説明

誘電加熱発熱体とその製造方法

【課題】容易に製造することができるとともに、柔軟な実用性を有し、短時間で高い発熱温度を得ることが可能な誘電加熱発熱体とその製造方法を提供する。
【解決手段】誘電加熱発熱体は、非金属無機材料製の本体と、本体の表面上に形成された、四三酸化鉄と非金属無機材料とを含む発熱層とを備える。誘電加熱発熱体の製造方法は、非金属無機材料製の本体の表面上に、四三酸化鉄と非金属無機材料とを含むスラリー状の層を塗布した後、乾燥し、焼成することによって発熱層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には誘電加熱発熱体とその製造方法に関し、特定的には電子レンジ等にて出力されるマイクロ波の作用によって被加熱物自体が発熱する誘電加熱体とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、誘電加熱により発熱する発熱体として、被調理品に適度な焦げ目を付けるための電子レンジ調理用マイクロ波吸収発熱体は、たとえば、特開平8−231262号公報(特許文献1)に記載されているように知られている。この電子レンジ調理用マイクロ波吸収発熱体は、四三酸化鉄20〜70重量%と残部が粘土からなる混合物を焼成して成る焼結体である。また、この電子レンジ調理用マイクロ波吸収発熱体の製造方法は、四三酸化鉄20〜70重量%と残部が粘土からなる混合物を温度が1100〜1500℃、かつ酸素濃度が5%以下の雰囲気中で焼成する方法である。
【0003】
また、電子レンジでの加熱調理により破損する恐れがない電子レンジ用発熱皿は、たとえば、特開2001−128847号公報(特許文献2)に記載されている。この電子レンジ用発熱皿は、表面に釉薬層を有する皿本体の底部に、加熱媒体物を転写し、これをフラックス層の溶融温度で焼成することにより皿本体の釉薬層と加熱媒体物のフラックス層を溶融一体化し、皿本体の底部に発熱物質の薄膜を一体に添設固定することによって製造される。上記の加熱媒体物は、台紙上にフラックス層、フェライト層、フラックス層を順次積層状に印刷して、フェライト層をフラックス層でサンドイッチ状に挟み込み、表面をカバーコートで覆って転写紙構造に構成したものである。
【0004】
さらに、電子レンジ用の食器が、たとえば、特開平7−88032号公報(特許文献3)に記載されている。この電子レンジ用の食器は、陶磁器材料から成る食器内に、フェライトを主成分とした発熱体を埋設したものである。
【0005】
さらにまた、マイクロ波吸収発熱体が、たとえば、特許第3708225号公報(特許文献4)に記載されている。このマイクロ波吸収発熱体は、耐熱性高分子材料中に、粒径分布のピークを3〜5μmに調整したフェライト材料と、粒径分布のピークを10〜50μmに調整したフェライト材料とを分散させたものである。
【0006】
たとえば、特開平8―309276号公報(特許文献5)に記載されたマイクロ波発熱体は、セラミック成形体に酸化チタン粉末またはフェライト粉末を分散した耐熱性樹脂溶液を塗布乾燥してなるものである。
【0007】
特開平9−249269号公報(特許文献6)に記載されたマイクロ波吸収発熱性の調理容器は、マイクロ波が透過自在とされた調理容器基材の外表面に、自己温度制御性を有するマイクロ波発熱性金属酸化物層が設けられてなるものである。
【0008】
また、エネルギーの損失がない電子レンジ用皿が、たとえば、特開平5−21155号公報(特許文献7)で提案されている。この電子レンジ用皿は、金属、ガラス又は陶器より造られた回転皿本体の表面に電磁波吸収体が形成されている。電磁波吸収体の材料は、フェライト電磁波吸収材、カーボン電磁波吸収材、誘電材電磁波吸収材、カーボフェライト電磁波吸収材又は他の電磁波吸収材が使用される。
【特許文献1】特開平8−231262号公報
【特許文献2】特開2001−128847号公報
【特許文献3】特開平7−88032号公報
【特許文献4】特許第3708225号公報
【特許文献5】特開平8―309276号公報
【特許文献6】特開平9−249269号公報
【特許文献7】特開平5−21155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、誘電加熱、特にマイクロ波加熱によって短時間で数百℃程度まで発熱する誘電加熱発熱体は、製造販売されていない。
【0010】
特開平8−231262号公報(特許文献1)に記載された発熱体は、その材料として四三酸化鉄を利用しているが、焼結体の塊で構成されるものである。このため、焼成収縮時において塊としての保形性を維持するために四三酸化鉄の含有量を70重量%以下に限定している。したがって、短時間で高い発熱温度を得ることができない。また、焼成雰囲気が限定されているので、工業的に生産する場合には製造コストが高くなる。さらに、得られた発熱体の外観は黒くなるので、この発熱体は陶磁器製品としては不適切なものである。
【0011】
また、特開2001−128847号公報(特許文献2)に記載された皿本体の底部に固定される発熱物質の薄膜は、フラックス層で挟まれたフェライト層を転写によって形成するものである。このため、釉薬を施した耐熱容器にしか発熱物質の薄膜を形成することができず、容器の側面を含む容器の内側全体を発熱物質の薄膜で覆うことができない。また、容器の平面には発熱物質の薄膜を固定することができるが、容器の複雑な曲面には薄膜を固定することができないので、使用用途が限定される。さらに、形成される発熱物質としてのフェライト層の厚みは20μm程度と薄いので、短時間で高い発熱温度を得ることができない。
【0012】
さらに、特開平7−88032号公報(特許文献3)に記載された電子レンジ用の食器は、発熱体を埋設することによって構成されるので、製造方法が容易ではなく、充分な発熱量を得ることが困難である。
【0013】
さらにまた、特許第3708225号公報(特許文献4)と特開平8―309276号公報(特許文献5)に記載されたマイクロ波発熱体は、発熱体材料を高分子材料または樹脂の中に分散させているため、塗布後に高温で焼成することができないとともに、実用時に数百℃の高温に耐えることができない。また、これらのマイクロ波発熱体では、充分な発熱量を得ることは困難である。
【0014】
なお、特開平9−249269号公報(特許文献6)に記載されたマイクロ波吸収発熱性の調理容器では、短時間で高い発熱温度を得ることができない。
【0015】
また、特開平5−21155号公報(特許文献7)に記載された電子レンジ用皿でも、130℃程度の発熱温度しか得られず、充分な発熱量を得ることは困難である。
【0016】
そこで、この発明の目的は、容易に製造することができるとともに、柔軟な実用性を有し、短時間で高い発熱温度を得ることが可能な誘電加熱発熱体とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した背景技術における問題点の検討に基づいて、本発明者は、さまざまな局面から誘電加熱発熱体、特にマイクロ波加熱による発熱体の構成を検討して鋭意研究を重ねた。その結果、発熱材料を四三酸化鉄に限定するとともに、発熱材料を層状の形態で形成することによって、短時間でより高い発熱温度を達成することができることを見出した。このような発明者の知見に基づいて本発明はなされたものである。
【0018】
この発明に従った誘電加熱発熱体は、非金属無機材料製の本体と、本体の表面上に形成された、四三酸化鉄と非金属無機材料とを含む発熱層とを備える。
【0019】
この発明の誘電加熱発熱体は、発熱作用をもたらす発熱要素が、非金属無機材料製の本体の表面上に層状の形態で形成されている。また、発熱要素が四三酸化鉄と非金属無機材料とを含む。これにより、種々の形状の非金属無機材料製の本体の表面上に発熱層を容易に形成することができ、短時間で高い発熱温度を得ることが可能となる。
【0020】
この発明の誘電加熱発熱体においては、発熱層は、四三酸化鉄を70質量%以上含むことが好ましい。
【0021】
このようにすることにより、短時間で高い発熱温度を得ることができる。また、発熱層は四三酸化鉄を70質量%以上含むが、焼成後において層の形状を維持することができる。
【0022】
また、この発明の誘電加熱発熱体においては、本体の単位表面積当たりの四三酸化鉄の付着量は、15mg/cm以上であることが好ましい。
【0023】
このようにすることにより、短時間で高い発熱温度を得ることができる。
【0024】
さらに、この発明の誘電加熱発熱体においては、本体の単位表面積当たりの四三酸化鉄の付着量は、30mg/cm以上70mg/cm以下であることが好ましい。
【0025】
このようにすることにより、短時間で高い発熱温度を安定して得ることができる。
【0026】
この発明の誘電加熱発熱体においては、発熱層は、本体の表面上に直接形成されていることが好ましい。
【0027】
この発明の誘電加熱発熱体においては、発熱層は、本体の少なくとも一部分の表面上に形成されていることが好ましい。
【0028】
この発明の誘電加熱発熱体においては、発熱層は、所定のパターンに従って本体の表面上に形成されていてもよい。
【0029】
この発明の誘電加熱発熱体は、発熱層の表面上に形成された非金属無機材料層をさらに備えていてもよい。
【0030】
また、この発明の誘電加熱発熱体は、発熱層の表面上に形成された釉薬層をさらに備えていてもよい。
【0031】
この発明に従った誘電加熱発熱体の製造方法は、非金属無機材料製の本体の表面上に、四三酸化鉄と非金属無機材料とを含むスラリー状の層を塗布した後、乾燥し、焼成することによって発熱層を形成する。
【発明の効果】
【0032】
以上のようにこの発明によれば、種々の形状の非金属無機材料製の本体の表面上に発熱層を容易に形成することができ、短時間で高い発熱温度を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
非金属無機材料製の本体として、たとえば、セラミックス製または陶磁器製の本体の表面上に、発熱層として、四三酸化鉄を主成分とするマイクロ波吸収発熱層を形成する。
【0034】
マイクロ波吸収発熱層は、次のようにして形成される。まず、四三酸化鉄と、非金属無機材料、たとえば、粘土、長石、珪石及びペタライトなどの一般窯業原料とを混合する。この混合物に、さらにCMC(カルボキシル酸メチルセルロース)やPVA(ポリビニルアルコール)等の粘性成分と糊分を添加したものに水を加え、必要に応じて分散剤を加えて充分に撹拌して均一に分散させる。このようにしてスラリー状の混合物を作製する。ここで、スラリーとは、液体の中に固形物が分散したもので、固形物の質量割合が5〜90質量%のものをいう。その後、このスラリー状の混合物をセラミックス製または陶磁器製の本体の上に塗布し、乾燥させた後、焼成することによって発熱層を形成する。
【0035】
陶磁器製の本体は、任意の形状の未焼成の成形体、素焼きの成形体、または焼き締めされた素地の成形体でもよい。上記のスラリー状の混合物の塗布方法は特に限定されないが、陶磁器製の本体の表面に沿ってスラリー状の混合物を流し込むこと、スラリー状の混合物の中に陶磁器製の本体を浸けること、何らかの方法でスラリー状の混合物を陶磁器製の本体の表面上に部分的に塗布して模様をつけること、スラリー状の混合物を陶磁器製の本体の上にスプレーによって吹き付けること等によって行ってもよい。このようにして、全く任意の形状の陶磁器製の本体の表面上にスラリー状の混合物を塗布することができる。
【0036】
上述のようにして陶磁器製の本体の表面上に任意の厚みのスラリー状の混合物の層を付着させ、乾燥させた後、通常の陶磁器製品と同様にして焼成することにより、誘電加熱によって発熱可能な陶磁器製の発熱体、たとえば、陶磁器製の容器が得られる。
【0037】
このとき、スラリー状の混合物の層の上に、さらに、非金属無機材料層および/または釉薬層を形成することにより、たとえば、化粧泥、釉薬を付着させることにより、外観上、通常の陶磁器製品と同様の形態のものが得られる。
【0038】
また、本発明の発熱体を形成するための焼成雰囲気は、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気、水素等の還元雰囲気である必要はなく、空気雰囲気でも問題はない。
【0039】
本発明の発熱体の発熱量を制御するために、発熱層に含まれる四三酸化鉄の質量割合、および/または、陶磁器製の本体の単位面積当たりの四三酸化鉄の付着量、すなわち、スラリー状の混合物の層の塗布単位面積当たりの四三酸化鉄の付着量を制御する。
【0040】
高い発熱量、結果として短時間で高い発熱温度を得るためには、四三酸化鉄の質量割合を70質量%以上とする。四三酸化鉄の質量割合が多くなれば、高い発熱量を得ることが可能となるが、四三酸化鉄の質量割合が多くなるほど、スラリー状の混合物を作製した後の工程の実施が困難になる、たとえば、スラリー状の混合物の層の塗布が困難になる、焼成後に層に亀裂が生じる等の問題が生じる。このため、四三酸化鉄の質量割合は70質量%〜90質量%が好ましく、より好ましくは70質量%〜80質量%である。
【0041】
また、高い発熱量、結果として短時間で高い発熱温度を得るためには、陶磁器製の本体の単位面積当たりの四三酸化鉄の付着量を15mg/cm以上とする。四三酸化鉄の付着量が15mg/cm以上であれば、高い発熱量を得ること、すなわち、短時間で高い発熱温度を達成することが可能となるが、四三酸化鉄の付着量が多くなるほど、スラリー状の混合物を作製した後の工程の実施が困難になる、たとえば、スラリー状の混合物の層の塗布が困難になる、焼成後に層に亀裂が生じる等の問題が生じる。この問題を解消するとともに、短時間で高い発熱温度を安定して得るためには、四三酸化鉄の付着量は30mg/cm〜70mg/cmが好ましい。
【0042】
電子レンジにて出力されるマイクロ波の作用によって本発明の誘電加熱発熱体を加熱すると、発熱層の付着面積が小さいほど、発熱層の付着箇所の加熱速度は速くなる。
【0043】
全体として発熱層の付着面積がほぼ一定になるようにして、一定の領域に連続して重ねてスラリー状の混合物の層を塗布してもよく、付着領域を分割してスラリー状の混合物の層を塗布してもよい。この場合、付着領域を分割してスラリー状の混合物の層を塗布することにより、四三酸化鉄の付着量を容易に制御することができ、発熱層によって得られる発熱量の制御も容易になる。
【0044】
実際の製品の形状と寸法、すなわち、陶磁器製の本体の形状と寸法に応じて、スラリー状の混合物の層の塗布の仕方、つまり、塗布面積、塗布量、塗布形態(連続塗布、分割塗布)等を変えることができる。
【0045】
上述のようにして製造された本発明の誘電加熱発熱体、たとえば、陶磁器製品を電子レンジに入れて加熱すると、陶磁器製品の温度は、たとえば、陶磁器製品に載せられた食品に焦げ目を付けられることが可能な温度まで短時間で上昇する。
【0046】
このように短時間で高い発熱温度が得られることを利用して、用途の一例として本発明の誘電加熱発熱体を食品調理用容器に用いることができる。この場合、陶磁器製容器の内側面に発熱層を形成し、この容器を電子レンジで数分間加熱した後、食品を容器内に設置し、さらに電子レンジで加熱することによって、電子レンジにて出力されるマイクロ波の作用による食品自体の加熱と、電子レンジにて出力されるマイクロ波の作用により発熱することによって加熱された陶磁器製容器を介した遠赤外線による食品の加熱との両方の加熱作用を期待することができる。このような調理方法を行うことにより、今まで電子レンジ単独では調理できなかった料理も可能になる。このような料理としては、たとえば、焼き魚や焼きイモなどが挙げられる。
【0047】
焼き魚を電子レンジ単独で調理すると、魚の水分だけが加熱されるため、魚の表面に焦げ目はつかない。また、電子レンジ単独によって調理された焼き魚は、食べても美味が不充分である。
【0048】
焼きイモを電子レンジ単独で調理すると、イモは柔らかくはなるが、甘みが不充分な状態になる。これは、電子レンジ加熱ではイモの酵素がでんぷんを糖に変える温度を維持することができないために甘みが増さないからである。
【0049】
この発明の誘電加熱発熱体を適用した調理容器を用いることにより、マイクロ波の作用により発熱することによって加熱された陶磁器製容器を介して、マイクロ波のエネルギーを遠赤外線に変換して調理を行うことができる。陶磁器製容器の余熱等を利用すると、魚の表面に焦げ目を付けることができ、イモの酵素が働く温度を維持できるために甘い焼きイモを調理することができる。
【0050】
本発明の誘電加熱発熱体における発熱層は、陶磁器製の本体の表面上に直接形成されることが好ましいが、陶磁器製の本体の表面上に非金属無機材料層等の介在層等を形成し、この介在層の上に形成してもよい。また、発熱層は、陶磁器製の本体の少なくとも一部分の表面上に形成されればよく、陶磁器製の本体の内側面および/または外側面に形成されてもよい。さらに、発熱層は、所定のパターンに従って陶磁器製の本体の表面上に形成されてもよく、模様、たとえば網状のパターンにして陶磁器製の本体の表面上に形成されてもよい。このようにすると、本発明の誘電加熱発熱体を用いて、食品に焦げ目の模様をつけることができる。また、陶磁器製の本体の表面上に発熱層を模様にして形成した誘電加熱発熱体を電子レンジ内で加熱した後、食品の表面に押し付けることによって食品の表面に焼印を形成することも可能である。この場合、模様は文字等であってもよい。
【0051】
なお、本発明の誘電加熱発熱体の用途として調理用容器以外にも多くの用途が考えられる。一例をあげると、陶磁器製アイロンやホットストーン等の健康用具として本発明の誘電加熱発熱体を利用することが考えられる。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
本発明の誘電加熱発熱体において発熱層の材料として用いられる四三酸化鉄と他の発熱物質とを比較するために、以下に示す試験を行った。
【0053】
厚みが12mmで大きさが50mm×45mmの陶器製の試験片(温度800℃で焼成されたもの)の表面上に、各種発熱物質を含むスラリー状の混合物の層を塗布し、乾燥させた後、温度1200℃で焼成した。得られた各種の誘電加熱発熱体を電子レンジ内にて出力500Wで20秒間加熱し、加熱後の到達温度を測定した。到達温度を3回測定し、その平均値を測定結果として表1に示す。
【0054】
なお、スラリー状の混合物は、以下の表1に示す各種発熱物質とペタライトとにCMC0.4質量%と水とを加えて混合することによって作製した。表1中の発熱物質[質量%]は発熱物質/(発熱物質+ペタライト)の質量割合を示す。スラリー状の混合物の層の塗布厚みは、約0.3mmとして一定にした。
【0055】
本発明の実施例1で用いられた発熱物質としての四三酸化鉄は、キンセイマテック株式会社製の磁砂鉄 #200であった。
【0056】
電子レンジはシャープ株式会社製の型式 RE−15V5を用いた。使用温度計は、本体として日置製の型式 3412−50、プローブとして日置製の型式 9181を用いた。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示す結果から、陶器の上に層状に発熱物質を形成したとき、四三酸化鉄は他の発熱物質より発熱量が高く、発熱温度が200℃以上に到達することがわかる。
【0059】
(実施例2)
本発明の誘電加熱発熱体において発熱層の材料として用いられる四三酸化鉄の質量割合を変えて、以下に示す試験を行った。
【0060】
厚みが12mmで大きさが50mm×45mmの陶器製の試験片(温度800℃で焼成されたもの)の表面上に、四三酸化鉄を含むスラリー状の混合物の層を塗布し、乾燥させた後、温度1200℃で焼成した。得られた各種の誘電加熱発熱体を電子レンジ内にて出力600Wで20秒間加熱し、加熱後の到達温度を測定した。到達温度を4回測定し、その平均値を測定結果として表2に示す。
【0061】
なお、スラリー状の混合物は、以下の表2に示す質量割合の四三酸化鉄とペタライトとにCMC0.4質量%と水とを加えて混合することによって作製した。表2中の四三酸化鉄[質量%]は四三酸化鉄/(四三酸化鉄+ペタライト)の質量割合を示す。スラリー状の混合物の層の塗布厚みは、約0.25mmとして一定にした。
【0062】
本発明の実施例2〜6と比較例14〜17で用いられた四三酸化鉄は、キンセイマテック株式会社製の磁砂鉄 #200であった。
【0063】
電子レンジは松下電器産業株式会社製の型式 NE−S33Fを用いた。使用温度計は、AVIO製の型式 TVS−600のサーモビューを用いた。
【0064】
【表2】

【0065】
表2に示す結果から、四三酸化鉄の質量割合が70質量%以上のとき、発熱量が高く、発熱温度が200℃程度に到達することがわかる。
【0066】
(実施例3)
本発明の誘電加熱発熱体において発熱層の材料として用いられる四三酸化鉄の付着量を変えて、以下に示す試験を行った。
【0067】
厚みが8mmで大きさが54mm×48mmの陶器製の試験片(温度800℃で焼成されたもの)の表面上に、四三酸化鉄を75質量%含むスラリー状の混合物の層を塗布し、乾燥させた後、温度1200℃で焼成した。得られた各種の誘電加熱発熱体を電子レンジ内にて出力600Wで10秒間、20秒間加熱し、加熱後の到達温度を測定した。10秒間加熱後と20秒間加熱後の到達温度をそれぞれ3回測定し、その平均値を測定結果として表3に示す。
【0068】
なお、スラリー状の混合物は、以下の表3に示す実施例7〜16では四三酸化鉄75gとペタライト25gにCMC0.5gと水70gを加えて混合することによって作製し、実施例17、18と比較例18、19では四三酸化鉄75gとペタライト25gにCMC3.0gと水360gを加えて混合することによって作製した。
【0069】
表3中の単位面積当たり四酸化鉄の付着量[mg/cm]は次のようにして算出した。スラリー状の混合物の層の塗布回数を変えて四三酸化鉄の塗布量を変えるとともに、その塗布面積から単位面積当たりの四三酸化鉄の塗布量を算出し、単位面積当たりの四三酸化鉄の付着量を算出した。
【0070】
本発明の実施例7〜18と比較例18、19で用いられた四三酸化鉄は、キンセイマテック株式会社製の磁砂鉄 #200であった。
【0071】
電子レンジは松下電器産業株式会社製の型式 NE−S33Fを用いた。使用温度計は、AVIO製の型式 TVS−600のサーモビューを用いた。
【0072】
【表3】

表3に示す結果から、四三酸化鉄の付着量が15mg/cm以上のとき、発熱量が高く、加熱開始10秒後に発熱温度が100℃程度以上に到達することがわかる。
【0073】
以上に開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非金属無機材料製の本体と、
前記本体の表面上に形成された、四三酸化鉄と非金属無機材料とを含む発熱層とを備えた、誘電加熱発熱体。
【請求項2】
前記発熱層は、四三酸化鉄を70質量%以上含む、請求項1に記載の誘電加熱発熱体。
【請求項3】
前記本体の単位表面積当たりの四三酸化鉄の付着量は、15mg/cm以上である、請求項1または請求項2に記載の誘電加熱発熱体。
【請求項4】
前記本体の単位表面積当たりの四三酸化鉄の付着量は、30mg/cm以上70mg/cm以下である、請求項1または請求項2に記載の誘電加熱発熱体。
【請求項5】
前記発熱層は、前記本体の表面上に直接形成されている、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の誘電加熱発熱体。
【請求項6】
前記発熱層は、前記本体の少なくとも一部分の表面上に形成されている、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の誘電加熱発熱体。
【請求項7】
前記発熱層は、所定のパターンに従って前記本体の表面上に形成されている、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の誘電加熱発熱体。
【請求項8】
前記発熱層の表面上に形成された非金属無機材料層をさらに備える、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の誘電加熱発熱体。
【請求項9】
前記発熱層の表面上に形成された釉薬層をさらに備える、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の誘電加熱発熱体。
【請求項10】
非金属無機材料製の本体の表面上に、四三酸化鉄と非金属無機材料とを含むスラリー状の層を塗布した後、乾燥し、焼成することによって発熱層を形成する、誘電加熱発熱体の製造方法。

【公開番号】特開2007−227191(P2007−227191A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47663(P2006−47663)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(391048049)滋賀県 (81)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】