説明

読取装置

【課題】読取対象物が紙面の変形が生じても良好な画像を得ることができる読取装置を提供する。
【解決手段】読取装置1は、被読取ページ9を有するパスポート7が配置される載置面5と、被読取ページ9を照明する光源21、31と、被読取ページ9を撮像するカメラ13とを備える。光源21、31は、被読取ページの正面領域の外側に配置されている。被読取ページ9は、縁部の近傍に位置する縁近傍コードを含む。光源21、31は、赤外光LED列23、白色光LED列33を含む。赤外光LED列23、白色光LED列33のうちで、縁近傍コードに対応した近傍コード位置の赤外光LED25e、白色光LED35fが、他の赤外光LED25a〜25d、白色光LED35a〜35eよりも、載置面5における垂直方向において被読取ページの近くに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取対象物を撮像して読取処理を行う読取装置に関し、特に撮像のための光源の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の読取対象物から文字等のコードを読み取る読取装置が知られている。読取対象物は、例えば、複数のシートが綴じられた帳票であり、帳票は例えばパスポートである。
【0003】
従来の読取装置は、赤外光で読取対象物の被読取面を照明し、被読取面上のコードを撮像し、赤外光画像を取得するように構成されている。赤外光画像は、OCR(光学読読取装置)等の読取処理が施されて、コードが認識される。照明光として赤外光を用いることにより、赤外光を吸収しやすい黒色インクの印刷が強調されるため相対的に背景画像が写りにくくなり、画像におけるコードのコントラストが大きくなる。また赤外光を吸収し、可視光を反射するインクで文字図形を書いて可視光で撮影した画像と比較すれば偽造を検出することも出来る。
【0004】
また、操作者の目視による確認等のために読取対象物の画像をモニタ等に表示する場合には、赤外光ではなく可視光で読取対象物が照明され、可視光の画像が取得される。あるいは可視光画像も赤外光画像と同様にOCRでコードを認識する場合もある。
【0005】
例えば、特許文献1は、赤外光と可視光の両方を読取対象物に照射するように構成された読取装置を開示している。この従来装置は、可視光を用いてホログラムの画像を生成するとともに、赤外光を用いてホログラムの下側の層に印刷されたコードを読み取る。
【0006】
また、読取装置においては、正反射条件での撮像を避ける必要がある。正反射条件とは、撮像の方向が照明光の入射角と一致し正反射の方向になることをいう。正反射条件で被読取面を撮像すると、反射光が強すぎて、いわゆる「白とび」が生じ、良好な画像が得られない。「白とび」とは、画像の一部が撮像素子のダイナミックレンジの飽和によりホワイトアウトしてしまうことをいい、可視光画像においては白くなってしまい、被写体が写らなかったり、見づらくなる現象である。従来は、正反射条件を避けるために、被読取面を横方向から照明するとともに、被読取面が正面から撮像される。これにより、照明光の反射角(=入射角)を大きくすることができ、正反射条件を避けることができる(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−247084号公報
【特許文献2】特開2008−304860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の読取装置においては、読取対象物の変形に関連した以下のような問題がある。
【0009】
パスポートなどの読取対象物は、例えば、持ち主のポケットに入れられたために汗で濡れることがある。濡れとその後の乾燥等が原因で、読取対象物の縁部に波状の変形(波打ち)が生じる。このような波状の変形が生じると、縁部での撮像が正反射条件下で行われ、白とびが生じる可能性がある。そして、縁部に文字等のコードが存在する場合、コードが鮮明に写らない可能性がある。そこで、縁部の波状の変形にも好適に対処し、コードを撮影できるように照明を適切に行うことが望まれる。
【0010】
例えば、パスポートは、ラミネート等のカバーで覆われており、正反射条件で白とびが生じやすい。しかも、パスポートには、コードがページの隅部まで印刷されているものも多く、そして、前述した紙面の波状の変形は隅部において大きくなりやすい。そのため、波状の変形が生じたパスポートを可視光で照明しながら撮影すると、隅部のコードが白とびにより見づらくなってしまうことがあり、特に、隅部の1〜2文字が見づらくなりやすい。そこで、このような縁部のコードの白とびを防ぐように照明を適切に行うことが望まれる。
【0011】
上記の問題を避けるために、読取対象物を押さえるカバーを備えることも考えられる。しかし、読取対象物がパスポートなどの場合、読取作業が迅速でなければならない。そのため、カバーなどを使用することなく、読取対象物が多少浮き上っても照明を適切に行えることが望まれる。
【0012】
また、装置の小型化のために、画像を読取るための光路をミラーを用いて曲げ、装置全体の容積を削減する場合がある。この場合、被読取面とカメラの間にミラーが配置される。そして、被読取面からの反射光が、ミラーで曲がり、カメラへ到達する。しかしながら、ミラーを設けた場合、照明光もミラーで反射され、読取対象物の被読取面に照射されてしまい、その結果、照明ムラが発生し、読取能力が低下したり、表示画像が見づらくなるという問題がある。
【0013】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、その目的は、読取対象物の紙面の変形が生じても良好な画像が得られる読取装置を提供することにある。また、本発明の目的は、ミラーを設けた場合の照明ムラを低減できる読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の読取装置は、被読取面を有する読取対象物が配置される対象配置部と、前記対象配置部に載置された前記被読取面を照明する光源と、前記光源により照明された前記被読取面を撮像する撮像部と、を備え、前記光源は、前記被読取面の正面領域の外側に配置されており、前記被読取面は、縁部の近傍に位置する縁近傍コードを含み、前記光源は複数の発光素子からなる発光素子列を含み、前記発光素子列のうちで前記縁近傍コードに対応した近傍コード位置の発光素子が、前記発光素子列の他の発光素子よりも前記対象配置部における垂直方向において前記被読取面の近くに配置されている。
【0015】
この構成により、被読取面の縁部の近くにコードが存在する場所で光源を局所的に読取対象物に近づけてあるので、読取対象物の濡れなどが原因で被読取面の縁部に波状の変形が生じた場合でも、縁部に近いコードが正反射条件で撮影されるのを防ぐことができる。したがって、縁部のコードが白とびで見づらくなるのを防ぐように照明を適切に行うことができる。
【0016】
また、本発明の読取装置では、前記読取装置が前記被読取面から前記撮像部に至る光路の向きを変えるミラーをさらに有し、前記発光素子列が、前記発光素子の主な光が前記ミラーにより反射されて前記被読取面に向かわない位置に配置されている。
【0017】
この構成によりミラーの反射による照明ムラをなくし、良好な画像を得ることが出来る。したがって、文字の認識率の向上、画像の確認の精度を上げることが出来るとともに、取得画像の目視による認識も容易になる。
【0018】
また、本発明の読取装置では、前記縁近傍コードが前記被読取面の縁部の端部に設けられており、前記近傍コード位置の前記発光素子が、前記発光素子列の端部に位置している。
【0019】
この構成では、コードが被読取面の縁部の端部、すなわちコーナー部に位置している。コーナー部では変形の影響が大きくなる。しかし、本発明によれば光源を局所的に被読取面に近づけることにより、コーナー部の白とびを適切に防止できる。
【0020】
また、本発明の読取装置では、前記読取装置が前記被読取面から前記撮像部に至る光路の向きを変えるミラーをさらに有し、前記ミラーが、前記被読取面に対して傾斜しており、前記近傍コード位置の発光素子は、前記発光素子列の両端のうちで前記ミラーに近い側の端部に位置する。
【0021】
この構成により、ミラーを設けた場合の照明ムラを低減できる。この構成は、縁近傍コードの照明ムラに着目しており、以下の2つの理由で照明ムラを低減できる。ミラーが傾斜しているために、縁近傍コードがミラーに近いとする。本発明によれば、縁近傍コードに近い発光素子をミラーから遠ざけられるので、ミラーの影響による縁近傍コードの照明ムラを低減できる。また、ミラーによる照明ムラは、発光素子から遠い位置ほど被読取面を明るくし、発光素子に近い位置を相対的に暗くする。これに対して、本発明によれば、発光素子を被読取面に近づけるので、発光素子に近い場所を明るくでき、照明ムラを低減できる。こうして、上記2つの効果が相乗し、縁近傍コードの照明ムラを低減し、読取能力向上等の効果が好適に得られる。
【0022】
また、本発明の読取装置では、前記光源が、読取処理に用いる第1の画像を取得するために第1波長域と第1放射角とを有する第1照明光を前記被読取面に照射する第1光源と、表示用を含む用途に用いる第2の画像を取得するために、前記第1波長域より広い第2波長域及び前記第1放射角より広い第2放射角を有する第2照明光を前記被読取面に照射する第2光源とを含む。
【0023】
この構成により、複数種類の光源を使い、それらの特性を利用して、被読取面を好適に読取る読取装置を提供できる。放射角とは、照明光の明るさが所定レベル以上である範囲であり、例えば、正面方向の明るさを基準値として、明るさが基準値に対して所定の割合以上である範囲の角度である。
【0024】
また、本発明の読取装置では、前記第1光源が赤外光源であり、前記第2光源が可視光源である。この構成により、赤外光源を用いて読取処理のための画像が得られ、可視光源を用いて表示用の画像が得られる。赤外光源と比べて可視光源は、波長域が広く、放射角も広い。このような複数種類の光源を用いる場合でも、本発明の利点が好適に得られる。
【0025】
また、本発明の読取装置では、前記読取対象物がパスポートである。この構成により、読取対象物がラミネート等のカバーで覆われたパスポートである場合でも、照明を適切に行うことができ、読取対象物が浮き上がっても良好な画像が得られる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記のように光源を局所的に縁近傍コードに近づけて配置することにより、読取対象物が紙面の変形が生じても良好な画像が得られるという効果を有する読取装置を提供できる。また、本発明は、上記の適切な光源配置によって、ミラーを設けた場合の照明ムラを低減できるという効果を有する読取装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態における読取装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態における読取装置の断面図であって、光源配置を示す図
【図3】本発明の実施の形態における読取装置の断面図であって、光源配置を示す図
【図4】本発明の実施の形態における読取装置の斜視図
【図5】読取装置の上ケースを外して装置内部を示す図
【図6】読取対象物であるパスポートの被読取ページを示す図
【図7】パスポートに波状の変形が生じたときのコード位置の白とびを防ぐ本発明の原理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る読取装置について、図面を用いて説明する。
【0029】
本実施の形態では、読取対象物が帳票またはカードであり、特に、帳票の一例としてのパスポートがあり、カードの一例としては飛行機の搭乗整理券(ボーディングカード)がある。また、本実施の形態では2つの光源が用いられ、第1光源が赤外光源であり、第2光源が可視光源であり、特に白色光源である。
【0030】
本発明の実施の形態に係る読取装置を図1〜図4に示す。図1〜図3は断面図であり、図4は斜視図である。また図5は装置の上カバーを外し、光源23、33、ミラー11、カメラ13を示した図である。図3は、図2に示すAA断面と直行する断面図であり、図1に示す赤外光LED25e及び可視光LED35fと他のLED列との高さ位置の差を示している。
【0031】
まず、図4を参照すると、読取装置1は、略直方体のハウジング3を有しており、ハウジング3の上面に載置面5が設けられている。載置面5は透明なガラス板である。載置面5は、読取対象物であるパスポート7を読取のために配置する場所であり、本発明の対象配置部に相当する。また、ハウジング3には、互いに直角な突当部41、43が設けられている。突当部41、43は突当壁を有している。パスポート7の直角な2辺が突当部41、43に突き当てられ、これによりパスポート7が載置面5上で位置決めされる。
【0032】
図6はパスポート7を概略的に示している。パスポート7は、上述のように帳票の一種であり、複数の用紙が中央で綴じられた構成を有する。パスポート7は被読取ページ9を有し、被読取ページ9は、綴じ部51に平行な長縁53と、綴じ部51に垂直な短縁55とを有する。長縁53及び短縁55は、長方形である被読取ページ9の長辺及び短辺に相当する。被読取ページ9には、写真57やコード59が設けられている。コード59は、読取装置1により読み取られるべき文字等の列である。パスポート7では、コード59が長縁53に沿って設けられる。パスポート7は、被読取ページ9が下を向くように、載置面5上に置かれる。
【0033】
図1は、図4のラインA−Aで読取装置1を切断した断面図である。図2は、図1と同じ方向から見たときの光源配置を示す図であり、図3は、図2を矢印Bの方向から見たときの光源配置を示す図である。
【0034】
図1に示されるように、載置面5の下方にはミラー11が設けられており、ミラー11の横方向にカメラ13が設けられている。カメラ13は本発明の撮像部に相当する。カメラ13は、ミラー11の反射を利用し、パスポート7を下方から撮像する。カメラ13が赤外光画像と可視光画像の両方を撮影してよい。あるいは、赤外光画像と可視光画像が別々のカメラで撮像されてもよい。この場合は、撮像部が複数のカメラで構成される。
【0035】
また、図1〜図3に示されるように、読取装置1は、ハウジング3内に赤外光源23及び白色光源33を有する。赤外光源23は赤外光LED列23で構成されており、赤外光LED列23は複数の赤外光LED25a〜25eからなる。また、白色光源33は白色光LED列33で構成されており、白色光LED列33は複数の白色光LED35a〜35fからなる。赤外光LED列23および白色光LED列33は、搭置面5(被読取ページ9)に平行である。赤外光LED25a〜25e及び白色光LED35a〜35fは基板45に取り付けられている。また、赤外光LED25eと白色光LED35fとは載置面5に近く配置されている。
【0036】
図2に示されるように、赤外光源23(赤外光LED列23)及び白色光源33(白色光LED列33)は、被読取ページ9の正面領域の外側であって、両方の短縁55の外側に配置されている。
【0037】
また、図1〜図3に示されるように、赤外光源23(赤外光LED列23)及び白色光源33(白色光LED列33)が、被読取ページ9から垂直方向に離れて配置されている。ここで、垂直方向は、載置面5に置かれた被読取ページ9に垂直な方向であり、すなわち、載置面5に垂直な方向である。本実施の形態では、赤外光源23および白色光源33が被読取ページ9から垂直方向に第1距離D1で並べて配置されると。ただし、非読取物のコーナーに近い白色光LED35fと赤外光LED25eは、載置面に近い第2距離D2に配置されている。本発明の範囲で、読み取り対象によって白色光LED、赤外光LEDの1つだけが、第2距離D2の位置に配置されてもよい。また、図1等の例では、第1距離D1に白色光LEDと赤外光LEDとが一列に並べられている。しかし、白色光LED又は赤外光LEDの片方が、第1距離D1より長い距離に配置されてよい。または、2つの光源を区別することなく、一部のLEDが第1距離D1より長い距離に配置されてよい。こうして、発光素子列を多少上下にずらして配置し、光がより均一に読み取り対象を照らすようにするのも好ましい。
【0038】
上記の通り白色光LED列33のうちで、綴じ部51から最も遠い一番端の白色光LED35fは、例外的に、他の白色光LED35a〜35eよりも垂直方向に被読取ページ9の近くに配置されている。一番端の白色光LED35fは、赤外光LED列23における一番端の赤外光LED25eの隣に配置されている。前述のように、読み取り対象が赤外光を用いて読取る場合は赤外光LED25eのみでもよい。可視光画像を重視すればよい場合には白色光LED35fのみでもよい。
【0039】
次に、本実施の形態に係る読取装置1の動作を説明する。まず、使用者により、被読取ページ9が下を向くようにして、パスポート7が載置面5に載置される。パスポート7の長縁53及び短縁55が突当部41、43に突き当てられて、パスポート7が位置決めされる。そして、使用者の操作に応答して、被読取ページ9が撮像される。
【0040】
読取処理を行う場合、赤外光源23により赤外光が被読取ページ9に照射され、カメラ13により赤外光画像が生成される。赤外光画像は、読取処理用の画像であり、本発明の第1の画像に相当する。そして、赤外光画像が図示しない読取処理部によって処理されて、文字等のコードが認識される。赤外光画像では、背景画像が写りにくくなり、認識すべき文字等のコードのコントラストが強くなる。したがって、読取処理を高精度に行うことができる。読取処理部はコンピュータで構成されてよい。また、読取処理部は読取装置1の外部に設けられてもよい。
【0041】
また、表示用の画像を取得する場合、白色光源33により白色光が被読取ページ9に照射され、カメラ13により可視光画像が生成される。そして、可視光画像が、図示しないモニタに出力され、表示される。可視光画像は本発明の第2の画像に相当する。
【0042】
次に、本実施の形態における赤外光源23及び白色光源33の配置について、更に詳細に説明する。赤外光源23及び白色光源33の位置と方向は、基本的には、正反射条件を避けるように設定されている。正反射条件は、既に説明したように、撮像の方向が照明光の正反射の方向に一致することをいう。正反射条件で被読取ページ9を撮像すると、反射光が強すぎて、いわゆる白とびが生じ、良好な画像が得られない。赤外光源23についても、読取能力確保のために、正反射条件を避けることが求められる。本実施の形態では、赤外光源23及び白色光源33が被読取ページ9の正面領域の外側に配置されており、横方向から被読取ページ9を照明する。これにより、入射角が大きく設定され、正反射条件が避けられ、白とびも回避される。
【0043】
本実施の形態では、光源配置は、上記の要因に加え、更に、パスポート7の変形と、ミラー11の影響を考慮して設定されている。以下、これらの要因及び光源配置について説明する。
【0044】
「被読取物の変形を考慮した光源配置の設定」
まず、被読取物であるパスポート7の変形を考慮した光源配置について説明する。ここでは、白色光源33における端部の白色光LED35f及び赤色光源23の端部の赤外光LED25eの配置に着目する。以下の説明では、主に白色光LED35fの配置を説明する。赤外光LED25eの配置も、概ね同様の理由で白色光LED35fと同様に設定されている。
【0045】
図7を参照すると、白色光LED35fの配置は、被読取ページ9のコード59の位置と関係している。コード59は、前述したように、被読取ページ9の長縁53の近くに、長縁53に沿って設けられている。そして、コード59の端は、被読取ページ9の短縁55の近傍まで達しており、被読取ページ9のコーナー部に位置している。
【0046】
白色光LED35fは、白色光LED列33のうちで一番端に位置しており、その位置は、列方向にてコード59と対応している。この白色光LED35fは、白色光LED列33の他の白色光LED35a〜35eよりも高い位置、すなわち、垂直方向に被読取ページ9の近くに配置されている。
【0047】
パスポート7は、持ち主のポケットに長時間入れられることがあり、持ち主の汗で濡れることがある。汗の濡れとその後の乾燥等、またポケットへの出し入れが原因で、パスポート7の縁部に波状の変形(波打ち)、端部のカール状の変形が生じる。ポケット内では短縁55が底部に位置するので、短縁55にこのような変形が生じやすい。
【0048】
波状の変形が生じると、被読取ページ9と白色光源33の角度が、短縁55に沿って周期的に増減する。角度が大きい場所では、入射角(=出射角)が小さくなり、正反射条件が局所的に成立する。したがって、波状の変形が生じると、短縁55に沿って正反射条件が周期的に成立する。その結果、図7の左半部に示されるように、複数の小さい白とび領域が短縁55に沿って間隔をあけて生じてしまう。そして、波の形状によっては、図示のように、白とび領域がコード59と重なり、コード59の端部が白とび領域に入ってしまう。そのため、白色光源33を用いて生成された画像では、コード59の端部が見づらくなる。特に、コード59の端の1〜2文字程度が見づらくなりやすい。
【0049】
コード59は、赤外光源23を用いた自動読取の対象である。しかし、白色光源33を用いた可視光画像でも、読取結果の確認などのために、コード59の全体が表示される必要がある。そのため、上記のような白とび現象を防止する必要がある。
【0050】
このような目的を達成するため、本実施の形態では、コード59と対応する位置にある白色光LED35fを、局所的に、被読取ページ9の近くに配置している。これにより、コード59の位置では、白色光の入射角(=出射角)が他の場所より大きくなる。そのため、変形が生じて被読取ページ9の隅部の角度が変わっても、入射角が小さくなりすぎず、正反射条件を避けることができる。その結果、図7の右半部に示されるように、コード59に対応する位置に白とびが生じるのを避けることができる。
【0051】
なお、白色光LED35fを被読取ページ9に近づけた場合、白色光LED35fの照射範囲が狭まるので、照度ムラが懸念される。しかし、本実施の形態では、局所的に白色光LED35fのみの位置を変えている。他のLEDが、広い放射角で被読取ページ9の全域に照射されるので、画像の確認に影響する程の照度ムラは十分小さい。
【0052】
また、図7に示されるように、コード59が設けられていない場所では、白とびが残っている。しかし、コード59が書かれている領域以外では重要度の高い情報(たとえば顔写真等)は紙面の汚れ変形を嫌って紙面中央に近い場所に示されている。そこで、本実施の形態では、重要度の高い情報が書かれている可能性が低い領域の白とびをある程度許容しつつ、変形が生じやすいコード59の領域の良好な画像を取得している。
【0053】
その他、従来のコピー機などは、読取対象物を押さえるカバーを備えている。このようなカバーを、上記のパスポート7の変形の影響を防止するために備えることも考えられる。しかし、パスポート7の読取は、空港の入出国審査などで行われるため、迅速性が求められる。そのため、いちいちカバーでパスポート7を押さえるのでは、作業に時間がかかる。これに対して、図1に示されるように、本実施の形態の読取装置1は、押さえカバーを設ける必要が無く、パスポート7を載置面5に短時間でセットすることができる。
【0054】
上記では、白色光LED35fの配置について説明した。既に述べたように、赤外光LED25eも同様の理由で、他の赤外光LED25a〜25dよりも被読取ページ9の近くに配置され、これにより、パスポート7の変形に伴う正反射条件を避けることができる。また、上記のように照度ムラの影響も十分に小さい。
【0055】
「ミラーの反射を考慮した光源配置の設定」
次に、ミラー11の反射を考慮した光源配置の設定について説明する。照明光は、直接的に被読取ページ9に照射されるだけでなく、ミラー11で反射されて被読取ページ9に照明される。ミラー11からの照明光は、直接的な照明光と重畳される。このようなミラー11からの照明光は、照明ムラの原因になる。
【0056】
上記の照明ムラが生じると、ミラー11からの照明光の影響で、被読取ページ9が部分的に明るくなる。ミラー11が図1に示すように傾斜している場合、発光素子(LED)とミラー11の距離が徐々に変化する。発光素子とミラー11の距離が小さいほど、ミラー11からの照明光が、被読取ページ9のより広い範囲に届く。そのため、図1に示すように、ミラー11が傾斜していると、照明ムラは、パスポート9の長縁53を底辺とする2等辺三角形になる。
【0057】
本実施の形態では、発光素子(LED)の主な照明光がミラー11により反射されて被読取ページ9に向かわない位置に、発光素子が配置されている。具体的には、ミラー11から発光素子ができるだけ遠ざけられている。これにより、ミラー11の影響を低減でき、照明ムラを低減できる。
【0058】
本発明において、主な照明光とは、画像の読取能力の要求を満たす強度を有する光である。赤外光については、主な照明光は、自動認識を十分な精度で実施できる強度を有する。可視光については、主な照明光は、ユーザがディスプレイ上で画像を十分に読みとれるような明るさの光である。可視光画像を自動認識する場合は、主な照明光は、認識処理が十分な精度で行える明るさの光である。
【0059】
より具体的には、主な照明光は、発光素子の正面方向を中心とし、上記の読取能力の要求を満たす角度範囲の光である。主な照明光の角度範囲は、前述した発光素子の放射角と同じでもよい。
【0060】
本実施の形態では、上記の主な照明光がミラー11により反射されて被読取ページ9に向かわない位置に、発光素子が配置されている。すなわち、被読取ページ9に対して垂直方向へと、ミラー11から発光素子をできるだけ遠ざけており、すなわち、発光素子を被読取ページ9に近づけるように配置されており、これにより、ミラー11で反射した照射光が被読取ページ9に届かない位置を実現している。
【0061】
さらに説明すると、前述したように、ミラー11が傾斜していると、ミラー11と発光素子が近いほど、照明ムラの範囲が広くなる。そのため、照明ムラは、パスポート9の長縁53を底辺とする2等辺三角形になる。そこで、ミラー11と発光素子が近い位置でも、ミラー11に発光素子が近づきすぎないように、素子位置が設定されることが好適である。
【0062】
このようにして、本実施の形態によれば、照明ムラを低減し、文字の認識率の向上し、画像の確認の精度を上げることが出来るとともに、取得画像の目視による認識も容易になる。
【0063】
「ミラーの反射を考慮した光源配置の設定(白色光LED35f、赤外光LED25eについて)」
既に説明したように、本実施の形態では、白色光LED35f及び赤外光LED25eが、他のLEDよりも、被読取ページ9の近くに配置されている。この配置は、上述のパスポート7の変形だけでなく、ミラー11からの照明光の反射の影響をも考慮して好適に設定されている。ここでは、白色光LED35fの配置について説明するが、同様のことが赤外光LED25eにも適用される。
【0064】
ここでは、縁近傍コードであるコード59の照明ムラに着目する。ミラー11が傾斜しているために、コード59がミラー11に近くに位置する。既に述べたように、発光素子とミラー11が近いほど、ミラー11の反射は広い範囲に影響する。本実施の形態によれば、コード59に近い白色光LED35fをミラー11から遠ざけているので、ミラー11の影響によるコード59の照明ムラを低減できる。
【0065】
さらに、本実施の形態は、下記の点も考慮している。ミラー11による照明ムラは、発光素子から遠い位置ほど被読取ページ9を明るくする。そのため、発光素子から近い場所は相対的に暗くなる。これに対して、本実施の形態によれば、白色LED35fを被読取ページ9に近づけるので、白色光LED35fに近い場所を明るくでき、照明ムラを低減できる。
【0066】
上記のように、本実施の形態の白色光LED35fの配置は、2つの効果を提供する。1つの効果は、白色光LED35fをミラー11から遠ざけることにより、コード59部分での照明ムラの範囲を小さくすることである。もう一つの効果は、白色光LED35fが被読取ページ9に近づくことにより、白色光35fに近い場所(照明ムラで暗くなる場所)をより強く照明できることである。これらの相乗効果が得られて、読取能力向上等の効果が好適に得られる。
【0067】
次に、本実施の形態の変形例を説明する。上記のコード59は、本発明の縁近傍コードの一例である。本発明において、縁近傍コードは、読取対象物の縁部の近傍に位置するコードである。より詳細には、縁近傍コードは、表示用の画像を得るための光源側の縁部の近傍に位置するコードであり、コードの少なくとも一部が縁部の近傍に位置する。読取対象物がパスポートである場合は、上記のように縁近傍コードが縁部の端部に位置しており、一番端の第2発光素子が被読取面に近づけられる(第2発光素子は、表示用の照明光を発する発光素子である)。しかし、読取対象物の種類に応じて、縁近傍コードの位置などが異なり、それに応じて光源配置も異なってよい。
【0068】
例えば、縁近傍コードが縁部の中央に位置してよい。この場合、縁近傍コードに応じて、縁部の中央に対応する第2発光素子が、読取対象物に近づけられる。
【0069】
また、一つの縁近傍コードのために、複数の発光素子が読取対象物に近づけられてもよい。言い換えれば、本発明の範囲内で、少なくとも1つの発光素子が読取対象物に近づけられる。被読取面に近づけられるべき発光素子の数は、素子間隔とコード幅に応じて好適に決定される。
【0070】
また、縁近傍コードは1箇所でなくてよい。複数の縁近傍コードが設けられてよい。この場合、複数の発光素子が複数の位置でそれぞれ読取対象物に近づけられてよい。
【0071】
また、複数の縁近傍コードでは、目的、意味、用途、重要性等が異なり得る。そこで、必要な縁近傍コードに対応する発光素子の配置のみが変更されてよい。
【0072】
上記のように、本実施の形態の範囲で各種の変形が可能である。しかし、パスポート7は、飛行中などに持ち主のポケットに入れられることが多く、波状の変形が生じやすい。しかも、パスポート7は、被読取ページ9のコーナー部に達するコード59を有している。そして、コーナー部では大きな変形が生じやすく、白とびが生じやすい。したがって、パスポート7では、本発明の利点が顕著に得られる。
【0073】
以上に本発明の実施の形態に係る読取装置1について説明した。本実施の形態では、第1光源が赤外光源23であり、第1照明光が赤外光であり、第1波長域及び第1放射角は、赤外光源23の赤外光の波長域及び放射角である。更に、第1発光素子列及び第1発光素子が、赤外光LED列23及び赤外光LED25a〜25eである。また、第2光源が、可視光源の一例としての白色光源33であり、第2照明光が白色光であり、第2波長域及び第2放射角は、白色光源33の白色光の波長域及び放射角である。更に、第2発光素子列及び第2発光素子が、白色光LED列33及び白色光LED35a〜35fである。また、本実施の形態では、読取対象物がパスポート7であり、被読取面が被読取ページ9であり、対象配置部が載置面5である。
【0074】
本実施の形態によれば、被読取面の縁部の近くにコードが存在する場所で光源を局所的に読取対象物に近づけてあるので、読取対象物の濡れなどが原因で被読取面の縁部に波状の変形が生じた場合でも、縁部に近いコードが正反射条件で撮影されるのを防ぐことができる。したがって、縁部のコードが白とびで見づらくなるのを防ぐように照明を適切に行うことができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、発光素子列が、発光素子の主な光がミラーにより反射されて被読取面に向かわない位置に配置されている。したがって、ミラーの反射による照明ムラをなくし、良好な画像を得ることが出来る。したがって、文字の認識率の向上、画像の確認の精度を上げることが出来るとともに、取得画像の目視による認識も容易になる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、縁近傍コードが被読取面の縁部の端部に設けられており、近傍コード位置の発光素子が、発光素子列の端部に位置している。この構成では、コードが被読取面の縁部の端部、すなわちコーナー部に位置している。コーナー部では変形の影響が大きくなる。しかし、本発明によれば光源を局所的に被読取面に近づけることにより、コーナー部の白とびを適切に防止できる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、読取装置が被読取面から撮像部に至る光路の向きを変えるミラーをさらに有し、ミラーが、被読取面に対して傾斜しており、近傍コード位置の発光素子は、発光素子列の両端のうちでミラーに近い側の端部に位置する。この構成により、上述したように、縁近傍コードの照明ムラを低減し、読取能力向上等の効果が好適に得られる。
【0078】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明した。しかし、本発明は上述の実施の形態に限定されず、当業者が本発明の範囲内で上述の実施の形態を変形可能なことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明にかかる読取装置は、上述のように読取対象物が紙面の変形が生じても良好な画像を得ることができ、帳票読取装置等として有用であり、特にパスポート読取装置等として有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 読取装置
5 載置面
7 パスポート
9 被読取ページ
11 ミラー
13 カメラ
21 赤外光源
23 赤外光LED列
25a〜25e 赤外光LED
31 白色光源
33 白色光LED列
35a〜35f 白色光LED35a
51 綴じ部
53 長縁
55 短縁
59 コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被読取面を有する読取対象物が配置される対象配置部と、
前記対象配置部に載置された前記被読取面を照明する光源と、
前記光源により照明された前記被読取面を撮像する撮像部と、
を備え、前記光源は、前記被読取面の正面領域の外側に配置されており、
前記被読取面は、縁部の近傍に位置する縁近傍コードを含み、
前記光源は複数の発光素子からなる発光素子列を含み、前記発光素子列のうちで前記縁近傍コードに対応した近傍コード位置の発光素子が、前記発光素子列の他の発光素子よりも前記対象配置部における垂直方向において前記被読取面の近くに配置されていることを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記読取装置が前記被読取面から前記撮像部に至る光路の向きを変えるミラーをさらに有し、
前記発光素子列が、前記発光素子の主な光が前記ミラーにより反射されて前記被読取面に向かわない位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の前記読取装置。
【請求項3】
前記縁近傍コードが前記被読取面の縁部の端部に設けられており、前記近傍コード位置の前記発光素子が、前記発光素子列の端部に位置していることを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項4】
前記読取装置が前記被読取面から前記撮像部に至る光路の向きを変えるミラーをさらに有し、
前記ミラーが、前記被読取面に対して傾斜しており、前記近傍コード位置の発光素子は、前記発光素子列の両端のうちで前記ミラーに近い側の端部に位置することを特徴とする請求項3に記載の読取装置。
【請求項5】
前記光源が、読取処理に用いる第1の画像を取得するために第1波長域と第1放射角とを有する第1照明光を前記被読取面に照射する第1光源と、表示用を含む用途に用いる第2の画像を取得するために、前記第1波長域より広い第2波長域及び前記第1放射角より広い第2放射角を有する第2照明光を前記被読取面に照射する第2光源とを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の読取装置。
【請求項6】
前記第1光源が赤外光源であり、前記第2光源が可視光源であることを特徴とする請求項5記載の読取装置。
【請求項7】
前記読取対象物がパスポートであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−251930(P2010−251930A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97486(P2009−97486)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【特許番号】特許第4473933号(P4473933)
【特許公報発行日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】