説明

調節範囲を決定するコンピュータユニットを有する建設機械及びその建設機械を動作させる方法

【課題】傾倒に対する安全度に関わる信頼性が高く、作業半径が大きくい建設機械を提供する。
【解決手段】搬送ユニット10と、搬送ユニット10に対する調節が可能な駆動ユニット18と、建設機械1の状態データを検出する、少なくとも一つの検出手段51〜64と、コンピュータユニット23とを有し、建設機械1の傾倒に対する所定の安全度で駆動ユニット18を調節できる、駆動ユニット18の調節範囲の少なくとも一つを、検出された状態データに基づいて、コンピュータユニット23を利用して決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の構造、および建設機械を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、アースドリル掘削装置など、大型の建設機械の動作中に、その建設機械に傾倒モーメントが生じることがある。このような傾倒モーメントは、たとえば、突出した荷重によって静的に生じるものであるが、たとえば、遠心力の結果として動的にも生じ得る。
【0003】
過度の傾倒モーメントの発生を防止するために、特に、構造的に突出している荷重の調節経路を規制することが知られている。ただし、このことは、建設機械の動作範囲を制限し、その結果、建設機械の適用範囲を限定することにつながる場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−131699号公報
【特許文献2】特開平1−138407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、動作の信頼性、特に傾倒に対する安全度に関わる信頼性が極めて高いことを特徴とする一方で、作業半径が極めて大きいことに加え、極めて広範囲の適用用途と、非常に高い効率とを有する建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、建設機械が提供され、この建設機械は、搬送ユニットと、前記搬送ユニットに対する調節が可能な駆動ユニットと、前記建設機械の状態データを検出する、少なくとも一つの検出手段と、コンピュータユニットとを有し、前記建設機械の傾倒に対する所定の安全度で前記駆動ユニットを調節できる、前記駆動ユニットの調節範囲の少なくとも一つを、前記検出された状態データに基づいて、前記コンピュータユニットを利用して決定することができる。
【0007】
本発明は、重量の重い駆動ユニットを、その駆動ユニットを支持する搬送装置に対して調節する際に、質量中心の移動が生じる場合があり、この質量中心の移動は、対応して傾倒モーメントが変動することを伴うという知識に基づいている。本発明によれば、このような傾倒モーメントの変動に関わらず、傾倒に対して安全な動作を実現するために、コンピュータユニットが設けられる。このコンピュータユニットは、駆動ユニットの搬送ユニットに対して、駆動ユニットが安全に移動できる調節範囲を決定する。安全な調節範囲は、たとえば、その範囲内で、事前設定された、傾倒についての安全係数が観測されることを特徴とし得る。この調節範囲を特定するために、評価ユニット内に、たとえば、適切な特性曲線や特性図を保存することができる。
【0008】
調節範囲の決定は、建設機械の状態データに応じて行われる。換言すると、総合的な検討によって、コンピュータユニットは、傾倒傾向が、駆動ユニットの突出によってのみ決定されるのではなく、駆動ユニット上に存在する荷重や、建設機械の動的状態などの他の要因の影響も受けることを考慮することができる。したがって、状態データは、たとえば、駆動ユニットによって保持されるドリルパイプの直径に関するデータであってよく、この直径は、結果的に、ドリルパイプの対応する質量によって傾倒モーメントに影響を与える。
【0009】
該当する建設機械は、特に、アースドリル掘削装置であり得る。この場合、駆動ユニットは、たとえば、土壌掘削工具のドリル駆動装置であってよく、搬送ユニットは、掘削装置の下部走行体であってよい。
【0010】
コンピュータユニットを利用して、調節範囲内の駆動ユニットの位置を特定でき、その調節範囲の限界に到達した時点で信号を送信できると特に有利である。この実施形態によれば、コンピュータユニットは、算出された調節範囲と関連付けて駆動ユニットの実際の位置を配置するため、傾倒に対して安全な動作が行われるのか、傾倒する恐れがあるのかを直接評価することができる。調節範囲の限界への到達時に送信される信号は、たとえば、オペレータ信号、すなわち、建設機械のオペレータが知覚できる音響信号や光信号などであってよい。具体的には、光信号として、オペレータのディスプレイに対応する表示を提供することができる。これにより、オペレータが傾倒臨界範囲の限遠接近を検知できるようになるため、オペレータは、適切な対応策を講じることができる。これに代えて、または追加して、駆動ユニット用の信号として制御信号を送出するように構成することもできる。このような制御信号を利用することによって、コンピュータユニットは、自動的に安全な範囲内に駆動ユニットを維持できるため、特に信頼性の高い動作が得られる。
【0011】
移動式建設機械の場合は、傾倒防止に特別な注意を必要とすることが多いため、本発明は、特に、移動式建設機械で利用することができる。したがって、搬送ユニットが走行装置を備えていると有用である。具体的には、該当する搬送ユニットは、建設機械の下部走行体であってよい。
【0012】
可能であれば、少なくとも一つの基礎工事器具、特に、掘削工具を有するように駆動ユニットを構成してよい。駆動ユニットは、たとえば、回転式ドリル駆動装置と振動式ドリル駆動装置の少なくともいずれかとして設計できる。
【0013】
作業範囲が特に広い場合、駆動ユニットは、垂直軸を中心に搬送ユニットに対して旋回可能である、もしくは、垂直軸の径方向に調節可能である、またはその両方が可能であると有利である。この垂直軸は、具体的には、少なくとも略垂直な方向に延びる軸であると考えることができる。特に、ドリル駆動装置として設計される駆動ユニットは、上部回転台に対して径方向に調節可能なマストに配置され、この上部回転台が、更に、下部走行体として設計される搬送ユニットに対して旋回できるように構成することができる。
【0014】
本発明に係る検出手段は、物理的測定によって状態データを検出することができる。また、オペレータによって手動で入力される状態データを検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることも有利であり得る。たとえば、880mm、1300mmというような利用可能なドリルパイプ径の選択メニューをオペレータが受け取るように構成しても、または、ドリルパイプ径を自動で検出するように構成してもよい。この後、その入力に応じて、コンピュータユニットは、各種サイズの調節範囲を決定するが、この調節範囲は、ドリルパイプの直径が大きく、その結果より重くなるドリルパイプの場合の方が、小さい直径の場合よりも常に小さい。手動で入力された状態データを検出する検出手段が設けられる場合は、コンピュータユニットが、手動で入力されたデータを格納する記憶装置を備えていると有利である。これにより、情報の文書化を利用できるため、不具合が生じた場合に、入力されたデータが不正確であったのかどうかを確認することができる。
【0015】
本発明の他の好ましい実施形態は、オペレータが起動できる運搬支援切換手段を設けることであり、この運搬支援切換手段は、コンピュータユニットと信号接続されるため、コンピュータユニットは、運搬支援切換手段の切換状態に応じて、調節範囲を変更するように構成される。この実施形態は、傾倒に対する安全度に各種異なる考慮事項を必要とする建設機械では、異なる動作モードが頻繁に生じる点を考慮したものである。たとえば、掘削装置の掘削動作では、しばしば余分な力が掘削工具に生じて、傾倒傾向を高める可能性や、斜めに傾けたマストが動作に使用されて、同様に傾倒傾向を高める可能性がある。したがって、コンピュータユニットは、掘削動作中の限定的な調節範囲を決定することができる。一方、たとえば、掘削穴から離れて位置する場所で掘削バケットを空にするために工具を移動するだけである運搬動作中には、前述の追加の荷重の少なくとも一部は存在しなくなることが多いため、より広い調節範囲を設けることができる。運搬支援切換手段は、たとえば、スイッチまたはタッチスクリーンを用いて実現でき、このスイッチまたはタッチスクリーンにおいて、オペレータは、作業動作、特に、掘削動作または運搬動作が行われることを事前定義する。情報の文書化のために、運搬支援切換手段は、運搬支援切換手段でのオペレータの選択内容を格納するように構成される記憶手段を有すると好適である。
【0016】
運搬モードにおける調節範囲の拡張は、建設機械の他の動作パラメータおよび関連する傾倒モーメントが限定的であることを前提とする。たとえば、運搬モードにおいて拡張された調節範囲は、主ウィンチ、補助ウィンチ、または送りウィンチのウィンチ引張力が許容限界より小さい場合にのみ妥当なものになり得る。オペレータがこの限界を監視し易くするためには、運搬支援切換手段で運搬モードが選択された場合に、前述の動作パラメータの限界をオペレータに提示する表示手段を運搬支援切換手段が備えていると有利であり得る。
【0017】
ただし、制限ユニットを設けると特に有利であり、この制限ユニットは、運搬支援切換手段の切換状態に応じて、建設機械の動作パラメータの少なくとも一つを制限するように構成される。この実施形態によれば、運搬支援切換手段において運搬モードが選択された場合に、重要な動作パラメータを自動的に制限することができる。制限と、オペレータへの提示の両方、またはその一方が行われる、少なくとも一つの動作パラメータは、具体的には、ウィンチ引張力であってよい。したがって、制限ユニットは、運搬動作が選択された場合に、送りウィンチのトルクを低減して、補助ウィンチをオフにするように構成することができる。
【0018】
また、運搬支援切換手段は、建設機械の動作パラメータの少なくとも一つが所定の範囲から外れている場合に、運搬支援切換手段起動の作用を無効化する保護手段を含むと有利である。この実施形態によれば、少なくとも一つの動作パラメータが運搬動作に一般的なものではない場合に、調節範囲の拡張が行われないように、運搬支援切換手段起動の作用を無効化することができる。
【0019】
限界がオペレータに提示される、建設機械の動作パラメータの少なくとも一つは、制限ユニットを用いて制限されることに加え、またはこれに代えて、保護手段によって考慮されるものであり、具体的には、上部回転台の回転速度と、マストの傾きの少なくともいずれかであってよい。多くの場合、建設機械は、搬送ユニット上に、垂直軸を中心に回転可能に設けられる上部回転台を備え、この回転台上に、駆動ユニットを支持するマストが配設される。上部回転台が、駆動ユニットと共に、垂直軸を中心に搬送ユニットに対して回転すると、傾倒傾向を動的に増大させる遠心力が生じる可能性がある。したがって、上部台車の回転速度を手動または自動で制限することは、有利であり得る。また、上部回転台に対するマストの傾きも、傾倒傾向に影響を与え得るため、マストの傾きを制限することは、傾倒防止に関して同様に有利であり得る。
【0020】
多くの場合、移動式下部走行体は、全ての空間方向で傾倒に対して同一の安全度を有するとは限らないため、限界がオペレータに提示される、建設機械の動作パラメータの少なくとも一つは、下部走行体に対する上部回転台の回転角度であってもよく、この動作パラメータが、制限ユニットを用いて制限されることに加え、またはこれに代えて、保護手段によって考慮される。
【0021】
コンピュータユニットが調節範囲を決定する際の基準となる状態データは、特に、駆動ユニット上の重量の力であってよい。多くの場合、駆動ユニットに懸架された掘削パイプが長い程より傾倒し易くなるため、たとえば、駆動ユニット上のパイプ長を考慮対象にすることができる。
【0022】
更に、マスト支持ブームの位置を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けると有利である。上部回転台にマストを連結するマスト支持ブームの位置は、極めて多くの状況で、マストの径方向位置、ひいては、上部回転台に対する駆動ユニットの位置についての尺度となるため、マスト支持ブームの位置も傾倒モーメントの決定要因である。
【0023】
また、上部回転台の回転角度を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることも好ましい。搬送ユニットについては、全ての空間方向で傾倒に対して同一の安全度を有するとは限らないことが多い。このため、搬送ユニットに対する上部回転台の回転角度、特に、垂直軸を中心とした回転角度も、傾倒に対する安全度の指標になる。
【0024】
また、スレッジの送りシステムの引張力と押出力の少なくともいずれかを検出する、少なくとも一つの検出手段を設けると適切である。スレッジ送りシステムは、特に、駆動ユニットを垂直方向にマストに対して移動するシステムであると理解することができる。ここで作用する引張力と押出力の少なくともいずれかも、傾倒モーメントに影響を与え得る。
【0025】
また、主ロープの引張力を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けると有利である。該当する主ロープは、駆動ユニット上に延びるドリルロッドを支持することができる。このため、主ロープの引張力も傾倒モーメントの決定要因になり得る。
【0026】
また、補助ロープの引張力を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けると有用である。このような補助ロープは、たとえば、ドリルロッドの設置時に採用することができ、この補助ロープも傾倒モーメントを増大させ得る。
【0027】
他の実施形態は、補助ロープの少なくとも一つの挿入角度を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることであるが、これは、この挿入角度も、補助ロープによって傾倒モーメントに影響を与え得るためである。この挿入角度は、2つの空間平面において特定されると最適である。
【0028】
本発明の他の好ましい実施形態は、搬送ユニットの少なくとも一つの傾き角を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることである。最適には、この傾き角は、2つの空間平面において特定される。下部走行体の傾き角も、傾倒モーメントに関係し得る。
【0029】
更に、マストの少なくとも一つの傾き角を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けると好ましい。マストの傾き角は、特に、上部回転台に対するマストの傾きの角度であると理解されてよい。同様に、この角度も傾倒モーメントに影響し得る。この傾き角は、2つの空間平面において特定されると最適である。
【0030】
また、補助ロープのロープ端位置を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けると有利である。これにより、補助ロープに取り付けられた荷重は、揺動移動に曝され可能性がある点を考慮することができ、この揺動移動も傾倒モーメントを左右する。補助ロープのロープ端位置を検出する検出手段は、特に、補助ロープ用ドラムの巻き出し角度を検出する検出手段として設計することができる。
【0031】
また、風速を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けると有用である。これにより、風荷重も、傾倒モーメントへの影響を増大し得るという事実を考慮できる。
【0032】
また、本発明によれば、上部回転台の回転速度を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることができる。垂直軸を中心とした上部回転台の搬送ユニットに対する回転は、対応する遠心力を伴い、この遠心力も傾倒モーメントの作用を増大させ得る。このような背景において、搬送手段に対する上部回転台の回転速度の検出は、有用であることが判る。
【0033】
更に、送りロープのロープ端位置を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けると有利である。送りロープの位置は、駆動ユニットの位置、ひいては、傾倒に対する安全度に関与する質量中心の位置についての指標を提供する。
【0034】
また、主ロープのロープ端位置を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けると好ましい。主ロープの端部位置を検出することによって、傾倒モーメントの決定要因である質量中心の座標を特定することができる。
【0035】
したがって、状態データは、マスト支持ブームの位置、上部回転台の回転角度、スレッジの送りシステムの引張力と押出力の少なくともいずれか、主ロープの引張力、補助ロープの引張力、補助ロープの少なくとも一つの挿入角度、搬送ユニットの少なくとも一つの傾き角、マストの少なくとも一つの傾き角、補助ロープのロープ端位置、風速、上部回転台の回転速度、送りロープのロープ端位置、および主ロープのロープ端位置のうちの一つ以上に関するものであると有利である。
【0036】
本発明の他の好ましい実施形態は、表示手段を設け、この表示手段を用いて、駆動ユニットの現在位置と共に調節範囲を提示できること、および表示手段は、前記調節範囲と現在位置とを、一つの共通概略マップに提示するように構成されることである。特に、表示手段は、色付きの強調表示方式で調節範囲を表すように構成することができる。この実施形態によれば、安全な調節範囲と、その調節範囲を基準とした駆動ユニットの実際の現在位置とが、オペレータに視覚的に提示される。これにより、傾倒に対する安全度の状態は、直感的に理解可能な方式でオペレータに提示される。
【0037】
本発明は、建設機械の動作方法にも関し、特に、搬送ユニットと、前記搬送ユニットに対する調節が可能な駆動ユニットと、建設機械の状態データを検出する少なくとも一つの検出手段と、コンピュータユニットとを有する、本発明に係る建設機械の動作方法に関する。本方法では、建設機械の傾倒に対する所定の安全度で前記駆動ユニットを調節できる、前記駆動ユニットの少なくとも一つの調節範囲が、検出された状態データに基づいてコンピュータユニットによって決定されるように構成される。本発明に係る建設機械との関連で説明される実施形態は、本発明に係る方法に関しても利用できるため、前記建設機械に関連して提供される利点を実現することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、動作の信頼性、特に傾倒に対する安全度に関わる信頼性が極めて高いことを特徴とする一方で、作業半径が極めて大きいことに加え、極めて広範囲の適用用途と、非常に高い効率とを有する建設機械を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る建設機械を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
下記において、付属の図面に模式的に示した好ましい実施形態を例として、本発明についてより詳細に説明する。
【0041】
本発明の実施形態に係る建設機械を図1に示す。建設機械1は、移動式のアースドリル掘削装置として設計される。この建設機械1は、下部走行体として設計されて、走行装置9を有する搬送ユニット10を有し、前記走行装置9は、履帯式走行装置として設計される。この搬送ユニット10の上に、建設機械1の上部回転台11が配置される。上部回転台11は、搬送ユニット10上に、垂直軸3を中心として旋回可能に配設される。
【0042】
上部回転台11には、マスト14を支持し、そのマスト14を上部回転台11に連結するマスト支持ブーム12が配置される。マスト支持ブーム12は、水平方向に延びる軸を中心に旋回可能な方式で配設される。マスト支持ブーム12を旋回させることにより、マスト14は、上部回転台11、ひいては搬送ユニット10に対して径方向に調節することができる。マスト14には、更に、垂直方向に移動可能な方式でスレッジ15が配置される。このスレッジ15上に、回転式ドリル駆動装置を構成する駆動ユニット18が設けられる。駆動ユニット18は、駆動対象である基礎工事器具19,20を有し、この基礎工事器具19,20は、下部にオーガ20が設けられたドリルロッド19によって形成される。ドリルロッド19は、具体的にはケリーバーとして設計されてよい。
【0043】
搬送ユニット10に対して上部回転台11を旋回させることによって、駆動ユニット18も、垂直軸3を中心に、搬送ユニット10に対して旋回することができる。マスト支持ブーム12を旋回させることによって、駆動ユニット18は、垂直軸3に対して、搬送ユニット10の径方向に移動することができる。
【0044】
基礎工事器具のドリルロッド19は、マスト14の頭部を取り巻いて延びる主ロープ41に懸架される。主ロープ41を駆動するために、上部回転台11の後部、またはマスト14上に主ロープウィンチ42が設けられる。また、マスト14の廻りには、補助ロープウィンチ45を利用して駆動できる補助ロープ44が案内されている。この補助ロープ44は、たとえば、建設機械1にドリルロッド19が設けられる場合に採用することができる。マスト14上でスレッジ15を垂直方向に移動するために、送りウィンチ48と、送りロープ49とを備える送りシステムが設けられ、前記送りロープ49は、マスト14を取り巻いて延びてスレッジ15に固定される。
【0045】
建設機械1には、下記で詳細に説明する多数の検出手段51〜64に信号接続されたコンピュータユニット23が設けられる。検出手段51〜64によって検出された状態データに基づいて、コンピュータユニット23で駆動ユニット18の調節範囲を決定することができ、この調節範囲において、駆動ユニット18は、傾倒防止方式で調節することができ、特に、垂直軸3の径方向の移動と、垂直軸3を中心とした旋回の少なくともいずれかを行うことができる。この目的のために、上部回転台11のオペレータ室内に、表示手段24が設けられて、コンピュータユニット23と信号接続され、この表示手段24を利用して、駆動ユニット18の実際の現在位置と共に調節範囲を提示することができる。このため、表示手段24は、たとえば、ディスプレイを有することができる。
【0046】
表示手段24には、たとえば、タッチスクリーンによって実現できる運搬支援切換手段30も配置される。この運搬支援切換手段30を利用して、オペレータは、掘削動作または運搬動作が行われるのかを入力することができる。運搬支援切換手段30は、コンピュータユニット23と信号接続されるため、コンピュータユニット23は、動作モードに応じて、傾倒に対して安全な調節範囲を変えることができる。
【0047】
建設機械1には、更に、コンピュータユニット23に信号接続される制限ユニット32が設けられ、この制限ユニット32が、運搬支援切換手段30の切換状態に応じて、建設機械1の少なくとも一つの動作パラメータを制限する。たとえば、制限ユニット32は、運搬モードが選択された場合に、搬送ユニット10、すなわち下部走行体に対して、上部回転台11が垂直軸3を中心に旋回する旋回速度を制限することができ、この制限は、掘削モードにおいて取り消すことができる。これに代えて、または追加して、制限ユニット32は、マスト支持ブーム12の移動を制限することによって、駆動ユニット18の径方向位置を規制することもできる。
【0048】
更に、建設機械1には、運搬支援切換手段30と表示手段24の少なくともいずれかに信号接続される保護手段33が設けられ、この保護手段33は、たとえば、マストの傾きが大き過ぎる場合に、保護の目的で運搬モードの選択を禁止する。
【0049】
既に記載したように、建設機械1は、コンピュータユニット23に信号接続された多数の検出手段51〜64を有し、これらの検出手段51〜64のデータは、コンピュータユニット23によって調節範囲の決定に利用される。具体的には、マスト支持ブーム12の一つの位置を検出する第1検出手段51が設けられる。検出手段51は、たとえば、マスト支持ブーム12と上部回転台11の間の回転エンコーダとして設計することができ、このエンコーダは、後部マスト支持ブーム12の垂直旋回軸に配置される。
【0050】
搬送ユニット10に対する上部回転台11の回転角度を検出する更に他の検出手段52が設けられる。この検出手段52を利用して、上部回転台11が搬送ユニット10に対して回転する中心である垂直軸3廻りの回転角度が特定される。
【0051】
スレッジ15の送りシステムの引張力と押出力の少なくともいずれかを検出する、更に2つの検出手段53が設けられる。図示した実施形態において、これらの検出手段53は、送りロープ49の転向ローラに配置される2つの力測定ボルトによって形成される。シリンダ送り装置の場合、これらの検出手段は、送りシリンダの引張力と押出力の少なくともいずれかを測定する圧力検出手段で構成することができる。
【0052】
主ロープ41の引張力を検出する更に他の検出手段54が設けられる。この検出手段54は、主ロープ41の上部転向ローラに配設される力測定ボルトによって形成される。
【0053】
補助ロープ44の引張力を検出する他の検出手段55が設けられる。この検出手段55は、補助ロープ44の上部転向ローラに配置される力測定ボルトによって形成される。
【0054】
更に、マスト14上の補助ロープ44の挿入角度を検出する2つの検出手段56および57が設けられる。この第1の検出手段56は、上部回転台11の長手方向に沿った傾きの補助ロープ44の引張角度を特定し、第2の検出手段57は、上部回転台11の横方向に沿った傾きの前記補助ロープ44の引張角度を特定する。両方の各検出手段56,57は、補助ロープ44の上部ロープガイド内へのロープ挿入点における角度検出手段として形成される。
【0055】
下部走行体として設計される、建設機械1の搬送ユニット10上には、搬送ユニット10の少なくとも一つの傾き角を検出する、更に他の検出手段58が配設される。この検出手段58は、搬送ユニット10の長手方向または横方向の傾きを測定する2つの傾きセンサを含むことができる。
【0056】
マスト14の傾きを検出する他の検出手段59が設けられる。この検出手段59は、上部回転台11の長手方向または横方向の傾き角度についての2つのセンサを有する。
【0057】
補助ロープ44のロープ端位置を検出する更なる検出手段60が設けられる。この検出手段60は、補助ロープウィンチ45のドラムに配置される回転エンコーダとして設計される。この検出手段は、巻き出されたロープの長さを検出する。このため、補助ロープ44に取り付けられた荷重の位置を特定することができ、特に、上部回転台11の回転後に荷重が揺動するかどうかの判定に、その荷重の位置を考慮することができる。この揺動も、傾倒モーメントを増大させ得る。
【0058】
風速を検出する更なる検出手段61が設けられる。この検出手段61は、マスト14の先端に配置される風速計によって形成される。
【0059】
垂直軸3を中心とした上部回転台11の、搬送ユニット10に対する回転速度を検出する他の検出手段62が設けられる。この検出手段62は、特に、上部回転台11に配置することができる。
【0060】
また、送りシステムの送りロープ49のロープ端位置を検出する検出手段63が設けられる。具体的には、この検出手段63は、回転駆動部として設計される駆動ユニット18の位置を測定するように設計できる。検出手段63のデータから、装置各部の質量中心の座標を特定することができる。
【0061】
また、主ロープ41のロープ端位置を検出する更なる検出手段64が設けられる。具体的には、この検出手段64は、一繋がりの主ロープ41の位置を測定するように設計できる。送りロープ49のロープ端位置を考慮した、主ロープ41のロープ端位置から、基礎工事器具19,20の質量中心の座標を確立することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 建設機械、3 垂直軸、9 走行装置、10 搬送ユニット(下部走行体)、11 上部回転台、12 マスト支持ブーム、14 マスト、15 スレッジ、18 駆動ユニット、19 ドリルロッド(基礎工事器具)、20 オーガ(基礎工事器具)、23 コンピュータユニット、24 表示装置、30 運搬支援切換手段、32 制限ユニット、33 保護手段、41 主ロープ、42 主ロープウィンチ、44 補助ロープ、45 補助ロープウィンチ、48 送りウィンチ、49 送りロープ、51〜64 検出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械であって、
搬送ユニットと、
前記搬送ユニットに対する調節が可能な駆動ユニットと、
前記建設機械の状態データを検出する、少なくとも一つの検出手段と、
コンピュータユニットと、を含み、
前記建設機械の傾倒に対する所定の安全度で前記駆動ユニットを調節できる、前記駆動ユニットの調節範囲の少なくとも一つを、前記検出された状態データに基づいて、前記コンピュータユニットを利用して決定することができる、建設機械。
【請求項2】
前記コンピュータユニットを用いて、前記調節範囲内の前記駆動ユニットの位置を特定することができ、前記調節範囲の限界に到達した時点で、信号、特に、前記駆動ユニットの制御信号を送信できる、請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記搬送ユニットは、走行装置を有し、
前記駆動ユニットは、少なくとも一つの基礎工事器具、具体的には掘削工具を有し、
前記駆動ユニットは、垂直軸を中心として前記搬送ユニットに対して旋回可能であり、かつ、前記垂直軸の径方向に調節可能である、請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
オペレータによって手動で入力される状態データを検出する、少なくとも一つの検出手段が設けられる、請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
オペレータによる起動が可能であり、前記コンピュータユニットに信号接続される運搬支援切換手段が設けられ、
前記コンピュータユニットは、前記運搬支援切換手段の切換状態に応じて、前記調節範囲を変更するように構成される、請求項1に記載の建設機械。
【請求項6】
制限ユニットが設けられ、前記制限ユニットは、前記運搬支援切換手段の切換状態に応じて、前記建設機械の少なくとも一つの動作パラメータを制限するように構成される、請求項5に記載の建設機械。
【請求項7】
前記運搬支援切換手段は保護手段を含み、前記保護手段は、前記建設機械の少なくとも一つの動作パラメータが所定の範囲から外れている場合に、前記運搬支援切換手段起動の作用を無効化する、請求項5に記載の建設機械。
【請求項8】
マスト支持ブームの位置を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
上部回転台の回転角度を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
スレッジの送りシステムの引張力と押出力の両方、またはその一方を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
主ロープの引張力を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
補助ロープの引張力を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
前記補助ロープの少なくとも一つの挿入角度を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
前記搬送ユニットの少なくとも一つの傾き角を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
前記マストの少なくとも一つの傾き角を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
前記補助ロープのロープ端位置を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
風速を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
前記上部回転台の回転速度を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
送りロープのロープ端位置を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、
前記主ロープのロープ端位置を検出する、少なくとも一つの検出手段を設けることと、のうちの少なくともいずれかが行われる、請求項1に記載の建設機械。
【請求項9】
表示手段が設けられ、前記表示手段を用いて、前記駆動ユニットの現在位置と共に前記調節範囲を提示することができ、
前記表示手段は、前記調節範囲と前記現在位置とを、一つの共通概略マップに表示するように構成される、請求項1に記載の建設機械。
【請求項10】
建設機械、特に、請求項1に係る建設機械を動作させる方法であって、前記建設機械は、
搬送ユニットと、
前記搬送ユニットに対する調節が可能な駆動ユニットと、
前記建設機械の状態データを検出する、少なくとも一つの検出手段と、
コンピュータユニットと、を含み、
前記建設機械の傾倒に対する所定の安全度で前記駆動ユニットを調節できる、前記駆動ユニットの調節範囲の少なくとも一つを、前記検出された状態データに基づいて、前記コンピュータユニットを利用して決定する、方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−226259(P2011−226259A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88853(P2011−88853)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(502407107)バウアー マシーネン ゲーエムベーハー (48)
【Fターム(参考)】