説明

識別媒体およびその識別方法

【課題】見る角度を変化させると立体像の形状と色が鮮明に変化する光学機能を実現可能な識別媒体を提供する。
【解決手段】観察面側から、コレステリック液晶層12、左円偏光フィルタ層20、アルミ反射層16と配置する。コレステリック液晶層12には、右目用ホログラム13が形成され、アルミ反射層16には、左目用ホログラム18が形成される。識別媒体10に自然光が入射すると、右目用ホログラム13からの右目用ホログラム像が右円偏光として反射し、左目用ホログラム18からの左目用ホログラム像が左円偏光として反射する。右円偏光フィルタにより右目用ホログラムを右目で選択的に観察し、左円偏光フィルタにより左目用ホログラムを左目で選択的に観察することで、立体像の観察が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像を利用した識別媒体およびその識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光やホログラム像を用いた識別媒体が知られている。例えば、特許文献1には、コレステリック液晶層を2層に積層し、反射する円偏光の旋回方向が互いに異なる向きとすることで、左円偏光フィルタと右円偏光フィルタとで、異なる像が見えるようにした構成が記載されている。
【0003】
引用文献2には、ホログラムを利用して立体像を表示する識別媒体が記載されている。引用文献3には、左右で異なる円偏光を反射するコレステリック液晶層を積層し、それぞれのコレステリック液晶層のパターンを左目用と右目用とする識別媒体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−338257号公報
【特許文献2】特開平5−2148号公報
【特許文献3】特開2000−255200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、右円偏光と左円偏光とで異なる像を観察することで識別を行う構成が記載されているが、観察対象の像の立体感は、ホログラムの立体感に頼っているので、立体像を識別に利用するという点で識別機能が不足している。
【0006】
特許文献2に記載の構成では、ホログラムを利用した視差のある画像を左右の目で別々に視認させ、それにより立体像を観察させている。引用文献2では、ディスプレイの材質については触れられておらず、回折格子で回折される波長は、限定されていない。そのため、特定の波長でない自然光の全ての波長が回折格子で回折され、ホログラムの生成に寄与する。この場合、多数の波長のホログラム像が生成されることになり、それらが重なって見えるので、ホログラム像のボケや滲みが発生する。このため、観察される立体像の鮮明さが損なわれやすい。
【0007】
また、回折格子の表面にアルミ蒸着した一般的なエンボスホログラムのように、特に反射光の波長が限定されない材料に対するエンボス加工により形成されるホログラムは、エンボス加工の状態が写し取られやすく、エンボス加工の素となる型がなくても、複製が製造し易い。つまり、偽造品を製造し易く、耐偽造性が低い。
【0008】
引用文献3に記載の構成では、左目用の像と右目用の像とが、各コレステリック液晶層のパターンによって構成されているので、特定の中心波長の光を反射するコレステリック液晶の性質から、鮮明な像が得られ易い。しかしながら、左右の像がコレステリック液晶層のパターンによって構成されているので、見る角度(視線の角度)を変化させても、立体像の見え方は同じとなる。例えば、当該識別媒体を正面(視線と垂線のなす角度が0°)で見ても、見る角度30°(視線と垂線のなす角度が30℃)で見ても、同じ立体像が見える。
【0009】
すなわち、引用文献3に記載の識別媒体では、立体像を観察することはできるが、見る角度を変えた場合に、観察される立体像が変化して見える光学機能は得られない。また、複雑で細かい画像情報を表現することはできない。
【0010】
このような背景において、本発明は、見る角度を変えた場合に、観察される立体像が変化して見える光学機能を有する識別媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、観察する側から、第1のホログラムを備え、第1の偏光特性を有する反射光を反射する第1の光学機能層と、前記第1の光学機能層と積層され、第2のホログラムを備え、第2の偏光特性を有する反射光を反射する第2の光学機能層と順に配置され、前記第1の光学機能層は、コレステリック液晶層を含み、前記第1の偏光特性を有する反射光と前記第2の偏光特性を有する反射光とは、偏光フィルタにより分離が可能であり、前記第1のホログラムにより左右の目の一方で視認するための第1のホログラム像が形成され、前記第2のホログラムにより前記左右の目の他方で視認するための第2のホログラム像が形成され、前記第1のホログラム像と前記第2のホログラム像により立体像が形成されることを特徴とする識別媒体である。
【0012】
請求項1に記載の発明では、例えば、第1のホログラム像を用いて右目用(または左目用)の像を表示し、第2のホログラム像を用いて左目用(または右目用)の像を表示する。ここで右目用のホログラム像と左目用のホログラム像とは、左右の位置が視差の分ずれており、右目用のホログラム像を右目で見、それとは別に左目用のホログラム像を左目で見ることで、両者の像が視覚中枢で合成され、立体像が認識される。
【0013】
本発明の識別媒体を観察する際には、偏光特性の違いを利用して左右の目で、第1のホログラム像と第2のホログラム像とを分離して同時に観察する。すなわち、上記の場合でいうと、第1の偏光特性の光を透過する第1の偏光フィルタを介して、右目(または左目)で当該識別媒体の観察を行い、第2の偏光特性の光を透過する第2の偏光フィルタを介して、左目(または右目)で当該識別媒体の観察を行う。これにより、右目(または左目)で第1のホログラム像を選択的に視認し、左目(または右目)で第2のホログラム像を選択的に視認する。この結果、第1のホログラム像と第2のホログラム像とにより構成される立体像が観察される。
【0014】
ホログラム像は、見る角度に従って像の見え方が変化するので、見る角度を変える(例えば、識別媒体を傾ける)ことで立体像の見え方が変化する光学機能が得られる。なお見る角度は、識別媒体に対して垂直な方向(光軸方向)と視線とがなす角度として定義される。見る角度を変える方法としては、識別媒体を傾ける方法、あるいは観察者の識別媒体を観察する視点の位置を変える方法がある。
【0015】
また、第1の光学機能層と第2の光学機能層が光軸方向で前後に配置されるので、左右の像を平面的に配置した場合に比較して、像の密度を高くでき、より精緻が立体像の観察が可能となる。なお、第1の光学機能層と第2の光学機能層との積層構造は、両層が、直接重ねられて接触している場合に限定されず、両層の間に光透過性の他の層が介在していてもよい。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の光学機能層は、前記第1のホログラムが設けられたコレステリック液晶層から構成され、前記第2の光学機能層は、前記視認する側から、円偏光フィルタ層、前記第2のホログラムが設けられた光反射層と配置された構成を備え、前記円偏光フィルタ層は、前記視認する側から円偏光が入射した際に、前記コレステリック液晶層で選択的に反射される円偏光と同じ旋回方向の円偏光を遮断し、それと逆旋回方向の円偏光を透過する光学特性を有することを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、コレステリック液晶層の機能により第1の光学機能層から第1の旋回方向の円偏光が得られ、円偏光フィルタ層と光反射層の機能により第2の光学機能層から第1の旋回方向と逆旋回方向の第2の旋回方向の円偏光が得られる。そして、観察用の円偏光フィルタにより第1の旋回方向の円偏光を左右の目の一方で選択的に視認し、第2の旋回方向の円偏光を左右の目の他方で選択的に見ることで、左右の目で第1のホログラム像と第2のホログラム像とが独立して視認され、立体像の観察が行われる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第2の光学機能層は、前記視認する側から順に、λ/4板、直線偏光フィルタ層、前記第2のホログラムが設けられた光反射層と配置された構成を備えていることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、前記第1のホログラム像および前記第2のホログラム像は、複数の異なる見る角度に対応させて複数が用意されていることを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記複数の第1のホログラム像は、N個の見る角度に対応させたN個の一方の目用のホログラム像を有し(Nは、2以上の自然数)、前記複数の第2のホログラム像は、前記N個の見る角度に対応させたN個の他方の目用のホログラム像を有し、前記N個の見る角度に含まれる第1の見る角度と第2の見る角度において、前記複数の第1のホログラム像は、前記第1の見る角度に対応させた第1の一方の目用ホログラム像と前記第2の見る角度に対応させた第2の一方の目用ホログラム像とを有し、前記複数の第2のホログラム像は、前記第1の見る角度に対応させた第1の他方の目用ホログラム像と前記第2の見る角度に対応させた第2の他方の目用ホログラム像とを有し、前記第1のホログラムは、前記第1の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第2の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域から構成され、前記第2のホログラムは、前記第1の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第2の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域から構成され、前記第1の見る角度からの観察において、前記第1の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第1の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域からの反射光が結像し、前記第2の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第2の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域からの反射光が結像せず、前記第2の見る角度からの観察において、前記第2の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第2の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域からの反射光が結像し、前記第1の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第1の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域からの反射光が結像しないことを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明は、見る角度の数が2以上の場合に適用される。例えば、見る角度が3以上用意されている場合、その中の任意の2つの見る角度に着目した場合に請求項5に記載の発明の構成が満足されるようにホログラムを構成する。請求項5において、一方の目というのは、両目のうちの一方(例えば右目)であり、他方の目というのは、残りの他方(例えば左目)である。
【0022】
例えば、見る角度が2つ用意されている場合、第1の見る角度からの観察では、第1の見る角度用の右目用のホログラム加工領域の画素からの反射光が結像し、それが右目で観察され、第1の見る角度用の右目用のホログラム像が右目で選択的に視認される。同様に、光学機能層からの第1の見る角度用の左目用のホログラム加工領域の画素からの反射光が結像し、それが左目で観察され、第1の見る角度用の左目用のホログラム像が左目で視認される。この際、第2の見る角度用のホログラム像は、第1の見る角度では結像しないので、第1の見る角度用のホログラム像が優先的に認識され、第1の見る角度用の立体ホログラム像が観察される。
【0023】
逆に、第2の見る角度から観察を行うと、第1の見る角度用のホログラム像は結像せず、第2の見る角度用のホログラム像が結像するので、第2の見る角度用の左右のホログラム像が左右の目で選択的に観察され、第2の見る角度用の立体ホログラム像が観察される。
【0024】
また例えば、見る角度が3つ用意されている場合、第1の見る角度からの観察では、第1の見る角度用の右目用のホログラム加工領域の画素からの反射光が結像し、それが右目で観察され、第1の見る角度用の右目用のホログラム像が右目で選択的に視認される。同様に、第1の見る角度用の左目用のホログラム加工領域の画素からの反射光が結像し、それが左目で観察され、第1の見る角度用の左目用のホログラム像が左目で視認される。この際、第2の見る角度用のホログラム像および第3の見る角度用のホログラム像は、第1の見る角度では結像しないので、第1の見る角度用のホログラム像が優先的に認識され、第1の見る角度用の立体ホログラム像が観察される。
【0025】
そして、第2の見る角度から観察を行うと、第1の見る角度用のホログラム像および第3の見る角度用のホログラム像は結像せず、第2の見る角度用のホログラム像が結像するので、第2の見る角度用の左右のホログラム像が左右の目で選択的に観察され、第2の見る角度用の立体ホログラム像が観察される。
【0026】
更に、第3の見る角度から観察を行うと、第1の見る角度用のホログラム像および第2の見る角度用のホログラム像は結像せず、第3の見る角度用のホログラム像が結像するので、第3の見る角度用の左右のホログラム像が左右の目で選択的に観察され、第3の見る角度用の立体ホログラム像が観察される。以上の原理により、見る角度を変えると、観察される立体ホログラム像が切り替わる光学機能が得られる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか一項に記載の発明において、前記第2の光学機能層は、カラーフィルタを備えていることを特徴とする。ホログラム像は、光の干渉により生成されるので、利用する波長帯域の幅が狭い方が、像の滲みやボケが少なく、より鮮明な像が観察可能となる。請求項6に記載の発明によれば、カラーフィルタにより第2の光学機能層からの反射光の波長帯域幅が制限されるので、より鮮明なホログラム像を得る上で有利となる。
【0028】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記カラーフィルタは、前記コレステリック液晶層が選択的に反射する光の中心波長の光を選択的に透過する特性を有していることを特徴とする。請求項7に記載の発明によれば、右目用のホログラム像の色と左目用のホログラム像の色とを揃えることができる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記カラーフィルタは、前記コレステリック液晶層が選択的に反射する光の中心波長と異なる波長の光を選択的に透過する特性を有していることを特徴とする。請求項8に記載の発明によれば、右目用のホログラム像の色と左目用のホログラム像の色とが違う色になる。このため、偏光フィルタを介した観察において、右目用のホログラム像を選択的に見た場合に第1の色のホログラム像が観察される。また、左目用のホログラム像を選択的に見た場合に第2の色のホログラム像が観察される。更に、右目で右目用のホログラム像を選択的に見、左目で左目用のホログラム像を選択的に見ると、第1の色と第2の色が合成された立体像が観察される。この色彩の変化は特異なものであり、高い識別機能が得られる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、請求項2〜8のいずれか一項に記載の発明において、前記円偏光フィルタ層により、左右の目の一方の目用のホログラム像と他方の目用のホログラム像との分離が行われることを特徴とする。
【0031】
第1の光学機能層のコレステリック液晶層は特定中心波長で特定旋回方向の円偏光を選択的に反射する選択反射性を有している。この反射光は第1のホログラム情報を含んでいる。一方、第2のホログラムからの反射光は円偏光フィルタ層によって、第1の旋回方向とは反対の円偏光となる。この第2のホログラムからの反射光は、そのまま第1の光学機能層を透過するので、左右の目用のホログラム情報が混ざる現象が抑えられる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、請求項2〜9のいずれか一項に記載の発明において、前記コレステリック液晶層は、左右の目の一方の目で観察するための第1の旋回方向の円偏光を反射すると共に、前記第2の光学機能層で反射される前記左右の目の他方の目で観察するための前記第1の旋回方向と逆の旋回方向の第2の旋回方向の光を観察者側に透過することを特徴とする。
【0033】
請求項11に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の光学機能層は、一方の旋回方向の円偏光を反射するコレステリック液晶層であり、前記第2の光学機能層は、他方の旋回方向の円偏光を反射するコレステリック液晶層であることを特徴とする。
【0034】
請求項12に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の光学機能層は、一方の旋回方向の円偏光を反射する第1のコレステリック液晶層であり、前記第2の光学機能層は、前記一方の旋回方向の円偏光を反射する第2のコレステリック液晶層と該第2のコレステリック液晶層の前記第1の光学機能層の側に配置されたλ/2板を備えることを特徴とする。
【0035】
請求項13に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の光学機能層は、前記第1のホログラムを備えた第1のコレステリック液晶層から構成され、前記第2の光学機能層は、前記視認する側から、前記第1のコレステリック液晶層と同じ光学機能を有しホログラムを備えていない第2のコレステリック液晶層、前記第2のホログラムを備えた光反射層と配置された構成を有することを特徴とする。
【0036】
請求項11〜13のいずれか一項に、請求項4〜8から選ばれた一または複数の構成を組み合わせることも可能である。
【0037】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の識別媒体の識別方法であって、前記第1のホログラム像を前記第1の偏光特性を有する反射光を選択的に透過する第1の偏光フィルタを介して左右の目の一方で観察し、前記第2のホログラム像を前記第2の偏光特性を有する反射光を選択的に透過する第2の偏光フィルタを介して左右の目の他方で観察することを特徴とする識別媒体の識別方法である。
【発明の効果】
【0038】
請求項1に記載の発明によれば、立体像を得るための左右の目用の像がホログラム像により構成されるので、見る角度の位置を変えた場合に、観察される立体像が変化して見える光学機能を有する識別媒体が得られる。また、右目用のホログラムと左目用のホログラムとが光軸方向に配置されるので、平面的に左右の目用の像を配置する場合に比較して、像の密度をあげることができ、より精緻な立体像が観察可能となる。
【0039】
請求項2に記載の発明によれば、立体像の合成に必要な左右の目用の2つの像のうちの一方を得るのにコレステリック液晶層を用い、他方の像を得るのに円偏光フィルタ層と光反射層を用いるので、コレステリック液晶層の使用を節約でき、コストを抑えることができる。また、円偏光フィルタ層のフィルタ効果により、左右の目用の像の分離が高い精度で行われ、鮮明な立体像を観察することができる。
【0040】
請求項3に記載の発明によれば、コレステリック液晶層の代わりにλ/4板と直線偏光フィルタ層を用いるので、低コストが実現できる。
【0041】
請求項4に記載の発明によれば、見る角度を変えた際に観察される立体像が切り替わる視覚効果が得られ、更に高い識別機能が得られる。
【0042】
請求項5に記載の発明によれば、複数の像に対応させて画素を分割することで、見る角度を変えた際に異なる立体像が観察可能となる技術が提供される。
【0043】
請求項6に記載の発明によれば、第2の光学機能層からの反射光の波長帯域の幅が狭められ、鮮明な立体ホログラム像の観察が可能となる。
【0044】
請求項7に記載の発明によれば、第1の光学機能層からの反射光と同じ色の反射光を第2の光学機能層から得ることできる。
【0045】
請求項8に記載の発明によれば、右目用のホログラム像の色と左目用のホログラム像の色とを異なる色とすることで、高い識別機能を得ることができる。
【0046】
請求項9の記載の発明によれば、円偏光フィルタにより第2のホログラム情報は、第1ホログラムと異なる旋回方向になるため、立体像を構成する右目用のホログラム像と左目用ホログラム像を高い精度で分離でき、より鮮明な立体像を観察することができる。
【0047】
請求項10に記載の発明によれば、コレステリック液晶層が有する特定中心波長で一旋回方向の光を選択的に反射し、他の成分を透過する光学的な性質により、第2の光学機能層からの反射光が第1の光学機能層のコレステリック液晶層を非観察面側から観察面側に透過する。コレステリック液晶の光学的な性質により、上記のコレステリック液晶層を透過する成分は、コレステリック液晶層に設けられたホログラムによる光学変調をほとんど受けない。このため、第2の光学機能層からの反射光が第1の光学機能層に設けられたホログラムによる光学変調を受け難く、立体像を構成する右目用のホログラム像と左目用のホログラム像の分離を高くできる。
【0048】
請求項11に記載の発明によれば、2層のコレステリック液晶層から互いに逆旋回方向の円偏光を反射させることで、立体像を構成する右目用のホログラム像と左目用のホログラム像を得ることができる。
【0049】
請求項12に記載の発明によれば、第1の光学機能層と第2の光学機能層とで同じ光学特性のコレステリック液晶を利用できるので、コストを下げることができる。
【0050】
請求項13に記載の発明によれば、2層のコレステリック液晶層を利用して立体像を得る構成において、他方のコレステリック液晶層にホログラムを形成しないことで、コストを下げることができる。
【0051】
請求項14に記載の発明によれば、請求項1〜13のいずれか一項に記載の発明の優位性を有する識別媒体の識別の方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施形態の識別媒体の概念図である。
【図2】光学的な原理を示す原理図である。
【図3】立体視の原理を示す原理図である。
【図4】ホログラムが形成される領域の画素の状態を示す概念図である。
【図5】実施形態の識別媒体の概念図である。
【図6】立体視の原理を示す原理図である。
【図7】立体像と視点の位置関係を示す概念図である。
【図8】視点を変えた際における立体像の見え方を示す概念図である。
【図9】視点を変えた際における立体像の見え方を示す概念図である。
【図10】実施形態の識別媒体の概念図である。
【図11】光学原理を示す原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
1. 第1の実施形態
(構成)
図1には、実施形態の識別媒体10が示されている。識別媒体10は、観察する側(観察面側)から、保護層11、コレステリック液晶層12、λ/4波長板14、直線偏光フィルタ層15、アルミ反射層16、ホログラム形成層17、粘着層22、セパレータ(離型紙)23と積層配置された構成を有している。
【0054】
保護層11は、観察に用いる光を透過する性質を有し、透過する光の偏光の状態を乱さない材質であるTAC(トリアセチルセルロール)のフィルムにより構成されている。保護層11は、識別媒体10の基材および表面保護層として機能する。コレステリック液晶層12は、第1の光学機能層の一例であり、この例では右旋回で緑の中心波長の円偏光を選択的に反射し、他の成分の光を透過する性質に設定されている。コレステリック液晶層12には、右目用ホログラム13が形成されている。右目用ホログラム13は、型を押し付けられることで形成された凹凸構造(エンボス構造)により構成されている。
【0055】
λ/4波長板14は、屈折率異方性を有するフィルム状の高分子材料により構成されている。直線偏光フィルタ層15は、ある方向の直線偏光を選択的に透過する光学フィルタとしての機能を有し、λ/4波長板14と組となって円偏光フィルタ層19を構成している。この例では、観察面側から左旋回の円偏光(左円偏光)がλ/4波長板14と直線偏光フィルタ層15の積層体(円偏光フィルタ層19)に入射した場合に、それが直線偏光としてアルミ反射層16の側に透過し、また観察面側から右旋回の円偏光(右円偏光)がλ/4波長板14に入射した場合に、それが直線偏光フィルタ層15を透過できずにそこで遮断されるように、λ/4波長板14に対する直線偏光フィルタ層15の偏光軸(透過させる直線偏光の偏光方向)が決められている。
【0056】
すなわち、左円偏光フィルタ層19は、観察面側(λ/4板14の側)から左円偏光が入射した際にそれを図の下方に透過し、観察面側から右円偏光が入射した際にそれを遮断する光学フィルタとして機能する。
【0057】
ホログラム形成層17は、ホログラム型が押されることによりホログラムが形成される樹脂の層である。アルミ反射層16は、ホログラム形成層17上に形成されたアルミの蒸着層であり、光反射層として機能する。アルミ反射層16には、左目用ホログラム18を構成するための凹凸が付与されている。この凹凸は、まずホログラム形成層17に型押により形成され、その上にアルミ反射層16を形成した際に、この凹凸に倣ってアルミ反射層16が分布することで形成される。この例では、λ/4波長板14、直線偏光フィルタ層15および左目用ホログラム18が形成されたアルミ反射層16によって第2の光学機能層20が構成されている。
【0058】
ホログラム形成層17に接して粘着剤により構成された粘着層22が設けられている。粘着層22の露出面には、離型紙として機能するセパレータ23が貼り付けられている。識別媒体10を識別の対象となる物品に貼り付ける際に、セパレータ23が剥がされ、粘着層22の粘着力によって識別媒体10が対象物に貼り付けられる。
【0059】
(製造方法)
まず保護層11を用意し、その片面にコレステリック液晶層12を形成する。コレステリック液晶層12を形成したら、ホログラム型を押し付け、右目用ホログラム13を構成する凹凸(エンボス模様)をコレステリック液晶層12に形成する。コレステリック液晶層12を図示しない基板上に形成し、それを保護層11上に移し変える方法を採用してもよい。この場合、右目用ホログラム13を形成するための型押を図示する側と反対の側(観察面側)に行うこともできる。
【0060】
次にコレステリック液晶層12の図の下面側にλ/4板14と直線偏光フィルタ層15を光透過性の接着剤により固定する。この接着剤による接着層は極力薄くし、透過する光の透過率や偏光の状態への影響がなるべく及ばないようにする。またこの際、λ/4板14の側から入射した左円偏光が下方に透過し、λ/4板14の側から入射した右円偏光が遮断されるように、λ/4板14の遅相軸に対する直線偏光フィルタ層の偏光方向の向きを設定した状態で両者が固定されるようにする。
【0061】
他方で、ホログラム形成層17の出発材料(樹脂フィルム材料)を用意し、その片面に型押により左目用ホログラム18を構成する凹凸を形成する。その後、この凹凸が形成されたホログラム形成層13の面にアルミニウムの層を蒸着により形成し、アルミ反射層16を形成する。この際、アルミ反射層16がホログラム形成層17表面の凹凸に倣った表面凹凸形状となり、左目用ホログラム18が形成される。
【0062】
次に、アルミ反射層16を上述した接着剤により直線偏光フィルタ層15に接着し、さらに粘着層22を形成し、その露出面にセパレータ23を貼り付けることで、図1、図2に示す識別媒体10を得る。
【0063】
(光学原理)
以下、図2を参照して識別媒体10の基本的な光学機能について説明する。まず、識別媒体10に観察面側から自然光が入射している状況を考える。この場合、入射光に含まれる緑の右円偏光がコレステリック液晶層12によって選択的に図2の上方に向かって反射される。そして、他の成分の光は、コレステリック液晶層12を図の下方に向かって透過する。
【0064】
このコレステリック液晶層12を透過した光に含まれる左円偏光は、左円偏光フィルタ19を透過する。すなわち、コレステリック液晶層12を透過した光に含まれる左円偏光は、λ/4板14を透過する際に第1の方向に偏光した直線偏光となり、この直線偏光は、直線偏光フィルタ層15層を透過し、アルミ反射層18に至る(言い換えると、このようになるようにλ/4板の遅相軸と直線偏光フィルタ15層の偏光方向の向きが設定されている)。
【0065】
一方、図の上から下に向かってコレステリック液晶層12を透過した光に含まれる緑以外の右円偏光および漏れて透過した緑の右円偏光は、λ/4波長板を透過する際に上記第1の方向と直交する方向に偏光した直線偏光となり、この直線偏光は、直線偏光フィルタ層15で遮断される。また、図の上から下に向かってコレステリック液晶層12を透過した光に含まれる直線偏光は、λ/4波長板を透過する際に円偏光となる。この円偏光は、直線偏光フィルタ層15を一部透過するがそこで損失を受け、減衰する。
【0066】
こうして、図の上から下に向かってコレステリック液晶層12を透過した光に含まれる左円偏光の光が主にアルミ反射層18に到達し、そこから反射される。このアルミ反射層18からの反射光は、直線偏光フィルタ層15を図の下から上に向かって透過し、λ/4板14に図の下の方向から入射する。この図の下からλ/4板14に入射する直線偏光は、先に説明した第1の方向に偏光しており、λ/4板を図の上の方向に透過した際に、左円偏光となる(図2参照)。この左円偏光は、緑の右円偏光を選択反射する特性とされているコレステリック液晶層12を図の下から上に向かって透過する。
【0067】
こうして図2に示すように観察者には、コレステリック液晶層12から反射した右円偏光とアルミ反射層16からの反射光を基とする左円偏光とが到達する。この観察者に届く右円偏光は、コレステリック液晶層12から反射される際に、右目用ホログラム13の情報を写し取っており、右目用のホログラム画像の情報を含んでいる。また、観察者に届く左円偏光は、その基となる直線偏光がアルミ反射層16から反射される際に、左目用ホログラム18の情報を写し取っており、左目用のホログラム画像の情報を含んでいる。
【0068】
そして、上記観察者に到達する右円偏光は、アルミ反射層16からの反射光の影響がないので、左目用の画像の情報を含んでいない。また、上記観察者に到達する左円偏光は、コレステリック液晶層12を透過する光であり、コレステリック液晶層12によって光学変調されないので、右目用の画像の情報を含んでいない。
【0069】
図3には、右目31の前に右円偏光を透過して左円偏光を遮断する右円偏光フィルタ33を配置し、左目32の前に左円偏光を透過して右円偏光を遮断する左円偏光フィルタ34を配置した状態で、識別媒体10を観察した場合の原理図が示されている。
【0070】
図2に関連して説明したように、識別媒体10からは右円偏光と左円偏光が反射される。ここで、識別媒体10から反射される右円偏光は、コレステリック液晶層12からの反射光であり、右目用ホログラム13の画像情報を含んでいる。また、識別媒体10から反射される左円偏光は、アルミ反射層16からの反射光に基づくものであり、左目用ホログラム18の画像情報を含んでいる。
【0071】
従って、図3に示す状態で識別媒体10を観察すると、右目用ホログラム13からの右円偏光は、右円偏光フィルタ33を透過し、左円偏光フィルタ34で遮断されるので、右目31で見え、左目32で見えない。他方で、左目用ホログラム18からの反射光が基となる左円偏光(図2参照)は、右円偏光フィルタ33で遮断され、左円偏光フィルタ34を透過するので、右目31で見えず、左目32で見える。つまり、右目31が右目用ホログラム13を選択的に視認し、左目32が左目用ホログラム18を選択的に視認する。
【0072】
この結果、右目用ホログラムと左目用ホログラムとが視覚中枢で合成され、立体像35が結像する。こうして、立体像の観察が行われる。なお、右円偏光フィルタ33と左円偏光フィルタ34を利用せずに、識別媒体10を直視すると、左右の目で、ホログラム13の像とホログラム18の像を同時に見ることになるので、左右に2重にぶれた像が観察される。
【0073】
(ホログラム加工)
凹凸加工によるホログラムは、見る角度によって別のホログラム像が見えるようにすることが可能である。例えば、図7には、立体像の対象となる立方体300をX1、X2、X3、Y1、Y2の5つの視点(見る角度)から見た場合の状況が示されている。図8には各視点から見た立方体300の見え方が示されている。ここで、図8の各立方体に付されているX1、X2、X3、Y1、Y2は、図7の視点に対応している。すなわち図8には、識別媒体10に対する視点の変更により、X1、X2、X3、Y1、Y2の5つの画像の切り替わりが行われる例が示されている。なお、図8(B)において、立方体300を前方少し上方から見た状態がされている。
【0074】
ホログラム加工を行うに先立ち、まずホログラム型を形成する。ホログラム型を形成するには、まず図7に示す各視点の位置から見た場合に、ホログラム像を再現するための回折格子を構成する回折格子を形成する。この回折格子は、感光材料に電子ビーム露光装置からの電子ビームを照射し、回折格子として機能する構造に感光を行うことで形成される。この技術に関しては、例えば特開平5−2148号公報に記載されている。この回折格子は、右目用と左目用が別に形成される。
【0075】
次にこの回折格子を形成した感光材料を原版として、エンボス加工用の押し型(ホログラム型)を作成する。この押し型は、上記回折格子を凹凸模様によって再現する型となる。この押型は、右目用と左目用とが作製される。そして右目用の型が右目用ホログラム13の形成に利用され、左目用の型が左目用ホログラム18の形成に利用される。
【0076】
この押型は、図4に示すように見る角度の違いに応じた種類の画素群を備えている。図4には、図8のX1、X2、X3、Y1、Y2の5つの立体像の素となる画素群の位置取り(区分け)の例が示されている。図4において、領域X1は、図7の視点X1から見た場合のホログラム像を構成する凹凸構造(干渉模様)による画素を構成する。領域X2は、図7の視点X2から見た場合のホログラム像を構成する凹凸構造による画素を構成する。領域X3は、図7の視点X3から見た場合のホログラム像を構成する凹凸構造による画素を構成する。領域Y1は、図7の視点Y1から見た場合のホログラム像を構成する凹凸構造による画素を構成する。領域Y2は、図7の視点Y2から見た場合のホログラム像を構成する凹凸構造による画素を構成する。図4には、3×3の画素の組み合わせが示されているが、実際には、N×Mのマトリクス状に画素が配列される。図4の画素の構造は、右目用ホログラムの場合と左目用ホログラムの場合で同じである。
【0077】
すなわち視点X1に係る右目用のホログラム型においては、図7における立方体300の位置に識別媒体10を置いた場合に、視点X1から見た立方体300の右目用ホログラム像が構成されるように、領域X1の割り当てが設定される。言い換えると、図7における立方体300の位置に識別媒体10を置き、マトリクス状に配置された複数のX1の画素の集まりをX1の視点から見た場合に、立方体300を視点X1から見た場合の右目用のホログラム像が得られるように、右目用ホログラム像を複数の画素に分割し、それを図4に示す凹凸構造の領域X1に割り当ててある。これは、X2、X3、Y1、Y2においても同じである。
【0078】
同様に、視点X1に係る左目用のホログラム型においては、図7における立方体300の位置に識別媒体10を置いた場合に、視点X1から見た立方体300の左目用ホログラム像が構成されるように、領域X1の割り当てが設定される。言い換えると、図7における立方体300の位置に識別媒体10を置き、マトリクス状に配置された複数のX1の画素の集まりをX1の視点から見た場合に、立方体300を視点X1から見た場合の左目用のホログラム像が得られるように、左目用ホログラム像を複数の画素に分割し、それを図4に示す凹凸構造の領域X1に割り当ててある。これは、X2、X3、Y1、Y2においても同じである。
【0079】
以上が右目用のホログラム型と左目用のホログラム型の詳細である。このホログラム型を押し付けることで、ホログラム型が転写され、図1、図2の右目用ホログラム13と左目用ホログラム18が形成される。なお、各領域は、見え方を同じにするために、同じ面積比となるように区割りされている。
【0080】
例えば、このホログラム型を用いた右目用ホログラム型13は、マトリクス状に配置された複数のX1の領域が集まって、図8の立体像X1の右目用のホログラム像を構成し、マトリクス状に配置された複数のX2の領域が集まって、図8の立体像X2の右目用のホログラム像を構成し、マトリクス状に配置された複数のX3の領域が集まって、図8の立体像X3の右目用のホログラム像を構成し、マトリクス状に配置された複数のY1の領域が集まって、図8の立体像Y1の右目用のホログラム像を構成し、マトリクス状に配置された複数のY2の領域が集まって、図8の立体像Y2の右目用のホログラム像を構成する。
【0081】
また例えば、このホログラム型を用いた左目用ホログラム型13は、マトリクス状に配置された複数のX1の領域が集まって、図8の立体像X1の左目用のホログラム像を構成し、マトリクス状に配置された複数のX2の領域が集まって、図8の立体像X2の左目用のホログラム像を構成し、マトリクス状に配置された複数のX3の領域が集まって、図8の立体像X3の左目用のホログラム像を構成し、マトリクス状に配置された複数のY1の領域が集まって、図8の立体像Y1の左目用のホログラム像を構成し、マトリクス状に配置された複数のY2の領域が集まって、図8の立体像Y2の左目用のホログラム像を構成する。
【0082】
(立体像が切り替わる機能)
以下、見る角度を変えると、観察される立体像が切り替わる光学機能について説明する。ここでは、図3に示すように右目の前に右円偏光フィルタを配置し、左目の前に左円偏光フィルタを配置した状態で識別媒体10を観察する場合を説明する。また、識別媒体10は、観察面を矢印301の方向に向けて位置させた状態であるとする。まず、視点X1から符号300の位置に置いた識別媒体10を観察する場合を説明する。
【0083】
この場合、図4のX1の領域からの反射光が図7のX1の位置において結像し、他のX2、X3、Y1、Y2からの反射光は、X1の視点の位置で結像しない。そのため、観察される右目用ホログラムと左目用ホログラムは、図7の視点X1からのものとなり、図8(A)の立体ホログラム像が観察される。
【0084】
また同様の原理により、図7のX2の視点から符号300の位置にある識別媒体10を観察した場合、観察される右目用ホログラムと左目用ホログラムは、図7の視点X2からのものとなり、図8(B)の立体ホログラム像が観察される。同様に、図7のX3、Y1、Y2の各視点から見た立体像は、図8のX3、Y1、Y2の立体像となる。この場合、立方体300を回転させた際の見え方の変化を示す立体像が観察される。
【0085】
図8には、識別媒体10に対する視点の変更(見る角度の変更)により、観察対象物を異なる方向から見たかのような切り替わりが観察される例が示されているが、立体像が別の立体像に切り替わる形態も可能である。図9には、その一例が示されている。この場合、識別媒体10に対する視点を変えると(あるいは識別媒体10を傾けると)、図9(A)〜(E)に示すように観察される各立体像が切り替わる。
【0086】
視点の変更による像の切り替わりは、上下左右に限定されず、左右のみ(例えば、図7のX1、X2、X3)、上下のみ(例えば、図7のX1、Y1、Y2)であってもよい。用意する視点の数(像の数)も図示する例に限定されない。
【0087】
(識別機能)
識別媒体10を直接観察すると、左右のホログラム像が2重にぶれて見える。右円偏光フィルタを介して識別媒体10を観察すると、右目用ホログラム13のホログラム像が緑に見える。左円偏光フィルタを介して識別媒体10を観察すると、左目用ホログラム18のホログラム像が特に色が付かない状態で見える。図3に示すように識別媒体10を左右の円偏光フィルタを介して両目で見ると、立体のホログラム像が形成される。またこの際、識別媒体10を見る視点を変更すると(あるいは識別媒体10を傾けると)、図8や図9に示すような立体のホログラム像の切り替わりが観察される。これらの見え方の違いを利用して真贋を判定する識別機能が得られる。
【0088】
(優位性)
まず、上述した特異な識別機能が得られる。次に、コレステリック液晶層を1層しか用いないので、コレステリック液晶層を2層用いる場合に比較して低コスト化できる。他方で、一方の目用のホログラム像は、コレステリック液晶層に形成されたホログラムに基づくので、偽造防止性は高く維持できる。
【0089】
ところで、右目で左目用のホログラム像が見え、左目で右目用のホログラム像が見えると、立体像の鮮明さが損なわれるが、本実施形態では円偏光フィルタ層19を配置することで、左右の目用のホログラム像の分離を高い精度で行えるので、より鮮明な立体像が視認できる。
【0090】
以下この点について詳細に説明する。図1、図2の識別媒体において、コレステリック液晶層12は、緑の右円偏光を選択的に反射する設定とされており、右目用ホログラム13の光学情報を含んでおり、これ以外の光は透過する。この透過した光に含まれる右円偏光成分が左円偏光フィルタ層19により遮断され、左円偏光成分は透過し、アルミ反射層16で左目用ホログラム18の情報を含んで反射され、再び左円偏光フィルタ層19を透過する際に左円偏光となる。この左円偏光はコレステリック液晶12の右目用ホログラム13の光学変調を受けずに透過するため、左右の目用のホログラム情報が混ざらない。
【0091】
このように円偏光フィルタ層19を配置し、左右の円偏光を分離するフィルタ特性を利用することで、右目用のホログラム像と左目用のホログラム像とを高い精度で分離でき、鮮明な立体像を観察することができる。
【0092】
(第1の実施形態の応用例)
直線偏光フィルタ層15とアルミ反射層16との間にコレステリック液晶層12が選択反射する波長(上記の例の場合は緑に相当する波長)を選択的に透過するカラーフィルタ層を配置する。こうすることで、識別媒体10からの左右の円偏光の色を揃えることができる。この場合、特定の中心波長の光で左右のホログラム像が形成されるので、不要な干渉光を排除でき、より鮮明な立体像を視認することができる。
【0093】
なお、このカラーフィルタ層の色を選択することで、識別媒体10から反射される左右の円偏光の色を意図的に異なる色とし、それを識別に利用する構成も可能である。この場合、例えば右円偏光フィルタで見ると、緑の像が見え、左円偏光フィルタで見ると赤の像が見え、右目の前に右円偏光フィルタを配置し、左目の前に左円偏光フィルタを配置すると緑と赤が合成された色彩の立体像が観察される。この場合も特定の波長の光で左右の目用のホログラム像が構成されるので、鮮明な像を観察することができる。
【0094】
図1の識別媒体10において、保護層11上に離型層と基材層を配置した構造も可能である。この構成では、離型層は保護層11と基材層とを一体化させる粘着性と、基材層を識別媒体10から剥がした際に保護層11から容易に剥がれる機能を有している。この場合、セパレータ23を剥がした状態で粘着層22を対象物に押し付け、その後に基材層を剥がすと、離型層と基材層が一体となったものが保護層11から剥がれ、対象物に識別媒体10が貼り付けられた状態で固定される。
【0095】
(その他)
以上の説明において、右円偏光と左円偏光の役割を入れ替えた構成も可能である。この場合、コレステリック液晶層12から左円偏光が選択的に反射される設定とし、符号19の円偏光フィルタ層を、観察面側から入射した右円偏光を選択的に透過する右円偏光フィルタ層とする。また、符号13の部分を左目用ホログラムとし、符号18の部分を右目用のホログラムとすることも可能である。また、コレステリック液晶層12が選択的に反射する波長は、緑に相当する波長に限定されず、視認可能な波長であれば、赤等の他の波長の光であってもよい。アルミ反射層は、可視光の反射層として機能すればよいので、適当な金属の層で代用することできる。
【0096】
またアルミ反射層16の代わりに屈性率の異なる2種類の光透過性のフィルムを交互に多層(数十層〜数百層)に積層した多層薄膜フィルムを用いることもできる。この場合、多層薄膜フィルムにホログラム18が形成される。この場合、多層薄膜中の異なる屈折率が接する多数の界面からの反射光の干渉光が反射光として活用される。この反射光は、干渉により生成されるので、特定の見る角度において特定の波長が強いピークを有する。このため、特定の見る角度において、第2の光学機能層20からの特定の色の立体像が浮かび上がって見える。また、見る角度を変えると、第2の光学機能層20からの反射光の中心波長が変化するので、視認している立体像の色彩が変化する。
【0097】
2.第2の実施形態
(構成)
図5には、発明を利用した識別媒体100が示されている。識別媒体100は、視認する側(観察を行う側)から、表面保護層101、第1のコレステリック液晶層102、λ/2板(1/2波長板)103、第2のコレステリック液晶層104、粘着層105と積層された構造を有している。
【0098】
表面保護層101は、識別に用いる光を透過し、且つ、透過光の偏光特性を乱さない材質(例えば、TAC(トリアセチルセルロール))により構成されている。第1のコレステリック液晶層102は、予め決められた中心波長(例えば、緑色に見える波長)の右円偏光(または左円偏光)の光を選択的に反射する特性に設定されている。第1のコレステリック液晶層102には、ホログラム102aが形成されている。ホログラム102aは、型を押し付けることで形成される凹凸により構成されている。この例では、ホログラム102aにより、右目が見るためのホログラム像が表示される設定とされている。
【0099】
λ/2板103は、複屈折性を有する材料を用いて構成されたフィルムである。λ/2板103は、直線偏光の光を遅相軸と45°の角度で入射させると、偏光方向が90°回転した出射光が得られ、また円偏光を入射させると、旋回方向が反転し、逆旋回方向の円偏光が出射される光学特性を有する。
【0100】
第2のコレステリック液晶層104は、第1のコレステリック液晶層102と同じものとされている。第2のコレステリック液晶層104には、ホログラム104aが形成されている。ホログラム104aは、型を押し付けることで形成される凹凸により構成されている。この例では、ホログラム104aにより、左目が見るためのホログラム像が表示される設定とされている。
【0101】
ここで、右目が見るホログラム像と左目が見るホログラム像とは、視差の分ずれた像である。この2つのホログラム像を両目で独立に同時に見ることで、それが視覚中枢により合成されて立体像が認識される。各ホログラム像は、立体像を撮像するためのカメラにより撮像した画像データから得ることができる。
【0102】
粘着層105は、識別媒体100を識別対象となる物品に貼り付けるため役割がある。粘着層105は、黒の顔料が混ぜられた粘着材料により構成され、光吸収層としても機能する。なお、物品に貼り付ける前の状態で、粘着層105の露出した表面に離型紙が貼り付けられているが、図1では図示省略されている。また、粘着層105を構成する粘着材料に混ぜるのは、黒の顔料に限定されず、暗色な顔料でもよい。また、顔料ではなく、染料であってもよい。
【0103】
識別媒体100では、第1のコレステリック液晶層102によって、第1の光学機能層が構成されている。また、λ/2板103と第2のコレステリック液晶層104によって第2の光学機能層が構成されている。
【0104】
識別対象となる物品としては、パスポート、各種身分証明書、運転免許証等の各種資格証明書、書類、クレジットカード等の各種カード、入室許可証等の各種許可証、乗車パス、定期券、紙幣、金券、証券、商品券、絵画、切符、公共競技投票券、各種記録媒体、衣類、鞄等の各種小物、電子機器およびその周辺装置、電子部品、電池、各種製品のパッケージ、各種タグ、包装紙等が挙げられる。これは他の実施形態でも同じである。
【0105】
(製造方法)
図5の識別媒体100の製造方法の一例を説明する。まず、表面保護層101を用意する。そして、表面保護層101の観察面と反対側の面(図5の下面の側)に配向処理を施し、第1のコレステリック液晶層102を形成する。第1のコレステリック液晶層102を形成したら、ホログラム加工を行うための型を第1のコレステリック液晶層102に押し付け、第1のコレステリック液晶層102に対するホログラム102aの形成を行う。
【0106】
他方で、λ/2板103を用意し、その表面に配向処理を施して、第2のコレステリック液晶層104を形成する。第2のコレステリック液晶層104は、第1のコレステリック液晶層102と同じものである。第2のコレステリック液晶層104を形成したら、ホログラム加工を行うための型を第2のコレステリック液晶層104に押し付け、第2のコレステリック液晶層104に対するホログラム104aの形成を行う。
【0107】
そして、λ/2板103の第2のコレステリック液晶層104を形成しなかった面の側を第1のコレステリック液晶層102に貼り合わせる。この貼り合わせは、光透過性の接着剤または粘着剤を用いて行う。次いで、第2のコレステリック液晶層104の露出している面に粘着層105を形成する。こうして、図5に示す識別媒体100が得られる。
【0108】
なお、コレステリック液晶層が反射する光の中心波長は、可視光の範囲内であれば、選択が可能である。ここでは、一例として緑色の場合を例示したが、赤色、青色、黄色、その他であってもよい。また、反射光の旋回方向も右旋回に限定されず左旋回を選択することができる。
【0109】
(光学原理1)
図6には、識別媒体100から立体像を観察する原理が示されている。この例では、識別媒体100を観察する際に、右目203の前に右円偏光を透過し、左円偏光を遮断する光学フィルタ(右円偏光フィルタ)201を配置し、左目204の前に左円偏光を透過し、右円偏光を遮断する光学フィルタ(左円偏光フィルタ)202を配置する。そして、光学フィルタ201を介して、右目203で識別媒体100を観察し、光学フィルタ202を介して、左目204で識別媒体100を観察する。
【0110】
観察する側から識別媒体100に入射した自然光のうち、特定波長の右円偏光が第1のコレステリック液晶層102から反射される。この反射光は、光学フィルタ202を透過せず、光学フィルタ201を透過するので、右目203で視認される。この結果、右目203は、ホログラム102aにより形成される右目用のホログラム像を視認する。
【0111】
一方、観察する側から識別媒体100に入射した自然光のうち、特定中心波長の左円偏光は、第1のコレステリック液晶層102を透過し、1/2波長板103に到達する。そして、この特定波長の左円偏光は、1/2波長板103を透過する過程で右円偏光となり、第2のコレステリック液晶層104において反射される。この反射光は、1/2波長板103を下から上に透過し、その際に左円偏光となり、第1のコレステリック液晶層102を下から上に透過する。第1のコレステリック液晶層102を下から上に透過した第2のコレステリック液晶層104からの反射光は、特定中心波長の左円偏光であり、光学フィルタ201で遮断され、光学フィルタ202を透過する。よって、第2のコレステリック液晶層104からの反射光は、左目204で視認される。
【0112】
結果として、右目203は、ホログラム102aにより形成される右目用のホログラム像を視認し、それとは別に左目204は、ホログラム104aにより形成される左目用のホログラム像を視認する。なお、第1のコレステリック液晶層102および第2のコレステリック液晶層104を透過した光成分は、黒色の粘着層105で吸収される。
【0113】
こうして右目203で右目用のホログラム像を視認し、同時に、左目204で左目用のホログラム像を視認する。この結果、虚像205が立体像として認識される。以上が、識別媒体100を観察することで立体像が観察できる原理である。
【0114】
なお、第1のコレステリック液晶層102と第2のコレステリック液晶層104を左円偏光が選択的に反射される設定とし、ホログラム102aを左目が視認するホログラム像用とし、ホログラム104aを右目が視認するホログラム像用としてもよい。この場合、ホログラム104aからの反射光(左円偏光)は、1/2波長板103を透過する際に右円偏光となり観察者側に届く。光学フィルタ201は、右円偏光を選択的に透過するので、このホログラム104aからの反射光は右目で視認される。他方で、ホログラム102aからの反射光(左円偏光)は、そのまま観察者側に届き、右円偏光を選択的に遮断する光学フィルタ202を透過して、左目204で視認される。こうして、右目203で右目用のホログラム104aからの反射光を見、左目204で左目用のホログラム102aからの反射光を見ることができ、立体像の観察が行える。
【0115】
また、コレステリック液晶層は同じまま(右旋回円偏光を選択的に反射)で、ホログラム102aを左目が視認するホログラム像用とし、ホログラム104aを右目が視認するホログラム像用としてもよい。この場合、光学フィルタを入れ換え、光学フィルタ201として左円偏光を選択的に透過するものを用い、光学フィルタ202として右円偏光を選択的に透過するものを用いる。観察においては、ホログラム102aからの反射光(右円偏光)が、光学フィルタ202を介して左目204で視認され、ホログラム104aからの反射光(左円偏光)が、光学フィルタ201を介して右目203で視認される。
【0116】
(ホログラム加工)
以下、ホログラム102aとホログラム104aについて説明する。詳細は、第1の実施形態の場合と同じであるので、要点のみを説明する。図7は、観察される像の対象物300と視点との位置関係を示す概念図であり、図8は観察される立体像の概念図である。ここでは、観察対象300を正面(視点X2)、左斜め前方(視点X1)、右斜め前方(視点X3)、上斜め前方(視点Y2)、下斜め前方(視点Y1)から見る場合について説明する。また、像として視認される対象物300は、立方体であるとする。
【0117】
この場合、X1、X2、X3、Y1、Y2の5つと視点から見た右目用と左目用のホログラム像(計10画像)が用意される。これらのホログラム像を用意したら、右目用および左目用のホログラム像(各5画像)を再現するための回折格子を形成する。ここでは、まず図7に示す各視点の位置から見た場合に、ホログラム像を再現するための回折格子を形成する。この回折格子は、感光材料に電子ビーム露光装置からの電子ビームを照射し、回折格子として機能する構造に感光を行うことで形成される。この技術に関しては、例えば特開平5−2148号公報に記載されている。この回折格子は、右目用と左目用が別に形成される。
【0118】
次にこの回折格子を形成した感光材料を原版として、エンボス加工用の押し型を作成する。この押し型は、上記回折格子を凹凸模様によって再現する型となる。この押し型は、右目用と左目用とが作製される。この押し型の右目用のものをコレステリック液晶層102に押し付け、コレステリック液晶層102の表面に回折格子として機能する凹凸(エンボス模様)を形成することで、右目用のホログラム102aが設けられる。また、上記押し型の左目用のものをコレステリック液晶層104に押し付け、コレステリック液晶層104の表面に回折格子として機能する凹凸(エンボス模様)を形成することで、左目用のホログラム104aが設けられる。
【0119】
(光学原理2)
右目の前に右旋回円偏光を選択的に透過する光学フィルタを配置し、左目の前に左旋回円偏光を選択的に透過する光学フィルタを配置した状態で、識別媒体100を観察する場合を説明する。なお、ホログラム102aと104aによって、図7に示す立法体の対象物300の記憶がされているものとする。
【0120】
まず、対象物300の位置に識別媒体100を置き、それを左斜め前(図7の視点X1)から観察する場合を説明する。この場合、図8(A)に示す像X1が立体像として観察される。すなわち、対象物300をその左斜め前から観察した状態の立体像が見える。この場合、観察する側から見て、対象物300の右側の側面が見える。
【0121】
次に、対象物300の位置に置いた識別媒体100を正面(図7の視点X2)から見ると、図8(B)に示す像X2が観察される。なお、この例では、正面といっても、視点X2は、真正面ではなく、立体感が得られ易いように、正面やや上方からの視点とされている。
【0122】
同様に、図7のX3の視点から対象物300の位置に置いた識別媒体100を見ると、図8(C)に示す像X3が観察される。この場合、対象物300を右斜め前の方向から見た様子が観察される。この場合、観察する側から見て、対象物300の左側の側面が見える。また、図7のY1の視点から対象物300の位置に置いた識別媒体100を見ると、図8(D)に示す像Y1が観察される。この場合、対象物300を前方斜め下の方向から見た様子が観察される。この場合、観察する側から見て、対象物300の下面が見える。また、図7のY2の視点から対象物300の位置に置いた識別媒体100を見ると、図8(E)に示す像Y2が観察される。この場合、対象物300を前方斜め上の方向から見た様子が観察される。この場合、観察する側から見て、対象物300の上面が見える。
【0123】
図8を見れば分かるように、ここで観察される立体像は、視点の位置を変更すると、立体像の見え方が変わる。すなわち、識別媒体を回転させることで、視認対象物(この場合は立方体)をあたかも回転させたかのような見え方の変化が生じる。
【0124】
また、図8の像X2に比較して他の像は、識別媒体に対する視線の角度が大きくなり、識別媒体をより斜めの角度から見ることになるので、カラーシフトが観察される。カラーシフトは、干渉光がより短波長側にシフトする現象であるので、像X2に比較して、他の像は、より短波長側の色合いに見える。この色合いの変化も識別に利用される。
【0125】
(優位性)
本実施形態によれば、識別に利用する像として立体像が利用できる。そして、例えば、識別媒体を傾けると、立体感のあるロゴが回転するような見え方をする識別媒体が得られる。
【0126】
普通の光透過性の材料に形成され、アルミ蒸着などの反射層のあるエンボスホログラム加工は、感光材料がその上に密着させた状態で、紫外域のレーザ光などによるこの感光材料の感光を行うことで、ホログラム加工を構成するエンボス構造(凹凸構造)を比較的容易に写し取ることができる。一方、コレステリック液晶層は、特定の中心波長の光を選択的に反射する性質を持っている。よって、上述した複製の技術では、その反射スペクトル特性に合った感光特性の感光材料が必要とされる。しかしながら、コレステリック液晶層の反射特性に合った感光特性の感光材料を用意するのは、困難である。このため、コレステリック液晶層に設けられたホログラム加工の複製は、原版を入手しない限り困難となる。
【0127】
また、立体像の場合は、左右の目の視差を利用しているので、微妙な誤差が立体像の再現性に影響する。このため、本実施形態に示す識別媒体をリバースエンジニアリングにより再現するのは、より困難となる。
【0128】
また、上述したようにコレステリック液晶層は、特定の波長を中心した反射光を反射する(言い換えると、特定の色の反射光を反射し、他の色成分は透過する)。このため、鮮明な像を観察することができる。通常の光透過性の材料に形成され、アルミ蒸着などの反射層のあるエンボスホログラムは、自然光の全波長の光が異なった角度に回折するので、本来は認識させたくない色の干渉光も視認されてしまう。これは、像のボケや滲みの要因となる。本実施形態の場合、上述した特定の中心波長の光を反射するというコレステリック液晶層の光学特性により、上述した不要な波長の干渉の発生を抑えることができる。このため、ボケや滲みのない鮮明な立体像を得ることができる。
【0129】
また、カラーシフトに起因する色合いの変化は、コレステリック液晶層の層構造の寸法割合等の影響を大きく受けたものとなるので、製造条件の詳細が分からなければ再現は困難となる。このため、高い耐偽造性を得ることができる。例えば、図8の像X2と像X1の色合いの違いを正確に偽造により再現することは困難となる。勿論、上述のように像X2と像X1の立体感を偽造により再現することも困難であるので、2重の意味で偽造が困難となる。
【0130】
(その他1)
粘着層105を可視光に対して透明な材質(向こう側が視認できれば半透明でもよい)としてもよい。この場合、識別媒体100を直接見ると、第1のコレステリック液晶層102および第2のコレステリック液晶層104で反射する以外の光は透過するため、識別媒体100が貼り付けられる物品の表面の表示が透けて明瞭に見える。また、2つのコレステリック液晶層からの反射光は、薄く見え、虚像(立体像)も鮮明には見えない。
【0131】
そして、右目の前に右旋回円偏光を透過する光学フィルタを配置し、左目の前に左旋回円偏光を透過する光学フィルタを配置した状態で識別媒体100を見ると、コレステリック液晶層102からの右目像とコレステリック液晶層104からの左目像とが立体像として像を結び、浮かび上がって見える。この場合、下地(物品の表面の表示)はほとんど見えない。この見え方の変化を利用して識別を行うことができる。
【0132】
(その他2)
識別媒体に対する見る角度を変えた場合に、立体像が回転するのではなく、異なる立体像に切り替わる表示を行うことも可能である。以下、この一例を説明する。この例では、図7の視点X1、X2、X3、Y1、Y2に対応させて、これら各視点から識別媒体100を見た場合に、図9のX1’、X2’、X3’、Y1’、Y2’の各立体像が見られるようにホログラム102a、104aを形成する。
【0133】
この場合、図7の符号300の位置に識別媒体100を置き、正面を視点X2に向けた状態において、右目の前に右旋回円偏光を選択的に透過する光学フィルタを配置し、左目の前に左旋回円偏光を選択的に透過する光学フィルタを配置し、識別媒体100を観察する。この際、視点X1から識別媒体を見ると、図9(A)の立体像X1’が観察され、視点X2から識別媒体を見ると、図9(B)の立体像X2’が観察され、視点X3から識別媒体を見ると、図9(C)の立体像X3’が観察され、視点Y1から識別媒体を見ると、図9(D)の立体像Y1’が観察され、視点Y2から識別媒体を見ると、図9(E)の立体像Y2’が観察される。
【0134】
この例では、この立体像の切り替えによって、識別が行われる。例えば、図9に示す文字の並びを製品名のロゴや製造会社のロゴとすることで、高い識別性を得ることができる。なお、光学フィルタを用いず、識別媒体100を直視した場合、X1’、X2’、X3’、Y1’、Y2’の各像は、立体像として結像せず、2重にぶれた不鮮明な像として観察される。
【0135】
また、カラーシフトの影響で、図9の像X2’に比較して、他の像は、より短波長側の色合いに見える。この色合いの変化も識別に利用される。このカラーシフトの色合いの変化は、コレステリック液晶層の層構造のピッチで決まり、製造条件や原材料が分からなければ簡単には再現できない。このため、高い耐偽造性を得ることができる。
【0136】
例えば、像X2’と像Y2’の色合いの違いを正確に偽造により再現することは困難となる。勿論、そもそも像X2’と像Y2’の立体感を偽造により再現することも困難であるので、2重の意味で偽造が困難となる。
【0137】
(その他3)
図1に示す識別媒体100において、λ/2板を用いない構成も可能である。以下、その一例を説明する。この場合、識別媒体100において、λ/2板の代わりに光透過性で透過する光の偏光の状態に影響を与えない材料の層(例えば、TACフィルム)を採用する(あるいはλ/2板を取り去る)。また、第2のコレステリック液晶層104を、その反射光の旋回方向が第1のコレステリック液晶層102と逆旋回方向となるようにする。この場合、λ/2板は必要なくなり、製造面、コスト面で有利となる。他方で、反射光の旋回方向の設定が逆向きの2種類のコレステリック液晶層を用意する必要がある。
【0138】
(その他4)
図8または図9に示す立体像の変化において、横方向の変化のみ(あるいは縦方向の変化のみ)が行われるようにしてもよい。この場合、左右方向に識別媒体を傾けると(あるいは視点の位置を移動させると)、X1⇔X2⇔X3あるいはX1’⇔X2’⇔X3’の変化が観察され、上下方向に識別媒体を傾けると(あるいは視点の位置を移動させると)、見えている像の色合いが、短波長側にシフトする。
【0139】
(その他5)
図8に示す立体像の変化と図9に示す立体像の変化とを組み合わせた表示機能とすることもできる。例えば、左右方向に識別媒体を傾けると(あるいは視点の位置を移動させると)、X1⇔X2⇔X3と観察像が変化し、図8のX2の像が見えている状態で識別媒体を上下に傾けると、図9のY1’、Y2’に像が変化する表示機能とすることもできる。この場合、視点を変えて立体像を観察した場合の視覚効果と、視点を変えると立体像が他の立体像に切り替わる効果とを、識別媒体の傾きや視点の位置の変更により得ることができる。
【0140】
(その他6)
図示した例示では、5箇所の視点から見た像を用いる例を説明しているが、視点の数は、それに限定されない。例えば、識別媒体を傾けることで、立体像の回転が数十段階に変化する見え方や、立体像が数十の異なる像に切り替わるようにしてもよい。
【0141】
(その他7)
利用する像は、実存する物体に基づくものではなく、コンピュータグラフィックス等で作成した像であってもよい。また架空の存在であってもよい。コンピュータグラフィックスを利用する場合も、左右の目用の像を作成し、その像を電子ビームにより描画してエンボス型を作製すればよい。
【0142】
(補足)
以下、第2の実施形態に利用される発明の摘要を記す。この発明は、第1のホログラムを備え、第1の偏光特性を有する反射光を反射する第1の光学機能層と、前記第1の光学機能層と積層され、第2のホログラムを備え、第2の偏光特性を有する反射光を反射する第2の光学機能層とを備え、前記第1の光学機能層と前記第2の光学機能層とは、コレステリック液晶層を含み、前記第1の偏光特性を有する反射光と前記第2の偏光特性を有する反射光とは、偏光フィルタにより分離が可能であり、前記第1のホログラムにより左右の目の一方で視認するための第1のホログラム像が形成され、前記第2のホログラムにより前記左右の目の他方で視認するための第2のホログラム像が形成され、前記第1のホログラム像と前記第2のホログラム像により立体像が形成されることを特徴とする識別媒体として把握される。
【0143】
ここで、観察面側から第1の光学機能層、第2の光学機能層と配置され、第1の光学機能層は、一方の旋回方向の円偏光を反射するコレステリック液晶層であり、前記第2の光学機能層は、他方の旋回方向の円偏光を反射するコレステリック液晶層である場合が挙げられる。この構成によれば、第1および第2の光学機能層は、特定の中心波長で、且つ、互いに逆旋回方向の円偏光を選択的に反射する。ここで、反射する中心波長は、第1および第2の光学機能層で同じ中心波長としてもよいし、異なる中心波長としてもよい。
【0144】
また上記の構成において、視認する側から前記第1の光学機能層、前記第2の光学機能層と配置されており、前記第1の光学機能層は、一方の旋回方向の円偏光を反射する第1のコレステリック液晶層であり、前記第2の光学機能層は、前記第1の光学機能層側から順にλ/2板(1/2波長板)、前記第1のコレステリック液晶層と同じ旋回方向の光を反射する第2のコレステリック液晶層と、積層された構造を有する構成も可能である。
【0145】
この構成によれば、2層のコレステリック液晶層は、同じ旋回方向の円偏光を反射する。そして、第1の光学機能層を透過した第1の旋回方向と逆旋回方向の第2の旋回方向の円偏光がλ/2板に入射する。このλ/2板に入射した第2の旋回方向の円偏光は、λ/2板において第1の旋回方向の円偏光に変換され、第2の光学機能層で反射される。この反射光は、上記と逆の経路をたどって、λ/2板に入射し、そこで第2の旋回方向の円偏光に変換され、第1の光学機能層を観察者側に透過する。これにより、第1の光学機能層からの第1の旋回方向の円偏光(例えば右目用)と、第2の光学機能層からの第2の旋回方向の円偏光(例えば左目用)が得られる。
【0146】
この構成によれば、1層目として右円偏光(あるいは左円偏光)を選択的に反射するコレステリック液晶層を選択し、2層目として左円偏光(あるいは右円偏光)を選択的に反射するコレステリック液晶層を選択した場合と同様な光学機能を得ることができる。なお、2層のコレステリック液晶層が反射する光の中心波長は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0147】
また上記の構成において、前記第1のホログラム像および前記第2のホログラム像は、複数の異なる視点に応じて形成されていることは好ましい。この構成によれば、各光学機能層のホログラム像を、識別媒体を見る角度に応じて用意することで、識別媒体を見る角度を変えた際に、視認される像の異なる面が見える(あるいは異なる画像が見える)。これにより、識別媒体を見る角度を変化させることで、立体観察像が回転、あるいは立体観察像の回りを観察者が周回しながら視点を変えつつ観察しているかのような見え方が得られる。あるいは表示される立体像が切り替わる様子が観察される。
【0148】
また本実施形態の構成に係り、第1のホログラム像を第1の偏光特性を有する反射光を選択的に透過する第1の偏光フィルタを介して左右の目の一方で観察し、第2のホログラム像を第2の偏光特性を有する反射光を選択的に透過する第2の偏光フィルタを介して左右の目の他方で観察することを特徴とする識別媒体の識別方法として発明を把握することも可能である。
【0149】
本実施形態で利用した発明では、コレステリック液晶層からの反射光を用いて立体像を再生している。コレステリック液晶は、特定の旋回方向で、且つ、特定の中心波長の円偏光を選択的に反射する(反射光は赤や青といった特定の色に見える)性質を持っている。このため、第1のホログラム像と第2のホログラム像は、特定の中心波長の光(特定の色の光)によって構成され、可視光全ての波長範囲の光が回折することで構成される一般的なエンボスホログラム像に比較して、ボケや滲みのない像を観察することができる。
【0150】
また、ホログラム加工に基づくホログラム像は、見る角度に従って異なる像が見えるようにすることが可能である。この特性を利用することで、本発明では、見る角度に応じて第1および第2のホログラム像が変化するようにできる。このため、見る角度を変化させると、立体観察像が回転、あるいは立体観察像の回りを観察者が周回しながら視点を変えつつ観察しているかのような見え方が得られる。また、見る角度を変えると、違う立体像が現れる識別表示が可能となる。
【0151】
また、コレステリック液晶層は、多層構造を有しているので、視線の角度を変化させると、各層の界面からの反射光の干渉波長の変化に起因する色合い変化(カラーシフトという)が発生する。このため、本発明では、識別媒体への視線の角度を変化させると、立体画像の変化(あるいは切り替わり)とカラーシフトの効果が同時に観察され、見る角度によって色が変化する。
【0152】
このように、見る角度によって立体像の形状と色合いが同時に変化し、それを利用しての識別を行うことができる。立体像の変化は、コレステリック液晶層に設けられたホログラム加工によって生じ、色合いの変化は、コレステリック液晶層のカラーシフト効果によって生じる。コレステリック液晶層のホログラム加工は、複製が困難であり、またコレステリック液晶層が示すカラーシフトは、コレステリック液晶層の層構造のピッチで決まり、製造条件や原材料が分からなければ簡単には再現できない。よって、本発明の見る角度によって立体像の形状と色合いが同時に変化する識別表示は、複製(偽造)が困難であり、高い耐偽造性が得られる。
【0153】
3.第3の実施形態
(構成)
図10には、発明を利用した識別媒体500が示されている。識別媒体500は、観察を行う側から、表面保護層501、第1のコレステリック液晶層502、第2のコレステリック液晶層503、アルミ反射層504、ホログラム形成層505、粘着層506、セパレータ507と積層された構造を有している。
【0154】
表面保護層501はTACフィルムである。第1のコレステリック液晶層502は、右旋回で緑の中心波長の光を反射する特性とされ、右目用ホログラム601が形成されている。第2のコレステリック液晶層は、第1のコレステリック液晶層502と同様な光学特性(右旋回で緑の中心波長の光を反射する特性)とされ、ホログラムは形成されていない。アルミ反射層504は、ホログラム602を構成するためのホログラム加工が施された光反射層であり、ホログラム形成層505の上に蒸着により形成されたアルミニウムの薄膜である。ホログラム形成層505は、樹脂の層であり、左目用ホログラム602を構成する凹凸構造が形成されている。この凹凸構造に倣ってアルミ反射層504に凹凸構造が付与されることで、ホログラム602が構成されている。
【0155】
右目用ホログラム601と左目用ホログラム602とは、立体画像を構成するホログラム像を生成する。すなわち、右目用ホログラム601を右目で選択的に見、左目用ホログラム602を左目で選択的に見ることで、立体像が認識できるように、右目用ホログラム601が生成する右目用ホログラム像と左目用ホログラム602が生成する左目用ホログラム像とが選択されている。
【0156】
ホログラム形成層505に接して粘着材による粘着層506が形成され、粘着層506には離型紙として機能するセパレータ507が貼り付けられている。また各層は、光透過性の接着剤によって貼り合わされている。
【0157】
右目用ホログラム601と左目用ホログラム602とを入れ替えることも可能である。コレステリック液晶層502、503の反射光の旋回方向は、左旋回方向であってもよい。また、コレステリック液晶層502、503からの反射光の中心波長は、緑に限定されず赤等の他の中心波長であってもよい。また、コレステリック液晶層502からの反射光の中心波長とコレステリック液晶層503からの反射光の中心波長とを異なる波長としてもよい。
【0158】
(ホログラム加工)
右目用ホログラム601と左目用ホログラム602は、図4、図7、図8(または図9)に関連して説明した第1の実施形態および第2の実施形態の場合と同様なホログラム加工により形成されている。
【0159】
(光学原理)
図11には、識別媒体500の光学原理が示されている。識別媒体500に図の上方から自然光が入射している状態を考える。この場合、入射光に含まれる右円偏光がコレステリック液晶層601から観察者側(図の上方)に反射される。他方で、入射光に含まれる左円偏光は、コレステリック液晶層502を図の下方に透過し、コレステリック液晶層503に入射する。
【0160】
コレステリック液晶層503は、右円偏光を反射する設定とされているから、左円偏光の入射光は、コレステリック液晶層503を透過し、アルミ反射層504に至り、そこで反射される。この際、旋回方向が反転し、左円偏光の入射光は、右円偏光の反射光としてアルミ反射層504から図の上方に反射される。
【0161】
この右円偏光の反射光は、コレステリック液晶層503にその下面から入射する。コレステリック液晶層503は、緑の中心波長の右円偏光を選択的に反射する設定とされているから、コレステリック液晶層503に図の下面から入射した右円偏光は、アルミ反射層504の側に緑の右円偏光として反射される。この緑の右円偏光は、再びアルミ反射層504に入射し、そこで反射される。この際、旋回方向が反転し、緑の左円偏光として反射される。
【0162】
この緑の左円偏光は、コレステリック液晶層503を図の下方から上方に向かって透過し、更にコレステリック液晶層502を図の下方から上方に向かって透過する。この透過光(緑の左円偏光)が観察者への識別媒体500からの他方の反射光となる。
【0163】
ここで、コレステリック液晶層502から観察者側に反射した緑の右円偏光は、右目用ホログラム601のホログラム像を写し取っており、その画像情報を含んでいる。なお、このコレステリック液晶層502から観察者側に反射した緑の右円偏光は、左目用ホログラム602に到達した光でないので、左目用ホログラム602のホログラム情報は含んでいない。
【0164】
他方において、アルミ反射層504から観察者側に反射した緑の左円偏光は、左目用ホログラム602のホログラム像を写し取っており、その画像情報を含んでいる。なお、アルミ反射層504から観察者側に反射した緑の左円偏光は、コレステリック液晶層502を透過し、ホログラム601から光学変調を受けていないので、右目用ホログラム601の画像情報は含んでいない。
【0165】
従って、右目の前に右円偏光フィルタを配置し、左目の前に左円偏光フィルタを配置した状態において、識別媒体500を観察すると、右目が右目用ホログラム601を選択的に視認し、左目が左目用ホログラム602を選択的に視認する。その結果、観察者に立体像が認識される。
【0166】
仮にコレステリック液晶層503がない場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層502を透過してアルミ反射層504に到達した左円偏光は、アルミ反射層504で反射し、右円偏光となり、更にコレステリック液晶層502の下面で図の下方に反射され、再度アルミ反射層504に右円偏光として入射する。この入射光は、アルミ反射層504で反射される際に、今度は左円偏光となり、コレステリック液晶層502を図の下方から上方に向かって透過し、左目用の反射光となる。この際、この左目用の反射光は、アルミ反射層504とコレステリック液晶層503の両方で反射しているので、左目用ホログラム602と右目用ホログラム601の両方の画像情報を写し取っている。そのため、立体像は観察できない(あるいは視認される像の立体感が大きく損なわれる)。
【0167】
第1のコレステリック液晶層502と第2のコレステリック液晶層503が選択反射する中心波長は同じであってもよいが、異なっていてもよい。例えば、第1のコレステリック液晶層502が選択反射する光を緑の右円偏光とし、それを右目用とし、第2のコレステリック液晶層503が選択反射する光を赤の左円偏光とし、それを左目用する場合を考える。
【0168】
この場合、右目用ホログラム像が緑、左目用ホログラム像が赤となり、円偏光フィルタを介した観察において、右目用ホログラム像だけを見れば緑のホログラム像が見え、左目用ホログラム像だけを見れば赤の像ホログラム像が見える。そして、右目の前に右円偏光フィルタを配置し、且つ、左目の間に左円偏光フィルタを配置した状態で当該識別媒体を見ると、赤と緑を同時にみた色彩で立体ホログラム像が観察される。なお、右目用と左目用の色を入れ替えることや、他の色の組み合わせも可能であり、実施形態は上記の組み合わせに限定されない。
【0169】
(優位性)
コレステリック液晶層へのホログラム加工は、特殊な技術を必要とし、通常の樹脂へのホログラム加工に比較して加工コストが高くなる。識別媒体500は、コレステリック液晶層503にホログラムを形成しないので、加工コストが抑えられる。また、左右の目で視認する像が、特定の中心波長の光であるので、鮮明な立体像が認識できる。また、第1および第2の実施形態の場合と同様に、視点を変えた際に、立体像が回転したり切り替わったりしたりする光学機能が得られる。
【0170】
(補足)
以下、本実施形態で利用した発明の摘要を記す。すなわち、本実施形態で利用した発明は、観察する面側から、第1のコレステリック液晶層と、前記第1のコレステリック液晶層と同じ旋回方向の光を反射する光学特性を有する第2のコレステリック液晶層と、光反射面と配置され、前記第1のコレステリック液晶層には、第1のホログラムが形成され、前記第2のコレステリック液晶層には、ホログラムが形成されておらず、前記光反射層には、第2のホログラムが形成され、前記第1のホログラムが立体像を構成する右目用のホログラム像を形成し、前記第2のホログラムが前記立体像を構成する左目用のホログラム像を形成することを特徴とする。
【0171】
上記の構成において、第1のコレステリック液晶層が選択反射する光の中心波長と第2のコレステリック液晶層が選択反射する光の中心波長を異ならせても良い。この場合、円偏光フィルタを用いた観察において、第1の色のホログラム像の観察、第2の色のホログラム像の観察、第1の色と第2の色が合成された色の立体ホログラム像の観察によって識別を行うことができる。
【0172】
第2のコレステリック液晶層は、第1のコレステリック液晶層と逆旋回方向の円偏光を反射する光学特性のコレステリック液晶層の観察面側にλ/2板を配置した構成で代用することができる。第1のコレステリック液晶層からの反射光と第2のコレステリック液晶層からの反射光の中心波長は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0173】
上記の構成において、第2のコレステリック液晶層は、非観察面側が反射面として利用されている。また、第2のホログラムの画像情報を含む光は、第2のコレステリック液晶層の非観察面と光反射層との間における相互反射により入射光と同じ旋回方向の円偏光とされる。また、第2のホログラムの画像情報を含む光は、第2のコレステリック液晶層の非観察面側における反射により特定の中心波長の光とされている。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明は、真贋の識別を行うための技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0175】
11…保護層、12…コレステリック液晶層、13…右目用ホログラム、14…λ/4板、15…直線偏光フィルタ層、16…アルミ反射層、17…ホログラム形成層、18…左目用ホログラム、19…左円偏光フィルタ層、31…右目、32…左目、33…右円偏光フィルタ、34…左円偏光フィルタ、35…立体像(虚像)、100…識別媒体、101…表面保護層、102…第1のコレステリック液晶層、102a…右目用ホログラム、103…1/2波長板、104…第2のコレステリック液晶層、104a…左目用ホログラム、105…粘着層、501…表面保護層、502…第1のコレステリック液晶層、503…第2のコレステリック液晶層、504…アルミ反射層、505…ホログラム形成層、506…粘着層、507…セパレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察する側から、
第1のホログラムを備え、第1の偏光特性を有する反射光を反射する第1の光学機能層と、
前記第1の光学機能層と積層され、第2のホログラムを備え、第2の偏光特性を有する反射光を反射する第2の光学機能層と
順に配置され、
前記第1の光学機能層は、コレステリック液晶層を含み、
前記第1の偏光特性を有する反射光と前記第2の偏光特性を有する反射光とは、偏光フィルタにより分離が可能であり、
前記第1のホログラムにより左右の目の一方で視認するための第1のホログラム像が形成され、
前記第2のホログラムにより前記左右の目の他方で視認するための第2のホログラム像が形成され、
前記第1のホログラム像と前記第2のホログラム像により立体像が形成されることを特徴とする識別媒体。
【請求項2】
前記第1の光学機能層は、前記第1のホログラムが設けられたコレステリック液晶層から構成され、
前記第2の光学機能層は、前記視認する側から、円偏光フィルタ層、前記第2のホログラムが設けられた光反射層と配置された構成を備え、
前記円偏光フィルタ層は、前記視認する側から円偏光が入射した際に、前記コレステリック液晶層で選択的に反射される円偏光と同じ旋回方向の円偏光を遮断し、それと逆旋回方向の円偏光を透過する光学特性を有することを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項3】
前記第2の光学機能層は、前記視認する側から順に、λ/4板、直線偏光フィルタ層、前記第2のホログラムが設けられた光反射層と配置された構成を備えていることを特徴とする請求項2に記載の識別媒体。
【請求項4】
前記第1のホログラム像および前記第2のホログラム像は、複数の異なる見る角度に対応させて複数が用意されていることを特徴とする請求項2または3に記載の識別媒体。
【請求項5】
前記複数の第1のホログラム像は、N個の見る角度に対応させたN個の一方の目用のホログラム像を有し(Nは、2以上の自然数)、
前記複数の第2のホログラム像は、前記N個の見る角度に対応させたN個の他方の目用のホログラム像を有し、
前記N個の見る角度に含まれる第1の見る角度と第2の見る角度において、
前記複数の第1のホログラム像は、前記第1の見る角度に対応させた第1の一方の目用ホログラム像と前記第2の見る角度に対応させた第2の一方の目用ホログラム像とを有し、
前記複数の第2のホログラム像は、前記第1の見る角度に対応させた第1の他方の目用ホログラム像と前記第2の見る角度に対応させた第2の他方の目用ホログラム像とを有し、
前記第1のホログラムは、前記第1の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第2の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域から構成され、
前記第2のホログラムは、前記第1の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第2の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域から構成され、
前記第1の見る角度からの観察において、前記第1の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第1の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域からの反射光が結像し、前記第2の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第2の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域からの反射光が結像せず、
前記第2の見る角度からの観察において、前記第2の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第2の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域からの反射光が結像し、前記第1の一方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域および前記第1の他方の目用ホログラム像を構成する複数の画素領域からの反射光が結像しないことを特徴とする請求項4に記載の識別媒体。
【請求項6】
前記第2の光学機能層は、カラーフィルタを備えていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の識別媒体
【請求項7】
前記カラーフィルタは、前記コレステリック液晶層が選択的に反射する光の中心波長の光を選択的に透過する特性を有していることを特徴とする請求項6に記載の識別媒体。
【請求項8】
前記カラーフィルタは、前記コレステリック液晶層が選択的に反射する光の中心波長と異なる波長の光を選択的に透過する特性を有していることを特徴とする請求項6に記載の識別媒体。
【請求項9】
前記円偏光フィルタ層により、左右の目の一方の目用のホログラム像と他方の目用のホログラム像との分離が行われることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項10】
前記コレステリック液晶層は、左右の目の一方の目で観察するための第1の旋回方向の円偏光を反射すると共に、前記第2の光学機能層で反射される前記左右の目の他方の目で観察するための前記第1の旋回方向と逆の旋回方向の第2の旋回方向の光を観察者側に透過することを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項11】
前記第1の光学機能層は、一方の旋回方向の円偏光を反射するコレステリック液晶層であり、
前記第2の光学機能層は、他方の旋回方向の円偏光を反射するコレステリック液晶層であることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項12】
前記第1の光学機能層は、一方の旋回方向の円偏光を反射する第1のコレステリック液晶層であり、
前記第2の光学機能層は、前記一方の旋回方向の円偏光を反射する第2のコレステリック液晶層と該第2のコレステリック液晶層の前記第1の光学機能層の側に配置されたλ/2板を備えることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項13】
前記第1の光学機能層は、前記第1のホログラムを備えた第1のコレステリック液晶層から構成され、
前記第2の光学機能層は、前記視認する側から、前記第1のコレステリック液晶層と同じ光学機能を有しホログラムを備えていない第2のコレステリック液晶層、前記第2のホログラムを備えた光反射層と配置された構成を有することを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の識別媒体の識別方法であって、
前記第1のホログラム像を前記第1の偏光特性を有する反射光を選択的に透過する第1の偏光フィルタを介して左右の目の一方で観察し、前記第2のホログラム像を前記第2の偏光特性を有する反射光を選択的に透過する第2の偏光フィルタを介して左右の目の他方で観察することを特徴とする識別媒体の識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−100098(P2011−100098A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126907(P2010−126907)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】