誘発電位検査装置及びそれを用いた誘発電位検査システム
【課題】
高い検査精度を有しながらも測定時間の短縮を行うことのできる誘発電位検査装置を提供すること。
【解決手段】
誘発電位信号データを記録する誘発電位データ記録部と、誘発電位データ記録部が記録した誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部と、Wavelet変換部が変換した誘発電位信号データを表示装置に表示する表示部と、を有する誘発電位検査装置とする。
高い検査精度を有しながらも測定時間の短縮を行うことのできる誘発電位検査装置を提供すること。
【解決手段】
誘発電位信号データを記録する誘発電位データ記録部と、誘発電位データ記録部が記録した誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部と、Wavelet変換部が変換した誘発電位信号データを表示装置に表示する表示部と、を有する誘発電位検査装置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘発電位検査装置に関し、特に、聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response、以下「ABR」という)の検査に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
ABRとは、両耳あるいは方耳から音刺激を与えてから10ms以内の潜時をもって現れる短潜時の聴性誘発反応であって、その反応は、1μV以下の低電位の振幅を有し、また、第I波から第VII波と呼ばれる波を含んで構成される多様性の陽性波として観測される。
【0003】
ABRの信号(以下「ABR信号」という。)におけるピーク潜時は安定した一次反応であって再現性が高く、また、生理学及び解剖学においてその起源がほぼ特定され、脳幹聴覚経路上のどの部分であるかがほぼ明らかにされている。したがって、このABRを検査することで聴覚障害又は脳幹障害の診断補助、脳幹内病変が聴覚系神経路に与える障害の程度の診断、及び、意識障害や脳死判定の補助等臨床検査を行うことが可能であり、また、耳鼻科においては他覚的聴覚検査としても利用することができる。なお他覚的聴覚検査とは、新生児や乳幼児を含め、被験者が自分で“聞こえるか聞こえないか”について正確な意思表示ができない場合、全身麻酔下の被験者や重症な身体障害により意思表示が困難な場合、更には、犯罪捜査などで被験者が“聞こえているのに聞こえないふりをする”いわゆる詐称難聴の可能性のある場合などにおいて実施される検査である。
【0004】
ところで、ABR信号は微弱な信号であって多くのノイズが含まれており、精度の高い検査のためにはこのノイズを除去する必要がある。ノイズを除去する方法としては例えばABR信号を複数加算し、その平均を算出する方法がある(以下「加算平均法」という。例えば下記非特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上記加算平均法では、多数回(2000回程度)のABR信号測定を行う必要があるため、測定に時間がかかるという課題が残る。例えば加算平均法の典型的な例では検査に20分程度要してしまい、被験者に与える負担は大きい。
【0006】
また一方で、上記加算平均法の平均回数を低減する方法として、例えば下記非特許文献2及び3にはカルマンフィルタを用いてABR伝達関数を求める方法が記載されている。
【0007】
【非特許文献1】「誘発電位検査装置Neuropackμ」、日本光電総合カタログ、日本光電株式会社、2001年
【非特許文献2】井川信子、谷萩隆嗣“カルマンフィルタを適用した最小分散推定による聴性脳幹反応波形の伝達関数の推定と特徴抽出”、Journal of Signal Processing(信号処理)、2004年、8巻、4号、335〜349頁
【非特許文献3】Nobuko Ikawa, Takashi Yahagi、“FeatureExtraction and Identification of Transfer Function for Auditory BrainstemResponse,”、Journal of Signal Processing, 2004, Vol. 8,No.6, pp.473-484
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに上記非特許文献2及び3に記載の方法によると加算平均の回数を低減することができる。しかしながら、その場合であっても、従来手法の半分程度の検査時間がかかってしまい、やはり検査を受ける者にとって負担となるものであって、更なる測定時間の短縮を行う必要がある。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、高い検査精度を有しながらも測定時間の短縮を行うことのできる誘発電位検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、誘発電位信号に対してWavelet変換を行い、この変換された誘発電位信号を解析することでノイズに埋もれて検出できないような低い加算回数の誘発電位信号から精度良く所望の波を検出することができることを見出した。すなわち、本発明にかかる誘発電位検査装置は、誘発電位信号データを記録する誘発電位信号データ記録部と、この誘発電位信号データ記録部が記録した誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部と、を有することを特徴の一つとする。
【0011】
ここで、「誘発電位信号データ」とは、誘発電位反応検査において測定した時間に誘発電位信号の強度が対応して格納されるデータであって、例えば誘発電位検査装置に接続される複数の電極を介して取得されるデータである。
【0012】
また、本発明にかかる誘発電位検査装置における「Wavelet変換部」とは、誘発電位信号データに対してWavelet変換を行う部である。なおWavelet変換部が行うWavelet変換の基底関数としては種々採用することができ、例えばGauss関数、Mexicican Hat関数、Meyer関数、Daubechies関数、Biorthogonal関数などを用いることができる。
【0013】
また、本発明にかかる誘発電位検査装置におけるWavelet変換の対象となる誘発電位信号データは、加算平均されている場合であっても加算平均されていない場合であっても適用は可能である。ただし、必要最小限加算を行っておくことは好ましい(例えば加算平均回数としては10回以下、より望ましくは100回以下である)。
【0014】
また本発明にかかる誘発電位検査システムは、上記の誘発電位検査装置を備えてなるものであって、具体的には被験者に装着される複数の電極と、被験者に音刺激を与えるためのイヤホンと、表示装置と、複数の電極から取得される誘発電位信号データを記録する誘発電位データ記録部、誘発電位データ記録部が記録した前記誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部、Wavelet変換部が変換した前記誘発電位データを表示装置に表示する際に表示画面の制御を行う表示部、イヤホンに対して音刺激を出力させる音出力部、を有する誘発電位検査装置と、を有することとする。
【0015】
また本発明にかかる誘発電位検査方法は、被験者から誘発電位信号データを取得し、取得した誘発電位信号データに対しWavelet変換を行い、Wavelet変換された前記誘発電位信号データを解析することとする。なおこの場合において、被験者から取得する誘発電位信号データは、聴性脳幹反応に基づくデータであること、Wavelet変換は、基底関数としてGauss関数、Mexicican Hat関数、Meyer関数、Daubechies関数、Biorthogonal関数の少なくともいずれかを用いることも望ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上により、高い測定精度でありながらも測定時間の短縮を行うことのできる誘発電位検査装置更にはそれを用いた誘発電位検査システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1に本実施形態にかかる誘発電位検査システムの構成概略図を示す。本誘発電位検査システム1は、被験者に装着される複数の電極3、被験者の耳に音信号を伝達するイヤホン4、複数の電極及びイヤホンに接続され、これらに対し様々な処理を行う誘発電位信号検出装置2と、様々な処理が行われた誘発電位信号について表示を行う表示装置5と、を有して構成されている。
【0019】
本実施形態に係る誘発電位検査システム1の機能ブロック図を図2に示す。
この機能ブロック図を図2に示す。
【0020】
図2の表現によると、本誘発電位検査システム1における本誘発電位検査装置2は、被験者に装着された複数の電極から入力される誘発電位信号を増幅するアンプ21と、誘発電位信号から所望の周波数範囲の誘発電位信号を選択するフィルタ22と、誘発電位信号をデジタル信号(以下「誘発電位信号データ」という)に変換するA/D変換器23と、この誘発電位信号データを記録する誘発電位信号データ記録部24と、この誘発電位信号データ記録部が記録した誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部25と、このWavelet変換された誘発電位信号データを表示装置に表示させるための制御を行う表示制御部26と、を有して構成されている。また、誘発電位検査装置には、被験者に対して音刺激を与えるためのイヤホンに信号を送信する音刺激発生部27も設けられている。
【0021】
アンプ21は、微弱な誘発電位信号を増幅するためのものであって、装置の精度をより高くするためには設けることが極めて望ましいものである。用いるアンプとしては周知のアンプを採用することができる。
【0022】
フィルタ22は、被験者に装着された複数の電極から入力される誘発電位信号のうち所望の範囲の周波数の誘発電位信号のみを選択するために設けられるものであって、データ処理の高速化のためには設けることが極めて望ましい。用いるフィルタとしては周知のものを採用することができるが、選択する周波数の望ましい範囲としては0Hz〜2000Hzの範囲が望ましく、より望ましくは100Hz〜1500Hzの範囲である。
【0023】
A/D変換器23は、アナログ信号である誘発電位信号をデータ処理のためにデジタルデータに変換するものである。A/D変換器23としては周知のものを採用することができるが、この構成をソフトウェア処理により実現することもできる。
【0024】
誘発電位信号データ記録部24は、上記のとおり、複数の電極を介して得られる被験者からの誘発電位信号を誘発電位信号データとして記録することができるものであって、例えば、ハードディスク等の記録媒体に誘発電位信号データを格納可能とすることで実現できる。ここで誘発電位信号データは、時間に対する誘発電位の変化を示すデータであって、より具体的には時間データに対応する誘発電位データの組を複数有して構成されている。
【0025】
Wavelet変換部25は、上記の誘発電位信号データ記録部に記録された誘発電位信号データに対してWavelet変換を行う部であって、時間に対する誘発電位の変化を、時間に対する誘発電位を構成する周波数の変化に変換する。より具体的には、時間に対する誘発電位を構成する周波数のデータの組を複数有したデータ構成に変換する。Wavelet変換部は、上記機能を奏する限りにおいて様々な形態を採用することができるが、例えば上記機能を実現できるプログラムをハードディスク等の記録媒体に格納し、実行させることにより実現できる。
【0026】
Wavelet変換部25は、上記の変換を行うことができる限り制限されるものではないが、具体的には、基底関数としてGauss関数を用いたもの、Mexicican Hat関数を用いたもの、Meyer関数を用いたもの、Daubechies関数を用いたもの、Biorthogonal関数を用いたもの等が好適である。
【0027】
Wavelet変換の形態としては、連続Wavelet変換、離散Wavelet変換が可能であり、連続Wavelet変換としては例えばCWT(One Dimensional Wavelet Transform、1次元連続ウェーブレット変換)が、離散Wavelet変換としては例えばSWT(One Discrete Stationary Wavelet Transform、1次元離散Wavelet変換)、WaveletPacketが可能である。
【0028】
CWTは、連続Wavelet変換係数を計算し、これをプロットすることにより行う。
具体的には、例えば誘発電位信号をs(t)として1≦x1<x2≦length(S)の範囲で、XLIM=[x1 x2]とする。ここでΨをWavelet(基底関数)とするとスケールaと位置bでsのWavelet変換係数は次式のようになる。
【数1】
【0029】
なおここでs(t)は離散信号のため、k=1,length(s)で、s(k) の区分的定数内挿を使うことが好適である。ベクトルSCALESの中の各スケールaに対して、Wavelet変換係数 Ca,b はb = 1からls = length(s)までで計算し、a = SCALES(i)の場合、COEFS(i,:)にストアすることによって得られる。なお出力引数COEFSは、la行ls列の行列であり(la はSCALESの長さを示す)、出力引数COEFSはウェーブレットタイプ(基底関数)に依存した実数行列である。なおスケールは信号を構成する周波数に対応し、スケール値が小さいほど高い周波数を表すこととなる。
【0030】
SWTは、ノイズ除去、信号の分解・合成等のために上記CWTを下記の式に従い変換してプロットすることにより行う。即ち、上記式(1)から下記式を得て行う。
【数2】
【0031】
なおここでは、任意のスケール a に対し、b が1からlength(s)までのWavelet係数Ca,b は、信号sとWavelet関数の積分のコンボリューションの有限差分を使って得ることができる。ここにおいて、例えばレベルNの1次元Wavelet分解を実施する場合、Wavelet分解ベクトルCと、その大きさを要素とするベクトルLである。その構造を、レベル3の分割の例で次に示す。最初のステップでは、信号sから始めて、2組の係数(Approximation係数(CA1)、Detail係数(CD1)が作成される。これらのベクトルは、CA1に対してはsとローパスフィルタLo_Dとの畳み込みで(信号F)、CD1に対しては、ハイパスフィルタHi_Dとの畳み込み(信号G)により得ることができる。なお各々のフィルタの長さは2Nである。n = length(s) の場合、信号FとGは、同じ長さn+2N−1になる。そして、係数cA1と cD1を作成する。 なお、次のステップではsをcA1で置き換え、同じ方法を使いcA2、cD2を作成する。レベルjで、解析された信号sのウエーブレット分解は、構造[cAj,cDj,・・・,cD1]になる。
【0032】
Wavelet Packetsは、信号解析のための可能性をより拡張することを提唱する離散Wavelet変換の一つの概念である。SWTでは信号をApproximation及びDetailの二つに分け、そしてApproximationはそれ自身をつぎのレベルのApproximationとDetailの二つに分け、その操作を繰り返す。これに対しWavelet
Packet変換は、SWTにおけるレベル1のApproximationと同じようにレベル1のDetailも分割する。すなわち、信号をApproximation及びDetailの二つに分け、それらの各々を更に同様にApproximationとDetailに分けることを繰り返し、レベルnの全てのApproximation及びDetailに対してレベルnにおいて分解又は符号化する。なおSWTではn+1通りの分解が可能である。
Wavelet Packet変換では、2の2n+1乗通りの分解が可能となるが、再構成の場合、必要であれば異なるレベルの分解を選択して合成することが可能である。
【0033】
音刺激発生部27は、イヤホンを介して被験者に対して音信号を伝達するためのものであり、これに接続されるイヤホンを通じて被験者に音信号を伝達することができる。また本誘発電位信号検査システムは、この音信号に基づく誘発電位信号を検出して検査を行うため、音刺激発生部はイヤホンに音信号を伝達するとともにその時刻を誘発電位信号データ格納部24に送信する。
【0034】
表示部26は、Wavelet変換された誘発電位信号データの表示を表示装置に行うものである。なお出力部はプリンタにも接続可能となっており、必要に応じてWavelet変換されたデータ等の出力も指示することが可能である。
【0035】
以上の構成により、本誘発電位検査システムは高い測定精度でありながらも測定時間の短縮を行うことができる。
【0036】
(実施例1:Daubechies関数、加算平均2000回)
本実施形態の実施の例について、より具体的な例を用いて説明する。本実施例ではABRのうち、より再現性が高く特徴的な波であるため、聴覚検査や脳死判定などの臨床検査補助として主要に用いられる第V波を中心に検討を行った。なお、下記実施例では着目するABRの波として第V波に着目しているが、他の波に対しても適宜応用は可能であって、これに限定されるものではない。
【0037】
本実施例では、上記構成に基づき聴力正常成人に対して実際に検査を行った。本検査ではABR信号のうち第V波に着目して検査を評価し、用いたWavelet変換の基底関数としてはDaubechies関数を用いた。本実施例の誘発電位検査は聴力正常成人及び脳死の患者を対象に行い、加算平均回数は2000回、刺激音圧は80dBnHLとした。この結果を図3〜図7に示す。図3〜図6は聴力正常成人を検査した場合の結果を、図7は脳死の患者を検査した場の結果を示す図である。なお各図において複数のグラフが示されているが、一番上の段が元の誘発電位信号データを示すものであり、二段目〜三段目がDaubechies関数を用いたCWTによるWavelet変換後の誘発電位信号データを示す。また各グラフにおいて横軸は時間を示し、一段目のグラフの縦軸は信号強度を、二段目〜四段目の縦軸は周波数を示している。
【0038】
図3〜図6で示される聴力正常成人の場合、第V波のピーク潜時は5.8ms〜6.5ms前後と考えられ(図3〜図6においては250〜310の位置に相当)、どの図においても波の存在を確認することができた(例えば図3〜図6中の楕円部分参照)。一方、脳死の患者の場合、同様の領域において波の存在を確認することはできなかった。
【0039】
以上により、ABR信号データに対しWavelet変換を行うことで高い検査精度を有することが確認できた。なお脳死の患者の場合は第V波の欠落という顕著な事例であるが、聴覚障害などの場合は欠落ではなく存在するが潜時の遅延などの特徴を有することが知られている。本誘発電位検査システムにおいてWavelet変換を行うことで同様に潜時の遅延などの特徴を確認し、聴覚障事例に適用することも可能である。
【0040】
またWavelet変換された誘発電位信号データを細かい周波数範囲(8つの範囲)で分割した場合の結果(SWTによる)を図8、図9に示す。なお図8は図3の結果(聴力正常成人の場合)に、図9は図7の結果(脳死の患者の場合)がそれぞれ対応する。また、各図中左側は誘発電位を構成するよりも高い周波数を含む誘発電位信号データをも含めた場合の図を、右側はそのうち誘発電位を構成するよりも高い周波数を含む誘発電位信号データ(d1〜d3の領域の周波数範囲)をノイズとして除外した場合の図である。この結果、図8のd6の範囲のグラフにおいて、5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置範囲)でピークを観測することができ、第V波の存在を確認できた。また図示は省略したが他の聴力正常成人においても同様のピークを観測することができた。なお一方、脳死の患者の場合(図9)、同様のグラフの同様の領域において波の存在を確認することはできなかった。
【0041】
以上によっても、ABR信号データに対しWavelet変換を行うことで高い検査精度を有することが確認できた。なお、本実施例ではABR信号の構成周波数を絞り込んでSWTを用いた例を示しているが、上述のとおり、SWTではなくWavelet Packetを行うことも可能である。なお、離散Wavelet変換を用いることで必要な分解レベルを選択して信号を再構成し、より精度良く誘発電位信号データを解析することが可能となる。
【0042】
(実施例2:Daubechies関数、加算平均100回)
上記実施例1と同様の測定対象に対し、加算平均の回数を異ならせた以外同様の検査について行った。この結果を図10に示す。なお加算平均は100回であり、図10は聴力正常成人に対する結果を示すものである。
【0043】
この結果においても5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。特に本実施例の場合は100回と従来に比べてきわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例1と同様に細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に第V波の存在を確認することができた。なお図10に対応するこの結果を図11に示す。
【0044】
(実施例3:Dauvechies関数、加算平均30回)
上記実施例1と同様の測定対象に対し、加算平均の回数を異ならせた以外同様の検査について行った。この結果を図12に示す。なお加算平均は30回であった。先ほどと同様、図12は聴力正常成人の結果を示す。
【0045】
この結果においても5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。本実施例の場合は30回と従来に比べてきわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例1における図8の場合と同様に細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に第V波の存在を確認することができた。
【0046】
(実施例4:Dauvechies関数、加算平均10回)
上記実施例1と同様の測定対象に対し、加算平均の回数を異ならせた以外同様の検査について行った。この結果を図13に示す。なお加算平均は10回であった。先ほどと同様、図13は聴力正常成人のCWTによる結果を示す。
【0047】
この結果においても5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。特に本実施例の場合は10回ときわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。また実施例1における図8と同様に細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に第V波の存在を確認することができた。この結果を図14に示しておく。
【0048】
以上、加算平均を従来の2000回に比べ200分の1程度の10回に減らした場合であってもきわめて精度高く検査を行うことができることを確認した。
【0049】
(実施例5:Biothorgonal関数、加算平均100回)
本実施例ではWavelet関数の基底関数をBiothorgonal関数とした以外は上記の実施例2と同様の対象に対して測定を行った。この結果を図15、図16に示す。図15は上記の実施例2と同様聴力正常成人の一検査結果を示す図であって、図16は脳死の患者に対する検査の結果を示す図である。
【0050】
これら図においても、先ほどと同様、5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。特に本実施例の場合は100回と従来技術に比べきわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例2における図11と同様に細かい周波数範囲で分割した場合も同様に第V波の存在を確認することができた。この結果を図17(聴力正常成人の場合)、図18(脳死の場合)に示しておく。
【0051】
(実施例6:Biothogonal関数、加算平均10回)
上記実施例5と同様の測定対象に対し、加算平均の回数を異ならせた以外同様の検査について行った。この結果を図19に示す。なお加算平均は10回であった。先ほどと同様、図19は聴力正常成人の結果を示す。
【0052】
この結果においても5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。特に本実施例の場合は10回ときわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例1における図8と同様に細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に第V波の存在を確認することができた。なおこの場合の結果を図20に示しておく。
【0053】
(実施例7:Gauss関数、加算平均100回)
本実施例ではWavelet関数の基底関数をGauss関数とした以外は上記の実施例2と同様の対象に対して測定を行った。この結果を図21、図22に示す。図21は上記の実施例2と同様聴力正常成人の検査結果を示す図であり、図22は脳死の患者の検査結果を示す図である。
【0054】
これら図においても、先ほどと同様、5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。特に本実施例の場合は100回と従来技術に比べきわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例2と同様に、細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に行ったところ、第V波の存在を確認することができた。
【0055】
(実施例8:Gauss関数、加算平均10回加算)
上記実施例7と同様の測定対象に対し、加算平均の回数を異ならせた以外同様の検査について行った。この結果を図23に示す。なお加算平均は10回であった。先ほどと同様、図23は聴力正常成人の結果を示す。
【0056】
この結果においても5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。特に本実施例の場合は10回ときわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例1における図8と同様に細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に第V波の存在を確認することができた。
【0057】
以上、Wavelet変換を用いることで精度を維持したまま加算平均の回数を低減させることが可能な誘発電位検査システムを提供することができる。また上記により様々なWavelet変換の基底関数を用いることができることも確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施形態に係る誘発電位検査システムの構成概略図。
【図2】実施形態に係る誘発電位検査システムの機能ブロック図。
【図3】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図4】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図5】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図6】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図7】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、脳死患者)
【図8】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、聴力正常成人)
【図9】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、脳死患者)
【図10】実施例2に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図11】実施例2に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、聴力正常成人)
【図12】実施例3に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図13】実施例4に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図14】実施例4に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、聴力正常成人)
【図15】実施例5に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図16】実施例5に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、脳死患者)
【図17】実施例5に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、聴力正常成人)
【図18】実施例5に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、脳死患者)
【図19】実施例6に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図20】実施例6に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、聴力正常成人)
【図21】実施例7に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図22】実施例7に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、脳死患者)
【図23】実施例8に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【符号の説明】
【0059】
1…誘発電位検査システム、2…誘発電位検査装置、3…電極、4…イヤホン、5…表示装置、21…アンプ、22…フィルタ、23…A/D変換器、24…誘発電位信号データ記録部、25…Wavelet変換部、26…表示制御部、27…音刺激発生部
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘発電位検査装置に関し、特に、聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response、以下「ABR」という)の検査に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
ABRとは、両耳あるいは方耳から音刺激を与えてから10ms以内の潜時をもって現れる短潜時の聴性誘発反応であって、その反応は、1μV以下の低電位の振幅を有し、また、第I波から第VII波と呼ばれる波を含んで構成される多様性の陽性波として観測される。
【0003】
ABRの信号(以下「ABR信号」という。)におけるピーク潜時は安定した一次反応であって再現性が高く、また、生理学及び解剖学においてその起源がほぼ特定され、脳幹聴覚経路上のどの部分であるかがほぼ明らかにされている。したがって、このABRを検査することで聴覚障害又は脳幹障害の診断補助、脳幹内病変が聴覚系神経路に与える障害の程度の診断、及び、意識障害や脳死判定の補助等臨床検査を行うことが可能であり、また、耳鼻科においては他覚的聴覚検査としても利用することができる。なお他覚的聴覚検査とは、新生児や乳幼児を含め、被験者が自分で“聞こえるか聞こえないか”について正確な意思表示ができない場合、全身麻酔下の被験者や重症な身体障害により意思表示が困難な場合、更には、犯罪捜査などで被験者が“聞こえているのに聞こえないふりをする”いわゆる詐称難聴の可能性のある場合などにおいて実施される検査である。
【0004】
ところで、ABR信号は微弱な信号であって多くのノイズが含まれており、精度の高い検査のためにはこのノイズを除去する必要がある。ノイズを除去する方法としては例えばABR信号を複数加算し、その平均を算出する方法がある(以下「加算平均法」という。例えば下記非特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上記加算平均法では、多数回(2000回程度)のABR信号測定を行う必要があるため、測定に時間がかかるという課題が残る。例えば加算平均法の典型的な例では検査に20分程度要してしまい、被験者に与える負担は大きい。
【0006】
また一方で、上記加算平均法の平均回数を低減する方法として、例えば下記非特許文献2及び3にはカルマンフィルタを用いてABR伝達関数を求める方法が記載されている。
【0007】
【非特許文献1】「誘発電位検査装置Neuropackμ」、日本光電総合カタログ、日本光電株式会社、2001年
【非特許文献2】井川信子、谷萩隆嗣“カルマンフィルタを適用した最小分散推定による聴性脳幹反応波形の伝達関数の推定と特徴抽出”、Journal of Signal Processing(信号処理)、2004年、8巻、4号、335〜349頁
【非特許文献3】Nobuko Ikawa, Takashi Yahagi、“FeatureExtraction and Identification of Transfer Function for Auditory BrainstemResponse,”、Journal of Signal Processing, 2004, Vol. 8,No.6, pp.473-484
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに上記非特許文献2及び3に記載の方法によると加算平均の回数を低減することができる。しかしながら、その場合であっても、従来手法の半分程度の検査時間がかかってしまい、やはり検査を受ける者にとって負担となるものであって、更なる測定時間の短縮を行う必要がある。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、高い検査精度を有しながらも測定時間の短縮を行うことのできる誘発電位検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、誘発電位信号に対してWavelet変換を行い、この変換された誘発電位信号を解析することでノイズに埋もれて検出できないような低い加算回数の誘発電位信号から精度良く所望の波を検出することができることを見出した。すなわち、本発明にかかる誘発電位検査装置は、誘発電位信号データを記録する誘発電位信号データ記録部と、この誘発電位信号データ記録部が記録した誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部と、を有することを特徴の一つとする。
【0011】
ここで、「誘発電位信号データ」とは、誘発電位反応検査において測定した時間に誘発電位信号の強度が対応して格納されるデータであって、例えば誘発電位検査装置に接続される複数の電極を介して取得されるデータである。
【0012】
また、本発明にかかる誘発電位検査装置における「Wavelet変換部」とは、誘発電位信号データに対してWavelet変換を行う部である。なおWavelet変換部が行うWavelet変換の基底関数としては種々採用することができ、例えばGauss関数、Mexicican Hat関数、Meyer関数、Daubechies関数、Biorthogonal関数などを用いることができる。
【0013】
また、本発明にかかる誘発電位検査装置におけるWavelet変換の対象となる誘発電位信号データは、加算平均されている場合であっても加算平均されていない場合であっても適用は可能である。ただし、必要最小限加算を行っておくことは好ましい(例えば加算平均回数としては10回以下、より望ましくは100回以下である)。
【0014】
また本発明にかかる誘発電位検査システムは、上記の誘発電位検査装置を備えてなるものであって、具体的には被験者に装着される複数の電極と、被験者に音刺激を与えるためのイヤホンと、表示装置と、複数の電極から取得される誘発電位信号データを記録する誘発電位データ記録部、誘発電位データ記録部が記録した前記誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部、Wavelet変換部が変換した前記誘発電位データを表示装置に表示する際に表示画面の制御を行う表示部、イヤホンに対して音刺激を出力させる音出力部、を有する誘発電位検査装置と、を有することとする。
【0015】
また本発明にかかる誘発電位検査方法は、被験者から誘発電位信号データを取得し、取得した誘発電位信号データに対しWavelet変換を行い、Wavelet変換された前記誘発電位信号データを解析することとする。なおこの場合において、被験者から取得する誘発電位信号データは、聴性脳幹反応に基づくデータであること、Wavelet変換は、基底関数としてGauss関数、Mexicican Hat関数、Meyer関数、Daubechies関数、Biorthogonal関数の少なくともいずれかを用いることも望ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上により、高い測定精度でありながらも測定時間の短縮を行うことのできる誘発電位検査装置更にはそれを用いた誘発電位検査システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1に本実施形態にかかる誘発電位検査システムの構成概略図を示す。本誘発電位検査システム1は、被験者に装着される複数の電極3、被験者の耳に音信号を伝達するイヤホン4、複数の電極及びイヤホンに接続され、これらに対し様々な処理を行う誘発電位信号検出装置2と、様々な処理が行われた誘発電位信号について表示を行う表示装置5と、を有して構成されている。
【0019】
本実施形態に係る誘発電位検査システム1の機能ブロック図を図2に示す。
この機能ブロック図を図2に示す。
【0020】
図2の表現によると、本誘発電位検査システム1における本誘発電位検査装置2は、被験者に装着された複数の電極から入力される誘発電位信号を増幅するアンプ21と、誘発電位信号から所望の周波数範囲の誘発電位信号を選択するフィルタ22と、誘発電位信号をデジタル信号(以下「誘発電位信号データ」という)に変換するA/D変換器23と、この誘発電位信号データを記録する誘発電位信号データ記録部24と、この誘発電位信号データ記録部が記録した誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部25と、このWavelet変換された誘発電位信号データを表示装置に表示させるための制御を行う表示制御部26と、を有して構成されている。また、誘発電位検査装置には、被験者に対して音刺激を与えるためのイヤホンに信号を送信する音刺激発生部27も設けられている。
【0021】
アンプ21は、微弱な誘発電位信号を増幅するためのものであって、装置の精度をより高くするためには設けることが極めて望ましいものである。用いるアンプとしては周知のアンプを採用することができる。
【0022】
フィルタ22は、被験者に装着された複数の電極から入力される誘発電位信号のうち所望の範囲の周波数の誘発電位信号のみを選択するために設けられるものであって、データ処理の高速化のためには設けることが極めて望ましい。用いるフィルタとしては周知のものを採用することができるが、選択する周波数の望ましい範囲としては0Hz〜2000Hzの範囲が望ましく、より望ましくは100Hz〜1500Hzの範囲である。
【0023】
A/D変換器23は、アナログ信号である誘発電位信号をデータ処理のためにデジタルデータに変換するものである。A/D変換器23としては周知のものを採用することができるが、この構成をソフトウェア処理により実現することもできる。
【0024】
誘発電位信号データ記録部24は、上記のとおり、複数の電極を介して得られる被験者からの誘発電位信号を誘発電位信号データとして記録することができるものであって、例えば、ハードディスク等の記録媒体に誘発電位信号データを格納可能とすることで実現できる。ここで誘発電位信号データは、時間に対する誘発電位の変化を示すデータであって、より具体的には時間データに対応する誘発電位データの組を複数有して構成されている。
【0025】
Wavelet変換部25は、上記の誘発電位信号データ記録部に記録された誘発電位信号データに対してWavelet変換を行う部であって、時間に対する誘発電位の変化を、時間に対する誘発電位を構成する周波数の変化に変換する。より具体的には、時間に対する誘発電位を構成する周波数のデータの組を複数有したデータ構成に変換する。Wavelet変換部は、上記機能を奏する限りにおいて様々な形態を採用することができるが、例えば上記機能を実現できるプログラムをハードディスク等の記録媒体に格納し、実行させることにより実現できる。
【0026】
Wavelet変換部25は、上記の変換を行うことができる限り制限されるものではないが、具体的には、基底関数としてGauss関数を用いたもの、Mexicican Hat関数を用いたもの、Meyer関数を用いたもの、Daubechies関数を用いたもの、Biorthogonal関数を用いたもの等が好適である。
【0027】
Wavelet変換の形態としては、連続Wavelet変換、離散Wavelet変換が可能であり、連続Wavelet変換としては例えばCWT(One Dimensional Wavelet Transform、1次元連続ウェーブレット変換)が、離散Wavelet変換としては例えばSWT(One Discrete Stationary Wavelet Transform、1次元離散Wavelet変換)、WaveletPacketが可能である。
【0028】
CWTは、連続Wavelet変換係数を計算し、これをプロットすることにより行う。
具体的には、例えば誘発電位信号をs(t)として1≦x1<x2≦length(S)の範囲で、XLIM=[x1 x2]とする。ここでΨをWavelet(基底関数)とするとスケールaと位置bでsのWavelet変換係数は次式のようになる。
【数1】
【0029】
なおここでs(t)は離散信号のため、k=1,length(s)で、s(k) の区分的定数内挿を使うことが好適である。ベクトルSCALESの中の各スケールaに対して、Wavelet変換係数 Ca,b はb = 1からls = length(s)までで計算し、a = SCALES(i)の場合、COEFS(i,:)にストアすることによって得られる。なお出力引数COEFSは、la行ls列の行列であり(la はSCALESの長さを示す)、出力引数COEFSはウェーブレットタイプ(基底関数)に依存した実数行列である。なおスケールは信号を構成する周波数に対応し、スケール値が小さいほど高い周波数を表すこととなる。
【0030】
SWTは、ノイズ除去、信号の分解・合成等のために上記CWTを下記の式に従い変換してプロットすることにより行う。即ち、上記式(1)から下記式を得て行う。
【数2】
【0031】
なおここでは、任意のスケール a に対し、b が1からlength(s)までのWavelet係数Ca,b は、信号sとWavelet関数の積分のコンボリューションの有限差分を使って得ることができる。ここにおいて、例えばレベルNの1次元Wavelet分解を実施する場合、Wavelet分解ベクトルCと、その大きさを要素とするベクトルLである。その構造を、レベル3の分割の例で次に示す。最初のステップでは、信号sから始めて、2組の係数(Approximation係数(CA1)、Detail係数(CD1)が作成される。これらのベクトルは、CA1に対してはsとローパスフィルタLo_Dとの畳み込みで(信号F)、CD1に対しては、ハイパスフィルタHi_Dとの畳み込み(信号G)により得ることができる。なお各々のフィルタの長さは2Nである。n = length(s) の場合、信号FとGは、同じ長さn+2N−1になる。そして、係数cA1と cD1を作成する。 なお、次のステップではsをcA1で置き換え、同じ方法を使いcA2、cD2を作成する。レベルjで、解析された信号sのウエーブレット分解は、構造[cAj,cDj,・・・,cD1]になる。
【0032】
Wavelet Packetsは、信号解析のための可能性をより拡張することを提唱する離散Wavelet変換の一つの概念である。SWTでは信号をApproximation及びDetailの二つに分け、そしてApproximationはそれ自身をつぎのレベルのApproximationとDetailの二つに分け、その操作を繰り返す。これに対しWavelet
Packet変換は、SWTにおけるレベル1のApproximationと同じようにレベル1のDetailも分割する。すなわち、信号をApproximation及びDetailの二つに分け、それらの各々を更に同様にApproximationとDetailに分けることを繰り返し、レベルnの全てのApproximation及びDetailに対してレベルnにおいて分解又は符号化する。なおSWTではn+1通りの分解が可能である。
Wavelet Packet変換では、2の2n+1乗通りの分解が可能となるが、再構成の場合、必要であれば異なるレベルの分解を選択して合成することが可能である。
【0033】
音刺激発生部27は、イヤホンを介して被験者に対して音信号を伝達するためのものであり、これに接続されるイヤホンを通じて被験者に音信号を伝達することができる。また本誘発電位信号検査システムは、この音信号に基づく誘発電位信号を検出して検査を行うため、音刺激発生部はイヤホンに音信号を伝達するとともにその時刻を誘発電位信号データ格納部24に送信する。
【0034】
表示部26は、Wavelet変換された誘発電位信号データの表示を表示装置に行うものである。なお出力部はプリンタにも接続可能となっており、必要に応じてWavelet変換されたデータ等の出力も指示することが可能である。
【0035】
以上の構成により、本誘発電位検査システムは高い測定精度でありながらも測定時間の短縮を行うことができる。
【0036】
(実施例1:Daubechies関数、加算平均2000回)
本実施形態の実施の例について、より具体的な例を用いて説明する。本実施例ではABRのうち、より再現性が高く特徴的な波であるため、聴覚検査や脳死判定などの臨床検査補助として主要に用いられる第V波を中心に検討を行った。なお、下記実施例では着目するABRの波として第V波に着目しているが、他の波に対しても適宜応用は可能であって、これに限定されるものではない。
【0037】
本実施例では、上記構成に基づき聴力正常成人に対して実際に検査を行った。本検査ではABR信号のうち第V波に着目して検査を評価し、用いたWavelet変換の基底関数としてはDaubechies関数を用いた。本実施例の誘発電位検査は聴力正常成人及び脳死の患者を対象に行い、加算平均回数は2000回、刺激音圧は80dBnHLとした。この結果を図3〜図7に示す。図3〜図6は聴力正常成人を検査した場合の結果を、図7は脳死の患者を検査した場の結果を示す図である。なお各図において複数のグラフが示されているが、一番上の段が元の誘発電位信号データを示すものであり、二段目〜三段目がDaubechies関数を用いたCWTによるWavelet変換後の誘発電位信号データを示す。また各グラフにおいて横軸は時間を示し、一段目のグラフの縦軸は信号強度を、二段目〜四段目の縦軸は周波数を示している。
【0038】
図3〜図6で示される聴力正常成人の場合、第V波のピーク潜時は5.8ms〜6.5ms前後と考えられ(図3〜図6においては250〜310の位置に相当)、どの図においても波の存在を確認することができた(例えば図3〜図6中の楕円部分参照)。一方、脳死の患者の場合、同様の領域において波の存在を確認することはできなかった。
【0039】
以上により、ABR信号データに対しWavelet変換を行うことで高い検査精度を有することが確認できた。なお脳死の患者の場合は第V波の欠落という顕著な事例であるが、聴覚障害などの場合は欠落ではなく存在するが潜時の遅延などの特徴を有することが知られている。本誘発電位検査システムにおいてWavelet変換を行うことで同様に潜時の遅延などの特徴を確認し、聴覚障事例に適用することも可能である。
【0040】
またWavelet変換された誘発電位信号データを細かい周波数範囲(8つの範囲)で分割した場合の結果(SWTによる)を図8、図9に示す。なお図8は図3の結果(聴力正常成人の場合)に、図9は図7の結果(脳死の患者の場合)がそれぞれ対応する。また、各図中左側は誘発電位を構成するよりも高い周波数を含む誘発電位信号データをも含めた場合の図を、右側はそのうち誘発電位を構成するよりも高い周波数を含む誘発電位信号データ(d1〜d3の領域の周波数範囲)をノイズとして除外した場合の図である。この結果、図8のd6の範囲のグラフにおいて、5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置範囲)でピークを観測することができ、第V波の存在を確認できた。また図示は省略したが他の聴力正常成人においても同様のピークを観測することができた。なお一方、脳死の患者の場合(図9)、同様のグラフの同様の領域において波の存在を確認することはできなかった。
【0041】
以上によっても、ABR信号データに対しWavelet変換を行うことで高い検査精度を有することが確認できた。なお、本実施例ではABR信号の構成周波数を絞り込んでSWTを用いた例を示しているが、上述のとおり、SWTではなくWavelet Packetを行うことも可能である。なお、離散Wavelet変換を用いることで必要な分解レベルを選択して信号を再構成し、より精度良く誘発電位信号データを解析することが可能となる。
【0042】
(実施例2:Daubechies関数、加算平均100回)
上記実施例1と同様の測定対象に対し、加算平均の回数を異ならせた以外同様の検査について行った。この結果を図10に示す。なお加算平均は100回であり、図10は聴力正常成人に対する結果を示すものである。
【0043】
この結果においても5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。特に本実施例の場合は100回と従来に比べてきわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例1と同様に細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に第V波の存在を確認することができた。なお図10に対応するこの結果を図11に示す。
【0044】
(実施例3:Dauvechies関数、加算平均30回)
上記実施例1と同様の測定対象に対し、加算平均の回数を異ならせた以外同様の検査について行った。この結果を図12に示す。なお加算平均は30回であった。先ほどと同様、図12は聴力正常成人の結果を示す。
【0045】
この結果においても5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。本実施例の場合は30回と従来に比べてきわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例1における図8の場合と同様に細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に第V波の存在を確認することができた。
【0046】
(実施例4:Dauvechies関数、加算平均10回)
上記実施例1と同様の測定対象に対し、加算平均の回数を異ならせた以外同様の検査について行った。この結果を図13に示す。なお加算平均は10回であった。先ほどと同様、図13は聴力正常成人のCWTによる結果を示す。
【0047】
この結果においても5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。特に本実施例の場合は10回ときわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。また実施例1における図8と同様に細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に第V波の存在を確認することができた。この結果を図14に示しておく。
【0048】
以上、加算平均を従来の2000回に比べ200分の1程度の10回に減らした場合であってもきわめて精度高く検査を行うことができることを確認した。
【0049】
(実施例5:Biothorgonal関数、加算平均100回)
本実施例ではWavelet関数の基底関数をBiothorgonal関数とした以外は上記の実施例2と同様の対象に対して測定を行った。この結果を図15、図16に示す。図15は上記の実施例2と同様聴力正常成人の一検査結果を示す図であって、図16は脳死の患者に対する検査の結果を示す図である。
【0050】
これら図においても、先ほどと同様、5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。特に本実施例の場合は100回と従来技術に比べきわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例2における図11と同様に細かい周波数範囲で分割した場合も同様に第V波の存在を確認することができた。この結果を図17(聴力正常成人の場合)、図18(脳死の場合)に示しておく。
【0051】
(実施例6:Biothogonal関数、加算平均10回)
上記実施例5と同様の測定対象に対し、加算平均の回数を異ならせた以外同様の検査について行った。この結果を図19に示す。なお加算平均は10回であった。先ほどと同様、図19は聴力正常成人の結果を示す。
【0052】
この結果においても5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。特に本実施例の場合は10回ときわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例1における図8と同様に細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に第V波の存在を確認することができた。なおこの場合の結果を図20に示しておく。
【0053】
(実施例7:Gauss関数、加算平均100回)
本実施例ではWavelet関数の基底関数をGauss関数とした以外は上記の実施例2と同様の対象に対して測定を行った。この結果を図21、図22に示す。図21は上記の実施例2と同様聴力正常成人の検査結果を示す図であり、図22は脳死の患者の検査結果を示す図である。
【0054】
これら図においても、先ほどと同様、5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。特に本実施例の場合は100回と従来技術に比べきわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例2と同様に、細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に行ったところ、第V波の存在を確認することができた。
【0055】
(実施例8:Gauss関数、加算平均10回加算)
上記実施例7と同様の測定対象に対し、加算平均の回数を異ならせた以外同様の検査について行った。この結果を図23に示す。なお加算平均は10回であった。先ほどと同様、図23は聴力正常成人の結果を示す。
【0056】
この結果においても5.8ms〜6.5ms前後の位置(250〜310の位置)に第V波と見られる波の存在を確認でき、脳死の患者には波の存在を確認することができず、Wavelet変換による高い検査精度を有することが確認できた。なお図示は省略したが他の聴力正常成人に対する結果も同様に第V波と見られる波の存在を確認することができた。特に本実施例の場合は10回ときわめて回数を減らしたにもかかわらず同様に判定が可能であった。また実施例1における図8と同様に細かい周波数範囲で分割した場合(SWTによる場合)も同様に第V波の存在を確認することができた。
【0057】
以上、Wavelet変換を用いることで精度を維持したまま加算平均の回数を低減させることが可能な誘発電位検査システムを提供することができる。また上記により様々なWavelet変換の基底関数を用いることができることも確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施形態に係る誘発電位検査システムの構成概略図。
【図2】実施形態に係る誘発電位検査システムの機能ブロック図。
【図3】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図4】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図5】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図6】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図7】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、脳死患者)
【図8】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、聴力正常成人)
【図9】実施例1に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、脳死患者)
【図10】実施例2に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図11】実施例2に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、聴力正常成人)
【図12】実施例3に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図13】実施例4に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図14】実施例4に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、聴力正常成人)
【図15】実施例5に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図16】実施例5に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、脳死患者)
【図17】実施例5に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、聴力正常成人)
【図18】実施例5に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、脳死患者)
【図19】実施例6に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図20】実施例6に係るWavelet変換結果を示す図(SWT、聴力正常成人)
【図21】実施例7に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【図22】実施例7に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、脳死患者)
【図23】実施例8に係るWavelet変換結果を示す図(CWT、聴力正常成人)
【符号の説明】
【0059】
1…誘発電位検査システム、2…誘発電位検査装置、3…電極、4…イヤホン、5…表示装置、21…アンプ、22…フィルタ、23…A/D変換器、24…誘発電位信号データ記録部、25…Wavelet変換部、26…表示制御部、27…音刺激発生部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘発電位信号データを記録する誘発電位信号データ記録部と、
前記誘発電位信号データ記録部が記録した前記誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部と、
前記Wavelet変換部が変換した前記誘発電位信号データを表示装置に表示する表示制御部と、を有する誘発電位検査装置。
【請求項2】
前記誘発電位信号データは、聴性脳幹反応に基づくデータであることを特徴とする請求項1記載の誘発電位検査装置。
【請求項3】
前記Wavelet変換部が行うWavelet変換の基底関数は、Gauss関数、Mexicican Hat関数、Meyer関数、Daubechies関数、Biorthogonal関数の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1記載の誘発電位検査装置。
【請求項4】
被験者に装着される複数の電極と、
被験者に音圧刺激を与えるためのイヤホンと、
表示装置と、
前記複数の電極から取得される誘発電位信号データを記録する誘発電位信号データ記録部、前記誘発電位信号データ記録部が記録した前記誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部、前記Wavelet変換部が変換した前記誘発電位信号データを表示装置に表示する表示制御部、前記イヤホンに対して音圧刺激を出力させる音出力部、を有する誘発電位検査装置と、を有する誘発電位検査システム。
【請求項5】
前記誘発電位信号データは、聴性脳幹反応に基づくデータであることを特徴とする請求項4記載の誘発電位検査システム。
【請求項6】
前記誘発電位検査装置における前記Wavelet変換部が行うWavelet変換の基底関数は、Gauss関数、Mexicican Hat関数、Meyer関数、Daubechies関数、Biorthogonal関数の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4記載の誘発電位検査システム。
【請求項7】
被験者から誘発電位信号データを取得し、
前記取得した誘発電位信号データに対しWavelet変換を行い、
Wavelet変換された前記誘発電位信号データを解析する、誘発電位検査方法。
【請求項8】
前記被験者から取得する誘発電位信号データは、聴性脳幹反応に基づくデータであることを特徴とする請求項7記載の誘発電位検査方法。
【請求項9】
前記Wavelet変換は、基底関数としてGauss関数、Mexicican Hat関数、Meyer関数、Daubechies関数、Biorthogonal関数の少なくともいずれかを用いることを特徴とする請求項7記載の誘発電位検査方法。
【請求項1】
誘発電位信号データを記録する誘発電位信号データ記録部と、
前記誘発電位信号データ記録部が記録した前記誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部と、
前記Wavelet変換部が変換した前記誘発電位信号データを表示装置に表示する表示制御部と、を有する誘発電位検査装置。
【請求項2】
前記誘発電位信号データは、聴性脳幹反応に基づくデータであることを特徴とする請求項1記載の誘発電位検査装置。
【請求項3】
前記Wavelet変換部が行うWavelet変換の基底関数は、Gauss関数、Mexicican Hat関数、Meyer関数、Daubechies関数、Biorthogonal関数の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1記載の誘発電位検査装置。
【請求項4】
被験者に装着される複数の電極と、
被験者に音圧刺激を与えるためのイヤホンと、
表示装置と、
前記複数の電極から取得される誘発電位信号データを記録する誘発電位信号データ記録部、前記誘発電位信号データ記録部が記録した前記誘発電位信号データに対してWavelet変換を行うWavelet変換部、前記Wavelet変換部が変換した前記誘発電位信号データを表示装置に表示する表示制御部、前記イヤホンに対して音圧刺激を出力させる音出力部、を有する誘発電位検査装置と、を有する誘発電位検査システム。
【請求項5】
前記誘発電位信号データは、聴性脳幹反応に基づくデータであることを特徴とする請求項4記載の誘発電位検査システム。
【請求項6】
前記誘発電位検査装置における前記Wavelet変換部が行うWavelet変換の基底関数は、Gauss関数、Mexicican Hat関数、Meyer関数、Daubechies関数、Biorthogonal関数の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4記載の誘発電位検査システム。
【請求項7】
被験者から誘発電位信号データを取得し、
前記取得した誘発電位信号データに対しWavelet変換を行い、
Wavelet変換された前記誘発電位信号データを解析する、誘発電位検査方法。
【請求項8】
前記被験者から取得する誘発電位信号データは、聴性脳幹反応に基づくデータであることを特徴とする請求項7記載の誘発電位検査方法。
【請求項9】
前記Wavelet変換は、基底関数としてGauss関数、Mexicican Hat関数、Meyer関数、Daubechies関数、Biorthogonal関数の少なくともいずれかを用いることを特徴とする請求項7記載の誘発電位検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2006−239096(P2006−239096A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58258(P2005−58258)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】
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