説明

調査すべき試料に含まれる配位子の濃度を測定する方法及び装置

【課題】広い濃度領域にわたって高い精度で配位子の濃度の測定を可能にする。
【解決手段】調査すべき試料内に含まれる配位子の濃度を測定する方法において、少なくとも1つの支持体の表面に配置された複数のテスト箇所7にそれぞれ少なくとも1つのレセプタ8が固定されており、そのレセプタは、配位子と接触した場合にこの配位子に固有に結合するのに適している。試料は、予め定められた期間の間テスト箇所7と次のように、即ち、試料内でレセプタ8に異なる大きさの拡散体積が隣接し、その拡散体積から少なくとも1つの配位子が予め定められた期間の間それぞれ該当するレセプタ8へ拡散することができるように、接触される。予め定められた期間の経過後に、各テスト箇所7について、それぞれテスト箇所7における結合事象の数又は密度のための測定信号が検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調査すべき試料に含まれる少なくとも1つの配位子の濃度を測定する方法に関するものであって、その場合に少なくとも1つの支持体の表面に配置された少なくとも2つのテスト箇所に、それぞれ少なくとも1つのレセプタが不動に固定され、そのレセプタは配位子と接触した場合にこの配位子に固有に結合するのに適している。更に、本発明は、調査すべき試料内に含まれる少なくとも1つの配位子の濃度を測定する装置に関するものであって、試料のための少なくとも1つの流入開口部を備えた測定チャンバを有し、その測定チャンバが画成壁を備えたインナーキャビティを有しており、その場合に少なくとも1つの画成壁に少なくとも2つのテスト箇所が配置されており、そのテスト箇所のそれぞれに少なくとも1つのレセプタが不動に固定されており、そのレセプタは配位子と接触した場合にこの配位子に固有に結合するのに適しており、かつ個々のテスト箇所における結合事象の数又は密度のための測定信号を検出する少なくとも1つのセンサを有している。更に本発明は、調査すべき試料内に含まれる少なくとも1つの配位子の濃度を測定する装置に関するものであって、試料のための少なくとも1つの流入開口部を備えた測定チャンバを有し、その測定チャンバが画成壁を備えたインナーキャビティを有しており、その場合に少なくとも1つの画成壁に少なくとも1つのテスト箇所が配置されており、そのテスト箇所に少なくとも1つのレセプタが不動に固定されており、そのレセプタは配位子と接触した場合にこの配位子に固有に結合するのに適しており、かつテスト箇所における結合事象の数又は密度のための測定信号を検出する少なくとも1つのセンサを有している。
【背景技術】
【0002】
この種の方法及びこの種の装置は、従来技術(例えば、特許文献1を参照)から知られている。装置は、調査すべき試料のための流入開口部と排出開口部とを有するインナーキャビティを備えた、フローセルとして形成された測定チャンバを有している。インナーキャビティは、画成壁によって、即ち平坦な底部分、それに対して平行に隔てられた天井部分及び側方の画成壁によって画成されており、その画成壁に流入開口部と排出開口部が設けられている。底部分はその、インナーキャビティに隣接する表面に光学的な導波管層を有しており、その上に互いに対して側方に隔たった複数のテスト箇所が配置されており、そのテスト箇所においてレセプタが導波管のエバネッセンスフィールド内に不動に固定されている。試料内に含まれる配位子のレセプタへの結合に従って蛍光放射の放出を刺激するために、導波管内へ、放射源を用いて発生された光学的な放射が結合される。各テスト箇所において、レセプタの下にそれぞれ、蛍光放射に敏感な放射受信器が設けられている。装置は、その簡単かつ安価な構造により良いとされているが、それでも欠点を有している。即ち、特に個々のテスト箇所において複数の異なる配位子について同時に濃度を測定しようとする場合に、配位子の濃度の測定が予め定められた測定領域に限定される。少なくとも1つの配位子の濃度が、測定領域の外部にある場合には、該当するテスト箇所のための測定値が制限されることが起こり得る。
【特許文献1】ドイツ特許公報DE10245435B4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、広い濃度領域にわたって高い精度で配位子の濃度の測定を可能にする、冒頭で上げた種類の方法及び装置を提供するという、課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、冒頭で挙げた種類の方法に関しては、試料が予め定められた期間の間テスト箇所と次のように、即ち試料内でテスト箇所に固定されたレセプタに異なる大きさの拡散体積が隣接し、拡散体積内に配位子が含まれている場合に、その拡散体積から少なくとも1つの配位子が予め定められた期間の間それぞれ該当するレセプタへ拡散することができるように、接触され、かつ予め定められた期間の経過後に各テスト箇所について、テスト箇所における結合事象の数又は密度のための測定信号が検出されることによって、解決される。
【発明の効果】
【0005】
好ましくは、個々のテスト箇所について測定する場合に、異なる大きさ、ないし異なる寸法を有する拡散空間によって、異なる校正カーブ又は特性曲線(所定の配位子濃度のための露出期間の関数としての測定信号)が得られる。実験の開始時に、個々のテスト箇所における配位子濃度がそれぞれ等しく、従って配位子が試料内に均一に分配されている場合に、大きい拡散体積に隣接するテスト箇所の測定信号は、より小さい拡散体積に隣接するテスト箇所の測定信号よりも、急速に限界に達する。というのは、より大きい拡散体積からは、より小さい拡散体積の場合よりも、単位時間当たり多くの配位子が該当するテスト箇所のレセプタへ拡散するからである。それによって、広い濃度領域にわたってそれぞれ少なくとも1つの測定信号が好ましい出力領域内にあることが、可能になる。少なくとも1つのレセプタは、核酸又はその誘導体(DNA、RNA、PNA、LNA、オリゴヌクレオチド、プラスミド、染色体)、ペプチド、プロテイン(エンザイム、プロテイン、オリゴペプチド、細胞状のレセプタプロテイン及びその錯体、ペプチドホルモン、抗体及びその砕片)、炭水化物及びその誘導体、特にグリコシル化されたプロテイン及びグリコシド、脂肪、脂肪酸及び/又は脂質を含むことができる。
【0006】
本発明の好ましい実施形態において、測定値がそれぞれ予め定められた基準値又は基準範囲と比較されて、基準値又は基準値範囲に対して最小の間隔を有し、或いはそれと一致する測定信号を用いて、試料内の配位子の濃度が定められる。個々の測定信号を基準値又は基準範囲と比較することによって、測定期間ないし露出期間の経過後に好ましい出力領域内にある、従って配位子濃度の正確な決定を可能にする、測定信号を選択することができる。その場合に特に、測定期間ないし露出期間の経過後に基準範囲内にある複数の測定信号を用いて、例えば平均値を形成することによって、濃度を求めることが可能である。
【0007】
基準値が、テスト箇所において測定された測定信号の25%と75%の間、特に40%と60%の間にある場合、テスト箇所の実質的にすべてのレセプタが配位子に結合されている場合、及び基準値が好ましくは、配位子濃度のための様々な値にそれぞれテスト箇所のための測定値を対応づける、S字状の校正カーブの転換点に相当する場合が、効果的である。本方法は、特に測定の際に様々な拡散空間を有する多数のテスト箇所のための測定値が検出される場合に、更に正確な濃度測定を可能にする。
【0008】
本方法の好ましい形態において、様々な大きさの拡散体積が、テスト箇所に対して間隔をもって試料に隣接する、少なくとも1つの画成壁によって形成される。その場合に拡散体積は、測定チャンバの幾何学配置によって予め定められ、従って容易に再現可能である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、様々な大きさの拡散体積は、試料が様々な充填高さで個々のテスト箇所に配置されることによって、形成される。これは例えば、テスト箇所が槽又は測定チャンバの底に設けられており、かつ底が水平平面に対して斜めに配置されており、或いはステップ状に形成されているので、試料の充填高さが底の端縁領域から始まって底の、直径方向に対向する端縁領域へ、例えばくさび状又はステップ状に増大し、或いは減少することによって、達成することができる。
【0010】
冒頭で上げた種類の装置に関して、上述した課題は、個々のテスト箇所においてテスト箇所と、それぞれテスト箇所の延びる平面上の法線の方向においてこのテスト箇所に対向する、測定チャンバの壁領域との間の間隔が異なる大きさであることによって、解決される。
【0011】
測定チャンバが試料で充填されている場合に、個々のテスト箇所において試料内に異なる大きさの拡散体積が生じ、その拡散体積から予め定められた測定期間の間に配位子が、テスト箇所にあるレセプタへ拡散して、それに固有に結合することができる。従って測定期間の終了後に個々のテスト箇所において測定信号が異なるように出力される。それによって、広い濃度領域にわたってそれぞれ少なくとも1つの測定信号が、配位子の濃度を大きい精度で定めることができる、好ましい出力領域内にあることが、可能になる。
【0012】
少なくとも1つのセンサが評価装置と接続されている場合、評価装置がテスト箇所の測定信号のための少なくとも1つの基準値又は基準範囲を準備するための基準値発生器を有している場合、評価装置が個々のテスト箇所の測定信号を基準値又は基準値範囲と比較するための少なくとも1つの比較装置を有している場合、及び比較装置が、基準値又は基準値範囲に対して最小の間隔を有し、或いはそれと一致する測定信号が切替え装置の測定信号出力に出力可能であるように、切替え装置と接続されている場合が、効果的である。その場合に評価装置を用いて、基準値又は基準値範囲との比較によって、それぞれの配位子濃度の測定のために効果的に出力された測定信号を選択して、測定信号出力へ出力することができる。その場合に、この測定信号と、該当するテスト箇所に対応づけられた特性量、例えば校正カーブを用いて、試料内の配位子の濃度を大きな精度で定めることができる。評価装置は、好ましくはマイクロコンピュータを有している。測定信号出力は、マイクロコンピュータ内に、好ましくはシリアル又はパラレルのデジタル信号用の出力の形式で、配置することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態においては、少なくとも2つのテスト箇所において、該当するテスト箇所と、それぞれテスト箇所の広がり平面上の法線の方向においてこのテスト箇所に対向する壁領域との間の間隔が、調節可能である。その場合に、壁領域を然るべく移動させることによって、測定チャンバ内にある液体を移動させて、特に所定の方向へ移送することができる。
【0014】
冒頭で上げた種類の装置に関して、上述した課題は、少なくとも1つの画成壁が少なくとも1つの他の画成壁に対して、拡散体積が変化するように、変位可能であって、インナーキャビティが試料で充填されている場合にその拡散体積から少なくとも1つの配位子が予め定められた測定期間の間レセプタへ拡散することができ、様々な拡散体積において測定信号を検出する手段が設けられており、評価装置が少なくとも1つのテスト箇所の測定信号のための少なくとも1つの基準値又は基準範囲を準備する基準値発生器を有しており、評価装置が個々の拡散体積において検出された測定信号を基準値又は基準値範囲と比較するための、少なくとも1つの比較装置を有しており、かつ比較装置が切替え装置と次のように、即ち基準値又は基準値範囲に対して最小の間隔を有し、或いはそれと一致する測定信号が切替え装置の測定信号出力に出力可能であるように、接続されていることによっても、解決される。
【0015】
従って個々の測定信号は、時間的に次々と測定することもでき、その場合にテスト箇所において様々な大きさの拡散体積を形成するために、個々の測定において画成壁がたがいに対して異なる間隔で位置決めされる。このようにして得られた測定信号は、その後一時的に記憶されて、その後評価装置を用いて、効果的に出力された測定信号が選択される。その後、この測定信号と、測定信号が記録された拡散体積のための特性量を用いて、試料内の配位子の濃度が定められる。
【0016】
配位子の濃度の特に正確な測定は、基準値が、配位子濃度のための様々な測定値にそれぞれテスト箇所のための測定値を対応づける、S字状の校正カーブの転換点に相当することによって、可能になる。
【0017】
少なくとも1つのテスト箇所が第1のチャンバ壁に、このテスト箇所に対向する壁領域が第2のチャンバ壁に配置されている場合、及びこれらの壁が互いに対してある角度で傾斜している場合が、効果的である。その場合には、特に、チャンバ壁が互いに対して横方向に延びる方向において互いに対して傾斜していることが、可能である。その場合に装置は、多数の異なる拡散体積で安価に形成することができる。
【0018】
傾斜角度は、少なくとも2.5°、特に少なくとも5°、好ましくは少なくとも10°である。その場合に傾斜角度というのは、互いに対向する、好ましくは平坦なチャンバ壁の主要広がり平面が、互いに対して傾いている角度である。テスト箇所は、好ましくは、互いに対して傾斜した2つのチャンバ壁の少なくとも1つに配置されている。
【0019】
本発明の他の好ましい形態において、少なくとも2つの壁領域の間に、ステップ又は段部が形成されており、その場合にこれらの壁領域の各々にそれぞれ少なくとも1つのテスト箇所が対応づけられている。この種の段付きの内壁を有する測定チャンバは、半導体製造技術の方法によって高い精度で安価にシリーズ形成することができる。
【0020】
場合によっては、特に、第1のチャンバ壁及び/又はこれに対向する第2のチャンバ壁が、互いに対して横方向に延びる方向にそれぞれ複数の並べて配置された壁領域を有しており、それらの間にステップ又は段部が形成されている。その場合に装置は、コンパクトな寸法において、様々な拡散体積に隣接する、多数のテスト箇所を可能にする。
【0021】
測定チャンバのコンパクトな寸法は、間にステップ又は段部を有する壁領域が、多角形として形成されており、好ましくは碁盤の目状又は蜂の巣状に配置されていることによっても、可能である。その場合に測定チャンバは、半導体製造の標準プロセスによって安価に形成される。
【0022】
少なくとも1つの第1のテスト箇所が、それが広がる平面上の法線の方向において、対向する壁領域に対して第1の間隔を有し、少なくとも1つの第2のテスト箇所が、それが広がる平面上の法線の方向において、対向する壁領域に対して第2の間隔を有している場合、及び第1の間隔が第2の間隔の少なくとも1.5倍、特に少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍である場合が、効果的である。この寸法によって、装置の高い測定動特性が可能になる。
【0023】
好ましくは個々のテスト箇所において、測定チャンバの壁内に配位子−レセプタ−複合体を検出するための、それぞれ少なくとも1つのセンサが配置されており、その場合に少なくとも1つのレセプタがセンサ上に固定されている。その場合に配位子−レセプタ−複合体は、直接現場で、従ってそれに応じた高い証明感度で検出することができる。
【0024】
少なくとも1つのセンサは、イオン選択的な電界効果トランジスタであることができる。その場合に装置は、安価に形成することができる。
【0025】
本発明の好ましい形態において、少なくとも1つのセンサは光学的な放射受信器であって、それが、レセプタへの配位子の結合に従って刺激可能な蛍光放射に感度を有している。蛍光放射は、放射源を用いて発生させることができる刺激放射によって刺激することができる。放射源は、半導体デバイスとして形成することができ、それが測定チャンバの壁に内蔵される。しかし、蛍光放射は、化学的に刺激することもできる。それによって放射源を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
図1に全体を符号1で示す、調査すべき試料内に含まれる、配位子種類の異なる少なくとも1つの配位子2の濃度を測定する装置は、流入開口部4と排出開口部5にいたるまで閉鎖されたインナーキャビティ6を備えた測定チャンバ3を有している。インナーキャビティ6は、上、下及び側方で画成壁によって画成されている。
【0028】
測定チャンバ3の底を形成する画成壁に、互いに隔たった複数のテスト箇所7が設けられており、それらテスト箇所は互いに列と行に並べてマトリクス状に配置されている。個々の列のテスト箇所7に、それぞれレセプタ8が固定されており、そのレセプタは所定の配位子種類の配位子2のために結合固有である。第1のテスト箇所列のレセプタは、第2のテスト箇所列のレセプタとは異なる。もちろん、テスト箇所7を有する複数列の、又はすべてのテスト箇所7のレセプタ8が同一のレセプタ種類に属することも、可能である。
【0029】
測定チャンバ3内に、少なくとも2つのレセプタ種類のためのレセプタ8が固定されている場合に、これらは必ずしもテスト箇所マトリクスの同一列内に配置される必要はない。むしろ、1つのテスト箇所列内に異なるレセプタ種類のレセプタを配置することもでき、しかしその場合に1つの同じテスト箇所7には、常に同じレセプタ種類のレセプタのみが固定されている。従って所定のテスト箇所7に、それぞれ予め定められた配位子種類の配位子のみを結合することができる。
【0030】
個々のテスト箇所7において、テスト箇所7と、それぞれテスト箇所7の延びる平面上の法線の方向においてこのテスト箇所に対向する、測定チャンバの壁領域との間の間隔は、異なる大きさである。インナーキャビティ6が試料で充填されている場合に、それによって試料内で異なる大きさの拡散体積がテスト箇所7に隣接し、その拡散体積から少なくとも1つの配位子が所定の露出期間の間にそれぞれ該当するテスト箇所7に位置するレセプタ8へ拡散することができる。
【0031】
拡散体積というのは、テスト箇所に中心点を有し、露出期間で乗算した、試料内の配位子の平均の拡散速度に相当する半径を有する球の内部にある、測定チャンバ3のインナーキャビティ6の部分体積である。露出期間というのは、試料が測定の終了までテスト箇所7と接触している期間である。図1においては、テスト箇所7の2つについて、拡散体積が破線で示唆されている。図の左に位置するテスト箇所7に、右のテスト箇所7よりも大きい拡散体積が対応づけられているのが、はっきりと認識できる。
【0032】
図2において、配位子2が検出抗体を介して光学的マーカ9によってマークされていることが、認識される。好ましくは、まず試料を予め定められた露出期間の間レセプタ8と接触させて、その後試料の、レセプタ8と結合されていない成分が測定チャンバ3から、例えば測定チャンバ3を通して洗浄液が案内されることによって、除去される。その後、測定チャンバ3のインナーキャビティ6がマーカ9を含む液体で充填されることによって、レセプタ8に結合された配位子2がマーカ9でマークされる。マーカ9が配位子2に結合された後に、例えば新たにインナーキャビティ6を洗浄することによって、フリーのマーカ9が測定チャンバ3から除去される。
【0033】
しかしまた、試料がテスト箇所7と接触する前に、配位子2をマーカ9でマークすることも、可能である。この場合においては、マークされた配位子2を含む試料をまず予め定められた露出期間の間テスト箇所7と接触させて、その後試料の、レセプタ8と結合されていない成分が、測定チャンバ3から除去される。
【0034】
配位子2がレセプタ8と結合されて、マークされた後に、テスト箇所が放射源10によって光学的刺激放射で照射され、その刺激放射がマーカ9を刺激して蛍光放射を放出させる。蛍光放射の波長は、刺激放射の波長とは異なる。
【0035】
蛍光放射が、個々のテスト箇所7においてそれぞれレセプタ8のすぐ下の測定チャンバ3の壁に内蔵されている光学的センサ11によって検出される。レセプタ8とセンサ11との間に、図には詳しく示されていない、刺激放射を遮断する光学的遮断フィルタが設けられており、その遮断フィルタは蛍光放射を通過させる。センサ11によって、各テスト箇所7についてそれぞれ測定信号が形成され、その測定信号の振幅は、該当するテスト箇所7のマーカの数に依存する。
【0036】
図3に示すように、センサ11は測定出力を有しており、その測定出力が評価装置13の比較装置12の入力と接続されている。比較装置12の他の入力が、基準値を準備する基準値発生器14に接続されている。基準値は、配位子濃度のための様々な値にそれぞれ該当するテスト箇所7のための測定値を対応づける、S字状の校正カーブ16の転換点15に相当する(図4)。比較装置12によって、個々のセンサ11の測定信号が、それぞれ基準値と比較される。比較装置12は、基準値に対して最小の間隔を有し、或いはそれと一致する測定信号が切替え装置の測定信号出力に出力されるように、切替え装置17と制御接続されている。この測定信号及び校正カーブを用いて、試料内の配位子2の濃度が定められる。校正カーブにおいて、測定信号に対応づけられたテスト箇所7における拡散体積のための特性量と、テスト箇所7にあるレセプタ8の結合定数が考慮されている。校正カーブは、少なくとも1つの実験を用いて測定によって求めることができ、かつ/又は、例えば適切なモデルを用いて、計算によって形成することができる。
【0037】
図3において、評価装置13は図式的にだけ示されている。評価装置は、特にマイクロコンピュータを有することができ、その中で個々の測定信号がマイクロコンピュータ内で遂行される駆動プログラムを用いて基準値と比較される。基準値発生器は、データメモリを有しており、そこに基準値が好ましくはデジタル形式で格納されている。個々の測定信号は、次々と、或いは同時に測定値と比較することができる。また、基準値発生器14が各テスト箇所7について、及び/又は各レセプタ種類について、専用の基準値を準備することも、考えられる。
【0038】
図1に示す実施例においては、テスト箇所7が設けられている、測定チャンバ画成壁の、インナーキャビティ6へ向いた内面と、この内面と対向する画成壁は、互いに対して角度αで傾斜している。2つの画成壁の内面は平坦であるので、インナーキャビティ6は、ほぼくさび形状の横断面を有している。
【0039】
図5から図7に示す実施例においては、テスト箇所7と対向する画成壁、即ち測定チャンバ3の天井部分の画成壁は、そのインナーキャビティ6へ向いた内面にステップ19を有している。各ステップ19に、それぞれテスト箇所7がほぼ中央で対向している。ステップ19の、テスト箇所7へ向いた壁領域は、それぞれ対向する、テスト箇所7を有する画成壁の内面に対してほぼ平行に延びている。
【0040】
図6と図7に示す実施例において、インナーキャビティ6の、テスト箇所7と対向する画成壁は、互いに対して直角に延びる方向に段を有している。画成壁を上から見て測定チャンバ3の、ステップによって形成される、テスト箇所7へ向いた個々の壁領域は、複数の列と行でマトリクス状に並べて配置されている。それによって、ほぼ碁盤の目状のステップパターンが生じる。
【0041】
結合事象を検出するためのセンサ11は、イオン選択的な電界効果トランジスタとして形成されており、それがレセプタ8のすぐ下の測定チャンバ3の壁に内蔵されている。評価装置13も、測定チャンバ3の壁に内蔵されている。
【0042】
図8に示す実施例において、測定チャンバ3の画成壁は、テスト箇所7を有する、対向する画成壁に対して、昇降ピストンの形式で双方向矢印20の方向にテスト箇所7へ接近するように移動し、かつそこから離れるように移動することができる。それによって、様々な拡散体積を調節することが可能であって、その拡散体積から少なくとも1つの配位子2が予め定められた測定機関の間レセプタ8へ拡散することができる。図8に、可能な拡散体積が、破線で囲まれている。画成壁の変位は、アクチュエータ21を用いて行われる。
【0043】
配位子2の濃度を測定するために、まず第1の実験が実施され、その実験において、マーカ9によってマークされた少なくとも1つの配位子2がレセプタ8に結合できるように、試料がインナーキャビティ6へ投入された。試料の、レセプタ8に結合されていない成分がインナーキャビティ6から除去されて、テスト箇所7における結合事象の数について、第1のセンサ11が検出される。測定信号は、記憶される。その後、場合によっては存在する、配位子と少なくとも1つのレセプタとの間の結合が、例えば熱作用によって溶解されて、溶解された配位子が測定チャンバ3から除去される。配位子−レセプタ−結合を溶解するために、測定チャンバ3はヒータを有することができる。
【0044】
他の実験のために、拡散体積を変化させるために、アクチュエータ21によって画成壁の間隔が調節される。その後、第2の実験が、同様に実施される。その後、必要な場合には少なくとも1つの他の実験を実施することができ、その場合にこの実験においては、拡散体積が変化される。このようにして得られた測定値が、基準値と比較される。基準値に対して最小の間隔を有し、或いはそれと一致する測定信号を用いて、かつ校正カーブを用いて、試料内の配位子2の濃度が求められる。
【0045】
図9には、装置が並べて配置された複数の画成壁を有することもでき、それら画成壁がそれぞれ対向する他の画成壁に対して双方向矢印20の方向に移動できることが、示されている。このマトリクス状に配置された、移動可能な画成壁によって、測定チャンバ6内にある液体を、例えば流入開口部4から排出開口部5へ移送することが、可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】調査すべき試料内に含まれる配位子の濃度を測定する装置の第1の実施例を示す横断面図である。
【図2】光学的センサ上にレセプタが固定されている、テスト箇所を示す、図1の一部を拡大して示している。
【図3】本装置の評価装置を図式的に示している。
【図4】装置のテストフィールド用の校正カーブのグラフ表示であって、その場合に横軸上に時間、縦軸上にはテスト箇所のための測定信号の振幅が記載されている。
【図5】装置の第2の実施例を示す横断面図である。
【図6】装置の第3の実施例を示す横断面図である。
【図7】第3の実施例を示す縦断面図である。
【図8】第4の実施例を示す横断面図であって、測定チャンバの画成壁が互いに対して変位可能である。
【図9】並べて配置され、他の画成壁に対して移動可能な複数の画成壁を有する装置を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調査すべき試料内に含まれる少なくとも1つの配位子(2)の濃度を測定する方法であって、その場合に少なくとも1つの支持体の表面に配置された少なくとも2つのテスト箇所(7)に、それぞれ少なくとも1つのレセプタ(8)が固定されており、前記レセプタは、配位子(2)と接触した場合にその配位子に固有に結合するのに適しており、その場合に試料は予め定められた期間の間次のように、即ち試料内でテスト箇所(7)に固定されたレセプタ(8)に異なる大きさの拡散体積が隣接し、拡散体積内に配位子(2)が含まれている場合に、前記拡散体積から少なくとも1つの配位子(2)が予め定められた期間の間それぞれ該当するレセプタ(8)へ拡散することができるように、テスト箇所(7)と接触され、その場合に予め定められた期間の経過後に、各テスト箇所(7)についてそれぞれ、テスト箇所(7)における結合事象の数又は密度のための測定信号が検出される、調査すべき試料内に含まれる少なくとも1つの配位子の濃度を測定する方法。
【請求項2】
測定値が、それぞれ予め定められた基準値又は基準範囲と比較され、かつ
基準値又は基準値範囲に対して最小の間隔を有し、或いはそれと一致する測定信号を用いて、試料内の配位子(2)の濃度が定められることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
基準値範囲は、テスト箇所(7)の実質的にすべてのレセプタ(8)が配位子(2)に結合された場合に、テスト箇所(7)において測定される測定信号の25%と75%の間、特に40%と60%の間にあって、かつ
基準値が好ましくは、配位子濃度のための様々な値にそれぞれテスト箇所(7)のための測定値を対応づける、S字状の校正カーブ(16)の転換点(15)に相当することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
様々な大きさの拡散体積が、テスト箇所に対して間隔をもって試料に隣接する、少なくとも1つの画成壁によって形成されることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
異なる大きさの拡散体積が、試料が個々のテスト箇所(7)に様々な充填高さで配置されることによって形成されることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
調査すべき試料内に含まれる少なくとも1つの配位子の濃度を測定する装置(1)であって、
試料のための少なくとも1つの流入開口部(4)を備えた測定チャンバ(3)を有し、前記測定チャンバが画成壁を有するインナーキャビティ(6)を有しており、その場合に少なくとも1つの画成壁に少なくとも2つのテスト箇所(7)が配置されており、前記テスト箇所にそれぞれ少なくとも1つのレセプタ(8)が固定されており、前記レセプタは、配位子(2)と接触した場合にその配位子と固有に結合するのに適しており、かつ
個々のテスト箇所(7)における結合事象の数又は密度のための測定信号を検出する少なくとも1つのセンサ(11)を有する、
前記装置において、
個々のテスト箇所(7)においてテスト箇所(7)と、それぞれテスト箇所(7)の広がり平面上の法線の方向に前記テスト箇所に対向する、測定チャンバ(3)の画成壁との間の間隔が、異なる大きさである
ことを特徴とする、調査すべき試料内に含まれる少なくとも1つの配位子の濃度を測定する装置(1)。
【請求項7】
少なくとも1つのセンサが、評価装置(13)と接続されており、
評価装置(13)が、テスト箇所(7)の測定信号のための少なくとも1つの基準値又は基準範囲を準備する基準値発生器(14)を有しており、
評価装置(13)が、個々のテスト箇所(7)の測定値を基準値又は基準値範囲と比較するための比較装置(12)を有し、かつ
比較装置(12)は、基準値又は基準値範囲に対して最小の間隔を有し、或いはそれと一致する測定信号が切替え装置(17)の測定信号出力(18)に出力されるように、切替え装置(17)と接続されている、
ことを特徴とする請求項6記載の装置(1)。
【請求項8】
少なくとも2つのテスト箇所(7)において、該当するテスト箇所(7)と、それぞれテスト箇所(7)の広がり平面上の法線の方向に前記テスト箇所に対向する壁領域との間の間隔が調節可能であることを特徴とする請求項6又は7記載の装置(1)。
【請求項9】
調査すべき試料内に含まれる少なくとも1つの配位子の濃度を測定する装置(1)であって、
試料のための少なくとも1つの流入開口部(4)を備えた測定チャンバ(3)を有し、前記測定チャンバが画成壁を備えたインナーキャビティ(6)を有しており、その場合に少なくとも1つの画成壁に少なくとも1つのテスト箇所(7)が配置されており、前記テスト箇所に少なくとも1つのレセプタ(8)が固定されており、前記レセプタは、配位子(2)と接触した場合にこの配位子と固有に結合するのに適しており、かつ
テスト箇所(7)における結合事象の数又は密度のための測定信号を検出する少なくとも1つのセンサ(11)を有する、
前記装置において、
少なくとも1つの画成壁が少なくとも1つの他の画成壁に対して、拡散体積が変化するように変位可能であって、インナーキャビティ(6)が試料で充填された場合に前記拡散体積から少なくとも1つの配位子(2)が予め定められた測定期間の間レセプタ(8)へ拡散することができ、
様々な拡散体積において測定信号を検出する手段が設けられており、
評価装置(13)が、少なくとも1つのテスト箇所(7)の測定信号のための少なくとも1つの基準値又は基準範囲を準備するための基準値発生器(14)を有しており、
評価装置(13)が、個々の拡散体積において検出された測定信号を基準値又は基準値範囲と比較するための、少なくとも1つの比較装置(12)を有しており、かつ
比較装置(12)が切替え装置(17)と次のように、即ち、基準値又は基準値範囲に対して最小の間隔を有し、或いはそれと一致する測定信号が切替え装置(17)の測定信号出力(18)に出力可能であるように、接続されている、
ことを特徴とする調査すべき試料内に含まれる少なくとも1つの配位子の濃度を測定する装置(1)。
【請求項10】
基準値が、配位子濃度のための様々な値に、それぞれテスト箇所(7)のための測定信号を対応づける、S字状の校正カーブ(16)の転換点(15)に相当することを特徴とする請求項6ないし9いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項11】
少なくとも1つのテスト箇所(7)が第1のチャンバ壁に、そしてこのテスト箇所(7)と対向する壁領域が第2のチャンバ壁に配置されており、かつこれらのチャンバ壁が互いに対して角度(α)で傾斜していることを特徴とする請求項6ないし10いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記角度(α)が、少なくとも2.5°、特に少なくとも5°かつ好ましくは少なくとも10°であることを特徴とする請求項6ないし11いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項13】
少なくとも2つの壁領域の間に、ステップ(19)又は段部が形成されており、かつこれらの壁領域の各々に、それぞれ少なくとも1つのテスト箇所(7)が対応づけられていることを特徴とする請求項6ないし12いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項14】
第1のチャンバ壁及び/又はこれと対向する第2のチャンバ壁が、互いに対して横方向に延びる方向にそれぞれ複数の並べて配置された壁領域を有しており、前記壁領域の間にステップ(19)又は段部が形成されていることを特徴とする請求項6ないし13いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項15】
間にステップ(19)又は段部が形成されている、複数の壁領域が、多角形として形成されており、好ましくは碁盤の目形状又は蜂の巣状に配置されていることを特徴とする請求項6ないし14いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項16】
少なくとも1つの第1のテスト箇所(7)が、それが広がる平面上の法線の方向において、対向する壁領域に対して第1の間隔を有し、少なくとも1つの第2のテスト領域(7)が、それが広がる平面上の法線の方向において、対向する壁領域に対して第2の間隔を有しており、前記第1の間隔が、第2の間隔の少なくとも1.5倍、特に少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍であることを特徴とする請求項6ないし15いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項17】
個々のテスト箇所(7)において、測定チャンバ(3)の壁内にそれぞれ配位子−レセプタ複合体を検出するための少なくとも1つのセンサ(11)が配置されており、かつ少なくとも1つのレセプタ(8)が、センサ(11)上に固定されている、
ことを特徴とする請求項6ないし16いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項18】
少なくとも1つのセンサ(11)が、イオン選択的な電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項6ないし17いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項19】
少なくとも1つのセンサ(11)が、光学的な放射受信器であって、前記放射受信器がレセプタ(8)への配位子(2)の結合に従って刺激可能な蛍光放射に敏感であることを特徴とする請求項6ないし18いずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−261845(P2008−261845A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48915(P2008−48915)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(504164996)ミクロナス ホールディング ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】