説明

調圧弁

【課題】調圧弁内が異常高圧となることを回避することができる調圧弁を提供する。
【解決手段】調圧室20内のピストン5に設けられた螺合部であるメネジ部5aに螺合部材であるボルト12が螺合することによってピストン5の先端に装着された弁体11には、ボルト12に対応する貫通孔11aと、当該弁体11の調圧室20側からの弁座13への着座時に貫通孔11aと余液口18側とを連通する流路15が形成されているため、例えばボルト12が緩んでしまうという不具合により弁体11が弁座13から離座できない場合には、弁体11とピストン5との合わせ面の接合が調圧室20内の上昇した高圧の液圧によって外れ、調圧室20内の液体の一部をピストン5と弁体11との間、弁体11の貫通孔11a、弁体11の流路15を介して余液口18側へ排出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調圧弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力を調整する弁として、ポンプの吐出口に取り付けられ、ポンプから吐出される液体の圧力を調整する調圧弁が知られている。この調圧弁は、内部にて互いに連通する入口、調圧室、出口及び余液口が形成されたボディを備え、入口をポンプの吐出口に取り付けて液体を調圧室に流入させ、調圧室内に流入した液体の圧力が所定値よりも低い場合には調圧室内の液体を出口から吐出し、他方、調圧室内に流入した液体の圧力が所定値を超えた場合には、調圧室内の液体の一部を余液口から吐出する機能を有する。
【0003】
調圧弁の余液口は、所定の付勢力で付勢された弁体を用いて塞がれており、調圧室内の液圧が付勢力より大きい場合には、余液口が開とされる。これにより、調圧弁の出口から吐出される液体は、所定値以下の圧力となる(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】実案登録1963232号公報
【特許文献2】特開2003−185040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の調圧弁にあっては、何らかの不具合によって弁体が弁座に着座したままの状態となると、調圧室内が異常高圧となり弁体が破損する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、調圧弁内が異常高圧となることを回避することができる調圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る調圧弁(1)は、内部に調圧室(20)が形成されると共に、調圧室(20)内の液体の一部を排出するための余液口(18)を形成する弁座(13)を備えたボディ(9)と、弁座(13)に調圧室(20)側から着座すると共に弁座(13)に対して接離する方向に貫通する貫通孔(11a)を有する弁体(11)と、貫通孔(11a)に対応する位置に設けられ、弁体(11)を先端に装着するための螺合部(5a)を有するピストン(5)と、弁体(11)を弁座(13)に着座する方向に付勢する付勢手段(3)と、弁体(11)を弁座(13)に着座する方向に付勢する付勢手段(3)と、ピストン(5)の螺合部(5a)に螺合し、弁体(11)をピストン(5)との間に挟み込んで固定する螺合部材(12)と、を具備し、弁体(11)には、着座時に貫通孔(11a)と余液口(18)側とを連通する流路(15)が形成されることを特徴として構成される。
【0007】
このような構成の調圧弁(1)によれば、調圧室(20)内の液体が所定の液圧になった場合には、付勢力に抗して弁体(11)が離座し、調圧室(20)内の液体の一部が余液口(18)から排出され、調圧弁(1)からの液体の圧力を調整できると共に、調圧室(20)内の液体が所定の液圧になった場合で、例えば螺合部材(12)が緩んでしまうという不具合により弁体(11)が弁座(13)から離座できない場合には、弁体(11)とピストン(5)との合わせ面の接合が調圧室(20)内の上昇した高圧の液圧によって外れ、調圧室(20)内の液体の一部がピストン(5)と弁体(11)との間、弁体(11)の貫通孔(11a)、弁体(11)の流路(15)を介して余液口(18)側へ排出される。これにより、弁体(11)が着座していても調圧室(20)内が異常高圧になることを回避することができる。
【0008】
また、弁体(11)を装着するピストン(5)は、凹形状を有し、ピストン(5)に装着される弁体(11)は、凹形状に進入する凸形状を有する構成とされていることが好適である。
【0009】
このように構成することで、弁体(11)をピストン(5)に対して精度良く容易に位置決めできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、調圧弁内が異常高圧となることを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において、「上」、「下」等の語は、図面に示す状態に基づいており、便宜的なものである。また、図中の寸法比率は必ずしも説明中のものとは一致していない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る調圧弁を示す縦断面図、図2は、図1中の弁体を示す右側面図、図3は、図2に示す弁体のIII-III線の縦断面図である。
【0013】
図1に示す調圧弁1は、液体を吐出するポンプの吐出側(不図示)に取り付けられ、ポンプから吐出される液体の圧力を調節する場合に好適に採用されるものである。調圧弁1は、側部に取付口16と当該取付口16の反対側に吐出口17とが形成され、これら取付口16と吐出口17との間の下部に余液口18が形成されたボディ9を備えている。取付口16、吐出口17及び余液口18は、ボディ9内部に形成された調圧室20を介して互いに連通しており、例えば、取付口16はポンプの吐出口に、吐出口17はノズルに、また余液口18はポンプが接続されるタンクに、それぞれ配管やホース等を介して接続される。
【0014】
調圧室20の余液口18側には、貫通孔を有する弁座13が、調圧室20側から挿入され、弁座13の外周面の環状溝に装着されたOリング14が調圧室20の内面に圧接することで液密に装着されると共に、弁座13の貫通孔の内面が、下方に続く余液口18のその一部を形成する構成とされている。
【0015】
弁座13に対しては、弁体11が調圧室20側から着座するように構成されている。この弁体11は、円柱体形状の先端を円錐台形状としたもので、当該円錐台形状の部分が弁座13に着座する。弁体11は、調圧室20内を上下方向に延びるピストン5のその先端にボルト(螺合部材)12によって装着され、ピストン5と一体となって動作する。なお、弁体11とピストン5との連結については後述する。
【0016】
ボディ9におけるピストン5の後端側(図示上側)には、調圧室20に連通し上下方向に延びる貫通孔9aが形成され、その貫通孔9aの内面に、筒状のピストンガイド7が挿嵌されている。ピストンガイド7は、弁座13側の端部が小径部とされ、その小径部の弁座13側の端面に装着されたOリング8が貫通孔9aの内面に圧接することで液密に装着されると共に、ピストンガイド7より上側に配置されたバネ筒2が貫通孔9aの上部に形成されたメネジ部に螺合し押圧されることで軸線方向に固定されている。
【0017】
そして、ピストン5は、ピストンガイド7に挿通され、ピストン5の外周面の環状溝に装着されたOリング6がピストンガイド7の内面に圧接することで液密に摺接すると共に、軸線方向に摺動可能に案内される。
【0018】
ピストン5の後端は、バネ受け4と連結しており、バネ受け4は、バネ筒2の内部に圧縮された状態で積層された複数の皿バネ(付勢手段)3によって軸線方向に付勢されている。これにより、ピストン5の先端に装着された弁体11は、皿バネ3によって弁座13へ着座する方向に付勢され、余液口18を閉とする。なお、付勢手段は皿バネに限定されるものではなく、例えば圧縮コイルバネを用いても良い。
【0019】
また、バネ筒2の上部には、調圧ネジ21が螺合されており、調圧ネジ21の締め込み位置を調節することで、調圧ネジ21とバネ受け4との間に配置された複数の皿バネ3の初期荷重を調節し、ボディ9からの吐出圧を所望の値に設定することができる。
【0020】
次に、弁体11とピストン5との連結構成について述べる。
【0021】
図3に示すように、弁体11の中央には、弁座13に対して接離する方向に貫通する貫通孔11aが形成されている。また、ピストン5には、弁体11の貫通孔11aに対応する位置にメネジ部(螺合部)5aが先端面から形成されている。そして、ボルト12が、弁体11の貫通孔11aを挿通すると共に、ピストン5のメネジ部5aに螺合することで、弁体11がピストン5との間に挟み込まれて固定される構成とされている。
【0022】
そして、弁体11を装着するピストン5は、その先端側が凹形状とされ、弁体11の後端部を構成している凸形状がピストン5の凹形状に進入し嵌合した状態でボルト止めされている。この弁体11は、弁体11の凸形状後端の外周面に装着されたOリング10がピストン5に圧接することでピストン5に液密に装着される。
【0023】
また、特に本実施形態では、弁体11の貫通孔11aの下端に連通され、側方に向かい外方に開放される流路15が形成されている(図2参照)。この流路15は、図3に示すように、弁体11が着座したときに貫通孔11aと余液口18側とを連通する。
【0024】
なお、弁座13には、弁体11が離座着座をすることによる磨耗を防止するための弁シート19が形成されている。
【0025】
次に、本実施形態に係る調圧弁1の作用効果について説明する。図4は、本実施形態に係る調圧弁1の作用効果を説明する概要図である。
【0026】
調圧弁1においては、図1に示すように、皿バネ3によりピストン5が弁座13側に付勢されているため、取付口16に接続されるポンプが停止状態にある場合には、液体はタンクから調圧弁1に供給されず、弁体11は弁座13に着座した状態となっている。
【0027】
この状態からポンプを起動して液体をタンクから調圧弁1に供給すると、液体はボディ9の取付口16から調圧室20に流入する。この際、ボディ9内の液体は、液圧によってピストン5及び弁体11を押圧し、ピストン5を弁座13から離座させる方向に力を加えるが、調圧室20内の液圧が調圧ネジ21により調整、設定された所定値よりも低い場合には、ピストン5は上昇せず、ピストン5に装着された弁体11は弁座13にそのまま着座した状態を維持し、液体は調圧室20を通ってボディ9の吐出口17からのみ吐出される。
【0028】
一方、ポンプからの液体の圧力が上昇し、調圧室20内の液圧が所定値を超え、ピストン5を弁座13側へ付勢する皿バネ3の付勢力を上回ると、調圧室20内の液体は、ピストン5を弁座13から離座させる方向に移動させる。これによって、弁体11が弁座13から離座し、調圧室20内の液体の一部が弁体11と弁座13との隙間から余液口18側に余液として流出する。流出した液体は、所定の配管等を介してタンクに戻される。
【0029】
この余液の流出により調圧室20内の液圧は低下し、所定値以下に戻る。従って、皿バネ3の付勢力によって、ピストン5と共に弁体11が下降して弁座13に着座し、余液口18側からの液体の流出は停止され、再び液体はボディ9の吐出口17からのみ吐出されるようになる。このようにして、調圧弁1の吐出圧、すなわちボディ9の吐出口17から吐出される液体の圧力は一定に維持され、ノズルからの液体の出力は安定したものとなる。
【0030】
ここで、弁体11をピストン5に固定するボルト12が緩んだ状態で、吐出口17を閉止(全余水状態)すると、弁体11には弁座13に着座する方向に液圧が作用する一方で、ピストン5には弁座13から離座する方向(上方)へ液圧が作用し、図4に示すように、ピストン5の凹形状の面と弁体11の凸形状の面との間の接合が外れ、これらの間に、弁体11の貫通孔11aと連通する隙間が形成される。調圧室20内の液体は、ピストン5の凹形状の面と弁体11の凸形状の面との間に形成された隙間を通り、貫通孔11a、流路15を通過して余液口18側へ流出する。よって、弁体11が着座していても調圧室20内が異常高圧になることを回避することができる。ちなみに、流路15が形成されていない場合には、調圧室20内の液体は上記隙間を通り、貫通孔11aで行き止まって調圧室20内は異常高圧のままとなる。
【0031】
このように、弁体11の貫通孔11aは余液口18側に流路15によって連通されており、弁体11の内部に圧力が蓄積されないため、弁体11が破損することを回避することができる。
【0032】
また、弁体11を装着するピストン5は、凹形状を有し、ピストン5に装着される弁体11は、凹形状に進入する凸形状を有する構成とされているため、弁体11をピストン5に対して精度良く容易に位置決めできる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について具体的に説明したが、上記実施形態は本発明に係る調圧弁の一例を示すものであり、本発明に係る調圧弁は、上記実施形態に係る調圧弁に限られるものではない。
【0034】
例えば、上記実施形態では、ピストン5が有する螺合部5aをメネジ部とし、このメネジ部に螺合し弁体11をピストン5との間に挟み込んで固定する螺合部材12をボルトとしているが、ピストン5の先端に突部を設け、当該突部の外周面に螺合部5aとしてオネジ部を設け、このオネジ部に螺合し弁体11をピストン5との間に挟み込んで固定する螺合部材12をナットとしても良く、このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、上記実施形態では、ピストン5の螺合部5a、弁体11の貫通孔11a、螺合部材12を1組として弁体11をピストン5に装着しているが、複数組の採用も可能である。
【0036】
また、上記実施形態では、ポンプに適用する場合を説明したが、本発明の調圧弁は液圧が一定となるように調節することを要する種々の機器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る調圧弁を示す縦断面図である。
【図2】図1中の弁体を示す右側面図である。
【図3】図2に示す弁体のIII-III線の縦断面図である。
【図4】図1の調圧弁の作用効果を説明する概要図である。
【符号の説明】
【0038】
1…調圧弁、3…皿バネ(付勢手段)、5…ピストン、5a…メネジ部(螺合部)、9…ボディ、11…弁体、11a…貫通孔、12…ボルト(螺合部材)、13…弁座、15…流路、18…余液口、20…調圧室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に調圧室(20)が形成されると共に、前記調圧室(20)内の液体の一部を排出するための余液口(18)を形成する弁座(13)を備えたボディ(9)と、
前記弁座(13)に前記調圧室(20)側から着座すると共に前記弁座(13)に対して接離する方向に貫通する貫通孔(11a)を有する弁体(11)と、
前記貫通孔(11a)に対応する位置に設けられ、前記弁体(11)を先端に装着するための螺合部(5a)を有するピストン(5)と、
前記弁体(11)を前記弁座(13)に着座する方向に付勢する付勢手段(3)と、
前記ピストン(5)の螺合部(5a)に螺合し、前記弁体(11)を前記ピストン(5)との間に挟み込んで固定する螺合部材(12)と、
を具備し、
前記弁体(11)には、着座時に前記貫通孔(11a)と前記余液口(18)側とを連通する流路(15)が形成されること、
を特徴とする調圧弁(1)。
【請求項2】
前記弁体(11)を装着する前記ピストン(5)は、凹形状を有し、前記ピストン(5)に装着される前記弁体(11)は、前記凹形状に進入する凸形状を有する構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の調圧弁(1)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−8183(P2009−8183A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170675(P2007−170675)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】