説明

読取装置

【課題】読取装置において、複数種の光源を用いた場合でも光源の配置スペースをコンパクト化し、被読取面での照度むらを低減する。
【解決手段】読取対象物を載置する被読取面と、被読取面を照明する光源体とを有する読取装置において、一列に並べられた複数の発光素子と、それらの出射光を被読取面に平均化して照射するための導光体とにより光源体を構成する。導光体の形状により任意の位置に対する照射が可能となり、装置内における光源体のレイアウト上の自由度が増すと共に、導光体により出射光を拡げることができることにより照度むらを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取対象物が載置される被読取面を撮像するために被読取面を照明する光源体を備える読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の読取対象物を撮像して文字等のコードを読み取る読取装置が知られている。例えば読取対象物として複数のシートが閉じられた構成の帳票があり、帳票の例としてはパスポートがある。
【0003】
パスポートを例として説明すると、対象物載置部としてのガラス板等の上にパスポートの写真やパスポート番号が記載されたページを載置し、そのページの被読取面を照明し、被読取面を撮像する。その照明光に白色光や赤外光を用いているものがある。白色光は可視光の典型であり、モニタでの操作者の目視による確認や、イメージスキャナのように被読取面の画像を取得するのに好適である。赤外光は、文字認識等の読取処理に適しており、赤外光画像では、背景画像が写り難く、文字等のコントラストが大きくなるため、読取処理を高精度に行うことができる。さらに、パスポートの改ざん等の不正を防止するために蛍光インクで描かれたものを目視可能にするために紫外光を用いているものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−200187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記読取装置において、白色光と赤外光と紫外光との3光源を備える場合には装置が大型化してしまうことの対策として、光源体に発光素子としてのLED素子を用いたものがある。それにより光源体のスペースをコンパクト化することができるが、複数種のLED素子を配列することにより、素子数が多くなり、素子配列のスペースが大きくなるという問題がある。
【0006】
また、LED素子の場合には光源体としてのコンパクト化には有効であるが、照射光の拡散範囲が狭く、被読取面での照度むらが生じ易いという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、複数種の光源を用いた場合でも光源の配置スペースをコンパクト化し得ると共に被読取面での照度むらを低減し得る読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の読取装置は、読取対象物が載置される被読取面を有する対象物載置部と、前記被読取面を照明する光源体と、前記光源体により照明された前記被読取面を撮像する撮像装置とを備える読取装置であって、前記光源体は、平面視で前記被読取面の縁近傍に直線状に並べられた複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各出射光を前記被読取面に平均化して照射するための1つの導光体とを有する構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば矩形の被読取面の一辺に沿って複数の発光素子を一列に並べると共にそれらの出射光を導光体を介して被読取面に照射することにより、被読取面の一辺に沿う方向には導光体の出射面を延在させることができることから照度の平均化が容易となる。また、導光体の形状により発光素子の出射光をある程度任意の方向に曲げることができ、平面視で被読取面の中心から外れた位置に発光素子を配置できるため、装置内における光源体のレイアウト上の自由度が増すと共に、導光体の形状により出射光を任意の大きさに拡げることにより照度むらを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による読取装置の例を示す全体斜視図。
【図2】読取装置の被読取面の上方から見た平面図。
【図3】図2の矢印III−III線に沿って見た断面図。
【図4】導光体の側面形状を示す図。
【図5】(a)は赤外光の照度むらを示す図であり、(b)は白色光の照度むらを示す図であり、(c)は紫外光の照度むらを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、読取対象物が載置される被読取面を有する対象物載置部と、前記被読取面を照明する光源体と、前記光源体により照明された前記被読取面を撮像する撮像装置とを備える読取装置であって、前記光源体は、平面視で前記被読取面の縁近傍に直線状に並べられた複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各出射光を前記被読取面に平均化して照射するための1つの導光体とを有する構成とする。
【0012】
これによると、例えば矩形の被読取面の一辺に沿って複数の発光素子を一列に並べると共にそれらの出射光を導光体を介して被読取面に照射することにより、被読取面の一辺に沿う方向には導光体の出射面を延在させることができることから照度の平均化が容易となる。また、導光体の形状により発光素子の出射光をある程度任意の方向に曲げることができ、平面視で被読取面の中心から外れた位置に発光素子を配置できるため、装置内における光源体のレイアウト上の自由度が増すと共に、導光体により出射光を拡げることができることにより照度むらを低減できる。
【0013】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記光源体が2列に配設され、前記被読取面の前記縁に近い方の前記導光体の出射面の断面形状が前記光源体の列方向から見て凹状に形成され、前記被読取面の前記縁から遠い方の前記導光体の出射面の断面形状が前記光源体の列方向から見て凸状に形成されている構成とする。
【0014】
これによると、2列に配設された各光源体において、被読取面の縁に近い方の導光体の出射面の方が被読取面に近いため、その出射光の拡がりを被読取面に達するまでに大きくすることが難しいが、その導光体の出射面を凹状にすることにより、その凹状出射面からの出射光を拡げることができ、集中光により照度が高くなり過ぎることを抑制し得る。一方、被読取面に遠い方の導光体からの出射光の拡がりは被読取面に至るまでの距離が長いことから大きくなるが、導光体の出射面を凸状にすることにより出射光の拡がりを抑制し得る。これらの組合せにより被読取面を、照度のむらを抑制して照明することができる。
【0015】
また、第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記複数の発光素子が、白色光と紫外光と赤外光との少なくとも2種類からなる構成とする。
【0016】
これによると、読取対象物が例えばパスポートのように、モニタによる目視の他に、OCRにより文字認識を行い、さらに改ざん防止のための蛍光インクで描かれたものを認識する場合に、白色光及び赤外光に加えて紫外光の各種光源を設けた読取装置を用いるが、その場合に、導光体を例えば被読取面の一辺に沿う向きに長く形成することにより、その長手方向に複数の光源体を配設することができ、複数種の光により被読取面を照明することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明による読取装置の例を示す全体斜視図である。読取装置1は、略直方体のハウジング2を有し、机上等に置いて使用される。なお、以下の説明での上下方向は、読取装置1を机上に置いた状態におけるものとする。
【0018】
図2に併せて示されるように、ハウジング2の上面には、その概ね全面に亘って対象物載置部としてのガラス板3が設けられている。そのガラス板3の上面となる被読取面3aに、読取対象物としての例えばパスポート4が載置される。
【0019】
ハウジング2の内部は、図3に示されるように空洞に形成されている。ハウジング2のの底部にはガラス板3と概ね平行に基板5が固定され、基板5の上面には、ガラス板3の上方から見た平面視で片側に寄った所に、ガラス板3から遠い方の外側発光素子列6と、ガラス板3に近い方の内側発光素子列7とが互いに平行な2列になるように配置されている。外側発光素子列6は複数の赤外LED6a・白色LED6b・紫外LED6cを1列に直線状に並べて構成され、内側発光素子列7も複数の赤外LED7a・白色LED7b・紫外LED7cを1列に直線状に並べて構成されている。それら各LED6a〜6c・7a〜7cは、それぞれの光軸を基板5に直交する向きの被読取面3a側に向けるように基板5に取り付けられている。なお、各LED6a〜6c・7a〜7cの各個数や配列順序は、各素子の照射能力や照射範囲により任意に設定してよい。また、各LED6a〜6c・7a〜7cは、1列構成に限ることなく、全体的に直線状に配置されていれば、それぞれを複数列構成としてもよい。
【0020】
図2に良く示されるように本実施形態では被読取面3aが矩形であり、各LED列6・7は、平面視で矩形状ガラス板3の一方の長辺となる縁3bの近傍かつ縁3bに沿って配置されている。外側発光素子列6の各LED6a〜6cの出射面上には外側導光体8が設けられ、内側発光素子列7の各LED7a〜7cの出射面上には内側導光体9が設けられている。
【0021】
各導光体8・9は、透明な材質として例えばPMMAに代表されるアクリル樹脂により、平面視における縁3bに沿う幅が縁3bと概ね同じ長さを有し、図3に示されるように、列方向から見た側面形状が被読取面3aに近付くにしたがって拡開するように形成されている。また、外側導光体8は、各LED6a〜6cの出射光をガラス板3の被読取面3aにおける近い側の略半分の領域11aに向けて曲線状に延出し、内側導光体9は、各LED7a〜7cの出射光を被読取面3aにおける遠い側の略半分の領域11bに向けて同様に曲線状に延出している。
【0022】
なお、ハウジング2の側壁内面の各導光体8・9の上方には、被読取面3aに載置されたパスポート4の紙面を撮像する撮像装置としてのカメラ12が配設され、カメラ12に対向する位置に、被読取面3aの像の光路をカメラ12に向けて曲げるための反射鏡13が配設されている。このように光路を曲げるのは、読取装置1をコンパクト化するのに有効であるためである。そして、各導光体8・9の列方向から見て、内側導光体9の方が外側導光体8よりも低くされている。これは、カメラ12に向かう反射鏡13からの光路を遮らないようにするためであり、これにより読取装置1をより一層コンパクト化し得る。
【0023】
このようにして構成された読取装置1では、パスポート4を被読取面3aに載置し、その読取面3aを各LED6a〜6c・7a〜7c(導光体8・9)により照明し、照明されたパスポート4の紙面をカメラ13により撮像する。
【0024】
読取処理を行う場合には、赤外LED6a・7aにより赤外光が被読取面3aに照射され、カメラ13により赤外光画像が生成される。その赤外光画像が図示省略のコンピュータで構成される読取処理部により処理されて、文字等のコードが認識される。赤外光画像では、赤外光が黒インクに良く吸収されるため相対的に背景画像が写り難くなり、認識すべき文字等のコントラストが強くなり、読取処理を高精度に行うことができる。なお、読取処理部は読取装置1の外部に設けられていてもよい。
【0025】
また、操作者が画像を目視で確認する場合には、白色LED6b・7bにより白色光が被読取面3aに照射され、カメラ13により可視光画像が生成される。その可視光画像が、図示省略のモニタに出力され、モニタ画面に表示される。
【0026】
また、蛍光インクにより改ざん等の不正を防止する処置が施されている場合には、紫外LED6c・7cにより紫外光が被読取面3aに照射され、パスポート4の紙面に設けられている蛍光パターン等の蛍光材が励起され、カメラ13により、蛍光材から発した可視光の画像が生成される。このようにして蛍光材の励起による画像も、図示省略のモニタに出力され、モニタ画面に表示される。この場合、蛍光パターン等の画像を登録画像と比較して、不正の判定を行うことができる。その判定処理を、読取装置1内の上記読取処理部で行ってもよく、あるいは外部のコンピュータ等で行ってもよい。
【0027】
次に、本実施形態における各LED6a〜6c・7a〜7c及び各導光体8・9による照明要領について説明する。
【0028】
各導光体8・9には、それぞれ赤外光・白色光・紫外光が入射し、それらが各出射面8a・9aから出射される。図4に拡大して示されるように、外側導光体8の出射面8aは外側発光素子列6の列方向から見て凹状断面形状の凹面に形成されており、内側導光体9の出射面9aは内側発光素子列7の列方向から見て凸状断面形状の凸面に形成されている。また、各出射面8a・9aの凹凸形状は列方向には一定である。
【0029】
このように各出射面8a・9aが形成されていることにより、外側導光体8の出射面8aからの出射光は、被読取面3aの縁3bの全長に亘る幅の範囲では概ね平行光となり、外側発光素子列6の列方向から見た場合には、図4に示される角度θ1で拡がる拡散光となる。外側導光体8による出射光は被読取面3aの手前側の領域11aを照明するようにされており、その出射面8aから領域11aまでの距離が短い。その短い距離でも被読取面8aの概ね半分の領域11aを照明し得るように出射光を大きく拡開させるべく、出射面8aの縁3bに直交する方向の長さ及び被読取面3aまでの距離にも基づいて、出射面8aの凹面形状の曲率が設定されている。これにより、領域11aの範囲を適切に照明し得る。
【0030】
一方、内側導光体9の出射面9aからの出射光は、被読取面3aの縁3bの全長に亘る幅の範囲では同様に概ね平行光であるが、外側導光体8よりも被読取面3aまでの距離が長いため幅方向に拡がる量が多く、内側導光体9の縁3bに沿う方向の長さは外側導光体8よりも少し短くなっている。また、内側発光素子列7の列方向から見た場合には、出射面9aの凸面形状により出射光が絞られるため、出射光の拡がる角度θ2(図4)は上記角度θ1よりも小さい(θ2<θ1)。内側導光体9による出射光は被読取面3aの奥側の領域11bを照明するようにされており、その出射面9aから領域11bまでの距離が長いことにより被読取面3aに至るまでに出射光の拡開幅が大きくなるが、上記出射光の絞りにより被読取面3aでの拡開幅が抑制される。この場合も、出射面9aの縁3bに直交する方向の長さ及び被読取面3aまでの距離にも基づいて、出射面9aの凸面形状の曲率が設定されており、領域11bの範囲を適切に照明し得る。
【0031】
次に、本読取装置1における実験結果の一例として、被読取面3aにおける照度むらを図5に示す。なお、本実施形態では各導光体8・9にそれぞれ3種類の各LED6a〜6c・7a〜7cを3個ずつ計12個配設しているが、これらの個数は照明範囲などにより任意に設定してよい。
【0032】
図5(a)には赤外LED6a・7aによる照度むらが、図5(b)には白色LED6b・7bによる照度むらが、図5(c)には紫外LED6c・7cによる照度むらが、それぞれ照度の強弱の概略を等高線図により示されている。
【0033】
図5(a)の赤外光では、最低照度RLが2400lxであり、最高照度RHが5400lxであり、照度むらとしては、平均値の3900lxに対して±38%となった。また、LED効率は40.5%であった。赤外光の放射角は狭いが、上記数値から明らかなように、各導光体8・9により被読取面3aの全体に亘って略均一に照明することができる。これにより、例えば読取対象物の赤外光の照明を必要とする領域に応じて赤外LEDを配置する等の設計をする必要が無くなるため、設計変更することなく種々の読取対象物に対応し得る。また、LED効率も高いものとなった。
【0034】
また、図5(b)の白色光では、最低照度WLが2500lxであり、最高照度WHが4000lxであり、照度むらとしては、平均値の3250lxに対して±23%となった。また、LED効率は39.4%であった。白色光の明るさは距離によって大きく変化し、距離が不適切な場合には白とびが生じ易い。パスポート4の場合には紙面の縁の近くにコードが配置されているものがあり、そのコードが位置する部分に白とびが生じると、コードの文字の一部が見づらくなる。それに対して、導光体8・9を介しかつ各出射面8a・9a凹凸面形状により適度に拡散されることにより、照射範囲が狭まることが無く、コード認識に影響することのない照度むらの抑制が実現された。
【0035】
また、図5(c)の紫外光では、最低照度VLが6700lxであり、最高照度VHが12000lxであり、照度むらとしては、平均値の9350lxに対して±28%となった。また、LED効率は39%であった。紫外光は、蛍光材を励起するために用いられるので、紫外光の反射光は撮影の対象とはならず、照度むらが撮像に直接的に影響することはないが、読取対象物の蛍光材の位置は任意であり、照度むらが無いように照明されていることが望ましい。本発明の上記構造によれば、上記したように、赤外光及び白色光について照度むらが小さい結果となり、併せて紫外光についても良好な結果が得られた。
【0036】
なお、本実施形態では、赤外光・白色光・紫外光の3種類の各LEDを各導光体8・9に配設する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、必要に応じて赤外光・白色光・紫外光のいずれか2種類のLEDを配設する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明にかかる読取装置は、導光体の形状により任意の位置に対する照射が可能となり、装置内における光源体のレイアウト上の自由度が増すと共に、導光体により出射光を拡げることができることにより照度むらを低減できる効果を有し、特に白色光・赤外光・紫外光を用いた読取装置として有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 読取装置
3a 被読取面
4 パスポート(読取対象物)
6a〜6c LED(発光素子)
7a〜7c LED(発光素子)
8・9 導光体(光源体)
8a・9a 出射面
12 カメラ(撮像素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象物が載置される被読取面を有する対象物載置部と、
前記被読取面を照明する光源体と、
前記光源体により照明された前記被読取面を撮像する撮像装置とを備える読取装置であって、
前記光源体は、平面視で前記被読取面の縁近傍に直線状に並べられた複数の発光素子と、前記複数の発光素子の各出射光を前記被読取面に平均化して照射するための1つの導光体とを有すること特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記光源体が2列に配設され、
前記被読取面の前記縁に近い方の前記導光体の出射面の断面形状が前記光源体の列方向から見て凹状に形成され、
前記被読取面の前記縁から遠い方の前記導光体の出射面の断面形状が前記光源体の列方向から見て凸状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記複数の発光素子が、白色光と紫外光と赤外光との少なくとも2種類からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−244417(P2012−244417A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112614(P2011−112614)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】