説明

誤送信防止機能を有する電子メール転送装置およびクライアント端末

【課題】
クライアント端末からの誤送信を防止する条件を付けた電子メールに応じて 電子メール転送装置が誤送信を防止することが可能な電子メール転送装置を提供する。
【解決手段】
電子メールの誤送信を防止する条件をクライアント端末の 送信開始条件付与部23が電子メールに送信開始条件として付与でき、 条件を付与した電子メールを受信した電子メール転送装置は、 送信開始条件抽出部13によってクライアント端末が指定する誤送信を防止する条件に応じて誤送信を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子メールが誤った宛先に送信されることを防止する誤送信防止機能を有する電子メール転送装置およびクライアント端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、営業秘密や個人情報を記憶したファイルが、電子メールに添付されて誤って本来の宛先ではない送信相手に送信されて、組織外に情報が漏洩してしまう事件が頻発し、社会問題にもなっている。
【0003】
こうした情報漏洩は、電子メールの送信者が宛先や添付すべきファイルの指定を誤るといった人の操作による誤送信によって発生する。世の中にこのような電子メールの誤送信を防止する方法は、多数考えられている。
【0004】
特許文献1には、メールの誤送信を防ぐため、予め電子メールアドレスと所属組織と役職の情報を登録し、その情報に基づいて電子メールの送信を制限する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−171523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、予め電子メールアドレス毎に制限テーブルを登録しなければならず、新規登録や登録変更または登録されていない特別なメールを送信したい場合においては、毎回サーバに制限テーブルを更新しなければならず、煩雑であり、サーバが誤送信防止をチェックする処理の負担は大きくなる。 また、正しい電子メールの送信についても、条件によって制限される可能性があり、重要な添付ファイルが添付されていた場合を考慮していない。
【0007】
本発明は上記課題に対して鑑みなされたもので、本発明の目的は、このような誤送信防止システムにおいて、電子メールの誤送信を防止する機能を使用するクライアント端末毎に選択できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の発明は、クライアント端末から電子メールを受信して所定の宛先へ転送する装置であって、前記クライアント端末から受信した電子メールを所定の宛先に転送せずに一時的に蓄積する電子メール蓄積手段と、前記クライアント端末から電子メールの送信開始条件を受信する送信開始条件受信手段と、を有し、前記クライアント端末から電子メールを受信し、当該電子メールに送信開始条件が指定されていた場合に、前記電子メール蓄積手段は、前記クライアント端末から受信した電子メールを所定の宛先に転送せずに一時的に蓄積し、前記クライアント端末が指定する送信開始条件が満たされた後に、前記電子メール蓄積手段に蓄積された電子メールを所定の宛先への転送を実行し、前記所定の宛先への転送が実行される以前に前記クライアント端末から削除または転送停止を要求するコマンドを受信したならば当該電子メールを削除または転送停止することを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に関わる第2の発明は、請求項1に記載の電子メール転送装置と繋がるクライアント端末であって、電子メールの送信先アドレスを登録する送信先アドレス登録手段と、前記送信先アドレスと対応付けて電子メールの送信開始条件を登録する送信開始条件登録手段と、前記送信開始条件を前記電子メール転送装置へ送信する送信開始条件送信手段と、を有し、前記電子メール転送装置へ電子メールを送信する際に、当該電子メールの送信先アドレスと対応付けられた送信開始条件が登録されていた場合に、前記送信開始条件送信手段は当該送信開始条件を前記電子メール転送装置へ送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子メール転送装置が送信開始条件を含む電子メールを受信した場合に、電子メールを一次蓄積し、その間にクライアント端末から転送または転送停止または削除する指示を受信することで、誤送信を防止することができる。
また本発明によれば、上記の発明の効果に加え、クライアント端末が送信する電子メールに含む送信開始条件に送信先アドレスを対応する条件を登録することで、クライアント端末が指定する送信先アドレス毎に、誤送信を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明装置を利用するシステム構成図である。
【図2】本発明装置におけるクライアント端末2のフローチャートである。
【図3】本発明装置における電子メール転送装置1のフローチャートである。
【図4】本発明装置におけるクライアント端末2に登録する送信開始条件の設定例である。
【図5】本発明装置における送信開始条件を付与した電子メールの構成イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
なお、上記電子メール転送装置及びクライアント端末はCPU(Central Processing Unit)を備えたコンピュータであり、上記各手段は、CPUが必要なコンピュータプログラムを読み込んで実行することにより実現される手段であり、以下に記載される電子メール転送装置及びクライアント端末についても同様である。
【0014】
図1は、本発明の実施形態における、システム構成および誤送信防止機能を有する電子メール転送装置およびクライアント端末の機能ブロック図である。図1の構成は、前記電子メール転送装置1と前記クライアント端末2が、HUB3に接続され、通信網4に接続される。尚、HUB3に接続するクライアント端末2は、複数あってもよい(図示せず)。
【0015】
図1に示すように、電子メール転送装置1は、装置制御部10と、装置送受信部11と、メール制御部12と、送信開始条件抽出部13と、メール判定部14と、転送不可通知部15とから構成される。
【0016】
また、メール制御部12は、蓄積部120を備えており、メール判定部14は、アドレスチェック部140と、添付ファイルチェック部141と、宛名チェック部142をそれぞれ備えている。
【0017】
電子メール転送装置1は、HUB3を介してクライアント端末2からの電子メールを装置送受信部11で受信し、受信した電子メールを蓄積部120に一時的に蓄積する。送信開始条件抽出部13は、蓄積部120に一時蓄積した電子メール内の送信開始条件を抽出する。送信開始条件が付与されていない場合、装置制御部10はメール制御部12に電子メールの送信を指示し、一時的に蓄積した電子メールを通信網4上の通信相手に転送する。
【0018】
また、電子メール転送装置1は、通信網4から受信した電子メールをクライアント端末2の指示に従い、送信する。
【0019】
本発明の電子メール転送装置1は、HUB3を介してクライアント端末2からの電子メールを受付けると、メール制御部12の構成内である蓄積部120に電子メールを一時的に蓄積し、送信開始条件抽出部13は、一時的に蓄積した電子メール内の送信開始条件を抽出し、送信開始条件抽出部13は、クライアント端末2が指定した送信開始条件をメール判定部14に指示することにより、クライアント端末2が指定した送信開始条件に沿った誤送信を防止するチェックをメール判定部14がすることにより、クライアント端末毎の誤送信を防止する。
【0020】
なお、クライアント端末2が指定した送信開始条件がアドレスをチェックする条件の場合、メール判定部14の構成内であるアドレスチェック部140が、一時的に蓄積した電子メールをチェックする。
【0021】
また、クライアント端末2が指定した送信開始条件が添付ファイルをチェックする条件の場合、メール判定部14の構成内である添付ファイルチェック部141が、一時的に蓄積した電子メールをチェックする。また、クライアント端末2が指定した送信開始条件が宛名をチェックする条件の場合、メール判定部14の構成内である宛名チェック部142が、一時的に蓄積した電子メールをチェックする。
【0022】
メール判定部14の構成内であるアドレスチェック部140または、添付ファイルチェック部141または、宛名チェック部142がチェックした結果、電子メール転送装置1が受信した電子メールが転送すべきでない電子メールの場合、転送不可通知部15は、電子メールを送信したクライアント端末2に装置送受信部11を経由し、HUB3を介して転送不可を通知する。
【0023】
クライアント端末2は、操作部26で電子メールを作成するメーラー(図示せず)の起動指示を操作受付部24が受付し、端末制御部20にメーラーを起動する指示の受付けを伝え、端末制御部20は、メーラーを起動するプログラムを記憶部22から読み出すことによりメーラーを起動し、メーラーの起動を開始した後、端末制御部20は表示指示部25を制御し、表示指示部25は、表示部27にメーラーの起動の表示を指示し、表示部27は、メーラーの起動を表示する。
【0024】
クライアント端末2は、操作部26で電子メールを作成するメーラーを起動し、電子メール作成した後、
送信する指示を操作受付部24で受付し、端末制御部20は、端末送受信部21に電子メールを送信し、HUB3を介して電子メール転送装置1に電子メールを送信する。
【0025】
本発明であるクライアント端末2の構成内の送信開始条件付与部23は、送信開始条件を電子メールに付与する場合に端末制御部20が制御し、電子メールに送信開始条件を付与し、端末送受信部21に伝え、送信開始条件を付与した電子メールを端末送受信部21が送信する。
【0026】
次に、クライアント端末2の動作例を図2のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
以後、電子メール転送装置1をサーバ、クライアント端末2をPC(Personal computer)と略す。
【0028】
この図2は、PCがサーバに電子メールを処理するフローチャートである。
【0029】
PCを使用するユーザは、前記表示部27の表示内容を見て、前記操作部26を操作し、メーラーを起動する(S201)。ユーザは、必要に応じて送信開始条件を電子メール毎に付与する指示をメーラーに指示できるが、ユーザがここで作成する電子メールに送信開始条件を付与する場合、前記表示部27の表示内容を見て、前記操作部26を操作し、メーラーに送信開始条件を付与する指示をする(S202、YES)。メーラーは、電子メールのヘッダに送信開始条件を付与する(S203)。ユーザは、電子メールを作成が終われば、電子メールを送信する指示をメーラーに指示する(S204)。メーラーは、電子メールの送信指示を受付けて、電子メールを送信する(S205)。
【0030】
またユーザが、電子メールに送信開始条件を付与しない場合は、メーラーに送信開始条件を付与しない指示をする(S202、NO)。
【0031】
次に、サーバの動作例を図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0032】
この図3は、サーバがPCから受信した電子メールを処理するフローチャートである。
【0033】
サーバは、電子メールを受信すると前記メール制御部12が電子メールの受信を制御する(S101、YES)。前記メール制御部12は、前記蓄積部120に電子メールを一時的に蓄積する(S102)。
【0034】
前記送信開始条件抽出部13は、蓄積した電子メールに送信開始条件を抽出し、送信開始条件が付与されていない場合(S103、NO)、前記メール制御部12は、電子メールの転送を制御する(S104)。電子メールが転送された後、前記メール制御部12は、前記蓄積部120に蓄積した電子メールの削除を指示する(S105)。
【0035】
また、前記送信開始条件抽出部13が、蓄積した電子メールに送信開始条件を抽出し、送信開始条件が付与されている場合(S103、YES)、前記メール判定部14は、送信開始条件を判定し、送信先アドレスをチェックする条件があれば(S106、YES)、前記アドレスチェック部140が送信先アドレスをチェックする(S109)。チェックした結果、問題があれば(S110、NO)、前記転送不可通知部15が、電子メールの送信元であるPCに転送不可通知をする(S115)。また、チェックの結果に問題がない場合(S110、YES)や、前記メール判定部14が送信開始条件を判定し、送信先アドレスをチェックする条件がなければ(S106、NO)、前記メール判定部14は、送信開始条件を判定し、添付ファイルをチェックする条件があれば(S107、YES)、前記添付ファイルチェック部141が添付ファイルをチェックする(S111)。チェックした結果、問題があれば(S112、NO)、前記転送不可通知部15が、電子メールの送信元であるPCに転送不可通知をする(S115)。また、チェックの結果に問題がない場合(S112、YES)や、前記メール判定部14が送信開始条件を判定し、添付ファイルをチェックする条件がなければ(S107、NO)、前記メール判定部14は、送信開始条件を判定し、宛名をチェックする条件があれば(S108、YES)、前記宛名チェック部142が宛名をチェックする(S113)。チェックした結果、問題があれば(S113、NO)、前記転送不可通知部15が、電子メールの送信元であるPCに転送不可通知をする(S115)。また、チェックの結果に問題がない場合(S114、YES)や、前記メール判定部14が送信開始条件を判定し、宛名をチェックする条件がなければ(S108、NO)、前記メール制御部12は、電子メールの転送を制御する(S104)。電子メールが転送された後、前記メール制御部12は、前記蓄積部120に蓄積した電子メールの削除を指示する(S105)。
【0036】
次に、PCにおいて送信開始条件を電子メールに付与する場合の例を図4と図5を参照して説明する。
【0037】
図4は、PCの前記記憶部22に記憶する送信開始条件の例である。
【0038】
ユーザは、電子メールに送信開始条件を付与する場合、送信開始条件を設定する。
【0039】
条件名220は、ユーザが登録する任意の文字列で、ここでは社外向け、社内向けの場合の送信開始条件例を示す。送信先アドレスチェック221に○が設定されると、送信先アドレスをチェックし、×が設定されると送信先アドレスをチェックしない送信開始条件を前記送信開始条件付与部が付与する。添付ファイルチェック222と宛名チェック223も同様に○が設定されると、対象をチェックし、×が設定されると対象をチェックしない送信開始条件を前記送信開始条件付与部が付与する。
【0040】
条件名220の社外では、添付ファイルチェックと宛名チェックを設定例とする。社内では、送信先アドレスチェックを設定例とする。
【0041】
図5は、送信開始条件を付与した電子メールの構成イメージである。
【0042】
図5(a)は、上述した社外の場合で、メールヘッダ50の太字が上述の前記送信開始条件付与部が付与した添付ファイルチェックと宛名チェックを設定して例である。この電子メールは、A社の山田さんがB社の鈴木さんに見積を連絡する電子メールで、本文51と添付ファイル52は、メールヘッダ50と一緒にサーバに送信する。電子メールを受信したサーバは、メールヘッダ50の太字である送信開始条件を前記送信開始条件抽出部13が抽出し、前記メール判定部14の構成内である前記添付ファイルチェック部141が添付ファイルのチェックを行い、前記宛名チェック部142が宛名のチェックをする。
【0043】
具体例として、添付ファイルチェックでは、添付ファイル52に社外秘の文字列が含まれるかをチェックし、社外秘の情報を社外に流出することを防止する。また、宛名チェックでは、本文51に宛名を示す「様」や「殿」や「御中」が含まれるかをチェックし、送信先の相手に対して、不快を与える電子メールを社外に流出することを防止する。
【0044】
図5(b)は、上述した社内の場合で、メールヘッダ60の太字が上述の前記送信開始条件付与部が付与した送信先アドレスチェックを設定した例である。この電子メールは、A社の山田さんがA社の同僚である佐藤さんに連絡する電子メールで、本文61は、メールヘッダ60と一緒にサーバに送信する。電子メールを受信したサーバは、メールヘッダ60の太字である送信開始条件を前記送信開始条件抽出部13が抽出し、前記メール判定部14の構成内である前記アドレスチェック部140が送信先アドレスのチェックをする。
【0045】
具体例として、送信先アドレスチェックでは、メールヘッダ60に送信元アドレスと相違したドメインを含むアドレスがないかをチェックして、社内に送信した電子メールが社外に流出することを防止する。
【符号の説明】
【0046】
1;本発明による電子メール転送装置
10;装置制御部
11;装置送受信部
12;メール制御部
13;送信開始条件抽出部
14;メール判定部
140;アドレスチェック部
141;添付ファイルチェック部
142:宛名チェック部
15;転送不可通知部
2;本発明によるクライアント端末
21;端末制御部
22;記憶部
23;送信開始条件付与部
24;操作受付部
25;表示指示部
26;操作部
27;表示部
3;通信網
4;HUB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアント端末から電子メールを受信して所定の宛先へ転送する装置であって、
前記クライアント端末から受信した電子メールを所定の宛先に転送せずに一時的に蓄積する電子メール蓄積手段と、
前記クライアント端末から電子メールの送信開始条件を受信する送信開始条件受信手段と、を有し、
前記クライアント端末から電子メールを受信し、当該電子メールに送信開始条件が指定されていた場合に、前記電子メール蓄積手段は、前記クライアント端末から受信した電子メールを所定の宛先に転送せずに一時的に蓄積し、前記クライアント端末が指定する送信開始条件が満たされた後に、前記電子メール蓄積手段に蓄積された電子メールを所定の宛先への転送を実行し、前記所定の宛先への転送が実行される以前に前記クライアント端末から削除または転送停止を要求するコマンドを受信したならば当該電子メールを削除または転送停止することを特徴とする誤送信防止機能を有する電子メール転送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子メール転送装置と繋がるクライアント端末であって、
電子メールの送信先アドレスを登録する送信先アドレス登録手段と、
前記送信先アドレスと対応付けて電子メールの送信開始条件を登録する送信開始条件登録手段と、
前記送信開始条件を前記電子メール転送装置へ送信する送信開始条件送信手段と、をさらに有し、
前記電子メール転送装置へ電子メールを送信する際に、当該電子メールの送信先アドレスと対応付けられた送信開始条件が登録されていた場合に、前記送信開始条件送信手段は当該送信開始条件を前記電子メール転送装置へ送信することを特徴とする誤送信防止機能を有するクライアント端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−75040(P2012−75040A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219904(P2010−219904)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】