説明

貝殻粉末焼成物からなる原生生物および/または有害物質抑制剤

ヒト・環境にやさしく無害な天然無機廃棄物である貝殻の有効利用として、効果の高い原生生物または有害物質抑制剤を提供することを目的とし、金属成分存在下で炭酸カルシウムを主成分とする貝の貝殻粉末を焼成することにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、炭酸カルシウムを主成分とするホタテ貝殻の粉砕焼成処理物に関するものであり、特に、細菌やカビなどの繁殖を抑制する作用を有し、およびダイオキシン、ホルムアルデヒド、錆などの有害物質を分解する作用を有する、前記粉砕焼成処理物に関する。
【背景技術】
貝の貝殻は、産業廃棄物として大量に発生するものであり、例えば、北海道のホタテ貝生産量は年間40万トン以上に達しているところ、この40%(約16万トン)程度は貝殻の部分であり、大部分が廃棄物処理されている。しかも、ホタテ貝の養殖は年々拡大しており、その廃棄物の処理が大きな問題となっていることから、その再利用を図ることは重要な意義を有する。
ところで、除菌剤や抗菌剤として、無機系、有機系、天然系の材料が知られている。無機系の材料として、抗菌性の金属(銀、銅、亜鉛など)をゼオライト、シリカゲル、セラミックなどに結合させた金属化合物が開発されている。有機系材料としては、殺菌剤、殺虫剤、防カビ剤としても用いられている。また、天然系材料としては主に抗菌性を有する天然素材からの抽出物が用いられている。
一般に、無機系の除菌・抗菌材料は、有機系材料に比べて、汗などに溶解せず、ガス化しないので皮膚障害や呼吸器障害を生じる可能性は低いが、その効果は緩く、程度も弱い。さらに、新たな耐抗菌の出現や金属アレルギー発症の問題が発生している。一方、有機系材料は、殺菌剤・殺虫剤・防カビ剤・防腐剤としても使われている薬剤類であり、直接作用するための効果は早く強いが、人体への影響も大きい。また、天然系材料は揮発性や溶出性があり、有機系と同様に健康被害の可能性が高いものもある。
例えば、原生生物の一例として、レジオネラ属菌・大腸菌群の抑制には、一般には塩素系薬剤が使用されているが、この塩素系薬剤の過剰な量を注入すると、トリハロメタンの発生、設備の腐食の恐れがあり、藻類などと反応し、ダイオキシン類の生成も危惧されている。また、温泉などではpHの関係で、pH7.5では殺菌力が50%、pH9.0では3.1%と激減し、温泉成分と塩素系薬剤の反応で鉄、マンガン等と酸化による着色などが起こる。また、保管、取扱いは、専門的知識が必要であり、泉質等により塩素系薬剤が使用できない場合には、オゾン殺菌、紫外線殺菌、銀イオン殺菌なども適用できるが、設備投資が多額になるといった欠点を有する。
このような課題を克服するために、特開2001−199823号公報には、ホタテ貝の貝殻粉末を単独または他の無機物と混合して、焼成温度、好ましくは800℃以上、より好ましくは900℃以上、特に900℃〜1100℃で焼成してなる、O−157等の大腸菌用抗菌剤が開示されている。
また、特開2001−26508号公報には、貝殻を不活性ガス雰囲気で加熱、昇温し、最終到達温度700〜2500℃で焼成してなる細菌またはウィルスに対する抗菌剤が開示されている。
さらに、特開2002−255714号公報には、ホタテ貝の貝殻を600〜700℃といった、完全な酸化カルシウム形態とならないような温度で焼成することによる細菌抑制剤が開示されている。
しかしながら、これら開示による抗菌剤または抑制剤では、原生生物または有害物質に対して効果が十分に得られない場合があり、さらに効果の高い抑制剤が希求されているのが現状である。
【発明の開示】
したがって、本発明の課題は、原生生物および/または有害物質に対し、より優れた抑制作用を示し、かつ安全性も高い抑制剤を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行う中で、金属を含有する物質の存在下で炭酸カルシウムを主成分とする貝の貝殻粉末を焼成することにより、焼成後の組成物が、原生生物に対し、損傷・増殖阻害活性を有し、また有害物質に対し分解活性を有することを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、炭酸カルシウムを主成分とする貝の貝殻粉末を、金属を含有する物質の存在下で焼成した成分を含有する、原生生物および/または有害物質抑制剤に関する。
本発明は、さらに、貝がホタテ貝である、前記抑制剤に関する。
また、本発明は、原生生物が、細菌またはカビである、前記抑制剤に関する。
さらに本発明は、有害物質が、ダイオキシン、ホルムアルデヒドまたはカビである、前記抑制剤に関する。
本発明は、さらにまた、炭酸カルシウムおよび酸化カルシウムを含有する、前記抑制剤に関する。
また、本発明は、ミネラル成分を含有する、前記抑制剤に関する。
さらに、本発明は、焼成温度が600〜800℃である、前記抑制剤に関する。
本発明は、また、焼成後の粉末粒度が、0.01μm〜10mmである、前記抑制剤に関する。
本発明は、さらにまた、金属が鉄、アルミニウムおよび銅からなる群から選択される1種または2種以上である、前記抑制剤に関する。
また、本発明は、鉄系、アルミニウム系または銅系容器で焼成される、前記抑制剤に関する。
さらに、本発明は、粉末状である、前記抑制剤に関する。
また、本発明は、液状である、前記抑制剤に関する。
本発明は、また、炭酸カルシウムを主成分とする貝の貝殻を粉砕し、金属を含有する物質の存在下において、600〜800℃で焼成してなる、原生生物および/または有害物質抑制剤の製造方法に関する。
本発明は、さらにまた、炭酸カルシウムを主成分とする貝の貝殻を粉砕し、鉄系、アルミニウム系または銅系容器内で、600〜800℃で焼成してなる、原生生物および/または有害物質抑制剤の製造方法に関する。
また、本発明は、前記方法によって製造された抑制剤を、圧力容器に入れ、次いで、磁化水を加え、加圧し、攪拌した後に減圧させ、さらに、沈殿後、上澄水をろ過することからなる、原生生物および/または有害物質抑制剤の製造方法。
に関する。
【発明の効果】
本発明の抑制剤は、細菌またはカビなどの原生生物および/または、ダイオキシン、ホルムアルデヒドなどの有害物質を顕著に抑制することができる。すなわち、これまで貝の貝殻粉末を焼成することからなる除菌・抗菌剤は、知られていたが(上記特許文献参照)、それらよりもさらに高い損傷・増殖阻害活性を有する抑制剤が、本発明において実現された。
さらに、本発明による抑制剤を、液状にすることによって、適用が容易となり、除菌・消臭クリーナー、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品酸化抑制剤などの幅広い分野での応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
図1は、湯の循環方式配置図を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の抑制剤の好適な態様について詳細に説明する。
本発明の抑制剤は、金属を含有する物質の存在下で炭酸カルシウムを主成分とする貝の貝殻粉末を焼成してなることを特徴とするものである。
本明細書において、「抑制」とは、原生生物の増殖を防止するほか、これらの原生生物を抗生する作用、さらに、有害物質を分解する作用を含むものである。
本発明の抑制剤が抑制作用を示す原生生物および有害物質の種類は多様であるが、原生生物として、O−157などの大腸菌、黄色ぶどう球菌、緑膿菌、白癬菌、レジオネラ菌、カビ、および有害物質としてダイオキシンまたはホルムアルデヒド等が挙げられる。
また、本発明における貝の貝殻は、炭酸カルシウムを主成分とし、人体に安全な貝殻であれば特に制限されないが、好ましくはホタテ貝の貝殻である。
本発明における原生生物および/または有害物質を抑制するメカニズムは、必ずしも明らかではないが、その作用は貝殻粉の主成分CaCO(炭酸カルシウム)および焼成処理により生成するCaO(酸化カルシウム)などの酸化物が起因して、細菌、カビといった原生生物が損傷されるかまたはその増殖が阻害され、あるいは、ダイオキシンまたはホルムアルデヒドなどの有害物質が分解されるものと考えられる。このことは、分析により、ヒドロキシルラジカルの発生が確認されたことから、焼成貝殻中に一時的に発生する活性酸素種(スーパーオキシド)による酸化作用によるものと推測される。この活性酸素種とは、ヒドロキシラジカル(OH・)、過酸化水素(H)、酸素ラジカル(O)など電子が1個不足している酸素化合物分子であり、一般に安定な負イオンではないことから、これが、「脱塩素化反応」および「アルカリ(加水)分解」に作用すると考えられる。この活性酸素腫は、フリーラジカルと呼ばれ、細菌等に対する酸化反応(他の相手物質から電子を奪う)に寄与するところ、本発明においては、金属を含有する物質の存在下で貝殻粉末を焼成することにより、活性酸素種の発生を促すものと考えられる。また、焼成後の粉末が、完全な酸化カルシウムの形態ではなく、炭酸カルシウムを含有する方が、充分な損傷・増殖阻害又は分解活性を有し、かつ、その持続力も高いという結果がでている。
本明細書において、前記の「金属を含有する物質」とは、熱伝導率が高いものであれば特に制限されないが、好ましくは、鉄、アルミニウムおよび/または銅からなる群から選択される1種または2種以上の金属を含有する物質である。例えば、鉄系、アルミニウム系または銅系容器中で焼成する場合は、該容器を構成する金属成分もここでいう金属を含有する物質に相当する。なお、前記「系」とは、同属類を意味するものであり、上記金属を含有する合金、酸化物も含む。
例えば、ホタテ貝殻を鉄容器内に入れ焼成窯において焼成処理を施すと、鉄は熱伝導率が高いためホタテ貝殻より先に酸化されることから、容器内部は、還元雰囲気になり、さらに、金属の触媒作用によりホタテ貝殻を同温度で焼成した場合、サヤ鉢焼成と鉄容器焼成で比較するとpHを高くすることができ、活性酸素種の発生を促進すると考えられているミネラル成分の溶出を抑える作用に寄与する。
本発明において鉄系の容器内にさらに金属を含有する物質を添加して、それとともに貝殻を焼成するとより効果的である。
本明細書において、「ミネラル成分」とは、貝殻焼成後に残存する無機成分を意味し、例えば、カルシウム、ケイ素、アルミニウム、鉄、硫黄、チタン、マンガン等が挙げられる。
焼成温度は、一般に、800℃以上の高温度では、貝殻中の酸化カルシウム成分量が多くなり、900℃以上では、完全な酸化カルシウムとなってしまい、さらに、1000℃以上では、貝殻中のミネラル成分も消失してしまうことから、600〜800℃、とくに、約700℃が好ましい。
しかし、反応は他の条件にも依存することから、この焼成温度は、適宜調節することができる。
焼成後の粉末粒度は、対象となる原生生物または有害物質の種類に応じて、適宜変更することができるが、即効性、持続性等の観点からは、0.01μm〜10mmが好ましく、また、製造にろ過工程が含まれる場合には、1mm〜5mmが好ましい。
本発明による抑制剤は、粉末状または液状であることができる。
また、本発明による抑制剤は、炭酸カルシウムを主成分とする貝の貝殻を粉砕する工程、および金属を含有する物質の存在下、例えば、鉄系、アルミニウム系または銅系容器内で、600〜800℃で焼成する工程、を含む製造方法によって、粉末状の原生生物および/または有害物質抑制剤を製造することができ、適宜、さらに、圧力容器に入れ、磁化水を加える工程、加圧する工程、攪拌後、減圧させる工程、および沈殿後、上澄水をろ過する工程、を加えることにより液状の原生生物および/または有害物質抑制剤を製造することができる。
ここで、前記の「加圧する工程」においては、加圧ポンプによって、圧力値10〜50kg/f、好ましくは、10〜20kg/fに加圧することが好ましい。
また、前記の「攪拌後、減圧させる工程」においては、空気分を混入しない様に、一分間当たり120回転以下の速度で攪拌し、減圧させることが好ましい。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
また、本発明を使用する場合、例えば、貯湯槽に用いる場合、土襄袋などに入れて沈めるのみで良く、特別な専門知識を必要としない。
【実施例】
実施例1:粉末状の原生生物または有害物質抑制剤の製造
炭酸カルシウムを主成分とするホタテ貝殻を粉砕後、該ホタテ貝殻を鉄焼窯に入れ、600〜800℃の温度下で、粉砕物の大きさに応じて4〜24時間焼成する。
実施形態として、ホタテ貝殻を煮沸洗浄(不純物を除く)し、乾燥後、直径0.5cm以下に粉砕後、粉砕物を鉄容器にて700℃で12時間焼成し、常温まで自然冷却後したものを、実験データとして用いる。また、ろ過機投入の場合は、1〜3mmのものを用いる。
以下にその試験結果を示す。
表1は、ホタテ貝殻の未加熱粉並びにサヤ鉢容器および鉄容器において焼成処理した粉末の成分値を示すものであり、焼成処理より、有機成分からなる不純物が除去され、相対的にミネラル分の含有率が増大されたことがわかる。さらに、鉄容器において焼成された粉末は、サヤ鉢容器よりも一層高いミネラル分を保持することが判明した。

表2は、ホタテ貝殻の未加熱粉、500℃焼成粉および700℃焼成粉のpH・EC値(ホタテ貝殻粉1%水溶液)を示すものである。

表3は、CaCO(炭酸カルシウム)およびCaO(酸化カルシウム)のpH・EC値(CaCO、CaO各1%水溶液)であり、これは、ホタテ貝殻700℃焼成粉との比較データとなる。

表2および3のデータから、ホタテ貝殻700℃焼成粉のpHは、CaCOとCaOの中間値であり、電気伝導度は、CaOよりも高い値であり、抑制効果について最良の状態であると考えられる。
ここで、本発明の一態様として、レジオネラ属菌・大腸菌群に対する実証試験方法を示す。貯湯槽には本発明品を土襄袋に入れ、ヘアーキャッチャーには網袋を利用し、施行した(図1)。
表4は、施設Aで、掛け流し式で源泉温度96℃貯湯槽40t風呂場5階毎分300Lの送湯量で本発明を貯湯槽に土襄袋を用い、20kgを投入した場合のデータである。

表5は、施設Bで、循環方式(側面吐出・底面還水方式)で源泉温度52℃貯湯槽20t風呂場1階毎分300Lの送湯量で本発明を貯湯槽20tに土襄袋を用いて20kgを投入し、およびろ過機内にセラミックろ過材を10%本発明に交換した場合のデータである(ろ過材100kg)。

他の効果として排水の腐敗臭が少なくなり、配管内のバイオフィルム(生物膜、ぬめり)の付着が低減した。また、貯湯槽の壁面の汚れが付着し難くなった。
表6は、施設Cで、循環方式(側面吐出・底面還水方式)で源泉温度12℃貯湯槽10tに土襄袋を用いて5kgを投入し、ヘアーキャッチャーに1kg投入した場合のデータである。

他の効果として排水の腐敗臭が少なくなり、配管内のバイオフィルム(生物膜、ぬめり)の付着が低減した(配管清掃を施行前1ヶ月に1回実施していたが、2ヶ月に1回の頻度に削減)。また、貯湯槽の壁面の汚れが付着し難くなった。
表7は、施設Dで、循環方式(側面吐出・底面還水方式)で源泉温度12℃貯湯槽10tに土襄袋を用いて5kgを投入し、ヘアーキャッチャーに1kg投入した場合のデータである。

当該施設は、公衆浴場で残留塩素濃度が0.4PPMであり、塩素併用で使用した。
他の効果として排水の腐敗臭が少なくなり、配管内のバイオフィルムの付着が低減した。また、貯湯槽の壁面の汚れが付着し難くなった。
表8は、施設Eで、循環方式(側面吐出・底面還水方式)で源泉温度12℃貯湯槽10tに土襄袋を用いて5kgを投入し、ヘアーキャッチャーに1kg投入した場合のデータである。

当該施設は、公衆浴場で残留塩素濃度が0.4PPMであり、塩素併用で使用した。
他の効果として排水の腐敗臭が少なくなり、配管内のバイオフィルムの付着が低減した。また、貯湯槽の壁面の汚れが付着し難くなった。
表9は、施設Fで、循環方式(側面吐出・底面還水方式)で源泉温度88℃貯湯槽200t風呂場3階毎分300Lの送湯量で、本発明を貯湯槽200tに土襄袋を用いて100kgを投入し、ヘアーキャッチャーに1kg投入した場合のデータである。

当該施設は、施工前塩素使用で残留塩素濃度が0.4PPMであり、弊害として、温泉成分と塩素の反応で薄茶色であったが、本発明施工後、塩素無使用で泉色も無色になった。
その他の効果として、排水の腐敗臭が低減した。配管内のバイオフィルムの付着がなくなり、貯湯槽の壁面の汚れが付着し難くなった。
実施例2:液状の原生生物または有害物質抑制剤の製造
(i)水溶液の調製
実施例1で調製した1〜5mm以下のホタテ貝殻焼成粉200gを、圧力容器(内容積10l、SUS316)に入れる。次いで、水道水を磁化器(ポリビニルパイプに磁石をN/S交互に5列配置)を通して、圧力容器に9l入れる。続いて、加圧ポンプによって、圧力容器に15kg/fに加圧し、低速攪拌機(120回転/分、SUS316)を用いて5分間攪拌する。次いで、磁化水1lを用いて、空気分混入を防止しながら減圧して、30分間放置する。貝殻粉が沈殿後、上澄水をろ過器(マイクロフィルター0.5μm)を用いてろ過することにより、所望の水溶液が得られる。
(ii)酸化還元電位試験値
表10は、本発明の上記工程による水溶液と、他の工程による水溶液の酸化還元電位の比較データである。

本発明の水溶液は、他の製法による水溶液と比べ、酸化還元電位が著しく低下した。これは、磁化器に水を通過させることにより、水分子構造(クラスター)を分解するといった周知の技術に加え、本発明に焼成粉末を加えることによってアルカリ度が増大し、かかる焼成粉末に含有される金属ミネラル類などの相乗効果により一層融合され、さらに、加圧・減圧の工程によって、融合状態が促進されたことから、酸化還元電位が低下したものと考えられる。表10の試験値から明らかな通り、得られた水溶液(pH=12)は、アルカリイオン還元水であることがわかる。
(iii)適用結果
この水溶液を、市販の噴射機を用いて噴霧したところ、O−157などの大腸菌、黄色ぶどう球菌、緑膿菌、白癬菌、レジオネラ菌に顕著な除菌作用が確認された。
また、タバコ臭、汚染臭、ペット臭など匂いが強いところに噴霧したところ、かかる臭いが消臭された。
さらに、米飯類、魚肉類な食品類に添加または噴霧したところ、食品独特の異臭が消え、酸化が抑制され、鮮度が保持されるといった効果も確認された。
さらにまた、上記水溶液を、皮膚に適用したところ、角質柔軟作用がみられた。
また、酵素類において、BS菌、バチルス菌などの納豆菌種に対しては、相対的に増殖が確認された。
さらに、紫外線を照射すると、色素の分解、ポリマー類の分解をいった分解作用も確認でき、これは、焼成貝殻に含有されるチタンが存在したためだと考えられる。
本実施例で用いたホタテ貝殻700℃焼成粉および天然素材を原料とする焼成貝殻であり、食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律に規定する既存添加物名簿(平成8年4月15日厚生省告示第百二十号)の二百十八に焼成カルシウム(貝殻を焼成して得られたカルシウム化合物を主成分とするもの)として、人体に安全であることが公認されている。
【産業上の利用可能性】
本発明による抑制剤を用いることによって、細菌等による温泉、食品汚染の抑制や白癬菌の抑制など、幅広い分野での応用が期待され、関連産業の発達に寄与するところ大である。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウムを主成分とする貝の貝殻粉末を、金属を含有する物質の存在下で焼成した成分を含有する、原生生物および/または有害物質抑制剤。
【請求項2】
貝がホタテ貝である、請求の範囲第1項記載の抑制剤。
【請求項3】
原生生物が、細菌またはカビである、請求の範囲第1項または第2項記載の抑制剤。
【請求項4】
有害物質が、ダイオキシン、ホルムアルデヒドまたは錆である、請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載の抑制剤。
【請求項5】
炭酸カルシウムおよび酸化カルシウムを含有する、請求の範囲第1〜4項のいずれかに記載の抑制剤。
【請求項6】
ミネラル成分を含有する、請求の範囲第1〜5項のいずれかに記載の抑制剤。
【請求項7】
焼成温度が600〜800℃である、請求の範囲第1〜6項のいずれかに記載の抑制剤。
【請求項8】
焼成後の粉末粒度が、0.01μm〜10mmである、請求の範囲第1〜7項のいずれかに記載の抑制剤。
【請求項9】
金属が、鉄、アルミニウムおよび銅からなる群から選択される1種または2種以上である、請求の範囲第1〜8項のいずれかに記載の抑制剤。
【請求項10】
鉄系、アルミニウム系または銅系容器で焼成される、請求の範囲第1〜9項のいずれかに記載の抑制剤。
【請求項11】
粉末状である、請求の範囲第1〜10項のいずれかに記載の抑制剤。
【請求項12】
液状である、請求の範囲第1〜10項のいずれかに記載の抑制剤。
【請求項13】
炭酸カルシウムを主成分とする貝の貝殻を粉砕し、金属を含有する物質の存在下において、600〜800℃で焼成してなる、原生生物および/または有害物質抑制剤の製造方法。
【請求項14】
炭酸カルシウムを主成分とする貝の貝殻を粉砕し、鉄系、アルミニウム系または銅系容器内で、600〜800℃で焼成してなる、原生生物および/または有害物質抑制剤の製造方法。
【請求項15】
請求の範囲第13項または第14項に記載の製造方法によって製造された抑制剤を、圧力容器に入れ、次いで、磁化水を加え、加圧し、攪拌した後に減圧させ、さらに、沈殿後、上澄水をろ過することからなる、原生生物および/または有害物質抑制剤の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/032630
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【発行日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−522005(P2004−522005)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012904
【国際出願日】平成15年10月8日(2003.10.8)
【特許番号】特許第3727329号(P3727329)
【特許公報発行日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(597107467)
【Fターム(参考)】