;を具備し、制御手段は、前記累積点灯時間のリセットに応じて、発光ダイオードに流れる順電流および電圧検出手段が検出した順電圧と比較される基準値をそれぞれの初期値に設定することを特徴とする。
リセット手段は、例えばスイッチやリモコンなどを用いることができる。
【0013】
累積点灯時間をリセットするのは、通常、発光ダイオードを新品に交換したときである。そして、発光ダイオードの交換は、報知手段から発光ダイオードの異常状態が報知されたとき、累積点灯時間が寿命時間に到達したとき、あるいは任意の点灯時間に到達したときなどとすることができる。
【0014】
本発明によれば、発光ダイオードの交換が行われたときにリセット手段により累積点灯時間をリセットすることにより、交換された発光ダイオードの累積点灯時間に応じて発光ダイオードに流れる順電流が初期値から増加され、順電圧と比較される基準値が当該初期値から増加される。
【0015】
請求項4に記載の誘導灯の発明は、請求項1ないし3いずれか一記載の誘導灯点灯装置と;この誘導灯点灯装置を配設している灯具本体と;を具備していることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、通常時、半導体発光素子の点灯に対する省電力化が図られるとともに、半導体発光素子の寿命期間に亘って表示面の輝度が一定に制御される誘導灯が提供される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、通常時には、半導体発光素子の累積点灯時間に応じて半導体発光素子に流れる順電流が増加されて光出力が一定に制御されるので、半導体発光素子の寿命期間に亘って半導体発光素子の点灯における消費電力を低減することができ、非常時には、バッテリからの電源により半導体発光素子が点灯されるので、制御手段を簡素な構成とすることができ、制御手段での消費電力を低減することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、発光ダイオードの順電圧が基準値の範囲以外となったときに報知手段により発光ダイオードの異常状態が報知されるので、異常状態の発光ダイオードの交換を直ちに促すことができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、リセット手段によって累積点灯時間をリセットすることにより、交換した発光ダイオードの光出力を寿命期間に亘って一定に制御することができるとともに、発光ダイオードの短絡や開放の異常状態を信頼性よく検出することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、通常時、半導体発光素子の寿命期間に亘って半導体発光素子の光出力が一定に制御されることにより誘導灯の表示面の輝度が一定となるので、省電力であって人に認識させやすい誘導灯を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0022】
図1ないし図5は、本発明の第1の実施形態を示し、図1は誘導灯点灯装置の概略回路図、図2は制御回路の概略構成図、図3は発光ダイオードの累積点灯時間に対する光束の変化を示す特性図、図4は発光ダイオードの順電流に対する順電圧の変化を示す特性図、図5は発光ダイオードの累積点灯時間に対する光束の制御を示し、(a)は通常時の説明図、(b)は非常時の説明図である。
【0023】
図1において、誘導灯点灯装置1は、直流電源回路2、バッテリ3、通常用点灯回路4、非常用点灯回路5、半導体発光素子としての発光ダイオード6、電圧検出手段としての電圧検出回路7、計時手段としての計時部8、制御手段としての制御回路9および報知手段としての発光ダイオード10を有して構成されている。
【0024】
誘導灯点灯装置1は、通常時、直流電源回路2に通常用点灯回路4が接続され、通常用点灯回路4により発光ダイオード6が点灯される。制御回路9は、計時部8が計時した発光ダイオード6の累積点灯時間に応じて、発光ダイオード6に流れる順電流が初期の順電流(初期値)から増加するように通常用点灯回路4を制御する。これにより、発光ダイオード6の寿命期間に亘って発光ダイオード6の光出力が一定に制御され、誘導灯の表示面の輝度を一定にすることが可能となるとともに、省電力を図ることができる。
【0025】
そして、商用交流電源Vsの停電時、バッテリ3に非常用点灯回路5が接続され、非常用点灯回路5により発光ダイオード6が点灯される。制御回路8は、バッテリ3と非常用点灯回路5を接続するのみである。非常用点灯回路5は、バッテリ3からの電流を調整する。
【0026】
そして、発光ダイオード6の順電圧は、電圧検出回路7で検出され、制御回路9において基準値と比較される。基準値は、発光ダイオード6の累積点灯時間および商用交流電源Vsの停電の有無に応じて変化される。制御回路9は、電圧検出回路7で検出された順電圧が基準値の範囲以外となったときに、異常信号を出力し、報知用の発光ダイオード10を点灯させる。発光ダイオードの10の点灯が視認されることにより、発光ダイオード6の異常状態を認識することができ、直ちに発光ダイオード6の交換に移行させることができる。
【0027】
直流電源回路2は、整流器11、フライバックトランスT1、スイッチ素子である電界効果トランジスタFET1、整流平滑回路12,13を有して構成されている。整流器11の入力端子は、コンデンサC1およびトランスT2からなるノイズフィルター回路14、点検用のプルスイッチSW1を介して商用交流電源Vsに接続され、整流器11の出力端子間に平滑用コンデンサC2が接続されている。整流器11および平滑用コンデンサC2は、商用交流電源Vsからの交流電圧を整流、平滑して直流電圧に変換している。そして、平滑用コンデンサC2の負極側は、コンデンサC3を介してアースEに接続されている。
【0028】
プルスイッチSW1は、バッテリ3による発光ダイオード6の点灯確認をするときに手動操作されるものであり、オフすることにより、誘導灯点灯装置1に対して人為的に商用交流電源Vsを停電させるものである。
【0029】
そして、平滑用コンデンサC2の両端間にフライバックトランスT1の一次巻線T1aおよび電界効果トランジスタFET1が直列的に接続され、二次巻線T1cの両端間に整流平滑回路13を構成する整流用のダイオードD2および平滑用コンデンサC5の直列回路と、ツェナーダイオードZD1およびフォトカプラPC1のフォトダイオードPD1の直列回路が接続され、三次巻線T1bの両端間に整流平滑回路12を構成する整流用のダイオードD1および平滑用コンデンサC4の直列回路が接続されている。そして、平滑用コンデンサC4の負極側および平滑用コンデンサC5の負極側は、互いに接続されている。また、ツェナーダイオードZD1およびフォトカプラPC1のフォトダイオードPD1の中点A3は、後述のトランジスタQ2および抵抗R8の中点A4に接続されている。
【0030】
また、電界効果トランジスタFET1のゲート(制御端子)には、電界効果トランジスタFET1のオンオフ動作を制御するゲート制御回路15が接続されている。ゲート制御回路15には、フォトカプラPC1のフォトトランジスタPTr1が接続されている。フォトトランジスタPTr1のオンオフに応じて電界効果トランジスタFET1がオンオフ動作することにより、高周波電圧に変換される。高周波電圧は、フライバックトランスT1の二次巻線T1cおよび三次巻線T1bによりそれぞれ降圧され、整流平滑回路12,13によりそれぞれ整流平滑される。そして、整流平滑回路13の平滑用コンデンサC5の両端間電圧が所定電圧以上に上昇すると、ツェナーダイオードZD1が導通してフォトダイオードPD1が発光し、所定電圧を下回ると、ツェナーダイオードZD1が導通しなくなってフォトダイオードPD1が発光しなくなる。これにより、フォトトランジスタPTr1がオンオフして、整流平滑回路13の平滑用コンデンサC5の両端間および整流平滑回路12の平滑用コンデンサC4の両端間にそれぞれ所定の直流電圧が発生する。このように、直流電源回路2は、商用交流電源Vsからの交流電圧を直流電圧に変換して出力するものである。
【0031】
なお、フライバックトランスT1の一次巻線T1aの両端間には、図示しないスナバ回路が接続され、このスナバ回路により、電界効果トランジスタFET1のオンオフ動作に応じて一次巻線T1aの両端間に発生するキック電圧を吸収するようにしている。
【0032】
バッテリ3は、抵抗R1および逆流防止用のダイオードD3の直列回路を介して整流平滑回路12の平滑用コンデンサC4の両端間に接続されている。バッテリ3は、直流電源回路2から出力された直流電圧である平滑用コンデンサC4の両端間電圧により充電される。
【0033】
そして、平滑用コンデンサC4の両端間には、P形バイポーラトランジスタQ1、抵抗R2および充電用モニターである発光ダイオード16の直列回路が接続されている。P形バイポーラトランジスタTr1のベースは、ベース抵抗R3を介して抵抗R1およびダイオードD3の中点A1に接続されている。
【0034】
平滑用コンデンサC4の両端間に直流電圧が発生していると、バッテリ3に電流が流れて、バッテリ3が充電されるとともに、P形バイポーラトランジスタQ1がオンし、発光ダイオード16に電流が流れて、発光ダイオード16が点灯する。すなわち、商用交流電源Vsの非停電時(通常時)には、バッテリ3は、直流電源回路2の整流平滑回路12により充電され、発光ダイオード16の点灯により充電中が表示される。バッテリ3のフル充電電圧は、例えば2.4〜3.6Vである。
【0035】
通常用点灯回路4は、直流電源回路2の整流平滑回路13に発光ダイオード6および電流検出回路17などを介して接続されている。通常用点灯回路4は、N形バイポーラトランジスタQ2を有している。トランジスタQ2のベースは、ベース抵抗R5を介して制御回路9に接続されている。
【0036】
通常用点灯回路4は、商用交流電源Vsの非停電時(通常時)、整流平滑回路13から電流が供給され、トランジスタQ2が制御回路9によりオンオフ制御されることにより、整流平滑回路13からの電流を所定の電流に調整して発光ダイオード6に供給するものである。
【0037】
そして、非常用点灯回路5は、バッテリ3に発光ダイオード6などを介して接続されている。非常用点灯回路5は、N形バイポーラトランジスタQ3および抵抗R4の直列回路がバッテリ3の負極および発光ダイオード6のカソードの間に接続されている。トランジスタQ3のベースは、ベース抵抗R7を介して制御回路9に接続されている。また、バッテリ3と並列に昇圧回路5Aが接続され、その出力端子がトランジスタQ3および抵抗R4の中点A2に接続されている。
【0038】
非常用点灯回路5は、商用交流電源Vsの停電時(非常時)、制御回路9によりトランジスタQ3がオンにされて、バッテリ3から電流が供給され、バッテリ3からの電流を発光ダイオード6に供給するものである。
【0039】
発光ダイオード6は、直列接続された複数個からなり、通常時に通常用点灯回路4から供給される電流(順電流)が流れることにより点灯し、停電時(非常時)に非常用点灯回路5から供給される電流(順電流)により点灯するものである。発光ダイオード6は、可視光を放射する。
【0040】
そして、発光ダイオード6と直列接続された電流検出回路17は、抵抗R8からなる。すなわち、発光ダイオード6に流れる順電流が電流検出回路17により検出される。計時部8は、通常時、抵抗R8に発光ダイオード6の順電流が流れている時間を累積して累積点灯時間を計時するように構成されている。また、商用交流電源Vsの停電時には、トランジスタQ3をオンしている時間を計時する。
【0041】
電圧検出回路7は、直列接続された発光ダイオード6の両端間に接続された抵抗R9および抵抗R10の直列回路からなり、抵抗R10の両端間に発生する電圧を制御回路9に入力するようにしている。抵抗R10の両端間電圧により、発光ダイオード6の順電圧を検出している。
【0042】
制御回路9は、図2に示すように、計時部8、順電流検出部18、順電圧検出部19、停電検出部20、記憶部21、電源部22、信号出力部23、制御部24およびリセット検出部28を有して構成されている。
【0043】
順電流検出部18は、電流検出回路17に接続され、発光ダイオード6に流れる順電流を入力して制御部24に送出する。順電圧検出部19は、電圧検出回路7に接続され、発光ダイオード6の順電圧を入力して制御部24に送出する。
【0044】
停電検出部20は、商用交流電源Vsの停電を検出して検出信号を制御部24に送出する。すなわち、直流電源回路2の平滑用コンデンサC2の両端間には、抵抗R11および抵抗R12の直列回路からなる停電検出回路26が接続されている。そして、抵抗R12の両端間電圧が停電検出部20に入力されている。商用交流電源Vsが停電すると、平滑用コンデンサC2の両端間電圧がしだいに減少し、抵抗R12の両端間電圧もしだいに減少していくので、停電検出部20は、抵抗R12の両端間電圧が設定値まで低下したときに商用交流電源Vsの停電を検出する。
【0045】
記憶部21は、図3に示す発光ダイオード6の累積点灯時間に対する光束の変化をテーブルデータで記憶し、図4に示す順電流に対する発光ダイオード6の順電流に対する順電圧の変化をテーブルデータで記憶している。また、計時部8が計時した発光ダイオード6の累積点灯時間を更新しながら記憶する。さらに、所定値(例えば1.5V)を記憶している。
【0046】
電源部22は、制御部24などに動作電源を供給する。そして、通常時には、例えば直流電源回路2の整流平滑回路12から出力された直流電圧により動作電源を生成するとともに、自身のバッテリを充電し、停電時には、当該バッテリの直流電圧により動作電源を生成するように構成されている。
【0047】
信号出力部23は、制御部24からの異常信号に応じて報知手段としての発光ダイオード10を点灯させるように制御する。すなわち、N形バイポーラトランジスタQ4、抵抗R13および発光ダイオード10が制御回路9の電源部22に直列接続されている。そして、トランジスタQ4のベースにベース抵抗14を介して信号出力部23が接続されている。信号出力部23は、制御部24からの異常信号に応じてトランジスタQ4を制御する。これにより、トランジスタQ4がオンし、発光ダイオード10に電流が流れて、発光ダイオード10が点灯する。
【0048】
制御部24は、停電検出部20が商用交流電源Vsの停電を検出していないとき(通常時)には、通常用点灯回路4のトランジスタQ2のベースに電流を供給してトランジスタQ2をオンさせるようにし、非常用点灯回路5のトランジスタQ3のベースに電流を供給しないものである。これにより、発光ダイオード6は、通常用点灯回路4により点灯される。
【0049】
また、制御部24は、停電検出部20が商用交流電源Vsの停電を検出するとき(停電時)には、通常用点灯回路4のトランジスタQ2のベースに電流を供給しなく、非常用点灯回路5のトランジスタQ3のベースに電流を供給してトランジスタQ4をオンにさせる。これにより、発光ダイオード6は、非常用点灯回路4により点灯される。
【0050】
そして、通常時、制御部24は、初期の発光ダイオード6の点灯に際して、発光ダイオード6の定格点灯における光出力(照度)よりも低い光出力例えば定格点灯時の70%の光出力となるように、通常用点灯回路4のトランジスタQ2をオンオフ制御する。すなわち、電流検出回路17の抵抗R8に流れる電流が定格点灯時に流れる電流(定格電流)の70%の電流となるようにトランジスタQ2をオンオフ制御する。発光ダイオード6には、パルス状の順電流が流れるようになり、発光ダイオード6は、定格点灯時の光出力の70%の光出力(初期値)で点灯する。
【0051】
そして、制御部24は、計時部8により計時されて記憶部21に記憶されている累積点灯時間と、記憶部21に記憶している発光ダイオード6の累積点灯時間に対する光束のテーブルデータとを読み出し、テーブルデータに基づいて累積点灯時間における発光ダイオード6に流れる順電流を演算する。光束は、発光ダイオード6に流れる順電流に対してほぼ比例的に増加する。また、発光ダイオード6は、図3に示すように、点灯時間の経過にしたがって光束が減少していく。制御部24は、定格点灯時の光出力の70%の光出力を維持するために、累積点灯時間に応じて発光ダイオード6に流れる順電流を増加させるように通常用点灯回路4のトランジスタQ2を制御する。すなわち、電流検出回路17の抵抗R8に演算した順電流が流れるように、オンデューティーを増加させてトランジスタQ2をオンオフ制御する。これにより、図5(a)に示すように、所定の点灯時間例えば発光ダイオード6の寿命時間(例えば3万5千時間)に亘って、発光ダイオード6の光出力が一定(初期値)となり、その光出力が規格値以上となるものである。
【0052】
そして、制御部24は、停電時に、通常用点灯回路4のトランジスタQ2をオフし、非常用点灯回路5のトランジスタQ3をオンにする。制御部24は、トランジスタQ3をオンにして、バッテリ3と非常用点灯回路5を接続するのみである。これにより、バッテリ3からの電流は、発光ダイオード6に供給される。このとき、発光ダイオード6の累積点灯による劣化およびバッテリ3の劣化により発光ダイオード6の光束が低下しても、図5(b)に示すように、寿命期間に亘って規定値以上となるように抵抗R4の抵抗値などが設定されている。
【0053】
そして、制御部24は、電圧検出回路7で検出されて順電圧検出部19に入力された発光ダイオード6の順電圧と基準値を比較するともに、発光ダイオード6の累積点灯時間に応じて当該基準値を増加させる。すなわち、制御部24は、発光ダイオード6の累積点灯時間に応じて発光ダイオード6に流れる順電流を増加させるとともに、図4に示すように、基準値を増加させる。基準値は、発光ダイオード6の順電圧より所定値(例えば1.5V)を増減した値となっている。所定値は、記憶部21に予め記憶させている。また、制御部24は、通常時または停電時(商用交流電源Vsの停電の有無)に応じて、図4に示すように、基準値を変化させる。
【0054】
そして、制御部24は、比較した発光ダイオード6の順電圧が基準値の範囲以外となったときに信号出力部23に異常信号を出力する。信号出力部23は、異常信号に応じてトランジスタQ4をオンにして発光ダイオード6を点灯させる。
【0055】
リセット検出部25は、スイッチ27に接続され、スイッチ27のオンオフ操作を検出して制御部24に送出する。スイッチ27のオンオフ操作は、主として発光ダイオード6を交換したときに行うものである。制御部24は、リセット検出部25がスイッチ27のオンオフ操作を検出すると、記憶部21に記憶されている発光ダイオード6の累積点灯時間をリセットするとともに、発光ダイオード6に流れる順電流を定格電流の70%の電流(初期値)に設定し、電圧検出回路7が検出した順電圧と比較する基準値を定格電流の70%の電流に対応した電圧値(初期値)に設定するものである。
次に、本発明の第1の実施形態の作用について述べる。
【0056】
通常時、バッテリ3は、直流電源回路2により充電され、通常用点灯回路4は、直流電源回路2から給電される。発光ダイオード6は、通常用点灯回路4から供給される順電流が発光ダイオード6の累積点灯時間に応じて増加され、ほぼ寿命期間に亘って光出力が一定に制御されて、可視光を放射する。これにより、誘導灯の表示面の輝度を発光ダイオード6の寿命期間に亘って一定にすることができる。したがって、誘導灯は、日常、人の目につきやすくなり、人に認識されやすくなって、避難誘導方向を前もって認識させることができる。また、発光ダイオード6の順電流が寿命期間に亘って徐々に増加されるので、発光ダイオード6の点灯における消費電力を低減でき、省電力を図ることができる。
【0057】
そして、商用交流電源Vsの停電時には、バッテリ3に非常用点灯回路5が接続され、発光ダイオード6がバッテリ3から供給される電流により点灯するので、人を避難誘導のための規格値以上の光出力が確保される。これにより、人は、誘導灯の表示面の誘導方向を視認することができる。また、制御回路9は、トランジスタQ3をオンにするのみであり、複雑な制御をするものでないので、制御回路9の回路構成を簡素にすることができ、制御回路9での消費電力を低減させることができる。
【0058】
また、発光ダイオード6の順電圧は、基準値と比較され、その基準値は、発光ダイオード6の累積点灯時間に応じて増加される順電流に対応して増加されるので、発光ダイオード6の短絡や開放の異常状態を信頼性よく検出することができ、報知用の発光ダイオード10の点灯によって当該異常状態を認識することができる。すなわち、発光ダイオード10の点灯により、異常状態の発光ダイオード6の交換を直ちに促すことができる。
【0059】
そして、発光ダイオード6を交換したときに、スイッチ27をオンオフ操作することにより、制御回路9の制御部24は、記憶部21に記憶されている発光ダイオード6の累積点灯時間をリセットするとともに、発光ダイオード6に流れる順電流およびその順電流に対応した基準値をそれぞれ初期値に設定するので、交換した発光ダイオード6に対して、その光出力をほぼ寿命期間に亘って一定に制御することができるとともに、短絡や開放の異常状態を信頼性よく検出することができる。
次に、本発明の第2の実施形態について述べる。
【0060】
図6および図7は、本発明の第2の実施形態の誘導灯を示し、図6(a)は概略上面図、図6(b)は概略正面図、図7(a)は概略下面図、図7(b)は概略側断面図である。なお、図1と同一部分には、同一符号を付して説明は省略する。
【0061】
誘導灯28は、図7(b)に示すように、略直方体に形成された灯具本体29に図1に示す誘導点灯装置1を配設している。発光ダイオード6は、灯具本体29の内部の前面側および背面側にそれぞれ設けられた矩形状の導光板30,30の上面に対向するように配設されている。そして、図6(b)に示すように、灯具本体29の前面側および背面側にそれぞれ表示面としてのピクトグラム(誘導表示)31が形成された表示パネル32を配設している。発光ダイオード6から放射された可視光は、導光板30,30に入射し、導光板30,30を伝播し、表示パネル32を通過して外方に出射される。
【0062】
そして、灯具本体29の上面29aには、図6(a)に示すように、灯具本体29を天井面に木ねじ等により取り付けるためのだるま状の取付け孔33,33および天井に設けた孔から電線を導入する電線挿通孔34が設けられている。
【0063】
また、灯具本体29の下面29bには、図7(a)に示すように、充電モニター用の発光ダイオード16および報知用の発光ダイオード10が設けられ、点検用のプルスイッチSW1の引き紐35が引き出されている。発光ダイオード16の点灯を視認することにより、バッテリ3が充電中であることを確認することができる。また、引き紐35を引っ張ることにより、人為的に停電させて、バッテリ3による発光ダイオード6の点灯を確認することができる。また、発光ダイオード10の点灯を確認することにより、発光ダイオード6の異常状態を確認することができる。
【0064】
そして、誘導灯28は、発光ダイオード6の寿命期間に亘って表示パネル32の輝度が一定にされるので、通常時においてその存在を人に認識されやすく、前もって非常時(停電時)の避難誘導方向を認知させることができる。また、発光ダイオード6に流れる順電流が初期値から徐々に増加されるので、省電力を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す誘導灯点灯装置の概略回路図。
【図2】同じく、制御回路の概略構成図。
【図3】同じく、発光ダイオードの累積点灯時間に対する光束の変化を示す特性図。
【図4】同じく、発光ダイオードの順電流に対する順電圧の変化を示す特性図。
【図5】同じく、発光ダイオードの累積点灯時間に対する光束の制御を示し、(a)は通常時の説明図、(b)は非常時の説明図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す誘導灯を示し、(a)は概略上面図、(b)は概略正面図。
【図7】同じく、誘導灯を示し、(a)は概略下面図、(b)は概略側断面図。
【符号の説明】
【0066】
1…誘導灯点灯装置
2…直流電源回路
3…バッテリ
4…通常用点灯回路
5…非常用点灯回路
6…半導体発光素子としての発光ダイオード
7…電圧検出回路としての順電圧検出回路
8…計時手段としての計時部
9…制御手段としての制御回路
10…報知手段としての発光ダイオード
27…リセット手段としてのスイッチ
28…誘導灯
29…灯具本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換して出力する直流電源回路と;
この直流電源回路から出力された直流電圧により充電されるバッテリと;
通常時に直流電源回路に接続され、直流電源回路からの電流を所定の電流に調整して半導体発光素子に供給する通常用点灯回路と;
交流電源の停電時にバッテリに接続され、バッテリからの電源を半導体発光素子に供給する非常用点灯回路と;
通常時に通常用点灯回路により点灯され、停電時に非常用点灯回路により点灯される半導体発光素子と;
半導体発光素子の累積点灯時間を計時する計時手段と;
通常時には、計時手段が計時した累積点灯時間に応じて半導体発光素子に流れる順電流を増加させて半導体発光素子の光出力が一定となるように通常用点灯回路を制御し、停電時には、バッテリからの電源により半導体発光素子が点灯するようにバッテリと非常用点灯回路を接続させる制御手段と;
を具備していることを特徴とする誘導灯点灯装置。
【請求項2】
半導体発光素子は、発光ダイオードからなり;
発光ダイオードの順電圧を検出する電圧検出手段と;
異常信号に応じて発光ダイオードの異常状態を報知する報知手段と;
を具備し、制御手段は、電圧検出手段が検出した順電圧と基準値を比較し、計時手段が計時した累積点灯時間および交流電源の停電の有無に応じて前記基準値を変化させ、前記順電圧が前記基準値の範囲以外となったときに報知手段に異常信号を出力することを特徴とする請求項1記載の誘導灯点灯装置。
【請求項3】
計時手段が計時した累積点灯時間をリセットするリセット手段と;
を具備し、制御手段は、前記累積点灯時間のリセットに応じて、発光ダイオードに流れる順電流および電圧検出手段が検出した順電圧と比較される基準値をそれぞれの初期値に設定することを特徴とする請求項2記載の誘導灯点灯装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一記載の誘導灯点灯装置と;
この誘導灯点灯装置を配設している灯具本体と;
を具備していることを特徴とする誘導灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−245811(P2009−245811A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92296(P2008−92296)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】