説明

調湿パネル

【課題】調湿性能を阻害することなく、調湿性を有する基材と透湿性を有する表層材との接着性を容易に高め得る調湿パネルを提供する。
【解決手段】調湿パネル1は、調湿性を有する基材2と、該基材の上面2aに接着剤層4を介して設けられた透湿性を有する表層材3とを備え、前記接着剤層は、透湿性接着剤に加工澱粉を含有させた接着剤により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿パネルに関し、詳しくは、住居の内装建材などに使用される調湿パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の住宅においては、高断熱、高気密化の傾向が進み住宅内の湿度調節が困難となっている。それに起因する結露やカビ、ダニの発生が問題となり、住宅内の湿度調節が重要な課題となっている。
そこで、従来から住宅の内壁や間仕切り、収納部等の内装建材などに使用される調湿機能を有した建築材料が提供されている。
一般的には、無機質系のロックウールボード或いは石膏ボードや、木質系のインシュレーションボード等が調湿建材として使用されている。あるいは、上記したようなボードの主材(石膏或いはロックウールや木質繊維)に、珪藻土、炭、シリカゲル、ゼオライト等の調湿材と、無機系或いは樹脂系のバインダーとを混合して熱圧成形等によって板状に形成された調湿建材が知られている。
【0003】
上記したような調湿建材は、該調湿建材を基材として、その上面に化粧シート等の表層材が接着剤で接着される場合がある。このように化粧シートが調湿性を有する基材の上面に接着されると、その化粧シート及び/又は接着剤により形成される接着剤層によって、基材の上面と室内空間或いは収納空間とが遮断されてしまい、その調湿性能が十分に発揮されないという問題があった。
下記特許文献1では、上記したような問題点を解決するために、吸放湿性材料と水硬性物質からなる基材に、所定の透湿度とされた化粧シートを貼着してなる化粧シート被覆調湿性建材が提案されている。
このものでは、上記化粧シートと基材とを澱粉・酢酸ビニルを架橋剤によって架橋して耐水効果を高めた接着剤によって接着する構成とされている。
この調湿性建材によれば、市販のオレフィン壁紙を石膏ボードに貼着した建材に比し、優れた吸放湿性を有している、と説明されている。
【特許文献1】特開2002−337301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の調湿性建材では、上記化粧シートと基材とを接着するための接着剤は、澱粉・酢酸ビニルを架橋剤によって架橋したものとされており、一般的に壁紙等の接着に使用されている澱粉系接着剤と略同様の構成である。
このような澱粉系接着剤或いはエチレン−ビニル共重合樹脂エマルジョン系の特殊仕様品等は、高い透湿性或いは通気性を有した接着剤ではあるが、これら透湿性接着剤は、一般的に粘着力が弱く、水分を蒸散させるまでは接着力が発現しないため、その水分が蒸散する際に、基材の上面に接着剤を介して載置された化粧シートに反りが生じたり、化粧シートが移動或いは収縮等をしたりする恐れがあった。特に、水分の蒸散を促進するために、熱プレスにより加熱加圧する場合があるが、そのような場合においては、プレスの開圧時に、上記接着剤からの水蒸気圧が接着剤の粘着力を上回り、シート膨れが発生したり、化粧シートの収縮によるヨレや目開き等が生じたりする恐れもあった。
【0005】
また、上記したような透湿性接着剤は、一般的に粘度が低く、基材の上面にロールコーター等によって塗布する際に、接着剤が基材上面から垂れ落ちることがあり、塗布後或いは化粧シートの貼着後等に拭き取る必要等が生じる。このような垂れを防止するためには、粘性を調整するために小麦粉等の増量剤を添加することが考えられるが、小麦粉等を添加すると、接着剤層の透湿性が阻害される傾向がある。
さらに、化粧シートの反りや移動等を防止するために、上記したような透湿性接着剤よりも粘着力の高い酢酸ビニル接着剤によって接着したり、或いは合成ゴムラテックス系の熱硬化型接着剤を塗布して熱プレスにより化粧シートの変動を阻止して接着したりすることが考えられる。
しかし、上記したような接着剤では、該接着剤で形成される接着剤層により基材と化粧シートとの間に遮断膜が形成されてしまい、基材の調湿性が損なわれる恐れがあった。
【0006】
本発明は、前記問題を解決するために提案されたもので、その目的は、調湿性能を阻害することなく、調湿性を有する基材と透湿性を有する表層材との接着性を容易に高め得る調湿パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る調湿パネルは、調湿性を有する基材と、該基材の上面に接着剤層を介して設けられた透湿性を有する表層材とを備え、前記接着剤層は、透湿性接着剤に加工澱粉を含有させた接着剤により形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の前記調湿パネルにおいては、前記接着剤に含有された加工澱粉を、澱粉質原料をアルファ化させたアルファ化澱粉としてもよい。
また、本発明の前記調湿パネルにおいては、前記接着剤中の加工澱粉の含有量を0.5重量%以上、5.0重量%以下としてもよい。
また、本発明の前記調湿パネルにおいては、前記透湿性接着剤を、澱粉系接着剤としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る前記調湿パネルは、調湿性を有する基材と、透湿性を有する表層材との接着を、透湿性接着剤に加工澱粉を含有させた接着剤により接着するようにしている。従って、基材と表層材との間に形成される接着剤層は、高い透湿性を有し、これにより、これら基材及び表層材間の透湿性を遮断することなく、透湿性の確保がなされる。すなわち、上記加工澱粉は、水酸基を有した分子構造であり、それ自身が透湿性を有しているので、上記透湿性接着剤に含有させて加工澱粉を含有した接着剤とした場合にもその接着剤の透湿性を阻害することがない。従って、室内空間側或いは収納空間側から上記基材に吸湿される水分、及び室内空間側或いは収納空間側へ上記基材から放湿される水分は、上記接着剤層及び上記表層材の透湿性によって透過するので、調湿性能を十分に発揮できる調湿パネルとなる。
また、上記接着剤には、加工澱粉が含有されているので、従来の例えば澱粉系接着剤やエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系エマルジョン接着剤等よりも粘性及び粘着性が高められる。すなわち、上記透湿性接着剤に添加されて糊化した加工澱粉により上記接着剤の粘着性が高められる。これにより、基材と表層材との接着を容易かつ確実にできる。すなわち、粘性が高くなるので塗布性が向上されるとともに、粘着性が高くなるので接合工程時における表層材の移動等を防止でき、接合後にヨレや目開き等が生じ難い。
【0010】
本発明に係る前記調湿パネルにおいて、前記接着剤に含有された加工澱粉を、澱粉質原料をアルファ化させたアルファ化澱粉とすれば、冷水可溶性であり、常温で水分に溶けて糊化するので、上記透湿性接着剤に添加して含有させる際に、加熱等の必要がなく、容易に糊化された加工澱粉を含有させた接着剤を形成できる。
【0011】
本発明に係る前記調湿パネルにおいて、前記接着剤中の加工澱粉の含有量を0.5重量%以上、5.0重量%以下とすれば、塗布性をより効果的に向上できる。すなわち、上記接着剤中に含有させる加工澱粉を上記より少なくすると、該接着剤の粘度及び粘着力が低くなることから、塗布工程時に垂れ等が生じる傾向があるとともに、少なすぎた場合には、接合後に表層材にヨレや目開き等が生じる傾向がある。また、上記接着剤中に含有させる加工澱粉を上記より多くすると、粘度が高くなりすぎる傾向があり、接着剤の流動性が悪くなることから塗布性が悪くなる傾向がある。
【0012】
本発明に係る前記調湿パネルにおいて、前記透湿性接着剤を、澱粉系接着剤とすれば、比較的安価であるとともに、乾燥、硬化工程において、例えば熱硬化型接着剤を用いた場合のような高熱プレス等が不要であるので、省コスト化が図れる。また、高い透湿性を有しているので、上記加工澱粉が有する種々の効果と相俟って、調湿性能に優れた調湿パネルとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る調湿パネルを模式的に示す概略縦断面図である。
尚、以下では、基材の上面とは、室内空間あるいは収納空間側の面を指すものとする。
【0014】
図例の調湿パネル1は、大略的に調湿性を有する基材2と、該基材2の上面2aに、接着剤層4を介して設けられた透湿性を有する表層材3とを備えている。
この調湿パネル1は、住宅の内壁の留め付け仕上げ用の表面建材、打上天井材等の内装建材として適用され、押入れやクローゼット内の内壁や天井などへの施工も可能である。
【0015】
上記基材2は、水分の吸放湿性を有し、湿度の調節が可能な基材であれば、どのようなものでもよく、石膏を主材とする石膏ボード、或いは、ロックウールやスラグウール、ミネラルウール、グラスウール等の人造鉱物繊維を主材とする人造鉱物繊維板などの無機系ボードとしてもよい。または、木材等の繊維を主材とする木質繊維板や木材等の小片を主材とするパーティクルボードなどの木質系ボードとしてもよい。または、植物の靭皮から採取される靭皮繊維材(例えば、ケナフ、亜麻、ラミー、大麻、ジュート等の麻類植物の靭皮から採取される繊維)や、マニラ麻、サイザル麻等の麻類植物の茎又は端の筋から採取される繊維、油ヤシやココヤシ等のヤシ科植物から採取される繊維を主材とする非木質系繊維ボードとしてもよい。さらには、上記した各種ボードを構成する上記主材を組み合わせて形成した複合ボードとしてもよい。
【0016】
さらに、本実施形態では、上記基材2には、水分の吸放湿性を有する調湿材2bが含有されている。調湿材2bとしては、粒子状の木炭、竹炭などの炭類、タルク、ゼオライト、珪藻土、シリカゲル、モンモリロナイト、セピオライトなどの粘土鉱物、アルミナ、シリカなどの無機物等が挙げられる。或いは、調湿材2bとしては、粒子状の高分子吸放湿材(有機系ポリマー吸放湿材)としてもよい。この高分子吸放湿材は、可逆的な吸湿機能、放湿機能を有するもので、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などを主成分として重合した重合体、アクリロニトリルを主成分とした重合体のニトリル基を加水分解させたものなどで架橋構造を有するアクリル系樹脂等が挙げられる。
上記各種の調湿材は、一種あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上記以外の調湿材を使用してもよい。
【0017】
この調湿材2bの含有量は、成形後の基材2に対して、1重量%以上、30重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは、5重量%以上、20重量%以下としてもよい。1重量%未満であると基材2の調湿性能を高められず、30重量%超であると、基材2の強度や耐水性が悪化する傾向があるからである。
【0018】
また、調湿材2bの粒径は、50μm以上、2mm以下とすることが好ましい。
上記のように調湿材2bの粒径を、50μm以上、2mm以下とすることで、調湿性能を阻害することなく、十分な強度を有した調湿パネル1となる。すなわち、通常、3mm〜12mm程度の板厚とされている内装用の建材に、本実施形態に係る調湿パネル1を適用すると、調湿材2bの粒径が2mm超の場合は、パネル自体に局部的な密度差が生じる恐れもあるが、調湿材2bの粒径を2mm以下とすることで、そのようなことを低減でき、均質な調湿パネル1となり、調湿パネル1の強度を損なうことがない。
【0019】
さらに、調湿パネル1に含有される調湿材2bは、その表面積が大きいほど調湿性能が高くなり、よって、粒径を大きくすると表面積が小さくなるため、調湿性能が低減するが、調湿材2bの粒径を2mm以下とすることで、優れた調湿性を発揮できる調湿パネル1となる。
また、調湿材2bの粒径が50μm未満の場合は、上記基材2の成形時に調湿材2bを添加する際に、調湿材2bの含有量が基材2の平面域や厚さ方向において偏りが生じやすくなる傾向があるが、調湿材2bの粒径を50μm以上とすることで、そのようなことを低減できる。
【0020】
尚、上記調湿材2bの基材2への添加は、基材2を構成する上記したようなボードの種類に応じて、適宜、選択可能であり、スラリー状の材料に対して混合・攪拌により添加したり、主材を構成する各種繊維片に混練したり、或いは、ボード成形前のマット体に対して散布したりして添加するようにしてもよい。または、ボード成形前のマット体に挟み込むようにして添加するようにしてもよい。
また、本実施形態では、調湿材2bを含有させた基材2を例示しているが、基材自体に調湿性を有するものであれば、調湿材2bが含有されていない基材としてもよい。
【0021】
上記表層材3は、透湿性を有する表層材であれば、どのようなものでもよく、天然木を薄くスライスした突き板や、塩化ビニル樹脂シート、印刷紙、不織布、クロスシート(壁紙)などの従来公知のいわゆる化粧シートが挙げられる。
尚、表層材3の厚さは、50μm〜1mm程度としてもよい。
【0022】
上記接着剤層4は、透湿性接着剤に加工澱粉を含有させた接着剤により形成されている。
上記透湿性接着剤としては、乾燥硬化した際に、透湿性を有するものであれば、どのようなものでもよく、例えば、澱粉系接着剤、酢酸ビニル系や塩化ビニル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコーンなどの樹脂に、水などの溶剤と乳化剤を加えて乳化あるいは乳化重合させて生成したものが挙げられる。
【0023】
特に、高い透湿性を有することから澱粉系接着剤とすることが好ましい。澱粉系接着剤としては、澱粉を主成分とし、増量剤、安定剤、防腐剤、防黴剤等が配合されたものや、あるいは、これに合成樹脂エマルジョンを配合したものとしてもよい。合成樹脂エマルジョンは、例えば、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョンなどが挙げられる。
このような澱粉系接着剤は、比較的安価であるとともに、乾燥、硬化工程において、例えば熱硬化型接着剤を用いた場合のような高熱プレス等が不要であるので、省コスト化が図れる。また、高い透湿性を有しているので、後記する加工澱粉が有する種々の効果と相俟って、調湿性能に優れた調湿パネル1を提供できる。
【0024】
上記透湿性接着剤に含有される加工澱粉としては、澱粉質原料を加工して得られたものであり、特に、常温或いは低温(30℃以下程度)で水分に溶けて糊化する冷水可溶性を有した加工澱粉が好ましく用いられる。
上記澱粉質原料としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉などが挙げられる。
これら澱粉質原料の加工方法は、澱粉質原料の無水グルコース残基の水酸基に、官能基を導入したり、澱粉質原料を酸と共に加熱して分解又は酵素を使用して加水分解したり、或いは、澱粉質原料を膨潤又は溶解させて糊化させた後に、急速に乾燥させてアルファ化したりするようにしてもよい。上記加工方法は、組み合わせて使用するようにしてもよい。すなわち、誘導体澱粉や焙焼澱粉等の加工澱粉を更にアルファ化するようなものとしてもよい。
【0025】
上記冷水可溶性加工澱粉としては、カルボキシメチル化澱粉或いはヒドロキシアルキル化澱粉等のエーテル化澱粉、リン酸澱粉等のエステル化澱粉、焙焼デキストリン或いは無酸又はアルカリ添加の状態で焙焼し、加水分解した澱粉等の焙焼澱粉、澱粉質原料を酵素を用いて高温液化法により加水分解した酵素変性デキストリン、上記のようにアルファ化させたアルファ化澱粉等が挙げられる。
このような冷水可溶性加工澱粉を用いることで、常温で水分に溶けて糊化するので、上記透湿性接着剤に添加して含有させる際に、加熱等の必要がなく、容易に糊化された加工澱粉を含有させた接着剤を形成できる。
特に、透湿性接着剤への添加の際に、分散性が良く、また、透湿性接着剤への添加により高い粘着力が発現されるアルファ化澱粉とすることが好ましい。
上記各種の加工澱粉は、一種あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上記以外の加工澱粉を使用してもよい。さらに、水分の吸放湿性を有する加工澱粉を含有させるようにしてもよい。これにより、基材2に加えて接着剤層4にも調湿性能を付与でき、調湿パネル1全体の調湿性能を高めることができる。
【0026】
上記各加工澱粉の上記透湿性接着剤への添加は、基材2の上面2aに塗布直前に上記透湿性接着剤に添加するようにしてもよく、或いは、予め上記糖質接着剤に添加するようにしてもよい。
また、添加方法としては、上記透湿性接着剤に対して上記加工澱粉を投入し、ミキサーにて攪拌、混練するようにしてもよい。
また、水分割合の比較的多い上記透湿性接着剤に添加する場合において、加工澱粉が水に接触することによる糊化により、継子になって均一分散に時間が掛かる場合等は、加工澱粉に表面処理を施して、水分浸透速度を遅く調整した加工澱粉としてもよい。これによれば、上記透湿性接着剤への混練分散を容易かつ均一にできる。
【0027】
上記各加工澱粉の透湿性接着剤への添加量は、透湿性接着剤に加工澱粉を含有させた接着剤中の加工澱粉の含有量が0.5重量%以上、5.0重量%以下とするようにしてもよい。これにより、塗布性をより効果的に向上できる。すなわち、上記接着剤中に含有させる加工澱粉を上記より少なくすると、該接着剤の粘度及び粘着力が低くなることから、塗布工程時に垂れ等が生じる傾向があるとともに、少なすぎた場合には、接合後に表層材にヨレや目開き等が生じる傾向がある。また、上記接着剤中に含有させる加工澱粉を上記より多くすると、粘度が高くなりすぎる傾向があり、接着剤の流動性が悪くなることから塗布性が悪くなる傾向がある。特に、基材2の上面2aにロールコーターにより上記接着剤を塗布する場合には、上記含有量とすることで、塗布性が飛躍的に向上する。
【0028】
尚、透湿性接着剤に加工澱粉を添加する際に、上記した調湿材2bをさらに添加するようにしてもよい。これにより、基材2に加えて接着剤層4にも調湿性能を付与でき、調湿パネル1全体の調湿性能を高めることができる。
また、図1では、接着剤層4の層厚を比較的厚く図示しているが、実際には、50μm〜500μm程度である。
【0029】
次に、本実施形態に係る調湿パネル1の製造方法の一例を説明する。
上記した基材2の上面2aに、上記透湿性接着剤に上記加工澱粉を含有させた上記接着剤を塗布する。この接着剤の塗布方法は、どのようなものでもよく、刷毛塗り、スプレー塗り、カーテンフローコーター、ナイフコーター、ロールコーター等でもよい。特に、ロールコーターにより塗布することで、上記接着剤を無駄なく、かつ比較的早く塗布できる。
次いで、該接着剤上に上記表層材3を載せ置いて、プレス加圧により密着させる。この際、上記接着剤の水分蒸散を促進するために70℃程度の熱を加えるようにしてもよい。
上記接着剤が乾燥、硬化することにより基材2と表層材3との間に接着剤層4が形成され、調湿パネル1が製造される。
尚、熱プレスではなく常温プレスとし、その後、乾燥機等で乾燥するようにしてもよい。
【0030】
以上のように本実施形態に係る調湿パネル1によれば、調湿性を有する基材2と、透湿性を有する表層材3との接着を、透湿性接着剤に加工澱粉を含有させた接着剤により接着するようにしている。従って、基材2と表層材3との間に形成される接着剤層4は、高い透湿性を有し、これにより、これら基材2及び表層材3間の透湿性を遮断することなく、透湿性の確保がなされる。すなわち、上記加工澱粉は、水酸基を有した分子構造であり、それ自身が透湿性を有しているので、上記透湿性接着剤に含有させて加工澱粉を含有した接着剤とした場合にもその接着剤の透湿性を阻害することがない。従って、室内空間側或いは収納空間側から上記基材2に吸湿される水分、及び室内空間側或いは収納空間側へ上記基材2から放湿される水分は、上記接着剤層4及び上記表層材3の透湿性によって透過するので、調湿性能を十分に発揮できる調湿パネル1となる。
【0031】
また、上記接着剤には、加工澱粉が含有されているので、従来の例えば澱粉系接着剤やエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系エマルジョン接着剤等よりも粘着性が高められる。すなわち、上記透湿性接着剤に添加されて糊化した加工澱粉により上記接着剤の粘性及び粘着性が高められる。これにより、基材2と表層材3との接着を容易かつ確実にできる。すなわち、粘性が高くなるので塗布性が向上されるとともに、粘着性が高くなるので接合工程時における表層材3の移動等を防止でき、接合後にヨレや目開き等が生じ難い。
特に、基材2の上面2aに上記接着剤を塗布し、表層材3を積層した後に、接着剤の水分の蒸散を促進するために熱プレス等をした際にも、接着剤の粘着力が高いことから、その開圧後に、表層材3が移動したり、収縮したりするようなことを低減できる。これにより、外観性の良い調湿パネル1となる。換言すれば、上記接着剤により基材2と表層材3とを接着することで、調湿性能及び外観性を損なうことなく、容易かつ比較的早く調湿パネル1を製造できる。
【0032】
尚、本実施形態では、基材2と表層材3とを上記接着剤を用いて接着した例を示しているが、これに限られず、表層材3を基材として把握し、該基材同士を接着する際に、上記接着剤を用いて接着するようにしてもよい。
或いは、調湿パネル1の裏面側に更に各種ボードを接着する際に、上記接着剤を用いて接着するようにしてもよい。
すなわち、調湿パネルの種々の複層化に係る部位に上記接着剤を用いて接着剤層4を形成することで、上記同様の効果が得られる。
【0033】
次に、本発明に係る調湿パネルの実施例の一例と比較例とを図2の表に基づいて説明する。
調湿性を有する基材としては、実施例1〜10及び比較例1〜4の全てにおいて12mmの板厚とされた市販の珪藻土入り石膏ボードを用いた。
表層材としては、実施例1〜5及び比較例1,2では、0.17mm厚にスライスした天然突き板を用い、実施例6〜10及び比較例3,4では、秤量が60g/mのパルプアクリル混抄紙を用いた。
上記基材と表層材とをそれぞれ接着する接着剤として、実施例1〜10では、透湿性接着剤である澱粉系接着剤(矢沢化学工業(株)ウォールボンド100)に、それぞれ所定の含有量で加工澱粉を含有させた接着剤を用いた。比較例1,3では、上記同様の澱粉系接着剤を用い、比較例2,4では、一般接着剤として水系木工用酢酸ビニル接着剤を用いた。
【0034】
上記加工澱粉は、アルファ化澱粉(日澱化学(株)アミコール(登録商標)K)を用いた。
実施例1,6では、上記接着剤中の上記アルファ化澱粉の含有量を0.3重量%とした。
実施例2,7では、上記接着剤中の上記アルファ化澱粉の含有量を0.5重量%とした。
実施例3,8では、上記接着剤中の上記アルファ化澱粉の含有量を3.0重量%とした。
実施例4,9では、上記接着剤中の上記アルファ化澱粉の含有量を5.0重量%とした。
実施例5,10では、上記接着剤中の上記アルファ化澱粉の含有量を6.0重量%とした。
【0035】
上記各接着剤の基材への塗布は、全ての実施例及び比較例において、ロールコーターを用いて塗布した。
次いで、上記各表層材を上記塗布された接着剤上に載せ置き、型面温度が70℃、プレス圧が5kg/cm(0.5MPa)、プレス時間が60秒の条件で熱プレスして、各実施例及び各比較例の調湿パネルを得た。
【0036】
上記各実施例1〜10、比較例1〜4の調湿パネルに対して、以下の評価試験を行った。
【0037】
(評価試験)1)塗布性
各実施例1〜10、比較例1〜4において、基材に上記各接着剤を、ロールコーターを用いて塗布した際の塗布性を評価した。
結果は、図2の通りであり、実施例2〜4及び7〜9、並びに比較例2,4では、基材からの垂れ等もなく、また、ダマになるようなこともなく均一に薄層状に接着剤を塗布でき、概ね良好であった。
一方、実施例1,6では、基材からの垂れがやや目立ち、比較例1,3では、実施例1,6よりもさらに、接着剤の基材からの垂れが目立つ結果となった。
また、実施例5,10では、接着剤の粘度がやや高く、接着剤の流動性がやや悪くなり、ロールコーター適性がやや劣る結果となった。
【0038】
(評価試験)2)外観目視観察
上記したように製造された各実施例1〜10、比較例1〜4の調湿パネルの表面を目視観察して外観を評価した。
結果は、図2の通りであり、実施例2〜5及び7〜10、並びに比較例2,4では、表層材のヨレや目開き等は見られず、概ね良好であった。
一方、実施例1,6では、接着剤の粘着力がやや弱いことから初期接着力がやや低く、表層材のヨレ或いは目開きがやや目立つ結果となった。また、比較例1,3では、実施例1,6よりもさらに、接着剤の粘着力が弱いことから初期接着力が低く、表層材のヨレ或いは目開きが目立つ結果となった。
【0039】
(評価試験)3)調湿性能試験
各実施例1〜10、比較例1〜4の調湿パネルから得られた各試験体を、温度25℃、湿度50%の恒温恒湿雰囲気中に放置して恒量に達するまで養生した。
その後、各試験体を、温度25℃、湿度90%の恒温恒湿雰囲気中に24時間放置した後、各試験体の重量を測定して、吸湿後の重量を得た。
その後、さらに、各試験体を、温度25℃、湿度50%の恒温恒湿雰囲気中に24時間放置した後、各試験体の重量を測定して、放湿後の重量を得た。
上記吸湿後の重量と上記放湿後の重量との差から得た吸放湿量(各試験体1平方メートル当りの重量変化)を調湿性能として比較した。
【0040】
調湿性能の比較は、市販のインシュレーションボード(9mm厚)の吸放湿量を調湿性基準として、当該インシュレーションボードの吸放湿量(130g/m)よりも15%以上良い場合(吸放湿量が149.5g/m以上)を○と判定した。
結果は、図2の表の通りであり、実施例1〜10及び比較例1,4では、調湿性能の結果は、概ね良好であった。
一方、比較例2,4では、接着剤により基材の調湿性能が阻害され、調湿性能を十分に発揮できない結果となった。
【0041】
以上の結果から実施例1〜10の各調湿パネルは、接着剤の塗布性、外観及び調湿性能ともに概ね良好であり、高い調湿性能を有する調湿パネルを容易に提供できることが示された。
特に、接着剤中のアルファ化澱粉の含有量を0.5%以上、6.0%以下とした実施例2〜5及び7〜10では、ヨレや目開き等がなく、外観にも優れた調湿パネルであることが示された。
また、接着剤中のアルファ化澱粉の含有量を0.5%以上、5.0%以下とした実施例2〜4及び7〜9では、接着剤の塗布性も特に良好であり、基材と表層材とを、基材の調湿性能を阻害することなく容易に接着できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る調湿パネルの一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明に係る調湿パネルの実施例の一例と比較例とを評価試験の結果とともに示す表である。
【符号の説明】
【0043】
1 調湿パネル
2 基材
2a 基材の上面
3 表層材
4 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調湿性を有する基材と、該基材の上面に接着剤層を介して設けられた透湿性を有する表層材とを備え、
前記接着剤層は、透湿性接着剤に加工澱粉を含有させた接着剤により形成されていることを特徴とする調湿パネル。
【請求項2】
請求項1において、
前記接着剤に含有された加工澱粉は、澱粉質原料をアルファ化させたアルファ化澱粉とされていることを特徴とする調湿パネル。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記接着剤中の加工澱粉の含有量が0.5重量%以上、5.0重量%以下とされていることを特徴とする調湿パネル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記透湿性接着剤は、澱粉系接着剤とされていることを特徴とする調湿パネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−226898(P2009−226898A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78533(P2008−78533)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】