説明

負圧湿式スプリンクラー設備

【課題】低層階でも所定の監視圧力を得ることができる負圧湿式予作動式スプリンクラー設備を提供する。
【解決手段】負圧湿式予作動式スプリンクラー設備において、排水管13の末端に逆止弁16を設けて貯水槽7の水が排水管13側に流れ込まないようにし、最下層階の吸引分岐配管12a(P)より下側位置の排水管13に水位検出器17を設け、水位検出器17より下方で排水管13内の水を排出できる排水ポンプ18を設け、水位検出器17からの信号に応じて排水ポンプ18を運転・停止し、排水管13内の水位を最下層階の吸引分岐配管12a(P)より下側に保ったため、最下層に設置した負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の監視圧力を上層階と同等とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低層階でも所定の監視圧力を得ることができる負圧湿式スプリンクラー設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、負圧湿式予作動式スプリンクラー設備が、いくつかの物件に施工されている。この負圧湿式予作動式スプリンクラー設備は、予作動弁の二次側配管内に水を充たし、二次側配管内を常時負圧化することにより、スプリンクラーヘッドに破損等が生じた場合に、誤放水を防止し、かつ火災時に速やかに放水をする機能を備えたものである。
【0003】
図5及び図6は、上述した従来の負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の一例を示す概略説明図である。
この図5及び図6において、負圧湿式予作動式スプリンクラー設備101は、各階に設置基準に従って設置されたスプリンクラーヘッド102と、消火水主管である一次側配管103及び各階のスプリンクラーヘッド102に消火用の水を導く二次側配管104からなる給水配管105と、一次側配管103と二次側配管104の間に設けられた負圧湿式予作動弁106と、貯水槽107内の水を吸い込み加圧して前記給水配管105の一次側配管103に送り込む加圧送水装置108と、スプリンクラーヘッド102よりも早く火災を検知して火災信号を出力する火災感知器109と、火災感知器109からの火災信号を基に加圧送水装置108及び負圧湿式予作動弁106の開閉を制御する制御部110と、前記二次側配管104内を負圧状態に維持する負圧状態確保手段111とから構成されている。
【0004】
さらに詳説すると、スプリンクラーヘッド102は、個々に独立して作動するものである。
給水配管105は、前記加圧送水装置108に接続された一次側配管103、各スプリンクラーヘッド102に接続され二次側配管104、及び一次側配管103と二次側配管104との間を負圧湿式予作動弁106で連通し、前記加圧送水装置108からの消火用の水を導く配管系統である。
【0005】
火災感知器109は、スプリンクラーヘッド102と同じ階に設置され、スプリンクラーヘッド102よりも早く火災を検知して火災信号を出力するセンサーである。
【0006】
負圧状態確保手段111は、前記各階の二次側配管104の立ち上げ分岐管104aに吸引分岐配管112aの一端側を接続し、当該吸引分岐配管112aの他端側を排水管113に連通し、排水管113の一端を気水分離装置114、吸引主管112の順で経由して真空ポンプ115に連通し、排水管113の他端を貯水槽107の水内に開放し、かつ、気水分離装置114を最上階の吸引分岐配管112aの上部に設け、かつ前記吸引分岐配管112aに、立ち上げ分岐管104aの側から真空スイッチ116、電磁弁117の順で配置してなり、前記二次側配管104の内部を負圧状態に維持することができる。
【0007】
また、二次側配管104の末端には、末端試験装置118が設けられている。
なお、火災感知器109は図示しない信号線によって防災受信盤120に接続されている。また、前記防災受信盤120は、図示しない信号線によって制御部110に接続されている。火災感知器109で検出した火災信号は図示しない信号線を介して防災受信盤120で受信されると、防災受信盤120において所定の受信処理を行うほか、その信号を図示しない信号線を介して制御部110に送出する。制御部110は、図示しない信号線で負圧湿式予作動弁106に接続されている。
【0008】
なお、図面中の各図において表示される弁のシンボルが、黒く塗りつぶされている場合は弁が閉止状態であることを示し、塗りつぶされていない場合は弁が開放状態であることを示している。
【0009】
負圧湿式予作動式スプリンクラー設備101において、通常時、一次側配管103には加圧状態の水が充填されており、また、二次側配管104には負圧状態の水が充填されている。
【0010】
真空スイッチ116は、図示しない信号線を介して制御部110に接続されており、制御部110は図示しない信号線で電磁弁117に接続されている。真空スイッチ116が圧力上昇を検出すると、その検出信号が制御部110に与えられる。制御部110は、その信号を基に電磁弁117を開放するようになっている。
【0011】
[火災発生時の動作]
火災が発生すると、火災発生部直上かその付近の火災感知器109が火災を検出して火災信号を発生する。この火災信号は、防災受信盤120を経由して制御部110に送出される。制御部110は、負圧湿式予作動弁106を開放状態にするとともに、加圧送水装置108を作動させる。これにより、一次側配管103、負圧湿式予作動弁106、二次側配管104を介してスプリンクラーヘッド102に消火用の水が圧送されて、二次側配管104内が負圧状態から加圧状態と変化し、スプリンクラーヘッド102から消火用の水が散布される。これにより、火災を最小限に防止することができる。
【0012】
[誤放水時の動作]
スプリンクラーヘッド102が破損すると、スプリンクラーヘッド102の開口部より空気が流入し、二次側配管104内の圧力が上昇する。すると、真空スイッチ116は、これを検出すると検出信号を制御部110に送出する。制御部110は、その検出信号を基に電磁弁117を開放させる。そして、真空ポンプ115の運転により当該故障スプリンクラーヘッド102の接続されている二次側配管104の内部を連続して吸引する。これにより、スプリンクラーヘッド102からの放水が防止できる。
【0013】
気水分離器114にて、空気と、分離された水は、排水管113を経由して貯水槽107へ排水されるが、排水管113内は負圧状態であるため、図4に示すように、真空ポンプ115の吸引力に応じた高さまで水が引き上げられており、その高さを超えた水が排水管113に溜まることになる。このとき、排水管113の各部には高さに応じた水頭圧が生じることになる。
【0014】
例えば、真空ポンプ115の吸引圧力が−0.08〔MPa〕であった場合、水は貯水槽の水面から高さ約8〔m〕まで引き上げられる。なお、WLは水位を示す。このような状態で排水管113の水位WLより5〔m〕低い位置に真空スイッチ116を設置した場合、真空スイッチ116の付近には5〔m〕の水頭圧が生じることになる。これは、配管内における水位WLよりも上層階に設置した真空スイッチ116の監視圧力は−0.08〔MPa〕であったとしても、排水管113内の水の水位よりも下層階に設置した真空スイッチ116にあっては、その監視圧力が−0.03〔MPa〕にしかならないことになる。
【0015】
また、建築物への給水配管105にあっては、建築物の梁や空調設備のダクト等があるため、特に二次側配管104は、これらを迂回するように下側にU字状に折曲しなければならず、このような場合にあっては、折曲部に空気が溜まり、それにより水頭圧が生じるため、二次側配管104の末端に位置するスプリンクラーヘッド102付近の監視圧力はさらに上昇する。
【0016】
これによりスプリンクラーヘッド102の破損や誤作動あるいは配管等の破損があって、スプリンクラーヘッド102の誤放水を防止できない恐れがあった。このような理由から、排水管113内の水の水位よりも下層階に真空スイッチ116を設置する場合にあっては、負圧湿式予作動式スプリンクラー設備を配置することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述した従来技術の欠点を解消し、低層階でも所定の監視圧力を得ることができる負圧湿式予作動式スプリンクラー設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、 スプリンクラーヘッドと、
消火水主管である一次側配管及びスプリンクラーヘッドに消火用の水を導く二次側配管からなる給水配管と、
一次側配管と二次側配管の間に設けられた弁部と、
貯水槽内の水を吸い込み加圧して前記給水配管の一次側配管に送り込む加圧送水装置と、
スプリンクラーヘッドよりも早く火災を検知して火災信号を出力する火災感知器と、
火災感知器からの火災信号を基に加圧送水装置及び弁部の開閉を制御する制御部と、
前記二次側配管の立ち上げ部に吸引分岐配管の一端側を接続し、当該吸引分岐配管の他端側を排水管に連通し、排水管の一端を気水分離装置の下部に連通し、気水分離装置の上部を吸引主管を介して真空ポンプに連通し、かつ前記吸引分岐配管に、二次側配管の立ち上げ部側から真空スイッチ、電磁弁の順で配置してなる負圧状態確保手段とを備え、負圧状態確保手段により二次側配管内の水を負圧状態とし、これを維持するようにした負圧湿式スプリンクラー設備において、
吸引分岐配管より下側位置の排水管に水位検出器を設け、水位検出器より下方で排水管内の水を排出できる排水ポンプを設け、水位検出器からの信号に応じて排水ポンプを運転・停止する手段を設けたことを特徴とするものである。
【0019】
また、上記構成において、排水ポンプの上側で排水管を分岐させ、その分岐排水管の末端に逆止弁を設けたことも特徴とするものである。
【0020】
上記目的を達成するため、請求項3記載の発明は、スプリンクラーヘッドと、
消火水主管である一次側配管及びスプリンクラーヘッドに消火用の水を導く二次側配管からなる給水配管と、
一次側配管と二次側配管の間に設けられた弁部と、
貯水槽内の水を吸い込み加圧して前記給水配管の一次側配管に送り込む加圧送水装置と、
スプリンクラーヘッドよりも早く火災を検知して火災信号を出力する火災感知器と、
火災感知器からの火災信号を基に加圧送水装置及び弁部の開閉を制御する制御部と、
前記二次側配管の立ち上げ部に吸引分岐配管の一端側を接続し、当該吸引分岐配管の他端側を排水管に連通し、前記吸引分岐配管に、二次側配管の立ち上げ部側から真空スイッチ、電磁弁の順で配置し、
かつ、水と空気を分離する気水分離装置を吸引分岐配管の位置より下側に設け、
前記気水分離装置に内部の水位を検出する水位検出器を設け、
前記排水管の他端側を気水分離装置の下側に連通し、
空気を吸引する真空ポンプを設け、
気水分離装置の上部を吸引管を介して真空ポンプに連通し、
気水分離装置の下部に水を排出する排水ポンプを設け、
水位検出器からの信号に応じて排水ポンプを運転・停止する手段からなる負圧状態及び水位確保手段とを備えたことを特徴とする負圧湿式スプリンクラー設備にある。
【0021】
また、上記構成において、気水分離装置下部に接続される排水管を分岐させ、その分岐排水管の末端に逆止弁を設けたこともその特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、排水管内において最下層の吸引分岐配管の部分に水が溜まらないようにしたので、最下層に設置した負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の監視圧力を上層階と同等とすることができ、負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の特徴であるスプリンクラーヘッドの誤作動時や配管の破損時の誤り放水防止効果を階層によらず安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る負圧湿式スプリンクラー設備の第1の実施形態における概略的説明図である。
【図2】本発明に係る負圧湿式スプリンクラー設備の第2の実施形態における概略的説明図である。
【図3】本発明に係る負圧湿式スプリンクラー設備のさらに他の実施形態における概略的説明図である。
【図4】本発明に係る負圧湿式スプリンクラー設備のさらに他の実施形態における概略的説明図である。
【図5】従来の負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の概略的説明図である。
【図6】従来の負圧湿式予作動式スプリンクラー設備において真空ポンプ作動時の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
図1において、符号1は負圧湿式予作動式スプリンクラー設備である。この負圧湿式予作動式スプリンクラー設備1は、各階に設置基準に従って設置されたスプリンクラーヘッド2と、消火水主管である一次側配管3及び各階のスプリンクラーヘッド2に消火用の水を導く二次側配管4からなる給水配管5と、一次側配管3と二次側配管4の間に設けられた負圧湿式予作動弁6と、貯水槽7内の水を吸い込み加圧して前記給水配管5の一次側配管3に送り込む加圧送水装置8と、スプリンクラーヘッド2よりも早く火災を検知して火災信号を出力する火災感知器9と、火災感知器9からの火災信号を基に加圧送水装置8及び負圧湿式予作動弁6の開閉を制御する制御部10と、前記二次側配管4内を負圧状態に維持する負圧状態確保手段11とを有している。
【0025】
さらに説明すると、スプリンクラーヘッド2は、個々に独立して作動するものである。
給水配管5は、前記加圧送水装置8に接続された一次側配管3と、各スプリンクラーヘッド2に接続された二次側配管4とからなり、一次側配管3と二次側配管4との間を負圧湿式予作動弁6で連通し、前記加圧送水装置8からの消火用の水を導くことができるようになっている。
【0026】
火災感知器9は、スプリンクラーヘッド2と同じ階に設置され、スプリンクラーヘッド2よりも早く火災を検知して火災信号を出力するセンサーである。
負圧状態確保手段11は、各階の二次側配管4の立ち上げ分岐管4aに吸引分岐配管12aの一端側を接続し、当該吸引分岐配管12aの他端側を排水管13に連通し、排水管13の一端を気水分離装置14の下部に連通し、気水分離装置14の上部を吸引主管12を介して真空ポンプ15に連通し、排水管13の末端に逆止弁16を設けて貯水槽7の水が排水管13側に流れ込まないようにし、最下層階の吸引分岐配管12aより下側に水位検出器17を設け、水位検出器17より下方で排水管13内の水を排出できる排水ポンプ18を設け、この排水ポンプ18の吐出管13aを水槽7の水の中まで延長し、排水管13の末端13bに逆止弁16を設けて貯水槽7の水が排水管13側に流れ込まないようにし、かつ前記吸引分岐配管12aに、立ち上げ分岐管4aの側から真空スイッチ20、電磁弁21の順で配置してなり、真空ポンプ15により二次側配管4の内部を負圧状態に維持するようになっている。
【0027】
また、二次側配管4の末端には、末端試験装置22が設けられている。
なお、火災感知器9は図示しない信号線によって防災受信盤25に接続されている。また、前記防災受信盤25は、図示しない信号線によって制御部10に接続されている。火災感知器9で検出した火災信号は図示しない信号線を介して防災受信盤25で受信されると、防災受信盤25において所定の受信処理を行うほか、その信号を図示しない信号線を介して制御部10に送出する。制御部10は、図示しない信号線を介して負圧湿式予作動弁6に接続されている。
【0028】
なお、図面中の各図において表示される弁のシンボルが、黒く塗りつぶされている場合は弁が閉止状態であることを示し、塗りつぶされていない場合は弁が開放状態であることを示している。以下、同じとする。
【0029】
この負圧湿式予作動式スプリンクラー設備1において、通常時、一次側配管3には加圧状態の水が充填されており、また、二次側配管4には負圧状態の水が充填されている。
【0030】
真空スイッチ20は、図示しない信号線を介して制御部10に接続されており、制御部10は図示しない信号線で電磁弁21に接続されている。真空スイッチ20が圧力上昇を検出すると、その検出信号が制御部10に与えられる。制御部10は、その信号を基に電磁弁21を開放するようになっている。そして、二次側配管4は、吸引分岐配管12a、排水管13、気水分離装置14及び吸引主管12を介して真空ポンプ15と連通状態になり、真空ポンプ15の運転により二次側配管4内を負圧状態に保つことができる。
【0031】
また、本実施形態では、図1に示すように、最下層の吸引分岐配管12a(符号P)より下方の排水管13に水位検出器17を設け、この水位検出器17よりさらに下方で排水管13内の水を排出できる排水ポンプ18を設け、この排水ポンプ18の吐出管13aを水槽7の水の中にまで延長し、排水管13の末端13bに逆止弁16を設け、貯水槽7の水が排水管13側に流れ込まないようにし、水位検出器17より上側に水があるときに排水ポンプ18を運転し、水位検出器17より所定位置まで排水管13内の水位が低下したときに排水ポンプ18を停止するようにしたものである。
【0032】
真空ポンプ15で吸引し、二次側配管4を負圧化したときに、余分な水は排水管13に流れ込み排水管13の水位が上昇する。
【0033】
水位検出器17により排水管13内の水位が所定の水位以上に達したと検出されたときに、排水ポンプ18を運転して排水管13内の水を排出する。
水位検出器17により排水管13内の水位が十分に低下したと検出されたときに、排水ポンプ18を停止する。なお、排水ポンプ18は、排水管13の方向に水が流入しない構造のポンプである。
【0034】
排水管13の末端13bには、逆止弁16が設けられているため、真空ポンプ15が運転されても、貯水槽7の水を吸引することがない。
このように運転されているので、排水管13の水位が最下層階の吸引分岐配管12a(符号P)より低くなるため、最下層階でも水頭圧の影響を受けることがなくなり、上層階と同様に負圧化できる。
【0035】
本実施形態によれば、排水管13内において最下層の吸引分岐配管12a(符号P)より下側に水が留まらないようにしたので、最下層に設置した負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の監視圧力を上層階と同等とすることができ、負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の特徴であるスプリンクラーヘッドの誤作動時や配管の破損時の誤り放水防止効果を階層によらず安定して得ることができる。
【0036】
図2は、本発明に係る負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の第2の実施形態における概略的説明図であって、図1に示す第1の実施形態と同一構成要素には同一の符号を付し、同一構成部分の説明を省略し、特徴部分のみ説明することにする。
【0037】
第2の実施形態では、図2に示すように、排水管13の最上部に配置していた気水分離器は廃止する。また、排水管13の最上部は、最上階の吸引分岐配管12aに直結する。
【0038】
この第2の実施形態では、最下層の吸引分岐配管12a(符号P)より下側に、気水分離タンク30が配置されるようにし、気水分離タンク30の下側を弁31を設けた導管32(分岐管32)を介して排水管13に連通し、気水分離タンク30の内部には水位検出器33を設け、かつ空気を吸引する真空ポンプ35を設けて、気水分離タンク30の上部を吸引管36を介して真空ポンプ35に連通し、気水分離タンク30の下部に水を排出する排水ポンプ37を設け、この排水ポンプ37の吐出管13aを水槽7の水の中にまで延長し、排水管13の末端13bに逆止弁38を設けて、貯水槽7の水が排水管13側に流れ込まないようにし、水位検出器33からの信号に応じて排水ポンプ37を運転・停止するようにしたものである。
【0039】
これらにより、負圧の確保と、水位を一定に確保できる負圧状態及び水位確保手段が構成されるものである。なお、排水ポンプ37は、気水分離タンク30、排水管13の方向に水が流入しない構造のポンプである。
【0040】
すなわち、気水分離タンク30に水が流入し水位検出器33が所定の上位置に水が達したことを検出したときに排水ポンプ37を運転し、気水分離タンク30内の水位が所定の下位置に低下したと水位検出器33が検出したとき排水ポンプ37の運転を停止するようにしたものである。
【0041】
これらにより、最下層階Pであっても、負圧の確保と、水位を一定に確保できるので、最下層に設置した負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の監視圧力を上層階と同等とすることができ、負圧湿式予作動式スプリンクラー設備の特徴であるスプリンクラーヘッドの誤作動時や配管の破損時の誤り放水防止効果を階層によらず安定して得ることができる。
【0042】
なお、第1の実施形態では、図1に示すように排水管13の末端13bに逆止弁16を設ける構成とし、また、第2の実施形態では、図2に示すように排水管13の末端13bに逆止弁38を設ける構成としたが、排水ポンプ(18、37)の排水能力が大きい場合には、図3や図4に示すように排水管13の末端13bと逆止弁16(38)を省略して、図3に示すように排水ポンプ18の吸入口に排水管13を直結し、あるいは、図4に示すように気水分離タンク30の導管32に直結する構成としてもよい。また、スプリンクラーヘッドの破損やその他不測の事態の発生により排水管13に水が排水される場合でも、消火設備上、予め排水管13に送られる排水量が少ないことがわかっており、既存の排水ポンプの排水能力でも充分排水可能な場合には、図3や図4に示すような直結構造にすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 負圧湿式予作動式スプリンクラー設備
2 スプリンクラーヘッド
3 一次側配管
4 二次側配管
5 給水配管
6 負圧湿式予作動弁
8 加圧送水装置
9 火災感知器
10 制御部
11 負圧状態確保手段
12a 吸引分岐配管
13 排水管
14 気水分離装置
15 真空ポンプ
16 逆止弁
17 水位検出器
18 排水ポンプ
19 末端試験弁
20 真空スイッチ
21 電磁弁
22 末端試験装置
25 防災受信盤
30 気水分離タンク
31 弁
32 分岐管
33 水位検出器
35 真空ポンプ
36 吸引管
37 排水ポンプ
38 逆止弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラーヘッドと、
消火水主管である一次側配管及びスプリンクラーヘッドに消火用の水を導く二次側配管からなる給水配管と、
一次側配管と二次側配管の間に設けられた弁部と、
貯水槽内の水を吸い込み加圧して前記給水配管の一次側配管に送り込む加圧送水装置と、
スプリンクラーヘッドよりも早く火災を検知して火災信号を出力する火災感知器と、
火災感知器からの火災信号を基に加圧送水装置及び弁部の開閉を制御する制御部と、
前記二次側配管の立ち上げ部に吸引分岐配管の一端側を接続し、当該吸引分岐配管の他端側を排水管に連通し、排水管の一端を気水分離装置の下部に連通し、気水分離装置の上部を吸引主管を介して真空ポンプに連通し、かつ前記吸引分岐配管に、二次側配管の立ち上げ部側から真空スイッチ、電磁弁の順で配置してなる負圧状態確保手段とを備え、負圧状態確保手段により二次側配管内の水を負圧状態とし、これを維持するようにした負圧湿式スプリンクラー設備において、
吸引分岐配管より下側位置の排水管に水位検出器を設け、水位検出器より下方で排水管内の水を排出できる排水ポンプを設け、水位検出器からの信号に応じて排水ポンプを運転・停止する手段を設けたことを特徴とする負圧湿式スプリンクラー設備。
【請求項2】
排水ポンプの上側で排水管を分岐させ、その分岐排水管の末端に逆止弁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の負圧湿式スプリンクラー設備。
【請求項3】
スプリンクラーヘッドと、
消火水主管である一次側配管及びスプリンクラーヘッドに消火用の水を導く二次側配管からなる給水配管と、
一次側配管と二次側配管の間に設けられた弁部と、
貯水槽内の水を吸い込み加圧して前記給水配管の一次側配管に送り込む加圧送水装置と、
スプリンクラーヘッドよりも早く火災を検知して火災信号を出力する火災感知器と、
火災感知器からの火災信号を基に加圧送水装置及び弁部の開閉を制御する制御部と、
前記二次側配管の立ち上げ部に吸引分岐配管の一端側を接続し、当該吸引分岐配管の他端側を排水管に連通し、前記吸引分岐配管に、二次側配管の立ち上げ部側から真空スイッチ、電磁弁の順で配置し、
かつ、水と空気を分離する気水分離装置を吸引分岐配管の位置より下側に設け、
前記気水分離装置に内部の水位を検出する水位検出器を設け、
前記排水管の他端側を気水分離装置の下側に連通し、
空気を吸引する真空ポンプを設け、
気水分離装置の上部を吸引管を介して真空ポンプに連通し、
気水分離装置の下部に水を排出する排水ポンプを設け、
水位検出器からの信号に応じて排水ポンプを運転・停止する手段からなる負圧状態及び水位確保手段とを備えたことを特徴とする負圧湿式スプリンクラー設備。
【請求項4】
気水分離装置下部に接続される排水管を分岐させ、その分岐排水管の末端に逆止弁を設けたことを特徴とする請求項3に記載の負圧湿式スプリンクラー設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−105920(P2012−105920A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258788(P2010−258788)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000111074)株式会社LIXILニッタン (93)
【Fターム(参考)】