説明

調理実習台

【課題】 天板の前側からも後側からも行える調理スペースを確保しつつシンクとコンロ間の距離を短くすることができ、天板周りの移動も円滑に行える調理実習台を提供すること。
【解決手段】 一端側にコンロ7を、他端側にシンク8を配置した天板2上で調理を行う調理実習台1において、天板2は、略等幅で左右端から中央部5にかけて緩やかな角度で屈曲した平面視略く字形に形成され、この中央部5を調理台部6とすることで、天板2の前側からも後側からも行える調理台部6を利用して調理場所を確保しつつ、シンク8とコンロ7間の距離を短くすることができる。天板2が緩やかな角度で屈曲された平面視略く字形で形成されているので、実習生19は実習生19の衣類(エプロン等)を引っ掛けることや身体をぶつけることがなく、安全に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端側にコンロを、他端側にシンクを配置した天板上で調理を行う調理実習台に関する。
【背景技術】
【0002】
学校等において、複数人で料理の実習を行うために使用する調理実習台は、天板にガスレンジや電磁加熱器等のコンロと、食材の調理や水洗いのためのシンクと、食材の切断や盛り付け用の調理台を備えており、中央部を調理台とし、左右の一側にコンロ、他側にシンクを備えているものが一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし中央部に多数の実習生が調理可能なスペースをつくると、コンロとシンク間が離れ、両者間を行き来する距離が長くなって使い勝手が悪かった。このような事情のもとに天板が平面視L型の調理実習台も開発されている(例えば、特許文献2、3参照)。このL型の調理実習台はコンロをL字天板の一側に、シンクをL字天板の他側に配置し、コンロとシンク間のスペースを調理台として使用するもので、コンロとシンク間の距離が短縮したため、L字天板の後部側からコンロとシンク間を行き来するには移動距離が少なく使い勝手が良かった。
【0003】
【特許文献1】特開平8−308644号公報(図1参照)
【特許文献2】実用新案登録第2582814号公報(図1参照)
【特許文献3】実開昭63−31836号公報(図1、2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2、3の調理実習台にあっては、調理を行う場合に、L字天板の前側で行うには適しているが、L字天板の後側からはL字天板の角部に近接し辛く調理を行うには不向きであり、調理する実習生が前側の偏った位置に集まってしまうという不具合があった。また、シンク、コンロ及び調理台部間の天板周りの移動においても、L字天板の前側の角部にエプロン等の衣類を引っ掛けることや身体をぶつけることがあった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、天板の前側からも後側からも行える調理スペースを確保しつつシンクとコンロ間の距離を短くすることができ、天板周りの移動も円滑に行える調理実習台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の調理実習台は、一端側にコンロを、他端側にシンクを配置した天板上で調理を行う調理実習台であって、前記天板は、略等幅で左右端から中央部にかけて緩やかな角度で屈曲した平面視略く字形に形成され、前記中央部を調理台部としたことを特徴としている。
この特徴によれば、天板中央部に複数の実習生が調理できる調理台部を確保しつつ、シンクとコンロ間を近接させてシンクとコンロ間の移動距離を短くすることで、使い勝手の良い調理実習台を提供できると共に、天板形状が緩やかな角度で屈曲した平面視略く字形に形成されているので、シンク、コンロ及び調理台部間の天板周りの移動が円滑に行え、かつ、角部にエプロン等の衣類を引っ掛けることや身体をぶつけることがないため安全に使用することができる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の調理実習台は、請求項1に記載の調理実習台であって、前記シンクを、天板の前後方向略中央部に配置したことを特徴としている。
この特徴によれば、シンクを調理実習台の前後方向から実習生が同時に使用することが可能となる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の調理実習台は、請求項2に記載の調理実習台であって、前記天板の側部寄りでほぼ前後の中間位置にシンク用の蛇口が配備されていることを特徴としている。
この特徴によれば、蛇口が天板の前後からほぼ等距離にあるので前後のどちらからも蛇口に手が届き易く使い勝手が良い。しかも蛇口への配管も天板の側部下方に設けることができるので、シンク下近傍に空間部が形成されシンクに近づく場合の足場も確保できる。
【0009】
本発明の請求項4に記載の調理実習台は、請求項3に記載の調理実習台であって、前記天板の下部において、前記蛇口への給水管とシンクからの排水管を内側から平面視略凸状のダクトカバーで覆ったことを特徴としている。
この特徴によれば、ダクトカバーにより給排水管が覆われているので、見栄えが良いばかりでなく、天板下方に例えば調理時に必要な収納ボックスや、椅子等を押し込んでもダクトカバーによって配管類が保護され、かつ平面視略凸状のダクトカバーを内側から配管類を覆うようにしたので、シンク近傍の天板前後域下方に空間部が形成され、シンクに前後方向から近づく場合の足場が確保できる。
【0010】
本発明の請求項5に記載の調理実習台は、請求項1乃至4のいずれかに記載の調理実習台であって、前記天板を、天板の4隅と中央部2箇所とを脚柱で支持するものとし、前記脚柱の内、天板の4隅を支える脚柱の1本と天板の中央部を支える脚柱の1本とをコンロの前面の左右となる位置に配置し、前記脚柱の内、天板の中央部を支える脚柱の残りの1本をシンクの前後方向中央のシンクの脇となる位置に配置したことを特徴としている。
この特徴によれば、コンロとシンク使用により天板に加わる負荷と、コンロとシンクのセットのための切り欠きによる天板の強度ダウンとを、天板の4隅を支える脚柱と天板の中央部2箇所を支える脚柱とで補うことにより、強度上問題のない調理実習台を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例における調理実習台の全体像を示す斜視図であり、図2は、調理実習台と収納ボックスの収納状況を示す平面図であり、図3は、収納ボックスが収納された調理実習台を示す正面図であり、図4は、調理実習台の使用例を示す平面図であり、図5は、複数の調理実習台が配置された教室における調理実習の利用形態を示す平面図である。
【0013】
図1に示すこの調理実習台1は、学校等の教室内において複数の人数で調理実習を行う際に利用される多機能なテーブルタイプの台であり、教室内に複数台設置され主に生徒達の調理実習に使用される。以下、本実施例の説明において、図1に示した調理実習台1の正面側を前方をとし背面側を後方とし、調理実習台1のシンク8側を左方としコンロ7側を右方として説明する。
【0014】
図1に示されるように、調理実習台1は複数の実習生に共同作業を行わせるために、天板2の一端側である右方位置に火力調理を行うコンロ7が設けられ、他端側である左方位置に水およびお湯を供給可能な蛇口8aを備えたシンク8が設けられている。天板2は上下方向に向けて立設された複数の脚柱9に支持されており、略中央位置の脚柱9間にはキャスタ20a付きの収納ボックス20が設けられている。調理実習台1の後方にはキャスタ21a付きの丸型天板テーブル21が配置されており、本発明の調理実習台1と組み合わせて利用可能になっている。
【0015】
シンク8の下方には、断面略凸条のダクトカバー11が設けられており、図3に示されるように、このシンク8から床面22に延設される排水管8bや蛇口8aの水道管等がダクトカバー11で内部から覆われるとともに、外部からは外カバー材14で覆われることで、配管類全体が遮蔽されており外部からの見栄えも良くなっている。天板2の右側部下方にも外カバー材13が設けられ天板下部を側方から見えないように覆っている。また、各種調理器具等が収納されている収納ボックス20は中央位置の脚柱9間に形成された空間部10に収納可能であり、空間部10が有効に活用されている。
【0016】
次に、図2に示されるように、調理実習台1の天板2について詳細に説明すると、天板2の平面形状は略等幅で左右端から中央部5にかけて緩やかな角度で屈曲して形成されたことで、天板2の右方のコンロ7側に右天板部4が形成され、天板2の左方のシンク8側に左天板部3が形成されている。
【0017】
そして、右天板部4および左天板部3を連接するように中央部5が形成されたことで、天板2は平面視略く字形で形成されている。さらに、中央部5の前後の屈曲箇所と、左側面2cと前側面2aおよび後側面2bの角部と、右側面2dと前側面2aおよび後側面2bの角部は、滑らかな弧状曲面となっている。したがって天板2の外周面全体が角のない滑らかな曲面となり、コンロ7とシンク8間の距離は近接し、天板2の後側面2b側から食材等を移動すれば実習生の移動距離は少なくて済む。
【0018】
コンロ7は右天板部4のやや前部に配置され、後述する調理実習台1の実習生による利用の際に右天板部4の前端近傍において、コンロ7の火力調整等の操作が行いやすくなっている。シンク8は左天板部3の略中央に配置されており、シンク8に配備された蛇口8aは天板2の左側部寄りでほぼ前後の中間位置に設置され、この蛇口8aの下方には排水管8bが位置している。
【0019】
天板2はその4隅(左天板部3と右天板部4のそれぞれの角部4箇所)と中央部5の2箇所に設けられている6本の脚柱9で支持されている。これら脚柱9の内、右天板部4の前方の隅を支える脚柱9と、中央部5を支える2本の脚柱9の内、右側の脚柱9をコンロ7の前面の左右となる位置に配置し、中央部5を支える脚柱9の残りの左側の1本をシンク8の右脇の前後方向中央位置に配置させている。
【0020】
このような脚柱9の配置位置によって、コンロ7とシンク8の使用により天板2に加わる負荷と、コンロ7とシンク8をセットするための天板2の切り欠きによる強度ダウンとを、天板2の4隅を支える脚柱9と中央部5の2箇所を支える脚柱9とで補うことで、強度上問題のない調理実習台1を提供することができる。
【0021】
また、中央部5の下方に収納された収納ボックス20には、前後に手掛部20bが形成されているため、実習生は下方の広い空間部10を利用して、天板2の前後より収納ボックス20の自由な出し入れを行えるようになっている。
【0022】
さらに、断面略凸条のダクトカバー11により給排水管8bや水道管等が覆われているので見栄えが良いばかりでなく、天板2下方に例えば調理時に必要な収納ボックス20や、椅子等を押し込んだ場合であってもダクトカバー11によって配管類が保護され、かつダクトカバー11の形状は、その断面が一部突出した凸状であることから、その凸状部に配管類を収納させ、天板2の下部を占有するダクトカバー11の占有面積を極力少なくすることができる。したがって、シンク8近傍の天板2の前後域下方に部分的な空間部10が形成され、実習生19がシンク8に近づく場合でも実習生19の足場が余裕を持って確保される。
【0023】
次に、図4に示されるように調理実習台1の利用方法について具体的に説明する。まずシンク8の右側部近傍と中央部5、そしてコンロ7の左側部近傍にかけては、連続して調理台部6(天板2の斜線部分)が形成されており、この調理台部6は食材置き場としたり、これら食材を加工および調理を行う場として利用される。
【0024】
また、例えば調理の指導員が中央部5の屈曲した前側の位置で指導をすれば、天板2全体の状態を見渡すことができ、各実習生19の調理状況等の全体を把握しながら的確に実習生19に指導を行うことができるとともに、天板2周囲の実習生19のどの位置からでも指導員の調理の手本等を閲覧でき、多くの実習生19を調理に参加させることが可能となる。また、調理台部6を調理後の試食用のスペースとしても利用できる。
【0025】
次いで、シンク8の位置は左天板部3の前側面2aおよび後側面2bの略中央位置に設けられるとともに、蛇口8aも左天板部3の前後からほぼ等距離にあるので、前後のどちらからでも実習生19は蛇口8aに手が届き易いので使い勝手が良く、前後側より共同作業でシンク8を同時使用で利用できる。
【0026】
しかも、蛇口8aへの配管である排水管8bや蛇口8aへの供給管である水道管も、左天板部4の天板2左側の下方に設けられたことで、シンク8下近傍の前後位置に空間部が形成され、実習生19がシンク8に近づく場合の足場も確保でき、作業効率の向上が図られている。
【0027】
さらに、天板2の外周面を構成する前側面2a・後側面2b・左側面2c・右側面2dから形成される4隅の角部が滑らかな弧状曲面であるとともに、中央部5の前後の中央位置も緩やかな角度で屈曲された平面視略く字形で形成されているので、実習生19はシンク8、コンロ7及び調理台部6間の天板2周りの移動が円滑に行え調理作業もスムーズに行える。
【0028】
以上の説明により実施例では、天板2の外周面全体には角部がないので、実習生19の衣類(エプロン等)を引っ掛けることや身体をぶつけることがなく、安全に使用することができ、しかも天板2の前側からも後側からも行える調理台部6を利用して調理場所を確保しつつ、シンク8とコンロ7間の距離を短くすることができ、天板2周りの移動も円滑に行える調理実習台1となる。
【0029】
なお、調理実習台1を利用した使用実施形態としては、図5に示されるように、教室内に複数の調理実習台1を配置してクラス単位で利用することが多く、グループ班毎に一つの調理実習台1を使用して調理実習が行われており、各隣接する調理実習台1,1間の空きスペースには前述したテーブル21(図1参照)も配置され、多目的に利用可能になっている。
【0030】
このように、教室内に複数の調理実習台1が配置されている場合であっても、平面視略く字形の天板2は角部のない滑らかな外周面(前側面2a・後側面2b・左側面2c・右側面2d)なので、実習生19はスムーズな移動が行えるとともにデザイン的にも見栄えがよい。しかも、各調理実習台1に位置する実習生19を指導する指導員も調理実習台1の周囲を円滑に移動して調理指導を行え、各調理実習台1間の移動も容易である。
【0031】
そして、複数の実習生19が一つの調理実習台1で同時に調理作業を行える調理スペースである調理台部6が確保されるとともにシンク8も前後より同時に利用できるので、実習生19は効率的かつ機敏に調理を行える。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれ、例えば上記実施例では、調理台部6をシンク8の右側部近傍と中央部5、そしてコンロ7の左側部近傍にかけた範囲としたが、シンク8の左側部からシンク8の前後周りのスペースを広めに形成して同様に調理台部6の一部として利用可能であり食材の載置場所として利用しても良いし、食材の加工および調理等に利用しても良い。
【0033】
また、上記実施例では、調理実習台1の右方位置にコンロ7が左方位置にシンク8が設けられているが、コンロとシンクの位置を逆転させても良い。また、蛇口8aは固定タイプでなく、例えば、前後に回動可能な首振り型の蛇口を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例における調理実習台の全体像を示す斜視図である。
【図2】調理実習台と収納ボックスの収納状況を示す平面図である。
【図3】収納ボックスが収納された調理実習台を示す正面図である。
【図4】調理実習台の使用例を示す平面図である。
【図5】複数の調理実習台が配置された教室における調理実習の利用形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 調理実習台
2 天板(平面視く字形天板)
2a 前側面
2b 後側面
2c 左側面
2d 右側面
3 左天板部
4 右天板部
5 中央部
6 調理台部
7 コンロ
7a 操作部
8 シンク
8a 蛇口
8b 排水管
9 脚柱
10 空間部
11 ダクトカバー
13 外カバー材
14 外カバー材
19 実習生
20 収納ボックス
20a キャスタ
20b 手掛部
21 テーブル
21a キャスタ
22 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側にコンロを、他端側にシンクを配置した天板上で調理を行う調理実習台であって、前記天板は、略等幅で左右端から中央部にかけて緩やかな角度で屈曲した平面視略く字形に形成され、前記中央部を調理台部としたことを特徴とする調理実習台。
【請求項2】
前記シンクを、天板の前後方向略中央部に配置した請求項1に記載の調理実習台。
【請求項3】
前記天板の側部寄りでほぼ前後の中間位置にシンク用の蛇口が配備されている請求項2に記載の調理実習台。
【請求項4】
前記天板の下部において、前記蛇口への給水管とシンクからの排水管を内側から平面視略凸状のダクトカバーで覆った請求項3に記載の調理実習台。
【請求項5】
前記天板を、天板の4隅と中央部2箇所とを脚柱で支持するものとし、前記脚柱の内、天板の4隅を支える脚柱の1本と天板の中央部を支える脚柱の1本とをコンロの前面の左右となる位置に配置し、前記脚柱の内、天板の中央部を支える脚柱の残りの1本をシンクの前後方向中央のシンクの脇となる位置に配置した請求項1乃至4のいずれかに記載の調理実習台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−333974(P2006−333974A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159826(P2005−159826)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】