説明

識別情報付きケーブルとケーブル送電監視装置

【課題】ICタグを十分に大きな電力で駆動して、比較的遠くまで応答信号を送信できる識別情報付きケーブルとケーブル送電監視装置を提供する。
【解決手段】ケーブル10の被覆またはケーブルの付属品に固定されて所定の識別情報を記録したICタグ16と、このICタグ16に電気接続されて、ケーブル10の周囲に発生する電磁界による誘導電流を取得する電源アンテナ22と、この電源アンテナ22の取得した誘導電流を駆動電力として、内部回路を動作させる電源制御回路26とを備えている。ICタグ16は通信アンテナ30で問い合わせ信号を受信すると、その受信電力で起動して、所定の識別情報を発信する。電源アンテナ22がケーブル10と電磁結合していると、誘導電流により起動用の電力が取得できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの誘導電流により起動用の電力を取得できるICタグを備えた識別情報付きケーブルとケーブル送電監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグは、識別情報を記録して、所定のタイミングでその識別情報を発信する機能を持つ。このICタグは、従来、商品に付けられたバーコードに代わって、広く商品等の情報表示用として多用されている。
【特許文献1】特開2003−203527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ケーブルにも、ICタグを取り付けて、その識別情報を発信させることが可能である(特許文献1参照)。しかしながら、ICタグは自分自身では電源を持たない。呼びだし信号等のわずかな電波を受信して、その受信電力を使って応答信号を返信する。このため、応答信号の到達距離が短いという問題がある。しかも、ケーブルの金属被覆等によりその電波が吸収されると、ますます応答信号を受信し難くなる。
【0004】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、ICタグを十分に大きな電力で駆動して、比較的遠くまで応答信号を送信し、各種の用途に利用できる識別情報付きケーブルとケーブル送電監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
ケーブルの被覆またはケーブルの付属品に固定されて所定の識別情報を記録したICタグと、上記ICタグに電気接続されて、上記ケーブルの周囲に発生する電磁界による誘導電流を取得する電源アンテナと、上記電源アンテナの取得した誘導電流を駆動電力として、内部回路を動作させる電源制御回路とを備えたことを特徴とする識別情報付きケーブル。
【0006】
ケーブルの付属品はケーブルを固定するためのクランプやストッパ等を含んでいる。ICタグはアンテナで問い合わせ信号を受信すると、その受信電力で起動して、所定の識別情報を発信する。このアンテナがケーブルと電磁結合していると、誘導電流により起動用の電力が取得できる。起動タイミングは取得電力量と連動してもよいし、タイマ等でトリガしてもよい。また、例えば、コンデンサ等をチャージしておき、所定の呼びだし信号を受信したときに応答するとよい。ケーブルを固定するためのクランプやストッパ等にICタグを取り付けておいても同様の効果がある。この電力により、比較的遠くまで、ICタグに記録された情報を送信できる。
【0007】
〈構成2〉
構成1記載の識別情報付きケーブルにおいて、上記電源アンテナは、上記ケーブルの誘導電界中に配置された一対の極板を含むコンデンサからなることを特徴とする識別情報付きケーブル。
【0008】
電界中に1対の極板を配置すると、その極板間に誘導電圧が発生する。これにより、コンデンサにICタグ駆動用の電力を蓄積する。
【0009】
〈構成3〉
構成1記載の識別情報付きケーブルにおいて、上記電源アンテナは、上記ケーブルの誘導磁界と結合するループコイルからなることを特徴とする識別情報付きケーブル。
【0010】
ケーブル外周に漏洩する交番磁束とループコイルを結合させれば、誘導電流により所定の電力が取得できる。整流回路等を使用してパッテリにその電力を蓄積できる。
【0011】
〈構成4〉
ケーブルの被覆に固定され所定の識別情報を記録したICタグと、上記ICタグに電気接続されて、上記ケーブルの周囲に発生する電磁界により誘導電流を発生する電源アンテナとを備えた識別情報付きケーブルの、上記ICタグの送信する識別情報を受信する受信装置と、上記識別情報が受信できないとき、上記ケーブルの送電が停止したことを示す情報を生成して出力する情報送信装置とを備えたことを特徴とするケーブル送電監視装置。
【0012】
ICタグを駆動して、ケーブルからの情報を発信したり、ケーブルの活線状況を伝えたりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を実施例ごとに詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1(a)は実施例1の識別情報付きケーブルを示す横断面図、(b)は実施例1で使用するICタグを示す斜視図、(c)は同ICタグの具体例を示すブロック図である。
図1(a)に示すケーブル10は、3本のケーブル芯12の外周に被覆14を被覆したものである。この例では、電力ケーブルの断面図を示したが、制御ケーブルや通信ケーブル等電流を流すケーブルならば、任意のケーブルに対して本発明が適用できる。
【0015】
ケーブル10の被覆14の外側に、任意の数のICタグ16が取り付けられている。このICタグ16は、ケーブル10の長手方向に沿って適当な間隔で装着されているとよい。ICタグ16は、図1(b)に示すように、ベースフィルム18の上にICチップ20と電源アンテナ22とを搭載したものである。電源アンテナ22は、ケーブル10のケーブル芯12に流れる電流により発生する磁束24によって生じた誘導電流をICチップ20の駆動用電力に変えるものである。
【0016】
さらに、ICチップ20は、図1(c)に示すように、通信アンテナ30と送信機32と識別情報34と受信機36とを備える。電源アンテナ22は電源制御回路26を介して装置各部に電力を供給する。具体的には電源アンテナ22に流れる電流をダイオード等で整流し、コンデンサに蓄積する。
【0017】
図1(c)に示す識別情報34は、他の各ICタグを互いに区別できるような情報を含んでいる。受信機36が通信アンテナ30を通じて問い合わせ信号40を受信すると、送信機32はそのタイミングで識別情報34を通信アンテナ30を通じて送信する。通信アンテナ30から応答信号42が送信される。
【0018】
図2は、上記のようなICタグを取り付けたケーブルの具体例を示すもので、(a)は、任意のケーブル50の外側に、複数のICタグ51を所定間隔で装着した状態を示す図である。複数のICタグ51は、図1(b)、(c)で示したような送受信機能を持ち、さらにケーブル50の導体に流れる電流を電源アンテナ22で受信し、その電力で動作する。
【0019】
図2(b)は、電力ケーブルのような多心ケーブルに本発明を適用した例を示す図である。同図に示すように、多心ケーブル60は、導体61の外側に絶縁体62が被覆され、さらに、その外側に金属シース63とプラスチック防食層64が順に被覆されて構成されている。
【0020】
このような構成のケーブル60は、理論的には外部に電磁界が発生しないよう設計されている。しかしながら、製造上のばらつきや環境が原因で極めて微量であるが、外部に様々な磁束が漏れ出す。また、金属シース63にはケーブルの長手方向に沿ってシース電流が流れる。こうした電流による磁界も発生している。防食層64の外側に固定されたICタグ65は、この磁界の影響を受けて駆動電力を得る。
【0021】
図2(c)は多数のケーブルが同時に布設された場所の例を示す説明図である。同図に示すように、多数のケーブル70、71、72、73は、いずれもその外部に所定の間隔でICタグ75を取り付けている。各ICタグ75は、それぞれ各ケーブルを区別することができるような情報を発信している。
【0022】
各ケーブルに取り付けられたICタグ75は、それぞれそのケーブルに流れる電力によって動作し、隣接するケーブルの導体に流れる電流では、動作しないように設計されている。従って、例えば、このように多数のケーブルが並べて、あるいは束ねて布設されているときに、全てのケーブルからICタグ75を介して識別情報を受信することができる。
【0023】
ところが、何らかの事故によりいずれか1本のケーブルが破損したとする。この場合には、導体に電流が流れていないケーブルは、識別情報を発信しないから、例えば、どのケーブルが故障しているかを様々な測定器を使用することなく容易に判断することができる。
【0024】
図3は電源アンテナの構造の説明図である。
既に、図3(a)に示すように、電源アンテナ22は、ケーブルの周辺に発生する磁束24によって電力を得る。通信ケーブルも電力ケーブルも、また一般家庭用の配電ケーブルも必ず外部に微量な電磁界を漏らせている。どんなに厳密に遮蔽をしてもケーブルの被覆に接する部分では、必ず微小な電磁界を検出できる。この電磁界があれば、ICタグは十分強力に起動する。こうしたICタグの利点を利用して、本発明ではこの電力を利用する。
【0025】
電源アンテナ22は、ケーブルの誘導磁界と結合するループコイルからなるものでもよい。ケーブル外周に漏洩する交番磁束とループコイルを結合させれば、誘導電流により所定の電力を取得できる。整流回路等を使用してパッテリにその電力を蓄積することも可能である。
【0026】
また、ケーブルと地面との間には一定の電磁界が生じる。その電磁界を、図3(b)に示すようなコンデンサの1対の極板81と極板82で受ける。すなわち、このコンデンサを充電してリード線83を通じて電力を取得する。なお、図1(c)に示した電源制御回路26には、ダイオード84と電解コンデンサ85が設けられている。これによって電解コンデンサ85が充電される。その電力があれば、ICタグは十分に動作する。
【0027】
次に、本発明のケーブル送電監視装置について説明する。
このケーブル送電監視装置は、ケーブルの被覆に固定され所定の識別情報を記録したICタグ及びこのICタグに電気接続されて、ケーブルの周囲に発生する電磁界により誘導電流を発生するアンテナを備えた識別情報付きケーブルの、ICタグの送信する識別情報を受信する受信装置と、当該識別情報が受信できないとき、ケーブルの送電が停止したことを示す情報を生成して出力する情報送信装置とを備えたものである。このケーブル送電監視装置の具体例を、図4及び図5に基づいて説明する。
【0028】
図4は通電動作を停止しているケーブルを検出する検査装置の説明図で、(a)は検査装置100の全体構造を示す斜視図、(b)は同検査装置の具体例を示すブロック図である。
例えば、図2(b)に示すような多数のケーブル70〜73の中から動作を停止しているケーブルを検出するには、図4に示したような検査装置100を使用する。
【0029】
すなわち、この検査装置100は、図4(b)に示すように、送信部101と受信部102と問い合わせ信号生成部103と記憶装置104と通信アンテナ106を備える。記憶装置104には、測定データ105が記憶されている。この検査装置100は、例えば、携帯をして持ち歩き、ケーブルが布設された現場に行ってケーブルと通信を行う装置である。
【0030】
問い合わせ信号生成部103が問い合わせ信号を生成し、送信部101が問い合わせ信号を送信する。これが通信アンテナ106から発信されると、ケーブルに取り付けられた全てのICタグが一斉にあるいは適当な間隔を置いて応答信号を発信する。これを受信部102で受信する。なお、受信した測定データ105は、記憶装置104に記憶される。そして、測定データ105が蓄積されると、図5に示す解析部114で解析される。
【0031】
図5は、検査装置100の使用例を示すブロック図である。
図5において、検査装置100が収集した測定データ105(図4)は、通信アンテナ106を通じてコンピュータ110に送信される。コンピュータ110は、データ解析に使用される一般的なコンピュータである。
【0032】
コンピュータ110は、記憶装置112と解析部114とを備える。解析部114は、記憶装置112に記憶されたデータベース113に基づいて一定の解析処理を実行するコンピュータプログラムである。検査装置100から測定データ105が入力すると、これはデータベース113の中に書き込まれる。
【0033】
これを取り出すと同時に既に特定の場所に布設されたケーブルの識別コードを読み出す。図5に示す表示画面111には、解析結果115が表示されている。この解析結果115には、布設されているケーブルの識別情報、R1からR5とそのケーブルが動作しているかどうかを示す結果が表示されている。ケーブルが動作していれば、そのケーブルに貼り付けられたICタグからそのケーブルの識別情報が送信される。
【0034】
これを検査装置100が受信し、それをコンピュータ110に伝えると、そのケーブルが動作しているという結果を解析部114が出力する。これが解析結果115に含められる。もし、その場所に布設されているということがデータベース113で示されていても、該当する識別情報が受信されない場合には、そのケーブルは動作していない、ということがわかる。こうした方法によって、ケーブルの動作状態や障害発生情報を検出することも可能である。
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、何らかの形式で電流を流すケーブルの外被にICタグを取り付け、そのケーブルに流れた電流による微小な漏れ磁束や電磁波をアンテナで捉え、そこで取得した電気エネルギーをICタグの駆動源とする。これによってICタグは強力な電波を送信することができる。このため、応答信号を例えば、壁の裏側から受信し、あるいは床下や天井の中から受信することが可能になる。
【0036】
また、こうしてケーブルに流れる電流を電力にして動作するから、ケーブルに電流が流れなくなると、通常通りの送信機能を失う。この信号を受け入れて、同一の場所に布設されている多数のケーブルの中から、電流の流れていないケーブルを区別し、必要な情報を表示出力して、対応することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1の識別情報付きケーブルを示す図で、(a)は同ケーブルの横断面図、(b)は実施例1で使用するICタグを示す斜視図、(c)は同ICタグの具体例を示すブロック図である。
【図2】実施例1で使用するICタグを取り付けたケーブルの具体例を示す図で、(a)は、任意のケーブルの外側に、複数のICタグを所定間隔で装着した状態を示す説明図、(b)は、電力ケーブルのような多心ケーブルに本発明を適用した例を示す説明図、(c)は多数のケーブルが同時に布設された場所の例を示す説明図である。
【図3】実施例1で使用する電源アンテナを示す図で、(a)は電源アンテナの概略を示す説明図、(b)は電源アンテナに設けられたコンデンサを示す説明図である。
【図4】本発明に係わる通電動作を停止しているケーブルを検出する検査装置を示す図で、(a)は検査装置の全体構造を示す斜視図、(b)は同検査装置の具体例を示すブロック図である。
【図5】同検査装置の使用例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0038】
10 ケーブル
12 ケーブル芯
14 被覆
16 ICタグ
18 ベースフィルム
20 ICチップ
22 電源アンテナ
24 磁束
26 電源制御回路
30 通信アンテナ
32 送信機
34 識別情報
36 受信機
40 問い合わせ信号
42 応答信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの被覆またはケーブルの付属品に固定されて所定の識別情報を記録したICタグと、
前記ICタグに電気接続されて、前記ケーブルの周囲に発生する電磁界による誘導電流を取得する電源アンテナと、
前記電源アンテナの取得した誘導電流を駆動電力として、内部回路を動作させる電源制御回路とを備えたことを特徴とする識別情報付きケーブル。
【請求項2】
請求項1記載の識別情報付きケーブルにおいて、
前記電源アンテナは、前記ケーブルの誘導電界中に配置された一対の極板を含むコンデンサからなることを特徴とする識別情報付きケーブル。
【請求項3】
請求項1記載の識別情報付きケーブルにおいて、
前記電源アンテナは、前記ケーブルの誘導磁界と結合するループコイルからなることを特徴とする識別情報付きケーブル。
【請求項4】
ケーブルの被覆に固定され所定の識別情報を記録したICタグと、前記ICタグに電気接続されて、前記ケーブルの周囲に発生する電磁界により誘導電流を発生する電源アンテナとを備えた識別情報付きケーブルの、前記ICタグの送信する識別情報を受信する受信装置と、
前記識別情報が受信できないとき、前記ケーブルの送電が停止したことを示す情報を生成して出力する情報送信装置とを備えたことを特徴とするケーブル送電監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−4683(P2006−4683A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177727(P2004−177727)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】