説明

警報出力システム

【課題】 間欠的、断続的な故障に対して、警報を抑制する。
【解決手段】 機器の故障情報を取り込み、警報を出力する故障表示盤2および遠隔監視制御装置3と、通信網11を介して遠隔監視制御装置3から警報を受信する集中監視制御装置4と、故障表示盤2に設けられ、機器から所定の故障情報を取り込んだ後に、所定時間内に同一の所定の故障情報を取り込んだ場合には、警報を出力しないように制御する出力制御部23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機器が故障した場合に警報を出力する警報出力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無人の電気所などにおいて、機器の故障が発生した場合、各機器から故障表示盤や所内盤に対して故障情報が入力され、故障表示盤や所内盤から遠隔監視制御装置(TLC)に故障情報が取り込まれる。そして、制御所などの有人の監視制御箇所に設置された集中監視制御装置に対して、遠隔監視制御装置から通信回線を介して、故障情報が送信される。この故障情報を受けて集中監視制御装置は警報を表示、出力し、監視制御箇所の運転員は、故障内容に基づいて、電気系統の切り替えや、維持担当箇所への故障復旧の依頼などの故障対応を行う。
【0003】
このような、電気所に設けられる機器の故障を把握する技術として、保護継電装置に自己の故障を認識する自己診断部と、その診断結果を出力する出力部とを備え、故障の程度に応じて警報を出力するタイミングを変える保護継電装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−350350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、監視制御箇所の運転員は、24時間体制で集中監視制御装置により、複数の電気所などの運転業務(監視および制御)を行っている。一方、機器の故障は、故障箇所や故障内容により、重故障や軽故障などに分けられる。ここで、重故障とは、故障発生後直ちに対応が必要な故障であり、軽故障とは、故障発生後翌営業日までに対応すればよい故障である。
【0006】
しかしながら、軽故障であっても、間欠的、断続的に発生、復旧を繰り返す場合、監視制御箇所で警報表示が繰り返し発生するため、運転員は警報表示のたびに、その停止などをしなければならず、運転業務に支障を与えるおそれがある。このため、休日や夜間であっても、電気所に出動して警報出力をロックせざるを得ない場合があった。また、警報出力をロックすると、その後に発生した故障を監視制御箇所で認識できない、という問題があった。また、特許文献1の技術では、警報の出力タイミングを変えることは可能であるが、間欠的、断続的に発生、復旧を繰り返す故障に対して、警報を抑制することはできない。
【0007】
そこで本発明は、間欠的、断続的な故障に対して、警報を抑制することが可能な警報出力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、機器の故障情報を取り込み、警報を出力する出力手段と、通信網を介して前記出力手段から警報を受信する監視手段と、前記出力手段に設けられ、前記機器から所定の故障情報を取り込んだ後に、所定時間内に前記所定の故障情報を取り込んだ場合には、前記警報を出力しないように制御する出力制御手段と、を備えることを特徴とする警報出力システムである。
【0009】
この発明によれば、機器の故障情報が出力手段で取り込まれると、出力手段から警報が出力され監視手段に受信される。続いて、所定時間内に再度所定の故障情報が出力手段に取り込まれると、出力制御手段によって出力手段から警報が出力されないように制御され、監視手段には警報が受信されない。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の警報出力システムにおいて、前記出力手段に、前記機器から取り込んだ故障情報を記憶する記憶手段を備える、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、機器の故障情報を取り込み出力する出力手段と、通信網を介して前記出力手段から故障情報を受信し、警報を出力する監視手段と、前記監視手段に設けられ、前記出力手段から所定の故障情報を受信した後に、所定時間内に前記所定の故障情報を受信した場合には、前記警報を出力しないように制御する出力制御手段と、を備えることを特徴とする警報出力システムである。
【0012】
この発明によれば、機器の故障情報が出力手段で取り込まれると、故障情報が出力手段から監視手段に送信され、監視手段で警報が出力される。続いて、所定時間内に再度所定の故障情報が監視手段で受信されると、出力制御手段によって監視手段から警報が出力されないように制御される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の警報出力システムにおいて、前記監視手段に、前記出力手段から受信した故障情報を記憶する記憶手段を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および3に記載の発明によれば、所定の故障情報(例えば、軽故障)に対しては、故障が発生して警報が一度出力された後、所定時間内に同一の故障が発生した場合には、警報は出力されず、間欠的、断続的に発生、復旧を繰り返す故障などに対して、警報が抑制される。このため、警報の停止作業や故障内容の確認作業が軽減され、運転員は電気所などの運転業務に専念することが可能となり、しかも、休日や夜間などに電気所に出動する必要がなくなり、運転員の負担が著しく軽減される。
【0015】
さらに、請求項1に記載の発明によれば、所定の故障が発生する度に、大量の警報、故障情報が監視手段に送信されることがないため、監視手段の負荷を低減することが可能となる。また、所定の故障情報以外、例えば重故障の場合には、発生の都度警報が出力されるため、適正な対応が可能となる。
【0016】
請求項2および4に記載の発明によれば、所定時間内に同一の故障が発生して、警報が出力されない場合であっても、故障情報は記憶手段に記憶される。このため、記憶手段に蓄積された故障情報に基づいて、故障の経緯や原因などを解析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る警報出力システムの概略構成図である。
【図2】図1の警報出力システムの警報出力の処理を示すフローチャートである。
【図3】図1の警報出力システムの故障情報入力および警報出力のタイムチャート例である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る警報出力システムの概略構成図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る警報出力システムの故障情報入力および警報出力のタイムチャート例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1ないし図3は、本発明の実施の形態1を示している。図1は、本発明の実施の形態に係る警報出力システム1の概略構成図を示している。警報出力システム1は、無人の電気所内の機器に故障が発生した場合に、有人の監視制御箇所(制御所)に警報を発生させるシステムであり、主として、電気所に設置された故障表示盤(30F)2および遠隔監視制御装置(TLC)3と、制御所に設置された集中監視制御装置(監視手段)4とから構成されている。また、遠隔監視制御装置3と集中監視制御装置4とは、通信網11を介して通信可能に接続されている。
【0020】
故障表示盤2は、各機器と接続され、各機器からの故障情報を取り込んで警報を出力する装置であり、メモリ(記憶手段)21と、警報出力部22と、出力制御部(出力制御手段)23とを備えている。
【0021】
メモリ21は、各機器から取り込んだ故障情報を記憶する記憶媒体であり、すべて故障情報が記憶され、外部から読み取り可能となっている。警報出力部22は、ランプの点灯などにより警報を出力するとともに、警報(故障情報)を遠隔監視制御装置3に伝送するものであり、出力制御部23によって制御されるようになっている。すなわち、出力制御部23は、機器から所定の故障情報を取り込んだ後に、所定時間内に同一の所定の故障情報を取り込んだ場合には、警報出力部22から遠隔監視制御装置3に警報を伝送しないように制御する。
【0022】
ここで、この実施の形態では、故障発生後翌営業日までに対応すればよい軽故障に該当する故障情報を、所定の故障情報とし、軽故障が所定時間内に複数回発生した場合には、最初に故障発生時にのみ警報を伝送し、その後は警報を伝送しない。一方、所定の故障情報以外、例えば重故障の場合には、発生の都度警報を伝送するものである。具体的な判断、処理については、後述する。また、「所定時間」は、故障箇所、故障内容などの故障情報や、電気所、制御所の規模、運転状態などに基づいて設定され、例えば、数秒から数十分程度に設定される。
【0023】
遠隔監視制御装置3は、故障表示盤2(警報出力部22)から警報が伝送されると、その警報、故障情報を、通信網11を介して集中監視制御装置4に送信、出力するものである。このような故障表示盤2と遠隔監視制御装置3とによって、出力手段が構成されている。
【0024】
集中監視制御装置4は、遠隔監視制御装置3から警報を受信し、警報を出力する装置であり、具体的には、警報出力として、表示盤への警報表示、警報ベルの鳴動および警報内容の印刷を行う。このような集中監視制御装置4に対して、複数の電気所の遠隔監視制御装置3が接続され、複数の電気所からの警報、故障情報が、ひとつの制御所に送信され、警報が出力されるようになっている。
【0025】
次に、このような構成の警報出力システム1の作用などについて説明する。
【0026】
まず、図2に示すように、機器の故障が発生すると、その故障情報が故障表示盤2に取り込まれ(ステップS1)、メモリ21に記憶される(ステップS2)。次に、出力制御部23によって、取り込んだ故障情報が所定の故障情報か否か、つまり故障が軽故障か否かが判断され(ステップS3)、軽故障でない場合、つまり重故障などの場合には、ステップS5、S6に進み、後述するようにして、制御所で警報が出力される。
【0027】
一方、軽故障の場合には、所定時間内の同一の故障情報か否か、つまり所定時間内に再度発生した同一の軽故障か否かが判断される(ステップS4)。そして、同一の軽故障の再発生の場合(ステップS4で「Y」の場合)には、処理が終了され、制御所で警報は出力されない。一方、同一の軽故障の再発生でない場合(ステップS4で「N」の場合)には、上記のようにして、警報出力部22から遠隔監視制御装置3に警報、故障情報が伝送され、遠隔監視制御装置3から集中監視制御装置4に警報、故障情報が送信されて(ステップS5)、制御所の集中監視制御装置4によって警報が出力される(ステップS6)。
【0028】
このような処理により、例えば図3に示すように、軽故障に該当する故障情報Aが取り込まれると、制御所において故障情報Aに対する警報CAが出力される。その後、故障情報Aが取り込まれてから30分以内に、故障情報Aと同一の故障情報B〜Eが取り込まれたとしても、制御所において警報は出力されない。また、30分経過後に、故障情報Aと同一の故障情報Fが取り込まれた場合には、制御所において故障情報Fに対する警報CFが出力される。つまり、同一の軽故障が間欠的、断続的に発生し続けた場合には、30分以上間隔をおいて、制御所で警報が出力される。一方、軽故障以外の重故障などが発生した場合には、故障情報を取り込んだ都度(故障の発生都度)、制御所において警報が出力されるものである。
【0029】
以上のように、この警報出力システム1によれば、軽故障が発生してから所定時間内においては、最初の故障発生時にのみ制御所で警報が出力される。このため、警報の停止作業や故障内容の確認作業が軽減され、運転員は電気所などの運転業務に専念することが可能となり、しかも、休日や夜間などに電気所に出動する必要がなくなり、運転員の負担が著しく軽減される。また、所定時間後に再度同一の軽故障が発生した場合には、再度制御所で警報が出力されるため、運転員に対して注意を喚起することができる。
【0030】
一方、軽故障以外の重故障などが発生した場合には、発生の都度警報が出力されるため、運転員による適正かつ迅速な対応が可能となる。さらに、所定時間内に軽故障が複数回発生した場合でも、発生の度に、大量の警報、故障情報が遠隔監視制御装置3や集中監視制御装置4に伝送、送信されることがないため、遠隔監視制御装置3や集中監視制御装置4の負荷を低減することが可能となる。
【0031】
また、所定時間内に同一の軽故障が発生して、警報が出力されない場合であっても、故障情報はメモリ21に記憶されるため、メモリ21に蓄積された故障情報に基づいて、故障の経緯や原因などを解析することが可能となる。
【0032】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2を示している。実施の形態2が実施の形態1と異なる点は、メモリ21と出力制御部23の配設位置であり、その他の部分は実施の形態1に準じるため、準じる部分については実施の形態1と同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。後述する他の実施の形態も同様とする。
【0033】
この実施の形態に係る警報出力システム10では、メモリ21と出力制御部23とが集中監視制御装置4に配設され、故障表示盤2には、メモリ21、警報出力部22および出力制御部23が設けられていない。そして、故障が発生する度に、故障表示盤2からの故障情報が、遠隔監視制御装置3から集中監視制御装置4に送信され、メモリ21に故障情報が記憶されるとともに、実施の形態1と同様にして、警報が出力、制御される。すなわち、ある軽故障が始めて発生した場合、制御所の集中監視制御装置4で警報が出力される。このとき、警報出力として、表示盤への警報表示、警報ベルの鳴動および警報内容の印刷が行われる。その後、軽故障が発生してから所定時間内に同一の軽故障が発生しても、制御所の集中監視制御装置4からは、警報が出力されない。ただし、表示盤への警報表示は、継続される。また、所定時間経過後に、同一の軽故障が発生した場合には、再び集中監視制御装置4で警報が出力される。一方、軽故障以外の重故障などが発生した場合には、故障の発生都度、集中監視制御装置4で警報が出力されるものである。
【0034】
このように、この実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、警報出力が抑制、制御されるため、運転員は電気所などの運転業務に専念することが可能となり、また、運転員の負担を著しく軽減することが可能となる。さらに、ひとつの集中監視制御装置4にメモリ21や出力制御部23を備えればよいため、各電気所の故障表示盤2にメモリ21や出力制御部23を備える場合に比べて、設備費、作業費などを軽減することができる。しかも、運転員がいる制御所の集中監視制御装置4にメモリ21や出力制御部23を備えるため、メモリ21からの故障情報の読み出しや、出力制御部23のプログラム変更などを、容易かつ迅速に行うことが可能となる。
【0035】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3を示している。実施の形態3が実施の形態1と異なる点は、警報出力の維持と停止タイミングである。
【0036】
この実施の形態では、例えば軽故障に該当する故障情報Aが故障表示盤2に取り込まれると、制御所の集中監視制御装置4において故障情報Aに対する警報CAを出力する。続いて、故障情報Aが取り込まれてから所定時間内(例えば30分以内)に、故障情報Aと同一の故障情報B〜Eが取り込まれると、警報CAを連続出力する。そして、最後の故障情報Eが取り込まれてから所定時間内(例えば30分以内)に、故障情報A〜Eと同一の故障情報が取り込まれない場合には、警報CAをオフする。このように、同一の軽故障が所定時間内に複数回発生する場合には、警報を連続・継続して出力し、警報の連続出力後で、最後の受信から所定時間以内に同一の軽故障が発生しない場合に、警報出力をオフするものである。
【0037】
このように、この実施の形態によれば、軽故障が複数回発生した場合、警報が所定時間連続して出力されるため、運転員の注意を喚起、継続することが可能となる。しかも、所定時間後、同一の軽故障が発生しないと、警報出力がオフされるため、警報出力を停止する作業回数が減少し、実施の形態1と同様に、運転員は電気所などの運転業務に専念することが可能となり、また、運転員の負担を著しく軽減することが可能となる。
【0038】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、実施の形態1では、故障表示盤2に警報出力部22や出力制御部23を設けているが、遠隔監視制御装置3に警報出力部22や出力制御部23を設けてもよい。また、故障表示盤2と遠隔監視制御装置3とが一体であってもよく、故障表示盤2に代わって所内盤を備えたシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1、10 警報出力システム
2 故障表示盤(出力手段)
21 メモリ(記憶手段)
22 警報出力部
23 出力制御部(出力制御手段)
3 遠隔監視制御装置(出力手段)
4 集中監視制御装置(監視手段)
11 通信網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の故障情報を取り込み、警報を出力する出力手段と、
通信網を介して前記出力手段から警報を受信する監視手段と、
前記出力手段に設けられ、前記機器から所定の故障情報を取り込んだ後に、所定時間内に前記所定の故障情報を取り込んだ場合には、前記警報を出力しないように制御する出力制御手段と、
を備えることを特徴とする警報出力システム。
【請求項2】
前記出力手段に、前記機器から取り込んだ故障情報を記憶する記憶手段を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の警報出力システム。
【請求項3】
機器の故障情報を取り込み出力する出力手段と、
通信網を介して前記出力手段から故障情報を受信し、警報を出力する監視手段と、
前記監視手段に設けられ、前記出力手段から所定の故障情報を受信した後に、所定時間内に前記所定の故障情報を受信した場合には、前記警報を出力しないように制御する出力制御手段と、
を備えることを特徴とする警報出力システム。
【請求項4】
前記監視手段に、前記出力手段から受信した故障情報を記憶する記憶手段を備える、ことを特徴とする請求項3に記載の警報出力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−253358(P2011−253358A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126863(P2010−126863)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】