調量装置を用いたワークの被覆方法及びこの調量装置で被覆加工したワーク
本発明は、ワークの一部を選択的に被覆するための方法、工程及びシステム、ならびに本発明により被覆されたワークに関する。本発明の方法及び工程においては、ワークの被覆対象表面を被覆するために、ワークの被覆対象表面をローラと接触させて配置することができる。一部の実施形態では、ローラは、処理及び被覆工程中の一部又は全てにおいて、調量装置とも接触させて配置することができる。ワークは植え込み可能な医療器具とすることができ、被膜は治療薬を含むことができる。ワークは、その他の器具であってもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆加工されたワーク、及び調量装置を用いてワークを選択的に被覆するためのシステムに関する。より詳細には、本発明は、植え込み可能な医療器具のようなワークと、これらの医療器具を被覆するための方法及びシステムに関し、治療用被膜又はその他の被膜が、被覆加工中にワーク表面の一部又は全部に対して選択的に適用される。
【背景技術】
【0002】
ワークの被覆加工は、現代の製造業において頻繁に繰り返される製造過程である。ワークは、回転式コーティング(tumble coating)、吹き付け塗装、浸漬コーティング、及び静電塗装などの方法によって被覆することができる。これらの各方法が行なわれている間に、ワークは、意図される目的で使用される前に、被覆加工が施される。
【0003】
ワークが格子状ストラットや他の開放型フレームワークから一部又は全体が形成されているときには、これらのストラット又はフレームワークの各表面は被膜材料に暴露され、上述した被覆方法中に被覆加工される。ワークピースの各表面を被膜材料に暴露することによって、暴露された各表面は、被覆工程中に被覆される。
【0004】
被覆加工されるワークがステントのような植え込み可能な医療器具である場合には、ステントを構成するストラットのすべての表面が、上述された被覆システムを用いたときに被覆される。例えば、浸漬コーティングが使用される場合、ステントストラットの各表面は被膜材料に暴露される。この被膜は、ステントを浸漬槽から取り出して乾燥させると、ストラットの各表面上に残留する。被膜は、ストラット間の空間にも残留させてもよい。この現象は、時として「ウェビング」と呼ばれる。この状態においては、個々のストラットが被覆されるのみならず、ストラット間の空間の一部又は全部にも被膜が広がっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、調量装置を用いたワークの被覆方法及びこの調量装置で被覆加工したワークを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ワークの一部を被覆する方法、工程及びシステムと、本発明により被覆されたワークとに関する。本発明によれば、例えば、医療用インプラントのようなワークの外面の一部又は全部を治療用被膜で被覆し、被覆対象ではないインプラントの内面は被覆されないようにすることができる。
【0007】
本発明の方法そして工程において、ワークの被覆対象表面を被覆するために、ワークをローラと接触させて配置することができる。処理及び被覆工程の一部又は全部において、ローラを調量装置とも接触させて配置してもよい。この調量装置は、調量装置に接触する被膜材料の一部が調量装置を通過できるように、一連の開口又はその他の孔を形成することができる。さらに、最初に調量装置を通過しなかった被膜材料の一部は、同じく開口を通過するまで留まることができる。本発明の実施形態によれば、ワーク、ローラ及び調量装置、又はこれらのうち任意のものを回転させることができる。ワークは植え込み可能な医療器具とすることができ、被膜は治療薬を含むことができる。なお、ワークはその他の器具であってもよい。
【0008】
本発明は、様々な器具において、また様々な方法及びシステムを用いて実施することができる。以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて考慮することにより、本発明の例を開示するものである。本明細書に教示される特徴の一部又は全部を組み込んだその他の実施形態も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ワークの1つ以上の表面を被覆し、かつワークの他の表面は被覆しないことに関する。一部の実施形態では、これは、ワークの外面又は側面を被覆し、ワークの内面は被覆しないことを含み得る。このように被覆することにより、ワーク上に残留する被膜の量を減じることができる。例えば、ワークが医療用インプラントであり、被膜が治療薬を含んでいる場合、被膜を減じることは、ステントが目的部位に植え込まれた後に治療薬をより目的部位に集中して送ることを可能にする場合がある。被膜の限定的使用はまた、貴重なものであり得る被膜材料を節約することもできる。
【0010】
所望の均一な厚さの被膜を、本発明によるローラ及び調量装置を使用してワークの被覆対象表面に適用することができる。例えば、調量装置は、被膜の厚さを調整するためにローラと接触させることができる。ワーク、ローラ及び調量装置のそれぞれは、ワークの1つ以上の表面の被覆を容易にするために、回転させることができる。ローラは、被膜材料リザーバ内部で回転させられてもよく、あるいは被膜材料源に接続されるその他の位置に配置されてもよい。複数の調量装置、又は調量装置の組み合わせを使用することもできる。例えば、メイヤーロッドを平滑なロッドと共に用いることができる。
【0011】
メイヤーロッドは、外面の周りに巻かれたワイヤを有する棒状体である。メイヤーロッドは一般的に、被膜材料の重量及び/又は厚さを制御することによって、被膜溶液を調整するために使用される。メイヤーロッドは、所定の被膜厚さの正確さを改善し、また生じる被膜厚さの均一性を改善することができる。メイヤーバーのロッド及びワイヤは、任意の好適な寸法を有することができる。例えば、ワイヤは約2〜150ミル(約0.05〜3.81mm)とすることができる。近接するワイヤ巻回部同士の間には、空間又は間隙が形成される。これらの空間の厚さは、ワイヤの太さ又は直径によって定められる。そして、ワイヤの太さは、ローラからワークの被覆対象表面へ移動する被膜材料の厚さを決定する。
【0012】
本明細書で論じられるロッド及びワイヤは、ステンレス鋼のような任意の好適な金属及び/又はポリマー材料とすることができる。ロッド及びワイヤの外面はまた、非付着性材料で被覆されていてもよい。例えば、PTFE及びテフロン(商標)を使用することができる。更に、ロッド及びワイヤの外面は、めっきされてもよい。例えば、ロッド及びワイヤは、クロム、ニッケル、又は窒化チタンでめっきすることができる。ロッド及びワイヤをめっきすると、比較的平滑な接触面を提供することによって被覆を促進することができる。更に、ロッド及びワイヤをめっきすることはまた、摩滅を減らすことによって摩耗を減らすことができ、調量装置の寿命を延ばすことができる。
【0013】
図1aは、本発明において用いることができる調量装置100を示す。図1aから明白であるが、ロッド102は、ロッド102の一端106から他端108に向かって周面の周りに密接して巻くことができるワイヤ104を備える。また、図1には、ワークの被覆対象表面を被覆するために使用することができるローラ110の一部も示されている。ローラ110は、治療薬などの被膜をその表面に有することができる。ロッド102及びワイヤ104は、被覆厚さを調整するために使用することができる。すなわち、ロッド102及びワイヤ104は、ローラ110上の被膜材料の一定量を除去する、又は制御することができる。このため、ローラ110は、調量装置100を越えた位置まで移動した後に、ワークの被覆対象表面に被膜材料を移動させることができる。
【0014】
図1bは、本発明において用いることができる別の調量装置112を示す。図1bでは、調量装置112は、ねじ山116が表面に一体的に形成されたロッド114とすることができる。ねじ切りされたロッド114は、例えば、より厚い被膜厚さ及び高粘度の被膜材料が使用される用途において使用することができる。あるいは、図1cに示すように、ワイヤ122を備えるロッド120を有する別の調量装置118を使用してもよい。ワイヤ122は、図1aに比較して、隣接したワイヤ122の間により大きな空間が存在するように巻回可能することができる。図1cの調量装置118も、例えば、より厚い被膜厚さ及び高粘度の被膜材料が使用される用途において使用することができる。
【0015】
図1dは、本発明において用いることができる別の調量装置124を示す。図1dにおいて明白なように、ロッド126は、実質的に平滑な表面を備えることができる。平滑な表面を有するロッドは、例えば、均一な被覆を容易にするために、本明細書で説明する調量装置100,112,118の1つと共に用いることができる。
【0016】
図示しない別の実施形態では、複数の別のワイヤを、様々なほかの方法で調量装置のロッドの周りに巻回することができる。例えば、第2ワイヤをロッドの周りに巻回することができる。更に、第2ワイヤは、より小さな直径を有し、第1ロッドの溝の周りに巻き付けることができる。複数のワイヤが巻き付けられたロッドは、比較的厚い被覆を適用する用途において使用することができる。さらに、上述した調量装置の任意の組み合わせを用いることができる。
【0017】
図1a〜図1dにおいては、ロッド102、114、120、及び126はほぼ円筒形をなすが、ロッド102、114、120、及び126は、任意の好適な形状及び寸法を有することができる。図1a〜図1dの例においては、ロッド102、114、120、及び126ならびにワイヤ104、122はステンレス鋼で形成することができる。
【0018】
図2aは、本発明により被覆することができるステント226のストラット228を側方から見た断面図である。図2aのストラット228は、内面230、外面232及び2つの切断面234を有する。ストラット228上には、被膜236も示されている。図示されるように、被膜236は、ストラット228の一面のみを被覆している。
【0019】
図2bは、本発明により被膜を適用することができる別の例を示す。図2bでは、第1被膜236及び第2被膜238がストラット228に適用されている。図示されるように、第1被膜236はストラット228と接触しているが、第2被膜238は第1被膜236と接触してさらにストラット228の外面232を被覆する。この第2被膜238は、本発明の工程及び方法により適用することができるが、異なる方法及び工法により適用することもできる。この例では、本明細書に説明される他の例と同様に、第2被膜238がこの被覆において用いられる場合、第1被膜236と同じ材料であってもよく、第1被膜236に使用される材料とは異なる材料であってもよい。更に別の例では、被膜は、他のパターンにて適用されもよい。例えば被膜は、対向する切断面234には適用されるが外面232には適用されないようにしてもよく、同様に、切断面234及び外面232の両方に適用されてもよい。例示的な実施形態では、外面232が被覆されており、2つの切断面234は内面230とともに被覆されていない。
【0020】
図2cは、本発明により被覆できる格子部分を含む植え込み可能な大動脈ステント226の側面図である。ステント226は、多孔性であってもよく、あるいは多孔性部分を有していてもよい。図2a及び図2bに示されるストラット228は、このステント226を構成することができるストラット228である。これらの最初の図面で示されるワークはステント226であるが、その他の多数のワークを本発明により被覆することができる。例えば、被覆可能な他の医療器具には、フィルタ(例えば大静脈フィルタ)、ステントグラフト、腔内敷設システム、インプラント、及び薬剤含有ポリマー被膜に関連して使用される他の器具などを含む。同様に、ワークは、植え込み可能な医療器具でなくてもよく、予め選択された特定の表面上にのみ被覆を必要とする他のワークであってもよい。いくつかの例においては、これらの医療器具又は他のワークは導電材料で形成することができるが、他の例ではそうではない。例えば、医療器具又は他のワークは、ポリマーやセラミックで形成することができる。
【0021】
図3aは、本発明の実施形態において使用可能なメイヤーバー300を示す。この例では、メイヤーバー300は、支持部材340に連結することができ、またローラ310の一部と接触させることもできる。メイヤーバー300はロッド302を備え、ロッド302は、その一端から他端に向かって周面の周りに巻き付けられたワイヤ304を有する。ロッド302及びワイヤ304は、ステンレス鋼などの任意の好適な材料で形成することができる。例えば、ロッド302は、3フィート1/16インチ(約91.6cm)ステンレス鋼とすることができる。メイヤーバー300は回転させることができ、メイヤーバー300のロッド302は、駆動機構342に対して回転可能に連結することもできる。駆動機構342は、電気式、機械式又は油圧式の駆動源を使用でき、また、それらの組み合わせを用いてもよい。例えば、モータ、エンドレスベルト、伝動装置、又は手動クランクを用いることができる。
【0022】
ローラ310も回転可能とすることができ、被膜材料源(図示しない)に連通していてもよい。被膜材料源は、ローラ310の一部を被覆するために、被膜材料をローラ310に供給することができる。その後、ローラ310の被覆された部分を、ローラ310がワークの被覆対象表面に接触する前に、メイヤーバー300に接触させることができる。メイヤーバー300は、ローラ310の一部上に位置する被膜344の量を除去する、又は制御するためにスキージとして機能することができる。
【0023】
図3bに示すように、複数の空間346が隣接したワイヤ304の間で形成されてもよい。ワイヤ304の太さは、空間346の厚さを決定することができる。これらの空間346は、厚さA、B、C及びDを有することができ、これら厚さは、ワークの被覆対象表面に移動させられる被膜材料344の厚さを制御することができる。従って、本発明によれば、被膜344の厚さは、空間346の厚さA、B、C及びDを決定することができるワイヤ304の直径又は寸法によって決定され得る。ローラ310の一部がメイヤーバー300を越えて移動すると、メイヤーバー300はすべての、ただし空間346に位置する被膜材料344の量を拭き取る。
【0024】
上述したように、被膜の濡れ厚は、ワイヤに所望される厚さ又は寸法の選択によって実質的に制御することができる。例えば、被膜の濡れ厚は、ワイヤ直径の約0.1倍とすることができる。様々なワイヤ寸法を用いて所望の濡れ膜厚を生じさせることができる。濡れ厚は、約0.1ミル、すなわち約2.5μm以内に制御することができる。例えば、表1は、好適となり得る米国標準単位及びメートル法単位によるワイヤ寸法及び濡れ膜厚を提示する。
【0025】
【表1】
比較して、被膜の乾燥厚さは、一部が被膜溶液の固形物濃度及び蒸発速度によって決定され得る。被膜の特性(例えば粘度)も、被膜溶液の乾燥厚さの決定において比較的重要となり得る。
【0026】
図4aは、本発明において使用可能なローラ410及び調量装置400を使用してワーク401の被覆対象表面を被覆するためのシステムを示す。この例では、調量装置400は、固定されてもよい。ローラ410は、少なくともその一部を被膜材料444を有するリザーバ448内に配置することができる。図4aからまた明白であることには、ローラ410は、時計回りに回転可能であってもよく、ワーク401は反時計回りに回転可能であってもよい。しかしながら、ローラ410及びワーク400は、同一方向に回転してもよい。あるいは、ローラ410が反時計回りに、ワーク401が時計回りにそれぞれ回転してもよい。
【0027】
図4bは、本発明において使用可能なローラ410、複数の調量装置400、403、及びドクターブレード450を用いて、ワーク401の被覆対象表面を被覆するための別のシステムを示す。この例では、ローラ410は、少なくともその一部を被膜材料444を有するリザーバ448内に配置することができる。さらに、この例では、ローラ410は時計回りに回転することができ、一方の調量装置400及びワーク401は反時計回りに回転することができ、他方の調量装置403は静止させておくことができる。しかしながら、他の好適な構成を用いることもできる。
【0028】
図4cは、本発明において使用可能なローラ410及び調量装置400を用いて、ワーク401の被覆対象表面を被覆するためのさらに別のシステムを示す。この実施形態では、調量装置400は、少なくともその一部を被膜材料444を有するリザーバ448内に配置することができる。この例では、調量装置400及びワーク401は反時計回りに回転することができる。ローラ410は、時計回りに回転することができる。この実施形態では、ローラ410はリザーバ448の外にあり、調量装置400によって被覆されることができる。しかしながら、他の構成を用いることも可能である。
【0029】
図4a〜図4cに示されていない他の好適な例もまた使用することができる。例えば、ローラ410、調量装置400、403、450、及びワーク401、またはこれらのうち任意のものを所望の方向に回転させることができ、あるいは、全く回転させないこともできる。
【0030】
さらに、調量装置400、403及び450は、図示されているものに限らず、任意の組み合わせを用いることもできる。
図5は、ワークの被覆対象表面を被覆するために、本発明の実施形態と共に用いることができる方法の工程を含むフローチャートを示す。図5aの例では、工程S1は、ワーク、ローラ及び少なくとも1つの調量装置を提供することを含むことができる。工程S2は、ローラの一部と接触するように調量装置を配置することを含むことができる。S3は、ローラの一部と接触するようにワークの被覆対象表面を配置することを含むことができる。S4は、ローラを介してワークの被覆対象表面に治療用被膜を適用することを含むことができる。S5は、調量装置を使用してワークの被膜厚さを制御することを含むことができる。図示しない別の実施形態においては、工程の順序は並び替えられてもよく、工程の追加・省略がなされてもよい。前記工程は改変することもできる。更に、前記工程は連続的に繰り返されてもよい。
【0031】
様々な実施形態について記述してきたが、他の実施形態も可能である。調量装置及びローラの様々な例についての前記説明は、本発明を限定することを意図するものではなく、ワークの被覆対象表面の被覆の有効性を高めるために、上記例の改変、組み合わせ、別例を任意に用いることができることは理解されたい。
【0032】
本発明の実施形態における被膜材料は、例えば無溶媒下で薬剤を液状ポリマーと混合して液状ポリマー/薬剤混合液を生成することにより、ポリマー剤及び/又は治療薬を含むことができる。好適な薬剤及び/又はポリマーの組み合わせを以下に列挙する。本明細書において使用される「治療薬」という語は、1つ以上の「治療薬」又は「薬剤」を含む。「治療薬」又は「薬剤」という語は、本明細書において区別なく使用され得るものであり、薬学的に活性な化合物や、核酸(脂質のような運搬ベクターの有無は問わない)、コンパクト化物質(compacting agents) (ヒストンなど)、ウイルス(アデノウィルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アルファウイルスなど)、ポリマー、ヒアルロン酸、タンパク質、細胞など(ターゲッティング配列の有無を問わない)を含むことができる。
【0033】
本発明と共に使用される治療薬の特定の例は、例えば、薬学的に活性な化合物、タンパク質、細胞、オリゴヌクレオチド、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、DNAコンパクト化物質、遺伝子/ベクターシステム(すなわち、核酸の取り込み及び発現を可能にする任意の運搬媒体)、核酸(例えば組み替え核酸;裸DNA、cDNA、RNA;非感染性ベクター又はウイルス性ベクターのゲノムDNA、cDNA又はRNA(さらにペプチドターゲッティング配列に結合させてあってもよい);アンチセンス核酸(RNA又はDNA);及び遺伝子配列を含み、膜転位配列(「MTS」)及び単純ヘルペスウイルス1型(「VP22」)などの輸送タンパク質(ferry proteins)をコードするDNAキメラ)、所望の用途に応じて多数のタイプから選択される、ウイルス性、リポソーム、カチオン性及びアニオン性ポリマー、中性ポリマーを含む。ウイルス性ベクター又はウイルス由来のベクターの例としては、アデノウイルスベクター、単純ヘルペスベクター、パピローマウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。生物学的に活性な溶質の例としては、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ及びPPACK(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)などの抗血栓剤;プロブコール及びレチノイン酸などの抗酸化剤;血管新生剤及び血管新生因子、抗血管新生剤及び抗血管新生因子;エノキサプリン、アンギオペプチン、ラパマイシン、アンギオペプチン、平滑筋細胞の増殖を阻害能を有するモノクローナル抗体、ヒルジン、アセチルサリチル酸などの抗増殖剤;デキサメタゾン、プレドニソロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、サルファサラジン、アセチルサリチル酸、メサラミンなどの抗炎症剤;ベラパミル、ジルチアゼム、ニフェジピンなどのカルシウム流入阻害剤;パクリタキセル、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロスポリン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポシロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、チミジンキナーゼ阻害剤などの抗腫瘍剤/抗増殖剤/抗有糸分裂剤;トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ニトロフラントインなどの抗菌剤;リドカイン、ブピバカイン、ロピバカインなどの麻酔薬;リンシドミン、モルシドミン、L−アルギニン、NO−タンパク質付加体、NO−糖鎖付加体、ポリマーの又はオリゴマーのNO付加体などの一酸化窒素(NO)供与体;D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、エノキサパリン、ヒルジン、ワルファリンナトリウム、ジクマロール、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、抗血小板剤、ダニ由来の抗血小板因子などの抗凝血剤;増殖因子、増殖因子受容体拮抗薬、転写活性化因子、翻訳促進因子などの血管細胞増殖促進剤;増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子及びサイトトキシンからなる二官能性分子、抗体及びサイトトキシンからなる二官能性分子などの血管細胞増殖阻害剤;コレステロール降下剤;血管拡張剤;内因性血管作用機構を抑制する薬剤;抗Bcl−2ファミリー因子及びAktキナーゼのような細胞死を防ぐサバイバル遺伝子;及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。細胞は、ヒト由来(自己由来又は他人由来)のもの、あるいは動物由来(異種)のものとすることができ、これらは、必要に応じて、挿入部位において利益のあるタンパク質を運ぶように遺伝子操作される。当業者であれば、ごく普通に改変を行なうであろう。
【0034】
本発明の実施において有用なポリヌクレオチド配列には、細胞に取り込まれると治療効果を有するDNA又はRNA配列が含まれる。治療用ポリヌクレオチドの例には、アンチセンスDNA及びRNA;アンチセンスRNAをコードするDNA;欠陥又は欠損のある内因性分子を置換するためにtRNA又はrRNAをコードするDNAを含む。ポリヌクレオチドは、治療用タンパク質又はポリペプチドもコードすることができる。ポリペプチドは、大きさ、及びグリコシル化されるか否かにかかわらず、ポリヌクレオチドの任意の翻訳生成物として理解されている。治療用タンパク質及びポリペプチドの主要な例としては、動物の欠陥又は欠損のある種を補うことができるタンパク質もしくはポリペプチド、又は毒性により有害な細胞を抑制し、あるいは体内から除去するタンパク質もしくはポリペプチドが挙げられる。さらに、注入可能な、すなわちDNAを組み込むことが可能なポリペプチド又はタンパク質としては、血管新生因子及び血管新生誘導能を有するその他の分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。血管新生誘導能を有する分子としては、酸性及び塩基性の繊維芽細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、HIF−1、表皮細胞増殖因子、形質転換増殖因子∀及び∃、血小板由来内皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子∀、肝細胞増殖因子及びインスリン様増殖因子;増殖因子;CDK阻害剤などの細胞周期阻害剤;抗再狭窄物質(p15、p16、p18、p19、p21、p27、p53、p57、Rb、nFkB及びE2Fデコイ、チミジンキナーゼ(「TK」)、これらの組み合わせを含む)及び悪性腫瘍の治療薬を含む細胞増殖の抑制に有用なその他の物質;ならびにこれらの組み合わせを含む。ポリペプチド又はこれらのポリペプチドをコードするDNAとして提供可能なさらに別の有用な因子は、単球走化性タンパク質(「MCP−1」)、及び骨形成タンパク質(「BMP」)ファミリーを含む。このタンパク質の公知なものとしては、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、BMP−16が挙げられる。現時点で好ましいBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7のうち任意のものである。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体、又はこれらの組み合わせとして、単独で又は他の分子と共に提供することができる。これに代えて、又はこれに加えて、BMPの上流又は下流での発現を誘導することができる分子が提供されてもよい。このような分子は、「ヘッジホッグ」タンパク質及びこれをエンコードするDNAのうち任意のものを含む。
【0035】
上述したように、本発明の例示的な実施形態と共に使用される被膜は、例えば無溶媒下で薬剤を液状ポリマーと混合して液状ポリマー/薬剤混合液を生成することにより生成されるポリマー材料/薬剤マトリックスを含むことができる。この混合液の硬化は通常、その場(in-situ) で起こる。硬化を促進するために、混合液を適用する前に、架橋剤又は硬化剤を混合液に添加してもよい。架橋剤又は硬化剤のポリマー/薬剤混合液への添加は、適用前に混合液の過硬化が生じないように、混合液適用時点から早すぎる時点で行なってはならない。硬化は、管腔表面への適用後に、ポリマー/薬剤混合液を紫外線放射又はレーザ光などの放射、熱に暴露することにより、あるいは管腔表面にポリマー/薬剤混合液が適用された部位における水などの代謝流体と該混合液を接触させることにより、その場で起こり得る。本発明と共に用いられる被覆システムにおいて、ポリマー材料は生体吸収性又は生体安定性のいずれかの性質を有していてもよい。液体として調合することができる本明細書に記載される任意のポリマーを、ポリマー/薬剤混合液を生成するために使用することができる。
【0036】
本発明の例示的な実施形態で使用されるポリマーは、薬剤溶液を相当量吸収できることが好ましい。本発明に従って医療器具に被膜として適用されると、乾燥したポリマーは通常、約1〜50μmの厚さを有する。バルーンカテーテルの場合には、厚さは、好ましくは約1〜10μm、より好ましくは約2〜5μmである。非常に薄いポリマー被膜(例えば約0.2〜0.3μm)や、非常に厚い被膜(例えば10μmを超える)も可能である。本発明は、医療器具に複数のポリマー被覆層を適用することも企図している。このように多層構成とする場合、同一のポリマー材料で形成されていてもよく、あるいは異なるポリマー材料で形成されていてもよい。
【0037】
本発明のポリマーは、親水性又は疎水性とすることができ、ポリカルボン酸、酢酸セルロース及び硝酸セルロースのようなセルロース誘導体ポリマー、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマーのようなポリ無水物、ポリアミド、ポリビニルアルコール、EVAのようなビニルモノマーのコポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族化合物、ポリエチレンオキシド、グリコサミノグリカン、多糖類、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレンのようなポリアルキレン、ポリエチレン及び高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオルエチレンのようなハロゲン化ポリアルキレン、ポリウレタン、ポリオルトエステル、タンパク質、ポリペプチド、シリコーン、シロキサンポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートバリレート、これらのブレンドやコポリマー、ならびに他の生体分解性、生体吸収性、及び生体安定性のポリマー及びコポリマーの中から選択することができる。
【0038】
ポリウレタン分散物(BAYHDROL(登録商標)など)やアクリルラテックス分散物のようなポリマー分散物から被膜を形成することも本願発明の範囲内に含まれる。ポリマーは、例えば、タンパク質ポリマー、フィブリン、コラーゲン及びその誘導体、セルロース、デンプン、デキストラン、アルギン酸塩のような多糖類及びこれら多糖類の誘導体、細胞外マトリックス成分、ヒアルロン酸、又は他の生物学的製剤もしくは上記のうち任意のものの好適な混合物とすることができる。本発明の一実施形態では、好ましいポリマーは、米国マサチューセッツ州ナティックに所在するボストン・サイエンティフィック・コーポレーションより販売され、米国特許第5,091,205号明細書に開示されるHYDROPLUS(登録商標)として販売されるポリアクリル酸である。なお、同米国特許明細書は、参照により本明細書に援用される。米国特許第5,091,205号明細書は、1種類以上のポリイソシアネートで医療器具を被覆して、医療器具が、体液に暴露されると即座に潤滑性を有するようになることを開示している。本発明の別の好ましい実施形態では、ポリマーは、ポリ乳酸及びポリカプロラクトンのコポリマーである。
【0039】
本明細書に記載される例は、単に例示的なものであり、本発明の例示的な実施形態の主旨及び範囲から逸脱することなく、多数の他の実施形態を実施することができる。さらに、本発明の特定の特徴は、特定の実施形態や構成のみに示されていることもあるが、これらの特徴は、本発明の範囲内において、様々な実施形態や構成において交換、追加、除去することができる。同様に、記述され、開示される方法も、様々な順序で行なうことができ、本発明の主旨及び範囲内において、開示される工程の一部又は全てを、記述されているものとは別の順序で行なうこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1a】本発明において用いることができる調量装置を示す図。
【図1b】本発明において用いることができる別の調量装置を示す図。
【図1c】本発明において用いることができる別の調量装置を示す図。
【図1d】本発明において用いることができる別の調量装置を示す図。
【図2a】本発明により被覆された医療器具の被覆されたストラットの一部を示す断面図。
【図2b】本発明において用いることができる第2の被膜が適用された後の図2aの被覆されたストラットを示す断面図。
【図2c】本発明により被覆することができる医療器具である、動脈ステントの側面図。
【図3a】本発明において用いることができるメイヤーバー及び回転部材を示す図。
【図3b】本発明の被覆工程中における図3aのメイヤーバーを示す拡大図。
【図4a】本発明において用いることができる、ローラ及び調量装置を備えた、ワークを被覆するシステムを示す図。
【図4b】本発明において用いることができる、ローラ、調量装置及びドクターブレードを備えた、ワークを被覆する別のシステムを示す図。
【図4c】本発明において用いることができる、調量装置及びローラを備えた、ワークを被覆する別のシステムを示す図。
【図5】本発明の実施形態において用いることができる方法の工程を説明するフローチャート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆加工されたワーク、及び調量装置を用いてワークを選択的に被覆するためのシステムに関する。より詳細には、本発明は、植え込み可能な医療器具のようなワークと、これらの医療器具を被覆するための方法及びシステムに関し、治療用被膜又はその他の被膜が、被覆加工中にワーク表面の一部又は全部に対して選択的に適用される。
【背景技術】
【0002】
ワークの被覆加工は、現代の製造業において頻繁に繰り返される製造過程である。ワークは、回転式コーティング(tumble coating)、吹き付け塗装、浸漬コーティング、及び静電塗装などの方法によって被覆することができる。これらの各方法が行なわれている間に、ワークは、意図される目的で使用される前に、被覆加工が施される。
【0003】
ワークが格子状ストラットや他の開放型フレームワークから一部又は全体が形成されているときには、これらのストラット又はフレームワークの各表面は被膜材料に暴露され、上述した被覆方法中に被覆加工される。ワークピースの各表面を被膜材料に暴露することによって、暴露された各表面は、被覆工程中に被覆される。
【0004】
被覆加工されるワークがステントのような植え込み可能な医療器具である場合には、ステントを構成するストラットのすべての表面が、上述された被覆システムを用いたときに被覆される。例えば、浸漬コーティングが使用される場合、ステントストラットの各表面は被膜材料に暴露される。この被膜は、ステントを浸漬槽から取り出して乾燥させると、ストラットの各表面上に残留する。被膜は、ストラット間の空間にも残留させてもよい。この現象は、時として「ウェビング」と呼ばれる。この状態においては、個々のストラットが被覆されるのみならず、ストラット間の空間の一部又は全部にも被膜が広がっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、調量装置を用いたワークの被覆方法及びこの調量装置で被覆加工したワークを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ワークの一部を被覆する方法、工程及びシステムと、本発明により被覆されたワークとに関する。本発明によれば、例えば、医療用インプラントのようなワークの外面の一部又は全部を治療用被膜で被覆し、被覆対象ではないインプラントの内面は被覆されないようにすることができる。
【0007】
本発明の方法そして工程において、ワークの被覆対象表面を被覆するために、ワークをローラと接触させて配置することができる。処理及び被覆工程の一部又は全部において、ローラを調量装置とも接触させて配置してもよい。この調量装置は、調量装置に接触する被膜材料の一部が調量装置を通過できるように、一連の開口又はその他の孔を形成することができる。さらに、最初に調量装置を通過しなかった被膜材料の一部は、同じく開口を通過するまで留まることができる。本発明の実施形態によれば、ワーク、ローラ及び調量装置、又はこれらのうち任意のものを回転させることができる。ワークは植え込み可能な医療器具とすることができ、被膜は治療薬を含むことができる。なお、ワークはその他の器具であってもよい。
【0008】
本発明は、様々な器具において、また様々な方法及びシステムを用いて実施することができる。以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて考慮することにより、本発明の例を開示するものである。本明細書に教示される特徴の一部又は全部を組み込んだその他の実施形態も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ワークの1つ以上の表面を被覆し、かつワークの他の表面は被覆しないことに関する。一部の実施形態では、これは、ワークの外面又は側面を被覆し、ワークの内面は被覆しないことを含み得る。このように被覆することにより、ワーク上に残留する被膜の量を減じることができる。例えば、ワークが医療用インプラントであり、被膜が治療薬を含んでいる場合、被膜を減じることは、ステントが目的部位に植え込まれた後に治療薬をより目的部位に集中して送ることを可能にする場合がある。被膜の限定的使用はまた、貴重なものであり得る被膜材料を節約することもできる。
【0010】
所望の均一な厚さの被膜を、本発明によるローラ及び調量装置を使用してワークの被覆対象表面に適用することができる。例えば、調量装置は、被膜の厚さを調整するためにローラと接触させることができる。ワーク、ローラ及び調量装置のそれぞれは、ワークの1つ以上の表面の被覆を容易にするために、回転させることができる。ローラは、被膜材料リザーバ内部で回転させられてもよく、あるいは被膜材料源に接続されるその他の位置に配置されてもよい。複数の調量装置、又は調量装置の組み合わせを使用することもできる。例えば、メイヤーロッドを平滑なロッドと共に用いることができる。
【0011】
メイヤーロッドは、外面の周りに巻かれたワイヤを有する棒状体である。メイヤーロッドは一般的に、被膜材料の重量及び/又は厚さを制御することによって、被膜溶液を調整するために使用される。メイヤーロッドは、所定の被膜厚さの正確さを改善し、また生じる被膜厚さの均一性を改善することができる。メイヤーバーのロッド及びワイヤは、任意の好適な寸法を有することができる。例えば、ワイヤは約2〜150ミル(約0.05〜3.81mm)とすることができる。近接するワイヤ巻回部同士の間には、空間又は間隙が形成される。これらの空間の厚さは、ワイヤの太さ又は直径によって定められる。そして、ワイヤの太さは、ローラからワークの被覆対象表面へ移動する被膜材料の厚さを決定する。
【0012】
本明細書で論じられるロッド及びワイヤは、ステンレス鋼のような任意の好適な金属及び/又はポリマー材料とすることができる。ロッド及びワイヤの外面はまた、非付着性材料で被覆されていてもよい。例えば、PTFE及びテフロン(商標)を使用することができる。更に、ロッド及びワイヤの外面は、めっきされてもよい。例えば、ロッド及びワイヤは、クロム、ニッケル、又は窒化チタンでめっきすることができる。ロッド及びワイヤをめっきすると、比較的平滑な接触面を提供することによって被覆を促進することができる。更に、ロッド及びワイヤをめっきすることはまた、摩滅を減らすことによって摩耗を減らすことができ、調量装置の寿命を延ばすことができる。
【0013】
図1aは、本発明において用いることができる調量装置100を示す。図1aから明白であるが、ロッド102は、ロッド102の一端106から他端108に向かって周面の周りに密接して巻くことができるワイヤ104を備える。また、図1には、ワークの被覆対象表面を被覆するために使用することができるローラ110の一部も示されている。ローラ110は、治療薬などの被膜をその表面に有することができる。ロッド102及びワイヤ104は、被覆厚さを調整するために使用することができる。すなわち、ロッド102及びワイヤ104は、ローラ110上の被膜材料の一定量を除去する、又は制御することができる。このため、ローラ110は、調量装置100を越えた位置まで移動した後に、ワークの被覆対象表面に被膜材料を移動させることができる。
【0014】
図1bは、本発明において用いることができる別の調量装置112を示す。図1bでは、調量装置112は、ねじ山116が表面に一体的に形成されたロッド114とすることができる。ねじ切りされたロッド114は、例えば、より厚い被膜厚さ及び高粘度の被膜材料が使用される用途において使用することができる。あるいは、図1cに示すように、ワイヤ122を備えるロッド120を有する別の調量装置118を使用してもよい。ワイヤ122は、図1aに比較して、隣接したワイヤ122の間により大きな空間が存在するように巻回可能することができる。図1cの調量装置118も、例えば、より厚い被膜厚さ及び高粘度の被膜材料が使用される用途において使用することができる。
【0015】
図1dは、本発明において用いることができる別の調量装置124を示す。図1dにおいて明白なように、ロッド126は、実質的に平滑な表面を備えることができる。平滑な表面を有するロッドは、例えば、均一な被覆を容易にするために、本明細書で説明する調量装置100,112,118の1つと共に用いることができる。
【0016】
図示しない別の実施形態では、複数の別のワイヤを、様々なほかの方法で調量装置のロッドの周りに巻回することができる。例えば、第2ワイヤをロッドの周りに巻回することができる。更に、第2ワイヤは、より小さな直径を有し、第1ロッドの溝の周りに巻き付けることができる。複数のワイヤが巻き付けられたロッドは、比較的厚い被覆を適用する用途において使用することができる。さらに、上述した調量装置の任意の組み合わせを用いることができる。
【0017】
図1a〜図1dにおいては、ロッド102、114、120、及び126はほぼ円筒形をなすが、ロッド102、114、120、及び126は、任意の好適な形状及び寸法を有することができる。図1a〜図1dの例においては、ロッド102、114、120、及び126ならびにワイヤ104、122はステンレス鋼で形成することができる。
【0018】
図2aは、本発明により被覆することができるステント226のストラット228を側方から見た断面図である。図2aのストラット228は、内面230、外面232及び2つの切断面234を有する。ストラット228上には、被膜236も示されている。図示されるように、被膜236は、ストラット228の一面のみを被覆している。
【0019】
図2bは、本発明により被膜を適用することができる別の例を示す。図2bでは、第1被膜236及び第2被膜238がストラット228に適用されている。図示されるように、第1被膜236はストラット228と接触しているが、第2被膜238は第1被膜236と接触してさらにストラット228の外面232を被覆する。この第2被膜238は、本発明の工程及び方法により適用することができるが、異なる方法及び工法により適用することもできる。この例では、本明細書に説明される他の例と同様に、第2被膜238がこの被覆において用いられる場合、第1被膜236と同じ材料であってもよく、第1被膜236に使用される材料とは異なる材料であってもよい。更に別の例では、被膜は、他のパターンにて適用されもよい。例えば被膜は、対向する切断面234には適用されるが外面232には適用されないようにしてもよく、同様に、切断面234及び外面232の両方に適用されてもよい。例示的な実施形態では、外面232が被覆されており、2つの切断面234は内面230とともに被覆されていない。
【0020】
図2cは、本発明により被覆できる格子部分を含む植え込み可能な大動脈ステント226の側面図である。ステント226は、多孔性であってもよく、あるいは多孔性部分を有していてもよい。図2a及び図2bに示されるストラット228は、このステント226を構成することができるストラット228である。これらの最初の図面で示されるワークはステント226であるが、その他の多数のワークを本発明により被覆することができる。例えば、被覆可能な他の医療器具には、フィルタ(例えば大静脈フィルタ)、ステントグラフト、腔内敷設システム、インプラント、及び薬剤含有ポリマー被膜に関連して使用される他の器具などを含む。同様に、ワークは、植え込み可能な医療器具でなくてもよく、予め選択された特定の表面上にのみ被覆を必要とする他のワークであってもよい。いくつかの例においては、これらの医療器具又は他のワークは導電材料で形成することができるが、他の例ではそうではない。例えば、医療器具又は他のワークは、ポリマーやセラミックで形成することができる。
【0021】
図3aは、本発明の実施形態において使用可能なメイヤーバー300を示す。この例では、メイヤーバー300は、支持部材340に連結することができ、またローラ310の一部と接触させることもできる。メイヤーバー300はロッド302を備え、ロッド302は、その一端から他端に向かって周面の周りに巻き付けられたワイヤ304を有する。ロッド302及びワイヤ304は、ステンレス鋼などの任意の好適な材料で形成することができる。例えば、ロッド302は、3フィート1/16インチ(約91.6cm)ステンレス鋼とすることができる。メイヤーバー300は回転させることができ、メイヤーバー300のロッド302は、駆動機構342に対して回転可能に連結することもできる。駆動機構342は、電気式、機械式又は油圧式の駆動源を使用でき、また、それらの組み合わせを用いてもよい。例えば、モータ、エンドレスベルト、伝動装置、又は手動クランクを用いることができる。
【0022】
ローラ310も回転可能とすることができ、被膜材料源(図示しない)に連通していてもよい。被膜材料源は、ローラ310の一部を被覆するために、被膜材料をローラ310に供給することができる。その後、ローラ310の被覆された部分を、ローラ310がワークの被覆対象表面に接触する前に、メイヤーバー300に接触させることができる。メイヤーバー300は、ローラ310の一部上に位置する被膜344の量を除去する、又は制御するためにスキージとして機能することができる。
【0023】
図3bに示すように、複数の空間346が隣接したワイヤ304の間で形成されてもよい。ワイヤ304の太さは、空間346の厚さを決定することができる。これらの空間346は、厚さA、B、C及びDを有することができ、これら厚さは、ワークの被覆対象表面に移動させられる被膜材料344の厚さを制御することができる。従って、本発明によれば、被膜344の厚さは、空間346の厚さA、B、C及びDを決定することができるワイヤ304の直径又は寸法によって決定され得る。ローラ310の一部がメイヤーバー300を越えて移動すると、メイヤーバー300はすべての、ただし空間346に位置する被膜材料344の量を拭き取る。
【0024】
上述したように、被膜の濡れ厚は、ワイヤに所望される厚さ又は寸法の選択によって実質的に制御することができる。例えば、被膜の濡れ厚は、ワイヤ直径の約0.1倍とすることができる。様々なワイヤ寸法を用いて所望の濡れ膜厚を生じさせることができる。濡れ厚は、約0.1ミル、すなわち約2.5μm以内に制御することができる。例えば、表1は、好適となり得る米国標準単位及びメートル法単位によるワイヤ寸法及び濡れ膜厚を提示する。
【0025】
【表1】
比較して、被膜の乾燥厚さは、一部が被膜溶液の固形物濃度及び蒸発速度によって決定され得る。被膜の特性(例えば粘度)も、被膜溶液の乾燥厚さの決定において比較的重要となり得る。
【0026】
図4aは、本発明において使用可能なローラ410及び調量装置400を使用してワーク401の被覆対象表面を被覆するためのシステムを示す。この例では、調量装置400は、固定されてもよい。ローラ410は、少なくともその一部を被膜材料444を有するリザーバ448内に配置することができる。図4aからまた明白であることには、ローラ410は、時計回りに回転可能であってもよく、ワーク401は反時計回りに回転可能であってもよい。しかしながら、ローラ410及びワーク400は、同一方向に回転してもよい。あるいは、ローラ410が反時計回りに、ワーク401が時計回りにそれぞれ回転してもよい。
【0027】
図4bは、本発明において使用可能なローラ410、複数の調量装置400、403、及びドクターブレード450を用いて、ワーク401の被覆対象表面を被覆するための別のシステムを示す。この例では、ローラ410は、少なくともその一部を被膜材料444を有するリザーバ448内に配置することができる。さらに、この例では、ローラ410は時計回りに回転することができ、一方の調量装置400及びワーク401は反時計回りに回転することができ、他方の調量装置403は静止させておくことができる。しかしながら、他の好適な構成を用いることもできる。
【0028】
図4cは、本発明において使用可能なローラ410及び調量装置400を用いて、ワーク401の被覆対象表面を被覆するためのさらに別のシステムを示す。この実施形態では、調量装置400は、少なくともその一部を被膜材料444を有するリザーバ448内に配置することができる。この例では、調量装置400及びワーク401は反時計回りに回転することができる。ローラ410は、時計回りに回転することができる。この実施形態では、ローラ410はリザーバ448の外にあり、調量装置400によって被覆されることができる。しかしながら、他の構成を用いることも可能である。
【0029】
図4a〜図4cに示されていない他の好適な例もまた使用することができる。例えば、ローラ410、調量装置400、403、450、及びワーク401、またはこれらのうち任意のものを所望の方向に回転させることができ、あるいは、全く回転させないこともできる。
【0030】
さらに、調量装置400、403及び450は、図示されているものに限らず、任意の組み合わせを用いることもできる。
図5は、ワークの被覆対象表面を被覆するために、本発明の実施形態と共に用いることができる方法の工程を含むフローチャートを示す。図5aの例では、工程S1は、ワーク、ローラ及び少なくとも1つの調量装置を提供することを含むことができる。工程S2は、ローラの一部と接触するように調量装置を配置することを含むことができる。S3は、ローラの一部と接触するようにワークの被覆対象表面を配置することを含むことができる。S4は、ローラを介してワークの被覆対象表面に治療用被膜を適用することを含むことができる。S5は、調量装置を使用してワークの被膜厚さを制御することを含むことができる。図示しない別の実施形態においては、工程の順序は並び替えられてもよく、工程の追加・省略がなされてもよい。前記工程は改変することもできる。更に、前記工程は連続的に繰り返されてもよい。
【0031】
様々な実施形態について記述してきたが、他の実施形態も可能である。調量装置及びローラの様々な例についての前記説明は、本発明を限定することを意図するものではなく、ワークの被覆対象表面の被覆の有効性を高めるために、上記例の改変、組み合わせ、別例を任意に用いることができることは理解されたい。
【0032】
本発明の実施形態における被膜材料は、例えば無溶媒下で薬剤を液状ポリマーと混合して液状ポリマー/薬剤混合液を生成することにより、ポリマー剤及び/又は治療薬を含むことができる。好適な薬剤及び/又はポリマーの組み合わせを以下に列挙する。本明細書において使用される「治療薬」という語は、1つ以上の「治療薬」又は「薬剤」を含む。「治療薬」又は「薬剤」という語は、本明細書において区別なく使用され得るものであり、薬学的に活性な化合物や、核酸(脂質のような運搬ベクターの有無は問わない)、コンパクト化物質(compacting agents) (ヒストンなど)、ウイルス(アデノウィルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アルファウイルスなど)、ポリマー、ヒアルロン酸、タンパク質、細胞など(ターゲッティング配列の有無を問わない)を含むことができる。
【0033】
本発明と共に使用される治療薬の特定の例は、例えば、薬学的に活性な化合物、タンパク質、細胞、オリゴヌクレオチド、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、DNAコンパクト化物質、遺伝子/ベクターシステム(すなわち、核酸の取り込み及び発現を可能にする任意の運搬媒体)、核酸(例えば組み替え核酸;裸DNA、cDNA、RNA;非感染性ベクター又はウイルス性ベクターのゲノムDNA、cDNA又はRNA(さらにペプチドターゲッティング配列に結合させてあってもよい);アンチセンス核酸(RNA又はDNA);及び遺伝子配列を含み、膜転位配列(「MTS」)及び単純ヘルペスウイルス1型(「VP22」)などの輸送タンパク質(ferry proteins)をコードするDNAキメラ)、所望の用途に応じて多数のタイプから選択される、ウイルス性、リポソーム、カチオン性及びアニオン性ポリマー、中性ポリマーを含む。ウイルス性ベクター又はウイルス由来のベクターの例としては、アデノウイルスベクター、単純ヘルペスベクター、パピローマウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。生物学的に活性な溶質の例としては、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ及びPPACK(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)などの抗血栓剤;プロブコール及びレチノイン酸などの抗酸化剤;血管新生剤及び血管新生因子、抗血管新生剤及び抗血管新生因子;エノキサプリン、アンギオペプチン、ラパマイシン、アンギオペプチン、平滑筋細胞の増殖を阻害能を有するモノクローナル抗体、ヒルジン、アセチルサリチル酸などの抗増殖剤;デキサメタゾン、プレドニソロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、サルファサラジン、アセチルサリチル酸、メサラミンなどの抗炎症剤;ベラパミル、ジルチアゼム、ニフェジピンなどのカルシウム流入阻害剤;パクリタキセル、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロスポリン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポシロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、チミジンキナーゼ阻害剤などの抗腫瘍剤/抗増殖剤/抗有糸分裂剤;トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ニトロフラントインなどの抗菌剤;リドカイン、ブピバカイン、ロピバカインなどの麻酔薬;リンシドミン、モルシドミン、L−アルギニン、NO−タンパク質付加体、NO−糖鎖付加体、ポリマーの又はオリゴマーのNO付加体などの一酸化窒素(NO)供与体;D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、エノキサパリン、ヒルジン、ワルファリンナトリウム、ジクマロール、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、抗血小板剤、ダニ由来の抗血小板因子などの抗凝血剤;増殖因子、増殖因子受容体拮抗薬、転写活性化因子、翻訳促進因子などの血管細胞増殖促進剤;増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子及びサイトトキシンからなる二官能性分子、抗体及びサイトトキシンからなる二官能性分子などの血管細胞増殖阻害剤;コレステロール降下剤;血管拡張剤;内因性血管作用機構を抑制する薬剤;抗Bcl−2ファミリー因子及びAktキナーゼのような細胞死を防ぐサバイバル遺伝子;及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。細胞は、ヒト由来(自己由来又は他人由来)のもの、あるいは動物由来(異種)のものとすることができ、これらは、必要に応じて、挿入部位において利益のあるタンパク質を運ぶように遺伝子操作される。当業者であれば、ごく普通に改変を行なうであろう。
【0034】
本発明の実施において有用なポリヌクレオチド配列には、細胞に取り込まれると治療効果を有するDNA又はRNA配列が含まれる。治療用ポリヌクレオチドの例には、アンチセンスDNA及びRNA;アンチセンスRNAをコードするDNA;欠陥又は欠損のある内因性分子を置換するためにtRNA又はrRNAをコードするDNAを含む。ポリヌクレオチドは、治療用タンパク質又はポリペプチドもコードすることができる。ポリペプチドは、大きさ、及びグリコシル化されるか否かにかかわらず、ポリヌクレオチドの任意の翻訳生成物として理解されている。治療用タンパク質及びポリペプチドの主要な例としては、動物の欠陥又は欠損のある種を補うことができるタンパク質もしくはポリペプチド、又は毒性により有害な細胞を抑制し、あるいは体内から除去するタンパク質もしくはポリペプチドが挙げられる。さらに、注入可能な、すなわちDNAを組み込むことが可能なポリペプチド又はタンパク質としては、血管新生因子及び血管新生誘導能を有するその他の分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。血管新生誘導能を有する分子としては、酸性及び塩基性の繊維芽細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、HIF−1、表皮細胞増殖因子、形質転換増殖因子∀及び∃、血小板由来内皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子∀、肝細胞増殖因子及びインスリン様増殖因子;増殖因子;CDK阻害剤などの細胞周期阻害剤;抗再狭窄物質(p15、p16、p18、p19、p21、p27、p53、p57、Rb、nFkB及びE2Fデコイ、チミジンキナーゼ(「TK」)、これらの組み合わせを含む)及び悪性腫瘍の治療薬を含む細胞増殖の抑制に有用なその他の物質;ならびにこれらの組み合わせを含む。ポリペプチド又はこれらのポリペプチドをコードするDNAとして提供可能なさらに別の有用な因子は、単球走化性タンパク質(「MCP−1」)、及び骨形成タンパク質(「BMP」)ファミリーを含む。このタンパク質の公知なものとしては、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、BMP−16が挙げられる。現時点で好ましいBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7のうち任意のものである。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体、又はこれらの組み合わせとして、単独で又は他の分子と共に提供することができる。これに代えて、又はこれに加えて、BMPの上流又は下流での発現を誘導することができる分子が提供されてもよい。このような分子は、「ヘッジホッグ」タンパク質及びこれをエンコードするDNAのうち任意のものを含む。
【0035】
上述したように、本発明の例示的な実施形態と共に使用される被膜は、例えば無溶媒下で薬剤を液状ポリマーと混合して液状ポリマー/薬剤混合液を生成することにより生成されるポリマー材料/薬剤マトリックスを含むことができる。この混合液の硬化は通常、その場(in-situ) で起こる。硬化を促進するために、混合液を適用する前に、架橋剤又は硬化剤を混合液に添加してもよい。架橋剤又は硬化剤のポリマー/薬剤混合液への添加は、適用前に混合液の過硬化が生じないように、混合液適用時点から早すぎる時点で行なってはならない。硬化は、管腔表面への適用後に、ポリマー/薬剤混合液を紫外線放射又はレーザ光などの放射、熱に暴露することにより、あるいは管腔表面にポリマー/薬剤混合液が適用された部位における水などの代謝流体と該混合液を接触させることにより、その場で起こり得る。本発明と共に用いられる被覆システムにおいて、ポリマー材料は生体吸収性又は生体安定性のいずれかの性質を有していてもよい。液体として調合することができる本明細書に記載される任意のポリマーを、ポリマー/薬剤混合液を生成するために使用することができる。
【0036】
本発明の例示的な実施形態で使用されるポリマーは、薬剤溶液を相当量吸収できることが好ましい。本発明に従って医療器具に被膜として適用されると、乾燥したポリマーは通常、約1〜50μmの厚さを有する。バルーンカテーテルの場合には、厚さは、好ましくは約1〜10μm、より好ましくは約2〜5μmである。非常に薄いポリマー被膜(例えば約0.2〜0.3μm)や、非常に厚い被膜(例えば10μmを超える)も可能である。本発明は、医療器具に複数のポリマー被覆層を適用することも企図している。このように多層構成とする場合、同一のポリマー材料で形成されていてもよく、あるいは異なるポリマー材料で形成されていてもよい。
【0037】
本発明のポリマーは、親水性又は疎水性とすることができ、ポリカルボン酸、酢酸セルロース及び硝酸セルロースのようなセルロース誘導体ポリマー、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマーのようなポリ無水物、ポリアミド、ポリビニルアルコール、EVAのようなビニルモノマーのコポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族化合物、ポリエチレンオキシド、グリコサミノグリカン、多糖類、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレンのようなポリアルキレン、ポリエチレン及び高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオルエチレンのようなハロゲン化ポリアルキレン、ポリウレタン、ポリオルトエステル、タンパク質、ポリペプチド、シリコーン、シロキサンポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートバリレート、これらのブレンドやコポリマー、ならびに他の生体分解性、生体吸収性、及び生体安定性のポリマー及びコポリマーの中から選択することができる。
【0038】
ポリウレタン分散物(BAYHDROL(登録商標)など)やアクリルラテックス分散物のようなポリマー分散物から被膜を形成することも本願発明の範囲内に含まれる。ポリマーは、例えば、タンパク質ポリマー、フィブリン、コラーゲン及びその誘導体、セルロース、デンプン、デキストラン、アルギン酸塩のような多糖類及びこれら多糖類の誘導体、細胞外マトリックス成分、ヒアルロン酸、又は他の生物学的製剤もしくは上記のうち任意のものの好適な混合物とすることができる。本発明の一実施形態では、好ましいポリマーは、米国マサチューセッツ州ナティックに所在するボストン・サイエンティフィック・コーポレーションより販売され、米国特許第5,091,205号明細書に開示されるHYDROPLUS(登録商標)として販売されるポリアクリル酸である。なお、同米国特許明細書は、参照により本明細書に援用される。米国特許第5,091,205号明細書は、1種類以上のポリイソシアネートで医療器具を被覆して、医療器具が、体液に暴露されると即座に潤滑性を有するようになることを開示している。本発明の別の好ましい実施形態では、ポリマーは、ポリ乳酸及びポリカプロラクトンのコポリマーである。
【0039】
本明細書に記載される例は、単に例示的なものであり、本発明の例示的な実施形態の主旨及び範囲から逸脱することなく、多数の他の実施形態を実施することができる。さらに、本発明の特定の特徴は、特定の実施形態や構成のみに示されていることもあるが、これらの特徴は、本発明の範囲内において、様々な実施形態や構成において交換、追加、除去することができる。同様に、記述され、開示される方法も、様々な順序で行なうことができ、本発明の主旨及び範囲内において、開示される工程の一部又は全てを、記述されているものとは別の順序で行なうこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1a】本発明において用いることができる調量装置を示す図。
【図1b】本発明において用いることができる別の調量装置を示す図。
【図1c】本発明において用いることができる別の調量装置を示す図。
【図1d】本発明において用いることができる別の調量装置を示す図。
【図2a】本発明により被覆された医療器具の被覆されたストラットの一部を示す断面図。
【図2b】本発明において用いることができる第2の被膜が適用された後の図2aの被覆されたストラットを示す断面図。
【図2c】本発明により被覆することができる医療器具である、動脈ステントの側面図。
【図3a】本発明において用いることができるメイヤーバー及び回転部材を示す図。
【図3b】本発明の被覆工程中における図3aのメイヤーバーを示す拡大図。
【図4a】本発明において用いることができる、ローラ及び調量装置を備えた、ワークを被覆するシステムを示す図。
【図4b】本発明において用いることができる、ローラ、調量装置及びドクターブレードを備えた、ワークを被覆する別のシステムを示す図。
【図4c】本発明において用いることができる、調量装置及びローラを備えた、ワークを被覆する別のシステムを示す図。
【図5】本発明の実施形態において用いることができる方法の工程を説明するフローチャート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを被覆する方法であって、
ワーク、ローラ及び調量装置を提供する工程と、
前記ワークの被覆対象表面を前記ローラと接触させて配置する工程と、
前記調量装置を前記ローラと接触させて配置する工程と、
前記ローラを介して、前記ワークの被覆対象表面に厚さを有する治療用被膜を適用する工程と
を含み、前記調量装置が、被膜厚さを調整し、かつワークピースに達する前に被膜材料が通り抜ける複数の開口を形成する、方法。
【請求項2】
前記ローラが被膜材料リザーバ内に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調量装置が被膜材料リザーバ内に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ローラが回転可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記調量装置が回転可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ワークが回転可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記調量装置が、ロッドと該ロッドの周りに配置されるワイヤとを備えるメイヤーバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ワイヤの直径が前記ワークに移動する被膜材料の厚さを決定する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
被膜材料を除去するために前記ローラと接触させてドクターブレードを提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記被覆対象表面が前記ワークの外面である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
医療用インプラントの表面を被覆する方法であって、
医療用インプラントの被覆対象表面をローラと接触させて配置する工程と、
調量装置を前記ローラと接触させて配置する工程と、
前記ローラを介して、前記医療用インプラントに厚さを有する被膜を適用する工程と
を含み、前記調量装置が、前記被膜の厚さを調整し、かつワークに達する前に被膜材料が通過する複数の開口を形成する、方法。
【請求項12】
前記ローラが被膜材料リザーバ内に配置される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記調量装置が被膜材料リザーバ内に配置される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記調量装置が、ロッドと該ロッドの周りに配置されるワイヤとを備えるメイヤーバーである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記コイルの直径が前記ワークに移動する被膜材料の厚さを決定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記被膜材料を除去するために前記ローラと接触させてドクターブレードを提供する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記被膜が治療薬である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
ステントを被覆する方法であって、
ステントの被覆対象表面をローラと接触させて配置する工程と、
ロッド及び該ロッドの周りに配置されるワイヤを備えるメイヤーバーを前記ローラと接触させて配置する工程と、
前記ローラを介して、前記ステントに厚さを有する被膜を適用する工程と
を含み、前記調量装置が、被膜厚さを調整し、かつワークに達する前に被膜材料が通過する複数の開口を形成する、方法。
【請求項19】
前記ローラは被膜材料リザーバ内に配置される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記コイルの直径が前記ワークに移動する被膜材料の厚さを決定する、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
ワークを被覆する方法であって、
ワーク、ローラ及び調量装置を提供する工程と、
前記ワークの被覆対象表面を前記ローラと接触させて配置する工程と、
前記調量装置を前記ローラと接触させて配置する工程と、
前記ローラを介して、前記ワークの被覆対象表面に厚さを有する治療用被膜を適用する工程と
を含み、前記調量装置が、被膜厚さを調整し、かつワークピースに達する前に被膜材料が通り抜ける複数の開口を形成する、方法。
【請求項2】
前記ローラが被膜材料リザーバ内に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調量装置が被膜材料リザーバ内に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ローラが回転可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記調量装置が回転可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ワークが回転可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記調量装置が、ロッドと該ロッドの周りに配置されるワイヤとを備えるメイヤーバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ワイヤの直径が前記ワークに移動する被膜材料の厚さを決定する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
被膜材料を除去するために前記ローラと接触させてドクターブレードを提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記被覆対象表面が前記ワークの外面である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
医療用インプラントの表面を被覆する方法であって、
医療用インプラントの被覆対象表面をローラと接触させて配置する工程と、
調量装置を前記ローラと接触させて配置する工程と、
前記ローラを介して、前記医療用インプラントに厚さを有する被膜を適用する工程と
を含み、前記調量装置が、前記被膜の厚さを調整し、かつワークに達する前に被膜材料が通過する複数の開口を形成する、方法。
【請求項12】
前記ローラが被膜材料リザーバ内に配置される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記調量装置が被膜材料リザーバ内に配置される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記調量装置が、ロッドと該ロッドの周りに配置されるワイヤとを備えるメイヤーバーである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記コイルの直径が前記ワークに移動する被膜材料の厚さを決定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記被膜材料を除去するために前記ローラと接触させてドクターブレードを提供する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記被膜が治療薬である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
ステントを被覆する方法であって、
ステントの被覆対象表面をローラと接触させて配置する工程と、
ロッド及び該ロッドの周りに配置されるワイヤを備えるメイヤーバーを前記ローラと接触させて配置する工程と、
前記ローラを介して、前記ステントに厚さを有する被膜を適用する工程と
を含み、前記調量装置が、被膜厚さを調整し、かつワークに達する前に被膜材料が通過する複数の開口を形成する、方法。
【請求項19】
前記ローラは被膜材料リザーバ内に配置される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記コイルの直径が前記ワークに移動する被膜材料の厚さを決定する、請求項18に記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【公表番号】特表2009−539583(P2009−539583A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514270(P2009−514270)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/011409
【国際公開番号】WO2007/145755
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/011409
【国際公開番号】WO2007/145755
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
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