説明

調光材料

【課題】高い耐久性を有する調光材料を提供する。
【解決手段】一対の電極間に、下記一般式(1)で表される二色性色素とホスト液晶とを含有する液晶層を備え、入射光を透過させることを特徴とする調光材料である。式中、R1〜R8は各々独立に、水素原子又は置換基を表すが、R2、R3、R6及びR7の少なくとも1つは-(Het)m-{(B1)p-(Q1)q-(B2)r}n-C1で表される置換基を表す。Hetは酸素原子、硫黄原子又はNRを表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。B1及びB2は各々独立に、2価のアリール基、ヘテロアリール基又は環状脂肪族炭化水素基を表し、Q1は2価の連結基を表し、C1はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアシルオキシ基を表す。mは0又は1を表し、p、q及びrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10である。
【化1】



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光材料に関し、特にゲストホスト方式の調光材料の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
環境に対する関心の高まりにともなって、光の量を電気的に調節できる材料、いわゆる電気的な調光材料の重要性が高まっている。このような調光材料は、インテリア用途、建材用途、車両用途、広告用途など幅広い応用が期待されている。これまで、電気的な調光材料としては、酸化還元反応を利用したエレクトロクロミック方式、液晶とポリマーの複合系を利用した高分子分散型液晶(PDLC)方式などが提案されている。しかしながら、エレクトロクロミック方式では電流駆動による大面積化が難しい点、エレクトロクロミック色素の耐久性に課題が残されているなどの問題があり、また、PDLC方式に関しては、散乱白色と透明状態の切り替えしかできないために用途が限られる点、駆動電圧が高い場合があり、その改善が求められていた。
【0003】
ゲストホスト方式を用いた調光材料は明るい調光が可能であり、調光用途に適した方式として期待されている。しかしながら、これまでに提案されているものは(例えば、特許文献1参照。)、依然としての調光性能が満足すべきレベルにない場合があり、その改善が求められていた。また、従来のゲストホスト方式では耐久性の観点から問題のある場合があり、その改善が求められていた。特に、屋外で使用する場合あるいは車両用途として使用する場合には、耐久性が重要な性能であり、より耐久性の高い調光材料が求められていた。
【特許文献1】特開2000−347224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐光性、耐熱性、及び熱湿度耐久性に優れたゲストホスト方式による調光材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記状況を鑑み、本発明者は、鋭意研究を行なったところ、特定の置換基を特定の置換位置に有する二色性色素を組合せることで非常に高い耐久性を与える調光材料が実現できるという知見を得、この知見に基づいてさらに検討して本発明を完成するに至った。
【0006】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 一対の電極間に、少なくとも一種の下記一般式(1)で表される二色性色素と、少なくとも一種のホスト液晶と、を含有する液晶層を備え、入射光を透過させることを特徴とする調光材料である。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は置換基を表すが、R、R、R及びRの少なくとも1つは−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基を表す。Hetは酸素原子、硫黄原子又はNRを表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。B及びBは各々独立に、2価のアリール基、ヘテロアリール基又は環状脂肪族炭化水素基を表し、Qは2価の連結基を表し、Cはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアシルオキシ基を表す。mは0又は1を表し、p、q及びrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10である。p、q及びrが各々2以上の時、2以上のB、Q及びBはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B−(Q−(B}は同一でも異なっていてもよい。
【0009】
<2> 前記一般式(1)中、少なくともRが、前記−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基であることを特徴とする前記<1>に記載の調光材料である。
【0010】
<3> 前記一般式(1)中、R、R、R及びRのいずれか2つが、前記−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の調光材料である。
【0011】
<4> 前記一般式(1)中、R及びRが前記−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基である、又は、R及びRが前記−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基であることを特徴とする前記<3>に記載の調光材料である。
【0012】
<5> 前記一般式(1)中、R、R、R、及びRの少なくとも1つはヒドロキシ基であることを特徴とする前記<1>乃至<4>のいずれか1項に記載の調光材料である。
【0013】
<6> 前記一般式(1)中、少なくともRが、ヒドロキシ基であることを特徴とする前記<5>に記載の調光材料である。
【0014】
<7> 前記一般式(1)中、R及びRが、ヒドロキシ基であることを特徴とする前記<6>に記載の調光材料である。
【0015】
<8> 前記一般式(1)中、m=0、p=2、q=0、r=1且つn=1であることを特徴とする前記<1>乃至<7>のいずれか1項に記載の調光材料である。
【0016】
<9> 前記ホスト液晶が、カイラル剤を含むことを特徴とする前記<1>乃至<8>のいずれか1項に記載の調光材料である。
【0017】
<10> 前記ホスト液晶が、ネマチック液晶であることを特徴とする前記<1>乃至<9>のいずれか1項に記載の調光材料である。
【0018】
<11> 着色状態と透明状態とに変化して調光する、又は散乱着色状態と透明状態とに変化して調光することを特徴とする前記<1>乃至<10>のいずれか1項に記載の調光材料である。
【0019】
<12> 前記着色状態と透明状態における光の透過率の比(透明状態/着色状態)が、3〜1000の範囲であることを特徴とする前記<11>に記載の調光材料である。
【0020】
<13> 更に、ポリマー支持体を有することを特徴とする前記<1>乃至<12>のいずれか1項に記載の調光材料である。
【0021】
<14> 更に、紫外線吸収層を有することを特徴とする前記<1>乃至<13>のいずれか1項に記載の調光材料である。
【0022】
<15> 屋外で用いられることを特徴とする前記<1>乃至<14>のいずれか1項に記載の調光材料である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、耐光性、耐熱性、及び熱湿度耐久性に優れたゲストホスト方式による調光材料が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0025】
本発明の調光材料は、少なくとも一種の下記一般式(1)で表される二色性色素と、少なくとも一種のホスト液晶と、を含有する。
【0026】
【化2】

【0027】
式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々水素原子又は置換基を表すが、R、R、R及びRの少なくとも1つは−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基を表す。Hetは酸素原子、硫黄原子又はNRを表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。B及びBは各々2価のアリール基、ヘテロアリール基又は環状脂肪族炭化水素基を表し、Qは2価の連結基を表し、Cはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアシルオキシ基を表す。mは0又は1を表し、p、q及びrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10である。p、q及びrが各々2以上の時、2以上のB、Q及びBはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B−(Q−(B}は同一でも異なっていてもよい。)二色性色素と、少なくとも一種のホスト液晶と、を含有する。
【0028】
例えば、窓からの光の透過率を任意に調節するような調光ガラス等では、ある条件下においては明瞭に着色した状態や散乱して白濁した状態であって、他の条件下においては極めて透明度が高い状態であることが望ましい。
【0029】
本発明の調光材料は、ホスト液晶の配向状態を変化させることで、透明着色状態と透明状態とに変化させて調光したり、又は散乱着色状態と透明状態とに変化させて調光させたりすることができる。特に本発明の調光材料は、前記一般式(1)で表される二色性色素を用いるため、着色状態と透明状態における光の吸収量の差が良好となり、ホスト液晶の配向状態が支持体の面に対して水平状態の時には高い発色を示し、配向状態が支持体の面に対して垂直状態の時には、光の透過率が高くなるという、高い調光性能を示す。さらに、本発明の調光材料は、光、熱及び水分に対する耐久性が高いという予期せぬ効果が得られることが見出され、屋外で用いるのに好適であることが明らかとなった。
【0030】
なお、調光材料は光が1回だけ調光材料を通過した状態を観測者が観測するのに対して、液晶表示素子の場合には外光が液晶表示素子を通過したあと、反射板で反射され、再度液晶表示素子を通過した状態を観測者が観測するため、調光材料の場合には液晶表示素子の場合よりも効率的に光を二色性色素で吸収させる必要があり、単に液晶表示素子の組成物をそのまま調光材料に用いたときに、高い調光性能が得られるかは明らかではない。
【0031】
本発明の調光材料は、少なくとも前記二色性色素及び前記ホスト液晶を含有する液晶層を少なくとも1層設けてなる。なお、本明細書においては、液晶層を構成する組成物を「液晶組成物」と称し、該液晶組成物は、少なくとも前記二色性色素と、前記ホスト液晶と、を含有し、更に他の添加剤を含有することもできる。
【0032】
<液晶層>
(二色性色素)
本発明の調光材料において、二色性色素は、ホスト液晶中に溶解し、光を吸収する機能を有する化合物と定義される。本発明の二色性色素としては、吸収極大ならびに吸収帯に関しては、いかなるものであってもよいが、イエロー域(Y)、マゼンタ域(M)、あるいはシアン域(C)に吸収極大を有する場合が好ましい。また、二色性色素は2種類以上を用いてもよく、Y、M、Cに吸収極大を有する二色性色素の混合物を用いるのが好ましい。イエロー色素、マゼンタ色素ならびにシアン色素を混合することによるフルカラー化表示を行う方法については、「カラーケミストリー」(時田澄男著、丸善、1982年)に詳しい。ここでいう、イエロー域とは、430〜490nmの範囲、マゼンタ域とは、500〜580nmの範囲、シアン域とは600〜700nmの範囲である。
【0033】
本発明では、二色性色素として、前記一般式(1)で表されるアントラキノン化合物を用いる。二色性色素がアントラキノン骨格を有することで、調光材料として用いたときに、光、熱および水分に対する分解が抑制され、とくに調光材料として重要である電気的な悪影響を及ぼす分解物が生成しないため、優れた光、熱および水分に対する耐久性を発揮する。特に、光に対する耐久性が向上する。
以下、一般式(1)で表される二色性色素について詳細に説明する。
【0034】
【化3】

【0035】
前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々水素原子又は置換基を表すが、R、R、R及びRの少なくとも1つは−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基を表す。
ここで、一般式(1)のR、R、R及びRの少なくとも1つが、−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基である二色性色素を調光材料に用いたときに、光、熱及び水分に対する耐久性が高くなる理由を下記のように推測するが、本発明は下記の作用によって限定されることは無い。
【0036】
すなわち、R、R、R及びRの少なくとも1つが、−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基である二色性色素は、分子長軸に対して棒状の置換基が導入された形状を示すことから、ホスト液晶中での秩序度が高く、かつ、ホスト液晶への溶解度が高いという特徴を有する。ホスト液晶中での秩序度と溶解度が高いことから、色素分子がホスト液晶とが分子レベルで密に相溶して存在しているものと考えられる。このため、酸素ならびに水分子の侵入が抑制され分解されにくいものと推定される。その結果、光、熱及び水分に対する耐久性が高くなるものと推定される。
【0037】
特に、少なくともRが、前記−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基であることが、ホスト液晶中での秩序度が高く、かつ、ホスト液晶への溶解度が高いという観点から好適である。
また、一般式(1)で表される化合物では、前記−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基をいかなる数で有していてもよく、1個有するモノ置換体、2個有するジ置換体、3個有するトリ置換体、4個有するテトラ置換体であることが好ましく、ジ置換体又はトリ置換体であることがより好ましく、ジ置換体であると、ホスト液晶中での秩序度がより高く、かつ、ホスト液晶への溶解度が高くなり更に好適である。
【0038】
一般式(1)で表される化合物が、ジ置換体の場合には、R及びRの組み合わせで、当該置換基を有することが、ホスト液晶中での秩序度がより高くなるという観点から好適であり、または、R及びRの組み合わせで、当該置換基を有することが、ホスト液晶への溶解度が高くなるという観点から好適である。
【0039】
前記一般式(1)中、Hetは酸素原子、硫黄原子又はNRを表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Hetとして好ましくは、酸素原子又は硫黄原子であり、特に好ましくは硫黄原子である。Rで表されるアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基としては、上記置換基群Vで例示したものが挙げられる。Rは、水素原子又はアルキル基を表すのが好ましく、水素原子であるのがより好ましい。
【0040】
及びBは各々2価のアリール基、ヘテロアリール基又は環状脂肪族炭化水素基を表す。前記2価のアリール基としては、炭素数2〜20のアリール基が好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環の2価基が好ましい。特に好ましくは、ベンゼン環、置換ベンゼン環の2価基であり、さらに好ましくは1、4−フェニレン基である。B及びBが各々表す2価のヘテロアリール基としては、炭素数1〜20のヘテロアリール基が好ましい。具体的には、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、チオフェン環、フラン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、及びこれらが縮環して形成される縮環の2価のヘテロアリール基が好ましい。B及びBが各々表す2価の環状脂肪族炭化水素基の好ましい具体例としては、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基であり、特に好ましくは、(E)−シクロヘキサン−1、4−ジイル基である。
【0041】
は2価の連結基を表す。好ましくは、炭素原子、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる原子から構成される原子団からなる2価の連結基を表す。前記2価の連結基としては、炭素数1〜20のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、シクロヘキシル−1,4−ジイル基)、炭素数2〜20のアルケニレン基(例えば、エテニレン基)、炭素数2〜20のアルキニレン基(例えば、エチニレン基)、アミド基、エーテル基、エステル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、カルボニル基、−NR−基(ここで、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、アゾ基、アゾキシ基、複素環2価基(例えば、ピペラジン−1,4−ジイル基)、又はこれらを2以上組合せて構成される炭素数0〜60の2価の連結基が挙げられる。Qはアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エーテル基、チオエーテル基、アミド基、エステル基、カルボニル基、又はこれらの組合せからなる2価の連結基を表すのが好ましい。
【0042】
はアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアシルオキシ基を表す。好ましい例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル及びシクロアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−プロピルシクロヘキシル基、4−ブチルシクロヘキシル基、4−ペンチルシクロヘキシル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基);炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ベンジルオキシカルボニル基);が挙げられる。Cとして特に好ましくはアルキル基又はアルコキシ基であり、さらに好ましくは、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基又はトリフルオロメトキシ基である。
【0043】
mは0又は1を表し、とくに好ましくは0である。
p、q及びrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10を満足する。なお、p、q、r及びnがそれぞれ2以上の場合、その繰り返し単位は同一であっても異なっていてもよい。好ましいp、q、r及びnの組合せを以下に記す。
(1) p=3、q=0、r=0、n=1
(2) p=4、q=0、r=0、n=1
(3) p=5、q=0、r=0、n=1
(4) p=2、q=1、r=1、n=1
(5) p=1、q=1、r=2、n=1
(6) p=3、q=1、r=1、n=1
(7) p=1、q=1、r=3、n=1
(8) p=2、q=1、r=2、n=1
(9) p=1、q=1、r=1、n=3
(10) p=0、q=1、r=3、n=1
(11) p=0、q=1、r=2、n=2
(12) p=1、q=1、r=2、n=2
(13) p=2、q=1、r=1、n=2
(14) p=2、q=0、r=1、n=1
(15) p=1、q=0、r=2、n=1
【0044】
より好ましくは、(1)p=3、q=0、r=0、n=1;(2)p=4、q=0、r=0、n=1;(4)p=2、q=1、r=1、n=1;(14)p=2、q=0、r=1、n=1;(15)p=1、q=0、r=2、n=1の組合せであり、更に好ましくは、(1)p=3、q=0、r=0、n=1;(14)p=2、q=0、r=1、n=1;(15)p=1、q=0、r=2、n=1の組合せであり、特に好ましくは、(14)p=2、q=0、r=1、n=1;(15)p=1、q=0、r=2、n=1の組み合わせである。この組み合わせの場合には、ホスト液晶への溶解性が高くなるので、表示性能の高い調光材料が提供できるという観点から好適である。
【0045】
なお、−{(B−(Q−(B−Cとしては、液晶性を示す構造を含むことが好ましい。ここでいう液晶とは、いかなるフェーズであってもよいが、好ましくはネマチック液晶、スメクチック液晶又はデイスコテイック液晶であり、特に、駆動電圧が低く、応答速度が比較的速く、また、広い温度範囲で駆動できるという観点からネマチック液晶が好適である。液晶化合物の具体例としては、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧、丸善、2000年の第3章「分子構造と液晶性」に記載されているものなどが挙げられる。
【0046】
−{(B−(Q−(B−Cの具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない(図中、波線は連結位置を表す)。
【0047】
【化4】

【0048】
【化5】

【0049】
前記−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基の好ましい構造は、下記の組み合わせである。
〔1〕 Bがアリール基又はヘテロアリール基を表し、Bがシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、Cがアルキル基を表し、p=2、q=0、r=1及びn=1を表す構造。
〔2〕 Bがアリール基又はヘテロアリール基を表し、Bがシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、Cがアルキル基を表し、p=1、q=0、r=2及びn=1を表す構造。
【0050】
特に好ましい構造は、
〔I〕 Bが1,4−フェニレン基を表し、Bがトランス−シクロヘキシル基を表し、Cがアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基)を表し、p=2、q=0、r=1及びn=1である下記一般式(a−1)で表される構造、
〔2〕 Bが1,4−フェニレン基を表し、Bがトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を表し、Cがアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基)を表し、p=1、q=0、r=2及びn=1である下記一般式(a−2)で表される構造、である。
一般式(a−1)又は一般式(a−2)で表される構造ではホスト液晶中での秩序度が高く、かつ、ホスト液晶への溶解性が高くなるので、表示性能の高い調光材料が提供できるという観点から好適である。
【0051】
【化6】

【0052】
前記一般式(a−1)及び(a−2)中、Ra1〜Ra12は各々独立に、水素原子又は置換基を表す。該置換基としては、前述の置換基群Vから選ばれる置換基が挙げられる。
a1〜Ra12は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子(特にフッ素原子)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基であるのが好ましい。Ra1〜Ra12で表わされるアルキル基、アリール基、及びアルコキシ基のうち、好ましいものは、前述の置換基群Vに記載のアルキル基、アリール基、及びアルコキシ基と同義である。
【0053】
前記一般式(a−1)及び(a−2)中、Ca1及びCa2は各々独立してアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基又はノニル基を表す。
【0054】
前記一般式(a−1)及び(a−2)のうち、前記−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基としては、特に、Ca1及びCa2が炭素数3〜10の直鎖アルキル基の場合に、ホスト液晶への溶解性が向上し、着色状態における光吸収量が増加するため調光材料に好適である。この理由は明らかとなっていないが、ホスト液晶との相溶性が向上するためではないかと推測される。
【0055】
前記一般式(1)において、R、R、R、R、R、R、R及びRが、前記−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基でない場合、それぞれが表す置換基としてはいかなるものであってもよいが、以下に述べる置換基群Vから選ばれる置換基が挙げられる。
【0056】
<置換基群V>
ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素);メルカプト基;シアノ基;カルボキシル基;リン酸基;スルホ基;ヒドロキシ基;炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、モルホリノカルバモイル基);炭素数0〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ピペリジノスルファモイル基);ニトロ基;炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−フェニルエトキシ基);炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、ナフトキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、トリクロロアセチル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基);
【0057】
炭素数0〜20、好ましくは炭素数0〜12、更に好ましくは炭素数0〜8の置換もしくは無置換のアミノ基(例えば、無置換のアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基);炭素数0〜15、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基);炭素数0〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基);炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基);炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のイミド基(例えばスクシンイミド基);炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基);炭素数6〜80、好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ基、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ基);炭素数1〜80、好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ基、3−ピリジルチオ基、4−ピリジルチオ基、2−キノリルチオ基、2−フリルチオ基、2−ピロリルチオ基);
【0058】
炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ベンジルオキシカルボニル基);炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基);炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の無置換のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基);炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の置換アルキル基{例えばヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、カルボキシエチル基、エトキシカルボニルメチル基、アセチルアミノメチル基、またここでは炭素数2〜18、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれることにする};炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、更に好ましくは炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−カルボキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、p−シアノフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−トリル基、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニル);炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数4〜6の置換もしくは無置換のヘテロ環基(例えばピリジル基、5−メチルピリジル基、チエニル基、フリル基、モルホリノ基、テトラヒドロフルフリル基);が挙げられる。これら置換基群Vはベンゼン環やナフタレン環が縮合した構造もとることができる。さらに、これらの置換基上にさらに置換基群Vから選ばれるいずれかの置換基が置換していてもよい。
【0059】
置換基群Vとして好ましいものは、ヒドロキシ基、炭素数6〜80、より好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−メチルフェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、4−メチルフェニルチオ、4−エチルフェニルチオ、4−n−プロピルフェニルチオ、2−n−ブチルフェニルチオ、3−n−ブチルフェニルチオ、4−n−ブチルフェニルチオ、2−t−ブチルフェニルチオ、3−t−ブチルフェニルチオ、4−t−ブチルフェニルチオ、3−n−ペンチルフェニルチオ、4−n−ペンチルフェニルチオ、4−アミルペンチルフェニルチオ、4−ヘキシルフェニルチオ、4−ヘプチルフェニルチオ、4−オクチルフェニルチオ、4−トリフルオロメチルフェニルチオ、3−トリフルオロメチルフェニルチオ、2−ピリジルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ)、炭素数1〜80、より好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ、3−ピリジルチオ、4−ピリジルチオ、2−キノリルチオ、2−フリルチオ、2−ピロリルチオ)、置換若しくは無置換のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ、フェネチルチオ)、置換若しくは無置換のアミノ基(例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ベンジルアミノ、アニリノ、ジフェニルアミノ、4−メチルフェニルアミノ、4−エチルフェニルアミノ、3−n−プロピルフェニルアミノ、4−n−プロピルフェニルアミノ、3−n−ブチルフェニルアミノ、4−n−ブチルフェニルアミノ、3−n−ペンチルフェニルアミノ、4−n−ペンチルフェニルアミノ、3−トリフルオロメチルフェニルアミノ、4−トリフルオロメチルフェニルアミノ、2−ピリジルアミノ、3−ピリジルアミノ、2−チアゾリルアミノ、2−オキサゾリルアミノ、N,N−メチルフェニルアミノ、N,N−エチルフェニルアミノ)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)、置換若しくは無置換のアルキル基(例えば、メチル、トリフルオロメチル)、置換若しくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、トリフルオロメトキシ)、置換若しくは無置換のアリール基(例えば、フェニル)、置換若しくは無置換のヘテロアリール基(例えば、2−ピリジル)、置換若しくは無置換のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、置換若しくは無置換のヘテロアリールオキシ基(例えば、3−チエニルオキシ)などである。
【0060】
置換基群Vとしてより好ましくは、上述のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、無置換アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であり、更に好ましくは、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むものであり、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、無置換アミノ基、置換アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基)であり、この中でも、特に、ヒドロキシ基が好ましい。
【0061】
、R、R及びRは、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基であることが好ましく、水素原子、アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシ基、アリールチオ基又はアリール基であることがより好ましく、R、R、R、及びRの少なくとも1つはヒドロキシ基であることが更に好ましい。
特に、少なくともRが、ヒドロキシ基であることが好ましく、R及びRが、ヒドロキシ基であることが極大吸収波長が可視域になるという観点から好適である。
【0062】
以下に、本発明に使用可能な二色性色素の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
【0063】
【化7】

【0064】
【化8】

【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
前記一般式(1)で表される二色性色素は、公知の方法を組み合わせて合成することができる。例えば、特開2003−192664号公報等の記載の方法に従い合成することができる。
【0068】
(ホスト液晶)
本発明の調光材料に使用可能なホスト液晶とは、電界の作用により、その配向状態を変化させ、ゲストとして溶解されている前記一般式(1)で表される二色性色素の配向状態を制御する機能を有する化合物と定義される。
本発明に使用可能なホスト液晶としては、二色性色素と共存しうるものであれば特に制限はないが、ネマチック相を示す液晶化合物が利用できる。ネマチック液晶化合物の具体例としては、アゾメチン化合物、シアノビフェニル化合物、シアノフェニルエステル、フッ素置換フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フッ素置換シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、シアノフェニルシクロヘキサン、フッ素置換フェニルシクロヘキサン、シアノ置換フェニルピリミジン、フッ素置換フェニルピリミジン、アルコキシ置換フェニルピリミジン、フッ素置換アルコキシ置換フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン系化合物、フッ素置換トラン系化合物、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリルなどが挙げられる。「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第154〜192頁及び第715〜722頁に記載の液晶化合物を用いることができる。例えば、Merck社の液晶(ZLI−4692、MLC−6267、6284、6287、6288、6406、6422、6423、6425、6435、6437、7700、7800、9000、9100、9200、9300、10000など)、チッソ社の液晶(LIXON5036xx、5037xx、5039xx、5040xx、5041xxなど)、旭電化社の液晶(HA−11757)が挙げられる。
【0069】
本発明に使用するホスト液晶の誘電率異方性は、正であっても負であってもよい。
誘電率異方性が正のホスト液晶を水平配向させた場合には、電圧無印加時には液晶は水平に配向しているために二色性色素も水平となり光を吸収する。一方、電圧印加時に液晶分子が垂直に傾いてくるため二色性色素も垂直に傾き、その結果光を透過するようになる。すなわち、電圧印加時には透明状態、電圧無印加時には着色状態となる。
誘電率異方性が負のホスト液晶を垂直配向させる場合には、電圧無印加時には液晶は垂直に配向しているために二色性色素も垂直となり光を吸収することなく透過する。一方、電圧印加時に液晶分子が水平に傾いてくるため二色性色素も水平に傾き、その結果光を吸収するようになる。すなわち、電圧無印加時には透明状態、電圧印加時には着色状態となる。
【0070】
誘電率異方性が負の液晶となるためには、液晶分子の短軸に誘電率異方性が大きくなる構造にする必要があるが、例えば、「月刊デイスプレイ」(2000年、4月号)の第4頁〜9頁に記載のもの、Syn Lett.,第4巻、第389頁〜396頁、1999年に記載のものが挙げられる。例えば、Merck社の液晶(ZLI−2806など)が挙げられる。中でも、電圧保持率の観点から、フッ素系置換基を有する誘電率異方性が負の液晶が好ましい。例えば、Merck社の液晶(MLC−6608、6609、6610など)が挙げられる。
さらに、本発明の調光材料は、二波長駆動性を示す液晶を用いることもできる。二周波駆動液晶とは、該液晶に印加される電場の周波数が低周波数領域の場合に正の誘電率異方性を示し、高周波数領域の場合に誘電率異方性の符号が負に逆転する液晶である。日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第189〜192頁に詳しい。
なお、本発明に用いるホスト液晶の屈折率異方性(Δn)は、透明着色状態と透明状態を切り替える場合には、Δnの絶対値が小さなものが好ましく、散乱着色状態と透明状態を切り替える場合には、Δnの絶対値が小さなものが好ましい。ここでいう屈折率異方性(Δn)とは、液晶分子の長軸方向の屈折率(n‖)と液晶分子の短軸方向の屈折率(n⊥)との差として定義される。
【0071】
Δn = n‖ − n⊥
【0072】
透明着色状態と透明状態を切り替える方式として相転移方式を用いる場合には、Δnの絶対値が小さな液晶としてΔn=0.1以下のものが好ましい。Δnが小さいと螺旋構造におけるウエーブガイドが抑制されて光漏れが小さくなり、調光性能が向上するためである。
一方、散乱着色状態と透明状態を切り替える方式として相転移方式を用いる場合には、Δnの絶対値が大きな液晶としてΔn=0.1以上のものが好ましい。さらに好ましくはΔn=0.12以上である。これは、ランダムなフォーカルコニック状態に基づく散乱状態ではホスト液晶のΔnが大きいほど散乱強度が高くなり、調光性能が向上するためである。
【0073】
本発明の調光材料におけるホスト液晶及び二色性色素の含有量については特に制限はないが、二色性色素の含有量はホスト液晶の含有量に対して0.1〜15質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1〜8質量%であることが更に好ましい。また、ホスト液晶及び二色性色素の含有量は、双方を含む液晶組成物を調製し、その液晶組成物を封入した液晶セルの吸収スペクトルをそれぞれ測定して、液晶セルとして所望の光学濃度を示すのに必要な色素濃度を決定することが望ましい。
【0074】
(その他の添加剤)
本発明の調光材料には、ホスト液晶の物性を所望の範囲に変化させることを目的として(例えば、液晶相の温度範囲を所望の範囲にすることを目的として)、液晶性を示さない化合物を添加してもよい。また、カイラル化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの化合物を含有させてもよい。そのような添加剤は、たとえば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第199〜202頁に記載のTN、STN用カイラル剤が挙げられる。カイラル剤を添加すると、コレステリック液晶相を形成し、ネマチック液晶に溶解した二色性色素がらせん状に配列されることになる。よって、互いに直交する直線偏光に関して、両方の偏光を吸収することができるため、着色状態における光の吸収量が増加する。ため好適である。一方、一軸配向されたネマチック液晶層を用いた場合には、光は理論上半分しか吸収されないこととなる。
【0075】
カイラル剤の添加量は液晶組成物中、1〜30質量%であることが好ましく、1.5〜20質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることが更に好ましい。30質量%よりも多い場合、可視域に選択反射を示す場合があり調光性能が低下する、あるいは、カイラル剤がホスト液晶から析出しやすくなる場合がある。また、カイラル剤は複数種類使用してもよい。とくに、カイラルピッチの温度依存性が正のものと負のものとを組合せ使用することで、カイラルピッチの温度依存性が小さくなる場合が好ましい。
【0076】
以下に本発明に用いられるカイラル剤の具体例を示す。
【化11】

【0077】
【化12】

【0078】
【化13】

【0079】
本発明の調光材料における調光性能については、その着色状態と透明状態における光の透過率の比(透明状態/着色状態)が3〜1000の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、5〜1000の範囲であり、特に好ましくは、8〜1000の範囲である。
【0080】
本発明の調光材料に用いる液晶組成物は、ポリマーと共存させてもよい。本発明の調光材料が、散乱着色状態と透明状態を切り替える方式の場合、ポリマーと共存させることが好ましい。
本発明の調光材料に用いる液晶組成物を分散含有するポリマー媒体層は、例えば、液晶組成物を分散したポリマー溶液を、基板上に塗設することにより形成することができる。ポリマー溶液中に液晶組成物を分散する方法としては、機械的攪拌、加熱、超音波、あるいはその組合せなどを利用して行うことができる。
【0081】
前記ポリマー媒体層において、高分子媒体中に分散された液晶組成物とポリマー媒体との質量比は、1:10〜10:1が好ましく、1:1〜8:2がより好ましい。
【0082】
高分子媒体層を形成する方法としては、高分子と液晶組成物とを溶解させた溶液を、基板上に塗設する方法もしくは液晶組成物とポリマーとを共通の溶媒に溶解した後、基板上に塗設し、溶媒を蒸発させる方法が好ましい。
前記ポリマー媒体層に用いる高分子には特に制限はない。シロキサンポリマー、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルブチラール、ゼラチン等の水溶性高分子、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、酢酸ビニルやポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアルコール誘導体類、トリアセチルセルロースのようなセルロース誘導体類、ポリウレタン類、スチレン類等の非水溶性高分子が用いられる。本発明の調光材料に用いる高分子としては、ホスト液晶との相溶性が高いという観点からシロキサンポリマー、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類が好ましい。
【0083】
以下に、本発明のシロキサンポリマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0084】
【化14】

【0085】
【化15】

【0086】
【化16】

【0087】
さらに、ポリマー媒体層中には、液晶組成物の分散を安定化することを目的として、界面活性剤を用いることができる。本発明に適用できる界面活性剤に特に制限はないが、非イオン系界面活性剤が好ましく、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキエチレンアルキルエーテル類、フルオロアルキルエチレンオキシド類等が用いられる。
特に、本発明に係る二色性色素は一般式(1)で表される構造であるため、ポリマーとして芳香族基を有するものを用いると、ポリマーとの相溶性が高くなり、調光性能を高めることができる。
【0088】
本発明の調光材料において、前記ポリマー媒体層の厚みは、1〜50μmであることが好ましく、2〜40μmであることがより好ましく、5〜30μmであることが更に好ましい。
【0089】
また、調光材料の場合においては、特に二色性色素の添加量が多いほうが調光性能が上がるため好ましいが、同時に、ポリマー分散型液晶を調整する方法として散乱強度の高くなりやすい重合相分離方式(上記(1)の方式)を適用した場合、重合時におけるラジカル種による二色性色素の分解を抑制する観点から、重合温度は室温よりも低くすることが好ましい。また、ラジカル種による反応性が低い場合が二色性色素の分解を抑制する効果があり、その観点からメタクリレート系モノマーを用いることが好ましい。また、光重合を利用する場合には、UV照射時における二色性色素の分解を抑制する観点から、UV照射強度を小さくすることが好ましく、例えば、1〜500mW/cmの範囲が好ましく、さらに好ましくは1〜50mW/cmの範囲である。ポリマーと液晶組成物とをあらかじめ混合してから相分離をさせる方法(上記(2)〜(4)の方式)を適用する場合、適用するポリマーとしては二色性色素の染着を低下させる観点から芳香族基を持たないポリマーが好ましく、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリイミドなどが好ましい。以上の施策によって透明状態における透過率が高くなるため好適である。また、カイラル剤の添加濃度は近赤外域に選択反射帯がくるように調整すると、らせんの回数が増えて二色性色素による光吸収率が高くなるため、着色状態における発色が良好となるため好適である。
【0090】
なお、本発明の調光材料は、1つの液晶層中に複数の二色性色素を混合してもよい。呈示する色についても、いかなるものであってもよい。また、各色を呈する液晶層を別層にして積層してもよい。更には、各色を呈する液晶層(液晶部)を並置してもよい。
【0091】
<調光材料の構成>
(基本構造)
調光材料は、少なくともホスト液晶及び二色性色素を含有する液晶層が存在すればよい。したがって、単に一対の支持体間に液晶層を存在させてなる態様であってもよいし、一対の電極基板間に液晶層を存在させ、電気的に調光状態を制御する態様(調光素子)であってもよい。好ましくは、支持体や基板が透明の場合である。
【0092】
(各構成部材)
−電極基板−
電極基板としては、通常ガラスあるいはプラスチック(ポリマー)からなる基板上に、電極層を形成したものを用いることができる。好ましくはプラスチック基板である。プラスチック基板としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、PESあるいはPENなどが挙げられる。基板については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第218〜231頁に記載のものを用いることができる。基板上に形成される電極層は、好ましくは透明電極層である。例えば、酸化インジウム、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化スズ等から形成することができる。透明電極については、たとえば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第232〜239頁に記載のものが用いられる。
【0093】
−スペーサー−
本発明の調光材料は、例えば、一対の基板をスペーサーなどを介して、1〜50μm間隔で対向させ、基板間に形成された空間に液晶組成物を配置することにより作製することができる。前記スペーサーについては、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第257〜262頁に記載のものを用いることができる。本発明の調光材料は、基板上に塗布あるいは印刷することにより基板間の空間に配置することができる。
本発明の調光材料の場合、液晶層の厚さ、すなわちスペーサーにより形成される基板間の間隔は、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは2〜40μmである。50μmより厚いと透明状態における透過率が低下しやすくなり、1μmより薄いと部分的な欠陥による通電のため表示ムラが生じやすくなり好ましくない。
【0094】
−その他の部材−
その他の部材としては、例えば、バリア膜、紫外線吸収層、反射防止層、ハードコート層、汚れ防止層、有機層間絶縁膜、金属反射板、位相差板、配向膜などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
バリア膜としては、有機ポリマー系、無機系、有機−無機の複合系いずれでもよい。有機ポリマー系としてはエチレンービニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA/PVOH)、ナイロンMXD6(NーMXD)、ナノコンポジット系ナイロンなどが挙げられる。無機系としてはシリカ、アルミナ、ニ元系などが挙げられる。その詳細は、例えば「ハイバリア材料の開発、成膜技術とバリア性の測定・評価方法」(技術情報協会、2004年)に記載されている。
本発明の調光材料において、バリア層は、製造しやすさの観点から支持体上の透明電極が設置されていない面側に設置することが好ましい。
【0096】
紫外線吸収層としては、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤:2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
本発明の調光材料において、紫外線吸収層は、製造しやすさの観点から支持体上の透明電極が設置されていない面側に設置することが好ましい。
【0097】
反射防止膜は、無機材料又は有機材料を用いて形成され、膜構成としては、単層であってもよく、又は多層であってもよい。さらにまた、無機材料の膜と有機材料の膜との多層構造であってもよい。反射防止膜は、調光材料の一面側又は両面に設けることができる。両面に設ける場合、両面の反射防止膜は、同じ構成であっても別の構成であっても良い。例えば、一方の面の反射防止膜を多層構造とし、他方の面側の反射防止膜を簡略化して単層構造とすることも可能である。また、透明電極又は支持体上に直接反射防止膜を設けることができる。
【0098】
反射防止膜に用いる無機材料としては、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WO等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、レンズがプラスチック製のレンズであるので、低温で真空蒸着が可能なSiO、ZrO、TiO、Taが好ましい。
無機材料で形成される多層膜としては、レンズ側からZrO層とSiO層の合計光学的膜厚がλ/4、ZrO層の光学的膜厚がλ/4、最表層のSiO層の光学的膜厚がλ/4の、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に成膜する積層構造が例示される。ここで、λは設計波長であり、通常520nmが用いられる。最表層は、屈折率が低く、かつ反射防止膜に機械的強度を付与できることからSiOとすることが好ましい。
無機材料で反射防止膜を形成する場合、成膜方法は例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法等を採用することができる。
【0099】
反射防止膜に用いる有機材料としては、例えばFFP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)等を挙げることができ、レンズ材料やハードコート膜(有する場合)の屈折率を考慮して選定される。成膜方法は、真空蒸着法の他、スピンコート法、ディップコート法などの量産性に優れた塗装方法で成膜することができる。
【0100】
ハードコート層としては、公知の紫外線硬化もしくは電子線硬化のアクリル系もしくはエポキシ系の樹脂を用いることができる。
汚れ防止膜としては、含フッ素有機重合体のような撥水撥油性材料を使用することができる。
【0101】
配向膜としては、ポリイミド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール、ゼラチン、シリカ蒸着膜などを用いることが好ましく、ポリイミド、シランカップリング剤を用いることが、 配向能力、耐久性、絶縁性、コストの観点から好ましい。配向膜としては、水平配向膜、垂直配向膜いずれであってもよい。
ポリイミド配向膜に関しては、例えば、「液晶便覧」(液晶便覧編集委員会編、丸善、2000年)の第253〜258頁に記載のもの、「液晶デイスプレイの最先端」(液晶若手研究会編、シグマ出版、1996年)の第83〜104頁に記載のものを用いることができる。
【0102】
本発明のポリイミド配向膜として、垂直配向膜を用いる場合には、垂直配向能力、いわゆる垂直アンカリング力が高いものが好ましい。垂直配向能力を高めたポリイミド膜を用いることで、本発明の調光材料のコントラスト比が向上する。垂直配向能力を高めたポリイミド膜としては、ポリイミド側鎖のアルキル鎖長を伸ばして疎水性を高めた構造、また、長鎖アルキル鎖を有するジアミン部分の導入率が高まった構造が好ましい。
一方、本発明のポリイミド配向膜として、水平配向膜を用いる場合には、水平配向能力、いわゆる水平アンカリング力が高いものが好ましい。水平配向能力を高めたポリイミド膜を用いることで、本発明の調光材料のコントラスト比が向上する。水平配向能力を高めたポリイミド膜としては、ポリイミド側鎖のアルキル鎖を短くする、もしくは親水的な官能基を導入することにより親水性を高めた構造が好ましい。
【0103】
ポリイミド配向膜としては、たとえば、国際特許番号2002/051909号、特開平7−301805号、特開昭62−297819号、特開平1−262527号、特開平1−262528号、特開平5−43688号、特開平6−82794号、特開2003−96070号、特開2003−114437号、特開2004−18422号、特開2004−163724号、特開2005−105019号、特開2005−170818号、特開2000−104073号、特開2001−108831号、特開2001−100038号、特開2001−100040号、特開2001−100041号に記載の配向膜が好適に用いられる。
【0104】
配向方法については、ラビング処理していても、していなくてもよい。ラビング処理としては、布によるラビング処理が用いられ、たとえば「液晶デイスプレイの最先端」(液晶若手研究会編、シグマ出版、1996年)の第83〜104頁に記載の方法が好適に用いられる。
ポリイミド配向膜は、塗布、印刷などにより付設することができる。通常は、ポリアミック酸の溶液を塗布、焼成することでポリイミド膜への変換させるプロセス、もしくはポリイミドの溶解させた溶液を塗布、溶媒を留去させることでポリイミド膜を形成させる方法が好ましい。ガラス基板を用いた場合、焼成温度は200℃前後が好ましい。また、フイルム基板を用いた場合には、フイルム基板のTg温度よりも低い温度で焼成することが好ましい。特に、PENフイルムの場合には、120℃以下の場合が好ましい。
【0105】
ポリイミド配向膜の膜厚は、10nmから1μmの範囲が好ましく、より好ましくは20nmから300nmの範囲である。さらに好ましくは、30nmから200nmの範囲である。
シランカップリング剤は、浸漬などにより付設することができる。通常は、シランカップリング剤を含むアルコール溶液に基板を浸漬させた後、加熱、乾燥させることでシランカップリング剤が結合された基板を形成させる方法が用いられる。
【0106】
<用途>
本発明の調光材料は、高い調光性能を与えることができるため、調光、セキュリテイー、車載用途、インテリア、広告、情報表示板として好適に利用することができる。とくに、本発明の調光材料は、光、熱及び湿度に対する耐久性が高いことから耐候性に優れ、屋外用途ならびに過酷な環境下において好適に使用することができる。過酷な環境下としては、車載用途、浴室内での用途などが挙げられる。
【実施例】
【0107】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0108】
[実施例1]
<調光材料の調製>
1.二色性色素及び液晶の調製
下記表1の二色性色素は、特開2003−192664号記載の方法に従い合成した。ホスト液晶ZLI−1132(ネマチック液晶)及びカイラル剤R−1011はメルク社から購入した。
【0109】
2.調光素子の調製
透明電極であるITO付きガラス基板上にポリイミド水平配向膜(日産化学製)をスピンコート、焼成により付設した。つぎに、得られた水平配向膜付きガラス基板にラビング処理を施した。
ホスト液晶(ZLI−1132)1.0g中に、下表1に示した二色性色素と、カイラル剤(R−1011、メルク社製)とを、表2に示す組み合わせで加熱して溶解させた後、室温下1日放置した。各々の二色性色素の添加量は、上記液晶組成物を8μmの液晶評価用セルに注入した場合における透過率が20%となるように調整した。得られた液晶組成物に12μmの球状スペーサー(積水化学製)を少量混合し、上記のITO付きガラス基板を配向膜側が液晶層に接するようにはさんで、光硬化型シール剤(積水化学製)にて封止した。
【0110】
【表1】

【0111】
3.評価
得られた本発明の調光材料は、電圧無印加時に着色状態であった。信号発生器(テクトロニクス株式会社製)を用いて、電圧(±40V、100Hz)を印加した場合には、液晶層は透明状態となった。また、二色性色素の極大吸収波長における散乱着色状態と透明状態におけるUV/vis吸収スペクトル測定(島津製UV2400)を行い、散乱着色状態と透明状態の透過率を測定した。着色状態と透明状態における透過率の比(T(透明)/T(着色時))を表2に示す。
表2に示す通り、本発明の調光材料は、電気的に光の透過率を制御できる調光機能を有することが確認された。
【0112】
【表2】

【0113】
[比較例1]
下記に示すイエロー色素Y−1、マゼンタ色素M−1、シアン色素C−1を用いた以外は、実施例1と同様にして調光素子を作製し、実施例1と同様に評価し、その結果を表2に示した。
表2に示すように、本発明の調光素子に比べ、比較の調光素子では、透過率の比が低く調光機能が低いことが明らかとなった。
【0114】
【化17】


[実施例2]
<調光材料の調製>
1.プラスチック基板の作製
特開2000−105445号公報の実施例1の試料110の作製と同様にPEN(Dupont−Teijin Q65A)に対し下塗り層及びバック層を作成した。すなわち、ポリエチレン−2,6−ナフタレートポリマー100重量部と紫外線吸収剤としてTinuvin P.326(チバ・ガイギーCiba−Geigy社製)2重量部とを乾燥した後、300℃にて溶融後、T型ダイから押し出し、140℃で3.3倍の縦延伸を行ない、続いて130℃で3.3倍の横延伸を行い、さらに250℃で6秒間熱固定して厚さ90μmの本発明のプラスチック基板(PEN)を得た。
【0115】
2.透明電極層の作成
上記で得られたプラスチック基板の片面に、導電性のインジウム酸化スズ(ITO)をコーティングして、厚さ200nmの均一な薄膜を積層した。面抵抗約20Ω/cm、光透過率(500nm)85%であった。つぎに、ITO表面上に反射防止膜としてSiO薄膜(100nm)をスパッタにより付設した。光透過率(500nm)90%であった。
【0116】
(液晶層の調製)
上記支持体を用いて実施例1と同様の操作にて、液晶層を調製した。ただし、8μmの接着性球状スペーサー(触媒化成品)を用いた。また、配向膜は、ポリイミド垂直配向膜(日産化学製、SE1211)を用いて、ホスト液晶としてMLC−6609(メルク社製)を用いた。カイラル剤はR−1011(メルク社製)を用いた。
【0117】
(バリア層の付設)
有機−無機ハイブリッド層の作製ソアノールD2908(日本合成化学工業(株)製、エチレン−ビニルアルコール共重合体)8gを1−プロパノール118.8g及び水73.2gの混合溶媒に80℃で溶解した。この溶液の10.72gに2N塩酸を2.4ml加えて混合した。この溶液を攪拌しながらテトラエトキシシラン1gを滴下して30分間攪拌を続けた。次いで、得られた塗布液を前記調光材料の支持体上にワイヤバーで塗布した。その後120℃で5分間乾燥することにより、調光材料に膜厚約1μmの有機−無機ハイブリッド層を形成した。
【0118】
(紫外線吸収層の付設)
水42g、シラノール変性ポリビニルアルコール(クラレ社製:商品名R2105)40g、紫外線フィルター用カプセル液13.5gを混合した後、50質量%の2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールの水溶液17g、20質量%のコロイダルシリカ分散液(日産化学社製:商品名スノーテックス0)65g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル(東邦化学社製:ネオスコアCM57)2.5gとポリエチレングリコールドデシルエーテル(花王社製:エマルゲン109P)2.5gを混合し、紫外線フィルター層用塗布液を得た。
【0119】
次いで、得られた塗布液を前記調光材料のバリア層上にワイヤバーで塗布した。その後120℃で5分間乾燥することにより、調光材料に膜厚約1μmの紫外線吸収層を形成した。
【0120】
ついで、実施例1と同様の操作により試料L,M,Nの調光材料を調整した。本発明の調光材料は電圧を印加しない状態で透明であり、電圧印加により着色状態へ変化した。また、比較例1と同様の操作により、但し上記支持体を用いて比較の試料O,P,Qの調光材料を調整した。
【0121】
(表示性能の評価)
得られた本発明の調光材料を実施例1と同様に評価したところ、コントラスト比の高い調光が可能であることが確認された。
さらに、図1に示すように、得られた調光材料10を自動車フロントガラス20の内側に接着剤を用いて接着させて、電気的に散乱着色状態と無色透明状態が切り換えられることを確認した。すなわち、本発明の表示素子がサンバイザーとしての機能を果たすことを確認した。
また、図2に示すように、得られた調光材料10をドア30のガラス部分に取り付け、電気的に散乱着色状態と無色透明状態が切り換えられることを確認した。すなわち、本発明の表示素子が調光機能を有するドアとして機能を果たすことを確認した。
【0122】
(耐光性の評価)
耐光性の評価を行った。Xeランプ(15万ルクス)を上記調光材料に照射(480時間)したところ、本発明の調光材料は電気的な特性に変化はなかったが、比較の調光材料は、電圧印加時における着色状態の光の吸収率が目視で減少しており、調光機能が低下していることが確認された。すなわち、本発明の調光材料は耐光性に優れていることが確認された。
着色状態の光の吸収率について、耐光性の評価前の吸収率に対する耐光性の評価後の吸収率の割合(%)を測定した結果を表3に示す。
【0123】
【表3】

【0124】
(耐熱性の評価)
耐熱性の評価を行った。85℃に設定したオーブン中に、上記調光材料を1週間保存したのち電気的な特性を評価したところ、本発明の調光材料は電気的な特性に変化はなかったが、比較の調光材料は、電圧印加時における透明状態の光の吸収率が目視で減少しており、調光機能が低下していることが確認された。すなわち、本発明の調光材料は耐熱性に優れていることが確認された。
透明状態の光の吸収率について、耐熱性の評価前の吸収率に対する耐熱性の評価後の吸収率の割合(%)を測定した結果を表4に示す。
【0125】
【表4】

【0126】
(熱湿度耐久性の評価)
熱湿度耐久性の評価を行った。湿度80%、温度60℃に設定した恒温オーブン中に、上記調光材料を1週間保存したのち電気的な特性を評価したところ、本発明の調光材料は電気的な特性に変化はなかったが、比較の調光材料は、電圧印加時における透明状態の光の吸収率が目視で減少しており、調光機能が低下していることが確認された。すなわち、本発明の調光材料は熱湿度耐久性に優れていることが確認された。
透明状態の光の吸収率について、熱湿度耐久性の評価前の吸収率に対する熱湿度耐久性の評価後の吸収率の割合(%)を測定した結果を表5に示す。
【0127】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の調光材料子を自動車フロントガラスの内側に用いた図。
【図2】本発明の調光材料子をドアのガラス部分に取り付けた図。
【符号の説明】
【0129】
10 調光材料
20 フロントガラス
30 ドアのガラス部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に、少なくとも一種の下記一般式(1)で表される二色性色素と、少なくとも一種のホスト液晶と、を含有する液晶層を備え、入射光を透過させることを特徴とする調光材料。
【化1】


〔式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々独立に、水素原子又は置換基を表すが、R、R、R及びRの少なくとも1つは−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基を表す。Hetは酸素原子、硫黄原子又はNRを表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。B及びBは各々独立に、2価のアリール基、ヘテロアリール基又は環状脂肪族炭化水素基を表し、Qは2価の連結基を表し、Cはアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアシルオキシ基を表す。mは0又は1を表し、p、q及びrは各々0〜5のいずれかの整数を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表すが、(p+r)×nは3〜10である。p、q及びrが各々2以上の時、2以上のB、Q及びBはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nが2以上の時、2以上の{(B−(Q−(B}は同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項2】
前記一般式(1)中、少なくともRが、前記−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基であることを特徴とする請求項1に記載の調光材料。
【請求項3】
前記一般式(1)中、R、R、R及びRのいずれか2つが、前記−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の調光材料。
【請求項4】
前記一般式(1)中、R及びRが前記−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基である、又は、R及びRが前記−(Het)−{(B−(Q−(B−Cで表される置換基であることを特徴とする請求項3に記載の調光材料。
【請求項5】
前記一般式(1)中、R、R、R、及びRの少なくとも1つはヒドロキシ基であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の調光材料。
【請求項6】
前記一般式(1)中、少なくともRが、ヒドロキシ基であることを特徴とする請求項5に記載の調光材料。
【請求項7】
前記一般式(1)中、R及びRが、ヒドロキシ基であることを特徴とする請求項6に記載の調光材料。
【請求項8】
前記一般式(1)中、m=0、p=2、q=0、r=1且つn=1であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の調光材料。
【請求項9】
前記ホスト液晶が、カイラル剤を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の調光材料。
【請求項10】
前記ホスト液晶が、ネマチック液晶であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の調光材料。
【請求項11】
着色状態と透明状態とに変化して調光する、又は散乱着色状態と透明状態とに変化して調光することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の調光材料。
【請求項12】
前記着色状態と透明状態における光の透過率の比(透明状態/着色状態)が、3〜1000の範囲であることを特徴とする請求項11に記載の調光材料。
【請求項13】
更に、ポリマー支持体を有することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の調光材料。
【請求項14】
更に、紫外線吸収層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の調光材料。
【請求項15】
屋外で用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の調光材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−106107(P2008−106107A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288882(P2006−288882)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】