説明

負圧/正圧切替装置

【課題】 迅速に吸着ノズルに負圧および正圧を生じさせることができ、かつ負圧駆動部を設ける必要のない負圧/正圧切替装置を提供する。
【解決手段】 負圧/正圧切替装置はエゼクタノズル9と、エゼクタノズル9の出口側に連結されたエゼクタパイプ8と、エゼクタノズル9の入口側に接続された正圧ガス供給部14aとを備えている。エゼクタノズル9の出口側とエゼクタパイプ8の入口側との間に、出力孔12が接続され、この出力孔12に吸着ノズル13が接続されている。エゼクタパイプ8の出口側に、エゼクタパイプ8の出口側を開閉して、吸着ノズル13に負圧または正圧を生じさせる開閉ヘッド6が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の部品の吸着と離脱を繰り返し行なう吸着ノズルに対して、大気圧に比べ負圧及び正圧を交互に供給するための負圧/正圧切替装置に係り、とりわけ高速で負圧と正圧を繰り返し切替えることができる負圧/正圧切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4により、従来の負圧/正圧切替装置について説明する。図4に示すように、負圧/正圧切替装置20は、大気圧に比べて負圧と正圧とをそれぞれ発生させる負圧空気供給源23と正圧空気供給源22とに接続された電磁弁21を備えている。図4において、電磁弁21に対して負圧空気供給源23および正圧空気供給源22からそれぞれ負圧空気(以下負圧という)および正圧空気(以下、正圧という)が供給され、電磁弁21により負圧/正圧の切替えが行なわれる。この際、電磁弁21の出力側ポート24に接続された供給配管25を介して吸着ノズル26に負圧および正圧が交互に供給され、吸着ノズル26によって電子部品等の部品wの吸着/離脱が行なわれるようになっている。
【0003】
このような負圧/正圧切替装置20において、電磁弁21の動作速度に限界があり、また例えば正圧から負圧に切替えるためには、まず供給配管25内の正圧ガスの流れを止めた後、供給配管25内に滞留している正圧を負圧により吸引する必要がある。この場合、供給配管25内では正圧を吸引し終えて大気圧とした後に負圧に変える必要があり、電磁弁21が切替わっても、吸着ノズル26に負圧を供給する際、時間遅れが発生してしまうことがある。他方、負圧/正圧切替装置20において、負圧から正圧に切替える場合も同様に、電磁弁21が切替わった瞬間においては供給配管25内は負圧になっている。このため、供給配管25内を正圧とした後、吸着ノズル26に正圧を供給する必要があり、時間的ロスが生じてしまう。
【0004】
更に電磁弁21を切替えることにより、負圧空気供給源23又は正圧空気供給源22からの空気の流れが一旦停止するため、電磁弁21の切替え後は空気の慣性力により動作が更に遅れてしまう。
【0005】
以上から従来の電磁弁21を用いた方式では動作の遅延要素が多過ぎ、高速化のネックとなっていた。
【0006】
また電磁弁21に、負圧時の吸引で吸着ノズル26よりゴミを吸込むことが有り、不具合を発生させることが有った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように従来の負圧/正圧切替装置20においては、高速での負圧/正圧の切替えはむずかしい。更に、このような負圧/正圧切替装置20において、負圧供給源23と正圧供給源22の両方を必要とするため、正圧供給源22のみを有する安価な負圧/正圧切替装置が望まれている。
【0008】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、高速で負圧と正圧を切替えることができ、かつ安価に作製することができる負圧/正圧切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エゼクタノズルと、エゼクタノズルの出口側に連結され、エゼクタノズルの内径より大きな内径を有するエゼクタパイプと、エゼクタノズルの入口側に連結され、エゼクタノズルに正圧ガスを供給する正圧ガス供給部と、エゼクタノズルの出口側とエゼクタパイプの入口側との間に、出力孔を介して連通された作動部と、エゼクタパイプの出口側に設けられ、このエゼクタパイプの出口側を開閉して作動部に負圧または正圧を生じさせる開閉弁と、を備えたことを特徴とする負圧/正圧切替装置である。
【0010】
本発明は、開閉弁はアクチュエータによって直線運動してエゼクタパイプの出口側を開閉する開閉ヘッドからなることを特徴とする負圧/正圧切替装置である。
【0011】
本発明は、アクチュエータはソレノイドからなることを特徴とする負圧/正圧切替装置である。
【0012】
本発明は、アクチュエータは圧電素子からなることを特徴とする負圧/正圧切替装置である。
【0013】
本発明は、エゼクタノズルおよびエゼクタパイプは、エゼクタブロック内に保持され、出力孔はエゼクタブロックに形成されていることを特徴とする負圧/正圧切替装置である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、負圧と正圧の切替えを正圧ガスの供給を停止することなく行えると共に構造が簡単なので高速かつ容易に行なうことができる。また正圧ガス供給部のみを設ければよいのでゴミを吸引することが無い上、負圧ガス供給部を別途設置する必要がなく、安価に負圧/正圧切替装置を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図3は、本発明による負圧/正圧切替装置の一実施の形態を示す図である。
【0016】
図1乃至図3において、負圧/正圧切替装置は、ベース2と、ベース2上の固定面2aに固定されるとともに固定面2aに平行に延びる貫通孔3aを有するエゼクタブロック3と、ベース2上の固定面2aに平行に取付けられ、かつエゼクタブロック3に対向して配置されたソレノイド(アクチュエータ)4と、エゼクタブロック3の貫通孔3a内に配置されたエゼクタノズル9およびエゼクタパイプ8とを備えている。
【0017】
このうち、エゼクタブロック3は、上述のようにベース2の固定面2aと平行に延びる貫通孔3aを有するとともに、更にこの貫通孔3aと直交する出力孔12を有している。貫通孔3aのうちエゼクタノズル9の入口側に供給孔10が設けられ、この供給孔10には正圧空気(以下、正圧という)を供給するための正圧ガス供給部14aが供給配管14を介して接続されている。またエゼクタノズル9の出口側には、エゼクタパイプ8が貫通孔3a内に嵌合されている。
【0018】
エゼクタノズル9はエゼクタブロック3の供給孔10側から貫通孔3a内に挿入され、またエゼクタノズル9は中心に貫通孔9aを有し、エゼクタパイプ8側の端部に円錐状凸部9cが形成されている。エゼクタパイプ8には貫通孔8aが形成され、この貫通孔8aのエゼクタノズル9側の端部にエゼクタノズル9の円錐状凸部9cの先端と対向して円錐状凹部8bが形成され、これら円錐状凸部9cと円錐状凹部8bにより間隙dが形成されている。
【0019】
エゼクタブロック3の貫通孔3a内にエゼクタノズル9の支持ピース9bが設けられている。エゼクタパイプ8とエゼクタノズル9の支持ピース9bは空気室3bを介して対向し、また上述した出力孔12は空気室3bを介して間隙dに連通している。エゼクタパイプ8の貫通孔8aは間隙dに連通し、かつ貫通孔8aの出口側には大気開放された排気孔11が形成されている。
【0020】
他方、ソレノイド4にはシャフト5が取付けられ、ソレノイド4のシャフト5には、排気孔11と対向して開閉ヘッド(開閉弁)6が設けられており、開閉ヘッド6の排気孔11と対向する面にはパッド6aが取付けられている。そしてこの開閉ヘッド6により、排気孔11が開閉する。
【0021】
エゼクタブロック3と開閉ヘッド6の間には付勢手段であるスプリング7が設けられ、このスプリング7は排気孔11とパッド6aとを離間させるよう開閉ヘッド6を付勢する。またエゼクタブロック3の出力孔12には、例えば吸着ノズル13などの作動部が螺合されている。
【0022】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について詳述する。
【0023】
まず図1においてソレノイド4の動きを説明する。ソレノイド4が励磁されるとシャフト5はエゼクタブロック3側に移動し、励磁が切れるとスプリング7に付勢されてエゼクタブロック3から離間する方向に作動する。
【0024】
図2はソレノイド4の励磁が切れた状態のエゼクタブロック3および開閉ヘッド6を示す。図2において、開閉ヘッド6はスプリング7に付勢されて矢印Lに示す方向に作動し、開閉ヘッド6に取付けられたパッド6aがエゼクタパイプ8の排気孔11から離間し、これにより排気孔11が大気開放される。
【0025】
この間、正圧ガス供給部14aから正圧空気が、エゼクタブロック3の供給孔10に供給される。エゼクタブロック3の供給孔10に供給された正圧空気は、エゼクタノズル9の貫通孔9aを介して先端の円錐状凸部9cからエゼクタパイプ8側に噴射され、その後排気孔11から大気に放出される。
【0026】
ところで図1乃至図3に示すように、エゼクタノズル9の貫通孔9aの内径よりエゼクタパイプ8の貫通孔8aの内径が大きくなっている。このため、エゼクタノズル9の円錐状凸部9cとエゼクタパイプ8の円錐状凹部8bとの間に形成された間隙dにおいて、エゼクタノズル9の円錐状凸部9cから噴射された正圧空気により周辺の空気が巻き込まれる。このように巻き込まれた空気は、排気孔11から排出される(エゼクタ効果)。
【0027】
この場合、エゼクタブロック3内に形成された空気室3b内の空気が間隙dから吸出されて正圧空気とともに排気孔11から大気に放出される。このため、空気室3b内が負圧となり、出力孔12から空気が流入する。出力孔12は、上述のように吸着ノズル13が連通されているので、吸着ノズル13の先端部に負圧が生じ、電子部品等の微細部品wが吸着ノズル13に吸着される。
【0028】
他方、図3に示すように、ソレノイド4(図1参照)が励磁されると、シャフト5がエゼクタブロック3側に移動し、開閉ヘッド6のパッド6aがエゼクタパイプ8の排気孔11に押付けられて排気孔11が閉塞される。このとき、排気孔11からの正圧空気の放出が停止する。この間、正圧ガス供給部14aから供給孔10に引き続き正圧空気が送られ、供給孔10内に送られた正圧空気は間隙dを介して空気室3b内に流入し、その後正圧空気は出力孔12から排気される(図3参照)。
【0029】
この場合、出力孔12は吸着ノズル13に連通されているため、吸着ノズル13に正圧が生じ、吸着ノズル13先端の吸着された微細部品wが強制的に吸着ノズル13から離脱する。同時に吸着ノズル13内に付着されている塵などが外方へ排出される。
【0030】
なお、本実施の形態において、排気孔11の開閉をソレノイド(アクチュエータ)4により行なっているが、アクチュエータとして圧電素子など高速で応答するものを用いてもよい。
【0031】
以上のように本実施の形態によれば、正圧ガス供給部14aから正圧空気を供給孔10に供給しながら、ソレノイド4により開閉ヘッド6を駆動して排気孔11を開閉するだけで、容易かつ迅速に吸着ノズル13に負圧および正圧を生じさせることができる。また正圧ガス供給部14aからの正圧空気を供給孔10に連続で供給するだけで、負圧と正圧を吸着ノズル13に生じさせることができ、このため負圧供給部を別途に設ける必要はなく、安価に負圧/正圧切替装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による負圧/正圧切替装置の一実施の形態を示す部分断面図。
【図2】図1の要部拡大図であって負圧発生の作用を示す図。
【図3】図1の要部拡大図であって正圧発生の作用を示す図。
【図4】従来技術の負圧/正圧切替装置を示す概念図。
【符号の説明】
【0033】
1 負圧/正圧切替装置
2 ベース
2a 固定面
3 エゼクタブロック
3a 貫通孔
3b 空気室
4 ソレノイド
5 シャフト
6 開閉ヘッド(開閉弁)
6a パッド
7 スプリング
8 エゼクタパイプ
8a 貫通孔
8b 円錐状凹部
9 エゼクタノズル
9a 貫通孔
9b 支持ピース
9c 円錐状凸部
10 供給孔
11 排気孔
12 出力孔
13 吸着ノズル
14 供給配管
14a 正圧ガス供給部
w 微細部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エゼクタノズルと、
エゼクタノズルの出口側に連結され、エゼクタノズルの内径より大きな内径を有するエゼクタパイプと、
エゼクタノズルの入口側に連結され、エゼクタノズルに正圧ガスを供給する正圧ガス供給部と、
エゼクタノズルの出口側とエゼクタパイプの入口側との間に、出力孔を介して連通された作動部と、
エゼクタパイプの出口側に設けられ、このエゼクタパイプの出口側を開閉して作動部に負圧または正圧を生じさせる開閉弁と、を備えたことを特徴とする負圧/正圧切替装置。
【請求項2】
開閉弁はアクチュエータによって直線運動してエゼクタパイプの出口側を開閉する開閉ヘッドからなることを特徴とする請求項1記載の負圧/正圧切替装置。
【請求項3】
アクチュエータはソレノイドからなることを特徴とする請求項2記載の負圧/正圧切替装置。
【請求項4】
アクチュエータは圧電素子からなることを特徴とする請求項2記載の負圧/正圧切替装置。
【請求項5】
エゼクタノズルおよびエゼクタパイプは、エゼクタブロック内に保持され、出力孔はエゼクタブロックに形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の負圧/正圧切替装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−326805(P2006−326805A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157430(P2005−157430)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(591009705)株式会社 東京ウエルズ (47)
【Fターム(参考)】