説明

調光ガラス装置

【課題】車両衝突時に調光ガラスへの給電を停止する。
【解決手段】本発明の調光ガラス装置10は、車両用ドア90に設けられ、印加される電圧に応じて光透過率が変化する調光ガラス18と、インバータ28と調光ガラス18とを電気的に接続すると共に、一部32Aが張力を付与された状態でインパクトビーム24に設けられたワイヤーハーネス32とを備えている。この構成によれば、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重が作用してインパクトビーム24が変形された場合には、このインパクトビーム24の変形に伴う引張力によってワイヤーハーネス32を切断することができ、調光ガラス18への給電を停止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光ガラス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用ドアに設けられた調光ガラスと、この調光ガラスに電力を供給するための給電装置と、調光ガラスと給電装置とを電気的に接続するワイヤーハーネスとを備えた調光ガラス装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−247086号公報
【特許文献2】実開昭61−205216号公報
【特許文献3】実開昭62−115218号公報
【特許文献4】実開昭62−37560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の調光ガラス装置においては、車両衝突時に調光ガラスへの給電が停止されることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、車両衝突時に調光ガラスへの給電を停止することができる調光ガラス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の調光ガラス装置は、車体外装部に設けられ、印加される電圧に応じて光透過率が変化する調光ガラスと、車両電源と前記調光ガラスとを電気的に接続すると共に、一部が張力を付与された状態で前記車体外装部を構成する車体構成部材に設けられたワイヤーハーネスと、を備えている。
【0007】
この調光ガラス装置によれば、車両電源と調光ガラスとを電気的に接続するワイヤーハーネスの一部は、張力が付与された状態で車体外装部を構成する車体構成部材に設けられている。従って、車体外装部に車両外側から衝突荷重が作用して車体構成部材が変形された場合には、この車体構成部材の変形に伴う引張力によってワイヤーハーネスを切断することができ、調光ガラスへの給電を停止することができる。
【0008】
請求項2に記載の調光ガラス装置は、請求項1に記載の調光ガラス装置において、前記調光ガラスが、ドア幅方向に延在された前記車体構成部材としてのドア補強部材を有する前記車体外装部としての車両用ドアに設けられ、前記ワイヤーハーネスの前記一部が、前記ドア補強部材における車両内側面に、前記ドア補強部材の延在方向に沿って設けられた構成とされている。
【0009】
なお、本発明におけるドア幅方向とは、車両用ドアがサイドドアである場合には、車両前後方向に相当し、車両用ドアがバックドアである場合には、車両幅方向に相当する。
【0010】
この調光ガラス装置によれば、ワイヤーハーネスの一部は、車両用ドアに車両外側から衝突荷重が作用した場合に変形が大きくなるドア補強部材の車両内側面に、このドア補強部材の延在方向に沿って設けられている。従って、車両用ドアに車両外側から衝突荷重が作用してドア補強部材が変形された場合には、ワイヤーハーネスを円滑に切断することができる。
【0011】
請求項3に記載の調光ガラス装置は、請求項1に記載の調光ガラス装置において、前記調光ガラスが、前記車体構成部材としてのドアアウタパネル及びドアインナパネルを有する前記車体外装部としてのサイドドアに設けられ、前記ワイヤーハーネスの前記一部が、前記ドアアウタパネル又は前記ドアインナパネルにおけるセンターピラー側に、車両上下方向に沿って設けられた構成とされている。
【0012】
この調光ガラス装置によれば、ワイヤーハーネスの一部は、センターピラー付近に車両側方から衝突荷重が作用した場合に変形が大きくなるドアアウタパネル又はドアインナパネルにおけるセンターピラー側に、車両上下方向に沿って設けられている。従って、車両側方からセンターピラー付近に衝突荷重が作用してドアアウタパネル又はドアインナパネルにおけるセンターピラー側が変形された場合には、ワイヤーハーネスを円滑に切断することができる。
【0013】
また、前記課題を解決するために、請求項4に記載の調光ガラス装置は、車体外装部に設けられ、印加される電圧に応じて光透過率が変化する調光ガラスと、車両電源と前記調光ガラスとを電気的に接続するワイヤーハーネスと、前記車体外装部に前記ワイヤーハーネスの一部と対向して設けられ、前記車体外装部に車両外側から衝突荷重が作用した場合に前記ワイヤーハーネスの前記一部に向けて相対変位されて前記ワイヤーハーネスを切断するための切断部と、を備えている。
【0014】
この調光ガラス装置によれば、車体外装部に車両外側から衝突荷重が作用した場合には、切断部がワイヤーハーネスの一部に向けて相対変位される。そして、このワイヤーハーネスの一部に切断部が押し当てられてワイヤーハーネスが切断される。従って、これにより、調光ガラスへの給電を停止することができる。
【0015】
請求項5に記載の調光ガラス装置は、請求項4に記載の調光ガラス装置において、前記切断部が、前記ワイヤーハーネスの前記一部に向けて突出する突起状に形成された構成とされている。
【0016】
この調光ガラス装置によれば、切断部は、ワイヤーハーネスの一部に向けて突出する突起状に形成されているので、ワイヤーハーネスの一部に切断部が押し当てられたときには、この突起状の切断部によってワイヤーハーネスを円滑に切断することができる。
【0017】
請求項6に記載の調光ガラス装置は、請求項4又は請求項5に記載の調光ガラス装置において、前記調光ガラスが、前記車体外装部としての車両用ドアに設けられ、前記ワイヤーハーネスの前記一部が、前記車両用ドアを構成するドア補強部材によって前記切断部と反対側から支持された構成とされている。
【0018】
この調光ガラス装置によれば、ワイヤーハーネスの一部は、切断部と反対側からドア補強部材によって支持されているので、車両用ドアに車両外側から衝突荷重が作用した場合には、ワイヤーハーネスの一部がドア補強部材と切断部とで挟み込まれて切断される。従って、これにより、ワイヤーハーネスの切断をより一層円滑に行うことができる。
【0019】
請求項7に記載の調光ガラス装置は、請求項6に記載の調光ガラス装置において、前記ワイヤーハーネスの前記一部が、前記車両用ドアのドア幅方向に延在された前記ドア補強部材における車両内側面に、前記ドア補強部材の延在方向に沿って設けられた構成とされている。
【0020】
なお、本発明におけるドア幅方向とは、車両用ドアがサイドドアである場合には、車両前後方向に相当し、車両用ドアがバックドアである場合には、車両幅方向に相当する。
【0021】
この調光ガラス装置によれば、ワイヤーハーネスの一部は、車両用ドアに車両外側から衝突荷重が作用した場合に変形が大きくなるドア補強部材の車両内側面に、このドア補強部材の延在方向に沿って設けられている。従って、車両用ドアに車両外側から衝突荷重が作用してドア補強部材が変形された場合には、切断部による切断に加えて、ドア補強部材の変形に伴う引張力によっても、ワイヤーハーネスが切断される。これにより、ワイヤーハーネスの切断をさらに一層円滑に行うことができる。
【0022】
請求項8に記載の調光ガラス装置は、請求項4〜請求項7のいずれか一項に記載の調光ガラス装置において、前記調光ガラスが、衝突荷重を受けた場合にエアバッグ装置に衝突検知信号を出力するセンシング用パッドを備えた前記車体外装部としての車両用ドアに設けられ、前記切断部が、前記センシング用パッドに設けられた構成とされている。
【0023】
この調光ガラス装置によれば、切断部は、センシング用パッドに設けられているので、新たな部材の追加を抑制して、部材点数の増加を抑制することができる。
【0024】
請求項9に記載の調光ガラス装置は、請求項4〜請求項7のいずれか一項に記載の調光ガラス装置において、前記ワイヤーハーネスによって前記車両電源と前記調光ガラスとの間に電気的に接続されたインバータを備え、前記切断部が、前記インバータに設けられた構成とされている。
【0025】
この調光ガラス装置によれば、切断部は、インバータに設けられているので、新たな部材の追加を抑制して、部材点数の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上詳述したように、本発明によれば、車両衝突時に調光ガラスへの給電を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態に係る調光ガラス装置を備えた車両用ドアの側面図である。
【図2】図1に示されるインパクトビーム及びワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【図3】図2に示されるインパクトビーム及びワイヤーハーネスの車両側突時の状態を示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る調光ガラス装置を備えた車両用ドアの側面図である。
【図5】図4に示されるベルトラインリインフォースメント及びワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【図6】図5に示されるベルトラインリインフォースメント及びワイヤーハーネスの車両側突時の状態を示す図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る調光ガラス装置を備えた車両用ドアの側面図である。
【図8】図7に示される車両用ドアの要部拡大平面断面図である。
【図9】図7に示されるドアアウタパネル及びワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【図10】図9に示されるドアアウタパネル及びワイヤーハーネスの車両側突時の状態を示す図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る調光ガラス装置を備えた車両用ドアの側面図である。
【図12】図11に示されるドアアウタパネル、インパクトビーム、ワイヤーハーネス、センシング用パッドを示す斜視図である。
【図13】図11に示される車両用ドアの要部拡大平面断面図である。
【図14】図13に示される車両用ドアの車両側突時の状態を示す図である。
【図15】本発明の第五実施形態に係る調光ガラス装置を備えた車両用ドアの側面図である。
【図16】図15に示される車両用ドアの要部拡大平面断面図である。
【図17】図16に示される車両用ドアの車両側突時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態について説明する。
【0029】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0030】
図1に示されるように、車体外装部としての車両用ドア90には、本発明の第一実施形態に係る調光ガラス装置10が備えられている。この車両用ドア90は、例えば、乗用自動車等の車両におけるフロントサイドドアとされており、ドアインナパネル12、ドアアウタパネル14、ドアフレーム16、調光ガラス18、昇降リンク機構20、レギュレータ22、インパクトビーム24、ベルトラインリインフォースメント26、インバータ28、ワイヤーハーネス30,32を備えて構成されている。
【0031】
ドアインナパネル12とドアアウタパネル14とは、互いに車両幅方向に対向して設けられており、ドアフレーム16は、ドアインナパネル12に支持されている。
【0032】
調光ガラス18は、ドアフレーム16によって車両上下方向に昇降可能に支持されている。この調光ガラス18は、その内部に例えば液晶パネル等の調光層を有して構成されており、印加される交流電圧に応じて光透過率が変化する構成とされている。
【0033】
昇降リンク機構20は、互いに交差する一対のリンク34を有して構成されており、レギュレータ22によって作動されて調光ガラス18を昇降させる構成とされている。
【0034】
インパクトビーム24は、車両前後方向に延在されたパイプ状に形成されている。このインパクトビーム24は、ドアアウタパネル14とドアインナパネル12との間に設けられると共に、その両端に設けられたエクステンション36によってドアアウタパネル14における車両内側面に結合されている。
【0035】
ベルトラインリインフォースメント26は、車両前後方向に延在された短冊状に形成されており、ドアアウタパネル14のベルトライン部BLにおける車両内側面に結合されている。
【0036】
インバータ28は、ドアインナパネル12の車両内側面に取り付けられている。このインバータ28は、例えば図示しないエンジンルームに設けられた車両電源38とワイヤーハーネス30によって電気的に接続されており、車両電源38の直流電圧を交流電圧に変換する構成とされている。また、このインバータ28は、ワイヤーハーネス32によって調光ガラス18と電気的に接続されており、このワイヤーハーネス32を通じて調光ガラス18に交流電圧を供給する構成とされている。
【0037】
ワイヤーハーネス32の一部32Aは、図2に示されるように、インパクトビーム24における車両内側面24Aに、このインパクトビーム24の延在方向(長手方向)に沿って設けられている。さらに、このワイヤーハーネス32の一部32Aは、インパクトビーム24の延在方向両端側の二箇所の接着材44によって張力を付与された状態でインパクトビーム24に固定されている。
【0038】
なお、本実施形態において、インパクトビーム24は、本発明における車体構成部材及びドア補強部材に相当する。
【0039】
次に、本発明の第一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
この調光ガラス装置10によれば、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、張力が付与された状態でインパクトビーム24に設けられている。従って、図3に示されるように、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重Fが作用してインパクトビーム24が変形された場合には、このインパクトビーム24の変形に伴う引張力によってワイヤーハーネス32を切断することができ、調光ガラス18(図1参照)への給電を停止することができる。
【0041】
特に、このワイヤーハーネス32の一部32Aは、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重Fが作用した場合に変形が大きくなるインパクトビーム24の車両内側面24Aに、このインパクトビーム24の延在方向に沿って設けられている。従って、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重Fが作用してインパクトビーム24が変形された場合には、ワイヤーハーネス32を円滑に切断することができる。
【0042】
なお、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、インパクトビーム24の延在方向両端側の二箇所の接着材44によって張力を付与された状態でインパクトビーム24に固定されていたが、例えば、一対の固定具等によって張力を付与された状態でインパクトビーム24に固定されていても良い。
【0043】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0044】
図4に示されるように、車両用ドア90には、本発明の第二実施形態に係る調光ガラス装置50が備えられている。この調光ガラス装置50は、上述の本発明の第一実施形態に係る調光ガラス装置10に対し、次の如く構成が変更されている。
【0045】
つまり、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、図5に示されるように、ベルトラインリインフォースメント26における車両内側面26Aに、このベルトラインリインフォースメント26の延在方向(長手方向)に沿って設けられている。
【0046】
このベルトラインリインフォースメント26の延在方向両端側には、一対のスリット52がそれぞれ形成されている。そして、この各一対のスリット52の間の巻回部54にワイヤーハーネス32の一部32Aの両端側がそれぞれ巻回されることにより、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、張力を付与された状態でベルトラインリインフォースメント26に固定されている。
【0047】
なお、本実施形態において、ベルトラインリインフォースメント26は、本発明における車体構成部材及びドア補強部材に相当する。
【0048】
次に、本発明の第二実施形態の作用及び効果について説明する。
【0049】
この調光ガラス装置50によれば、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、張力が付与された状態でベルトラインリインフォースメント26に設けられている。従って、図6に示されるように、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重Fが作用してベルトラインリインフォースメント26が変形された場合には、このベルトラインリインフォースメント26の変形に伴う引張力によってワイヤーハーネス32を切断することができ、調光ガラス18への給電を停止することができる。
【0050】
特に、このワイヤーハーネス32の一部32Aは、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重Fが作用した場合に変形が大きくなるベルトラインリインフォースメント26の車両内側面26Aに、このベルトラインリインフォースメント26の延在方向に沿って設けられている。従って、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重Fが作用してベルトラインリインフォースメント26が変形された場合には、ワイヤーハーネス32を円滑に切断することができる。
【0051】
なお、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、その両端側が巻回部54にそれぞれ巻回されることによって張力を付与された状態でベルトラインリインフォースメント26に固定されていたが、例えば、次のようにされていても良い。
【0052】
すなわち、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、固定具等によって張力を付与された状態でベルトラインリインフォースメント26に固定されていても良く、また、接着材によって張力を付与された状態でベルトラインリインフォースメント26に固定されていても良い。
【0053】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
【0054】
図7に示されるように、車両用ドア90には、本発明の第三実施形態に係る調光ガラス装置60が備えられている。この調光ガラス装置60は、上述の本発明の第一実施形態に係る調光ガラス装置10に対し、次の如く構成が変更されている。
【0055】
つまり、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、図7〜図9に示されるように、ドアアウタパネル14の車両後側14A(センターピラー62側)における下方部の車両内側面に、車両上下方向に沿って設けられている。さらに、このワイヤーハーネス32の一部32Aは、車両上下方向に離間した二箇所の接着材64によって張力を付与された状態でドアアウタパネル14の車両内側面に固定されている。
【0056】
なお、本実施形態において、ドアアウタパネル14は、本発明における車体構成部材に相当する。
【0057】
次に、本発明の第三実施形態の作用及び効果について説明する。
【0058】
この調光ガラス装置60によれば、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、張力が付与された状態でドアアウタパネル14に設けられている。従って、図10に示されるように、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重が作用してドアアウタパネル14が変形された場合には、このドアアウタパネル14の変形に伴う引張力によってワイヤーハーネス32を切断することができ、調光ガラス18への給電を停止することができる。
【0059】
特に、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、センターピラー62(図7,図8参照)付近に車両側方から衝突荷重が作用した場合に変形が大きくなるドアアウタパネル14の車両後側14Aにおける下方部に、車両上下方向に沿って設けられている。従って、車両側方からセンターピラー62付近に衝突荷重が作用してドアアウタパネル14の車両後側14Aにおける下方部が変形された場合には、ワイヤーハーネス32を円滑に切断することができる。
【0060】
なお、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、車両上下方向に離間した二箇所の接着材64によって張力を付与された状態でドアアウタパネル14に固定されていたが、例えば、車両上下方向に離間した一対の固定具等によって張力を付与された状態でドアアウタパネル14に固定されていても良い。
【0061】
また、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、ドアアウタパネル14に固定されていたが、ドアインナパネル12の車両後側(センターピラー62側)に、車両上下方向に沿って設けられると共に、張力を付与された状態でドアインナパネル12に固定されていても良い。
【0062】
このように構成されていても、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重が作用してドアインナパネル12が変形された場合には、このドアインナパネル12の変形に伴う引張力によってワイヤーハーネス32を切断することができ、調光ガラス18への給電を停止することができる。
【0063】
また、車両用ドア90は、フロントサイドドアとされ、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、ドアアウタパネル14の車両後側14Aに設けられていたが、車両用ドア90がリアサイドドアとされた場合には、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、ドアアウタパネル14の車両前側(センターピラー62側)に設けられていても良い。
【0064】
また、同様に、車両用ドア90がリアサイドドアとされた場合に、ワイヤーハーネス32の一部32Aが、ドアインナパネル12の車両前側(センターピラー62側)に設けられていても良い。
【0065】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
【0066】
図11に示されるように、車両用ドア90には、本発明の第四実施形態に係る調光ガラス装置70が備えられている。この調光ガラス装置70は、上述の本発明の第一実施形態に係る調光ガラス装置10に対し、次の如く構成が変更されている。
【0067】
つまり、車両用ドア90には、図11〜図13に示されるように、衝突荷重を受けた場合に図示しないサイドエアバッグ装置に衝突検知信号を出力するセンシング用パッド72が設けられている。このセンシング用パッド72は、インパクトビーム24に対する車両内側にこのインパクトビーム24と近接して配置されている。
【0068】
そして、このセンシング用パッド72には、ワイヤーハーネス32を切断するための切断部74が一体に形成されている。この切断部74は、ワイヤーハーネス32の一部32Aと車両幅方向に対向されると共に、センシング用パッド72からワイヤーハーネス32の一部32Aに向けて(車両外側に向けて)突出する突起状に形成されている。さらに、この切断部74は、ワイヤーハーネス32の一部32Aに向かうに従って縮径する先細り状を成している。
【0069】
なお、本実施形態において、インパクトビーム24は、本発明におけるドア補強部材に相当する。
【0070】
次に、本発明の第四実施形態の作用及び効果について説明する。
【0071】
この調光ガラス装置70によれば、図14に示されるように、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重Fが作用した場合には、インパクトビーム24の変形に伴ってワイヤーハーネス32の一部32Aが切断部74に向けて変位される。そして、このワイヤーハーネス32の一部32Aが切断部74に押し当てられてワイヤーハーネス32が切断される。従って、これにより、調光ガラス18への給電を停止することができる。
【0072】
特に、切断部74は、ワイヤーハーネス32の一部32Aに向けて突出する突起状に形成されているので、ワイヤーハーネス32の一部32Aが切断部74に押し当てられたときには、この突起状の切断部74によってワイヤーハーネス32を円滑に切断することができる。
【0073】
しかも、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、切断部74と反対側からインパクトビーム24によって支持されているので、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重Fが作用した場合には、ワイヤーハーネス32の一部32Aがインパクトビーム24と切断部74とで挟み込まれて切断される。従って、これにより、ワイヤーハーネス32の切断をより一層円滑に行うことができる。
【0074】
また、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重Fが作用した場合に変形が大きくなるインパクトビーム24の車両内側面24Aに、このインパクトビーム24の延在方向に沿って設けられている。従って、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重Fが作用してインパクトビーム24が曲げ変形された場合には、切断部74による切断に加えて、インパクトビーム24の曲げ変形に伴う引張力によっても、ワイヤーハーネス32が切断される。これにより、ワイヤーハーネス32の切断をさらに一層円滑に行うことができる。
【0075】
また、切断部74は、センシング用パッド72に設けられているので、新たな部材の追加を抑制して、部材点数の増加を抑制することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、ワイヤーハーネス32の一部32Aがインパクトビーム24の車両内側面24Aに沿って設けられ、切断部74を有するセンシング用パッド72がワイヤーハーネス32の一部32Aに対する車両内側に配置されていたが、次のように構成されても良い。
【0077】
すなわち、ワイヤーハーネス32の一部32Aがインパクトビーム24の車両外側面に沿って設けられ、切断部74を有するセンシング用パッド72がワイヤーハーネス32の一部32Aに対する車両外側に配置されても良い。
【0078】
つまり、車両側突時に、ワイヤーハーネス32の一部32Aが切断部74側に変位されるように構成されても良く、また、切断部74がワイヤーハーネス32の一部32A側に変位されるように構成されても良い。
【0079】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態について説明する。
【0080】
図15に示されるように、車両用ドア90には、本発明の第五実施形態に係る調光ガラス装置80が備えられている。この調光ガラス装置80は、上述の本発明の第四実施形態に係る調光ガラス装置70に対し、次の如く構成が変更されている。
【0081】
つまり、図15,図16に示されるように、インバータ28には、切断部としての放熱フィン84が複数形成されている。この放熱フィン84は、ワイヤーハーネス32の一部32Aと車両幅方向に対向されると共に、ワイヤーハーネス32の一部32Aに向けて(車両外側に向けて)突出する突起状に形成されている。さらに、この放熱フィン84は、ワイヤーハーネス32の一部32Aに向かうに従って縮径する先細り状を成している。
【0082】
このように構成されていても、上述の本発明の第四実施形態と同様に、図16に示される如く、車両用ドア90に車両側方から衝突荷重Fが作用した場合には、ワイヤーハーネス32の一部32Aに放熱フィン84が押し当てられてワイヤーハーネス32を切断することができ、調光ガラス18への給電を停止することができる。
【0083】
また、放熱フィン84は、インバータ28に一体に形成されているので、新たな部材の追加を抑制して、部材点数の増加を抑制することができる。
【0084】
なお、本実施形態においても、上述の本発明の第四実施形態における変形例と同様に、ワイヤーハーネス32の一部32Aがインパクトビーム24の車両外側面に沿って設けられ、放熱フィン84を有するインバータ28がワイヤーハーネス32の一部32Aに対する車両外側に配置されても良い。
【0085】
次に、上記各実施形態に共通の変形例について説明する。
【0086】
上記各実施形態において、調光ガラス装置10,50,60,70,80は、フロントサイドドアに適用されていたが、リアサイドドアやバックドアに適用されても良い。
【0087】
また、調光ガラス装置10,50,60,70,80は、ドアガラス以外の車両のウィンドウガラスに適用されても良い。
【0088】
また、調光ガラス装置10,50,60,70,80は、車両側突時に、インバータ28と調光ガラス18とを電気的に接続するワイヤーハーネス32を切断させる構成とされていたが、車両電源38とインバータ28とを電気的に接続するワイヤーハーネス30を切断させる構成とされていても良い。
【0089】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
10,50,60,70,80 調光ガラス装置
12 ドアインナパネル
14 ドアアウタパネル
18 調光ガラス
24 インパクトビーム(ドア補強部材)
26 ベルトラインリインフォースメント(ドア補強部材)
28 インバータ
30,32 ワイヤーハーネス
38 車両電源
72 センシング用パッド
74 切断部
84 放熱フィン(切断部)
90 車両用ドア(車体外装部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体外装部に設けられ、印加される電圧に応じて光透過率が変化する調光ガラスと、
車両電源と前記調光ガラスとを電気的に接続すると共に、一部が張力を付与された状態で前記車体外装部を構成する車体構成部材に設けられたワイヤーハーネスと、
を備えた調光ガラス装置。
【請求項2】
前記調光ガラスは、ドア幅方向に延在された前記車体構成部材としてのドア補強部材を有する前記車体外装部としての車両用ドアに設けられ、
前記ワイヤーハーネスの前記一部は、前記ドア補強部材における車両内側面に、前記ドア補強部材の延在方向に沿って設けられている、
請求項1に記載の調光ガラス装置。
【請求項3】
前記調光ガラスは、前記車体構成部材としてのドアアウタパネル及びドアインナパネルを有する前記車体外装部としてのサイドドアに設けられ、
前記ワイヤーハーネスの前記一部は、前記ドアアウタパネル又は前記ドアインナパネルにおけるセンターピラー側に、車両上下方向に沿って設けられている、
請求項1に記載の調光ガラス装置。
【請求項4】
車体外装部に設けられ、印加される電圧に応じて光透過率が変化する調光ガラスと、
車両電源と前記調光ガラスとを電気的に接続するワイヤーハーネスと、
前記車体外装部に前記ワイヤーハーネスの一部と対向して設けられ、前記車体外装部に車両外側から衝突荷重が作用した場合に前記ワイヤーハーネスの前記一部に向けて相対変位されて前記ワイヤーハーネスを切断するための切断部と、
を備えた調光ガラス装置。
【請求項5】
前記切断部は、前記ワイヤーハーネスの前記一部に向けて突出する突起状に形成されている、
請求項4に記載の調光ガラス装置。
【請求項6】
前記調光ガラスは、前記車体外装部としての車両用ドアに設けられ、
前記ワイヤーハーネスの前記一部は、前記車両用ドアを構成するドア補強部材によって前記切断部と反対側から支持されている、
請求項4又は請求項5に記載の調光ガラス装置。
【請求項7】
前記ワイヤーハーネスの前記一部は、前記車両用ドアのドア幅方向に延在された前記ドア補強部材における車両内側面に、前記ドア補強部材の延在方向に沿って設けられている、
請求項6に記載の調光ガラス装置。
【請求項8】
前記調光ガラスは、衝突荷重を受けた場合にエアバッグ装置に衝突検知信号を出力するセンシング用パッドを備えた前記車体外装部としての車両用ドアに設けられ、
前記切断部は、前記センシング用パッドに設けられている、
請求項4〜請求項7のいずれか一項に記載の調光ガラス装置。
【請求項9】
前記ワイヤーハーネスによって前記車両電源と前記調光ガラスとの間に電気的に接続されたインバータを備え、
前記切断部は、前記インバータに設けられている、
請求項4〜請求項7のいずれか一項に記載の調光ガラス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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