説明

調理用鍋蓋およびそれを備えた調理用鍋

【課題】料理の種類や量に応じて鍋本体と鍋蓋とで構成される内部空間の広さを変化させることができ、一つの鍋を多種多様な用途に使用可能とする調理用鍋蓋およびそれを備えた調理用鍋を提供する。
【解決手段】本発明の調理用鍋蓋3は、鍋本体2の上部に配される鍋蓋であって、高さ方向に伸縮可能で、鍋本体2と鍋蓋3で構成される内部空間の広さを調整可能とする。また、本発明の調理用鍋1は、鍋本体2と、鍋本体2の上部に配される鍋蓋3とを有し、鍋蓋3は高さ方向に伸縮可能で、鍋本体2と鍋蓋3で構成される内部空間の広さを調整可能に構成されている。このため、鍋蓋3の高さを変化させることで鍋本体2と鍋蓋3とで構成される内部空間の広さを調整して、一つの鍋で多種多様な用途に使用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの鍋を多種多様な用途に使用可能とする調理用鍋蓋およびそれを備えた調理用鍋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属製、陶磁製または耐熱ガラス製など様々な材質から形成された調理用鍋が使用されている。
これら調理用鍋の一般的な構造は、鍋本体とこの鍋本体の上端開口縁部に載置された鍋蓋とから構成されている。
【0003】
ところで、調理用鍋を使用する場合、料理の種類や量に応じて適切な鍋を選定して使用しているが、その選択基準としては、容量やそれに伴う熱効率で選定することが多い。ここで、従来の調理用鍋は、鍋蓋が変形不能な所定形状に形成されているため、鍋本体と鍋蓋とで構成される内部空間の広さを変化させることができず、料理の種類や量に応じた様々な調理用鍋を買い揃える必要があった。
【特許文献1】特開2006−122368号公報
【特許文献2】特開2003−275095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の課題は、料理の種類や量に応じて鍋本体と鍋蓋とで構成される内部空間の広さを変化させることができ、一つの鍋を多種多様な用途に使用可能とする調理用鍋蓋およびそれを備えた調理用鍋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するものは、鍋本体の上部に配される鍋蓋であって、該鍋蓋は高さ方向に伸縮可能で、前記鍋本体と前記鍋蓋とで構成される内部空間の広さを調整可能にすることを特徴とする調理用鍋蓋である。
【0006】
前記鍋蓋は、盤状に収縮可能に形成されていることが好ましい。前記鍋蓋は、蛇腹状に形成されていることが好ましい。前記鍋蓋は、段階的に収縮可能に形成されていることが好ましい。前記鍋蓋は、シリコーンゴムにて形成されていることが好ましい。
【0007】
また、上記課題を解決するものは、鍋本体と、該鍋本体の上部に配される鍋蓋とを有し、該鍋蓋は高さ方向に伸縮可能で、前記鍋本体と前記鍋蓋とで構成される内部空間の広さを調整可能に構成されていることを特徴とする調理用鍋である。
【0008】
前記鍋本体の上端開口縁部に、多孔盤が配されていることが好ましい。前記調理用鍋は、土鍋であることが好ましい。前記鍋本体は陶磁製材料にて形成されており、前記鍋蓋はシリコーンゴムにて形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した発明によれば、料理の種類や量に応じて鍋本体と鍋蓋とで構成される内部空間の広さを変化させることができ、一つの鍋を多種多様な用途に使用可能とする。
請求項2に記載した発明によれば、上記請求項1の効果に加え、鍋蓋を鍋敷きとしても使用できる。
請求項3に記載した発明によれば、高さ方向に伸縮可能な鍋蓋を効果的かつ簡素な構造で実現できる。
請求項4に記載した発明によれば、段階的に複数種の鍋蓋形状を構成できることにより、料理に適した鍋蓋形状に変形させることができる。
請求項5に記載した発明によれば、耐熱性、変形容易性、軽量性、耐候性、撥水性、耐水性、耐スチーム性、熱伝導性、難燃性、引き裂き強度性、着色性、生理的不活性、無臭性等に優れた鍋蓋を形成できる。
請求項6に記載した発明によれば、料理の種類や量に応じて鍋本体と鍋蓋とで構成される内部空間の広さを変化させることができ、一つの鍋で多種多様な用途に使用できる。
請求項7に記載した発明によれば、一つの調理用鍋でさらに多種多様な料理または用途に使用できる。
請求項8に記載した発明によれば、上記請求項6または7の効果に加え、遠赤外線効果の高い調理用鍋になると共に、取り扱いが極めて容易かつ良好な土鍋となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の調理用鍋の一実施例の正面図である。
【図2】図1に示した調理用鍋の平面図である。
【図3】図1に示した調理用鍋の使用例を説明するための斜視図である。
【図4】図1に示した調理用鍋の構成要素を説明するための斜視図である。
【図5】図1に示した調理用鍋の使用例を説明するための斜視図である。
【図6】図1に示した調理用鍋の使用例を説明するための斜視図である。
【図7】図1に示した調理用鍋の使用例を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、鍋蓋が高さ方向に伸縮可能で、鍋本体と鍋蓋とで構成される内部空間の広さが調整可能となることで、料理の種類や量に応じて内部空間の広さを変化させることができ、一つの鍋を多種多様な用途に使用できる調理用鍋蓋およびそれを備えた調理用鍋を実現した。
【実施例1】
【0012】
本発明の調理用鍋蓋およびそれを備えた調理用鍋を図1ないし図7に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例の調理用鍋1は、図1に示すように、鍋本体2と、鍋本体2の上部に配される鍋蓋(調理用鍋蓋)3とを有し、鍋蓋3は高さ方向に伸縮可能で、鍋本体2と鍋蓋3とで構成される内部空間の広さを調整可能に構成されている。以下、各構成について順次詳述する。
【0013】
この調理用鍋1は土鍋であり、鍋本体2はペタライトを含有した低熱膨張性耐熱鍋土で形成されており、耐熱性、耐水性および強度性に優れた性質を有している。なお、鍋本体を形成する原料としては、これに限定されるものではなく、コージライトを含有した低熱膨張性耐熱鍋土でもよく、また、耐熱性は劣るがペタライトやコージライトを含まない土鍋土を使用したものでもよい。また、本発明の調理用鍋は土鍋に限定されるものではなく、調理に使用される鍋を広く包含するものである。ただし、土鍋とすることにより材質的に遠赤外線効果の高い調理用鍋になると共に、取り扱いが極めて容易かつ良好な土鍋が構成される。
【0014】
鍋本体2は、図1に示すように、有底でかつ上部が開口した具材等収容部2aと、この具材等収容部2aの上部に拡径して設けられた鍋本体把持部2bとが一体成形されて構成されている。鍋本体把持部2bは、図2に示すように、平面視円環状に形成されることにより、部分的に突出した把持部が構成されることがなく、土鍋を囲む全員がどの方向からでも正面となるように構成されている。
【0015】
鍋蓋3は、調理時に鍋本体2の上部に配されるものであり、高さ方向に伸縮可能である点に特徴を有している。本発明の調理用鍋は、このような構成により、鍋本体2と鍋蓋3で構成される内部空間の広さが調整可能であり、料理の種類や量に応じて鍋本体2と鍋蓋3とで構成される内部空間の広さを変化させることができ、一つの鍋で多種多様な料理に使用することができる。
【0016】
この実施例の鍋蓋3は、蛇腹状に形成されることで高さ方向に伸縮可能に構成されている。具体的には、鍋蓋3は、図3に示すように、上端に設けられた鍋蓋把持部3aと下端開口縁部3bとの間に3つの折り畳み部(第1折り畳み部3c,第2折り畳み部3d,第3折り畳み部3e)を備えている。これら第1折り畳み部3c、第2折り畳み部3dまたは第3折り畳み部3eは、これらの順に拡径する円環状部であり、それぞれの部位にて折り畳みまたは伸長可能に構成されている。このように、複数の折り畳み部が外側に向かって大きく(内側に向かって徐々に小さく)なるように形成されることにより、収縮した場合に折り畳み部同士が高さ方向に重ならず、より薄い盤状に収縮させることができると共に、鍋敷きとしても安定した形態となる。
【0017】
例えば、図1、図3または図4の状態では、第1折り畳み部3c、第2折り畳み部3dまたは第3折り畳み部3eが全て伸長した状態となっており、この状態で鍋本体2の上部に配されると、鍋蓋3は高さ方向に最も高く、鍋本体2と鍋蓋3で構成される内部空間を最も広くすることができる。なお、この実施例の鍋蓋3は、図3に示すように、上方に向かって縮径する略円錐形状に形成されているが、このような形態に限定されるものではなく、例えば略円筒形状の筒形状や多角錐形状などに形成されたものも本発明の範疇に包含される。
【0018】
図5の状態では、第1折り畳み部3c、第2折り畳み部3dまたは第3折り畳み部3eは全て折り畳んだ状態となっており、この状態で鍋本体2の上部に配されると、鍋蓋3は高さ方向に最も低く、鍋本体2と鍋蓋3で構成される内部空間を最も狭くすることができる。そして、この状態では、図6に示すように、鍋蓋3を鍋敷きとして使用することもできると共に、収納上、鍋蓋3が嵩張らず便利である。
【0019】
さらに、鍋蓋3は、第1折り畳み部3c、第2折り畳み部3dまたは第3折り畳み部3eのいずれかを選択的に折り畳んで段階的に収縮させることができる。これにより、各料理に適した鍋蓋形状に変形させることができる。また、図7の状態は、第1折り畳み部3cおよび第2折り畳み部3dを折り畳み、第3折り畳み部3eを伸長させたものであるが、図のような形態となって鍋本体2等の受け皿として使用することも可能となる。
【0020】
なお、鍋蓋3は上記のような蛇腹形態に限定されるものではなく、高さ方向に伸縮可能で、かつ鍋本体2と鍋蓋3とで構成される内部空間の広さが調整可能なものであればどのような形態のものでもよい。また、鍋蓋3の鍋蓋把持部3aは他の部位に比して肉厚に形成されることで把持し易く形成されており、さらに、図1または図2に示した4は蒸気が外部に流出するための蒸気孔である。
【0021】
そして、この実施例の鍋蓋3はシリコーンゴムにて形成されている。このシリコーンゴムを使用する第1のメリットは耐熱性の高さであり、シリコーンゴムは250℃前後まで耐え得る耐熱性を有し鍋蓋の構成材料としての条件を十分に満たしている。第2のメリットは本発明の鍋蓋が高さ方向に伸縮可能であることに関連してシリコーンゴムが変形容易性を備えている点である。第3のメリットは、従来の鍋、特に土鍋は鍋蓋が重過ぎて女性やお年寄りにとっては極めて取り扱いづらいものであったが、シリコーンゴムで形成することにより著しく軽量化できる点である。第4のメリットは、鍋蓋の構成材料として要求される耐候性、撥水性、耐水性および耐スチーム性に優れている点である。第5のメリットとしては、熱伝導性が高く放熱しやすいことから、沸騰したような場合でも比較的容易に鍋蓋を把持できる点である。第6のメリットしては、ゴムであることのデメリットを解消する性質として、難燃性、引き裂き強度性および無臭性に優れている点である。第7のメリットは着色性に富むため様々な色彩の鍋蓋を形成できる点である。第8のメリットしては、シリコーンゴムがほ乳瓶用乳首に形成材料として使用されるように、生理的不活性で調理具に使用しても安全な点である。第9のメリットとしては、従来の陶磁製鍋蓋は重くて滑りやすいため、落として破損することが多々あったが、割れることもなく安全な点である。
【0022】
このように、この実施例の調理用鍋1は、鍋蓋3はシリコーンゴムにて形成されており、鍋本体2は前述したように陶磁製材料にて形成されている。そのため、遠赤外線効果が高く、より軽量な調理用鍋となる。特に、調理用鍋1は土鍋であるため、女性やお年寄りにとっても取り扱い易く、鍋蓋が軽量であるため落とすことも少なく、仮に落としたとしても危険がない。
【0023】
また、この実施例の調理用鍋1は、図3または図4に示すように、鍋本体2の上端開口縁部(鍋本体把持部)2bに多孔盤5が配されている。この多孔盤5は、多数の貫通孔5aを備えた円盤部5bと、円盤部5bの周囲に設けられた環状フランジ5cとを有し、シリコーンゴムにて一体成形されている。そして、図3に示すように、環状フランジ5cが鍋本体2の上端開口縁部(鍋本体把持部)2bに載置され、全体として蒸し器としても使用できるように構成されている。
【0024】
つぎに、本発明の調理用鍋1の多種多様な使用方法について説明する。
本発明の調理用鍋1は、前述したように、第1折り畳み部3c、第2折り畳み部3dまたは第3折り畳み部3eのいずれかを選択的に折り畳んで段階的に収縮させることができ、鍋本体2と鍋蓋3で構成される内部空間の広さを調整して各料理に使用することができるものである。
【0025】
例えば、第1折り畳み部3c、第2折り畳み部3dまたは第3折り畳み部3eのすべてを伸長させて、鍋蓋3を高さ方向に最も高く、鍋本体2と鍋蓋3で構成される内部空間を最も広くした状態(図1または図3の状態)では、多孔盤5を配することで蒸し料理に好適に使用できる。また、この状態の鍋蓋3は、仕込み材の収納容器、サラダボールまたは殻入れなどとしても使用できる。
【0026】
また、第1折り畳み部3c、第2折り畳み部3dまたは第3折り畳み部3eのいずれかを伸長させると共にいずれかを折り畳むことにより、例えば図7の鍋蓋3の状態のように、一般的な土鍋の鍋蓋3の高さにすることができ、寄せ鍋などの各種鍋料理やパスタを茹でる場合などに好適に使用することができる。また、この状態の鍋蓋3は、図7に示すように鍋本体2や他の容器の受け皿などにも使用できる。
【0027】
さらに、第1折り畳み部3c、第2折り畳み部3dまたは第3折り畳み部3eのすべてを収縮させて、鍋蓋3を高さ方向に最も低く、鍋本体2と鍋蓋3で構成される内部空間を最も狭くした状態(図5の状態)では、例えば煮物等の一般的な料理や速やかに加熱を要する料理に使用すると、熱効率がよく経済的に調理できる。また、この状態の鍋蓋3は、図6に示すように、鍋本体2の他、やかんまたはフライパンなどの加熱体を載置する鍋敷きとしても好適に使用できる。
【0028】
さらに、多孔盤5は単独でざるや水切り板として食材を載置することができると共に、図3の状態のように、鍋本体2内で例えばパスタを茹でた後の湯切りとしても機能させることもできる。
【0029】
以上のように、本発明の調理用鍋1は一つの鍋で多種多様な用途に使用することができ、特に土鍋とすることにより、さらに用途が広くなると共に軽量で取り扱い易い安全な土鍋を構成できる。
【符号の説明】
【0030】
1 調理用鍋
2 鍋本体
3 鍋蓋
4 蒸気孔
5 多孔盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋本体の上部に配される鍋蓋であって、該鍋蓋は高さ方向に伸縮可能で、前記鍋本体と前記鍋蓋とで構成される内部空間の広さを調整可能にすることを特徴とする調理用鍋蓋。
【請求項2】
前記鍋蓋は、盤状に収縮可能に形成されている請求項1に記載の調理用鍋蓋。
【請求項3】
前記鍋蓋は、蛇腹状に形成されている請求項1または2に記載の調理用鍋蓋。
【請求項4】
前記鍋蓋は、段階的に収縮可能に形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の調理用鍋蓋。
【請求項5】
前記鍋蓋は、シリコーンゴムにて形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の調理用鍋蓋。
【請求項6】
鍋本体と、該鍋本体の上部に配される鍋蓋とを有し、該鍋蓋は高さ方向に伸縮可能で、前記鍋本体と前記鍋蓋とで構成される内部空間の広さを調整可能に構成されていることを特徴とする調理用鍋。
【請求項7】
前記鍋本体の上端開口縁部に、多孔盤が配されている請求項6に記載の調理用鍋。
【請求項8】
前記調理用鍋は、土鍋である請求項6または7に記載の調理用鍋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−10668(P2011−10668A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154558(P2009−154558)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(502362127)ミヤザキ食器株式会社 (1)
【Fターム(参考)】