警報装置
【課題】車室内の設置スペースを大きく占有することなく、乗員の脇見を有効に矯正することができる警報装置を提供する。
【解決手段】運転者mの視線方向を検知する視線検知装置16を設ける。光源の光を所定方向に照射する投光ユニット17を設ける。投光ユニット17は、光の照射方向を調整するための機構を有する。投光ユニット17の光の照射方向は制御装置18によって制御する。制御装置18は、視線検知装置16の検知結果に基づき、運転者mの視線方向が車両前方から所定角度以上ずれたと判定したときに、運転者mの視線方向よりも前方寄りの視線方向近傍位置に光を照射する。
【解決手段】運転者mの視線方向を検知する視線検知装置16を設ける。光源の光を所定方向に照射する投光ユニット17を設ける。投光ユニット17は、光の照射方向を調整するための機構を有する。投光ユニット17の光の照射方向は制御装置18によって制御する。制御装置18は、視線検知装置16の検知結果に基づき、運転者mの視線方向が車両前方から所定角度以上ずれたと判定したときに、運転者mの視線方向よりも前方寄りの視線方向近傍位置に光を照射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転者に光によって注意を喚起させる警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
他車両の接近等の警報情報を光によって運転者に知らせる警報装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の警報装置は、右側指示用LED、中央指示用LED、左側指示用LEDの三種類のLEDを備え、他車両の接近方向に応じてこれらのいずれかのLEDを点灯させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−9320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来の警報装置は、運転者に注意を喚起させる方向毎に専用のLEDを用意しなければならないため、設置スペースを大きく占有することになり、車室内におけるレイアウトの自由度が低くなることが懸念されている。
また、現在の乗員の脇見を有効に矯正する技術の案出が望まれている。
【0005】
そこでこの発明は、車室内の設置スペースを大きく占有することなく、乗員の脇見を有効に矯正することができる警報装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る警報装置は、上記の課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、運転者に光によって注意を喚起させる警報装置であって、運転者の視線方向を検知する視線検知手段(例えば、実施形態における視線検知装置16)と、光を照射する投光光源(例えば、実施形態における電球22)と、この投光光源の照射方向を調整する投光方向調整手段(例えば、実施形態における開口26及び開閉シャッター23)と、前記視線検知手段の検知結果に基づき、運転者の視線方向が車両前方から所定角度以上ずれたと判定したときに、運転者の視線方向よりも前方寄りの視線方向近傍位置に光を照射するように、前記投光光源と投光方向調整手段を制御する制御装置(例えば、実施形態における制御装置18)と、を備えていることを特徴とするものである。
これにより、運転中に運転者の視線方向が車両前方から所定角度以上ずれると、そのことが視線検知手段を通して検出され、制御装置が運転者の視線方向よりも前方寄りの視線方向近傍位置に光を照射するようになる。こうして、運転者の視線よりも前方寄りに光が照射されると、運転者の視線が自然に前方側に戻されることになる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る警報装置において、前記制御装置は、前記投光光源の光を照射する照射位置を、前記乗員の視線方向の変化に応じて逐次変更することを特徴とするものである。
これにより、運転者の視線が光を追って前方側に移動すると、光がさらに前方側に移動することになる。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る警報装置において、前記制御装置は、前記投光光源の光を照射する照射位置を、予め設定した速度で車両前方側に移動させることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に係る警報装置において、前記制御手段は、車室内若しくは車室外の人に、運転者の視線方向のずれとは別の注意を喚起するときに、車室内外の特定位置に光を照射するように、前記投光光源と投光方向調整手段を制御することを特徴とするものである。
これにより、例えば、自車両の走行状態と周囲の状況に応じてブレーキを自動制御する追突軽減ブレーキシステムが作動しているときに、車室内外の特定位置に投光光源から光を照射することにより、追突軽減ブレーキシステムが作動中であることを運転者や乗員に知らせることが可能になる。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に係る警報装置において、前記投光光源と投光方向調整手段とは投光ユニット(例えば、実施形態における投光ユニット17)として構成され、前記投光ユニットは、車室内のインストルメントパネル(例えば、実施形態におけるインストルメントパネル10)の上面の車幅方向略中央位置に設置されていることを特徴とするものである。
これにより、投光光源と投光方向調整手段が投光ユニットとしてインスルメントパネルの上面の車幅方向略中央にコンパクトに配置されることになる。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る警報装置において、前記投光ユニットは、接触操作によって報知機器(例えば、実施形態におけるハザードランプ30)のオン・オフを切り替えるスイッチ機能部を備えていることを特徴とするものである。
これにより、運転者や助手席に着座した乗員が、手を延ばして容易にハザードランプやクラクション等の報知機器をスイッチ操作することが可能になる。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項5または6に係る警報装置において、前記投光ユニットは、前記インストルメントパネルに連結される基部側に車速表示部(例えば、実施形態における車速表示部31)が設けられていることを特徴とするものである。
これにより、運転者や助手席に着座した乗員がインスルメントパネルの上面の車幅方向略中央位置で車速を容易に視認することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、運転中に運転者の視線方向が車両前方から所定角度以上ずれると、制御装置が投光光源と投光方向調整手段を制御して運転者の視線よりも前方寄り近傍に光を照射するため、運転者の視線を光で自然に前方側に誘導して乗員の脇見を有効に矯正することができる。また、この発明は、複数の投光光源を必要としないため、車室内の設置スペースが小さくて済み、車室内におけるレイアウトの自由度が高まるという利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、投光光源の光を照射する照射位置を、乗員の視線方向の変化に応じて逐次変更するため、運転者の視線をより自然に車両前方に誘導することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、投光光源の光を照射する照射位置を、予め設定した速度で車両前方側に移動させるため、簡単な制御によって運転者の視線を車両前方側に誘導することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、投光光源と投光方向調整手段を制御して車室内外の特定位置に光を照射することにより、車室内若しくは車室外の人に、運転者の視線方向のずれとは別の注意を喚起することができるため、大幅な機器の追加を招くことなく、多様な警報効果を得ることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、投光光源と投光方向調整手段が投光ユニットとしてインスルメントパネルの上面の車幅方向略中央にコンパクトに配置されるため、インスルメントパネルの上面の占有スペースの増大や見栄えの低下等を招くことなく、投光光源の光を、車幅方向の略中央から広範囲に容易に投光することができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、投光ユニットに、接触操作によって報知機器のオン・オフを切り替えるスイッチ機能部が設けられているため、インスルメントパネルの上面に配置される投光ユニットを別用途でも有効利用することができる。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、投光ユニットのインストルメントパネルに連結される基部側に車速表示部が設けられているため、インスルメントパネルの上面に配置される投光ユニットを別用途でも有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1の実施形態の警報装置の概略構成を示す車室内の模式的な正面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の警報装置の概略構成を示す車室内の模式的な側面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の投光ユニットの斜視図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の投光ユニットのユニットベースの平面図(A)と、半球カバーの平面図(B)を併せて記載した図である。
【図5】この発明の第1の実施形態の半球カバーの変形例の斜視図である。
【図6】この発明の第1の実施形態の半球カバーの別の変形例の斜視図である。
【図7】この発明の第1の実施形態の警報装置の概略構成を示す車室内の模式的な正面図である。
【図8】この発明の第2の実施形態の警報装置の投光ユニットの斜視図である。
【図9】この発明の第3の実施形態の警報装置の投光ユニットの斜視図である。
【図10】この発明の第4の実施形態の警報装置の投光ユニットの斜視図(A)と、車両の平面図(B)を併せて記載した図である。
【図11】この発明の第5の実施形態の警報装置の投光ユニットの斜視図である。
【図12】この発明の第6の実施形態の警報装置の投光ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
最初に、図1〜図4に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態に係る警報装置1の概略構成を示す運転席前方側の模式的な正面図であり、図2は、同運転席の模式的な側面図である。
これらの図において、10は、運転席の前面に設置されたインストルメントパネルであり、11は、フロントウィンドウガラス、12L,12Rは、左右のフロントピラー、13は、左右のサトドドアに設置されたサイドウィンドウガラス、14は、運転者mが着座する運転席のシート、15は、ステアリングホイールである。
この実施形態の警報装置1は、運転者mの脇見を矯正することを主な機能とする装置であり、運転者の視線方向を検知する視線検知装置16(視線検知手段)と、車室内や車室外の所定の位置に光を投光する投光ユニット17と、視線検知装置16や投光ユニット17等を制御する制御装置18と、を備えている。
【0022】
視線検知装置16は、運転者mの顔を撮像する撮像手段であるCCDカメラ19と、運転者mの眼球に光を照射するための近赤外線LED20とを備え、CCDカメラ19と近赤外線LED20が前記制御装置18によって制御されるようになっている。また、制御装置18では、CCDカメラ19から検出信号を受けて画像処理と解析を行う。
制御装置18での画像処理と解析では、例えば、運転者mの顔画像を基にして運転者mの顔の向きを検知するとともに、近赤外線LED20から運転者mの眼球に光を照射したときの虹彩上の反射点(眼球上輝点)の位置と、瞳孔の位置を検知し、虹彩上の反射点と瞳孔との距離を基にして運転者mの視線方向を求める。
【0023】
図3は、投光ユニット17を示す斜視図であり、図4は、投光ユニット17の構成部品を(A),(B)に分けて記載した平面図である。
投光ユニット17は、インストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央位置に設置されている。投光ユニット17は、インストルメントパネル10の上面に固定設置されるユニットベース21と、ユニットベース21の上部に固定設置される半球カバー25と、を備えている。
【0024】
ユニットベース21は、図4(A)に示すように、その上面が平面視で円形状に形成されており、ユニットベース21の上面の中央に投光光源である電球22が設置されるとともに、ユニットベース21の上部の電球22の外側位置に複数の開閉シャッター23…が設置されている。この実施形態の場合、開閉シャッター23…は電球22を中心とする同心の2つの半円上に2段、9列に並んで配置されている。また、各開閉シャッター23は、前記制御装置18によって制御される図示しないアクチュエータによって開閉操作されるようになっている。なお、開閉シャッター23は、図示しないアクチュエータが駆動されない通常時には閉状態に維持されている。
【0025】
半球カバー25は、図4(B)に示すように、全体が不透明な樹脂によって半球形状に形成されるとともに、車両の前方から両側方に亙る領域に指向する部分に複数の開口26…が形成されている。この実施形態の場合、各開口26は円形状に形成され、その開口26が半球カバー25の球面上に上下に2段、円周方向に9列に並んで配置されている。なお、半球カバー25に形成する開口26の形状は必ずしも円形状に限らず、図5の開口26Aのような十字形状や、図6の開口26Bのような星型形状であっても良い。
ユニットベース21側の開閉シャッター23…は、半球カバー25の開口26…に一対一で対応して設けられ、各開閉シャッター23が対応する開口26をそれぞれ開閉するようになっている。
この実施形態では、投光ユニット17からの投光方向が決定されると、制御装置18による指令によって電球22が点灯されるとともに、投光方向に位置される開閉シャッター23が開操作される。この実施形態の場合、半球カバー25の開口26と開閉シャッター23が、電球22の光の照射方向を調整する投光方向調整手段を構成している。
【0026】
また、制御装置18は、視線検知装置16の検知情報を基に運転者mの視線が車両の前方に対して側方に規定角度以上ずれているか否かを判定する視線ずれ判定部と、視線ずれ判定部が規定角度以上視線がずれているものと判定したときに、投光ユニット17による光の移動照射を行う照射制御部と、を備えている。
この実施形態の場合、照射制御部による制御は以下のように行われる。
(1)運転者mの視線方向よりも前方寄りの視線方向近傍位置に光が照射されるように、電球22の点灯とともに目標方向の近傍の開閉シャッター23を開作動させる。
(2)投光ユニット17からの光の照射を開始した後に、視線検知装置16によって運転者mの視線方向を逐次監視し、運転者mの前方方向への視線の移動に応じて(視線情報をフィードバックして)順次視線よりも前方側の開閉シャッター23を開作動させる。
これにより、投光ユニット17による車室内の照射光は、図1のP1,P2,P3,P4で順次示すように、運転者mの視線の移動に応じて車両前方方向に移動することとなる。
なお、この制御の例では、照射制御部が運転者mの視線情報を逐次フィードバックし、運転者mの視線の移動に応じて順次開閉シャッター23を開くようにしているが、運転者mの視線情報を逐次フィードバックせずに、一定速度で開閉シャッター23を順次開くようにしても良い。
【0027】
また、この実施形態の警報装置1では、さらに、制御装置18には自車両に車外の物体が近接したことを検出する物体検出センサ27の検出信号とウィンカー(図示せず)の作動信号とが入力されるとともに、盗難防止装置28の監視作動信号と、追突軽減ブレーキシステム29の作動信号が入力されるようになっている。
【0028】
図7は、投光ユニット17による別の照射態様を示す運転席前方側の模式的な正面図である。
物体検出センサ27とウィンカーの信号は、車両の右折時や左折時に自車両が外部の物体を巻き込む虞がないか否かを判定するために用いられ、これらの信号に基づいて制御装置18が巻き込みの虞があるものと判定したときには、自車両が曲がろうとする側のサイドウィンドウガラス13に投光ユニット17から光を照射する(図7のPa参照)。この場合、投光ユニット17には、巻き込み警告専用の開口26と開閉シャッター23を予め用意しておき、巻き込み警告時には、制御装置18が電球22を点灯させ、かつ専用の開閉シャッター23を開作動させる。
【0029】
盗難防止装置28の監視作動信号は、制御装置18が、盗難防止装置28の監視作動が行われているか否かを判定するために用いられ、制御装置18が、監視作動が行われているものと判定したときには、車両前方中央の所定位置に向けて投光ユニット17から光を照射する(図7のPb参照)。この場合、投光ユニット17には、盗難防止装置28の監視作動報知用の開口26と開閉シャッター23を予め用意しておき、盗難防止装置28の監視作動が行われているときには、制御装置18が電球22を点灯させ、かつ専用の開閉シャッター23を開作動させる。なお、専用の開閉シャッター23には、例えば、赤色等の着色フィルターを取り付けておくことにより、盗難防止装置28が監視作動を行っていることを車両外部の人間により確実に報知することができる。
【0030】
また、追突軽減ブレーキシステム29の作動信号は、制御装置18が、追突軽減ブレーキシステム29が作動しているか否かを判定するために用いられ、制御装置18が、追突軽減ブレーキシステム29が作動しているものと判定したときには、車両前方の所定位置に向けて投光ユニット17から光を照射する(図7のPc参照)。投光ユニット17には、追突軽減ブレーキシステム専用の開口26と開閉シャッター23を予め用意にしておき、追突軽減ブレーキシステム29が作動しているときには、制御装置18が電球22を点灯させ、かつ専用の開閉シャッター23を開作動させる。この場合も、専用の開閉シャッター23には、黄色等の着色フィルターを取り付けておくことにより、乗員にその旨を確実に報知することができる。
【0031】
以上のように、この警報装置1においては、運転中に運転者mの視線方向が車両前方から所定角度以上ずれると、制御装置18が投光ユニット17の電球22と開閉シャッター23を制御して運転者mの視線よりも前方側の近傍部位(フロントピラー12R,12L上やフロントウィンドウガラス11上の部位)を照射するため、運転者mの視線を投光ユニット17からの照射光で自然に前方側に誘導して乗員mの脇見を矯正することができる。
そして、この警報装置1においては、電球22を有する一つの投光ユニット17から、開閉シャッター23によって開閉される開口26を通してフロントピラー12R,12Lやフロントウィンドウガラス11等の室内部材の内面に光を照射する構造とされているため、複数の投光光源を広範囲な領域に設置しなくても良い分、車室内の設置スペースを小さくすることができる。このため、この警報装置1を採用することにより、車室内のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0032】
特に、この警報装置1においては、運転中に運転者mの視線方向が車両前方から所定角度以上ずれたときに、制御装置18が運転者mの視線情報を逐次フィードバックし、運転者mの視線の移動に応じて順次前方側の開閉シャッター23を開くことで、投光位置を前方側に移動させるようにしているため、運転者mの視線をより自然に車両前方側に誘導することができる。
【0033】
また、運転中に運転者mの視線方向が車両前方から所定角度以上ずれたときに、開閉シャッター23を順次一定速度遅らせて開く(光を前方側に一定速度で移動させる)ようにした場合には、簡単な制御によって運転者mの視線を車両前方側に誘導することができる。
【0034】
また、この実施形態の警報装置1では、投光ユニット17に、巻き込み警告用、盗難防止装置28の監視作動報知用、追突軽減ブレーキシステム29の作動報知用の各専用の開口26と開閉シャッター23が設けられているため、投光ユニット17の電球22の光をこれらの専用の開閉シャッター23と開口26を通して照射することにより、車室内の乗員や車室外の人間に対して運転者mの視線のずれ以外の報知を行うことができる。したがって、専用の警報機器を別に設けることなく、多様な警報機能を一台の警報装置1で得ることができる。
【0035】
また、この実施形態の警報装置1の場合、投光光源である電球22と、投光方向調整手段である複数の開閉シャッター23…と開口26…とが投光ユニット17として一ブロックに構成され、その投光ユニット17がインストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央にコンパクトに設置されているため、インスルメントパネル10の上面を大きく占有したり、見栄えの低下を招いたりすることなく、電球22の光を車幅方向の略中央から左右の広い範囲に容易に投光することができる。
【0036】
図8は、この発明の第2の実施形態の警報装置の投光ユニット117を示すものであり、図9は、この発明の第3の実施形態の警報装置の投光ユニット217を示すものである。
前述した第1の実施形態の投光ユニット17では半球カバー25に複数の開口26…を設け、ユニットベース21側に各開口26を開閉するための開閉シャッター23を設けるようにしていたが、第2の実施形態の投光ユニット117は、半球カバー125に一つの開口126のみを設け、半球カバー125を図示しないアクチュエータで鉛直軸回りに回転調整できるようにした構成とされている。この実施形態の場合、極めて簡単な構造でありながら、半球カバー125の回動操作によって投光位置を水平方向に移動調整することができる。
また、第3の実施形態の投光ユニット217は、半球カバー125を鉛直軸回りだけでなく、水平軸回りにも別のアクチュエータを用いて回転調整できるようにしたものである。この場合には、二つのアクチュエータの複合作動により、投光位置を水平方向と上下方向に移動調整することができる。
【0037】
図10は、この発明の第4の実施形態の警報装置の投光ユニット317を示すものである。
この実施形態の警報装置は、基本的な構造や機能はほぼ第1の実施形態のものと同様であるが、投光ユニット317の基部側(例えば、第1の実施形態のユニットベース21部分)に、ハザードランプやクラクション等の報知機器のオン・オフを切り替える押し込み式の図示しないスイッチが内蔵されている。なお、投光ユニット317は、第1の実施形態と同様にインストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に設置されている。
この実施形態の場合、図10(A)に示すように、半球カバー25部分が上方から押し込まれることによって報知機器のスイッチが操作される。なお、図10(B)は、投光ユニット317の基部側にハザードランプ30の点灯スイッチが内蔵されている場合に、半球カバー25が上方から押し込まれ、それによってハザードランプ30が点灯したときの様子を示している。
【0038】
この実施形態の警報装置においては、インストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に膨出して設置される投光ユニット317の基部に、ハザードランプ30等の警報装置の押し込み式のスイッチが内蔵されているため、投光ユニット317を別用途でも有効利用することができる。特に、この実施形態の場合、投光ユニット317は、インストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に設置されているため、運転席に着座した運転者だけでなく助手席に着座した乗員からも容易にスイッチ操作を行うことができる。
なお、ここでは投光ユニット317の基部側に押し込み式のスイッチが内蔵された例について説明したが、スイッチの型式は押し込み式に限らず、インストルメントパネル10の上面から膨出した半球カバー25部分を接触操作するタイプのものであれば、回転操作式等の他の型式のものであっても良い。
【0039】
図11は、この発明の第5の実施形態の警報装置の投光ユニット417を示すものである。
この実施形態の警報装置は、基本的な構造や機能はほぼ第1の実施形態のものと同様であるが、投光ユニット417の基部側(インストルメントパネル10に連結される側)に車速表示部31が設けられている。この実施形態の場合も、投光ユニット417は、インストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に設置されている。
【0040】
車速表示部31は、半球カバー25の下方側でユニットベース21に固定される透明な円筒壁32と、円筒壁32の内側に配置され、車速に連動した角度だけ回転変位する回転体33とで構成されている。そして、回転体33の外周面には速度目盛り34が付され、透明な円筒壁32の車体後方側に指向する中央位置には指針35が付されている。したがって、車速が変化すると、その車速に応じて回転体33が回転変位し、速度目盛り34上の実際の車速に対応する位置が指針35によって指示されることになる。
【0041】
この実施形態の警報装置においては、インストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に膨出して設置される投光ユニット417の基部に車速表示部31が設けられているため、投光ユニット417を別用途でも有効利用することができる。特に、この実施形態の場合、投光ユニット417がインストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に設置されていることから、運転席に着座した運転者だけでなく、助手席や後部座席に着座した他の乗員からも、車速を容易に確認することができる。
【0042】
図12は、この発明の第6の実施形態の警報装置の投光ユニット517を示すものである。
この実施形態の警報装置は、基本的な機能は第1の実施形態とほぼ同様であるが、投光ユニット517の構造が大きく異なっている。
投光ユニット517は、インストルメントパネル上に設置されるユニットベース521に投光光源である電球522が設置され、その上方側に図示しない半球カバーが設けられているが、電球522は上方側に指向性を有するもの、若しくは、レンズ等によって照射領域が上方に絞られたものが用いられている。また、ユニットベース521は、インストルメントパネル側に固定される固定ベース40の上部に、回転ベース41が図示しない第1アクチュエータを介して鉛直軸回りに回動調整可能に取り付けられている。
【0043】
電球522は、固定ベース40の上面に固定設置され、回転ベース41の中央部には、電球522の上部を開放するための円形状の開口42が設けられている。また、回転ベース41には一対の支持アーム43,43が突設され、その支持アーム43,43に反射板44が回動可能に取り付けられている。反射板44は、平面状の反射面が下方に指向して設けられ、その一端側が前記支持アーム43,43に支持された回動軸45に結合されている。回動軸45は、図示しない第2アクチュエータに連結され、第2アクチュエータによって回動調整可能とされている。反射板44は、固定された電灯522から上方に照射された光を反射面で所定の方向に反射させるものであるが、その反射方向は、上記の第1アクチュエータと第2アクチュエータによる組み合わせ操作によって調整されるようになっている。
また、図示しない半球カバーは、全体が透明樹脂等の透光材料によって形成され、ユニットベース521側の可動部材に対して非接触にされている。
【0044】
この実施形態の投光ユニット517は、他の実施形態のものと同様に運転者の視線方向を有効に矯正することができるが、さらに、第1アクチュエータと第2アクチュエータによる組み合わせ操作によって光(電球522の反射光)の照射方向を広範囲に亙って無段回に調整できるため、高い精度で照射制御を行うことができるという利点がある。
【0045】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…警報装置
10…インストルメントパネル
16…姿勢検知装置(視線検知手段)
17,117,217,317,417,517…投光ユニット
18…制御装置
22,522…電球(投光光源)
23…開閉シャッター(投光方向調整手段)
26,26A,26B,126…開口(投光方向調整手段)
30…ハザードランプ
31…車速表示部
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転者に光によって注意を喚起させる警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
他車両の接近等の警報情報を光によって運転者に知らせる警報装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の警報装置は、右側指示用LED、中央指示用LED、左側指示用LEDの三種類のLEDを備え、他車両の接近方向に応じてこれらのいずれかのLEDを点灯させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−9320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来の警報装置は、運転者に注意を喚起させる方向毎に専用のLEDを用意しなければならないため、設置スペースを大きく占有することになり、車室内におけるレイアウトの自由度が低くなることが懸念されている。
また、現在の乗員の脇見を有効に矯正する技術の案出が望まれている。
【0005】
そこでこの発明は、車室内の設置スペースを大きく占有することなく、乗員の脇見を有効に矯正することができる警報装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る警報装置は、上記の課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、運転者に光によって注意を喚起させる警報装置であって、運転者の視線方向を検知する視線検知手段(例えば、実施形態における視線検知装置16)と、光を照射する投光光源(例えば、実施形態における電球22)と、この投光光源の照射方向を調整する投光方向調整手段(例えば、実施形態における開口26及び開閉シャッター23)と、前記視線検知手段の検知結果に基づき、運転者の視線方向が車両前方から所定角度以上ずれたと判定したときに、運転者の視線方向よりも前方寄りの視線方向近傍位置に光を照射するように、前記投光光源と投光方向調整手段を制御する制御装置(例えば、実施形態における制御装置18)と、を備えていることを特徴とするものである。
これにより、運転中に運転者の視線方向が車両前方から所定角度以上ずれると、そのことが視線検知手段を通して検出され、制御装置が運転者の視線方向よりも前方寄りの視線方向近傍位置に光を照射するようになる。こうして、運転者の視線よりも前方寄りに光が照射されると、運転者の視線が自然に前方側に戻されることになる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る警報装置において、前記制御装置は、前記投光光源の光を照射する照射位置を、前記乗員の視線方向の変化に応じて逐次変更することを特徴とするものである。
これにより、運転者の視線が光を追って前方側に移動すると、光がさらに前方側に移動することになる。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る警報装置において、前記制御装置は、前記投光光源の光を照射する照射位置を、予め設定した速度で車両前方側に移動させることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に係る警報装置において、前記制御手段は、車室内若しくは車室外の人に、運転者の視線方向のずれとは別の注意を喚起するときに、車室内外の特定位置に光を照射するように、前記投光光源と投光方向調整手段を制御することを特徴とするものである。
これにより、例えば、自車両の走行状態と周囲の状況に応じてブレーキを自動制御する追突軽減ブレーキシステムが作動しているときに、車室内外の特定位置に投光光源から光を照射することにより、追突軽減ブレーキシステムが作動中であることを運転者や乗員に知らせることが可能になる。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に係る警報装置において、前記投光光源と投光方向調整手段とは投光ユニット(例えば、実施形態における投光ユニット17)として構成され、前記投光ユニットは、車室内のインストルメントパネル(例えば、実施形態におけるインストルメントパネル10)の上面の車幅方向略中央位置に設置されていることを特徴とするものである。
これにより、投光光源と投光方向調整手段が投光ユニットとしてインスルメントパネルの上面の車幅方向略中央にコンパクトに配置されることになる。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る警報装置において、前記投光ユニットは、接触操作によって報知機器(例えば、実施形態におけるハザードランプ30)のオン・オフを切り替えるスイッチ機能部を備えていることを特徴とするものである。
これにより、運転者や助手席に着座した乗員が、手を延ばして容易にハザードランプやクラクション等の報知機器をスイッチ操作することが可能になる。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項5または6に係る警報装置において、前記投光ユニットは、前記インストルメントパネルに連結される基部側に車速表示部(例えば、実施形態における車速表示部31)が設けられていることを特徴とするものである。
これにより、運転者や助手席に着座した乗員がインスルメントパネルの上面の車幅方向略中央位置で車速を容易に視認することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、運転中に運転者の視線方向が車両前方から所定角度以上ずれると、制御装置が投光光源と投光方向調整手段を制御して運転者の視線よりも前方寄り近傍に光を照射するため、運転者の視線を光で自然に前方側に誘導して乗員の脇見を有効に矯正することができる。また、この発明は、複数の投光光源を必要としないため、車室内の設置スペースが小さくて済み、車室内におけるレイアウトの自由度が高まるという利点がある。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、投光光源の光を照射する照射位置を、乗員の視線方向の変化に応じて逐次変更するため、運転者の視線をより自然に車両前方に誘導することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、投光光源の光を照射する照射位置を、予め設定した速度で車両前方側に移動させるため、簡単な制御によって運転者の視線を車両前方側に誘導することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、投光光源と投光方向調整手段を制御して車室内外の特定位置に光を照射することにより、車室内若しくは車室外の人に、運転者の視線方向のずれとは別の注意を喚起することができるため、大幅な機器の追加を招くことなく、多様な警報効果を得ることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、投光光源と投光方向調整手段が投光ユニットとしてインスルメントパネルの上面の車幅方向略中央にコンパクトに配置されるため、インスルメントパネルの上面の占有スペースの増大や見栄えの低下等を招くことなく、投光光源の光を、車幅方向の略中央から広範囲に容易に投光することができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、投光ユニットに、接触操作によって報知機器のオン・オフを切り替えるスイッチ機能部が設けられているため、インスルメントパネルの上面に配置される投光ユニットを別用途でも有効利用することができる。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、投光ユニットのインストルメントパネルに連結される基部側に車速表示部が設けられているため、インスルメントパネルの上面に配置される投光ユニットを別用途でも有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1の実施形態の警報装置の概略構成を示す車室内の模式的な正面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の警報装置の概略構成を示す車室内の模式的な側面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の投光ユニットの斜視図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の投光ユニットのユニットベースの平面図(A)と、半球カバーの平面図(B)を併せて記載した図である。
【図5】この発明の第1の実施形態の半球カバーの変形例の斜視図である。
【図6】この発明の第1の実施形態の半球カバーの別の変形例の斜視図である。
【図7】この発明の第1の実施形態の警報装置の概略構成を示す車室内の模式的な正面図である。
【図8】この発明の第2の実施形態の警報装置の投光ユニットの斜視図である。
【図9】この発明の第3の実施形態の警報装置の投光ユニットの斜視図である。
【図10】この発明の第4の実施形態の警報装置の投光ユニットの斜視図(A)と、車両の平面図(B)を併せて記載した図である。
【図11】この発明の第5の実施形態の警報装置の投光ユニットの斜視図である。
【図12】この発明の第6の実施形態の警報装置の投光ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
最初に、図1〜図4に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態に係る警報装置1の概略構成を示す運転席前方側の模式的な正面図であり、図2は、同運転席の模式的な側面図である。
これらの図において、10は、運転席の前面に設置されたインストルメントパネルであり、11は、フロントウィンドウガラス、12L,12Rは、左右のフロントピラー、13は、左右のサトドドアに設置されたサイドウィンドウガラス、14は、運転者mが着座する運転席のシート、15は、ステアリングホイールである。
この実施形態の警報装置1は、運転者mの脇見を矯正することを主な機能とする装置であり、運転者の視線方向を検知する視線検知装置16(視線検知手段)と、車室内や車室外の所定の位置に光を投光する投光ユニット17と、視線検知装置16や投光ユニット17等を制御する制御装置18と、を備えている。
【0022】
視線検知装置16は、運転者mの顔を撮像する撮像手段であるCCDカメラ19と、運転者mの眼球に光を照射するための近赤外線LED20とを備え、CCDカメラ19と近赤外線LED20が前記制御装置18によって制御されるようになっている。また、制御装置18では、CCDカメラ19から検出信号を受けて画像処理と解析を行う。
制御装置18での画像処理と解析では、例えば、運転者mの顔画像を基にして運転者mの顔の向きを検知するとともに、近赤外線LED20から運転者mの眼球に光を照射したときの虹彩上の反射点(眼球上輝点)の位置と、瞳孔の位置を検知し、虹彩上の反射点と瞳孔との距離を基にして運転者mの視線方向を求める。
【0023】
図3は、投光ユニット17を示す斜視図であり、図4は、投光ユニット17の構成部品を(A),(B)に分けて記載した平面図である。
投光ユニット17は、インストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央位置に設置されている。投光ユニット17は、インストルメントパネル10の上面に固定設置されるユニットベース21と、ユニットベース21の上部に固定設置される半球カバー25と、を備えている。
【0024】
ユニットベース21は、図4(A)に示すように、その上面が平面視で円形状に形成されており、ユニットベース21の上面の中央に投光光源である電球22が設置されるとともに、ユニットベース21の上部の電球22の外側位置に複数の開閉シャッター23…が設置されている。この実施形態の場合、開閉シャッター23…は電球22を中心とする同心の2つの半円上に2段、9列に並んで配置されている。また、各開閉シャッター23は、前記制御装置18によって制御される図示しないアクチュエータによって開閉操作されるようになっている。なお、開閉シャッター23は、図示しないアクチュエータが駆動されない通常時には閉状態に維持されている。
【0025】
半球カバー25は、図4(B)に示すように、全体が不透明な樹脂によって半球形状に形成されるとともに、車両の前方から両側方に亙る領域に指向する部分に複数の開口26…が形成されている。この実施形態の場合、各開口26は円形状に形成され、その開口26が半球カバー25の球面上に上下に2段、円周方向に9列に並んで配置されている。なお、半球カバー25に形成する開口26の形状は必ずしも円形状に限らず、図5の開口26Aのような十字形状や、図6の開口26Bのような星型形状であっても良い。
ユニットベース21側の開閉シャッター23…は、半球カバー25の開口26…に一対一で対応して設けられ、各開閉シャッター23が対応する開口26をそれぞれ開閉するようになっている。
この実施形態では、投光ユニット17からの投光方向が決定されると、制御装置18による指令によって電球22が点灯されるとともに、投光方向に位置される開閉シャッター23が開操作される。この実施形態の場合、半球カバー25の開口26と開閉シャッター23が、電球22の光の照射方向を調整する投光方向調整手段を構成している。
【0026】
また、制御装置18は、視線検知装置16の検知情報を基に運転者mの視線が車両の前方に対して側方に規定角度以上ずれているか否かを判定する視線ずれ判定部と、視線ずれ判定部が規定角度以上視線がずれているものと判定したときに、投光ユニット17による光の移動照射を行う照射制御部と、を備えている。
この実施形態の場合、照射制御部による制御は以下のように行われる。
(1)運転者mの視線方向よりも前方寄りの視線方向近傍位置に光が照射されるように、電球22の点灯とともに目標方向の近傍の開閉シャッター23を開作動させる。
(2)投光ユニット17からの光の照射を開始した後に、視線検知装置16によって運転者mの視線方向を逐次監視し、運転者mの前方方向への視線の移動に応じて(視線情報をフィードバックして)順次視線よりも前方側の開閉シャッター23を開作動させる。
これにより、投光ユニット17による車室内の照射光は、図1のP1,P2,P3,P4で順次示すように、運転者mの視線の移動に応じて車両前方方向に移動することとなる。
なお、この制御の例では、照射制御部が運転者mの視線情報を逐次フィードバックし、運転者mの視線の移動に応じて順次開閉シャッター23を開くようにしているが、運転者mの視線情報を逐次フィードバックせずに、一定速度で開閉シャッター23を順次開くようにしても良い。
【0027】
また、この実施形態の警報装置1では、さらに、制御装置18には自車両に車外の物体が近接したことを検出する物体検出センサ27の検出信号とウィンカー(図示せず)の作動信号とが入力されるとともに、盗難防止装置28の監視作動信号と、追突軽減ブレーキシステム29の作動信号が入力されるようになっている。
【0028】
図7は、投光ユニット17による別の照射態様を示す運転席前方側の模式的な正面図である。
物体検出センサ27とウィンカーの信号は、車両の右折時や左折時に自車両が外部の物体を巻き込む虞がないか否かを判定するために用いられ、これらの信号に基づいて制御装置18が巻き込みの虞があるものと判定したときには、自車両が曲がろうとする側のサイドウィンドウガラス13に投光ユニット17から光を照射する(図7のPa参照)。この場合、投光ユニット17には、巻き込み警告専用の開口26と開閉シャッター23を予め用意しておき、巻き込み警告時には、制御装置18が電球22を点灯させ、かつ専用の開閉シャッター23を開作動させる。
【0029】
盗難防止装置28の監視作動信号は、制御装置18が、盗難防止装置28の監視作動が行われているか否かを判定するために用いられ、制御装置18が、監視作動が行われているものと判定したときには、車両前方中央の所定位置に向けて投光ユニット17から光を照射する(図7のPb参照)。この場合、投光ユニット17には、盗難防止装置28の監視作動報知用の開口26と開閉シャッター23を予め用意しておき、盗難防止装置28の監視作動が行われているときには、制御装置18が電球22を点灯させ、かつ専用の開閉シャッター23を開作動させる。なお、専用の開閉シャッター23には、例えば、赤色等の着色フィルターを取り付けておくことにより、盗難防止装置28が監視作動を行っていることを車両外部の人間により確実に報知することができる。
【0030】
また、追突軽減ブレーキシステム29の作動信号は、制御装置18が、追突軽減ブレーキシステム29が作動しているか否かを判定するために用いられ、制御装置18が、追突軽減ブレーキシステム29が作動しているものと判定したときには、車両前方の所定位置に向けて投光ユニット17から光を照射する(図7のPc参照)。投光ユニット17には、追突軽減ブレーキシステム専用の開口26と開閉シャッター23を予め用意にしておき、追突軽減ブレーキシステム29が作動しているときには、制御装置18が電球22を点灯させ、かつ専用の開閉シャッター23を開作動させる。この場合も、専用の開閉シャッター23には、黄色等の着色フィルターを取り付けておくことにより、乗員にその旨を確実に報知することができる。
【0031】
以上のように、この警報装置1においては、運転中に運転者mの視線方向が車両前方から所定角度以上ずれると、制御装置18が投光ユニット17の電球22と開閉シャッター23を制御して運転者mの視線よりも前方側の近傍部位(フロントピラー12R,12L上やフロントウィンドウガラス11上の部位)を照射するため、運転者mの視線を投光ユニット17からの照射光で自然に前方側に誘導して乗員mの脇見を矯正することができる。
そして、この警報装置1においては、電球22を有する一つの投光ユニット17から、開閉シャッター23によって開閉される開口26を通してフロントピラー12R,12Lやフロントウィンドウガラス11等の室内部材の内面に光を照射する構造とされているため、複数の投光光源を広範囲な領域に設置しなくても良い分、車室内の設置スペースを小さくすることができる。このため、この警報装置1を採用することにより、車室内のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0032】
特に、この警報装置1においては、運転中に運転者mの視線方向が車両前方から所定角度以上ずれたときに、制御装置18が運転者mの視線情報を逐次フィードバックし、運転者mの視線の移動に応じて順次前方側の開閉シャッター23を開くことで、投光位置を前方側に移動させるようにしているため、運転者mの視線をより自然に車両前方側に誘導することができる。
【0033】
また、運転中に運転者mの視線方向が車両前方から所定角度以上ずれたときに、開閉シャッター23を順次一定速度遅らせて開く(光を前方側に一定速度で移動させる)ようにした場合には、簡単な制御によって運転者mの視線を車両前方側に誘導することができる。
【0034】
また、この実施形態の警報装置1では、投光ユニット17に、巻き込み警告用、盗難防止装置28の監視作動報知用、追突軽減ブレーキシステム29の作動報知用の各専用の開口26と開閉シャッター23が設けられているため、投光ユニット17の電球22の光をこれらの専用の開閉シャッター23と開口26を通して照射することにより、車室内の乗員や車室外の人間に対して運転者mの視線のずれ以外の報知を行うことができる。したがって、専用の警報機器を別に設けることなく、多様な警報機能を一台の警報装置1で得ることができる。
【0035】
また、この実施形態の警報装置1の場合、投光光源である電球22と、投光方向調整手段である複数の開閉シャッター23…と開口26…とが投光ユニット17として一ブロックに構成され、その投光ユニット17がインストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央にコンパクトに設置されているため、インスルメントパネル10の上面を大きく占有したり、見栄えの低下を招いたりすることなく、電球22の光を車幅方向の略中央から左右の広い範囲に容易に投光することができる。
【0036】
図8は、この発明の第2の実施形態の警報装置の投光ユニット117を示すものであり、図9は、この発明の第3の実施形態の警報装置の投光ユニット217を示すものである。
前述した第1の実施形態の投光ユニット17では半球カバー25に複数の開口26…を設け、ユニットベース21側に各開口26を開閉するための開閉シャッター23を設けるようにしていたが、第2の実施形態の投光ユニット117は、半球カバー125に一つの開口126のみを設け、半球カバー125を図示しないアクチュエータで鉛直軸回りに回転調整できるようにした構成とされている。この実施形態の場合、極めて簡単な構造でありながら、半球カバー125の回動操作によって投光位置を水平方向に移動調整することができる。
また、第3の実施形態の投光ユニット217は、半球カバー125を鉛直軸回りだけでなく、水平軸回りにも別のアクチュエータを用いて回転調整できるようにしたものである。この場合には、二つのアクチュエータの複合作動により、投光位置を水平方向と上下方向に移動調整することができる。
【0037】
図10は、この発明の第4の実施形態の警報装置の投光ユニット317を示すものである。
この実施形態の警報装置は、基本的な構造や機能はほぼ第1の実施形態のものと同様であるが、投光ユニット317の基部側(例えば、第1の実施形態のユニットベース21部分)に、ハザードランプやクラクション等の報知機器のオン・オフを切り替える押し込み式の図示しないスイッチが内蔵されている。なお、投光ユニット317は、第1の実施形態と同様にインストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に設置されている。
この実施形態の場合、図10(A)に示すように、半球カバー25部分が上方から押し込まれることによって報知機器のスイッチが操作される。なお、図10(B)は、投光ユニット317の基部側にハザードランプ30の点灯スイッチが内蔵されている場合に、半球カバー25が上方から押し込まれ、それによってハザードランプ30が点灯したときの様子を示している。
【0038】
この実施形態の警報装置においては、インストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に膨出して設置される投光ユニット317の基部に、ハザードランプ30等の警報装置の押し込み式のスイッチが内蔵されているため、投光ユニット317を別用途でも有効利用することができる。特に、この実施形態の場合、投光ユニット317は、インストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に設置されているため、運転席に着座した運転者だけでなく助手席に着座した乗員からも容易にスイッチ操作を行うことができる。
なお、ここでは投光ユニット317の基部側に押し込み式のスイッチが内蔵された例について説明したが、スイッチの型式は押し込み式に限らず、インストルメントパネル10の上面から膨出した半球カバー25部分を接触操作するタイプのものであれば、回転操作式等の他の型式のものであっても良い。
【0039】
図11は、この発明の第5の実施形態の警報装置の投光ユニット417を示すものである。
この実施形態の警報装置は、基本的な構造や機能はほぼ第1の実施形態のものと同様であるが、投光ユニット417の基部側(インストルメントパネル10に連結される側)に車速表示部31が設けられている。この実施形態の場合も、投光ユニット417は、インストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に設置されている。
【0040】
車速表示部31は、半球カバー25の下方側でユニットベース21に固定される透明な円筒壁32と、円筒壁32の内側に配置され、車速に連動した角度だけ回転変位する回転体33とで構成されている。そして、回転体33の外周面には速度目盛り34が付され、透明な円筒壁32の車体後方側に指向する中央位置には指針35が付されている。したがって、車速が変化すると、その車速に応じて回転体33が回転変位し、速度目盛り34上の実際の車速に対応する位置が指針35によって指示されることになる。
【0041】
この実施形態の警報装置においては、インストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に膨出して設置される投光ユニット417の基部に車速表示部31が設けられているため、投光ユニット417を別用途でも有効利用することができる。特に、この実施形態の場合、投光ユニット417がインストルメントパネル10の上面の車幅方向略中央に設置されていることから、運転席に着座した運転者だけでなく、助手席や後部座席に着座した他の乗員からも、車速を容易に確認することができる。
【0042】
図12は、この発明の第6の実施形態の警報装置の投光ユニット517を示すものである。
この実施形態の警報装置は、基本的な機能は第1の実施形態とほぼ同様であるが、投光ユニット517の構造が大きく異なっている。
投光ユニット517は、インストルメントパネル上に設置されるユニットベース521に投光光源である電球522が設置され、その上方側に図示しない半球カバーが設けられているが、電球522は上方側に指向性を有するもの、若しくは、レンズ等によって照射領域が上方に絞られたものが用いられている。また、ユニットベース521は、インストルメントパネル側に固定される固定ベース40の上部に、回転ベース41が図示しない第1アクチュエータを介して鉛直軸回りに回動調整可能に取り付けられている。
【0043】
電球522は、固定ベース40の上面に固定設置され、回転ベース41の中央部には、電球522の上部を開放するための円形状の開口42が設けられている。また、回転ベース41には一対の支持アーム43,43が突設され、その支持アーム43,43に反射板44が回動可能に取り付けられている。反射板44は、平面状の反射面が下方に指向して設けられ、その一端側が前記支持アーム43,43に支持された回動軸45に結合されている。回動軸45は、図示しない第2アクチュエータに連結され、第2アクチュエータによって回動調整可能とされている。反射板44は、固定された電灯522から上方に照射された光を反射面で所定の方向に反射させるものであるが、その反射方向は、上記の第1アクチュエータと第2アクチュエータによる組み合わせ操作によって調整されるようになっている。
また、図示しない半球カバーは、全体が透明樹脂等の透光材料によって形成され、ユニットベース521側の可動部材に対して非接触にされている。
【0044】
この実施形態の投光ユニット517は、他の実施形態のものと同様に運転者の視線方向を有効に矯正することができるが、さらに、第1アクチュエータと第2アクチュエータによる組み合わせ操作によって光(電球522の反射光)の照射方向を広範囲に亙って無段回に調整できるため、高い精度で照射制御を行うことができるという利点がある。
【0045】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…警報装置
10…インストルメントパネル
16…姿勢検知装置(視線検知手段)
17,117,217,317,417,517…投光ユニット
18…制御装置
22,522…電球(投光光源)
23…開閉シャッター(投光方向調整手段)
26,26A,26B,126…開口(投光方向調整手段)
30…ハザードランプ
31…車速表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者に光によって注意を喚起させる警報装置であって、
運転者の視線方向を検知する視線検知手段と、
光を照射する投光光源と、
この投光光源の照射方向を調整する投光方向調整手段と、
前記視線検知手段の検知結果に基づき、運転者の視線方向が車両前方から所定角度以上ずれたと判定したときに、運転者の視線方向よりも前方寄りの視線方向近傍位置に光を照射するように、前記投光光源と投光方向調整手段を制御する制御装置と、を備えていることを特徴とする警報装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記投光光源の光を照射する照射位置を、前記乗員の視線方向の変化に応じて逐次変更することを特徴とする請求項1に記載の警報装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記投光光源の光を照射する照射位置を、予め設定した速度で車両前方側に移動させることを特徴とする請求項1に記載の警報装置。
【請求項4】
前記制御手段は、車室内若しくは車室外の人に、運転者の視線方向のずれとは別の注意を喚起するときに、車室内外の特定位置に光を照射するように、前記投光光源と投光方向調整手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の警報装置。
【請求項5】
前記投光光源と投光方向調整手段とは投光ユニットとして構成され、
前記投光ユニットは、車室内のインストルメントパネルの上面の車幅方向略中央位置に設置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の警報装置。
【請求項6】
前記投光ユニットは、接触操作によって報知機器のオン・オフを切り替えるスイッチ機能部を備えていることを特徴とする請求項5に記載の警報装置。
【請求項7】
前記投光ユニットは、前記インストルメントパネルに連結される基部側に車速表示部が設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の警報装置。
【請求項1】
運転者に光によって注意を喚起させる警報装置であって、
運転者の視線方向を検知する視線検知手段と、
光を照射する投光光源と、
この投光光源の照射方向を調整する投光方向調整手段と、
前記視線検知手段の検知結果に基づき、運転者の視線方向が車両前方から所定角度以上ずれたと判定したときに、運転者の視線方向よりも前方寄りの視線方向近傍位置に光を照射するように、前記投光光源と投光方向調整手段を制御する制御装置と、を備えていることを特徴とする警報装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記投光光源の光を照射する照射位置を、前記乗員の視線方向の変化に応じて逐次変更することを特徴とする請求項1に記載の警報装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記投光光源の光を照射する照射位置を、予め設定した速度で車両前方側に移動させることを特徴とする請求項1に記載の警報装置。
【請求項4】
前記制御手段は、車室内若しくは車室外の人に、運転者の視線方向のずれとは別の注意を喚起するときに、車室内外の特定位置に光を照射するように、前記投光光源と投光方向調整手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の警報装置。
【請求項5】
前記投光光源と投光方向調整手段とは投光ユニットとして構成され、
前記投光ユニットは、車室内のインストルメントパネルの上面の車幅方向略中央位置に設置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の警報装置。
【請求項6】
前記投光ユニットは、接触操作によって報知機器のオン・オフを切り替えるスイッチ機能部を備えていることを特徴とする請求項5に記載の警報装置。
【請求項7】
前記投光ユニットは、前記インストルメントパネルに連結される基部側に車速表示部が設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の警報装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−101564(P2012−101564A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248896(P2010−248896)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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