説明

調節式の足元支持具

【課題】ベース板の位置合せを容易にするため調節可能な足元支持具とクレーンのサブアセンブリ用の足元支持体を提供する。
【解決手段】例えばクレーンのサブアセンブリのベース板などのベース板1に設置される調節式の足元支持具10であって、雌ねじを備えたねじナット2と、雄ねじを備えた支持足3と、前記支持足3を前記ねじナット2に回転不能に固定することができる固定部材4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
前記調節式の足元支持具(foot bearing)は、雌ねじを有するねじナットと、ねじナットへとねじ込むことができる雄ねじを有する支持足と、ねじ込まれた支持足をねじ込み後の位置でねじナットに固定することができる固定部材とを備えている。さらに、本発明は、クレーンのサブアセンブリ(sub-assemblies)のための調節式の足元支持体(footing support)に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば移動式クレーンのカウンタウェイトのベース板などといった、クレーンのサブアセンブリは、下部架台(undercarriage)上に準備された支持部上に配置されている。ベース板上でカウンタウェイト板を簡単に配置できるようにベース板を位置合わせすることは、複数の支持台(abutment)を用いて精密に試みられる。複数の支持台は、下部架台に固定して結合されており、例えばベース板の変更時に調節され得るものでない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、調節可能な足元支持具とクレーンのサブアセンブリ用の足元支持体とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の調節式の足元支持具と、請求項10に記載のクレーンのサブアセンブリ用の調節式の足元支持体によって達成される。
【0005】
請求項10に記載の発明は、穴を有するベース板と、雌ねじを有し、前記ベース板の穴に少なくとも部分的に据えられ、該穴において前記ベース板に固定して結合されたねじナットと、雄ねじを有し、手動または工具によって前記ねじナットの雌ねじに対して螺入および螺退することができる支持足と、前記支持足をねじ込み後の位置に固定する固定部材とを備えた、クレーンのサブアセンブリのための調節式の足元支持体である。
【0006】
すなわち、前記ベース板は、1つ以上の穴を有しており、1つ、複数またはそれぞれの穴に1つのねじナットがそれぞれ挿入され得る。ねじナットは、もはやベース板から脱落することがあり得ないように、穴においてベース板に結合される。ねじナットは雌ねじを有し、該雌ねじに、雄ねじを備えた支持足がねじ込まれ得る。その後に、各支持足は、支持足がねじナットに対してさらに螺進することも螺退することもできないように、固定部材によって、そのねじ込み位置に固定される。換言すると、固定部材によって固定された支持足は、もはやねじナットに対して動くことが不可能であり、直線的な変位も、回転も不可能である。
【0007】
ベース板の穴は、好ましくはベース板の上面からベース板の下面まで連続的に延びる貫通穴である。好ましさは劣るが、ベース板の穴は、支持足がねじ込まれて固定される止まり穴であってもよく、該止まり穴は、各支持足がねじ込まれて固定された状態においてベース板から突き出すように構成される。その場合、各支持足は、支持足上に設置されたベース板が位置合わせされるまで止まり穴へねじ込まれ、この位置に固定される。
【0008】
したがって、穴が貫通穴である場合、ねじナットは、穴に完全に収容されて、ベース板から上面においても下面においても突き出すことがないか、あるいは上面および/または下面においてベース板から突き出す。
【0009】
例えば、ねじナットは、確実な保持を保証するために穴へ溶接または圧入され得る。その場合、ねじナットの外形は任意であってよいが、好ましくは穴の形状に実質的に一致する。
【0010】
支持足は、雄ねじを備える部位と、雄ねじを持たない少なくとも1つの部位とを有してもよく、好ましくは、雄ねじを有する1つの部位と、長手方向に見たときにこの部位の前方および後方にそれぞれ隣接する雄ねじを持たない部位とを有する。
【0011】
好ましくは、支持足は、ねじナットよりも長く、支持足をねじナットへねじ込むために工具が適用され得る部位を片側に有している。支持足のねじ山部分は、ねじナットのねじ山の全長に一致してもよい。支持足が、雄ねじを備える部位の両側にねじ部を持たない部位を1つずつ有する場合、支持足の雄ねじがねじナットの雌ねじへ完全にねじ込まれた状態において、雄ねじを持たない2つの部位は、ベース板の上面および下面からそれぞれ突き出してもよい。
【0012】
ベース板を調節あるいは位置合わせさせるために、ベース板は支持面上に設置され、支持足によって位置合わせされることができ、支持足は、個別にねじナット内にねじ込まれるか、あるいは、ねじナットを貫いてねじ込まれることができる。このとき、支持足のうちのベース板の下面を超えて突き出している部位の長さは、支持足をねじナットへねじ込むことによって変化し、土台(basis)に対するベース板の位置が相応に調節される。このようにして、支持足によってベース板は正確に位置合わせされ得る。
【0013】
少なくとも工具を適用するための領域は、雄ねじを備える領域とは別の形状を有してもよい。すなわち、雄ねじを備える支持足の断面が、通常は円形である一方で、工具が適用される領域の断面を、例えば正方形、三角形、六角形、多角形、長円形、または星形に形成することができる。その場合、標準的な工具の使用を可能にする形状が好ましい。
【0014】
ねじナットにおける支持足の位置が例えば振動によって時間とともに変化することを防止し、ベース板を継続的に調節し直さなければならなくなることを防止するために、ベース板が位置合わせされるとすぐに、支持足が固定部材によってねじナットに固定される。
【0015】
好ましくは、固定部材は、ねじナットの外径にほぼ一致する外径またはねじナットの外径よりも大きい外径を有するロッキングディスク(locking disk)である。ロッキングディスクは、支持足の工具を適用することができる部位の形状に一致する形状を備えた中央の開口を有している。さらに、ロッキングディスクは、ねじナットの正面に載る領域に貫通穴を有している。
【0016】
ねじナットは、固定部材が載る正面において、環状に複数配置された雌ねじ付き止まり穴を有している。固定部材をベース板に取り付けられたねじナットへ固定して結合し、もはや固定部材がねじナットに対して動くことができないようにするために、固定部材の貫通穴を通って挿入されるねじを、ねじナットの前記の止まり穴へねじ込むことができる。このとき、固定部材を超えて突き出している領域の支持足の形状、および固定部材を貫いて支持足を突き出させている開口の形状ゆえに、もはや支持足はねじナットに対して回転できず、したがってベース板に垂直な方向の直線移動も不可能である。
【0017】
好ましくは、ねじナットの正面に、3つの穴が、個々の穴の間の角度がそれぞれ120°であるように等間隔で設けられる。しかしながら、4つの穴または6つの穴を、それぞれ90°および60°の角度間隔で設けることもできる。好ましくは、ねじナットにおける支持足の各位置において固定部材の穴がねじナットの正面のねじ穴に好適に位置合わせされ、支持足がすべてではないにせよ可能な限り多数の位置でねじナットに結合され得るように、固定部材は円周上に多数の孔を有する。
【0018】
ねじナットがベース板の上面よりも突き出していない場合には、固定部材は、ねじナットの外径よりも大きい外径を有してもよい。この場合、支持足を固定するために固定部材がねじによって保持されるねじ穴は、ねじナットの正面に形成されるのではなく、ベース板そのものに形成される。この保護も、固定部材がベース板へねじ留めされたならば、支持足がもはやねじナットにおいて回転できないようにする。この構成においては、支持足の回転方向において生じ得る固定部材の荷重がねじナットには伝えられず、ベース板によって受け止められる。
【0019】
ベース板は、基本的に、任意のベース板であってよい。しかしながら、本発明によれば、クレーンのサブアセンブリのベース板であり、特に好ましくはクレーンのカウンタウェイトのベース板である。
【0020】
請求項1によれば、本発明は、例えばベース板に設置されるように構成された上述の足元支持具にも関する。そのような個別の足元支持体は、ねじナットと、ねじナットにねじ込まれるか、あるいはねじナットにねじ込み可能な支持足と、固定部材とで構成され、任意的に、固定部材をねじナットの正面またはベースプレートのねじ穴に保持するためのねじを備えてもよい。例えば異なる断面を有する支持足の種々の部位、ならびに貫通穴を備えた固定ディスク(securing disk)としての固定部材の形成など、足元支持体に関して説明した足元支持具の特徴のすべてが、足元支持具そのものにも同様に当てはまる。
【0021】
以下、本発明を、実施形態によってさらに詳しく説明する。図面にのみ示され、本発明にとって不可欠である特徴が、単独または組み合わせにて、本件出願の対象を好都合に生じさせる。しかしながら、本発明は、図面に示されて説明される実施形態に限られない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】3つの足元支持具を有するベース板の断面を示している。
【図2】固定部材を備えた個々の足元支持具を示している。
【図3】足元支持具の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に、3つの支持足3を備えるベース板1の一部分を示す。ベース板1は、さらなる穴または開口を示しているが、それらは、ここに示される本発明にとって重要ではないため、さらに詳しくは説明しない。支持足3は、ベース板1に固定して結合されたねじナット2にねじ込まれ、固定部材4によって固定されている。
【0024】
固定部材4は、ねじナットの正面にねじ留めされ、支持足3がねじナット2に対して相対移動可能となることを防止する固定ディスクであり、これにより、支持足は、ねじナット2へのさらなる螺進、あるいはねじナット2からの螺退をなし得ない。
【0025】
ベース板1の配置面の不整およびベース板1の製造公差を足元支持体10によって補償できるよう、各支持足3は、それぞれのねじナット2へ個別にねじ込まれ得る。
【0026】
ベース板1は、ねじナット2を受け入れるための任意の数の穴8を有することができる。ねじナット2は、必ずしもすべての穴8に据えられる必要はなく、支持足3は、必ずしも各ねじナット2にねじ込まれる必要はない。
【0027】
例えばねじナット2がベース板1の上面5を超えて突き出していない場合、固定部材4がねじナット2の前側にねじ留めされる図示の保護に代えて、固定部材4をベース板1に直接ねじ留めすることも可能である。例えば、固定部材4をベース板1に直接ねじ留めするために、穴7を設けることが可能である。
【0028】
好ましくは、ねじナット2は、一方または両方の正面においてベース板1に溶接される。しかしながら、ねじナット2をベース板1に圧入することも可能であり、例えばねじナット2に、ベース板1への圧入の前に冷却処理が加えられ、取り付けられた状態において室温へと暖まることによってねじナット2が膨張し、穴8における圧迫力を増大させる。ベース板1におけるねじナット2に必要な保持力を確立および維持できるならば、特別な接着剤の使用も排除されない。上述の技術的解決策を組み合わせることも可能である。
【0029】
図2に、1つの足元支持体10が示されている。固定部材4が、その円周に多数の貫通穴41を有している。貫通穴41の互いの間隔が、支持足3をどの程度細かく調節できるかを決定する。
【0030】
図示の足元支持体10の実施形態においては、3つのねじ穴(見て取ることができない)が、それぞれ120°の角度間隔でねじナット2の正面に導入されており、固定部材4が、ねじ9によって固定される。したがって、支持足3を、貫通穴41がねじ穴に位置合わせする位置にのみ固定することができる。すなわち、より多くの貫通穴41が固定部材4に存在するほど、足元支持具10をより細かく調節することができる。しかしながら、貫通穴41の間隔を自由に小さく選択することは、個々の貫通穴41の間の区間が荷重に屈する恐れがあるため、不可能である。しかしながら、固定部材4の外半径が大きくされるならば、貫通穴41の数を増やすことが可能である。したがって、ねじナット2の正面に取り付けられるのではなく、ベース板1に直接取り付けられる固定部材4が、支持足3のより細かい調節を可能にする可能性がある。
【0031】
図3に、足元支持体10の断面が示されている。支持足3が、3つの部位32、33、34を有している。中央部33が、ねじナット2の雌ねじ21へねじ込まれる雄ねじ31を備えており、部位32、34のそれぞれは、雄ねじを備えていない。図示の実施形態においては、部位33、34が円形の断面を有する一方で、部位32は、例えば支持足3を回転させてねじナット2へと出し入れするために正方形のスパナを適用することができる正方形の断面を有している。足元支持体10は、支持足3をねじナット2に回転不能に固定する固定部材4をさらに有している。固定部材4は、その外周部に貫通穴41を有しており、ねじ9が貫通穴41を貫いて固定部材4をねじナット2の正面のねじ穴22に係合させて固定する。さらに、固定部材4は、中央の開口42を有しており、開口42の形状が、支持足3の部位33の形状に一致している。
【0032】
足元支持体10の機能を、簡単に説明することができる。ねじナット2が設けられたベース板1が、現場において適用される。上方から、足元支持具3を、ベース板の下面6と同一面に位置するまでねじナット2へねじ込むことができ、あるいはねじナット2が下面6を超えて突き出している場合には、ねじナット2の端部と同一面に位置するまでねじナット2へねじ込むことができる。ここではベース板1を、支持足3を工具(図示されていない)によってねじナット2へさらにねじ込むことによってベース板1を持ち上げることで、調節することができる。ベース板1が所望の位置に位置すると、各支持足3が、固定部材4によって調節済みの位置に固定される。このとき、ねじ9をねじ穴22のねじ山へとねじ込むことができるよう、貫通穴41をねじ穴22の上方に正確に位置させるために、個々の支持足の位置のきわめてわずかな修正が必要とされる可能性がある。ここでは、ベース板1は、支持足3の部位34に載った状態である。
【符号の説明】
【0033】
1 ベース板
2 ねじナット
21 雌ねじ
22 ねじ穴
3 支持足
31 雄ねじ
32 部位
33 部位
34 部位
4 固定部材
41 貫通穴
42 開口
5 上面
6 下面
7 穴
8 穴
9 ねじ
10 足元支持具、足元支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
例えばクレーンのサブアセンブリのベース板などのベース板に設置される調節式の足元支持具であって、
a)雌ねじ(21)を備えたねじナット(2)と、
b)雄ねじ(31)を備えた支持足(3)と、
c)前記支持足(3)を前記ねじナット(2)に回転不能に固定することができる固定部材(4)と、
を備えている足元支持具。
【請求項2】
前記支持足(3)は、前記雄ねじ(31)を備えた部位(33)と、雄ねじ(31)を持たない少なくとも1つの部位(32、34)とを有している請求項1に記載の足元支持具。
【請求項3】
雄ねじ(31)を持たない部位(32、34)は、前記雄ねじ(31)を備えた部位(33)の片側または両側に隣接していることを特徴とする請求項2に記載の足元支持具。
【請求項4】
前記固定部材(4)は、固定ディスクである請求項1〜3のいずれか一項に記載の足元支持具。
【請求項5】
前記固定部材(4)は、前記ねじナット(2)の外径にほぼ一致する外径または前記ねじナット(2)の外径よりも大きい外径を有している請求項4に記載の足元支持具。
【請求項6】
ねじ込まれた支持足(3)が前記固定部材(4)によって固定された状態において、前記雄ねじ(31)を持たない部位(32、34)の少なくとも1つが、前記ねじナットの正面を超えかつ前記固定部材(4)を超えて突き出している請求項2〜5のいずれか一項に記載の足元支持具。
【請求項7】
前記雄ねじ(31)を備えた部位(33)は、前記隣接する部位(32、34)とは異なる断面形状を有しており、前記固定部材(4)は、前記支持足(3)の前記雄ねじ(31)を持たない部位(32、34)のうちの1つの形状に合わせて構成された中央の開口(42)を有している請求項2〜6のいずれか一項に記載の足元支持具。
【請求項8】
前記固定部材(4)は、外周部に貫通穴(41)を有しており、前記ねじナット(2)が、雌ねじを備えた止まり穴(22)を正面に有しており、前記固定部材(4)は、ねじ(9)によって前記ねじナット(2)の正面にねじ留めされ得るものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の足元支持具。
【請求項9】
クレーンのサブアセンブリのための調節式の足元支持体であって、
a)穴(8)を有するベース板(1)と、
b)請求項1〜7のいずれか一項に記載の足元支持具と、
を備えている足元支持体。
【請求項10】
前記穴(8)は、前記ベース板(1)の上面(5)から前記ベース板(1)の下面(6)まで延びる貫通穴である請求項9に記載の足元支持体。
【請求項11】
前記ねじナット(2)は、前記穴(8)に溶接されている請求項9または10に記載の足元支持体。
【請求項12】
前記固定部材(4)は外周部に貫通穴(41)を有しており、前記ねじナット(2)が正面において、あるいは前記ベース板(1)が上面(5)において、雌ねじを備えた止まり穴(22)を有しており、前記固定部材(4)は、ねじ(9)によって前記ねじナット(2)の正面または前記ベース板(1)の上面(5)へねじ留めされ得るものである請求項9〜11のいずれか一項に記載の足元支持体。
【請求項13】
前記ベース板(1)は、クレーンのカウンタウェイトのベース板である請求項9〜12のいずれか一項に記載の足元支持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−71989(P2012−71989A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−180367(P2011−180367)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(507186322)マニトワック・クレーン・グループ・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ (12)
【氏名又は名称原語表記】Manitowoc Crane Group France SAS
【Fターム(参考)】