説明

調剤システム

【課題】患者が保険薬局に調剤を依頼する際に、処方された薬剤や薬価、更には保険薬局などの情報を容易に入手し、更には医師や薬剤師に相談した後に調剤を保険薬局から離れた場所から依頼することにより患者の意志に従って処方薬剤を迅速に入手可能とする。
【解決手段】それぞれ互いに情報を送受信可能な通信手段を有する病院又は診療所などの医療機関1に配置される医療機関コンピュータ11と、患者2が携帯する患者端末21と、保険薬局3配置される保険薬局コンピュータ31とから構成され、患者2が医療機関1において診察し、処方せんが作成されると、処方せんが患者2に渡される。同時に処方せん情報が医療機関1の医療機関コンピュータ11から携帯電話などの患者端末21に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や診療所などの医療機関により発行される処方せんに基づいて保険薬局で調剤した薬剤を患者が受け取る調剤システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、院外処方による調剤薬剤の患者への引き渡しは、病院や診療所などにおいて、医師が患者を診察して処方せんを作成し、これが医療機関などの事務部門を通じて患者に渡され、患者が保険薬局へ処方せんを持参し、保険薬局においてレセプトコンピュータにより薬価計算と各種の薬剤情報を処理して薬剤師が調剤した薬剤を患者に渡し、料金を精算するものである。
【0003】
ところで、前記従来の調剤システムでは、患者は保険薬局に処方せんを提出しなければ調剤薬剤の種類、薬価などの情報を得ることができず、また、保険薬局は指定されておらず患者が任意に選択可能であるにも拘わらず、実質的には一端保険薬局に依頼すると他の保険薬局へ変更することができないのが現状である。
【0004】
また、患者は保険薬局へ出向くまでは薬剤について疑問などがあっても薬剤師や医師に相談することができず、新規な保険薬局に依頼するときには身体状況や薬剤に対する体質、アレルギー、併用薬、服用している薬剤などの患者情報をその都度申告することになり、きわめて煩わしい。特に、保険薬局では患者が来局してから処方せんの内容を確認して調剤することから患者は調剤や精算処理が終わるまで待たなければならず無駄な時間を費やすことになる。尚、現在、予め処方せんを保険薬局にファックスしておき無駄な待ち時間をなくすという手段がとられているが、患者は保険薬局を場所や住所により確認して近くにあるという場所的な条件により保険薬局を選択することになり何ら解決策となっていない。殊に、処方に対する薬剤の在庫がない場合などには他の保険薬局に出向かなければならないなどの事態が生じる。
【0005】
一方、保険薬局側では、患者が持参した処方せんを見てから患者に薬剤の種類や形態などを選択させて薬剤の調剤、薬価の計算などを行うことになり、作業効率が悪い。特に、調剤には患者の患者情報や薬価に従って薬剤を選択したりすることも多く患者を待たせることになるばかりか保険薬局側にとっても時間を費やすことになる。
【0006】
更に、医師は保険薬局へ伝える薬剤に関する情報として処方せんがあるだけであり、患者が保険薬局を選択しないと例えば検査結果などの薬剤に関する情報を医師側から保険薬局へ伝える手段がない。
【0007】
そこで、近頃、普及している携帯電話などの携帯端末を用いて迅速化を図った調剤システムが、特開2004−178265号公報(特許文献1)、特開2005−137443号公報(特許文献2)、特開2008−4060号公報(特許文献3)、特開2008−65590号公報(特許文献4)等に提示されている。
【0008】
ところが、前記特許文献1に記載されている発明は、携帯電話を用いて薬剤情報の問い合わせを可能にしたものであり調剤システム自体を改善するものでない。また、前記特許文献2に記載されている発明は、処方せんに記載されている情報を携帯電話で画像として或いは文書としてメールするものであり、単に印刷してある処方せんをそのまま電子化して通信するものであり、従来のファックスによる処方せんの電送と何ら変わりがない。更に、前記特許文献3に記載されている発明は患者が受付時間や受付番号に基づいて携帯電話を用いて待ち受け時間がきたことを通知してもらうものであり、調剤行為自体の改善を図るものではない。
【特許文献1】特開2004−178265号公報
【特許文献2】特開2005−137443号公報
【特許文献3】特開2008−4060号公報
【特許文献4】特開2008−65590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、患者が保険薬局に調剤を依頼する際に、処方された薬剤や薬価、更には保険薬局などの情報を容易に入手し、更には医師や薬剤師に相談した後に調剤を保険薬局から離れた場所から依頼することにより患者の意志に従って処方薬剤を迅速に入手することができるばかりか、保険薬局では、患者から調剤依頼とともに値処方する薬剤や薬価などの情報が送信されるので依頼後に、直ちに調剤に着手することができるなどの諸効果を発揮することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明は、それぞれ互いに情報を送受信可能な通信手段を有する病院又は診療所などの医療機関に配置される医療機関コンピュータと、患者が携帯する患者端末と、保険薬局に配置される保険薬局コンピュータとからなる調剤システムであって、
前記患者端末は記憶手段にレセプト用のデータとプログラムとからなるレセプト用ソフトウェアを有しており、前記医療機関コンピュータから送信される処方せん情報と記憶手段に予め記憶してある患者の保険情報とに基づいて、薬剤の用法、薬剤の用量、薬剤の服用日数、薬剤の名称、薬剤の種類、薬剤の包装、各種加算情報、薬価計算などのレセプト処理をし、これらのレセプト情報を保険薬局に送信することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、患者は医療機関から患者端末に送信される処方せん情報を患者端末の記憶手段に予め記憶してあるレセプト用ソフトウェアと患者の保険情報に基づいてレセプト処理をしてレセプト情報を確認する。このとき、患者端末において薬剤の用法、薬剤の用量、薬剤の服用日数、薬剤の名称、薬剤の種類、薬剤の包装、各種加算情報、薬価計算などを確認しながらレセプト処理をし、このようにして選択したレセプト情報を保険薬局の保険薬局コンピュータに送信することにより保険薬局では患者から送信されたレセプト情報に基づいて調剤に着手する。同時に、保険薬局コンピュータから患者端末に処方を受注したことならびに受渡に関する情報を患者端末に送信することにより患者は指定の時刻に、或いは指定の手段により調剤薬剤を受け取ることができる。
【0012】
尚、現在の医療に関する法律では例えば無線ランなどによる処方せんの電子データによる持ち出しは患者情報保護の観点から禁じられているが、セキュリティ手段を確立すれば解除されるものであり、また、例えば特開2003−186999号公報に提示されているように処方せんに情報をバーコード印刷や二次元コード印刷することにより電子データとして患者端末に取り込むこともできる。
【0013】
また、本発明において、前記患者端末に保険薬局に関する薬局情報が記憶されているか或いは通信により取得可能である場合には、患者は薬局の営業方針や薬剤の在庫などの保険薬局に関する情報を吟味して保険薬局を選択することができ、特に、患者端末にGPSが搭載されている場合には患者端末により保険薬局の位置情報が確認できるので地理的な要因を保険薬局を選択枝として加えることができる。
【0014】
さらに、前記患者端末の記憶装置に薬剤情報ならびにこの薬剤情報と前記処方せんにおける薬剤とを照合するプログラムが記憶されており、処方せんに含まれる薬剤同士或いは前記患者情報と対比して副作用、相互作用、アレルギー、併用薬などを検索、表示する場合には、患者において薬剤の不適合が確認できるので責任を持って医師や薬剤師に連絡することができる。
【0015】
さらにまた、本発明において、前記医療機関コンピュータから送信される処方せん情報に患者端末において確認可能な情報と患者端末では変換できないが、保険薬局において変換可能な処理をした情報を含む場合には、患者には開示し難い例えば検査の結果、病状などの情報を患者を通過させて薬剤師へ送信することができる。同様に薬剤師から医師へ送信することもできる。
【0016】
加えて、患者端末が前記保険薬局への電子式の支払い手段を有している場合には調剤の依頼時や受け取り時に現金の授受を解することなく清算ができる。また、前記患者端末の記憶装置に記憶してあるレセプトデータならびに薬剤情報が通信機能を介して更新可能であり、常に最新の情報を準備しておくことができる。尚、前記保険薬局コンピュータがレセプトコンピュータであって前記患者端末から送信されるレセプト情報を対照可能とした場合には患者から送信されるレセプト情報を追認することが可能であり、安全面でも担保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を以下に説明する。
【0018】
図面は本発明の好ましい実施の形態を示すものであり、本調剤システムは、図1に示すように、それぞれ互いに情報を送受信可能な通信手段を有する病院又は診療所などの医療機関1に配置される医療機関コンピュータ11と、患者2が携帯する患者端末21と、保険薬局3配置される保険薬局コンピュータ31とから構成される。
【0019】
そして、患者2が医療機関1において診察し、処方せんが作成されると、処方せんが患者2に渡される。同時に処方せん情報が医療機関1の医療機関コンピュータ11から携帯電話などの患者端末21に送信される。尚、医療関係の法律により電子データによる医療機関1からの送信ができない場合には、従来周知の処方せんに印刷した2次元コードなどを介して入出力装置213から処方せん情報を患者端末21に入力する。
【0020】
処方せん情報が入力される患者端末21は、図2に示すように、従来の携帯端末と同様に、送受信装置211、制御装置212、入出力装置213、記憶装置214、表示装置215などを有しており、特に前記記憶装置214にはレセプト用のデータとプログラムとからなるレセプト用ソフトウェア214a、患者の保険情報や医療並びに薬剤情報などを含む患者情報214b、各種の薬剤情報214c、薬局情報214dなどが記憶されている。
【0021】
従って、患者2は患者端末21に搭載されているレセプト用ソフトウェア214aにより入力された処方せん情報を基にして薬剤の用法、薬剤の用量、薬剤の服用日数、薬剤の名称、薬剤の種類、薬剤の包装、各種加算情報、薬価計算などを確認しながらレセプト処理をし、その結果を液晶画面である表示装置215に表示して、調剤薬剤の種類の選択、ジェネリックを含めた薬価などを確認し、患者2自身が調剤薬剤を選択してその情報を送受信装置211により保険薬局3の保険薬局コンピュータに送信する。
送信されるレセプト情報は、患者端末21に搭載されているレセプト用ソフトウェア214aは従来から保険薬局3において使用されているものと同様のものとすることにより、保険薬局3の保険薬局コンピュータに送信することによりそのまま調剤、清算、薬剤情報の提供など従来の薬局業務を行えるものである。図3に表示装置215に表示されるレセプト画面の一部を示す。尚、患者端末21の記憶装置214に記憶してあるレセプトソフトウェア214aのレセプトデータならびに薬剤情報214cは送受信装置211を介して更新可能である。
【0022】
また、本実施の形態では、患者端末21の記憶装置214に薬剤情報214dならびにこの薬剤情報214dと前記処方せんにおける処方薬剤とを照合するプログラムが記憶されており、処方せんに含まれる薬剤同士或いは前記患者情報と対比して副作用、相互作用、アレルギー、併用薬などを検索して表示装置215に表示するものであり、患者において直接、薬剤の不適合が確認できる。
【0023】
また、前記問題点が確認されたならば患者2は、送受信装置211を介して医療機関コンピュータ或いは保険薬局コンピュータ31に接続して医師や薬剤師に相談することができ、必要であれば処方せんの再発行などを依頼する。
【0024】
更に、本実施の形態では、患者端末21に保険薬局に関する薬局情報214dが記憶されているか或いは送受信装置211を介してインターネットなどにより取得可能であるので、患者2は、薬局情報214dにより各種の情報を吟味して保険薬局3を選択する。このとき、本実施の形態では、患者端末21にGPS216が搭載されており、患者端末21により保険薬局3の位置情報が確認できるので、患者2は地理的な観点からもレセプト情報を送信する保険薬局3を選択することもできる。
【0025】
一方、患者端末21からレセプト情報を保険薬局コンピュータ31により受信した保険薬局3では、患者端末21から受信したレセプト情報および患者情報214bなどの情報を基に調剤作業に着手する。同時に、保険薬局コンピュータ31から患者端末21に処方を受注したことならびに受渡に関する情報を患者端末21に送信することにより患者2は指定の時刻に、或いは指定の手段により調剤薬剤を受け取ることができる。
【0026】
この際、保険薬局コンピュータ31がレセプトコンピュータである場合には、患者端末21から送信されるレセプト情報を対照することが可能であり、専門家である薬剤師が職責として調剤することになる。
【0027】
このように、患者2は従来の直接処方せんを患者が保険薬局3に持参したり、ファックスにより送信する従来の調剤システムと異なり、患者2が保険薬局3へ伝える処方せん情報は既にレセプト処理を行ったものであり、患者2が価格を含めて薬剤の種類を選択することができるばかりか、更に、薬剤の形態、薬袋、薬ケース、袋などの選択も事前に可能である。同時に問診やアンケートを含む患者情報なども予め記憶させておいたものを送信すればよく患者の負担も軽減される。
【0028】
また、前記医療機関1の医療機関コンピュータ11から患者端末21に送信される処方せん情報に、患者端末21において確認可能な情報だけでなく患者端末21では変換できないが、保険薬局3の保険薬局コンピュータ31において変換可能な処理をした情報を含ませることにより例えば検査結果などのような医師が薬剤師にだけ伝えたい情報を患者には伝えずに知らせることもできる。
【0029】
加えて、患者2は患者端末21が保険薬局3への電子式の支払い手段を有している場合(図示せず)には、保険薬局3への調剤依頼時に精算も済ませてしまうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明における実施の形態についての概略配置図。
【図2】本発明における患者端末のブロック図。
【図3】本発明における実施の形態についての患者端末の表示装置に表示されるレセプト画面の例。
【符号の説明】
【0031】
1 医療機関、2 患者、3 保険薬局、11 医療機関コンピュータ、21 患者コンピュータ、31 保険薬局コンピュータ、211 送受信装置、212 制御装置、215 表示装置、213 入出力装置、214 記憶装置、214a レセプトソフトウェア、214b 患者情報、214c 薬剤情報、214d 薬局情報、216 GPS


【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ互いに情報を送受信可能な通信手段を有する病院又は診療所などの医療機関に配置される医療機関コンピュータと、患者が携帯する患者端末と、保険薬局に配置される保険薬局コンピュータとからなる調剤システムであって、
前記患者端末は記憶手段にレセプト用のデータとプログラムとからなるレセプト用ソフトウェアを有しており、前記医療機関コンピュータから送信される処方せん情報と前記記憶手段に予め記憶してある患者情報とに基づいて、薬剤の用法、薬剤の用量、薬剤の服用日数、薬剤の名称、薬剤の種類、薬剤の包装、各種加算情報、薬価計算などのレセプト処理をし、これらのレセプト情報を保険薬局に送信することを特徴とする調剤システム。
【請求項2】
前記患者端末に保険薬局に関する薬局情報が記憶されているか或いは通信により取得可能であるとともに、選択した保険薬局に前記レセプトデータを送信可能である請求項1記載の調剤システム。
【請求項3】
前記患者端末にGPSが搭載されており、患者端末により保険薬局の位置情報が確認できる請求項1または2記載の調剤システム。
【請求項4】
前記患者端末の記憶装置に薬剤情報ならびにこの薬剤情報と前記処方せんにおける薬剤とを照合するプログラムが記憶されており、処方せんに含まれる薬剤同士或いは前記患者情報と対比して副作用、相互作用、アレルギー、併用薬などを検索、表示する請求項1,2または3記載の調剤システム。
【請求項5】
前記医療機関コンピュータから送信される処方せん情報に患者端末において確認可能な情報と患者端末では変換できないが、保険薬局において変換可能な処理をした情報を含む請求項1,2,3または4記載の調剤システム。
【請求項6】
前記患者端末が前記保険薬局への電子式の支払い手段を有している請求項1,2,3,4または5記載の調剤システム。
【請求項7】
前記患者端末の記憶装置に記憶してあるレセプトデータならびに薬剤情報が通信機能を介して更新可能である請求項1,2,3,4,5または6記載の調剤システム。
【請求項8】
前記保険薬局コンピュータがレセプトコンピュータであって前記患者端末から送信されるレセプト情報を対照可能としたである請求項1,2,3,4,5,6または7記載の調剤システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−9536(P2010−9536A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171426(P2008−171426)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(596079138)東日本メディコム株式会社 (19)
【Fターム(参考)】