説明

護岸越流洗掘抑止工法

【課題】海中または土中に敷設した場合であっても錆による強度の低下を無くすことができるとともに、据え付け箇所の形状が平坦で無くても簡単に対応することができる護岸越流洗掘抑止工法を提供する。
【解決手段】護岸堤防を越えた水流・水圧により堤防陸側法尻部13周辺が洗掘されるのを抑える護岸越流洗掘抑止工法であって、現場でのブロック成形時に、可撓性を有するロープ18を隣り合うコンクリートブロック17,17に跨がらせてインサートし、そのロープ18で隣り合うコンクリートブロック17,17同士を順に連結して法尻部13周辺に敷設してなる護岸越流洗掘抑止工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は護岸越流洗掘抑止工法に関するものであり、特に、河岸や海岸を保護する堤防を越えて流れる水流・水圧により堤防陸側の法尻部におけるブロックや石材等が押し流されるのを抑止する護岸越流洗掘抑止工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近発生した東日本大震災では、1000年に一度と言われる津波により東北太平洋岸の多くの海岸堤防が破壊され、その後、背馳の被害を加速的に増大させた。
【0003】
図7に示すように、今回、来襲した津波50は、海岸堤防及び河口部の護岸堤防51の天端52より高かったために、護岸堤防51を越流して裏法面53を一気に流れ、堤防陸側の法尻部54を洗掘した。さらに、法尻部54が洗掘されると護岸堤防51の裏法面53や堤防土が流出し、護岸堤防51の天端52が下がって堤防の崩壊に至ったと考えられている。
【0004】
そこで、今後の堤防の復旧工事は、堤防陸側の法尻部54を強化すること、及び、国庫の財政難から機能と経済性を両立させた津波対策工法が求められている。その対策例としては、次の(1)〜(4)等が上げられる。
(1)越流水に対して安定性があること。
(2)洗掘されても柔軟に対応できるようにフレキシブルな構造であること。
(3)経済性に優れていること。
(4)震災で大量に発生したコンクリートガレキ等を有効に活用できること。
【0005】
ところで、一般に、河川や海岸付近にコンクリートブロックや石材を敷設する際、これらコンクリートブロックや石材等が流水により押し流されることがないよう、ある程度安定した重量・面積となるように多数のコンクリートブロックや石材を一魂の集合体にして敷設することが多い。
【0006】
また、そのコンクリート製等のブロックを一魂の集合体として河川、海岸に敷設する方法の一つとして、ブロックに取り付けた連結部材と別に用意される連結金具とで、ブロック同士を連結させて一魂の土木構造物とする連結工法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
特許文献1で知られるコンクリートブロックの連結工法は、平面視四角形状をした複数の扁平ブロック同士を金属製の結合金具と金属製の連結金具を使用して連結している。
【0008】
特許文献2で知られるコンクリートブロックの連結工法は、平面視十字形状をしたコンクリートブロックを型形成する際、金属製の連結部材をインサートし、そのインサートさせた連結部材で隣り合うコンクリートブロックを順に連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−295248号公報。
【特許文献2】特開2001−172936号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2で知られるような金属製の連結部材及び連結金具を使用してコンクリートブロックを連結する場合、水分及び塩分を含んだ海中または土中に敷設するため、連結部材等に錆が生じる。錆が生じた金属材料は、表面から内部に腐食が進行するため、金属が本来有する強度を持たなくなる。その結果、複数のブロック同士を連結する部材としての強度が低下し、連結部材としての効力を十分に発揮できなくなる問題点があった。
【0011】
また、連結部材等に金属材料を使用した場合、連結部材の可撓性が得にくい。このため、据え付け箇所の形状が平坦で無いようなときにブロックが地面に倣わず、敷設作業に手間取るという問題点があった。
【0012】
そこで、海中または土中に敷設した場合であっても錆による強度の低下を無くすことができるとともに、据え付け箇所の形状が平端で無くても簡単に対応することができる護岸越流洗掘抑止工法を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、護岸堤防を越えた水流・水圧により堤防陸側法尻部周辺が洗掘されるのを抑える護岸越流洗掘抑止工法であって、現場でのブロック成形時に、可撓性を有するロープを隣り合うコンクリートブロックに跨がらせてインサートし、該ロープで隣り合うコンクリートブロック同士を順に連結して前記法尻部周辺に敷設してなる護岸越流洗掘抑止工法を提供する。
【0014】
この工法によれば、現地でコンクリートブロックを打設する際、コンクリートブロック内に可撓性を有するロープをインサートとして隣り合うコンクリートブロック同士を順に連結することができるので、各コンクリートブロック同士は比較的自由に動き得るフレキシブルな構造となる。また、現地でコンクリートブロックを打設することにより、該コンクリートブロックを形成するセメントの一部が地面にしみ込み、地面とコンクリートブロック間の摩擦が大きく取れるとともに、ブロックの移動・据え付け作業を無くすことができる。さらに、ロープを使用するので、錆の発生が無く、長期間、連結機能を維持できる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記コンクリートブロックは、平面視十字形でなる護岸越流洗掘抑止工法を提供する。
【0016】
この工法によれば、平面視十字形のコンクリートブロックを敷設面に所定の間隔を開けて規則的に敷設することができる。また、ブロック間の隙間を大きくして、揚力を逃がすことができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記各コンクリートブロック間の隙間で囲まれる空間に、ガレキを充填してなる護岸越流洗掘抑止工法を提供する。
【0018】
この工法によれば、大量に発生したコンクリートガレキ等をコンクリートブロック間の隙間で囲まれる空間に充填して有効に活用することができる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1又は3記載の構成において、上記コンクリートブロックの天端に突起を設けてなる護岸越流洗掘抑止工法を提供する。
【0020】
この工法によれば、ブロックの天端に突起を付けることにより、その突起で水の流れ等を弱めることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明は、可撓性を有するロープでコンクリートブロック間を連結することにより、各コンクリートブロック間がフレキシブルな構造となり、それぞれのコンクリートブロックを堤防陸側法尻部周辺の形状に沿って密着した状態で地面に据え付けできる。また、現地でコンクリートブロックを打設することにより、該コンクリートブロックを形成するセメントの一部が地面にしみ込み、地面とコンクリートブロック間の摩擦が大きく取れ、洗掘に強い法尻部が得られる。さらに、ブロックの移動・据え付け作業が無くなるので施工が簡略化されて安価に施工することができる。また、ロープを使用するので、錆の発生が無く、長期間、連結機能を維持できる。
【0022】
請求項2記載の発明は、敷設面に所定の間隔を開けてコンクリートブロックを規則的に敷設することができるとともに、ブロック間の隙間を大きくして揚力を逃がすことができるので、ブロックが水流等で地盤から浮き上がるのを防止して据え付け強度を向上させることができる。
【0023】
請求項3記載の発明は、大量に発生したコンクリートガレキ等を空間に充填してガレキ等を有効に活用することができるので、震災等で大量に発生したガレキ等の処理が簡単になる。
【0024】
請求項4記載の発明は、ブロックの天端に突起を付けることにより、水の流れ等を弱めることができるので、水流等に対してより強い護岸が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る護岸越流洗掘抑止工法を適用した護岸堤防の縦断面図。
【図2】堤防陸側法尻部周辺に敷設したコンクリートブロック敷設面の概略平面図。
【図3】同上コンクリートブロック敷設面の概略側面図。
【図4】複数個のコンクリートブロックをロープで連結した状態を示す拡大側面図。
【図5】複数個のコンクリートブロックをロープで連結した状態を示す拡大平面図。
【図6】コンクリートブロックをロープで連結した状態を示す一部切欠平面図。
【図7】コンクリートブロックをロープで連結した状態を示す一部切欠平面図。
【図8】コンクリートブロックをロープで連結した状態を示す一部切欠平面図。
【図9】コンクリートブロックの敷設例を説明する図。
【図10】護岸越流による洗掘の一例を説明する説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は海中または土中に敷設した場合であっても錆による強度の低下を無くすことができるとともに、据え付け箇所の形状が平面で無くても簡単に対応することができる護岸越流洗掘抑止工法を提供するという目的を達成するために、護岸堤防を越えた水流・水圧により堤防陸側法尻部周辺が洗掘されるのを抑える護岸越流洗掘抑止工法であって、現場でのブロック成形時に、可撓性を有するロープを隣り合うコンクリートブロックに跨がらせてインサートし、該ロープで隣り合うコンクリートブロック同士を順に連結して前記法尻部周辺に敷設することにより実現した。
【0027】
以下、本発明の実施形態による護岸越流洗掘抑止工法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明に係る護岸越流洗掘抑止工法を適用した護岸堤防の縦断面図である。同図において、符号10は護岸堤防である。該護岸堤防10は、海または河川に沿ってほぼ水平に構築されて表法面11の安定を図る。また、堤防陸側の裏法面12の平坦な法尻部13には、洪水時の洗掘等を防止するための洗掘防止構体14が構築されている。
【0029】
前記洗掘防止構体14は、図1及び図3に示すように、地面15上に玉砂利16等を敷設し、その玉砂利16上に図示しないブロック型枠を縦横方向に間隔をおいて網の目状(格子状)に配置し、そのブロック型枠内にコンクリートを打設し、養生期間をおいて型枠を解体撤去して格子状に規則正しく並んだ複数個のコンクリートブロック17,17…を設置してなるものである。また、各コンクリートブロック17は、図2及び図5に示すように平面視十字形をなし、天端(上面)には平面視四角状をした突起17aが一体に形成されている。
【0030】
なお、各コンクリートブロック17は、ブロック型枠内にコンクリートを打設する際、隣り合うコンクリートブロック17,17内を通って可撓性を有するロープ18がインサートされ、養生後は該ロープ18を通して隣り合うコンクリートブロック17,17同士が互いに連結されて一体化される。
【0031】
この場合、図6に示すように、前記ロープ18は、その一端部に結び18aを設け、そして、その他端部分18bを隣接の型枠内に配設し、他の該型枠内に配設された他のロープ18の他端部分18bと相互にオーバーラップさせ、この状態で型枠内にコンクリートを打設してコンクリートブロック17,17…相互間を該ロープ18,18…で連結させることができる。
【0032】
また、図7に示すように、複数の隣接コンクリートブロック17,17…相互間を、前記ロープ18,18…で連結する場合等においては、該ロープ18の両端部に前記結び18a,18aを設け、該結び18a,18aを両端部に配置されているコンクリートブロック17,17に埋設されるようにし、そして、その中間部分を該両端部のコンクリートブロック17,17間に配設されているコンクリートブロック17,17…を挿通させることによって該一連のコンクリートブロック17,17…を連結してもよい。
【0033】
更にまた、図8に示すように、隣接のコンクリートブロック17,17を該ロープ18にて連結する場合において、該ロープ18の両端部に夫々前記結び18a,18aを設け、一方の結び18aを一方のコンクリートブロック17に、更に、他方の結び18aを
隣接の他方のコンクリートブロック17内に配設して隣接相互間のコンクリートブロック17,17を連結することができる。
【0034】
尚、コンクリートブロック17,17…のロープ18,18による連結手段は、前述以外の連結手段を採択することもできることは当然である。
【0035】
このように可撓性を有するロープ18を、隣り合うコンクリートブロック17,17間を連結する連結部材として使用した場合では、例えば地面15(あるいは法面)が平坦でなくても、ロープ18を屈曲させることにより地面15の形状に合わせて各コンクリートブロック17,17…を互いに変位させ、簡単に地面15の形状に合った配置にすることができる。
【0036】
また、その後、養生期間をおいて型枠を解体撤去し、その形成された複数個のコンクリートブロック17,17…間の各隙間に砂利、あるいはコンクリート等のガレキ19等を詰める。なお、ガレキ19として、例えば震災等で大量に発生したガレキを使用すると、処理に困っているガレキを大量に処理することが可能になる。さらに、コンクリートブロック17,17…間の各隙間にガレキ19等を詰めた後からは、その上に覆土を施すと、野芝等の張芝で植生できる。
【0037】
前記ロープ18としては、例えば撚りロープで形成される。この撚りロープは、ストランドを少なくとも3本以上引き揃えて加撚りしたものである。また、本実施例のロープでは、ストランド中に鞘成分を熱融着成分とする芯鞘型熱融着フィラメントが含有されている。一般に、ストランドは複数本のフィラメントからなるものであり、複数本のフィラメントがいずれも芯鞘型熱融着フィラメントと共に単層フィラメント等が混合含有されていてもよい。芯鞘型熱融着フィラメントとしては、例えば鞘成分が低融点ポリエステルで芯成分が高融点ポリエステルで構築されたフィラメントが採用される。このフィラメントに熱を加えると、芯成分は溶融又は軟化しないけれども、鞘成分が溶融又は軟化して、ストランド中のフィラメント相互間又はストランド間が熱溶融される。そして、この熱溶融着後に鞘成分が固化することにより、撚りロープは、フィラメント及びストランドが動きにくくなり、高剛性化する。
【0038】
したがって、このような施工法では、施工現場(堤防陸側法尻部13)で、コンクリートブロック17の型枠を地面15上に並べてコンクリートを直接打設し、インサートしたロープ18で連結するという簡単な操作で、強度が高く一体化した法尻部周辺構造を構築することができるので、施工性を大きく改善できる。
【0039】
特に、可撓性を有するロープ18でコンクリートブロック間17,17間を連結することによりフレキシブルな構造となり、堤防陸側法尻部13周辺の形状に沿って各コンクリートブロック17,17…を地面15に密着した状態で据え付けできる。
【0040】
また、現地の法尻部13においてコンクリートブロック17,17…を地面15上で直接打設することにより、コンクリートブロック17を形成するセメントの一部が地面15内にしみ込み、該地面15とコンクリートブロック17間がさらに密着して摩擦が大きく取れるので、より強固な洗掘防止構体が得られる。さらに、コンクリートブロック17の移動・据え付け作業が無くなり施工が簡略化され、安価に施工することができる。
【0041】
また、ポリエステル等の可撓性を有するロープ18を使用するので、錆の発生が無く、長期間、連結機能を維持できることになる。
【0042】
これにより、津波20等が護岸堤防10を越流して裏法面12を一気に流れても、堤防陸側の法尻部13の洗掘が抑えられ、護岸堤防の崩壊を防ぐことができる。
【0043】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明は堤防陸側法尻部周辺の地固め構造以外にも、堤防全体に亘って形成する際にも応用できる。
【符号の説明】
【0045】
10 護岸堤防
11 表法面
12 裏法面
13 法尻部
14 洗掘防止構体
15 地面
16 玉砂利
17 コンクリートブロック
17a 突起
18 ロープ
18a 結び
19 ガレキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
護岸堤防を越えた水流・水圧により堤防陸側法尻部周辺が洗掘されるのを抑える護岸越流洗掘抑止工法であって、
現場でのブロック成形時に、可撓性を有するロープを隣り合うコンクリートブロックに跨がらせてインサートし、該ロープで隣り合うコンクリートブロック同士を順に連結して前記法尻部周辺に敷設してなることを特徴とする護岸越流洗掘抑止工法。
【請求項2】
上記コンクリートブロックは、平面視十字形でなることを特徴とする請求項1記載の護岸越流洗掘抑止工法。
【請求項3】
上記各コンクリートブロック間の隙間で囲まれる空間に、ガレキを充填してなることを特徴とする請求項2記載の護岸越流洗掘抑止工法。
【請求項4】
上記コンクリートブロックの天端に突起を設けてなることを特徴とする請求項2又は3記載の護岸越流洗掘抑止工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−76263(P2013−76263A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216766(P2011−216766)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000226356)日建工学株式会社 (24)
【Fターム(参考)】