説明

豆乳飲料用乳化剤及びそれを含む豆乳飲料

【課題】豆乳飲料を長期保存した場合に発生しうるオイルリングを効果的に防止できる豆乳飲料用乳化剤及びそれを含む豆乳飲料を提供する。
【解決手段】HLB値11以上のショ糖脂肪酸エステル10〜30重量%、グリセリン脂肪酸エステル50〜75重量%、及びソルビタンモノ脂肪酸エステル10〜30重量%(但し、これらの合計で100重量%になるものとする)を含有してなり、かつHLB値が5〜7であるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆乳飲料用乳化剤及びそれを含む豆乳飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
豆乳飲料は、コーヒー乳飲料、紅茶乳飲料等の他の飲料と同様、長期間保存時の乳化不安定化によるオイルリング発生が問題となっている。
【0003】
乳化安定性を向上させるためには種々の解決手段が提案されており、例えば、特許文献1では、コーンスープ、コーヒー乳飲料、紅茶乳飲料において、HLBが6以上のショ糖脂肪酸エステル、平均重合度が8以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、HLBが6以上のソルビタン脂肪酸エステルを併用することが提案されている。しかし、豆乳飲料については検討されていないため、これを豆乳飲料に適用した場合には十分な乳化性能を発揮できず、オイルリング発生現象を抑制するには性能不十分であった。
【0004】
また、特許文献2には、コーヒー乳飲料、紅茶乳飲料、ミルクセーキ、フルーツ乳飲料、豆乳飲料において、オイルリング防止目的に、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルを併用することが開示されている。しかし、豆乳飲料については深く検討されておらず、性能的にも不十分であった。さらに、ショ糖脂肪酸エステルについては構成脂肪酸の例示列挙はあるが、特に限定されないと記載されており、それ以外の記載はない。
【0005】
また、特許文献3には、コーヒー乳飲料用途の乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステルを併用することが開示されているが、これは低pHのコーヒー乳飲料用の技術であり、豆乳飲料については記載されていない。
【0006】
さらに、特許文献4には、ショ糖脂肪酸エステル4〜10%、グリセリン脂肪酸エステル15〜45%、コハク酸モノグリ25〜50%、ソルビタン脂肪酸エステル5〜10%からなる乳化剤成分に加え、キサンタンガム、カゼインナトリウム、又はカラギーナンといった安定剤を6〜26%併用することが開示されているが、これもオイルリング防止という点では不十分であった。
【特許文献1】特開2004−81002号公報
【特許文献2】特開2002−65157号公報
【特許文献3】特開2006−141358号公報
【特許文献4】特開昭63−226266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、乳化安定性が向上し、豆乳飲料を長期保存した場合に発生しうるオイルリングを効果的に防止できる豆乳飲料用乳化剤及びそれを含む豆乳飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の豆乳飲料用乳化剤は、上記の課題を解決するために、HLB値11以上のショ糖脂肪酸エステル10〜30重量%、グリセリン脂肪酸エステル50〜75重量%、及びソルビタンモノ脂肪酸エステル10〜30重量%(但し、これらの合計で100重量%になるものとする)を含有してなり、かつHLB値が5〜7であるものとする。
【0009】
上記において、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びソルビタンモノ脂肪酸エステルのそれぞれが、構成脂肪酸として炭素数16〜18の飽和脂肪酸を90重量%以上含有することが好ましい。
【0010】
本発明の豆乳飲用は、上記した本発明の豆乳飲料用乳化剤を0.05〜0.5重量%含有するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の乳化剤によれば、5℃〜37℃という広い温度域で長期間にわたり豆乳飲料のオイルリングの発生を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の乳化剤は、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びソルビタンモノ脂肪酸エステルの3種の乳化剤からなる乳化剤組成物であって、特に豆乳飲料のオイルリングの発生を抑制するために、上記の通り、HLB値11以上のショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びソルビタンモノ脂肪酸エステルを特定の割合で配合してなるものとする。
【0013】
すなわち、ショ糖脂肪酸エステルの配合割合は10〜30%(重量%、以下同様)であり、この範囲外であるとオイルリングが発生し易くなる。グリセリン脂肪酸エステルの配合割合は50〜75%であり、この範囲外であるとオイルリングが発生したり、乳化状態を保持できず油脂が分離したりする。さらにソルビタンモノ脂肪酸エステルの配合割合は10〜30%であり、この範囲外である場合もオイルリングが発生したり、乳化状態を保持できず油脂が分離したりする。
【0014】
また、ショ糖脂肪酸エステルのHLB値が11未満であると乳化剤組成物自体の水への溶解性が低下するので、作業性が悪くなるだけでなく、水への溶解性が低いため、乳化性能を発揮しにくい。ショ糖脂肪酸エステルのHLB値は15以上であるのが好ましい。
【0015】
さらに、上記各乳化剤が混合された組成物としてのHLB値が5〜7であることが必要であり、HLB値が5未満であるか又は7を越える場合、オイルリングの発生を十分に抑制できない。
【0016】
ショ糖脂肪酸エステルは構成脂肪酸の90%以上がステアリン酸及びパルミチン酸のいずれか、又はこれらの混合物であるのが好ましい。残りの10%未満はパルミチン酸とステアリン酸を除く炭素数8〜22の飽和又は不飽和型脂肪酸であってもよい。構成脂肪酸の炭素数が14未満の場合、又は構成脂肪酸が不飽和型脂肪酸の場合は、乳化性が低下するだけでなく、味の面でも問題が生じるので、これらを主たる構成脂肪酸とするのは好ましくない。また、この炭素数が20を越える場合は溶性が低下し、結果的に乳化性が低下して十分な効果を発揮しにくいので、これらを主たる構成脂肪酸とするのも好ましくない。
【0017】
グリセリン脂肪酸エステルとソルビタンモノ脂肪酸エステルの構成脂肪酸も、パルミチン酸又はステアリン酸のいずれか又はこれらの混合物であることが好ましい。残りの10%未満は、パルミチン酸とステアリン酸を除く炭素数8〜22の飽和又は不飽和型脂肪酸であってもよい。炭素数8〜14未満の脂肪酸は味の低下をもたらし、乳化安定性も低下する。また脂肪酸が不飽和型であると、乳化安定性が低下するだけでなく、乳化剤自体の酸化が起こり、やはり味が低下する。また、炭素数が20を越えると水溶性が低下するので、結果的に乳化性が低下して十分な効果を発揮しにくい。従って、これらを主たる構成脂肪酸とするのも好ましくない。
【0018】
ソルビタン脂肪酸エステルはモノエステルを使用する。ジエステル又はトリエステルであると、乳化性が低下し、発明の目的を達成できないためである。
【0019】
上記した本発明の乳化剤を使用することで豆乳飲料のオイルリング発生防止が可能となるが、さらにカラギーナン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、微結晶セルロースなどの安定剤を併用することにより効果を一層向上させることもできる。中でもカラギーナンの使用が好ましく、カラギーナンを0.03〜0.2%使用することでオイルリングの発生抑制効果がより向上する。カラギーナンにはラムダ(λ)、イオタ(ι)、カッパ(κ)の3タイプがあるが、いずれのカラギーナンでもよい。
【0020】
本発明の乳化剤の豆乳飲料中配合量としては、0.05〜0.5%が適当である。0.5%を超えると乳化剤自体の風味が感じられるようになり好ましくなく、0.05%未満であると乳化が不十分となり目的を達成できない。
【0021】
本発明でいう豆乳飲料とは、豆乳を主成分とし、ショ糖等の糖分、植物性油脂、塩分等を添加して、乳化剤で安定化させた飲料全般を指し、コーヒー、紅茶、フルーツ香料等を添加して種々のフレーバーを付加したものを含むものとする。本発明の豆乳飲料には、豆乳飲料に通常用いられる上記以外の各種添加物、すなわちカルシウム強化剤、pH調整剤等を必要に応じて配合することもできる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
[実施例、比較例]
表1に示す配合割合(但し、残部は水)に従って、コーヒー配合豆乳飲料を調製し、その安定性を評価した。乳化剤としては、表2に示す各成分を混合したものをそれぞれ用いた。なお、表2の左欄の括弧内は構成脂肪酸を示す。
【0024】
【表1】

【0025】
具体的には、表1に示した成分のうち油脂以外の成分を混合した後、70℃で加熱した。次に油脂を加えてホモミキサーで乳化した後、ホモジナイザーにて15MPaの圧力で均質化処理した。121℃で15分間の殺菌をした後、5℃、20℃、37℃の3水準で保存し、1ヵ月後の安定性を以下の基準で目視評価した。結果を表2に示す。
○:オイルリングが認められないか、あるいは極めて少ない
△:オイルリングが認められるが軽い振とうで分散する
×:オイルリングが多く認められ、軽い振とうでは分散しない、或いは油脂が分離する
【0026】
【表2】

【0027】
表2に示されたように、実施例の豆乳飲料はいずれも5℃では1ヶ月保存後も実質的にオイルリングが発生せず、20℃及び37℃でも比較例のものと比較するとオイルリング抑止効果が顕著に優れていることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLB値11以上のショ糖脂肪酸エステル10〜30重量%、グリセリン脂肪酸エステル50〜75重量%、及びソルビタンモノ脂肪酸エステル10〜30重量%(但し、これらの合計で100重量%になるものとする)を含有してなり、かつHLB値が5〜7であることを特徴とする豆乳飲料用乳化剤。
【請求項2】
前記ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びソルビタンモノ脂肪酸エステルのそれぞれが、構成脂肪酸として炭素数16〜18の飽和脂肪酸を90重量%以上含有することを特徴とする、請求項1に記載の豆乳飲料用乳化剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の豆乳飲料用乳化剤を0.05〜0.5重量%含有することを特徴とする豆乳飲料。

【公開番号】特開2008−289371(P2008−289371A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135219(P2007−135219)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】