説明

警告装置

【課題】運転者の前方不注意があった場合でも、車両の衝突事故を未然に回避できる警告装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載される警告装置であって、受信部と、警告部と、前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号を前記受信部が前記前方車両から受信すると、前記警告部に警告させる制御部と、を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される警告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衝突事故を防止するため、ブレーキが踏まれると点灯する停車灯が車両の後部に備えられている。これにより、運転者は、前方車両の停車灯が点灯したことを目視で確認することで、前方車両が減速していることが認識でき、ブレーキを踏むなどして前方車両と自己の車両が衝突することを回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−135205号公報
【特許文献2】特開平11−3473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、運転者が脇見運転や居眠り運転などをしている場合、前方車両の停車灯が点灯していることに気づかず、衝突事故が発生するおそれがあった。
【0005】
なお、特許文献1には、前方の渋滞状況や制限速度などの情報を示す変調信号を信号灯から車両へ送信する信号機が開示されている。また、特許文献2には、信号灯の色が切り替わるまでの残り時間などの情報を示す変調信号を信号灯から車両へ送信する信号機が開示されている。しかし、いずれの信号機も前方車両の情報を後方車両へ送信することは困難であるため、前方車両が減速していることは停車灯により確認するしかない。
【0006】
上記問題点を鑑み、本発明は、運転者の前方不注意があった場合でも、車両の衝突事故を未然に回避できる警告装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、車両に搭載される警告装置であって、受信部と、警告部と、前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号を前記受信部が前記前方車両から受信すると、前記警告部に警告させる制御部と、を備えた構成とする。
【0008】
このような構成によれば、前方車両のブレーキが踏まれ前方車両が減速したときに、運転者の前方不注意があった場合でも、警告により運転者はすぐさまブレーキを踏むことができ、前方車両との衝突を未然に回避することができる。
【0009】
また、上記構成において、前記前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号を前記受信部が前記前方車両から受信すると、前記制御部は、自車のブレーキが踏まれたか否かを判定し、踏まれていなければ前記警告部に警告させ、踏まれていれば前記警告部に警告させない構成としてもよい。
【0010】
このような構成によれば、自車のブレーキが踏まれていなければ衝突の危険性が高いので警告し、踏まれていれば衝突の危険性が低いので警告させないようにできる。
【0011】
また、上記いずれかの構成において、前記前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号を前記受信部が前記前方車両から受信すると、前記制御部は、前記前方車両のブレーキが継続して踏まれたか否かを判定し、踏まれていれば前記警告部に警告させ、踏まれていなければ前記警告部に警告させない構成としてもよい。
【0012】
このような構成によれば、前方車両のブレーキが継続して踏まれていれば衝突の危険性が高いので警告させ、踏まれていなければ衝突の危険性が低いので警告させないようにできる。
【0013】
また、上記いずれかの構成において、前記前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号を前記受信部が前記前方車両から受信すると、前記制御部は、前記前方車両のブレーキが2回連続して踏まれたか否かを判定し、踏まれていれば前記警告部に警告させ、踏まれていなければ前記警告部に警告させない構成としてもよい。
【0014】
このような構成によれば、前方車両のブレーキが2回連続して踏まれていれば衝突の危険性が高いので警告させ、踏まれていなければ衝突の危険性が低いので警告させないようにできる。
【0015】
また、上記いずれかの構成において、前記前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号を前記受信部が前記前方車両から受信すると、前記制御部は、距離センサの測定結果に基づき前記前方車両が自車に接近しているか否かを判定し、接近していれば前記警告部に警告させ、接近していなければ前記警告部に警告させない構成としてもよい。
【0016】
このような構成によれば、前方車両が接近していれば衝突の危険性が高いので警告させ、前方車両が接近していなければ衝突の危険性が低いので警告させないようにできる。
【0017】
また、上記いずれかの構成において、前記制御部は、自車のブレーキが踏まれたと判定するまで前記警告部に警告させ続け、自車のブレーキが踏まれたと判定すると前記警告部に警告させることを停止する構成としてもよい。
【0018】
このような構成によれば、ブレーキを踏まない間は警告され続けるので運転者にブレーキを踏むことを促すことができ、運転者がブレーキを踏めば警告を停止できる。
【0019】
また、上記いずれかの構成において、前記前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号は、前記前方車両の後部に設けられた複数の赤色LEDの点滅による光信号である構成としてもよい。
【0020】
このような構成によれば、前方車両に設けられた赤色LEDが従来の停車灯の役割も果たすこととなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の警告装置によれば、運転者の前方不注意があった場合でも、車両の衝突事故を未然に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る警告装置の構成図である。
【図2】本発明の警告装置を搭載した車両の一例の概略背面図および概略前面図である。
【図3】本発明の警告装置が有する車両制御部が行う警告制御に関するフローチャートである。
【図4】本発明の警告装置が有する車両制御部が行う警告制御の変形例に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1に、本発明の一実施形態に係る警告装置100の構成を示す。警告装置100は、車両に搭載され、ブレーキが踏まれた旨の情報をLED(発光ダイオード)の発光により他の車両へ送信したり、このように送信された情報を他の車両から受信したりすることができる。
【0025】
図1に示すように、警告装置100は、ブレーキセンサ1と、車両制御部2と、送信制御部3と、復調部4と、受信部5と、音声発生部6とを備え、さらに、LEDL1〜Lnと、抵抗R1〜Rnと、トランジスタTr1〜Trnとを備えている。また、車両制御部2と、送信制御部3と、復調部4とは、CAN(Controller Area Network)7により接続される。
【0026】
ブレーキセンサ1は、ブレーキが踏まれたことを検出するセンサであり、ブレーキが踏まれている間、検出信号を車両制御部2に出力する。
【0027】
車両制御部2は、車両の各部を統括的に制御し、ブレーキセンサ1から検出信号が入力される間、ブレーキ信号を送信制御部3に出力する。
【0028】
送信制御部3は、車両制御部2からブレーキ信号が入力されると、まず、データ送信宣言であるリーダ部のパルス信号をトランジスタTr1〜Trnに送り、その後、データコードを変調したパルス信号を繰り返しトランジスタTr1〜Trnに送る。そして、車両制御部2からブレーキ信号が入力されなくなると、送信制御部3は、データ送信終了を示すストップビットを変調したパルス信号をトランジスタTr1〜Trnに送る。
【0029】
LEDL1〜Lnは、赤色LEDであり、アノードが電源Vddに接続され、カソードが抵抗R1〜Rnの一端に接続される。抵抗R1〜Rnの他端は、トランジスタTr1〜Trnのコレクタに接続される。そして、トランジスタTr1〜Trnのベースが送信制御部3に接続され、エミッタがグランドに接続される。送信制御部3から送られるパルス信号によりトランジスタTr1〜Trnがオンオフ制御され、LEDL1〜Lnが点灯・消灯制御されることになる。
【0030】
ここで、図2(a)は、警告装置100が搭載された車両の一例の概略背面図であるが、このように、車両の後部にLEDL1〜Lnが並べて配置され、LEDL1〜Lnが点灯・消灯制御されることでデータコード等を光信号として後方車両へ送信することができる。また、LEDL1〜Lnは、赤色LEDであるので、従来の停車灯としての機能も果たすことになる。なお、LEDL1〜Lnの点灯・消灯によるちらつきは、周波数が高いため、人間の目には分からない。また、LEDL1〜Lnの発光する光に指向性を持たせることで、直後の車両のみへ情報を送信することができる(つまり、後方車両は直前の車両のみから情報を受信することができる)。
【0031】
また、受信部5は、フォトダイオードを有しており、電源Vdd、グランド、復調部4に接続される。ここで、図2(b)は、警告装置100が搭載された車両の一例の概略前面図であるが、このように、車両の先端部に受信部5が設けられ、受信部5は、前方車両に搭載された警告装置100のLEDL1〜Lnが出力する光信号を受信し、パルス信号に変換して復調部4へ出力する。
【0032】
復調部4は、受信部5からリーダ部を受信後、受信部5から受信するパルス信号のデータコードへの復調を開始し、最後に受信部5から受信するパルス信号をストップビットに復調する。復調部4は、復調されたデータコードおよびストップビットをCAN7を介して車両制御部2へ送る。車両制御部2は、復調部4から送られるデータコードおよびストップビットに基づき後述する警告制御を行う。
【0033】
また、音声発生部6は、スピーカ等から構成され、車両制御部2から送られる音声信号に基づき音声を発生する。
【0034】
次に、車両制御部2による警告制御について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
前方車両に搭載された警告装置100のLEDが出力する光信号を受信部5が受信し、リーダ部の後最初に送られるデータコードが復調部4で復調されて車両制御部2へ送られると、図3のフローチャートが開始される。
【0036】
まず、ステップS1で、車両制御部2は、ブレーキセンサ1からの検出信号の有無を確認し、検出信号があれば、自車のブレーキが踏まれたと判定し(ステップS1のY)、そのまま処理は終了する(エンド)。一方、検出信号が無ければ、自車のブレーキが踏まれていないと判定し(ステップS1のN)、ステップ2に進む。
【0037】
ステップS2で、車両制御部2は、前方車両のブレーキが継続して踏まれたか否かを判定する。具体的には、車両制御部2は、最初のデータコードを復調部4から受信してから第1の所定時間(例えば、3秒)経過するまで継続してデータコードを復調部4から受信すれば、前方車両のブレーキが継続して踏まれたと判定し、最初のデータコードを復調部4から受信してから第1の所定時間経過するまでに復調部4からストップビットを受信すれば、前方車両のブレーキは継続して踏まれていないと判定する。
【0038】
前方車両のブレーキが継続して踏まれたと判定した場合は(ステップS2のY)、後述するステップS4に進み、前方車両のブレーキが継続して踏まれていないと判定した場合は(ステップS2のN)、ステップS3に進む。
【0039】
ステップS3で、車両制御部2は、前方車両のブレーキが2回連続して踏まれたか否かを判定する。具体的には、車両制御部2は、ストップビットを復調部4から受信してから第2の所定時間(例えば、1秒)経過するまでに復調部4からデータコードを受信すれば、前方車両のブレーキが2回連続して踏まれたと判定し、ストップビットを復調部4から受信してから第2の所定時間経過するまでに復調部4からデータコードを受信しなければ、前方車両のブレーキは2回連続して踏まれていないと判定する。
【0040】
前方車両のブレーキが2回連続して踏まれていないと判定した場合は(ステップS3のN)、そのまま処理は終了する(エンド)。一方、前方車両のブレーキが2回連続して踏まれたと判定した場合は(ステップS3のY)、ステップS4に進む。
【0041】
ステップS4で、車両制御部2は、ブレーキセンサ1からの検出信号の有無を確認し、検出信号があれば、自車のブレーキが踏まれたと判定し(ステップS4のY)、そのまま処理は終了する(エンド)。一方、検出信号が無ければ、自車のブレーキが踏まれていないと判定し(ステップS4のN)、ステップ5に進み、車両制御部2は、所定の音声信号を音声発生部6へ出力し、音声発生部6が警告用の音声を発生する。
【0042】
ここで、警告用の音声としては、ブザー音でもよいし、「前方車両に接近しています。ブレーキを踏んでください。」などの人間の音声としてもよい。
【0043】
ステップS5の後、ステップS6で、車両制御部2は、ブレーキセンサ1からの検出信号の有無を確認し、検出信号が無ければ、自車のブレーキが踏まれていないと判定し(ステップS6のN)、ステップS7に進み、車両制御部2は、再び所定の音声信号を音声発生部6に出力し、警告用の音声がさらに発生される。
【0044】
そして、ステップS6で、検出信号があり、自車のブレーキが踏まれたと判定すれば(ステップS6のY)、ステップS8に進み、車両制御部2は、所定の音声信号を音声発生部6に出力するのを停止し、処理は終了となる(エンド)。
【0045】
以上によれば、前方車両のブレーキが継続して踏まれたか、2回連続して踏まれたかして前方車両が大きく減速しているが、後方車両の運転者が脇見や居眠りなどをして前方車両に気づいておらずブレーキを踏んでいないような場合に、警告用の音声を発生させるので、運転者はすぐさまブレーキを踏んで前方車両との衝突を未然に回避することが可能となる。
【0046】
また、図4に、車両制御部2が行う警告制御の変形例に関するフローチャートを示す。本変形例では、上述した図3の処理において、ステップS3とステップS4の間にステップS9を挿入している。
【0047】
ステップS9では、車両制御部2は、車両前方に設けられた距離センサ(図1で不図示)により測定された自車両と前方車両の間の距離が所定距離以下であるか否かを判定し、もし所定距離以下であれば、前方車両が接近していると判定し(ステップS9のY)、ステップS4に進む。一方、所定距離以下でなければ、前方車両は接近していないと判定し(ステップS9のN)、そのまま処理は終了となる(エンド)。
【0048】
これにより、前方車両のブレーキが継続して踏まれたか、2回連続して踏まれたかした場合に、さらに前方車両が接近している場合は衝突の危険性が高いとして警告用の音声を発生するようにし、接近していない場合は衝突の危険性が低いとして警告しないようにしている。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々の変更を加えることが可能である。
【0050】
例えば、上述した図3の処理において、ステップS3を省略し、前方車両のブレーキが継続して踏まれたと判定した場合は(ステップS2のY)、ステップS4に進み、前方車両のブレーキが継続して踏まれていないと判定した場合は(ステップS2のN)、そのまま処理を終了するようにしてもよい。または、図3の処理において、ステップS2を省略し、ステップS1で自車のブレーキが踏まれていないと判定した場合に(ステップS1のN)、ステップS3に進み、前方車両のブレーキが2回連続して踏まれたか否かを判定してもよい。
【0051】
また、図3および図4の処理におけるステップS1は省略するようにしてもよい。
【0052】
また、警告については音声によるものに限らず、例えば、表示部に警告表示をしてもよいし、車内ランプを点滅させて警告するようにしてもよい。特に、車載用ナビゲーション装置の表示部に警告表示するようにすれば、運転者が表示部に表示されたナビゲーション画面を見ていて前方不注意があった場合でも、表示部に警告表示されるので、運転者はすぐさまブレーキを踏むことができる。
【符号の説明】
【0053】
100 警告装置
1 ブレーキセンサ
2 車両制御部
3 送信制御部
4 復調部
5 受信部
6 音声発生部
7 CAN(Controller Area Network)
L1〜Ln LED
R1〜Rn 抵抗
Tr1〜Trn トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される警告装置であって、
受信部と、警告部と、
前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号を前記受信部が前記前方車両から受信すると、前記警告部に警告させる制御部と、を備えたことを特徴とする警告装置。
【請求項2】
前記前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号を前記受信部が前記前方車両から受信すると、前記制御部は、自車のブレーキが踏まれたか否かを判定し、踏まれていなければ前記警告部に警告させ、踏まれていれば前記警告部に警告させないことを特徴とする請求項1に記載の警告装置。
【請求項3】
前記前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号を前記受信部が前記前方車両から受信すると、前記制御部は、前記前方車両のブレーキが継続して踏まれたか否かを判定し、踏まれていれば前記警告部に警告させ、踏まれていなければ前記警告部に警告させないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の警告装置。
【請求項4】
前記前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号を前記受信部が前記前方車両から受信すると、前記制御部は、前記前方車両のブレーキが2回連続して踏まれたか否かを判定し、踏まれていれば前記警告部に警告させ、踏まれていなければ前記警告部に警告させないことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の警告装置。
【請求項5】
前記前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号を前記受信部が前記前方車両から受信すると、前記制御部は、距離センサの測定結果に基づき前記前方車両が自車に接近しているか否かを判定し、接近していれば前記警告部に警告させ、接近していなければ前記警告部に警告させないことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の警告装置。
【請求項6】
前記制御部は、自車のブレーキが踏まれたと判定するまで前記警告部に警告させ続け、自車のブレーキが踏まれたと判定すると前記警告部に警告させることを停止することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の警告装置。
【請求項7】
前記前方車両のブレーキが踏まれた旨を示す信号は、前記前方車両の後部に設けられた複数の赤色LEDの点滅による光信号であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の警告装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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