説明

調光ガラス装置

【課題】車両衝突時に調光ガラスへの給電を停止する。
【解決手段】本発明の調光ガラス装置10は、サイドドア70に設けられ、印加される電圧に応じて光透過率が変化する調光ガラス20と、フロントピラー40に設けられた係合凸部46と、サイドドア70に形成され、係合凸部46とでサイドドア70の外れ抑制構造54を構成する被係合部52と、被係合部52に対する係合凸部46と反対側に設けられた支持部60と、一部32Aが係合凸部46と対向された状態で支持部60に支持され、インバータ28と調光ガラス20とを電気的に接続するワイヤーハーネス32と、を備えている。この構成によれば、車両前面衝突時には、ワイヤーハーネス32の一部32Aが支持部60によって支持された状態で、このワイヤーハーネス32の一部32Aに係合凸部46が押し当てられてワイヤーハーネス32が切断され、調光ガラス20への給電を停止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光ガラス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用ドアに設けられた調光ガラスと、この調光ガラスに電力を供給するための給電装置と、調光ガラスと給電装置とを電気的に接続するワイヤーハーネスとを備えた調光ガラス装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−247086号公報
【特許文献2】特開2008−213662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の調光ガラス装置においては、車両衝突時に調光ガラスへの給電が停止されることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、車両衝突時に調光ガラスへの給電を停止することができる調光ガラス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の調光ガラス装置は、車体に形成された開口を開閉する開閉体に設けられ、印加される電圧に応じて光透過率が変化する調光ガラスと、前記開口の縁部に設けられた係合凸部と、前記開閉体における前記縁部と対向する対向壁部に形成され、前記縁部に対して前記開閉体側に衝突荷重が作用した場合に前記係合凸部と係合されて前記開閉体の外れを抑制する外れ抑制構造を前記係合凸部とで構成する被係合部と、前記被係合部に対する前記係合凸部と反対側に設けられた支持部と、一部が前記係合凸部と対向された状態で前記支持部に支持され、車両電源と前記調光ガラスとを電気的に接続するワイヤーハーネスと、を備えている。
【0007】
この調光ガラス装置によれば、車両衝突時に、開口の縁部に対して開閉体側に衝突荷重が作用すると、係合凸部が被係合部と係合される。また、このときには、ワイヤーハーネスの一部が支持部によって係合凸部と反対側から支持された状態で、このワイヤーハーネスの一部に係合凸部が押し当てられてワイヤーハーネスが切断される。従って、これにより、調光ガラスへの給電を停止することができる。
【0008】
請求項2に記載の調光ガラス装置は、請求項1に記載の調光ガラス装置において、前記支持部が、前記開閉体を構成する開閉体構成部材に一体に形成された構成とされている。
【0009】
この調光ガラス装置によれば、支持部は、開閉体を構成する開閉体構成部材に一体に形成されているので、新たな部材の追加を抑制して、部材点数の増加を抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の調光ガラス装置は、請求項1に記載の調光ガラス装置において、前記支持部が、前記ワイヤーハーネスによって前記車両電源と前記調光ガラスとの間に電気的に接続されたインバータとされた構成とされている。
【0011】
この調光ガラス装置によれば、支持部は、ワイヤーハーネスによって車両電源と調光ガラスとの間に電気的に接続されたインバータとされているので、新たな部材の追加を抑制して、部材点数の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上詳述したように、本発明によれば、車両衝突時に調光ガラスへの給電を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る調光ガラス装置を備えた車両用ドアの側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る調光ガラス装置の第一変形例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る調光ガラス装置の第二変形例を示す図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0015】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0016】
図1に示される開閉体としてのサイドドア70には、本発明の一実施形態に係る調光ガラス装置10が備えられている。このサイドドア70は、例えば、乗用自動車等の車両におけるフロントドアとされており、ドアインナパネル12、ドアアウタパネル14、ドアフレーム16、開閉体構成部材としてのフレーム支持ブラケット18、調光ガラス20、昇降リンク機構22、レギュレータ24、インパクトビーム26、インバータ28、ワイヤーハーネス30,32を備えて構成されている。
【0017】
ドアインナパネル12とドアアウタパネル14とは、互いに車両幅方向に対向して設けられており、ドアフレーム16は、フレーム支持ブラケット18によってドアインナパネル12に支持されている。
【0018】
調光ガラス20は、ドアフレーム16によって車両上下方向に昇降可能に支持されている。この調光ガラス20は、その内部に例えば液晶パネル等の調光層を有して構成されており、印加される交流電圧に応じて光透過率が変化する構成とされている。
【0019】
昇降リンク機構22は、互いに交差する一対のリンク34を有して構成されており、レギュレータ24によって作動されて調光ガラス20を昇降させる構成とされている。
【0020】
インパクトビーム26は、車両前後方向に延在されたパイプ状に形成されている。このインパクトビーム26は、ドアアウタパネル14とドアインナパネル12との間に設けられると共に、その両端に設けられたインパクトビームブラケット36によってドアインナパネル12における車両内側面に結合されている。
【0021】
インバータ28は、ドアインナパネル12の車両内側面に取り付けられている。このインバータ28は、例えば図示しないエンジンルームに設けられた車両電源38とワイヤーハーネス30によって電気的に接続されており、車両電源38の直流電圧を交流電圧に変換する構成とされている。また、このインバータ28は、ワイヤーハーネス32によって調光ガラス20と電気的に接続されており、このワイヤーハーネス32を通じて調光ガラス20に交流電圧を供給する構成とされている。
【0022】
また、このサイドドア70は、その車両前後方向前側が図示しないヒンジ機構によって縁部としてのフロントピラー40に連結されている。そして、このサイドドア70は、フロントピラー40に対して回動されて、車体に形成された開口としてのドア開口42を開閉する構成とされている。
【0023】
フロントピラー40には、図2に示されるように、車両後側を向く後側壁部44が形成されており、この後側壁部44には、車両後側(サイドドア70側)に突出する係合凸部46が設けられている。一方、ドアインナパネル12には、後側壁部44と略車両前後方向に対向する対向壁部としての前側壁部48が形成されており、この前側壁部48には、板厚方向に貫通する貫通孔50が形成されている。
【0024】
この貫通孔50は、係合凸部46が挿入可能な大きさ及び形状で形成されると共に、サイドドア70がドア開口42を閉じる位置にあるときに係合凸部46と車両前後方向に対向される位置に形成されている。
【0025】
そして、この貫通孔50の内周部は、係合凸部46と係合可能な被係合部52として構成されている。また、この被係合部52と上述の係合凸部46とは、フロントピラー40に対して車両後側に衝突荷重Fが作用した場合(車両前面衝突が発生した場合)に互いに係合されてサイドドア70の外れを抑制する外れ抑制構造54(噛み込み構造)を構成している。
【0026】
また、フレーム支持ブラケット18は、ドアインナパネル12に締結具56によって結合された本体部58と、ドアフレーム16の下端部を支持する支持部60とを有して構成されている。支持部60は、被係合部52(貫通孔50)に対する係合凸部46と反対側(車両後側)に設けられている。
【0027】
ワイヤーハーネス32の一部32Aは、車両上下方向に沿って配索されると共に、貫通孔50を通じて係合凸部46と対向された状態で支持部60に支持されている。つまり、この支持部60、ワイヤーハーネス32の一部32A、貫通孔50(被係合部52)、係合凸部46は、車両前後方向に略一直線状に配置されている。なお、ワイヤーハーネス32の一部32Aは、支持部60に例えば接着材等によって固定されていても良い。
【0028】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
この調光ガラス装置10によれば、車両前面衝突時に、フロントピラー40に対して車両後側(サイドドア70側)に衝突荷重Fが作用すると、このフロントピラー40の後退に伴って係合凸部46が被係合部52に係合されて、サイドドア70の外れが抑制される。
【0030】
また、このときには、ワイヤーハーネス32の一部32Aが支持部60によって係合凸部46と反対側(車両後側)から支持された状態で、このワイヤーハーネス32の一部32Aに係合凸部46が押し当てられてワイヤーハーネス32が切断される。従って、これにより、調光ガラス20への給電を停止することができる。
【0031】
しかも、このような車両前面衝突時におけるワイヤーハーネス32の切断機構を外れ抑制構造54及びフレーム支持ブラケット18を利用して実現しているので、ワイヤーハーネス32の切断のための専用の構造を追加する必要が無い。
【0032】
特に、ワイヤーハーネス32を支持するための支持部60は、フレーム支持ブラケット18に一体に形成されているものを利用しているので、新たな部材の追加を抑制して、部材点数の増加を抑制することができる。これにより、車体の軽量化及びコストダウンを図ることができる。
【0033】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0034】
上記実施形態において、調光ガラス装置10は、フロント側のサイドドア70に適用されていたが、その他にも、例えば、リア側のサイドドア、車体背面のバックドア、ガラスサンルーフ等の開閉体に適用されても良い。
【0035】
また、調光ガラス装置10は、車両前面衝突時に、インバータ28と調光ガラス20とを電気的に接続するワイヤーハーネス32を切断させる構成とされていたが、車両電源38とインバータ28とを電気的に接続するワイヤーハーネス30を切断させる構成とされていても良い。
【0036】
また、フレーム支持ブラケット18に形成された支持部60がワイヤーハーネス32を支持するための支持部として利用されていたが、図3に示されるように、インパクトビームブラケット36の一部に延長部62が一体に形成され、この延長部62がワイヤーハーネス32を支持するための支持部として利用されていても良い。なお、この場合には、インパクトビーム26が本発明における開閉体構成部材に相当する。
【0037】
また、図4,図5に示されるように、例えば、ドアフレームを備えないサイドドア80の場合には、外れ抑制構造54に近接してインバータ28が配置され、このインバータ28がワイヤーハーネス32を支持するための支持部として利用されても良い。
【0038】
また、この場合に、車両電源38とインバータ28とを電気的に接続するワイヤーハーネス30の一部30Aが係合凸部46と対向された状態でインバータ28に支持されても良い。
【0039】
このように構成されていても、車両前面衝突時には、ワイヤーハーネス30の一部30Aがインバータ28によって係合凸部46と反対側(車両後側)から支持された状態で、このワイヤーハーネス30の一部30Aに係合凸部46が押し当てられてワイヤーハーネス30が切断される。従って、これにより、調光ガラス20への給電を停止することができる。
【0040】
また、上述のように、インパクトビームブラケット36やインバータ28を利用した場合にも、新たな部材の追加を抑制して、部材点数の増加を抑制することができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
10 調光ガラス装置
18 フレーム支持ブラケット(開閉体構成部材)
20 調光ガラス
28 インバータ
30,32 ワイヤーハーネス
36 インパクトビームブラケット(開閉体構成部材)
38 車両電源
40 フロントピラー(縁部)
42 ドア開口(開口)
46 係合凸部
48 前側壁部(対向壁部)
52 被係合部
54 外れ抑制構造
60 支持部
62 延長部(支持部)
70,80 サイドドア(開閉体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に形成された開口を開閉する開閉体に設けられ、印加される電圧に応じて光透過率が変化する調光ガラスと、
前記開口の縁部に設けられた係合凸部と、
前記開閉体における前記縁部と対向する対向壁部に形成され、前記縁部に対して前記開閉体側に衝突荷重が作用した場合に前記係合凸部と係合されて前記開閉体の外れを抑制する外れ抑制構造を前記係合凸部とで構成する被係合部と、
前記被係合部に対する前記係合凸部と反対側に設けられた支持部と、
一部が前記係合凸部と対向された状態で前記支持部に支持され、車両電源と前記調光ガラスとを電気的に接続するワイヤーハーネスと、
を備えた調光ガラス装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記開閉体を構成する開閉体構成部材に一体に形成されている、
請求項1に記載の調光ガラス装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記ワイヤーハーネスによって前記車両電源と前記調光ガラスとの間に電気的に接続されたインバータとされている、
請求項1に記載の調光ガラス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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