説明

調製装置

【課題】原料供給ユニットが設置される原料供給室と充填ユニットが設置される調製物充填室との間等を、自由に移動可能な移動式ユニットを備えており、生産設備に必要な配管を大幅に短くすることができ、配管内の残液を低減することがき、且つ調製物(製品)中の異物を低減することができる調製装置を提供する。
【解決手段】本調製装置1は、移動式ユニット10を備えており、移動式ユニット10には、移動式基台11と、攪拌装置13を有する調製タンク12と、濾過装置14と、調製タンク12内の内容物を濾過装置14まで運ぶための第1ライン15と、濾過装置14を通過した内容物を調製タンク12まで運ぶための第2ライン16と、調製タンク12内に原料を供給するための原料供給部3と、調製物を移動式ユニット外へ排出するための調製物排出部4と、が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調製装置に関する。更に詳しくは、本発明は、原料供給ユニットが設置される原料供給室と充填ユニットが設置される調製物充填室との間等を、自由に移動可能な移動式ユニットを備えており、生産設備に必要な配管を大幅に短くすることができ、配管内の残液を低減することがき、且つ調製物(製品)中の異物を低減することができる調製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野では、より高い集積度を得るために、より微細な加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。例えば、0.10μm以下のレベルでの微細加工を可能とするために、より波長の短い放射線の利用及び液浸露光が検討されている。この用途に適した樹脂組成物が数多く提案され、使用されている。例えば、レジスト形成用の感放射線性樹脂組成物を含むレジスト組成物及び多層レジストにおける上層膜を形成するための樹脂組成物を含む液浸用上層膜形成用組成物が使用されている。
【0003】
また、これらの組成物を使用する微細化方法においては、更なる高解像度のパターンニングが要求されるようになっており、これらの組成物を用いて得られるパターン表面に生じるディフェクト(現像後のレジストパターンを上部から観察した際に検知される不具合全般のこと。)を無視することができなくなってきている。そのため、その改善が試みられている。
このディフェクト要因の1つには、レジスト樹脂を含有する溶液中に、樹脂の重合の際に副生するオリゴマーや低分子量のポリマー、また生産設備の配管及びバルブ等から混入するゴミ、微粒子等といった固形状の異物が存在することが挙げられる。
【0004】
これらディフェクト要因になり得る異物のうち、樹脂の重合の際に副生するオリゴマーや低分子量のポリマーにおいては、樹脂溶液に対する貧溶媒を用いた沈殿精製法(特許文献1参照)や、沈殿工程及び/又は洗浄ろ過工程による精製方法(特許文献2参照)等が提案されている。
一方、配管及びバルブ等から混入するゴミ、微粒子等といった固形状の異物の低減法としては、フィルターが設置された閉鎖系内でレジスト組成物を循環させることにより、レジスト組成物中の微粒子の量を低減する方法(特許文献3参照)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−161052号公報
【特許文献2】特開2005−13297号公報
【特許文献3】特開2002−62667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、急速に微細化が進行している半導体素子や液晶表示素子の製造分野等においては、前述のような方法を用いた場合であっても、前記ディフェクト発生の抑制効果が十分であるとはいえなかった。
更には、電子材料やディスプレイ材料等の高機能化が急速に進むなか、これら高機能性を十分に発揮する上で、組成物を安全に且つ高収率で生産することが要求されている。特に、これら電子材料に用いられる組成物は、少量多品種の生産が要求されるので、上述のような高機能性に加えて、生産する上では、より効率的なことも必須となり、収率の低減は大きな問題となる。
【0007】
特に、収率を低下させる原因としては、配管中に残った組成物溶液が挙げられる。これら配管中の残液を回収する方法としては窒素による加圧回収が考えられるが、回収率が十分でないこと、及び回収された組成物溶液中の溶存窒素量が多くなり、半導体基板のフォトレジスト膜上に塗布する際、組成物に溶け込んでいた気体が塗布前のフィルターを通過する際の圧力変動により分離し、気体が生じてしまう。このような気体が発生すると、この気泡はフォトレジスト膜上に付着し、パターン欠陥などの原因となる。
また、配管中の残液を少なくするために、配管直径を出来るだけ小さくする試みを実施したが、単位時間当たりの送液量に制限が生じることによる生産性の低下、及び設備運営上の最短配管長が予め決まってしまう為に、十分な回収率は得られなかった。
【0008】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、生産設備に必要な配管を大幅に短くすることができ、配管内の残液を低減することがき、且つ調製物(製品)中の異物を低減することができる調製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のとおりである。
[1]移動式ユニットが備えられた調製装置であって、
前記移動式ユニットには、
移動式基台と、
前記移動式基台に配設され、攪拌装置を有する調製タンクと、
前記移動式基台に配設される濾過装置と、
前記移動式基台に配設され、前記調製タンク内の内容物を前記濾過装置まで運ぶための第1ラインと、
前記移動式基台に配設され、前記濾過装置を通過した内容物を前記調製タンクまで運ぶための第2ラインと、が備えられていることを特徴とする調製装置。
[2]前記調製タンク内に原料を供給するための原料供給部が、前記調製タンク、前記第1ライン又は前記第2ラインに配設されており、
且つ、調製物を前記移動式ユニット内から前記移動式ユニット外へ排出するための調製物排出部が、前記調製タンク、前記第1ライン又は前記第2ラインに配設されている前記[1]に記載の調製装置。
[3]前記移動式ユニットに原料を供給するための原料供給ユニットを備え、
前記移動式ユニットにおける前記原料供給部が、前記原料供給ユニットにおける原料排出部に接続されることによって、前記調製タンク内に原料が供給される前記[2]に記載の調製装置。
[4]前記原料供給ユニットが、Class100000以下のクリーンルームに設置されている前記[3]に記載の調製装置。
[5]充填容器に前記調製物を充填するための充填ユニットを備え、
前記移動式ユニットにおける前記調製物排出部が、前記充填ユニットにおける調製物を供給するための調製物供給部に接続されることによって、前記充填ユニットに調製物が供給される前記[2]乃至[4]のいずれかに記載の調製装置。
[6]前記充填ユニットが、Class1000以下のクリーンル−ムに設置されている前記[5]に記載の調製装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の調製装置によれば、原料供給ユニットが設置される原料供給室と充填ユニットが設置される調製物充填室との間等を、自由に移動可能な移動式ユニットを備えているため、生産設備の配管長さを従来の固定式の調製装置では達成できない程度にまで短くすることができる。そのため、生産設備の配管及びバルブから混入するディフェクト発生の要因となり得る異物の量を大幅に低減することができる。更には、配管内に残留する調製物の量を最小限に抑えることができるため、収率を大幅に向上することができる。
従って、本発明の調製装置は、フォトレジスト材料等の電子材料分野に用いられる組成物や、ディスプレイ材料に用いられる配向膜組成物や着色レジスト組成物等の、異物混入に対する管理が厳しく且つ高価な組成物の製造分野において好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
[1]移動式ユニット
本発明の調製装置には、移動式ユニットが備えられている。この移動式ユニットには、移動式基台(以下、単に「基台」ともいう。)と、攪拌装置を有する調製タンクと、濾過装置と、調製タンク内の内容物を濾過装置まで運ぶための第1ラインと、濾過装置を通過した内容物を調製タンクまで運ぶための第2ラインと、が備えられている。
具体的には、例えば、図1に示すように、基台11に、攪拌装置13を有する調製タンク12と濾過装置14とが配設されている。そして、循環濾過が可能となるように、第1ライン15及び第2ライン16によって、調製タンク12と濾過装置14とが接続されている。
【0012】
前記移動式基台の駆動方式は特に限定されず、一般的な方法を適用することができる。具体的には、例えば、(1)圧縮空気を床面に噴きつけて基台を床面から浮かせることで移動可能にする方法、(2)床面側に車輪を配設することで移動可能にする方法、(3)前記(1)及び(2)の手段を併用して移動可能にする方法等が好ましく用いられる。このような駆動方式である場合、移動式ユニットの移動時における振動が十分に抑制されるため、高品質の組成物を調製することができる。更には、移動式ユニットの移動により発生する異物量を抑制できるため、クリーンルーム内で取り扱われ、異物混入の管理が厳しい電子材料用組成物やディスプレイ材料用の組成物を調製することができる。
【0013】
また、前記移動式ユニットには、通常、前記調製タンク内に、後述の原料供給ユニット等から原料を供給するための原料供給部が配設されている。
前記原料供給部の構成は、原料の供給が可能であれば特に限定されない。具体的には、例えば、図1に示すように、原料供給ユニット等に接続可能な接続部31と、バルブ32を備える配管と、原料供給ノズル33と、を備える形態等を挙げることができる。
この原料供給部の配設位置は、調製タンク内に原料を供給可能であれば特に限定されないが、通常、前記調製タンク、前記第1ライン又は前記第2ラインに配設され、調製タンクに配設されていることがより好ましい。
【0014】
また、前記移動式ユニットには、通常、調製物を移動式ユニット内から、移動式ユニット外へ排出するための調製物排出部が配設されている。
前記調製物排出部の構成は、後述の充填ユニット等への調製物の供給が可能であれば特に限定されない。具体的には、例えば、図1に示すように、後述の充填ユニット等に接続可能な接続部41と、バルブ43を備える配管と、を備える形態等を挙げることができる。特に、接続部41につながる配管は、動作自由度の高いものが好ましい(図1におけるフレキシブルライン42参照)。この場合、充填ユニット等の設備における接合部との脱着が容易となる。また、充填ユニットが比較的クリーン度の高いクリーンルーム(調製物充填室)に設置されている場合、充填工程時に動作自由度の高い配管(フレキシブルライン42)と接続部41のみをクリーンルームの内部に入れて充填操作を行えるため、移動式ユニット全体をクリーンルーム内に入れて充填操作を行う場合よりも、クリーン度の低下を最小限に抑えることができる。更に、クリーンルームをより省スペース化することができ、設備コストを大幅に低減できる。
この調製物排出部の配設位置は、移動式ユニット外へ調製物を排出可能であれば特に限定されないが、通常、前記調製タンク、前記第1ライン又は前記第2ラインに配設され、第2ラインに配設されていることがより好ましい。
【0015】
前記濾過装置は、濾材が配設された濾過部を備える。この濾過部は、1カ所のみに形成されていてもよいし、複数箇所に形成されていてもよい。
前記濾材は特に限定されないが、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UPE)、ポリアミド系合成繊維(例えば、ナイロン6、ナイロン66等)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、及び、PEとポリアミド系合成繊維との複合膜等からなるフィルターを用いることが好ましい。これらのフィルターを用いた場合には、調製物等が触れることによるフィルター成分の溶出を抑制することができ、フォトレジスト組成物やディスプレイ材料用の組成物を調製する際に、ディフェクト(欠陥)の原因となる異物の混入を十分に抑制することができる。
また、前記濾過部が複数箇所に形成されている場合、各濾過部に配設される濾材の種類は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0016】
前記フィルターの孔径は0.005〜1μmであることが好ましく、更に好ましくは0.005〜0.1μmである。この孔径が0.005〜1μmである場合には、異物を十分に捕集することができる。また、この孔径が0.005μm未満の場合、圧力損失が大きく、生産性が著しく低下するおそれがある。一方、この孔径が1μmより大きい場合、要求される異物捕集能力が得られないおそれがある。
尚、ここでいうフィルターの「孔径」とは、孔径が30nmを超える場合には、標準粒子〔ポリスチレンラテックス粒子(PSL)〕の除去率(90%以上)によって決定された平均孔径をいい、孔径が30nm以下の場合には、バブルポイント法等により推定した値である。
【0017】
[2]原料供給ユニット
本発明の調製装置は、前記移動式ユニットにおける調製タンクに原料を供給するための原料供給ユニットを備えていてもよい。尚、本調製装置が備える原料供給ユニットの数は特に限定されず、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。また、複数の原料供給ユニットを備える場合、各ユニットは、同一のクリーンルーム等の原料供給室に設置されていてもよいし、異なる原料供給室に設置されていてもよい。
前記原料供給ユニットの構成は、前記移動式ユニットにおける調製タンク内へ原料の供給が可能であれば特に限定されない。具体的には、例えば、図2に示すように、原料タンク51と、バルブ52を備える配管54と、配管54の先端に形成され且つ移動式ユニットの原料供給部における接続部と接続可能な原料排出部53と、を備える形態等を挙げることができる。また、原料排出部53につながる配管は、動作自由度の高いものとすることもできる。
【0018】
前記原料供給ユニットは、クリーンルーム内に設置されることが好ましい。尚、原料供給ユニットの設置数は特に限定されず、用いられる原料の種類に応じて適宜選択される。 前記クリーンルームのクリーン度は、Class100000以下であることが好ましく、より好ましくはClass10000以下、このクリーン度がClass100000以下である場合には、フォトレジスト材料等の電子材料分野に用いられる組成物や、ディスプレイ材料に用いられる配向膜組成物や着色レジスト組成物等の、異物混入に対する管理が厳しく且つ高価な組成物の製造分野において、本調製装置を好適に用いることができる。
尚、このクリーン度における「Class」は、クリーンルームにおいて、どの程度の塵埃を許容するかの指標に規定される規格であって、1立方フィート当たりの空気中に、粒径0.5μm以上の塵埃数(粒子数)を意味する(米国連邦規格、FED−STD−209D参照)。
【0019】
[3]充填ユニット
本発明の調製装置は、前記移動式ユニットにおいて調製された調製物を充填容器等に充填するための充填ユニットを備えていてもよい。尚、本調製装置が備える充填ユニットの数は特に限定されず、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。また、複数の充填ユニットを備える場合、各ユニットは、同一のクリーンルーム等の調製物充填室に設置されていてもよいし、異なる調製物充填室に設置されていてもよい。
前記充填ユニットの構成は、前記移動式ユニットから排出される調製物を供給でき、充填容器等に充填可能であれば特に限定されない。具体的には、例えば、図3に示すように、移動式ユニットの調製物排出部における接続部と接続可能な調製物供給部71と、バルブ72を備える配管74と、配管74の先端に形成された充填ノズル73と、充填容器75と、重量計76と、を備える形態等を挙げることができる。
【0020】
前記充填ユニットは、クリーンルーム内に設置されることが好ましい。尚、充填ユニットの設置数は特に限定されず、適宜選択される。
前記クリーンルームのクリーン度は、Class1000以下であることが好ましく、更に好ましくはClass100以下である。このクリーン度がClass1000以下である場合には、フォトレジスト材料等の電子材料分野に用いられる組成物や、ディスプレイ材料に用いられる配向膜組成物や着色レジスト組成物等の、異物混入に対する管理が厳しく且つ高価な組成物の製造分野において、本調製装置を好適に用いることができる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0022】
[1]調製装置の構成
図4に示すように、本調製装置1は、クリーンルームA(原料供給室)内に設置された原料供給ユニット50、60(図2参照)と、クリーンルームB(調製物充填室)内に設置された充填ユニット70(図3参照)と、これらのクリーンルームA及びBの間を自由に移動可能な移動式ユニット10(図1参照)と、を備えている。
【0023】
(1)移動式ユニットの構成
図1に示すように、移動式ユニット10は、移動式基台11と、調製タンク12と、濾過装置14と、調製タンク12内の内容物を濾過装置14まで運ぶための第1ライン15と、濾過装置14を通過した内容物を調製タンク12まで運ぶための第2ライン16と、調製タンク12内に原料を供給するための原料供給部3と、調製物を移動式ユニット外へ排出するための調製物排出部4と、を備えている。
基台11は、床面に向けて圧縮エアーを噴出可能に構成されており、エアー浮上式となっている。更に、基台11の床面側には車輪(図示せず)が配設されており、エアーにより浮上している移動式ユニットを下方に押しつけて移動させることによって、移動式ユニットの動きが制御される。
【0024】
調製タンク12は基台11に配設されており、攪拌装置13と、原料供給部3とを備えている。この原料供給部3は、原料供給ユニット50、60(図2参照)に接続される接続部31と、バルブ32と、原料供給ノズル33と、を備えている。
濾過装置14は基台11に配設されており、内部に濾材を備えている。
第1ライン15は、調製タンク12の下部と濾過装置14とを接続するように配設されている。更に、この第1ライン15には、バルブ17と、送液ポンプ18とが配設されている。
また、第2ライン16は、濾過装置14と調製タンク12の上部とを接続するように配設されている。更に、この第2ライン16には、調製物排出部4が配設されている。この調製物排出部4は、充填ユニット70(図3参照)に接続される接続部41と、動作自由度の高いフレキシブルライン42と、バルブ43と、を備えている。
【0025】
(2)原料供給ユニットの構成
図2に示すように、原料供給ユニット50は、原料タンク51と、バルブ52を備える配管54と、配管54の先端に形成され且つ移動式ユニット10における接続部31と接続可能な原料排出部53と、を備えている。また、同様に、原料供給ユニット60は、原料タンク61と、バルブ62を備える配管64と、配管64の先端に形成され且つ移動式ユニット10における接続部31と接続可能な原料排出部63と、を備えている。
【0026】
(3)充填ユニットの構成
図3に示すように、充填ユニット70は、移動式ユニット10における接続部41と接続可能な調製物供給部71と、バルブ72を備える配管74と、配管74の先端に形成された充填ノズル73と、充填容器75と、重量計76と、を備えている。
【0027】
[2]調製装置の作用
図1〜4を参照して、本調製装置1を用いて組成物を調製する際の作用を説明する。
まず、原料供給ユニット50、60の設置されたクリーンルームA(原料供給室)内に、移動式ユニット10を移動させる。
次いで、移動式ユニット10における原料供給部3の接続部31と、原料供給ユニット50における原料排出部53とを接続し、バルブ32、52を開放し、予め原料タンク51に仕込まれた原料を、調製タンク12内に供給し、バブル32、52を閉じる。その後、移動式ユニット10における原料供給部3の接続部31と、原料供給ユニット60における原料排出部63とを接続し、バルブ32、62を開放し、予め原料タンク61に仕込まれた他の原料を、調製タンク12内に供給し、バルブ32、62を閉じる。
そして、全ての原料の供給が完了した後、調製タンク12内の原料を撹拌装置13により、所要時間、撹拌する。撹拌終了後、バルブ17を開放して、送液ポンプ18を作動させ、調製タンク12内の組成物が第1ライン15、濾過装置14、第2ライン16、調製タンク12の順に循環するように、所要時間、循環濾過を行う。
循環濾過が終了した後、移動式ユニット10を、充填ユニット70の設置されたクリーンルームB(調製物充填室)近くに移動させる。次いで、移動式ユニット10に備え付けられた動作自由度の高い配管(フレキシブルライン42)と充填ユニット等に接続可能な接続部41のみをクリーンルームB(調製物充填室)に入れて、充填ユニット70における調製物供給部71と接続部41とを接続し、バルブ43、72を開放し、重量計76に載置された充填容器75に組成物を充填する。尚、この充填工程は、移動式ユニット10全体をクリーンルームB内に入れて行ってもよい。
【0028】
このように、本調製装置1によれば、クリーンルームAに設置された原料供給ユニット50、60と、クリーンルームBに設置された充填ユニット70との間を、移動式ユニット10が移動することによって、生産設備の配管長さを従来の固定式の調製装置では達成できない程度にまで短くすることができる。そのため、生産設備の配管及びバルブから混入するディフェクト発生の要因となり得る異物の量を大幅に低減することができる。更には、配管内に残留する調製物の量を最小限に抑えることができるため、収率を大幅に向上することができる。
更に、本調製装置1によれば、原料供給ユニット50、60から調製タンク12に原料を供給した後、移動式ユニット10での撹拌操作や循環濾過等の調製工程や充填ユニット70での充填工程中に、原料供給ユニット50、60の洗浄を平行して行うことができる。更には、連続して次の生産を行う場合に、原料供給ユニット50、60からの調製タンク12への原料供給工程や移動式ユニット10での調製工程中に、充填ユニット70における前バッチ品を平行して洗浄することができる。これによって、複数バッチを生産する場合の単位バッチ当たりに要する平均の生産時間を短くすることができ、より生産性を向上することができる。
また、充填工程時に動作自由度の高い配管(フレキシブルライン42)と接続部41のみをクリーンルームの内部に入れて充填操作を行う場合には、充填ユニット70がクリーン度の比較的高いクリーンルーム(例えば、Class1000以下)に設置されていても、クリーン度の低下を最小限に抑えることができる。更には、移動式ユニット全体をクリーンルーム内に入れて充填操作を行う場合よりも、クリーンルームに必要な面積をより省スペース化することができ、設備コストを大幅に低減できる。
【0029】
[3]組成物の調製
(1)実施例1(液浸用組成物溶液の調製)
まず、図4に示すように、クリーンルームA(原料供給室)内に設置された原料供給ユニット50、60(図2参照)と、クリーンルームB(調製物充填室)内に設置された充填ユニット70(図3参照)と、これらのクリーンルームA及びBの間を自由に移動可能な移動式ユニット10(図1参照)と、を備える調製装置1を組み立てた。
この際、クリーンルームAにおけるクリーン度をClass1000とし、クリーンルームBにおけるクリーン度をClass100とした。また、原料供給ユニット50における原料タンク51(容量;50L)には、原料Aとして、液浸用組成物〔2−メチル−アクリル酸4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチル−ブチルとビニルスルホン酸との共重合体(重量平均分子量(Mw):10500)を20質量%含む4−メチル−2−ペンタノール〕を仕込んだ。更に、原料供給ユニット60における原料タンク61(容量;50L)には、原料Bとして、4−メチル−2−ペンタノールを仕込んだ。また、移動式ユニット10における濾過装置14の濾材としては、HDPE(高密度ポリエチレン)フィルター(孔径;0.1μm)を用いた。
【0030】
次いで、原料供給ユニット50、60の設置されたクリーンルームA(原料室)内に、移動式ユニット10を移動させた。移動後、移動式ユニット10における調製タンク12(容量;100L)内に、原料供給ユニット50から原料Aを30kg供給し、更に、原料供給ユニット60から原料Bを30kg供給した。
その後、クリーンルームA内で、調製タンク12内の各原料を3時間撹拌した後、4時間かけて循環濾過を行って、調製物(液浸用組成物溶液)を再び調製タンク12内に戻した。
次いで、移動式ユニット10を、充填ユニット70の設置されたクリーンルームB(調製物充填室)近くに移動させた。移動後、移動式ユニット10における動作自由度の高い配管(フレキシブルライン42)と充填ユニット等に接続可能な接続部41のみをクリーンルームB(調製物充填室)に入れて、調製タンク12内の液浸用組成物溶液を、充填ユニット70における充填容器75に充填した。
そして、この方法により得られた液浸用組成物溶液の回収率を測定したところ、その回収率は92質量%と非常に高かった。尚、この実施例1と同量の組成物を、移動式ユニット10を備える調製装置1を用いず、従来の固定式の調製装置で生産する場合、調製タンクや、充填ユニットと調製タンクとをつなぐ配管中における組成物溶液の残留量が多く、その回収率は、通常80質量%程度である。
【0031】
(2)実施例2(フォトレジスト用組成物溶液の調製)
まず、実施例1と同様に、クリーンルームA(原料供給室)内に設置された原料供給ユニット50、60と、クリーンルームB(調製物充填室)内に設置された充填ユニット70と、これらのクリーンルームA及びBの間を自由に移動可能な移動式ユニット10と、を備える調製装置1を組み立てた(図1〜4参照)。
この際、クリーンルームAにおけるクリーン度をClass10000とし、クリーンルームBにおけるクリーン度をClass100とした。また、原料供給ユニット50における原料タンク51(容量;50L)には、原料Aとして、フォトレジスト用樹脂含有溶液〔ヒドロキシスチレンとtert−ブトキシカルボニルヒドロキシスチレンとの共重合体(Mw:13000)を30質量%含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液〕を仕込んだ。更に、原料供給ユニット60における原料タンク61(容量;50L)には、原料Bとして、酸発生剤(トリフェニルスルホニウムトリフレートを20質量%含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)を仕込んだ。また、移動式ユニット10における濾過装置14の濾材としては、HDPE(高密度ポリエチレン)フィルター(孔径;0.2μm)を用いた。
【0032】
次いで、原料供給ユニット50、60の設置されたクリーンルームA(原料室)内に、移動式ユニット10を移動させた。移動後、移動式ユニット10における調製タンク12(容量;100L)内に、原料供給ユニット50から原料Aを30kg供給し、更に、原料供給ユニット60から原料Bを10kg供給した。
その後、クリーンルームA内で、調製タンク12内の各原料を4時間撹拌した後、3時間かけて循環濾過を行って、調製物(フォトレジスト用組成物溶液)を再び調製タンク12内に戻した。
次いで、移動式ユニット10を、充填ユニット70の設置されたクリーンルームB(調製物充填室)近くに移動させた。移動後、移動式ユニット10における動作自由度の高い配管(フレキシブルライン42)と充填ユニット等に接続可能な接続部41のみをクリーンルームB(調製物充填室)に入れて、調製タンク12内のフォトレジスト用組成物溶液を、充填ユニット70における充填容器75に充填した。
そして、この方法により得られたフォトレジスト用組成物溶液の回収率を測定したところ、その回収率は93質量%と非常に高かった。尚、この実施例2と同量の組成物を、移動式ユニット10を備える調製装置1を用いず、従来の固定式の調製装置で生産する場合、調製タンクや、充填ユニットと調製タンクとをつなぐ配管中における組成物溶液の残留量が多く、その回収率は、通常80質量%程度である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】移動式ユニットの構成を説明する模式図である。
【図2】原料供給ユニットの構成を説明する模式図である。
【図3】充填ユニットの構成を説明する模式図である。
【図4】調製装置の構成を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0034】
1;調製装置、10;移動式ユニット、11;移動式基台、12;調製タンク、13;撹拌装置、14;濾過装置、15;第1ライン、16;第2ライン、17;バルブ、18;送液ポンプ、3;原料供給部、31;接続部、32;バルブ、33;原料供給ノズル、4;調製物排出部、41;接続部、42;フレキシブルライン、43;バルブ、50;原料供給ユニット、51;原料タンク、52;バルブ、53;原料排出部、54;配管、60;原料供給ユニット、61;原料タンク、62;バルブ、63;原料排出部、64;配管、70;充填ユニット、71;調製物供給部、72;バルブ、73;充填ノズル、74;配管、75;充填容器、76;重量計、A、B;クリーンルーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式ユニットが備えられた調製装置であって、
前記移動式ユニットには、
移動式基台と、
前記移動式基台に配設され、攪拌装置を有する調製タンクと、
前記移動式基台に配設される濾過装置と、
前記移動式基台に配設され、前記調製タンク内の内容物を前記濾過装置まで運ぶための第1ラインと、
前記移動式基台に配設され、前記濾過装置を通過した内容物を前記調製タンクまで運ぶための第2ラインと、が備えられていることを特徴とする調製装置。
【請求項2】
前記調製タンク内に原料を供給するための原料供給部が、前記調製タンク、前記第1ライン又は前記第2ラインに配設されており、
且つ、調製物を前記移動式ユニット内から前記移動式ユニット外へ排出するための調製物排出部が、前記調製タンク、前記第1ライン又は前記第2ラインに配設されている請求項1に記載の調製装置。
【請求項3】
前記移動式ユニットに原料を供給するための原料供給ユニットを備え、
前記移動式ユニットにおける前記原料供給部が、前記原料供給ユニットにおける原料排出部に接続されることによって、前記調製タンク内に原料が供給される請求項2に記載の調製装置。
【請求項4】
前記原料供給ユニットが、Class100000以下のクリーンルームに設置されている請求項3に記載の調製装置。
【請求項5】
充填容器に前記調製物を充填するための充填ユニットを備え、
前記移動式ユニットにおける前記調製物排出部が、前記充填ユニットにおける調製物を供給するための調製物供給部に接続されることによって、前記充填ユニットに調製物が供給される請求項2乃至4のいずれかに記載の調製装置。
【請求項6】
前記充填ユニットが、Class1000以下のクリーンル−ムに設置されている請求項5に記載の調製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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