説明

調光装置、レンズ装置および撮像装置

【課題】複雑化、高コスト化することなく、光透過率の低下を防止しながら光量を減衰させることができる調光装置を提供する。
【解決手段】光学系108の開口部を通過する光の光路中に、光学系の光軸110を中心として回転可能に配置された、入射光を直線偏光に変換する第1光学手段102と、第1光学手段と撮像素子105の間の位置に配置された、入射光の偏光角変化にて通過光減衰可能な第2光学手段103とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光の透過率を調節するための調光装置、この調光装置を有するレンズ装置および撮像装置に関するものである.
【背景技術】
【0002】
従来、ビデオカメラ用の絞り装置は、絞り羽根と、絞り羽根の中央に取り付けられたND(Neutral Density)フィルタとにより構成されていた。絞りの小口径付近で絞り羽根の動きに応じてNDフィルタを挿入し、ハンチング現像が発生することを防ぐ構成となっている。
【0003】
この種の絞り装置を用い、高輝度被写体を適正な露光量で撮影する場合には、絞り開口径が小さく設定される。この絞り開口径を小さくしすぎると、光の回折現象によって解像度の低下を招く恐れがある。近年、撮像装置の小型化に伴い、使用される固体撮像素子のチップサイズが縮小され、さらに高精細化により画素サイズの縮小化が進んでいる。このことから、回折現象の発生する絞り径が大きくなり、解像度低下の問題を回避する手段が検討されてきている。
【0004】
解像度低下の問題を回避する手段として、光の通過面積を制御する絞り羽根とは別に、NDフィルタを開口部に出し入れできるようにしたものが知られている。しかし、NDフィルタの濃度が均一であると、露出の制御範囲は限られてしまう。一方、NDフィルタを多段濃度に製作し、絞り羽根と独立して制御できれば比較的露出の制御範囲が広くなるが、コストアップの要因となってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1には、光の通過面積を制御する絞り羽根とは別に、絞り開口部内に2つの偏光板を備える。そして、一方の偏光板を相対的に回転させることで、回折現象を起こすことなく連続的に露光量を調整するカメラが提案されている。また、一枚の偏光板の代わりに、光シャッタとして液晶シャッタ(LCDシャッタ)を用いて、偏光板と組み合わせて同様の効果を得る例も知られている。
【0006】
しかし、上記のような調光装置では、一枚目の偏光板が常に光の有効光路中に固定されて設置される。そのため、この偏光板によって例えば入射した円偏光あるいはランダム偏光(自然光)のうち、50%以上の光が常に吸収されてしまう。従って、偏光板を透過する最大光透過率は、例えば50%を超えることができず、光量低下が著しくなる。この光量低下は、偏光板を用いた調光装置の実用化を困難にしている要因の一つになっていた。
【0007】
また、LCDシャッタを用いるものでも、LCDの構成上、液晶(LC)を透過状態にしてもLCと組み合わされる偏光板の透過率分(理想的な状態でも50%まで落ちる)だけ光量は減衰する。撮像素子がいくら高感度になっても、この1段分(光量50%)の減衰は現実的には使用できない。
【0008】
また、上記問題を解決可能な例として、特許文献2に開示されているように、光量低下時には2枚の偏光板ないしはLCDシャッタを光路から退避させることができるようにした構成のものがある。
【特許文献1】特開2004−118033号公報
【特許文献2】特開平5−323264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載されているような構成をとろうとすると、以下の1)ないし3)のような欠点がある。
1)2枚の偏光板を光路から退避させるための駆動源が必要となり、機構が複雑で高コストとなる。
2)退避時に光路中に偏光板が光路に対して半掛かりとなる状態がある。この状態においては偏光板による画面上の影(シェーディング現象)の発生、および、光路の素通し部と半掛かり部との屈折率の差に起因する濃度段差や厚み段差によるピント面移動による焦点ボケ発生が避けられない。さらに、偏光板の端面が光路中に存在することによるフレア現象の発生が懸念される。
3)被写体輝度が大きく変化するときには、偏光板全退避、偏光板挿入、そして偏光板回転のステップを順に踏まざるを得ない。そのため、応答性が著しく劣化し、高速応答を要求されるビデオカメラでの使用には不向きである。
【0010】
上記欠点はLCDシャッタを使用する場合においても同様である。
【0011】
(発明の目的)
本発明の目的は、複雑化、高コスト化することなく、光透過率の低下を防止しながら光量を減衰させることのできる調光装置、レンズ装置および撮像装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、光学系の開口部を通過する光の光路中に、前記光学系の光軸を中心として回転可能に配置された、入射光を直線偏光に変換する第1光学手段と、前記第1光学手段と前記撮像素子の間の位置に配置された、入射光の偏光角変化にて通過光減衰可能な第2光学手段とを有する調光装置とするものである。
【0013】
同じく上記目的を達成するために、本発明は、光学系の開口部を通過する光の光路中に配置された、入射光を直線偏光に変換する第1光学手段と、前記第1光学手段と前記撮像素子の間の位置に、前記光学系の光軸を中心として回転可能に配置された、回転による相対偏光角変化に応じて通過光減衰可能な第2光学手段とを有する調光装置とするものである。
【0014】
同じく上記目的を達成するために、本発明は、光学系の開口部を通過する光の光路中に配置された、入射光を直線偏光に変換する第1光学手段と、前記第1光学手段と前記撮像素子の間の位置に配置された、駆動電圧変化による偏光角変化に応じて通過光減衰可能な第2光学手段とを有する調光装置とするものである。
【0015】
同じく上記目的を達成するために、本発明は、本発明の上記調光装置と、絞りとを有するレンズ装置とするものである。
【0016】
同じく上記目的を達成するために、本発明は、本発明の上記レンズ装置を有する撮像装置とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複雑化、高コスト化することなく、光透過率の低下を防止しながら光量を減衰させることのできる調光装置、レンズ装置または撮像装置を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1および2に示す通りである。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1は、光学的機能が向上した調光装置、レンズ装置や撮像装置を提供しようとするものであり、上記特許文献1との違いは、一対の偏光板の一方の、入射光の入射側に位置する偏光板を、入射光を全て直線偏光に変換する光学手段とした点で異なる。
【0020】
このような光学手段として、広帯域波長板が挙げられるが、先ずは光の偏光について簡単に説明する。光を波として捉えると、光の進行方向と磁場を含む面を偏光面といい、一方、光の進行方向と電場を含む面を振動面という。そして、偏光面の方向が揃っている場合の光が偏光であり、偏光面が一つの平面に限られるような偏光を直線偏光と呼ぶ。直線偏光には、入射光線と入射面の法線とを含む平面に対して、水平に振動する成分のP偏光と、垂直に振動する成分のS偏光とがある。また、ある位置でみた電場ベクトルが、時間とともに回転するような偏光を一般に楕円偏光という。そして、特に、光の進行方向に垂直な平面上に電場ベクトルの先端を投影したとき、その軌跡が円となるものを円偏光という。
【0021】
一般的に波長板(位相レターデーションプレートとも呼ばれる)は、光学材料の複屈折性を利用し光の位相変調を行う光学素子である。中でも、直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板は、光ディスク装置や、ディジタルビデオカメラなどに使用するOLPF(Optical Low Pass Filter)の偏光解消板として用いられている。
【0022】
通常の波長板の位相差は波長の関数であるため、使用する波長が変わると位相差も変化してしまう特性がある。このため、光ディスク装置のピックアップに使用する場合は、使用する半導体レーザー光の波長に応じて、その厚みを厳密に管理し、位相差を1/4波長に維持する手法が取られる。また、ディジタルビデオカメラなどの撮像素子の、光学的なサンプリング折り返しを防止するために通常挿入されるOLPFの組み合わせでは、その複屈折分離パターンを創出するための直線偏光解消板として波長板が必要となる場合がある。この場合、扱う波長周波数帯は可視光領域の広帯域となる。しかし、ある厚みにて製作された波長板に対して入射する直線偏光の出射光は、その波長によって、連続して円偏光、楕円偏光、直線偏光、楕円偏光、円偏光の変換を繰り返すことになる。この繰り返しの中で、入射直線偏光が出射円偏光あるいは直線偏光となる場合は、波長板の厚みにより位相差90度または180度が成り立つ場合のみであり、大部分の波長は楕円偏光に変換される。しかし、最終的に撮像素子の光電変換部に入射する広帯域光は、その波長による偏光成分がどのような位相をもって入射したとしても、光電変換部における積分効果により、結果的に円偏光として入射したものと等価となり、全体として偏光解消がなされる。すなわち、この場合は、波長板の厚みは、厳密に規定する必要はなく、しばしば、光路長調整のための光学ガラスの代わりとして波長板が用いられる場合がある。
【0023】
ところで近年、複屈折光の位相差が1/4波長である水晶波長板と、複屈折光の位相差が1/2波長である水晶波長板とを同一材料にて作製し、この二つの波長板を光軸が交差するよう張り合わせる。このことにより、ある波長範囲において、ほぼ1/4波長の位相差で機能する広帯域波長板が製作されている。この目的とするところは、上記光ディスク装置の一つのピックアップにて、数種類の波長の半導体レーザー光の波長を選択して、光ディスクの記録波長が切り替え可能な装置を構成する場合に有用であるためである。さらに、水晶等の複屈折性光学材料の一部(主に単結晶からなる材料)の旋光能のために光軸方向に伝搬する直線偏光の振動面が光の進行につれてねじれる問題がある。この問題を補正した、可視光領域全域の波長をカバーする、広域に位相差の波長依存性を抑えたな広帯域1/4波長板が実用に供されている。
【0024】
図4は、上記水晶広帯域波長板の特性例である。この波長板の特性によれば、通常のビデオカメラで扱う可視光波長領域である420nm〜655nmの範囲で、円偏光入射時に、プラスマイナス数deg.の位相差が現れるのみで、直線偏光変換が可能となる。また、その可視光透過率は、入射面、出射面に反射防止膜(ARコート)を施すことで、通常のOLPFと同様の、透過率98%の高透過率を得られる。すなわち、例えばP偏光角を0度としたとき、可視光帯域の中心波長555nmのグリーンチャンネルの入射円偏光が水晶広帯域波長板を介して出射する直線偏光の位相を、90度の直線S偏光となるように水晶広帯域波長板を設置するとする。こうすれば、可視光波長帯域は全体として、ほぼ損失を伴わず、90度プラスマイナス数deg.の直線S偏光に変換できる。
【0025】
よって、水晶広帯域波長板を第1光学手段とし、第2光学手段である偏光板あるいは液晶シャッタと組み合わせる。このようにすれば、従来例のように、調光装置の設置に伴う光透過率の大きな低下を発生させることがない。さらに、光量低下時にも、この装置の退避機構など、複雑で高コストな構成を必要とせずに、かつ絞り口径を小絞りにすることなく、光量を減衰させることができる。さらには、透明時の最大光透過率が高くて光学濃度比(コントラスト比)の大幅な向上を図ることができる装置を実現可能となる。
【0026】
以下、本発明の実施例1に係る調光装置を具備する撮像装置の構成例を、図1を用いて詳述する。
【0027】
調光装置101は、例えば図1に示すように、ズームレンズのように複数のレンズで構成されるレンズ群108と撮像素子105の前面側にある撮像素子面104との間に配置される。レンズ群108に入射した光成分のうち、レンズ群108を透過することで紫外成分が吸収される。そして、次段の赤外カットガラス(赤外カットフィルタ)107にて赤外成分が除かれて、可視光成分のみが弁別抽出される。その後は、可視光成分が撮像素子面104と平行な位置に設置された、モータ109及び回転機構106による駆動にて光学系の光軸110を中心として撮像素子面104と平行に回転可能であるように構成されている広帯域1/4波長板102に入射する。
【0028】
入射した可視光成分は、広帯域1/4波長板102を介して、全て直線偏光に変換され、撮像素子面104に密着配置された偏光板103に入射する。そして、偏光板103を透過した光は、撮像素子面104に映像として映し出される。
【0029】
ここで、入射光線と入射面の法線とを含む平面に対して、垂直に振動する成分をS偏光とする。図1において、偏光板103は、このS偏光成分を全透過する位置にて撮像素子面104に密着配置されている。また、広帯域1/4波長板102は、P偏光角を0度としたとき、入射した可視光帯域の円偏光を、図4に示したように、全て位相差90度プラスマイナス数deg.の直線S偏光に変換する回転位置に停止されている。
【0030】
すなわち、図1は、入射した可視光帯域の円偏光を、広帯域1/4波長板102にて全て直線S偏光を中心とした位相角を有する直線偏光成分に変換し、この直線偏光成分を、偏光板103がほぼ全透過する位置関係を図示している。
【0031】
ここで、図4によれば、入射した可視光帯域のうち、その波長によっては完全に位相差90度の直線S偏光には変換されず、プラスマイナス数deg.の位相差が現れる。このことから、偏光板103にて若干の波長成分の吸収が発生し、撮像素子105に入射する入射光の可視光成分の分光特性が若干変化する。
【0032】
しかし、上記調光装置101を、ビデオカメラのような撮像装置に応用する場合は、ビデオカメラに通常備わっているホワイトバランス機能によって、分光特性の変化は補正可能である。
【0033】
また、図1の配置の場合が、調光装置101の最大透過率を発生する透明配置状態であり、偏光板103にて若干の波長成分の吸収が発生する。そのため、全ての可視光成分を完全に損失しない状態で撮像素子105の表面に到達させることはできないが、従来に比べれば、大幅な透明時の透過率の改善が可能である。
【0034】
将来、広帯域1/4波長板102の位相差波長依存性が改善され、直線S偏光への変換効率がより大きくなれば、さらに透明配置時の透過率の向上が期待できる。
【0035】
図1の状態から、モータ109と回転機構106の駆動にて、広帯域1/4波長板102を回転させ、出射直線偏光の位相角を変化させて、偏光板103での通過光を減衰させる。このことにより、透明時の最大光透過率が高くて、光学濃度比(コントラスト比)の大幅な向上を図った調光装置101を実現できる。
【0036】
図2は、実際のビデオカメラに着脱可能に使用される、撮像素子105が取り付けられたレンズユニットに、図1の調光装置101を組み込んだ例を図示したものである。図1と同じ機能を有する部分は同一符号を付してある。
【0037】
図2において、111は光学ローパスフィルタ(OLPF)、112はカバーガラス、113はズームモータ、114はフォーカスモータ、115は絞り羽根である。
【0038】
光学ローパスフィルタ(OLPF)111は、撮像素子105に入射する光学像から不要な高周波成分を光学的に除去し、サンプリング折り返しを防止するための複屈折分離パターンを創出する。同時に、入射光を円偏光に変換する。
【0039】
通常、上記複屈折分離パターンは、撮像素子105の撮像画素の間隔に応じて決定される。単板カラー撮像方式の撮像素子の場合には、撮像画素の水平2画素単位の繰り返しにて、繰り返し単位の画素上に別の組み合わせのカラーフィルタをオンチップで貼り付けるよう構成することで色を分離する。よって、もっとも一般的な複屈折分離パターン構成としては、この繰り返し周期と同じ周期の無彩色パターンが被写体として撮像素子に結像したときの色偽信号の発生を防止する。このため、図5に示したように、撮像画素の水平1画素間隔の複屈折分離パターンが得られるように、光学ローパスフィルタ111を構成する。
【0040】
図5に示したように、例えば入射光B点の無偏光あるいはランダム偏光または円偏光の入射光束の成分のうち、S偏光成分はそのままB点位置に残留し、直進してB’点より出射する。しかし、P偏光成分は複屈折分離幅分、水平方向にスライドしてC’点より出射する。B’点には、A点からP偏光成分がスライド合成される。よって、光学ローパスフィルタ111の複屈折分離出射光は円偏光と等価となる。
【0041】
図2において、広帯域1/4波長板102は、赤外カットガラス107と密着接合される構成となっており、合わせて回転機構106により回転可能となっている。このように構成すれば、反射迷走光を防止するため必要な反射防止膜(ARコート)を、赤外カットガラス107と広帯域1/4波長板102の組み合わせの、その両面にのみ施せばよいので、コート面数の削減が可能となる。
【0042】
光学ローパスフィルタ111にて円偏光に変換された出射光が、広帯域1/4波長板102を介して直線偏光に変換され、さらに偏光板103を通過するときに、広帯域1/4波長板102の回転角に応じて調光される。そして、その後に撮像素子105に到達するのは、上記に説明した通りである。
【0043】
上記図1においては、偏光板103は反射迷走光防止の目的のため、撮像素子105の撮像素子面104上に密着配置とした。しかし、広帯域1/4波長板102と撮像素子105の間に個別に偏光板を設置しても良い(図示せず)。また、図1においては、通過光減衰時に回転させるのは広帯域1/4波長板102とした。しかし、偏光板103を広帯域1/4波長板102と撮像素子105の間に個別に設置する場合には、広帯域1/4波長板102は固定設置とし、偏光板103を回転させる構成にしても良い(図示せず)。
【0044】
以上の実施例1における調光装置101は、以下の構成よりなる。
【0045】
開口部を通過する光の光路中の撮像素子面104と平行な位置に、光軸110を中心として撮像素子面104と平行に回転可能に配置された、入射光を全て直線偏光に変換する広帯域1/4波長板102(第1光学手段)を有する。さらに、広帯域1/4波長板102と撮像素子105の間の撮像素子面104と平行な位置、つまり撮像素子105の表面前方に、入射光の偏光角変化にて通過光減衰可能な偏光板103(第2光学手段)を配置している。
【0046】
または、開口部を通過する光の光路中の撮像素子面104と平行な位置に入射光を全て直線偏光に変換する広帯域1/4波長板102(第1光学手段)を有する。さらに、広帯域1/4波長板102と撮像素子105の間の撮像素子面104と平行な位置に、光軸110を中心として撮像素子面104と平行に回転可能に、回転による相対偏光角変化に応じて通過光減衰可能な偏光板103(第2光学手段)を有する。
【0047】
よって、従来例のように調光装置の設置に伴う光透過率の大きな低下を発生させることがない。さらに、光量低下時にも調光装置の退避機構などの、複雑で高コストな構成を必要としない。したがって、絞り口径を小絞りにすることなく光量を減衰させ得る、透明時の最大光透過率が高くて光学濃度比(コントラスト比)の大幅な向上を図った調光装置101とすることができる。
【実施例2】
【0048】
図3は、実際のビデオカメラに着脱可能に使用される、撮像素子が取り付けられたレンズユニットに、調光装置を組み込んだ本発明の実施例2を示す図である。図2と同じ部分は同一符号を付し、その説明は省略する。
【0049】
図3において、本実施例2に係わる調光装置101は、広帯域1/4波長板102と、LCDシャッタユニット(電極を含む)116と、LCDシャッタ駆動回路117により構成されている。
【0050】
LCDシャッタ駆動回路117からLCDシャッタユニット116の透明電極に与えられる駆動電圧を変化させることにより、液晶(LC)の偏光角を変化させて、通過光の減衰量を制御できる。
【0051】
図3の構成であれば、図2に示した実施例1のように、広帯域1/4波長板102を回転して通過光の減衰量を変化させる必要はない。このため、図3における広帯域1/4波長板102は、光学ローパスフィルタ111と赤外カットガラス107とを一体構成として、反射防止膜(ARコート)コート面数の削減を図っている。
【0052】
以上の実施例2における調光装置101は、以下の構成よりなる。
【0053】
開口部を通過する光の光路中の撮像素子面104と平行な位置に入射光を全て直線偏光に変換する広帯域1/4波長板102(第1光学手段)を有する。さらに、広帯域1/4波長板102と撮像素子105の間の撮像素子面104と平行な位置に、駆動電圧変化による偏光角変化に応じて通過光減衰可能なLCDシャッタ駆動回路117からLCDシャッタユニット116(第2光学手段)を有する。
【0054】
よって、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0055】
上記の実施例1および2によれば、第1光学手段を、従来例の偏光板とは異なり、入射光を全て直線偏光に変換する光学手段としている。そして、第1光学手段に入射する入射光を全て直線偏光に変換した後に、第2光学手段である偏光板あるいは液晶光学手段である液晶シャッタを通過させるように構成している。このため、従来例のように調光装置の設置に伴う光透過率の大きな低下を発生させることがない。さらに、光量低下時にも調光装置の退避機構などの複雑で高コストな構成を必要とせずに、絞り口径を小絞りにすることなく光量を減衰させることができる。つまり、透明時の最大光透過率が高くて、光学濃度比の大幅な向上を図った調光装置101、さらには、該調光装置101が具備されるレンズユニット(レンズ装置)や撮像装置、もしくは、前記レンズユニットが着脱可能な撮像装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例1に係わる調光装置、およびこの調節装置を用いた撮像装置の構成を説明する図である。
【図2】本発明の実施例1に係わる調光装置を、実際のビデオカメラに使用される、撮像素子が取り付けられたレンズユニットに組み込んだ様子を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例2に係わる調光装置を、実際のビデオカメラに使用される、撮像素子が取り付けられたレンズユニットに組み込んだ様子を示す断面図である。
【図4】広帯域波長板の円偏光/直線偏光の変換位相差波長特性例を示す図である。
【図5】光学ローパスフィルタ(OLPF)の、複屈折分離パターンを説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
101 調光装置
102 広帯域1/4波長板
103 偏光板
104 撮像素子面
105 撮像素子
106 回転機構
107 赤外カットガラス
108 レンズ群
109 モータ
111 光学ローパスフィルタ(OLPF)
115 絞り羽根
116 LCDシャッタ
117 LCDシャッタ駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系の開口部を通過する光の光路中に、前記光学系の光軸を中心として回転可能に配置された、入射光を直線偏光に変換する第1光学手段と、
前記第1光学手段と前記撮像素子の間の位置に配置された、入射光の偏光角変化にて通過光を減衰可能な第2光学手段とを有することを特徴とする調光装置。
【請求項2】
前記第1光学手段は、位相差1/4波長を有する広帯域波長板であり、前記第2光学手段は、前記撮像素子の前面に位置する偏光板であることを特徴とする請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
光学系の開口部を通過する光の光路中に配置された、入射光を直線偏光に変換する第1光学手段と、
前記第1光学手段と前記撮像素子の間の位置に、前記光学系の光軸を中心として回転可能に配置された、回転による相対偏光角変化に応じて通過光減衰可能な第2光学手段とを有することを特徴とする調光装置。
【請求項4】
前記第1光学手段は、位相差1/4波長を有する広帯域波長板であり、前記第2光学手段は、前記撮像素子の表面前方に配置された偏光板であることを特徴とする請求項3に記載の調光装置。
【請求項5】
光学系の開口部を通過する光の光路中に配置された、入射光を直線偏光に変換する第1光学手段と、
前記第1光学手段と前記撮像素子の間の位置に配置された、駆動電圧変化による偏光角変化に応じて通過光減衰可能な第2光学手段とを有することを特徴とする調光装置。
【請求項6】
前記第1光学手段は、位相差1/4波長を有する広帯域波長板であり、前記第2光学手段は、前記撮像素子の前面に位置する液晶光学手段であることを特徴とする請求項5に記載の調光装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の調光装置と、絞りとを有することを特徴とするレンズ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレンズ装置を有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−145889(P2008−145889A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335065(P2006−335065)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】