説明

調理装置

【課題】加熱エネルギ及び水の消費を抑えつつ調理条件を均一なものとすることができると同時に、湯槽内の湯を沸騰させずに食材に対してエアを噴出することができ、麺類から成る食材を十分に解し得る調理装置を提供する。
【解決手段】所定量の水を収容し得るとともに、麺類から成る食材を投入可能な湯槽5と、該湯槽5内における底面側に配設されて、当該湯槽5内部の水を加熱するためのヒータパイプ7と、湯槽5内の湯を沸騰直前の温度にて維持すべくバーナ6を制御する制御手段8と、湯槽5内における食材が投入されるべき位置より下方に配設され、当該食材が投入されるべき位置に向かって開口した噴出口14aを有した噴出用パイプ14とを備え、噴出用パイプ14の噴出口14aは、当該噴出用パイプ14に形成された凹部14bの略中央に開口し、食材に噴出されるエアを塊とし得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を調理するための調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍又は冷蔵された食材を解凍して調理するための調理装置として、冷凍又は冷蔵された麺類を茹でるための業務用茹麺装置が挙げられる。かかる茹麺装置は、従来、所定量の水を収容し得る湯槽と、該湯槽内に水を供給し得る給水手段と、湯槽内の水を加熱して沸騰させるための加熱手段とを具備して構成されており、麺を収容したテボを保持すべく湯槽上部には例えば6つの丸孔を有したテボ受け板が設けられていた。
【0003】
また、テボ受け板の丸孔の下方であって加熱手段の上方には、各丸孔に対応した6つの孔を有した板材が配設されており、加熱手段による沸騰で生じた気泡が各テボに向かって上昇するよう構成されていた。これにより、テボ内の麺は、沸騰した湯にて解凍調理されるとともに、上昇した気泡によって良好に解されることとなる。尚、かかる従来の茹麺装置は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の調理装置においては、湯槽内の水を沸騰させて食材を解凍調理しているため、以下の如き問題があった。即ち、湯槽内の水を沸騰させると、その水が蒸発して湯槽内の水(湯)が少なくなってしまうので、逐次水を供給しなければならず、沸騰させるための加熱エネルギの消費に加え、水の消費も多大なものとなってしまう問題があった。
【0005】
また、水道水を湯槽内に供給して沸騰させると、水分のみが蒸発して不純物(カルキ等塩素系不純物)の濃度が高くなってしまうという不具合がある。不純物濃度が高くなると、当該不純物が析出して湯槽内の加熱手段に付着し、加熱効率が低下し、一層消費熱エネルギが増加してしまう問題もあった。更に、湯気が調理室内に絶えず放出されるため、作業環境が悪化してしまうという付随的問題もあった。
【0006】
然るに、所謂ファミリーレストラン等フランチャイズ系の店においては、専門の調理人が不足しており、アルバイト等調理に関してあまり知識がない者でも同一品質の調理が可能となるべき工夫がされており、例えば茹麺装置においては、常時湯槽内の湯を沸騰させておき、調理の均一化を図っているのが現状である。即ち、調理人が湯の温度管理をしなくて済むように、湯槽内の湯は常時沸騰させておく必要があったのである。
【0007】
ところで、従来の茹麺装置においては、沸騰した湯の中に冷凍又は冷蔵の食材(冷凍又は冷蔵麺)を投入していたのであるが、投入直後には食材周囲の湯温が100℃以下に下がってしまい、沸騰直前の温度となることが分かった。これは、100℃以下の湯であっても食材の解凍調理は十分可能であることを示しており、麺を解す作用等所定の条件さえ満たせば、必ずしも湯温を100℃に保つ必要がないことを示している。
【0008】
そこで、本出願人は、沸騰直前の湯温にて冷凍又は冷蔵の食材を解凍調理することを検討したが、その場合、投入された麺に向かって上昇する気泡がほとんどなくなるため、冷凍又は冷蔵の麺を十分に解すことができない虞があった。また、食材に向かって上昇する気泡がないため、投入された食材(麺に限らない)の周りの湯と他の部位の湯との間の対流があまりなく、当該食材の周りの湯の温度低下が著しくなって、短時間に十分な解凍調理を行うことができない虞もあった。
【0009】
一方、湯槽に投入される食材は、気泡が生じた湯によって解凍調理されることを前提として冷凍又は冷蔵加工されているものも多く、気泡が全くない条件下においては良好な解凍調理が行えないものもある。例えば冷凍又は冷蔵麺等においては、気泡が下方から噴出されることによって素早く解れるように加工してあり、かかる気泡の噴出がないと確実で均一な解凍調理が行えない虞がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、加熱エネルギ及び水の消費を抑えつつ調理条件を均一なものとすることができると同時に、湯槽内の湯を沸騰させずに食材に対してエアを噴出することができ、麺類から成る食材を十分に解し得る調理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、所定量の水を収容し得るとともに、麺類から成る食材を投入可能な湯槽と、該湯槽内における底面側に配設されて、当該湯槽内部の水を加熱するための加熱手段と、前記湯槽内の湯を沸騰直前の温度にて維持すべく前記加熱手段を制御する制御手段と、前記湯槽内における食材が投入されるべき位置より下方に配設され、当該食材が投入されるべき位置に向かって開口した噴出口を有した噴出用パイプを有し、前記湯槽内における食材が投入されるべき位置に向かって加熱されたエアを噴出するエア噴出手段とを備え、前記噴出用パイプの噴出口は、当該噴出用パイプに形成された凹部の略中央に開口し、食材に噴出されるエアを塊とし得ることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の調理装置において、前記エア噴出手段は、先端が前記噴出用パイプと連結され、前記湯槽の水位よりも高い位置まで延設された導入パイプと、該導入パイプの基端側に配設されて当該導入パイプを介して前記噴出用パイプにエアを供給するエアポンプとを有し、前記導入パイプを通過するエアを加熱することにより、前記噴出用パイプの噴出口から加熱されたエアを噴出することを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の調理装置において、前記加熱手段は、一端が燃焼室と連結されつつ前記湯槽内における底面側で延設されたヒータパイプから成り、該ヒータパイプの他端に排煙部を突設させるとともに、前記導入パイプを当該排煙部内で延設させることにより前記導入パイプ内を通過するエアを加熱し得る構成とされたことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の調理装置において、前記排煙部内に位置する前記導入パイプの側壁には、熱交換用のフィンが形成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の調理装置において、前記排煙部内に位置する前記導入パイプは、少なくとも一部がコイル状に形成されて成ることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の調理装置において、前記湯槽内の湯は、解凍調理時間及び待機時間に亘って、前記制御手段により略96℃に保持されていることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の調理装置において、前記湯槽内に投入されるべき食材は、冷凍又は冷蔵された麺類であることを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の調理装置において、前記噴出用パイプの噴出口は、前記湯槽内における食材が投入されるべき位置の中心より所定寸法オフセットして開口したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、湯槽内の湯が沸騰直前の温度に制御されるとともに、エア噴出手段によって湯槽内における食材が投入されるべき位置に向かって加熱されたエアを噴出するので、加熱エネルギ及び水の消費を抑えつつ調理条件を均一なものとすることができると同時に、湯槽内の湯を沸騰させずに食材に対して気泡を噴出することができる。また、噴出されるエアは加熱されているため、湯槽内の湯、特に食材の周りの湯の温度が著しく低下してしまうのを回避することができる。更に、噴出用パイプの噴出口は、当該噴出用パイプに形成された凹部の略中央に開口しているので、食材に噴出されるエアを湯槽内において塊とすることができ、より効果的に冷凍又は冷蔵された食材を解凍調理することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、導入パイプが湯槽の水位より高い位置まで延設されているので、湯槽の湯が噴出用パイプの噴出口から逆流してエアポンプ又はその近傍まで至ってしまうのを回避できる。従って、エアを噴出させるべき噴出口に逆止弁等別途の逆流防止手段を設けることを不要とし、装置構成を簡素化することができるとともに、部品点数を削減して製造コストを低減させることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、導入パイプを排煙部内で延設させているので、燃焼室で生じた熱はヒートパイプを通過して湯槽内の水を加熱した後、排煙部を通過して導入パイプ内のエアを加熱することとなる。従って、エアを加熱するための別途の手段が不要となるので、装置構成を簡素化することができるとともに、部品点数を削除して製造コストを低減させることができる。また、エアを加熱する別途の手段が不要となるため、装置全体としての加熱エネルギの消費を更に抑えることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、排煙部内に位置する導入パイプの側壁には熱交換用のフィンが形成されているので、排煙部内の熱風の熱がより効率的に導入パイプ内を通過するエアに伝達され、噴出パイプの噴出口から噴出されるエアを確実に高温に維持することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、排煙部内に位置する導入パイプは、少なくとも一部がコイル状に形成されて成るので、排煙部内の熱風の熱がより効率的に導入パイプ内を通過するエアに伝達され、噴出パイプの噴出口から噴出されるエアを確実に高温に維持することができ、且つ、フィンを形成するものに比べて、製造が容易である。従って、製造コストが嵩むのを抑制することができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、湯槽内の湯は、解凍調理時間及び待機時間に亘って、制御手段により略96℃に保持されるので、加熱エネルギ及び水の消費を抑えつつ調理条件を均一なものとすべく、容易に且つ確実に湯槽内の湯を沸騰直前の温度に維持することができるとともに、十分な解凍調理を行うことができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、湯槽内に投入されるべき食材は、冷凍又は冷蔵された麺類であるので、エアの噴出による解し効果を十分に享受することができ、より十分な解凍調理を行うことができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、噴出用パイプの噴出口は、湯槽内における食材が投入されるべき位置の中心より所定寸法オフセットして開口しているので、食材の周りの湯と他の部位の湯との間の対流を促進すると同時に、麺を解す作用を一層大きく付与することができ、より確実且つ均一な調理を行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る調理装置は、調理場に設置されて、工場等で予め茹でた後に冷凍加工した麺を解凍調理するための茹麺装置から成り、図1に示すように、茹麺装置本体1と、該茹麺装置本体1の背面側から上方に突設された排煙部2と、茹麺装置本体1の前面側に設けられた操作部3と、茹麺装置本体1の上部に設けられた調理部4とによって外観が構成されている。
【0028】
茹麺装置本体1は、その底面四隅にそれぞれ脚部1aが設けられており、床面に対して立設可能とされた略箱状部材から成るものである。かかる茹麺装置本体1の内部には、調理部4を構成する湯槽5と、加熱手段としてのバーナ6及びヒータパイプ7と、制御手段8等が配設されており(図3参照)、それら内部構成要素のメンテナンスを容易ならしめるべく開閉扉1bが前面に形成されている。
【0029】
排煙部2は、図3に示すように、バーナ6の燃焼室10及びヒータパイプ7と連通して上方に開口したもので、当該バーナ6で生じた熱気或いは煙を外部へ排気するためのものである。即ち、バーナ6で加熱された空気は、燃焼室10からヒータパイプ7へ至り、その熱で湯槽5内の水を加熱しつつ、その後排煙部2から放出されるようになっている。
【0030】
操作部3は、バーナ6の点火、消火及び温度設定を操作するための操作パネル3aと、湯槽5内への給水を操作するための操作ツマミ3bとから主に構成されている。操作ツマミ3bを回動すると、給水コック(不図示)が開いて茹麺装置内まで導かれた給水管9(図1参照)から水道水が供給されるよう構成されている。
【0031】
調理部4は、冷凍麺を湯に投入して解凍調理し得る部位であり、上方に開放した茹麺装置本体1の開口部に湯槽5が嵌め込まれて成るとともに、その対向する縁部には湯の飛散を防止するための板材12が配設されている。湯槽5は、所定量の水を収容し得るとともに、食材としての冷凍麺を投入可能なものであり、その内部にはテボ受け板11と、ヒータパイプ7と、エア噴出手段としての噴出用パイプ14及び導入パイプ15等とが配設されている。
【0032】
テボ受け板11は、図2で示すように、湯槽5を覆う如く設置された平板状部材から成り、その平面には冷凍麺を保持するためのテボTを嵌合し得る6つの丸孔11aが形成されている。そして、テボTを丸孔11aに嵌合させると、図3及び図4の如く、冷凍麺Rが湯槽5内の湯に浸かって解凍調理され得るよう設定されている。
【0033】
ヒータパイプ7は、湯槽5内の底面側を縦断する如く3本併設されたものであり、それぞれの内部には複数のフィン7aが形成されている。該ヒータパイプ7の基端側は、既述の如くバーナ6の燃焼室10と連結されており、バーナ6によって加熱された空気された燃焼室10内の空気が、ヒータパイプ7を通過する過程において、フィン7aを介して湯槽5内の水を加熱し得るよう構成されている。尚、これらバーナ6及びヒータパイプ7によって本発明の加熱手段が構成されている。
【0034】
また、茹麺装置本体1内には、マイコン等から成る制御手段8が配設されており、図5に示すように、該制御手段8とバーナ6とが電気的に接続されている一方、かかる制御手段8は、湯槽5内に配設された検出手段13とも電気的に接続されている。この検出手段13は、湯槽5内の湯の温度を検出するための温度センサから成り、検出された値を電気信号として制御手段8へ送信可能とされている。
【0035】
制御手段8は、湯槽5内の湯を沸騰直前の温度にて維持すべくバーナ6を制御するためのもので、検出手段13で検出された温度に応じてバーナ6をオン、オフ制御する駆動制御手段8aを備えて成る。即ち、湯槽5内の湯が沸騰直前の所定温度から下がった場合、駆動制御手段8aを介してバーナ6をオンする(点火)とともに、湯槽5内の湯が沸騰直前の所定温度から上がった場合、駆動制御手段8aを介してバーナ6をオフする(消火)よう構成されているのである。
【0036】
湯槽5内の湯の温度は、解凍調理時間及び待機時間に亘って、略96℃に保持されるべく制御手段8によって制御されるのが好ましい。即ち、解凍調理が行われていない待機時間は勿論、解凍調理時間においても沸騰直前の96℃に湯温が設定されているので、沸騰による不具合を回避しつつ十分な解凍調理を行うことができる。尚、解凍調理に支障がない範囲における沸騰直前の温度であれば、96℃に限定されず、調理人の任意の温度域に湯温を保つようにしてもよい。
【0037】
より具体的には、沸騰による水分の蒸発を回避することができるため、湯槽5内への給水を大幅に低減させることができ、加熱エネルギ及び水の消費を抑制することができるとともに、水分蒸発に起因して湯槽5内で不純物が析出することにより当該析出物がヒータパイプ7の外周面等に付着してしまうのを回避でき、加熱効率を更に向上させることができる。また、水分の蒸発による調理環境の悪化を回避することもできる。
【0038】
また、湯槽5内における冷凍麺Rが投入されるべき位置より下方(即ち、テボ受け板11の丸孔11aに嵌合されたテボTの底面より下方の位置)には、図2に示すように、平面視コ字状の噴出用パイプ14が延設されている。かかる噴出用パイプ14における各丸孔11aに対応する位置には、噴出口14aがそれぞれ形成されており、湯槽5内における冷凍麺Rが投入されるべき位置に向かって加熱されたエアを噴出し得るよう構成されている。
【0039】
より具体的には、噴出用パイプ14の噴出口14aは、同図に示すように、テボ受け板11における丸孔11aの中心Cから寸法m(20mm程度が好ましい)だけオフセットして開口しており、該噴出口14aから噴出されるエアがテボTに収容された冷凍麺(食材)の周りの湯と他の部位の湯との間の対流を促進すると同時に、麺を回転させて解す作用を一層大きく付与することができ、より確実且つ均一な調理を行わせることができる。
【0040】
噴出用パイプ14の一端は、接続管15aを介して導入パイプ15と接続されているとともに、その他端は、排煙部2に接続されているので、当該噴出用パイプ14を流れる加熱されたエアは、噴出口14aから冷凍麺Rに向かって噴出される。
【0041】
導入パイプ15は、図3に示すように、その先端が接続管15aを介して噴出用パイプ14に連結され、湯槽5の水位よりも高い位置まで延びた後に排煙部2内を下方へ垂下し、その他端15bにてエアポンプPと接続されている。即ち、エアポンプPにて供給されたエアは、導入パイプ15を通って噴出用パイプ14に至るのであるが、当該導入パイプ15通過の過程において、排煙部2内を流動する排煙の熱にて加熱され、噴出用パイプ14に至るよう構成されているのである。
【0042】
尚、接続管15aを用いずに、導入パイプ15先端と噴出用パイプ14一端とを嵌合させてもよいし、専用のカプラ等を用いてシール効果を高めるようにしてもよい。勿論、両パイプを一体的に成形したものを配設してもよいが、湯槽5内の清掃の容易性を考慮すると、別体のパイプを接続する方が好ましい。
【0043】
従って、加熱エネルギ及び水の消費を抑えつつ調理条件を均一なものとすることができ、湯槽5内の湯を沸騰させずに食材に対して気泡を噴出することができるのに加え、噴出されるエアは加熱されているため、湯槽5内の湯、特に冷凍麺Rの周りの湯の温度が著しく低下してしまうのを回避することができる。更に、エアを加熱するための別途の手段が不要となるので、装置構成を簡素化することができるとともに、部品点数を削除して製造コストを低減させることができる。また、エアを加熱する別途の手段が不要となるため、装置全体としての加熱エネルギの消費をより抑えることができる。
【0044】
尚、排煙部2内に位置する導入パイプ15の側壁には、熱交換用のフィン16が複数形成されている。これにより、排煙部2内の熱風の熱がより効率的に導入パイプ15内を通過するエアに伝達され、噴出用パイプ14の噴出口14aから噴出されるエアを確実に高温に維持することができる。
【0045】
更に、本実施形態においては、導入パイプ15が湯槽の水位より高い位置まで延設されているので、湯槽5の湯が噴出用パイプ14の噴出口14aから逆流してエアポンプP又はその近傍まで至ってしまうのを回避できる。従って、エアを噴出させるべき噴出口14aに逆止弁等別途の逆流防止手段を設けることを不要とし、装置構成を簡素化することができるとともに、部品点数を削減して製造コストを低減させることができる。
【0046】
上記の如く本実施形態における茹麺装置によれば、制御手段8により湯槽5内の湯が沸騰直前の温度に制御されるとともに、エア噴出手段によって湯槽5内における冷凍麺Rが投入されるべき位置に向かって加熱されたエアを噴出するので、加熱エネルギ及び水の消費を抑えつつ調理条件を均一なものとすることができると同時に、湯槽5内の湯を沸騰させずに冷凍麺Rに対して気泡を噴出することができ、従来の如き麺を解す作用を付加しつつ解凍調理を行うことができる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態に係る調理装置について説明する。
本実施形態に係る調理装置は、第1の実施形態と同様、調理場に設置されて、工場等で予め茹でた後に冷凍加工した麺を解凍調理するための茹麺装置から成り、茹麺装置本体1と、該茹麺装置本体1の背面側から上方に突設された排煙部2と、茹麺装置本体1の前面側に設けられた操作部3と、茹麺装置本体1の上部に設けられた調理部4とによって外観が構成されている(図1参照)。尚、第1の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略することとする。
【0048】
導入パイプ15’は、図6に示すように、その先端が接続管15aを介して噴出用パイプ14に連結され、湯槽5の水位よりも高い位置まで延びた後に排煙部2内を下方へ垂下し、その他端15’bにてエアポンプPと接続されている。即ち、エアポンプPにて供給されたエアは、導入パイプ15’を通って噴出用パイプ14に至るのであるが、当該導入パイプ15’通過の過程において、排煙部2内を流動する排煙の熱にて加熱され、噴出用パイプ14に至るよう構成されているのである。
【0049】
ここで、導入パイプ15’は、図7に示すように、湯槽5の水位よりも高い位置となる部位N(最も高い位置の部位N)がコイル状に形成されて成るものである。即ち、導入パイプ15’は、エアポンプPに接続される他端15’から立ち上がって、部位Nにて茹麺装置本体1の幅方向に亘ってコイル状に形成されつつ延設され、接続管15aまで垂下して構成されている。かかる構成により、排煙部2内を流動する排煙の熱を効率良く導入パイプ15’内のエアに伝達し得るので、噴出パイプ14の噴出口14aから噴出されるエアを確実に高温に維持することができ、且つ、第1の実施形態の如くフィンを形成するものに比べて、導入パイプ15’の製造が容易である。従って、装置全体の製造コストが嵩むのを抑制することができる。
【0050】
更に、噴出口14aは、図8に示すように、噴出用パイプ14に形成された凹部14bの略中央に開口しているため、冷凍麺に噴出されるエアを湯槽5内において塊(図中2点鎖線の如きエアの塊)とすることができ、より効果的に冷凍麺の解凍調理を行うことができる。即ち、かかる凹部14bがなく噴出口14aが単に開口しているのみの場合、供給されたエアが湯槽5内において線状に上昇するのみであるのに対し、本実施形態の如く凹部14bを有することにより、冷凍麺に噴出されるエアを塊として解凍調理をより効果的に行わせることができるのである。
【0051】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば湯槽5に投入されるべき食材として冷凍麺の他、冷蔵麺(工場等で予め茹でられた麺を冷蔵加工したもの)としてもよいし、更には他の冷凍又は冷蔵された食材を解凍調理するものとしてもよい。また、湯槽内部の水を加熱するための加熱手段は、本実施形態の如くバーナ6及びヒータパイプ7で構成されるものに限定されず、例えば湯槽の底面を直接炎で加熱するもの、或いは電気ヒータにて加熱するもの等種々のものとすることができる。
【0052】
更に、噴出用パイプと連結されるべき導入パイプは、湯槽5内の水位より上方まで達していれば足り、その位置でエアポンプPと接続して構成するようにしてもよい。かかる構成によっても、逆流手段等別途の手段を配設しなくても、噴出口14aからの湯の逆流を防止することができる。また、装置全体の加熱効率を考慮しなければ、導入パイプ15を排煙部2を通過させず、別途の加熱手段にてエアを加熱するようにしてもよい。
【0053】
また更に、上記構成に加え、ヒータパイプ7の上方を板材等で覆うことにより、当該ヒータパイプ7周囲の突沸により生じる気泡を閉じ込める構成としてもよい。かかる構成により、突沸で生じた気泡の上方への移動を規制することができるので、その気化熱が外部へ放出されてしまう(大気放出する)ことを回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
湯槽内の湯を沸騰直前の温度にて維持すべく制御手段にて加熱手段を制御するとともに、エア噴出手段にて湯槽内における食材が投入されるべき位置に向かって加熱されたエアを噴出するとともに、エア噴出手段の噴出口が湯槽内における食材が投入されるべき位置の中心より所定寸法オフセットして開口し、食材を回転させて解す作用を付与すべくエアが食材に向かって噴出する調理装置であれば、外観等が異なるもの、及び他の機能が付加されたものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る茹麺装置(調理装置)を示す全体斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る茹麺装置(調理装置)を示す上面図
【図3】同茹麺装置(調理装置)を示す断面図
【図4】同茹麺装置(調理装置)を示す断面図
【図5】本発明の実施形態に係る茹麺装置(調理装置)における湯温制御のための構成を示すブロック図
【図6】本発明の第2の実施形態に係る茹麺装置(調理装置)を示す断面図
【図7】同導入パイプを示す(a)正面図(b)側面図
【図8】同噴出用パイプにおける噴出口を示す断面図
【符号の説明】
【0056】
1…茹麺装置本体
2…排煙部
3…操作部
4…調理部
5…湯槽
6…バーナ(加熱手段)
7…ヒータパイプ(加熱手段)
8…制御手段
9…給水管
10…燃焼室
11…テボ受け板
12…板材
13…検出手段
14…噴出用パイプ(エア噴出手段)
14a…噴出口
14b…凹部
15、15’…導入パイプ(エア噴出手段)
16…(熱交換用の)フィン
P…エアポンプ
R…冷凍麺
T…テボ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の水を収容し得るとともに、麺類から成る食材を投入可能な湯槽と、
該湯槽内における底面側に配設されて、当該湯槽内部の水を加熱するための加熱手段と、
前記湯槽内の湯を沸騰直前の温度にて維持すべく前記加熱手段を制御する制御手段と、
前記湯槽内における食材が投入されるべき位置より下方に配設され、当該食材が投入されるべき位置に向かって開口した噴出口を有した噴出用パイプを有し、前記湯槽内における食材が投入されるべき位置に向かって加熱されたエアを噴出するエア噴出手段と、
を備え、
前記噴出用パイプの噴出口は、当該噴出用パイプに形成された凹部の略中央に開口し、食材に噴出されるエアを塊とし得ることを特徴とする調理装置。
【請求項2】
前記エア噴出手段は、
先端が前記噴出用パイプと連結され、前記湯槽の水位よりも高い位置まで延設された導入パイプと、
該導入パイプの基端側に配設されて当該導入パイプを介して前記噴出用パイプにエアを供給するエアポンプと、
を有し、前記導入パイプを通過するエアを加熱することにより、前記噴出用パイプの噴出口から加熱されたエアを噴出することを特徴とする請求項1記載の調理装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、一端が燃焼室と連結されつつ前記湯槽内における底面側で延設されたヒータパイプから成り、該ヒータパイプの他端に排煙部を突設させるとともに、前記導入パイプを当該排煙部内で延設させることにより前記導入パイプ内を通過するエアを加熱し得る構成とされたことを特徴とする請求項2記載の調理装置。
【請求項4】
前記排煙部内に位置する前記導入パイプの側壁には、熱交換用のフィンが形成されたことを特徴とする請求項3記載の調理装置。
【請求項5】
前記排煙部内に位置する前記導入パイプは、少なくとも一部がコイル状に形成されて成ることを特徴とする請求項3記載の調理装置。
【請求項6】
前記湯槽内の湯は、解凍調理時間及び待機時間に亘って、前記制御手段により略96℃に保持されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の調理装置。
【請求項7】
前記湯槽内に投入されるべき食材は、冷凍又は冷蔵された麺類であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の調理装置。
【請求項8】
前記噴出用パイプの噴出口は、前記湯槽内における食材が投入されるべき位置の中心より所定寸法オフセットして開口したことを特徴とする請求項7記載の調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−185531(P2007−185531A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70728(P2007−70728)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【分割の表示】特願2003−370915(P2003−370915)の分割
【原出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【出願人】(000102348)エイケン工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】