説明

誘電体バリア放電管駆動回路

ガラス板の十分な機械的強度が得られる程度の厚さにし、照明面積を比較的広くし、低い電圧で駆動し、皮相電流を低減する誘電体バリア放電管駆動回路。駆動回路は、高周波電力をリアクトル(32)を介して平面型放電管(19)に印加する。点灯状態では、リアクトル(32)のインダクタンスとガラス板(11及び12)の静電容量との直列共振に近い状態が設定される。高周波電力の周波数が直列共振周波数よりわずかに小さく、交流源(31)から見た負荷のインピーダンスが定格インピーダンスに設定されるように、リアクトル(32)のインダクタンス値が選定される。この構成では、放電ガスとして環境問題がないXe(キセノン)ガスを用いた場合、高い発光効率が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電管に関し、詳しくは、放電発光した際に放電管自体のインピーダンスにより過大電流が流れるのを防止する限流作用をもついわゆる誘電体バリア放電管を点灯発光させる駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体バリア放電管としては、その管形状が平面型のものと筒型のものが知られている。平面型放電管(例えば特許文献1参照)は図8に示すように、ガラス板のような誘電体平板11及び12が対向配置され、これら誘電体平板11及び12の対向面の周縁部間が封止部材(例えばシールガラス)13により封止されて誘電体密封容器が構成される。この誘電体密封容器に放電ガス16が封入され、これら誘電体平板11及び12と放電ガス16とを挟んだ形で電極14及び15が対向して取り付けられて放電空間が構成される。誘電体平板11及び12の対向内面に必要に応じて蛍光体層17及び18が対向して形成されている。放電ガス16はXe(キセノン)ガスや、水銀蒸気及びAr(アルゴン)又はNe(ネオン)ガスなどが用いられる。
【0003】
この平面型放電管19の発光駆動回路では、例えば商用電源21よりの交流電力が整流平滑回路22により整流平滑されて直流電源23が構成される。その直流電源23よりの直流電力がインバータ24により高周波電力に変換され、この高周波電力がトランス25により昇圧されて電極14及び15間に印加される。この高周波電力の印加により誘電体平板11及び12間の放電(誘電体平板11,12を介した放電であるから誘電体バリア放電と云う)を発生させ、これにより放電ガス16の電離により形成される放電プラズマが発生し、紫外線が外部に照射されるか、または、その紫外線により蛍光体層17及び18が励起されて自然光が外部に照射され、つまり発光が生じて、放電管19が点灯する。照明面と反対側の誘電体平板、例えば12を金属板とし、これを電極15と兼用してもよい。照明面側の電極、例えば14を必要に応じて透明電極とし、また、蛍光体層17は省略されてもよい。
【0004】
この放電管19は、点灯後においても2枚の誘電体平板11及び12を介して、つまり厚いバリアを介して交流電力が印加されるため、電極14及び15間に印加する高周波電圧を非常に高くする必要がある。しかも、電極14及び15間のインピーダンスは主として誘電体平板11及び12の静電容量に基くため、印加電圧に対し流れる電流の位相がかなり進み、力率が低くなる。従って、昇圧トランス25とインバータ24などの回路の電力容量(VA)が放電管19に印加される実容量(W)に比べて、非常に大きくなり、つまり電力損失が大きく、従って、平面型放電管照明器としての器具がかなり大きくなり、器具の薄型化や軽量化が困難である。
【0005】
この問題を解決するために、バリアを薄く、つまり誘電体平板11及び12の厚さを薄くすると、機械的強度が不足するため、誘電体平板11及び12間に適当な間隔でリブを介在させることが考えられる。しかし比較的大きな面積が要求される照明分野で用いるものとしては、補強部材として複数のリブを設けると、発光の一様性が悪くなる上、製造工程が増加し、価格が上昇する問題が生じる。
【0006】
管形状が筒型である誘電体バリア放電管の例を図9に示す。同軸心のガラス管などの誘電体管51及び52の一端が板部51a及び52aによりそれぞれ塞がれ、他端が封止部材(例えばシールガラス)53により封止され、かつ互いに固定されて誘電体密封容器が構成される。この誘電体密封容器内にキセノンガス、又は、水銀蒸気及びネオン又はアルゴンガスなどの放電ガス54が封入される。誘電体管51の外周面及び誘電体管52の内周面に、これら誘電体管51,52、放電ガス54を挟んだ形で互いに対向してほぼ全面に渡って電極55及び56が形成され、放電空間が形成される。必要に応じて一方の誘電体管61の内周面の全面に渡って蛍光体層57が形成される。
【0007】
管形状が筒型のものとしては図10に示すものもある。両端面が塞がれたガラス管のような誘電体管61により誘電体密封容器が構成され、この密封容器内に放電ガス62が封入される。誘電体管61の外周面に間隔D1をおいて、誘電体管61及び放電ガス62を挟んだ形で対向した電極63及び64が形成され、放電空間が形成される。必要に応じて誘電体管61の内周面に蛍光体層65が形成される。
【0008】
なお、通常の蛍光灯では点灯後の過大電流を防止するために、蛍光灯と直列にインダクタンス素子が接続される。しかし、上述したような誘電体密封容器を構成する誘電体と放電ガスを挟んだ形で対向した電極が形成された誘電体バリア放電管では、密封容器の誘電体が、点灯後において高周波電流に対し比較的高いインピーダンスとして作用し、点灯後に過大電流が流れるのを防止する限流作用が放電管自体にあるので、限流用のインダクタンス素子をわざわざ付加する必要がないという利点があることは、例えば特許文献2の記載から明らかである。
【特許文献1】特開2003−31182号公報(第2図)
【特許文献2】特開平11−307051号公報(段落番号[0019])
【発明の開示】
【0009】
本発明の目的は、簡単な構造で、つまり誘電体密封容器内に補強部材を設けることなく、十分な強度の厚味をもった誘電体容器を用いて比較的広い面積の誘電体バリア放電管に対しても、比較的低い電圧で駆動することができ、かつ電力損失が少ない誘電体バリア放電管駆動回路を提供することにある。
【0010】
本発明の一態様では、誘電体を有し、放電ガスが封入された密封容器と、該密封容器に前記誘電体及び前記放電ガスを挟んだ形で対向するように設けられた一対の電極とを有する誘電体バリア放電管の駆動回路が提供される。駆動回路は、前記一対の電極間に印加される高周波電力を生成する駆動交流発生回路と、前記駆動交流発生回路と前記放電管との間に直列に設けられたリアクトル部材とを備える。
【0011】
本発明によれば駆動回路から見た誘電体バリア放電管のインピーダンスは、リアクトル成分部材のインピーダンスにより放電空間を形成する誘電体の静電容量のインピーダンスが減少したものに相当する。インピーダンスの減少により、駆動電圧を小さくでき、従ってそれ自体で十分な機械的強度が得られる厚さの誘電体を使用することができ、また力率も改善され、損失が少なくなる。更に、放電管の構造を複雑にする必要がなく、発光面が比較的広い面積のもので小型、軽量化することが可能となる。なお、放電空間を形成する誘電体は、2枚の平板からなる平面型、または2つの湾曲した板からなる筒型であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による駆動回路の基本構成例を示す図。
【図2A】図1の駆動回路の点灯前の等価回路を示す図。
【図2B】図1の駆動回路の点灯安定状態の等価回路を示す図。
【図2C】図1の駆動回路の簡略化された等価回路を示す図。
【図3】駆動回路から放電管を見たインピーダンス周波数特性例を示す図。
【図4】本発明の第1実施例の駆動回路を示す回路図。
【図5】本発明の第2実施例の駆動回路を示す回路図。
【図6A】図5の駆動回路の等価回路を示す図。
【図6B】図5の駆動回路の等価漏洩リアクタンスを測定する回路例を示す図。
【図7A】図5の駆動回路の漏洩トランス37の例を示す図。
【図7B】図5の駆動回路の漏洩トランス37の別例を示す図。
【図8】従来の平面型放電管駆動回路を示す図。
【図9A】従来の筒型放電管の図9Bの9A−9A線に沿った断面図。
【図9B】図9Aの筒型放電管の9B−9B線に沿った断面図。
【図10A】別の従来の筒型放電管の図10Bの10A−10A線に沿った断面図。
【図10B】図10Aの筒型放電管の10B−10B線に沿った断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[基本構成]
図1を参照して本発明の誘電体バリア放電管駆動回路の基本構成を平面型放電管を例として説明する。本発明においては駆動交流発生回路31からの例えば10kHz〜100kHz程度の高周波電力は、リアクトル部材32を介して平面型放電管19に印加される。放電管19の各部は、図8と対応する部分については同一参照番号を付けてある。以下に、このリアクトル部材32の作用効果と好ましいインダクタンス値を説明する。
【0014】
この平面型放電管19を含む等価回路を図2に示す。図2Aは放電管19が点灯前の状態を示す。この状態で、リアクトル部材32のインダクタンスLe(正しくは、インダクタンス値がLeのインダクタンス素子を表わす。以下も同様な表現を用いる)と、誘電体平板11及び12の各板厚と対応した静電容量C1及びC2と、誘電体平板11及び12間の放電空間の静電容量C3と、の直列回路に駆動交流発生回路31の電圧Eの高周波電力が印加される。
【0015】
放電管19が点灯すると図2Bに示すように、誘電体板11及び12の容量C1及びC2に対し、それぞれ抵抗R1及びR2が直列に挿入され、放電空間の容量C3と並列に抵抗R3が接続され、またリアクトル部材32のインダクタンスLeに抵抗R4が直列に接続され、また駆動交流発生回路31の内部抵抗rが直列に接続される。放電空間の抵抗R3は、放電電流に対する抵抗であり、これは著しく小さい。従って、放電空間の容量C3は、抵抗R3によりほぼ短絡された状態になる。
【0016】
図2Bの等価回路は、図2Cに示すように同一成分をまとめることで簡略化することができる。つまりインダクタンスLeと、容量Ceと、抵抗Reとの直列回路に交流電力Eが印加される。容量Ceは、主として容量C1とC2の直列容量であり、抵抗Reは各抵抗R1,R2,R3,rの直列抵抗である。
【0017】
図2Cに示すこの等価回路から理解されるように、リアクトル部材32の誘導性インピーダンスが誘電体平板11及び12の容量性インピーダンスの少なくとも一部を打消すので、点灯状態での印加電圧を低くすることができ、かつ力率も改善される。このリアクトル部材32のインダクタンスLeは、図2Cに示した等価回路が共振した時のインピーダンスより大きく、かつリアクトル部材32を設けない場合のインピーダンスより小さくなるように、選定される。つまり、駆動交流発生回路31から見た放電管19の合成インピーダンスZは、次式で表わせる。
【0018】
=Re+j[ωLe−1/(ωCe)] (1)
この合成インピーダンスZの周波数特性は、図3に示す実線で示される。一方、リアクトル部材32を設けない場合のインピーダンスZiの周波数特性は、図3中の破線で示される。この図3から明らかなように、Zは、高周波電力の周波数f(ω/2π)が低い状態ではZiよりわずかに小さく、共振周波数F(2πF=ω,ω=√(1/(LeCe)))に近づくと比較的急に減少し、Fより高くなると比較的急激に増大する。一方、Ziは、周波数が高くなるに従って徐々に小さくなる。共振周波数FではインピーダンスZは、Reで示されるように著しく小さくなり、過大な電流が流れる。従って、駆動交流発生回路31が発生する高周波電力の周波数fuにおいて、ZがZiより小さく、かつZが共振状態にならないようにインダクタンスLeを選定すればよい。つまり、誘電体バリア放電管はそれ自体限流作用があるから、限流用インピーダンス素子を挿入する必要がないと考えられるが、誘電体バリア放電管では放電管自体のインピーダンスZiが大き過ぎるため、本発明では誘電体バリア放電管自体のインピーダンスZiとの合成インピーダンスZが目的とする限流値に設定されるように、リアクトル部材32を用いて、誘電体バリア放電管自体のインピーダンスZiを下げている。この技術は、従来の蛍光灯において放電状態における蛍光灯自体のインピーダンスを高くするために限流作用インピーダンス素子を挿入する技術とは考え方が基本的に異なる。
【0019】
誘電体バリア放電管では広い面積の対向電極の各部(点)間で同時に放電が開始されるのではなく、どこかの一部で放電が開始され、その放電が広がってゆき、全面が放電状態になる。この点からも放電状態ではある程度の大きさインピーダンスZが必要となる。必要なインピーダンスは電極14,15の面積が大きい程大きく、また放電管19の放電ガスの圧力が大きい程大きくなる。従って、合成インピーダンスZが放電管19の一様な発光に必要な限流インピーダンスに設定されるように、インダクタンスLeが選定される。
【0020】
更に、放電ガスは水銀を含まないことが環境問題の点から望ましい。この点で無水銀放電ガスとしては現在の所、Xe(キセノン)ガスが有効とされている。Xeガスは周波数が高くなると発光効率が下る。従って、図3中に示すように、使用高周波周波数fuが合成インピーダンスZの共振周波数Fより低く、かつ周波数fuにおけるインダクタンスLeのインピーダンス2πfuLeを周波数fuでのインピーダンスZiから減少することにより得られたインピーダンスZ01が、放電状態で必要な限流インピーダンスZ01に設定されるように、インダクタンスLeを選定することが好ましい。なお、前記発光効率にあまり影響を与えない場合、周波数fuが共振周波数Fより高い状態で限流インピーダンスZ01が設定されるようにインダクタンスLeを選定してもよい。つまり、使用周波数fuが共振特性曲線の急傾斜部26,27に位置するようにLeが選定されてもよい。
【0021】
[第1実施例]
図4を参照して本発明の第1実施例の誘電体バリア放電管駆動回路を説明する。駆動交流発生回路31では、直流電源23から直流電力がインバータ33により高周波電力に変換される。この高周波電力が昇圧用トランス25により、例えば12V程度から1kV〜2kV程度に昇圧され、この昇圧された高周波電力が、リアクトル部材32としてのインダクタンス素子32aを介して平面型放電管19に印加される。直流電源23は、例えば図8中に示したように商用交流電力を整流して直流電力を得るように構成されてもよい。
【0022】
インバータ33は、従来と同様の構成を用いてもよい。例えば、図4に示すように、スイッチング素子Q1及びQ2の直列回路と、スイッチング素子Q3及びQ4の直列回路とが直流電源23に接続されている。スイッチング素子Q1及びQ2の接続点とスイッチング素子Q3及びQ4の接続点との間にトランス25の1次コイルが接続される。直流電源23に駆動回路34が接続されている。駆動回路34により、その内の発振器35の発振信号が分配されて、スイッチング素子Q1〜Q4が駆動され、スイッチング素子Q1及びQ4を同時にオン、スイッチング素子Q2及びQ3をオフとすることと、スイッチング素子Q2及びQ3を同時にオン、スイッチング素子Q1及びQ4をオフにすることが交互に行われる。このようにスイッチング素子を駆動することにより、トランス25の1次コイルに発生した高周波交流電力がトランス25により昇圧される。
【0023】
リアクトル部材32としてのインダクタンス素子32aのインダクタンス値Leは、例えばインダクタンス素子32aを接続しない状態で平面型放電管19の点灯状態でのインピーダンスZiを測定し、このインピーダンスZiからインピーダンスjωLeを差し引くことにより得られた値が目的とする限流インピーダンスZ01に設定されるように、選定される。つまり、次式を満すLeを用いる。
【0024】
Le=(Zi−Z01)/(2πfu) (2)
あるいは、使用する誘電体平板11及び12の静電容量C1及びC2や図2C中の等価抵抗Reを計算により求めることができることから、式(2)を全て計算により求めてもよい。このLeの選定は、前述の記載から明らかなように、それ程、正確に決める必要ななく、使用周波数fuが共振周波数Fの比較的近傍でその前後になるようにLeを選定してもよい。
【0025】
インダクタンス素子32aを、トランス25の2次側に設ける代りに、図4中に破線で示すようにインダクタンス素子32bがトランス25の1次コイルと直列に設けられてもよい。このようにすると、トランス25の2次側にインダクタンス素子を設ける場合よりも、インダクタンス素子32bの耐電圧、及びインダクタンス素子32bと駆動交流発生回路31の筐体との耐電圧を低く設定することができ、絶縁が容易になる。
【0026】
このようにインダクタンス素子32a又は32bを用いることにより、前述したような本発明の利益が得られる。更に、インバータ33の出力信号が方形波であっても、インダクタンス素子32a又は32bの挿入により直列共振に近い動作状態が得られるため、平面型放電管19に印加される電圧波形が正弦波に近くなり、外部に高周波雑音を発生しないという点でも利益が得られる。
【0027】
上述したようにインダクタンス値Leを設定しても、必ずしも適切な状態にならない場合がある。このため図4中に示すようにインバータ33内の発振器35の発振周波数決定素子の一部として例えば可変抵抗器36を発振器35に接続して、発振器35の発振周波数、つまり使用周波数fuを調整して、点灯状態での限流電流が目的とする値に設定されようにすることが好ましい。このように高周波電力の周波数fuを精密に調整することにより、平面型放電管19の種類や管の製造ばらつきによる共振点Fのずれを容易に吸収できる。
【0028】
[第2実施例]
本発明の第2実施例の誘電体バリア放電管駆動回路を図5を参照して説明する。この第2実施例では、交流電力発生回路31よりの高周波交流電力がリアクタンス部材32としての漏洩トランス37を介して平面型放電管19に印加される。図5に示す例では、インバータ33の出力に、図4中のトランス25の代りに漏洩トランス37が接続され、この漏洩トランス37に平面型放電管19が直接接続される。例えば、ネオン灯の点灯に用いられるネオントランスは、点灯状態での過電流を防止するために用いられている。しかし、先に述べたように誘電体バリア放電管においてはそれ自体が限流作用をもっているため、図8に示すようにトランス25としては漏洩トランスは用いられていなかった。この第2実施例では漏洩トランス37のリアクタンス成分が平面型放電管19の点灯状態での静電容量成分を打消し、つまり両者による共振状態に近づくように構成される。
【0029】
この第2実施例の等価回路が図6Aに示す構成となることは、通常のトランスまた漏洩トランスについての周知の等価回路から明らかである。つまり、駆動交流発生回路31にはインダクタンスL1及び抵抗4の並列回路が接続されると共に、インダクタンスL2及び抵抗5の直列回路を介して平面型放電管19が接続される。つまり、正しくは、この等価インダクタンスL2がリアクタンス部材32のリアクタンスとして作用する。
【0030】
従って、第2実施例では、インダクタンスL2が先に述べたインダクタンス素子32a又は32bのインダクタンス値と同様な値になるように選定される。例えば、図6Bに示すように漏洩トランス37の2次側を短絡し、その短絡電流Iを電流計38により測定する。この短絡電流Iは、印加高周波電圧EとL2と印加高周波電圧周波数fuとの関係がI=E/(j2πfuL2)である。電圧Eを小さい値から徐々に大きくして、電流Iが平面型放電管19の点灯状態における定格電流になるように電圧Eを設定する。この時のEとI及びfuからL2が求められる。L2は磁束の漏洩量と比例するから、漏洩量を調整してL2、つまりリアクタンスLeを前述した値に設定することができる。
【0031】
漏洩トランス37の例を図7に示す。図7Aでは、2つのE字型磁心41及び42の各々の脚部41a,41b,41c及び42a,42b,42cの端面を互いに突き合わせ、その中側の各脚部41b及び42bに1次コイル37p及び2次コイル37sがそれぞれ巻回される。1次コイル37p及び2次コイル37sの間において、両外側の脚部41a及び41cに、中の脚部41b,42b側に突出した磁性材の漏洩磁気部43a及び43bがそれぞれ連結される。漏洩磁気部43a及び43bと脚部41b,42bとの間の磁気空隙44a及び44bの間隔や対向面積により漏洩磁束量、つまり漏洩インダクタンスL2が決定される。図7Bに示すように、漏洩磁気部43a及び43bを省略して、E字型磁心41及び42の中の脚部41b及び42bを互いに対接させることなく、これら間に磁気空隙44を設けてもよい。漏洩トランス37は、壺型磁心、内鉄型など各種構成のものであってもよく、また特に、磁気空隙を設けなくても高周波電力の周波数fuが高いため漏洩磁束が生じるようなトランスでもよい。
【0032】
この第2実施例によれば、漏洩トランス37により昇圧トランス25とリアクトル部材32とが兼用され、部品点数が少なく、コストも低い。この第2実施例においても、限流インピーダンスZが適切な値に設定されるように、高周波電力の周波数を調整可能な構成を併用することができる。
【0033】
上述においてインバータ33は、ブリッジ型に限らず、センタータップ型、増幅器型など他の構成のものを採用してもよい。
本発明は、平面型放電管のみならず、図9及び図10に示した筒型放電管にも同様に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体を有し、放電ガスが封入された密封容器と、該密封容器に前記誘電体及び前記放電ガスを挟んだ形で対向するように設けられた一対の電極とを有する誘電体バリア放電管の駆動回路であって、
前記一対の電極間に印加される高周波電力を生成する駆動交流発生回路と、
前記駆動交流発生回路と前記放電管との間に直列に設けられたリアクトル部材とを備えることを特徴とする誘電体バリア放電管駆動回路。
【請求項2】
前記リアクトル部材はインダクタンス素子であることを特徴とする請求項1記載の誘電体バリア放電管駆動回路。
【請求項3】
前記リアクトル部材は漏洩トランスであることを特徴とする請求項1記載の誘電体バリア放電管駆動回路。
【請求項4】
前記駆動交流発生回路は直流電力を前記高周波電力に変換するインバータを備え、該インバータは前記高周波電力の周波数を調整する手段を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘電体バリア放電管駆動回路。
【請求項5】
前記駆動交流発生回路から見た負荷のインピーダンスが前記放電管の一様な発光に必要な限流インピーダンスに設定されるように、前記リアクトル部材のインダクタンス値が選定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘電体バリア放電管駆動回路。
【請求項6】
前記リアクトル部材のインダクタンス成分と前記放電管の負荷静電容量成分とによる直列共振状態が設定され、かつ、その共振周波数より前記高周波電力の周波数が低くなるように、前記インダクタンス成分のインダクタンス値が選定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘電体バリア放電管駆動回路。
【請求項7】
前記リアクトル部材のインダクタンス成分と前記放電管の負荷静電容量成分とにより直列共振状態が設定され、かつ、その共振インピーダンス周波数特性曲線における急傾斜部に前記高周波電力の周波数が位置するように、前記インダクタンス成分のインダクタンス値が選定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘電体バリア放電管駆動回路。
【請求項8】
前記リアクトル部材のインピーダンスが前記放電管のインピーダンスの少なくとも一部を打消すように、前記インダクタンス成分のインダクタンス値が選定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘電体バリア放電管駆動回路。
【請求項9】
前記リアクトル部材のインダクタンス成分と前記放電管の負荷静電容量成分とにより直列共振状態が設定され、前記駆動交流発生回路の高周波電力の周波数が共振周波数の近傍に設定されるように、前記インダクタンス成分のインダクタンス値が選定されていることを特徴とする請求項8に記載の誘電体バリア放電管駆動回路。
【請求項10】
前記リアクトル部材のインダクタンス成分と前記放電管の負荷静電容量成分とにより直列共振状態が設定され、前記駆動交流発生回路の高周波電力の周波数が共振周波数より低くなるように、前記インダクタンス成分のインダクタンス値が選定されていることを特徴とする請求項8に記載の誘電体バリア放電管駆動回路。
【請求項11】
前記駆動交流発生回路は、高周波電力を昇圧する昇圧トランスを含み、前記リアクトル部材は前記昇圧トランスと前記放電管との間に直列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の誘電体バリア放電管駆動回路。
【請求項12】
前記駆動交流発生回路は、1次コイルと2次コイルとを有し、高周波電力を昇圧する昇圧トランスを含み、前記リアクトル部材は前記昇圧トランスの前記1次コイルと直列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の誘電体バリア放電管駆動回路。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【国際公開番号】WO2005/067353
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516900(P2005−516900)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000128
【国際出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000144544)レシップ株式会社 (179)
【Fターム(参考)】