説明

誘導装置および誘導システム

【課題】従来のシステムでは、目標の予測経路に対し側方から予想会合点(以下、PIP)へ接近する経路を取ることで、初中期誘導中に生ずる、PIPが目標の速度変化で変動することに伴う進路修正による速度損失を防止する航法を提供する。
【解決手段】誘導装置内に、予めシミュレーションで求めた高速で移動する目標の対処時の情報(各PIPにおける飛しょう体の速度等)が格納されたデータベースを持つ。誘導装置では、このデータベースを用い、計算で算出されたPIPに応じて飛しょう体の速度損失が少なく旋回性能が優れている航法(従来航法で対処またはカウンタパラレル航法)を選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛しょう体を目標に向けて誘導する誘導装置に関するものである。特に、高速で移動する目標に向けて飛しょう体を誘導する誘導装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飛しょう体の誘導システムでは、従来、イニシャルヘディングエラー(以下IHEという)が大きいとその対処が難しくなるという課題があった。IHEを小さくするために、飛しょう体を目標に対してヘッドオンさせることで会合角を小さな値とする航法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−52495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に飛しょう体の飛しょう制御システムにおいては、目標の情報(位置、速度等)と飛しょう体の飛しょう特性(飛しょう時間と飛しょう距離の関係等)を用いて予想会合点(以下PIPという)を算出し、このPIPに向けて飛しょう体を発射台から放射する。
【0005】
ここで、目標を等速・直進運動とし、かつ飛しょう体の速度を等速と仮定すると、ホーミングにおける会合三角形が一義的に決定する。この会合三角形は比例航法によるホーミング開始から会合に至るまで変わることはなく、飛しょう体はホーミング開始点からPIPまで直線上を飛しょうする。
【0006】
ところが目標を等速・直進と仮定しても、通常の飛しょう体は等速ではなく加速・減速を伴うため、飛しょう時間に対する飛しょう距離は非線形を示す(図4参照)。
ここで、時間t=tにおける飛しょう体1の位置、目標2の位置、PIPの位置をそれぞれtM1、tT1、PIPとした会合三角形を(tM1、tT1、PIP)とすると、一定時間が経過した後の時間t=t時の会合三角形は(tM2,TT2,PIP)となる。
時間t=t時の飛しょう体1から目標2を見た目視線(tM1−tT1)と、時間t=t時の目視線(tM2−TT2)は平行でなくなり、目視線角σが変化して目視線の変化率σ-が発生する。
【0007】
通常、この目視線の変化率σ-の発生の様子は、飛しょう体の推力パターンやPIPまでの直線距離の大小等により変化する。
比例航法を行う飛しょう体は、このσ-に応じた操舵を行ってホーミング飛しょうをする。このため、飛しょう体はホーミング開始地点とPIPとを結ぶ直線上を飛しょうすることはなく、曲線上を飛しょうすることになる。
このとき、従来の比例航法では速度損失が生じ、また飛しょう体が目標に対して終末誘導をする際のIHEが大きくなるという課題があった。
【0008】
これに対し、速度損失とIHEを低減させるための航法として、飛しょう体を目標に対してヘッドオンさせる航法(カウンタパラレル航法)がある。
カウンタパラレル航法においては、会合時に飛しょう体が目標のダイブ角と反方位になるように飛しょうし、会合角が最小となるような飛しょう経路をとる(図5の102、図6参照)。
しかしながらこのカウンタパラレル航法においては、初中期旋回において速度損失が発生するという課題があった。特に、目標が高速で移動する場合に速度損失が大きくなるという課題があった。
【0009】
この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、高速で移動する目標であっても複数の誘導航法の中から適切な航法を選択することにより速度損失を抑えて、目標に向けて飛しょう体を誘導可能な誘導装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る誘導装置は、目標に向けて飛しょう体を誘導する誘導装置であって、前記目標の速度と前記飛しょう体が前記目標と会合する会合点をパラメータとして算出した前記飛しょう体の会合時における速度を、複数の誘導航法ごとに格納するデータベースと、指定された前記会合点において、前記複数の誘導航法の中で会合時の前記飛しょう体の速度が最も高い誘導航法を選択する判定部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、シミュレーション等により予め求めた高速で移動する目標への対処情報(各々のPIPにおける飛しょう体の速度等)を格納したデータベースを備えることにより、PIPに応じて飛しょう体の速度損失が少ない航法(比例航法、またはカウンタパラレル航法)の判定を行うことができる。
すなわち、比例航法による速度損失とカウンタパラレル航法による速度損失とをデータベースにより比較することによって、PIPに応じた適正な航法を選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1に係る誘導装置による航法選択を説明する概略図である。
【図2】実施の形態1に係る誘導装置による航法選択のフローを説明する図である。
【図3】実施の形態1に係る誘導装置のデータベースに格納されている情報の一例である。
【図4】従来の比例航法における飛しょう体の会合三角形とその時の目視線角の変化を示す図である。
【図5】従来の比例航法とカウンタパラレル航法の概略航法を示す図である。
【図6】従来の誘導装置の誘導フローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、図1〜図3を用いて本発明を実施する際のシステム構成および動作について説明する。
図1は、実施の形態1に係る誘導装置による航法選択の一例を説明する図である。
図1において、1は目標に向けて誘導する飛しょう体、2は目標、3は飛しょう体を発射するための発射装置、4は目標を捜索・追随し、また誘導装置6から入力された誘導諸元を飛しょう体に送信するためのレーダ装置、6は予めシミュレーション等で求めた高速飛しょう体対処時の情報(各PIPにおける飛しょう体の速度等)が格納されたデータベース50と誘導航法の選択を行う判定部51を備えた誘導装置である。
【0014】
誘導装置6の判定部51は、目標2を追随するレーダ装置4からの目標情報と、データベース50に格納されている情報を用い、予想されるPIPに応じて飛しょう体1の速度損失が少なく旋回性能が優れている航法(ここでは、比例航法、又はカウンタパラレル航法のいずれかの航法)の判定を行う。
このように誘導装置6は、比例航法による速度損失とカウンタパラレル航法による速度損失とをデータベースにより比較することにより、予想されるPIPに応じた適正な航法を選択する。
【0015】
次に、フロー図を用いながら誘導装置6の動作について説明する。図2は本実施の形態に係る誘導装置6による航法選択のフローを説明する図である。
【0016】
まずレーダ装置4は、図2に示すように目標2を探知し、目標捕捉すると追随を行い、得られた目標に係る目標情報(目標の位置、高度、速度等)を順次誘導装置6へと送信する。
【0017】
次に誘導装置6は、レーダ装置4から収集した目標情報(目標の位置、高度、速度等)に基づき、目標1の類識別、脅威評価、交戦性評価、目標指定、要撃計算を行う。
誘導装置6の判定部51は、データベース50の格納情報と先の計算結果を比較・判定し、速度損失の少ない航法を選択する。
【0018】
データベース50は予めシミュレーションにより求めた、各対処ポイントと目標の速度についての射表を持っており、目標の対処ポイント及び目標速度に応じた飛しょう体1の速度データ(通常航法である比例航法による飛しょう体1の速度、及びカウンタパラレル航法による飛しょう体1の速度)を格納している。
図3はデータベース50の格納情報の一例である。
図3(a)は目標2に対する対処ポイントを表わしたもので、飛しょう体1が目標2と会合する会合点(PIP)位置の水平距離(水平位置)と高度の情報をグラフにしたものである。また、図3(b)は、対処ポイント及び目標2の速度に応じてシミュレーションで求めた対処ポイントにおける飛しょう体1の速度を示したものである。
【0019】
誘導装置6は、レーダ装置4から得た目標情報(目標の位置、高度、速度等)及び射撃管制装置6の誘導計算結果から得た予想会合点を入力する。入力条件から射撃管制装置6が格納しているデータベース50を参照し、速度損失に基いて速度損失のより少ない航法を選択する。
すなわち、比例航法による飛しょう体1の速度vがカウンタパラレル航法による飛しょう体1の速度vcpより高い(v>vcp)のときは、比例航法を選択する。また、カウンタパラレル航法による飛しょう体の速度vcpが比例航法による飛しょう体1の速度vより高い(vcp>v)のときは、カウンタパラレル航法を選択する。
【0020】
誘導装置6は、選択した航法の結果及び選択した航法に応じた発射諸元(発射タイミング、発射方向等)を発射装置3へ送信する。
【0021】
発射装置3は、誘導装置6からの発射指令により、飛しょう体1を発射する。
【0022】
飛しょう体1の発射後、誘導装置6は誘導計算を行い、誘導諸元をレーダ装置4へ送信する。
【0023】
レーダ装置4は、誘導装置6から入力された誘導諸元を飛しょう体1へと送信する。
【0024】
飛しょう体1は、発射装置3から発射した後、レーダ装置4からの入力に基づき中期誘導を行う。飛しょう体1は目標2との距離が所定の距離となった時点で、目標の捜索を自ら開始し、目標2に向けて終末誘導を行う。
【0025】
このように、本実施の形態に係る誘導装置6は、予めシミュレーションで求めた高速で飛しょうする目標への対処時の情報(各々のPIPにおける飛しょう体の速度等)が格納されたデータベース50を備える。
これにより、計算で算出されたPIPに応じて飛しょう体の速度損失が少ない航法(比例航法またはカウンタパラレル航法)を選択することが可能となる。すなわち、比例航法による速度損失とカウンタパラレル航法による速度損失とをデータベース50を用いて比較することによりPIPに応じた適正な航法が選択でき、目標に対する飛しょう体の誘導性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 飛しょう体、2 目標、3 発射装置、4 レーダ装置、5 従来の誘導装置、6 本発明に係る誘導装置、50 データベース、51 判定部、101 比例航法、102 カウンタパラレル航法、v 比例航法による飛しょう体1の速度、vcp カウンタパラレル航法による飛しょう体1の速度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標に向けて飛しょう体を誘導する誘導装置であって、
前記目標の速度と前記飛しょう体が前記目標と会合する会合点をパラメータとして算出した前記飛しょう体の会合時における速度を、複数の誘導航法ごとに格納するデータベースと、
指定された前記会合点において、前記複数の誘導航法の中で会合時の前記飛しょう体の速度が最も高い誘導航法を選択する判定部と、
を備えることを特徴とする誘導装置。
【請求項2】
前記複数の誘導航法には、比例航法とカウンタパラレル航法が含まれることを特徴とする請求項1記載の誘導装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の誘導装置と、
前記飛しょう体を搭載した発射台を備え、
前記判定部は選択した前記誘導航法の結果と前記誘導航法に応じた発射諸元と発射指令を前記発射台へ送信し、
前記発射台は前記発射指令を受信すると前記飛しょう体を発射することを特徴とする誘導システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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