説明

調湿パネル

【課題】調湿ボードの厚さを薄く形成しても、調湿性、不燃性に優れた調湿パネルを提供すること。
【解決手段】パルプとケイ酸マグネシウムを含有する調湿ボード2の表面に、透湿性を有する化粧層3が設けられている調湿パネル1であって、前記調湿ボード2は、厚さが1〜4mmであり、パルプとケイ酸マグネシウムの合計100重量%に対して80〜95重量%のケイ酸マグネシウムを含有し、前記化粧層3は、透湿度が、300g/m/24H以上であり、前記調湿ボード2と前記化粧層3の合計発熱量が、8.0MJ/m以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の住宅においては、高断熱、高気密化の傾向が進み、住宅内の湿度調節が難しくなっている。このため、これに起因する結露やカビ、ダニの発生等が問題となり、住宅内の湿度調節が重要な課題となっている。
【0003】
そこで、従来から住宅の内壁や間仕切り、収納部等の内装建材などに使用される調湿ボードとして、例えば、無機質系のロックウールボード、石膏ボード、ケイカル板、セメントボード、木質系のインシュレーションボード等が提案されている。このような調湿ボードは、例えば、主材(石膏、ロックウール、木質繊維等)に、珪藻土、炭、シリカゲル、ゼオライト等の調湿材と、無機系や樹脂系のバインダーとが混合されて、熱圧成形等によって板状に形成されている。
【0004】
また、例えば、特許文献1では、このような調湿ボードの表面に、化粧層として表装仕上げシートを配設した表装仕上げ建材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−63779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、例えば、建物の内壁に調湿ボードを上張りする場合には、調湿ボードに孔を空ける等の加工が必要な場合がある。また、例えば、調湿ボードの新たな用途として、ドアの面材等に利用することが検討されてもいる。したがって、このような調湿ボードの加工性、応用性を考慮すると、調湿ボードの厚さは、およそ4mm以下であることが望まれている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、調湿ボード(下地材)の厚さを薄くするための工夫についての検討はなされていない。調湿ボードの厚さを薄くする場合、材料によっては、調湿ボードに割れ等が生じやすく、また、調湿ボードに求められる調湿性、不燃性を確保することが容易ではないという問題がある。
【0008】
さらに、調湿ボードの表面に化粧層を設けた調湿パネルの場合、化粧層は、調湿ボードの調湿性を阻害し難いものであること等の性質が求められる。特許文献1では、化粧層として透湿性を有する表装仕上げシートが提案されているが、当然ながら、上記のような調湿性、不燃性を備えた厚さの薄い調湿ボードに好適な化粧層についての検討はなされていない。
【0009】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、調湿ボードの厚さを薄く形成しても、調湿性、不燃性に優れた調湿パネルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の調湿パネルは、パルプとケイ酸マグネシウムを含有する調湿ボードの表面に、透湿性を有する化粧層が設けられている調湿パネルであって、前記調湿ボードは、厚さが1〜4mmであり、パルプとケイ酸マグネシウムの合計100重量%に対して80〜95重量%のケイ酸マグネシウムを含有し、前記化粧層は、透湿度が、300g/m/24H以上であり、前記調湿ボードと前記化粧層の合計発熱量が、8.0MJ/m以下であることを特徴としている。
【0011】
この調湿パネルにおいては、前記化粧層は、化粧シートによって形成されていることが好ましい。
【0012】
この調湿パネルにおいては、前記化粧層は、コーティング材によって形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の調湿パネルによれば、調湿ボードの厚さを薄く形成しても、調湿パネルの調湿性、不燃性を良好とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の調湿パネルを模式的に示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の調湿パネルを模式的に示す断面概略図である。
【0016】
調湿パネル1は、調湿ボード2の表面に透湿性を有する化粧層3が設けられている。ここで、「調湿ボードの表面」とは、室内空間や収納空間側の面をいう。
【0017】
調湿ボード2は、パルプとケイ酸マグネシウムを含有し、厚さは1〜4mmである。調湿ボード2の厚さがこの範囲であることで、調湿ボード2の調湿性および不燃性が良好となる。調湿ボード2の厚さが、4mmを超える場合には、調湿ボード2の不燃性を確保するのが難しく、また、加工性、応用性の面からも好ましくない。さらに、調湿ボード2の厚さが1mm未満の場合には、調湿ボード2の強度を確保するのが難しい。
【0018】
調湿ボード2は、例えば、石膏、水ガラス、樹脂、ケイ酸カルシウム、セメント、高炉スラグ等のスラリー状の硬化性材料に、調湿材としてのケイ酸マグネシウムおよびパルプを添加して混合・攪拌し、抄造することで得ることができる。
【0019】
パルプは、従来公知のパルプを適宜使用することができる。例えば、木材の幹の樹皮を取り除き、そのままあるいは小片化したものを機械的、半化学的、化学的に処理して製造したパルプ繊維を例示することができる。
【0020】
ケイ酸マグネシウムとしては、例えば、アタパルジャイトやセピオライト等の1種または2種以上を使用することができる。アタパルジャイトとは、一般にSi8(Mg,Al)520(OH)2(OH242Oで示されるケイ酸塩鉱物であり、セピオライトとは、一般にMg8Si1230(OH)4(OH248H2Oで示されるケイ酸塩鉱物である。
【0021】
パルプとケイ酸マグネシウムの合計含有量は、成形後の調湿ボード2に対して、95重量%〜99重量%とすることが好ましい。この範囲であると、調湿ボード2の強度、調湿性を効果的に高めることができる。
【0022】
調湿ボード2に含まれるケイ酸マグネシウムは、パルプとケイ酸マグネシウムの合計100重量%に対して80〜95重量%である。この範囲であることで、調湿ボード2の調湿性および不燃性が良好となる。調湿ボード2に含まれるケイ酸マグネシウムの量が、パルプとケイ酸マグネシウムの合計100重量%に対して80重量%より低い場合には、特に調湿ボード2の不燃性を確保するのが難しい。また、調湿ボード2に含まれるケイ酸マグネシウムの量が、パルプとケイ酸マグネシウムの合計100重量%に対して95重量%より大きい場合には、調湿ボード2の強度を確保するのが難しい。ケイ酸マグネシウムは、粘度鉱物であり、揺変性、乾燥固結性を有し、かつ繊維状結晶でもあるため、パルプと混合することでパルプ繊維と網目状に絡み合うことができ、少ないパルプ配合量であっても調湿ボード2の強度を高めることができる。したがって、調湿ボード2の厚さを1〜4mmに薄く形成した場合にも、十分な調湿性、強度を確保することができる。
【0023】
調湿パネル1には、調湿ボード2の表面に透湿性を有する化粧層3が設けられている。化粧層3は、化粧シートやコーティング材によって形成することができる。調湿ボード2の表面に透湿性を有する化粧層3を設けることで、調湿パネル1の意匠性が向上している。化粧層3の厚さは、例えば、50μm〜1mm程度とすることができる。
【0024】
化粧層3を構成する化粧シートとしては、塩化ビニル樹脂シート等の合成樹脂シート、印刷紙、不織布、クロスシート(壁紙)などの透湿性を有する従来公知のシート材料を適宜使用することができる。調湿ボード2の表面に化粧シートを張り付ける場合には、透湿性の高い接着剤を使用して接着することができる。具体的には、例えば、澱粉系接着剤、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、エチレンービニル共重合樹脂エマルジョン系等の接着剤を例示することができる。また、適宜、熱プレスや常温プレス等の方法によって、調湿ボード2の表面に化粧シートを接着させることができる。
【0025】
化粧層3をコーティング材によって構成する場合には、例えば、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系等のコーティング材を調湿ボード2の表面に塗布することによって、化粧層3を形成することができる。なお、このコーティング材にシリカ粒子等の透湿性粒子を含有すると、透湿性を調節することができるため好ましい。
【0026】
化粧層3の透湿度は、300g/m/24H以上とされている。透湿度は、JISZ0208に準拠している。化粧層3の透湿度が300g/m/24H以上であると、水分が化粧層3を透過しやすいため、調湿ボード2による調湿性が阻害され難く、調湿パネル1としての十分な調湿性を確保することができる。なお、化粧層3の透湿度は高いほど調湿性が優れ好ましいが、意匠面から2000g/m/24H以下が好ましい。
【0027】
調湿ボード2と化粧層3の合計の発熱量は、8.0MJ/m以下とされている。発熱量は、財団法人日本建築総合試験所の発熱性試験の方法に準拠し10分間加熱したときの値である。化粧層3の発熱量が比較的大きい場合には、調湿ボード2が不燃性を有している場合でも、調湿パネル1としての不燃性が不十分となる。化粧層3の発熱量は、実際的な範囲として、2.0MJ/m〜2.5MJ/mの範囲を好ましく例示することができる。この範囲では、調湿パネル1としての十分な不燃性を確保することができる。
【0028】
本発明の調湿パネル1を構成する調湿ボード2および化粧層3には、その他、各種の添加物を加えることもできる。
【0029】
以下、本発明の調湿パネルについて、実施例を用いてさらに詳しく説明する。なお、本発明の調湿パネルは以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
<1>参考例1〜6
調湿ボードは、パルプおよびケイ酸マグネシウムとしてセピオライトを添加して混合・攪拌した後、抄造して成形した。調湿ボードの厚さは、調湿パネルの加工性、応用性を考慮して、3mmの厚さとした。調湿ボードに含まれるケイ酸マグネシウムとパルプの比率を変え、調湿ボードの調湿性、不燃性に与える影響を評価した。調湿ボードに含まれるケイ酸マグネシウムとパルプの比率は、パルプとケイ酸マグネシウムの合計100重量%に対するケイ酸マグネシウムの含有量(重量%)を基準とした。ケイ酸マグネシウムとしてのセピオライトの比率は、参考例1では95重量%、参考例2では90重量%、参考例3では85重量%、参考例4では80重量%、参考例5では75重量%とした。参考例6では、市販のMDFボード(ホクシン株式会社製)2.5mm厚を使用した。
【0031】
調湿ボードの調湿性は、25℃、50%で恒量まで養生した後、吸湿(90%、24H)、放湿(50℃、24H)した際の重量変化の平均値を、参考例6のMDFボードと比較して15%以上良好であった場合を○(=調湿量で130以上)、それ以下であった場合を×と評価した。
調湿ボードの不燃性は、発熱性試験(財団法人日本建築総合試験所の発熱性試験の方法に準じて10分間加熱)で、準不燃材料の基準である8.0MJ/m以下を○、8.0MJ/mを超える場合を×と評価した。
【0032】
結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示されるように、調湿性に関しては、参考例1〜6のいずれの場合も良好であった。一方、不燃性に関しては、参考例1〜4では十分な不燃性が確認されたのに対し、参考例5、6では不燃性が不十分であった。したがって、調湿ボードは、パルプとケイ酸マグネシウムの合計100重量%に対するケイ酸マグネシウムの含有量が80〜95重量%の場合に、調湿性と不燃性の両方を満足することができることが確認された。また、参考例1〜4の調湿ボードでは、十分な強度を有していた。
【0035】
<2>実施例1〜5および比較例1〜7
実施例1〜4および比較例1〜7では、参考例2の調湿ボード(厚さ3mm)の表面に、以下の化粧層(化粧シート、コーティング材)を配設して調湿パネルを得た。
実施例1、2および比較例1、2の化粧シートは、坪量73g/mの紙シート(厚さ0.07mm)に、ウレタン系コーティング材を塗布して常温で乾燥したものを用いた。ウレタン系コーティング材は、玄々化学工業製のアクアVPクリヤーに、シリカ粒子(富士シリシア製、サイリシア550)を30%添加したものを使用した。実施例1では、ウレタン系コーティング材の固形分付着量を30g/mとし、実施例2では20g/mとした。比較例1では、ウレタン系コーティング材の固形分付着量を50g/mとし、比較例2では40g/mとした。そして、エチレンー酢酸ビニル樹脂系接着剤を6g/m塗布し熱圧プレスで貼り合わせ、調湿ボードの表面に化粧層(化粧シート)を形成した。
実施例3、4および比較例3、4では、実施例1、2および比較例1、2と同様のコーティング材を用いた。実施例3では、コーティング材の固形分付着量を30g/m、実施例4では20g/mとなるよう塗布して常温で乾燥して化粧層(コーティング材)を形成した。比較例3では、コーティング材の固形分付着量が50g/m、比較例4では40g/mになるよう塗布して常温で乾燥して化粧層(コーティング材)を形成した。
また、比較例5では、市販のオレフィン系化粧シート(厚さ0.07mm)を使用し、実施例1−4および比較例1−4と同様のコーティング材を用いて、固形分付着量が20g/mで塗布して常温で乾燥させて化粧層(化粧シート)を形成した。比較例6では、市販のウレタン系コーティング材(玄々化学工業製、アクアVPクリヤー)を用いて、固形分付着量が20g/mになるよう塗布して常温で乾燥させて化粧層(コーティング材)を形成した。比較例7では、坪量180g/m(厚み0.5mm)の紙シートに比較例6と同様のコーティング材を20g/mで塗布して常温で乾燥させて化粧層(化粧シート)を形成した。
実施例5では、参考例2と同様の組成の調湿ボード(厚さを1mm)の表面に、比較例7と同様の化粧層(化粧シート)を形成して調湿パネルを得た。
【0036】
実施例1〜5および比較例1〜7について、化粧層の透湿度、ならびに調湿ボードと化粧層の合計発熱量(MJ/m)(調湿パネルの発熱量)を測定した。
【0037】
化粧シートの透湿度については、JISZ0208に準拠し、雰囲気温度を25℃、湿度90%、24Hで測定した。コーティング材の透湿度については、実施例3では、坪量50g/mのクラフトペーパーに固形分付着量が30g/m、実施例4では、20g/m(実施例4)になるようにコーティング材を塗布して硬化させた後、JISZ0208に準拠して測定した。同様に、比較例3では、坪量50g/mのクラフトペーパーに固形分付着量が50g/m、比較例4では40g/m、比較例6では20g/mになるようにコーティング材を塗布して硬化させた後、JISZ0208に準拠して測定した。
【0038】
調湿パネルの調湿性は、25℃、50%で恒量まで養生した後、吸湿(90%、24H)、放湿(50℃、24H)した際の重量変化の平均値を、化粧層を有していない参考例2の調湿ボード(3mm厚)と比較した。参考例2の調湿ボード(厚さ3mm)と比較して、調湿性の低下が20%以内の場合を○(調湿量で80以上)、調湿性の低下が20%を超える場合を×と評価した。
【0039】
調湿パネルの不燃性は、調湿ボードと化粧層の合計発熱量(調湿パネルの発熱量)を、財団法人日本建築総合試験所の発熱性試験の方法に準じて測定し、準不燃材料の基準である8.0MJ/m以下を○、8.0MJ/mを超える場合を×と評価した。
【0040】
結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2に示されるように、実施例1〜5では、調湿パネルの調湿性、不燃性が良好であった。一方、比較例1、3〜6では、調湿性および不燃性のいずれも不十分であった。比較例2では、調湿パネルの不燃性は良好であるものの、調湿性に関しては不十分であった。また、比較例7では、調湿性は良好であるものの、不燃性が不十分であった。
【0043】
したがって、化粧層の透湿度が300g/m/24H以上である場合には、調湿パネルの調湿性を良好に維持できることが確認された。さらに、調湿ボードと化粧層の合計発熱量を、8.0MJ/m以下に抑えて調湿パネルの不燃性を確保した場合にも、調湿パネルの調湿性が損なわれることはなかった。
【符号の説明】
【0044】
1 調湿パネル
2 調湿ボード
3 化粧層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプとケイ酸マグネシウムを含有する調湿ボードの表面に、透湿性を有する化粧層が設けられている調湿パネルであって、
前記調湿ボードは、厚さが1〜4mmであり、パルプとケイ酸マグネシウムの合計100重量%に対して80〜95重量%のケイ酸マグネシウムを含有し、前記化粧層は、透湿度が、300g/m/24H以上であり、前記調湿ボードと前記化粧層の合計発熱量が、8.0MJ/m以下であることを特徴とする調湿パネル。
【請求項2】
前記化粧層は、化粧シートによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の調湿パネル。
【請求項3】
前記化粧層は、コーティング材によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の調湿パネル。

【図1】
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【公開番号】特開2012−197647(P2012−197647A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63940(P2011−63940)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】