説明

負荷変動器、増幅装置、無線通信装置、及び負荷変動器の動作方法

【課題】新規な負荷変動部を提供する。
【解決手段】通過信号に対する負荷の値を変更可能な負荷変動器13であって、通過信号が入力される入力部13aと、入力部13aに入力された通過信号に対する負荷の値を変更可能な負荷変動器本体13bと、負荷変動器本体13bから出力された通過信号を出力する出力部13cと、負荷を変動させる基準となる基準信号の時間的変動に応じて負荷変動器本体の負荷の値を変更するための制御信号が入力される制御信号入力部13dと、を備えている。制御信号は、基準信号の帯域幅の2倍以上のレートのデジタル信号である。負荷変動器本体13bは、制御信号に基づいて、負荷の値を、基準信号の帯域幅の2倍以上のレートで離散的に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷変動器、増幅装置、無線通信装置、及び負荷変動器の動作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力増幅器の高効率化において、ピーク電力の低減は重要技術の1つである。広帯域伝送を行う場合、変調方式としてW-CDMA,OFDMが導入されており、これらの信号は平均電力対ピーク電力比が大きいという特徴を持っている。
【0003】
このためこれらの信号を電力増幅器で増幅する場合、まれにしか発生しないピーク電力を出力する瞬間に対しても線形に増幅しなければならず、ピーク電力を出力可能な大出力の増幅器が必要となる。
従って、平均電力とピーク電力の比が大きい場合には、極端に大きな増幅器が必要となり、非常に無駄の多い、電力効率の低い装置になる。
【0004】
そこで、出力電力に応じて必要な分だけ増幅器を動作させる方式が有効である。そのための1つの方式として、ET方式又はEER方式などの電源変調方式(Supply Modulation:SM方式)がある。
もう1つの方式として、非特許文献1に示すように、負荷インピーダンスを変更する方式(Load Modulation:LM方式)がある。
【0005】
前者のSM方式は、増幅器の電源電圧を変化させて、出力電力を変化させるものである。一方、後者のLM方式は、増幅器の電源に一定電圧を印加するが、増幅器の出力側に接続された負荷インピーダンスを変化させる事で、出力電力を変化させる方式である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hossein Mashad Nemati et al.,"Evaluation of a GaN HEMT Transistor for Load- and Supply-Modulation Applications Using Intrinsic Waveform Measurements", IEEE MTT-S IMS, May 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LM方式では増幅器の出力側の負荷を変動させる負荷変動器が必要となる。また、負荷変動器は、高周波信号を扱う様々な状況で必要とされる。
本発明者らは、従来とは異なる発想で負荷を変動させることができる負荷変動器を新規に見出した。
そこで、本発明は、新規な増幅装置、無線通信装置、及び負荷変動器並びにその動作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、通過信号に対する負荷の値を変更可能な負荷変動器であって、通過信号が入力される入力部と、前記入力部に入力された通過信号に対する負荷の値を変更可能な負荷変動器本体と、前記負荷変動器本体から出力された通過信号を出力する出力部と、負荷を変動させる基準となる基準信号の時間的変動に応じて前記負荷変動器本体の負荷の値を変更するための制御信号が入力される制御信号入力部と、を備え、前記制御信号は、前記基準信号の帯域幅の2倍以上のレートのデジタル信号であり、前記負荷変動器本体は、前記制御信号に基づいて、負荷の値を、前記基準信号の帯域幅の2倍以上のレートで離散的に変更することを特徴とする負荷変動器である。
【0009】
上記本発明によれば、基準信号の帯域幅の2倍以上のレートで負荷の値が離散的に変更されるため、負荷変動器における負荷の変動を、離散的に行っても、基準信号の時間的変動の情報を保持できる。
【0010】
(2)他の観点からみた本発明は、信号を増幅する増幅装置であって、増幅器と、前記増幅器の出力側に接続された負荷変動器と、を備え、前記負荷変動器は、前記(1)記載の負荷変動器である。
【0011】
(3)前記基準信号は、前記増幅器によって増幅されるべき信号であるのが好ましい。
【0012】
(4)前記負荷変動器を通過する信号の位相の変化を補正する位相補正部を更に備えているのが好ましい。この場合、負荷変動器を通過する位相の変化を補正することができる。
【0013】
(5)前記増幅装置は、ロードモジュレーション方式であるのが好ましい。
【0014】
(6)他の観点からみた本発明は、前記(2)記載の増幅装置を通信信号の増幅のために備えた無線通信装置である。
【0015】
(7)他の観点からみた本発明は、負荷の値を変更可能な負荷変動器の動作方法であって、負荷を変動させる基準となる基準信号の時間的変動に応じて前記負荷変動器の負荷の値を変更させる際に、前記基準信号の帯域幅の2倍以上のレートで離散的に負荷の値を変更する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る増幅装置の回路図である。
【図2】効率特性図である。
【図3】第2実施形態に係る増幅装置の回路図である。
【図4】第3実施形態に係る増幅装置の回路図である。
【図5】入力信号及び出力信号のIQ平面図である。
【図6】入力電力に対する負荷の特性図である。
【図7】入力電力に対する負荷の特性図である。
【図8】第4実施形態に係る増幅装置の回路図(第1例)である。
【図9】(a)は入力電力、負荷、出力電力、ゲインの関係を示すテーブルであり、(b)は、入出力特性図である。
【図10】第4実施形態に係る増幅装置の回路図(第2例)である。
【図11】第5実施形態に係る増幅装置の回路図(第1例)である。
【図12】負荷制御部に設定された入力電力と負荷の関係テーブルである。
【図13】第5実施形態に係る増幅装置の回路図(第2例)である。
【図14】信号合成を用いた負荷変動部の回路図である。
【図15】信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置の第1例を示す回路図である。
【図16】信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置の第2例を示す回路図である。
【図17】信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置の第3例を示す回路図である。
【図18】信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置の第4例を示す回路図である。
【図19】LINC方式の増幅装置の回路図である。
【図20】可変位相器を用いた負荷変動部の回路図である。
【図21】負荷変動部におけるインピーダンス変動範囲を示すスミスチャートである。
【図22】(a)は、電圧差の変化と反射電力との関係を示すグラフであり、(b)は、電圧差の変化と通過電力との関係を示すグラフである。
【図23】可変位相器を用いた負荷変動部の回路図である。
【図24】可変位相器を用いた負荷変動部の回路図である。
【図25】可変位相器を用いた負荷変動部を有する増幅装置の回路図である。
【図26】負荷変動部の負荷変動範囲と、増幅器からみた負荷変動範囲の関係を示す説明図である。
【図27】可変インピーダンスの回路構成の例を示す図である。
【図28】ロス率の測定結果を示す図である。
【図29】分布定数線路のインピーダンスとロス率との関係を示す測定結果である。
【図30】インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部の回路図である。
【図31】可変位相器を複数用いた負荷変動部の回路図である。
【図32】可変位相器を複数用いた負荷変動部を有する増幅装置の回路図である。
【図33】(a)は、インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部の回路図であり、(b)は、スイッチング素子がOFFのときの回路状態を示す図であり、(c)はスイッチング素子がONのときの回路状態を示す図である。
【図34】図33(a)の負荷変動部の回路構成図である。
【図35】(a)は、インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部の回路図であり、(b)はスイッチング素子のON/OFFとインピーダンスの関係を示す表である。
【図36】(a)は、インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部の回路図であり、(b)は、スイッチング素子がONのときの回路状態を示す図であり、(c)はスイッチング素子がOFFのときの回路状態を示す図である。
【図37】図36(a)の負荷変動部の回路構成図である。
【図38】複数の部分負荷変動部を直列接続した負荷変動部の回路図である。
【図39】(a)は、隣接する部分負荷変動部の干渉の説明図であり、(b)は、干渉回避のため隣接する部分負荷変動部を離した状態の説明図である。
【図40】回路基板における部分負荷変動部の配置を示す図である。
【図41】部分負荷変動部の並列接続の例を示す図である。
【図42】インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部を有する増幅装置の回路図である。
【図43】インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部の回路である。
【図44】インピーダンスを離散的に変化させる方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明及びそれに関連した技術の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る増幅装置101を示している。この増幅装置101は、移動体通信システムにおけるモバイル端末又は基地局装置などの無線通信装置に搭載され、通信信号の増幅を行うために用いられる。無線通信装置は、OFDM(OFDMAを含む)、W−CDMAなどの広帯域信号を扱う方式に準拠したものである。OFMD及びW−CDMAなどの方式における信号は、ピーク電力がまれにしか発生しない。つまり、これらの方式における信号は、瞬時電力変動を伴う信号である。なお、OFMD及びW−CDMAなどの方式において、平均電力とピーク電力との比は、3dB以上となる。
【0018】
図1に示す増幅装置101は、一般的なLM方式に準拠した回路構成を有している。つまり、この増幅装置101の増幅器102には、位相情報を有するが振幅情報を有しない定包絡線信号(振幅が一定の信号)が入力として与えられる。
増幅器102の出力側に接続された負荷変動部103の負荷(インピーダンス)が変動することで、増幅器102の出力信号は、振幅変動する信号となる。負荷変動部103の負荷インピーダンスが入力信号の振幅変動に応じて変化することで、入力信号の位相及び振幅と同様の位相及び振幅を有する出力信号Poutが得られる。
【0019】
図1に示す増幅装置1は、入力信号であるI/Q信号に対する信号処理を行う処理部104を備えている。処理部104は、I/Q信号が示す振幅を演算する振幅演算部104aと、I/Q信号が示す位相を演算する位相演算部104bと、を備えている。つまり、処理部104は、I/Q信号に対するポーラ変調を行うポーラ(Polar)変調器となっている。
【0020】
さらに、処理部104は、振幅演算部104aによって演算された振幅rに基づいて、負荷変動部103の負荷インピーダンスを変動させるための制御信号を生成する負荷制御部104cを備えている。負荷制御部104cは、入力信号(I/Q信号)の振幅が小さいほど負荷変動部103の負荷インピーダンスを大きくし、入力信号の振幅が大きいほど、負荷変動部103の負荷インピーダンスを小さくするための制御信号を生成する。
【0021】
負荷制御部104cから出力された制御信号は、遅延調整部105によって遅延調整がなされた上で、負荷変動部103に与えられる。遅延調整部105を有していることで、増幅器102の出力信号が、制御信号に対して遅延又は先行していても、その遅延又は先行を解消して両信号のタイミングを一致させることができる。なお、遅延調整部105に代えて、又は、遅延調整部105に加えて、増幅器102の入出力経路(RF経路)上に遅延調整部を設けても良い。
【0022】
遅延調整部105は、遅延量を調整自在であり、例えば、増幅器102の温度特性によって、増幅器102へ入力された信号が増幅器102内を通過する時間が変化して、制御信号との時間差が生じても、その時間差を補正することができる。
【0023】
位相演算部104bが出力した位相信号(入力信号における位相情報だけを持つ信号)は、位相変調器106によって位相変調され、位相情報を有する定包絡線信号が生成される(図1のA1参照)。
つまり、位相演算部104b及び位相変調器106は、位相情報及び振幅情報が含まれている入力信号(I/Q信号)を、位相情報が含まれた定包絡線信号に変換する変換部として機能する。位相情報を有する定包絡線信号は、増幅器102への入力信号となる。
【0024】
増幅器102では、位相情報を有する定包絡線信号が増幅される。仮に、増幅器102の出力側の負荷インピーダンスが一定である場合、増幅器102からは、図1のB1に示すように、単に増幅された定包絡線信号が出力されるだけである。
【0025】
しかし、負荷変動部103の負荷インピーダンスは、負荷制御部104cから出力された制御信号に応じて変化するため、増幅器102の出力信号は、図1のC1に示すように、振幅変動する信号となる。制御信号は入力信号の振幅情報に基づいて生成されているため、増幅器102の出力信号における振幅変動は、入力信号における振幅変動と同様のものとなる。つまり、増幅装置101の出力信号Poutは、入力信号の位相及び振幅と同様の位相及び振幅を有する信号となる。出力信号Poutは、無線通信装置が有するアンテナから出力される。
【0026】
ここで、増幅器102の出力電圧をV、増幅器102の出力側の負荷インピーダンスをZとすると、増幅器102の出力電力Poutは、以下の式で表される。
Pout=V/Z
負荷インピーダンスを変動させることで、増幅器102の出力が変動することは、上記式からも明らかである。
【0027】
さて、第1実施形態における増幅器102は、D級、E級、F級などのスイッチング増幅器(Switching Amplifier)によって構成されている。スイッチング増幅器は、スイッチング動作する増幅器であり、デジタル増幅器(Digital Amplifier)とも呼ばれる。
スイッチング増幅器102は、基本的に、常に飽和状態で動作するため、理論的な電力効率は、出力電力の大きさに関わらず、常に100%である。
【0028】
スイッチング増幅器は、出力電力の大きさが一定となる増幅器であるため、増幅器の出力電力(振幅)を変動させる必要のあるLM方式に応用した例は、従来なかった。しかし、本発明者らは、あえて、LM方式増幅装置101の増幅器102として、スイッチング増幅器を採用した。
【0029】
本発明者らは、スイッチング増幅器は、出力電力の大きさが一定となる増幅器であるが、入力信号の振幅変動に応じて、出力側の負荷インピーダンスを変化させれば、スイッチング増幅器の出力電力(振幅)も、入力信号の振幅変動と同様に変動することを見出した。
【0030】
一方、非特許文献1では、LM方式のための増幅器としてB級増幅器を使用している。B級増幅器は、出力電力が低下すると電力効率が劣化するため、非特許文献1において、低出力時にLM方式の効率が低下したのは、B級増幅器を使用したためであると考えられる。
【0031】
つまり、図2に示すように、B級増幅器を用いたLM方式では、出力電力Poutが小さくなると効率が劣化する(非特許文献1参照)。一方、スイッチング増幅器102を用いたLM方式では、出力電力が小さくなっても、効率劣化を抑えることができる。
なお、理論的には、スイッチング増幅器102を用いたLM方式では、効率が100%となるが、他の要因による効率低下も生じるため、他の要因を考慮した効率の理論値は100%よりもやや低い値(例えば、80%程度)となる。また、実際には、低出力の場合には、他の要因による効率低下が生じ易い。
【0032】
例えば非特許文献1では、入力信号として無変調信号(正弦波)を用いているが入力信号が広帯域信号(瞬時電力変動を伴う信号)である場合、電源変調を行うSM方式では、電源効率(例えば80%)を考慮すると、増幅装置全体の効率は、その分、更に低下する。
一方、LM方式では、一定電圧の条件下のもとで増幅器を動作させており高効率の電源を使用する事が出来る。
したがって、非特許文献1では、LM方式はSM方式よりも性能が悪いものとされているが、入力信号が広帯域信号(瞬時電力変動を伴う信号)である場合には、スイッチング増幅器102を用いたLM方式増幅装置の効率は、SM方式よりも効率がよくなることが期待される。
【0033】
[2.第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る増幅装置201を示している。なお、以下において、第2実施形態に関し説明を省略した点については、第1実施形態と同様である。また、以下の各実施形態を示す図面において、各実施形態間で同一又は類似する構成については、符号の下一桁目の番号を共通にしている。
【0034】
第2実施形態においては、第1実施形態における処理部104の位相演算部104bが省略され、代わりに、I/r演算部204b−1と、Q/r演算部204b−2が設けられている。
I/r演算部204b−1及びQ/r演算部204b−2は、I信号及びQ信号それぞれを、振幅演算部204aで求めた振幅rの大きさで割る。したがって、I/r信号及びQ/r信号は、振幅情報が消去され位相情報だけを示すものとなる。
【0035】
また、第2実施形態では、第1実施形態における位相変調器106に代えて、直交変調器206が設けられている。
I/r信号及びQ/r信号を、直交変調器206にて直交変調することで、入力信号(I/Q信号)の位相情報だけを有する定包絡線信号が生成される(図3のA2参照)。
【0036】
直交変調器206から出力される定包絡線信号(図3のA2参照)は、第1実施形態の位相変調器106から出力される定包絡線信号(図1のA1参照)と同等のものである。
したがって、第2実施形態の増幅装置201も、第1実施形態の増幅装置101と同様に動作することができる。
しかも、第2実施形態の処理部204では、第1実施形態の処理部104のようにtan−1の演算を行う必要がなく、演算負荷が少ない。
【0037】
[3.第3実施形態]
図4は、第3実施形態に係る増幅装置301を示している。なお、以下において、第3実施形態に関し説明を省略した点については、第1及び第2実施形態と同様である。
第3実施形態においては、第2実施形態におけるI/r演算部204b−1及びQ/r演算部204b−2が省略されている。
【0038】
したがって、直交変調器306には、I/Q信号それぞれが、そのまま入力される。直交変調器306は、I/Q信号を直交変調した変調信号、すなわち、位相情報及び振幅情報を有する変調信号、が出力される。
【0039】
LM方式では、入力信号が持つ振幅情報は、増幅器の後段にある負荷変動部で再生される。したがって、LM方式の増幅器の入力には、振幅情報が無く位相情報だけを有する定包絡線信号(図1のA1,図3のA2参照)が与えられるのが、これまでの常識である。
これに対し、第3実施形態では、一般的なLM方式における常識とは異なり、変調信号(位相情報とともに振幅情報を有する信号)が増幅器302に入力される(図4のA3参照)。
【0040】
ただし、増幅器302は、飽和状態で動作するスイッチング増幅器であるため、負荷変動部303による負荷変動がない状態においては、直交変調信号が入力されても、スイッチング増幅器302からは、基本的に、増幅された一定振幅の定包絡線信号が出力される。つまり、スイッチング増幅器302の出力信号は、負荷変動部303による負荷変動がない状態においては、位相情報は有するが振幅情報のない信号(図4のB3参照)となる。
しかし、第1及び第2実施形態と同様に、入力信号に含まれる振幅情報は、負荷変動部
303によって再生され、増幅器302の出力信号Poutは、入力信号の位相及び振幅と同様の位相及び振幅を有する信号となる。
【0041】
このように、振幅が変動する変調信号がスイッチング増幅器302を通過すると、基本的に振幅情報が失われる。しかし、振幅が変動する変調信号をスイッチング増幅器302に入力することで、負荷変動部303との協働によって、入力信号が元々有していた振幅情報を、スイッチング増幅器302において、より正確に再生するのが容易となる。
【0042】
負荷変動部303だけでは、入力信号が元々有していた振幅情報を再生するのが困難な場合としては、負荷変動部303が無限大又は十分に大きな負荷インピーダンスを生成できない場合が挙げられる。
スイッチング増幅器302の出力信号において、振幅をゼロとするには、例えば、負荷変動部303の負荷インピーダンスの値を無限大にすればよい。
しかし、負荷変動部303が無限大又は十分に大きな負荷インピーダンスを生成できない場合には、振幅がゼロの出力信号を得られず、入力信号が元々有していた振幅情報を、正確に再生できない。
【0043】
また、負荷変動部303の負荷インピーダンスを、無限大又は十分に大きな値にできた場合であっても、増幅器302のドレイン−ソース間に存在する内部インピーダンス(出力インピーダンス)のために、振幅がゼロの出力信号を得ることができないことがある。増幅器302の内部インピーダンスは、負荷変動部303に対して並列に存在することになるため、負荷変動部303の負荷インピーダンスを大きくしても、負荷変動部303と内部インピーダンスとの合成インピーダンスが十分に大きくならないことがある。その結果、振幅がゼロの出力信号を得られない。
【0044】
つまり、図5(a)に示すように、入力信号がIQ平面においてゼロ点又はゼロ点付近を通過する信号であっても、負荷変動部303と内部インピーダンスとの合成インピーダンスが十分に大きくないと、増幅器302の出力信号は、図5(b)に示すようにゼロ点付近の範囲C内の値をとることができない。
そのため、増幅器302の出力信号は、図5(b)に示すように、入力信号から歪んだ信号となる。
【0045】
ところが、基本的に飽和状態で動作するスイッチング増幅器302であっても、入力信号がゼロ又はゼロ付近であれば、スイッチング増幅器302の出力もゼロとなることに本発明者らは気付いた。スイッチング増幅器302の入力がゼロとなるとき、(理論的に)電力効率が100%で動作する増幅器であれば、出力は定包絡線信号ではなく、ゼロとなる。
【0046】
そこで、第3実施形態の増幅装置301では、負荷変動部303だけで出力信号に振幅変動を引き起こすのではなく、ゼロ付近については、入力信号の振幅がゼロ又はゼロ付近となっていることも利用している。その結果、図5(c)に示すように、増幅器302の出力信号は、図5(a)に示す入力信号と同様に、ゼロ点付近の範囲C内の値をとることができる。
【0047】
このように、負荷変動部303単独では、振幅情報を正確に再生できない場合であっても、振幅が変動する信号をスイッチング増幅器302に入力することで、振幅情報を正確に再生することができる。
つまり、負荷変動部303による負荷インピーダンス変更を考えない場合、スイッチング増幅器302は、入力信号がゼロ又はゼロ付近である場合には、振幅ゼロの信号を出力し、入力信号がゼロ付近よりも大きくなれば、スイッチング増幅器302は、飽和状態で動作し、定包絡線信号を出力することになる。
なお、入力信号がゼロ又はゼロ付近である場合には、スイッチング増幅器302は、飽和状態で動作せず、効率が低下することになるが、入力信号がゼロ又はゼロ付近の値をとる確率は低いため、全体としては、効率低下はさほど問題とならない。
【0048】
また、第3実施形態に係る増幅装置301では、負荷変動部303単独でゼロ信号を生成する必要がないことから、あまり大きな負荷インピーダンスを生成する必要がない。このため、負荷変動部303単独で正確に振幅情報を再生しようとした場合に必要とされる負荷インピーダンスよりも小さい値が、負荷変動部303において変動可能なインピーダンス値の上限であってもよい。
【0049】
つまり、負荷変動部303単独で、十分に正確に振幅情報を再生しようとした場合に必要とされる負荷変動部303のインピーダンスが1000Ωであっても、負荷変動部303のインピーダンス変動範囲の上限は、例えば、200Ωとして設定することができる。
このため、負荷変動部303のインピーダンス変動可能範囲を狭くでき、負荷変動部303を安価に構成するのが容易となる。なお、インピーダンス変動可能範囲の上限値は、例えば、増幅器302の前記内部インピーダンスと同程度又はそれ以上とすることができる。また、インピーダンス変動可能範囲の上限値は、増幅器302の内部インピーダンスの数倍程度が好ましい。
【0050】
さて、理想的なスイッチング増幅器では、ON/OFFのスイッチング動作に伴って、電流と電圧は交互に出現するため、電流波形と電圧波形に重なりがなく、前述のように電力効率が100%となる。
しかし、実際のスイッチング増幅器では、ON/OFFのスイッチング動作に伴って発生する電流波形と電圧波形に重なりが多少生じるため、スイッチング増幅器内部で電力消費が生じ、効率が低下する。電流波形と電圧波形の重なりを原因とする効率低下は、出力電力が低下するほど大きくなる。
また、スイッチング増幅器に過大な入力信号を入力すると、電流波形と電圧波形の重なりが大きくなって、やはり、効率が低下する。また、スイッチング増幅器に過小な入力信号を入力すると、スイッチング動作ができず、効率が急激に低下する。
【0051】
以上のことから、広帯域な変調信号のように振幅変動(電力変動)を伴う信号を、スイッチング増幅器302にて、効率の低下を防ぎつつ増幅するには、過大な入力信号や過大な入力信号を避けて、入力信号の振幅に応じて決定される負荷インピーダンスの値Z及びスイッチング増幅器302へ入力される信号の振幅を適切な値とすることが望まれる。
したがって、負荷制御部304cでは、入力信号の振幅に応じて決定される負荷インピーダンスの値Zが適切になるように、制御信号が生成されるのが望ましい。また、スイッチング増幅器302へ入力される信号の振幅のレベルも適切に調整されるのが好ましい。
第3実施形態の増幅装置301では、入力信号の振幅と負荷の組み合わせによって電力効率が最大となるポイントを自由に選択できる。
【0052】
また、第3実施形態の負荷制御部304cでは、図6に示すように、入力信号の振幅(入力電力)rに基づいて決定される負荷変動部303の負荷インピーダンスの値Zを、上限設定値Zmaxと下限設定値Zminの範囲で変動させるように制御信号を生成する。
【0053】
つまり負荷制御部304cは、入力信号の振幅ゼロから入力信号の振幅の最大値(ピーク電力値)rmaxまでの全範囲で、Zの値を変動させるのではなく、入力信号の電力が下限値rよりも小さい範囲では、Zの値を変動させず、Zは上限設定値Zmaxで一定とする。また、入力信号の電力が上限値rよりも大きい範囲では、Zの値を変動させず、Zは下限設定値Zminで一定とする。
【0054】
このように負荷Zの変動範囲を制限することで、負荷変動部303における負荷変動機能の性能を緩和できる。しかも、負荷インピーダンスZの変動範囲の上限値を上限設定値Zmaxに抑えたとしても、第3実施形態では、スイッチング増幅器302に振幅変動信号が入力されることによって、負荷変動部303において過大な負荷Zを生成する必要がなくなっているため、問題は生じない。
また、前述のようにスイッチング増幅器302への入力が過大となると、却って効率が低下するため、スイッチング増幅器302へは過大な入力が与えられるべきではなく、負荷インピーダンスZの変動範囲の下限値を下限設定値Zminに抑えても問題は少ない。下限設定値Zminとしては、増幅器302の出力インピーダンスと整合するインピーダンスとするのが好ましい。
【0055】
なお、図6では、入力信号がr〜rの間では、入力信号の変動に対してZが線形的に変動しているが、線形的に変動する必要はない。
例えば、図7に示すように、入力信号の変動に対して、ステップ状に変化してもよい。Zの値をステップ状に変動させることで、入力信号の振幅情報から、Zの値を制御するための制御信号の生成が容易となる。例えば、入力信号からZの値を示す制御信号を生成するためにルックアップテーブルを使用する場合、Zの値をステップ状に変動する場合には、テーブルサイズを小さくできる。
【0056】
[4.第4実施形態]
図8〜図10は、第4実施形態に係る増幅装置401を示している。なお、以下において、第4実施形態に関し説明を省略した点については、第3実施形態と同様である。
【0057】
図8に示す第4実施形態では、負荷制御部404cから出力された制御信号に対して歪補償のための処理を行う第1歪補償部(デジタルプリディストーション部)407を備えている。
ここで、電力効率を最大にとろうとすると、入力信号と増幅器402の出力信号とは線形にはならず、出力信号に歪が生じる。しかし、線形性の確保は、増幅装置にとって重要である。
【0058】
図9(a)は、電力効率が最大化するように、入力信号の振幅(入力電力)と負荷の値(制御信号の値)の組み合わせを最適化した例を示している。この場合、図9(b)に示すように、増幅器402の入出力特性に直線性が無くなる。つまり、負荷制御部404cにおいて、電力効率を高くする観点から、入力電力(振幅)に対する負荷(制御信号値)の関係が、図9(a)のように設定されていると、負荷制御部404cから出力される制御信号を受けて動作する負荷変動部403は、増幅器(スイッチング増幅器)402の出力に非線形歪を生じさせるように動作する。
【0059】
そこで、線形性を確保するため、第1歪補償部407によって、制御信号(振幅情報)の補正を行う。例えば、制御信号の補正を行わない場合、図9(a)に示す関係に従うと、入力電力Pin=1.1[W]の場合には、負荷制御部404cは、負荷変動部403の負荷の値を9[Ω]にする制御信号を生成する。しかし、入力電力Pin=1.1[W]のときには、入力電力Pin=1[W]の場合と同様の増幅器ゲインG=10を得ることができず、非線形となる。
したがって、入力電力Pin=1.1[W]のときにも、入力電力Pin=1[W]の場合と同様の増幅器ゲインG=10を得て、線形性を確保するには、第1歪補償部407は、負荷変動部403の負荷の値が8[Ω]となるように、制御信号を補正すればよい。これにより、出力電力Pout=11[W]が得られ、線形性が確保される。
【0060】
ただし、第1歪補償部407によって、制御信号(振幅情報)の補正だけを行うと、電力効率を最大するために最適化されていた「入力信号の振幅と負荷との組み合わせ」(図9(a))が崩れることになる。つまり、第1歪補償部407によって、制御信号(振幅情報)の補正だけを行うと、Pin=1.1[W]のときに、負荷変動部403の負荷の値が8[Ω]になり、図9(a)に示す電力効率最大の組み合わせから外れる。
【0061】
そこで、効率を維持したい場合には、図8に示すように、第1歪補償部407のほか、第2歪補償部(デジタルプリディストーション部)408を設ければよい。第2歪補償部408は、第1歪補償部407と連動して、入力信号であるI/Q信号に対して位相及び/又は振幅の補正を行って、電力効率を最大するための「入力信号の振幅と負荷との組み合わせ」を維持しつつ、歪補償を行う。
【0062】
つまり、第2歪補償部408は、第1歪補償部407にて、負荷(振幅情報)を補正させたことに応じて、入力信号であるI/Q信号に対して、電力(振幅)の補正を行うことで、電力効率の低下を抑えつつ、線形性を維持する。例えば、先の例で、負荷変動部403の負荷の値が8[Ω]となるように、第1歪補償部407が制御信号を補正した場合、第2歪補償部408は、負荷の値が8[Ω]であるときに最大効率が得られる入力電力の値Pin=1.2となるように入力信号(I/Q信号)を補正すればよい。
【0063】
また、負荷変動部403は、負荷の値によって、位相特性が変化する場合があるため、第1歪補償部407にて負荷を補正したことに対応して変化する位相を、第2歪補償部408にて補正することもできる。
【0064】
ただし、第1歪補償部407及び第2歪補償部408という二つの歪補償部を設けると、両者を連動させて動作させる必要があり、歪補償のための処理が煩雑になる。
そこで、図10に示すように、歪補償部(デジタルプリディストーション部)409を処理部404よりも前段側に設けることで、第1歪補償部407及び第2歪補償部408という二つの歪補償部を設けなくても、電力効率を最大するための「入力信号の振幅と負荷との組み合わせ」を維持しつつ、歪補償を行うことができる。
【0065】
図10によれば、歪補償部409による歪補償後の入力信号は、振幅演算部404aを介して、負荷制御部404cに与えられるとともに、スイッチング増幅器402側へ与えられる。
したがって、歪補償部409にて、図9(a)に示すような電力効率の観点からの最適化された関係を維持しつつ、線形性が得られるように、入力信号の振幅(及び/又は位相)を補正すれば、電力効率を維持しつつ線形性が得られる。
【0066】
[5.第5実施形態]
図11〜図13は、第5実施形態に係る増幅装置501を示している。なお、以下において、第5実施形態に関し説明を省略した点については、第4実施形態と同様である。
【0067】
第4実施形態における負荷制御部404cは、図9(a)に示すように、増幅器の入出力特性が非線形となるが電力効率が最大化される制御信号が生成されるように設定されていた。
これに対し、第5実施形態では、第4実施形態における歪補償部407,408,409が省略されている。さらに、第5実施形態の負荷制御部504cは、増幅器の入出力特性が線形となる制御信号が生成されるように、入力電力と負荷(制御信号値)の関係が設定されていている。第5実施形態の負荷制御部504cは、第4実施形態の第1歪補償部407の機能をも具備していることになるため、効率がやや低下するものの、第1歪補償部407(DPD)を省略することが可能である。
【0068】
増幅器の線形性を確保するためには、DPDは必要であるが、DPDを実行するために信号を補正するための独立した機能を、増幅装置に組み込むとコスト増加を招く。
これに対し、第5実施形態のように、負荷制御部504cにDPDの機能をも具備させることで、コスト増加を抑えることができる。
【0069】
図12は、負荷制御部504cに設定された、入力電力(振幅)と負荷(制御信号値)との関係を示している。この負荷制御部504cには、負荷変動部503における負荷の大きさに関し、入力信号の同一振幅(例えば、入力電力Pin=1)に対して、任意に選択可能な複数の候補値b1−1,b1−2,b1−3,・・・が設定されている。つまり、入力電力Pin=1である場合には、負荷制御部504cは、複数の候補値b1−1,b1−2,b1−3,・・・のうちのいずれか一つを、負荷変動部503を制御する制御信号の値とすることができる。また、入力電力Pin=1.1である場合にも同様に、負荷制御部504cは、複数の候補値b2−1,b2−2,b2−3,・・・のうちのいずれか一つを、負荷変動部503を制御する制御信号の値とすることができる。
【0070】
このように、負荷制御部504cには、入力電力の各値に対して、負荷変動部503における負荷の大きさの複数の候補値が設定されている。そして、負荷制御部504cは、例えば、増幅装置の出力信号Pout及び/又は温度に基づいて、前記複数の候補値から一つの候補値を選択することができる。
【0071】
例えば、増幅装置の出力信号Poutに基づいて候補値を選択する場合には、出力信号Poutに非線形歪が含まれていても、その非線形歪を解消できる候補値を選択することで、線形性を確保することができる。
【0072】
また、温度に基づいて候補値を選択する場合、温度に対応した候補値を選択することで、温度変化が原因で非線形歪が生じても、その非線形歪を解消することができる。
【0073】
図13に示す増幅装置501は、図11に示す増幅装置501に、電源変調部508を追加したものである。
【0074】
DPDによって歪補償を行う場合、振幅だけでなく、位相の補正を行うこともできるが、負荷変動部503を制御する負荷制御部504cにDPDの機能を持たせても、振幅しか補正することができない。
【0075】
そこで、信号の位相も補正したい場合には、電源変調部508にて、増幅器502の電源変調(ドレイン変調)を行えばよい。電源変調部508によって増幅器502の電源の電圧又は電流値を微調整することで、振幅のほか位相も変更することができる。
電源変調部508は、電源変調によって位相も補正できることを利用したものであり、負荷制御部504cと電源変調部508を組み合わせて使用することで、振幅及び位相を補正することができる。
【0076】
以上のように、第5実施形態によれば、DPDを実行するために信号を補正するための独立した機能を増幅装置に組み込むことなく、信号の補正を行うことができる。
なお、第5実施形態における増幅器502は、前述の実施形態と同様にスイッチング増幅器であるのが好ましいが、第5実施形態における負荷制御部504cの機能及び電源変調部508は、増幅器がスイッチング増幅器でない場合にも採用可能である。
【0077】
[6.負荷変動部(負荷変動器)]
[6.1 信号合成を用いた負荷変動部]
図14は、第1〜第5実施形態の増幅装置における負荷変動部103,203,303,403,503として好適に利用可能な負荷変動部(負荷変動器)1001を示している。
【0078】
図14に示す負荷変動部1001は、2つ(複数)の位相調整器1003a,1003bを備えている。第1位相調整器1003a及び第2位相調整器1003bには、それぞれ、増幅器1002の出力信号(負荷変動部1001を通過する信号)を複数に分波した分波出力信号が与えられる。
位相調整器1003a,1003bによって位相が調整された分波出力信号それぞれは、λ/4線路からなるインピーダンス変換器1003c,1003dを通って、合成部1003eによって合成される。合成された出力信号は、無線通信装置のアンテナ1010から出力される。
【0079】
第1位相調整器1003aの位相調整量φ1及び第2位相調整器1003bの位相調整量φ2は、位相制御部1011によって制御される。つまり、第1及び第2位相調整器1003a,1003bは、複数の分波出力信号間の位相差を調整する。なお、位相調整器は、複数設けられている必要はなく、例えば、1個でも複数の分波出力信号間の位相差を調整することは可能である。
【0080】
実測結果によれば、2つの分波出力信号を同位相(φ2-φ1=0度)で合成すると、合成信号は分波出力信号の振幅が重なり合って、振幅が大きくなった。これに対し、2つの分波出力信号を逆位相(φ2-φ1=180度)で合成すると、分波出力信号が相殺されて、振幅が小さくなった。また、φ2-φ1の値(位相差)を、0度から180度の間で変化させると、φ2-φ1の値(位相差)に応じて、振幅が変動した。つまり、図14の回路1001は、負荷変動部として機能することが確認された。
【0081】
また、負荷変動部1001自体のインピーダンスを測定したところ、φ2-φ1の値(位相差)を、0度から180度の間で変化させると、50Ωから0Ω(ショート)の間で負荷変動部の抵抗値が変化することが確認された。
なお、負荷変動部1001における抵抗Zの値の最大値は、λ/4線路からなるインピーダンス変換器1003c,1003dを適宜設計することによって、所望の値に設定することができる。
【0082】
図14の負荷変動部1001によれば、位相調整器1003a,1003bを制御することで負荷を変動させることができるため、高速で負荷を変動させるのが容易である。
また、図14の負荷変動部1001において、合成部1003eの出力側に、アイソレータ1003fを設けることで、増幅器1002からみた負荷(負荷変動部1001の入力インピーダンス)が変動しても、負荷変動部1001の出力インピーダンスの変動を抑えることができる。負荷変動部1001の出力インピーダンスの変動を抑えることで、アンテナ1010との整合を確保することができ、動作が安定する。
【0083】
[6.2 信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置の第1例]
図15は、信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置601の第1例を示している。図15の増幅装置601は、第3実施形態(図4)の負荷変動部303として、図14の負荷変動部1001を採用したものと等価である。なお、図14の負荷変動部1001は、スイッチング増幅器を用いない一般的なLM方式の増幅装置にも利用可能である。
【0084】
図15の増幅装置601の負荷変動部603には、スイッチング増幅器602出力信号を複数に分波した分波出力信号が与えられる。負荷変動部603の位相調整器603a,603bによって位相が調整された分波出力信号それぞれは、λ/4線路(図15では省略)からなるインピーダンス変換器を通って、合成部603eによって合成される。
合成部603eから出力された信号は、アイソレータ603fを通って、アンテナ側に与えられる。
【0085】
また、図15の増幅装置601では、負荷制御部として、第1位相調整器603aの位相φ1を制御する位相制御部として機能する第1負荷制御部604c−1と、第2位相調整器603bの位相φ2を制御する位相制御部として機能する第2負荷制御部604c−2とを備えている。
負荷制御部604c−1,604c−2は、入力信号の振幅情報rに基づいて、位相φ1,φ2を制御する制御信号を生成し、負荷変動部603における負荷(抵抗)Zを変動させる。
なお、負荷制御部604c−1,604c−2と位相調整器603a,603bとの間には、遅延調整部605a,605bが設けられている。
【0086】
[6.3 信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置の第2例]
図16は、信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置601の第2例を示している。なお、図16に示す第2例において、説明を省略した点は、図15に示す第1例と同様である。
【0087】
図15の増幅装置601では、1つのスイッチング増幅器602の出力信号を分波した分波出力信号を二つの位相調整器603a,603bに与えたのに対し、図16の増幅装置601では、直交変調器606の出力である変調信号が2つに分波され、分波された変調信号が2つ(複数)のスイッチング増幅器602a,602bに入力される。
そして、複数のスイッチング増幅器602a,602bの出力信号が、複数の位相調整器603a,603bに与えられる。位相調整器603a,603bによって位相調整された信号は、合成部603eによって合成される。合成部603eから出力された信号は、アイソレータ603fを通って、アンテナ側に与えられる。
図16の増幅装置601では、増幅された信号を分配するのではなく、分波された信号を増幅するため、分配ロスが少なく、効率がよい。
【0088】
[6.4 信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置の第3例]
図17は、信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置701の第3例を示している。図17に示す増幅装置701は、図16に示す第2例の増幅装置601に、図10に示す歪補償部409と同様の歪補償部(デジタルプリディストーション部)709を設けたものである。なお、図17に示す第3例において、説明を省略した点は、図16の第2例と同様である。
【0089】
図17に示す増幅装置701では、図10に示す増幅装置401と同様に、出力信号に発生する歪を補償することができる。
【0090】
[6.5 信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置の第4例]
図18は、信号合成を用いた負荷変動部を有する増幅装置701の第4例を示している。なお、図18に示す第4例において、説明を省略した点は、図17の第3例と同様である。
【0091】
図17に示す第3例では、分波された信号を増幅器702a,702bにて増幅し、増幅器702a,702bの出力信号を、位相調整器703a,703bにて位相調整していた。そして、位相調整器703a,703bにて位相調整された信号が、合成部703eによって合成される。
これに対し、図18に示す第4例では、分波された信号は、増幅器702a,702bによる増幅の前に、位相調整器703a,703bにて位相調整される。そして、位相調整器703a,703bにて位相調整された信号が、増幅器702a,702bにて増幅される。
【0092】
増幅器702a,702bを信号が通過すると、増幅器702a,702bの歪特性によって、信号帯域が広がる場合がある。一般に、信号が広帯域化するほど、位相調整が困難になる。しかし、図18に示す第4例では、増幅器702a,702bによって信号が広帯域化するまえの信号に対して、位相調整を行えばよいため、位相調整が容易である。
【0093】
[6.6 振幅情報を有する信号を増幅するLINC]
図18(及び図16,17)に示す増幅装置701は、LINC(LInear amplification using Nonlinear Components)方式の増幅装置の改良であるということもできる。
非線形素子を用いた線形増幅を行うLINC方式では、変調された入力信号(振幅情報を含む信号)が、2つの位相が異なる定振幅信号(定包短信号)に分解され、それぞれの信号が電力効率の高い非線形増幅器で増幅され、それら出力を合成したものが出力される。
【0094】
より具体的には、一般的なLINC方式の増幅装置2001は、図19に示すように、信号処理部2004が、入力信号であるI/Q信号から、当該I/Q信号に含まれる振幅情報に応じた位相差を生じさせる2つの位相情報信号θ,θを出力する。2つの位相情報信号θ,θは、位相変調器2006a,2006bにて位相変調され、2つの位相が異なる定振幅信号(定包短信号)となる。
【0095】
2つの位相が異なる定振幅信号(定包短信号)は、2つの増幅器2002a,2002bにて増幅され、合成部2003eによって合成される。
2つの増幅器2002a,2002bの出力信号それぞれは、定振幅信号であるため、振幅情報が失われているが、増幅器2002a、2002bの出力信号それぞれの位相が異なるため、それらの合成信号においては、増幅器の出力信号間の位相関係に応じて、入力信号に含まれていた振幅情報が再生される。
【0096】
これに対し、図18等に示す増幅装置701では、増幅器702a,702bに対して、振幅情報が失われた定振幅信号ではなく、振幅情報が保持された信号(直交変調器706による直交変調信号)が与えられる。
【0097】
増幅器702a,702bは、飽和状態で動作するスイッチング増幅器であるため、直交変調信号が入力されても、基本的に、増幅された一定振幅の定包絡線信号を出力する。
しかし、合成部703eで合成される信号間には、位相調整器703a,703bによって、入力信号の振幅に応じた位相差が設けられているため、合成部703eの合成出力信号においては、入力信号に含まれていた振幅情報が再生される。
【0098】
ただし、振幅がゼロの合成信号(出力信号)を得ようとすると、2つの定振幅信号(定包短信号)の位相差が厳密に180°でなければならず、位相差が180°からわずかでもずれると振幅がゼロとならない。この結果、出力信号において入力信号の振幅情報を正確に再生できないことになる。
このように、従来のLINC方式では、振幅がゼロ付近の出力信号を生成するのが困難であり、実用化の障害となっていた。
【0099】
これに対し、図18等の増幅装置701では、LINC方式と同様に、複数の増幅器702a,702bによって増幅された信号間の位相差に応じて、合成出力信号に振幅情報を再生するものの、複数の増幅器702a,702bに対して、振幅情報を有する信号(変調信号)が入力される。
【0100】
基本的に飽和状態で動作するスイッチング増幅器702a,702bであっても、入力信号がゼロ又はゼロ付近であれば、スイッチング増幅器302の出力もゼロとなる。そこで、図18等の増幅装置701では、信号の位相差だけで出力信号に振幅変動を引き起こすのではなく、ゼロ付近については、入力信号の振幅がゼロ又はゼロ付近となっていることも利用している。
したがって、信号の位相差単独では、振幅情報を正確に再生できない場合であっても、振幅が変動する信号をスイッチング増幅器702a,702bに入力することで、振幅情報を正確に再生することができる。
なお、図18等の増幅装置701では、位相差だけでゼロ信号を生成する必要がないことから、位相差に誤差が含まれていても良い。
【0101】
[6.7 可変位相器を用いた負荷変動部]
図20は、第1〜第5実施形態の増幅装置における負荷変動部103,203,303,403,503として好適に利用可能な他の負荷変動部(負荷変動器)3001を示している。
【0102】
図20に示す負荷変動部3001は、可変位相器を利用したものである。図20に示す回路は、ブランチラインカプラ(Branch−line Coupler)を持つ可変位相器を、負荷変動部3001として利用した回路構成を示している。なお、可変位相器は、ブランチラインカプラを用いて構成するものに限られず、ラットレースハイブリッド(rat−race Hybrid)など、他の4ポート回路を用いて構成したものであってもよい。
また、可変位相器として機能する4ポート回路は、分布定数回路で構成されている必要はなく、集中定数回路で構成されていてもよい。例えば、可変位相器として、集中定数ブランチラインカプラ又は集中定数ラットレースハイブリッドを用いてもよい。
【0103】
ブランチラインカプラは、第1ポートP1,第2ポートP2,第3ポートP3,及び第4ポートP4を有する4ポート回路である。各ポートP1,P2,P3,P4の間には、4つの伝送路3011,3012,3013,3014が設けられている。各伝送路3011,3012,3013,3014は、λ/4線路である。
図20に示すブランチラインカプラは、3dBブランチラインカプラであり、第1ポートP1と第3ポートP3との間の伝送路3011のインピーダンス、及び、第2ポートP2と第4ポートP4との間の伝送路3014のインピーダンスは、それぞれ、Z/(√2)である(Zは3dBブランチラインカプラにおける系のインピーダンス)。また、第1ポートP1と第2ポートP2との間の伝送路3012のインピーダンス、及び第3ポートP3と第4ポートP4との間の伝送路3013のインピーダンスは、Zである。
【0104】
第1ポートP1は、信号が入力される入力ポートであり、第2ポートは、信号が出力される出力ポートである。
第3ポートP3及び第4ポートP4には、それぞれ、可変インピーダンス3021,3022が接続されている。可変インピーダンス3021,3022は、例えば、インダクタと可変容量ダイオード(バラクタダイオード)によって構成されている。可変容量ダイオードに印加される電圧を変化させることで、可変インピーダンス3021,3022のインピーダンスを変化させることができる。
【0105】
ブランチラインカプラを、一般的な可変位相器として使用する場合、第3ポートP3及び第4ポートP4に接続されるインピーダンスの値は、同じ値となっている必要がある。したがって、可変インピーダンス3021,3022を構成する可容量用ダイオードそれぞれには、同じ電圧が印加されていた。
第3ポートP3及び第4ポートP4に接続されるインピーダンスの値が同じであると、入力ポートP1に入力された信号は、反射せず、ほぼそのまま出力ポートP2から出力される。ただし、出力ポートP2から出力される信号は、入力ポートP1に入力された信号に対して位相が変化したものとなっている。
【0106】
本発明者らは、第3ポートP3及び第4ポートP4に接続されるインピーダンスの値を、それぞれ独立して調整することで、可変位相器を負荷変動部(負荷変動器)として利用できるという着想を得た。
図20の負荷変動部3001において、可変インピーダンス3021,3022の値(可変容量ダイオードの値)は、制御部3031によって、独立して調整可能である。つまり、図20の負荷変動部3001は、第3ポートP3に接続されるインピーダンス3021と第4ポートP4に接続されるインピーダンス3022との間のインピーダンス差を調整可能に設けられている。
【0107】
本発明者らは、第3ポートP3及び第4ポートP4に接続されるインピーダンスの値を異ならせると、入力ポートP1に入力された信号が反射して、入力インピーダンスが変化することを実験的に確認した。
また、第3ポートP3及び第4ポートP4に接続されるインピーダンスの値を異ならせると、入力ポートP1に入力された信号の反射電力と、入力ポートP1から出力ポートP2へと通過する通過電力のバランスが変化することも確認された。
【0108】
図21は、第3ポートP3に接続された可変インピーダンス3021(可変容量ダイオード)に印加される電圧Vと、第4ポートP4に接続された可変インピーダンス3022(可変容量ダイオード)に印加される電圧Vと、を独立して変化させた場合における、負荷変動部3001の入力インピーダンスの変化を示している。
【0109】
図21において、S1〜S5は、電圧差(V−V)を以下のように設定した場合のインピーダンスを示している。電圧差V−V(インピーダンス差)を調整した場合、図21のS1〜S5に示すように、インピーダンスが変化した。
S1:(V−V)=(0−12)=−12[V]
S2:(V−V)=(4−8)=−4[V]
S3:(V−V)=(4−4)=0[V]
S4:(V−V)=(8−4)=4[V]
S5:(V−V)=(12−0)=12[V]
【0110】
図22(a)は、電圧差V−Vの変化と、入力ポートP1に入力された信号の反射電力との関係を示し、図22(b)は、電圧差V−Vの変化と、入力ポートP1から出力ポートP2へと通過する通過電力と、の関係を示している。
図22(a)によれば、電圧差V−Vの絶対値を小さくすると、反射電力が小さくなり、電圧差V−Vの絶対値を大きくすると、反射電力が大きくなることがわかる。
一方、図22(b)によれば、電圧差V−Vの絶対値を小さくすると、通過電力が大きくなり、電圧差V−Vの絶対値を大きくすると、通過電力が小さくなることがわかる。
【0111】
つまり、電圧差V−V(インピーダンス差)を変化させると、入力ポートP1−出力ポートP2間での反射電力・通過電力のバランスが変化し、負荷変動部3001の入力インピーダンスが変動することがわかる。
【0112】
ただし、図21のS1〜S5では、負荷変動部3001を入力ポートP1からみたときに、抵抗にみえない。負荷変動部3001を入力ポートP1からみたときに抵抗にみえるようにするには、図21のS1’〜S5’のようにインピーダンスが変化する必要がある。図21のS1〜S5から、図21の1’〜S5’のようにインピーダンスを変化させるには、予め信号の位相を回転させておけばよい。図21のS1〜S5から、図21の1’〜S5’のように、スミスチャート上で時計回りにインピーダンスを変化させるには、図23に示すように、入力ポートP1に入力される信号の位相を、位相器3040にて、予め回転させておけばよい。さらに、位相器3040による影響は、ポートP2からみたインピーダンスには影響はなく、出力インピーダンスを一定で、入力インピーダンスを変更することができ、後続の回路又はアンテナに対する影響を与えることがない。
【0113】
位相器3040にて、位相を適宜回転させることで、負荷変動部3001のインピーダンスを、図21の1’〜S5’のように変化させることができる。なお、位相器3040は、負荷変動部3001を抵抗にみせるために、位相を調整する必要はなく、所望のインピーダンス特性が得られるように、位相を調整するものであってもよい。また、位相器3040を可変位相器として構成し、位相の調整量を外部から制御可能とすることで、負荷変動部3001のインピーダンスを変更することも可能である。
【0114】
負荷変動部3001は、負荷が変動しても、通過位相が変化しないのが好ましい。しかし、負荷変動部3001は、元々、可変位相器として構成されているものを利用しているため、負荷の変動によって、通過位相が変動する。
そこで、図23に示すように、入力ポートP1から出力ポートP3を通過する際に生じる位相の変化を、相殺するべく、入力ポートP1に与えられる信号の位相を、予め補正する位相補正部3041を設けるのが好ましい。
【0115】
位相補正部3041は、制御部3031から、負荷(電圧差)に応じた位相補正量を指示する制御信号を受け取り、信号に対する位相調整を行う。これにより、入力ポートP1から出力ポートP3を通過する際に位相の変化が生じても、その位相の変化を相殺することができる。
なお、位相補正部3041は、図23のように入力ポートP1の手前に設ける必要はなく、図24に示すように、出力ポートP2の後段に設けても良い。
また、図23及び図24に示すように、負荷変動部3001は、出力ポート(第2ポート)から出力された信号を、アイソレータ3043を介して出力することで、負荷変動部3001の負荷(入力インピーダンス)の変動に伴って生じる、負荷変動部3001の出力インピーダンスの変動を抑えることができる。
【0116】
[6.8 可変位相器を用いた負荷変動部を有する増幅装置]
図25は、可変位相器を用いた負荷変動部を有する増幅装置801を示している。図25の増幅装置801は、第3実施形態(図4)の負荷変動部303として、図23の負荷変動部3001を採用し、さらに後述のインピーダンス変換器850を備えたものと等価である。なお、図23の負荷変動部3001は、スイッチング増幅器を用いない一般的なLM方式の増幅装置にも利用可能である。
【0117】
図25の増幅装置801の負荷変動部803は、インピーダンス変換器850を介して、増幅器802(スイッチング増幅器)と接続されている。負荷変動部803は、図23に示す負荷変動部3001と同様に、位相器840、4ポート回路からなる可変位相器、可変位相器の第3ポートに接続された可変インピーダンス821、可変位相器の第4ポートに接続された可変インピーダンス822、及びアイソレータ843を備えている。
【0118】
図25の増幅装置801では、負荷制御部として、第1可変インピーダンス821のインピーダンス(電圧V)を制御する第1負荷制御部804c−1と、第2可変インピーダンス822のインピーダンス(電圧V)を制御する第2負荷制御部804c−2と、を備えている。第1及び第2負荷制御部804c−1,804c−2は、入力信号の振幅情報rに基づいて、第1及び第2可変インピーダンス821,822に付加する電圧差を調整して、負荷変動部803における負荷(抵抗)を変動させる。
【0119】
なお、負荷制御部804c−1,804c−2と可変インピーダンス821,822との間には、(第1及び第2)制御信号に対する遅延調整を行う遅延調整部805a,805bが設けられている。制御信号に対する可変インピーダンス(可変容量ダイオード)821の反応速度が遅い場合には、遅延調整部805a,805bにて遅延調整を行うことで、増幅器802の出力信号との間で信号タイミングを一致させることができる。
【0120】
なお、図25の増幅装置801では、図23の負荷変動部3001における位相補正部3041に対応する機能が明示されていないが、位相補正部3041に対応する機能(位相補正機能)は、歪補償部809にて行うことができる。つまり、負荷変動部803では、負荷に応じて位相が変化するため、歪補償部809が、入力信号(振幅)に応じて、予め、I/Q信号に対する位相補正を行うことで、負荷変動部803による位相変化を相殺することができる。しかも、歪補償部(DPD)809では、デジタルIQ信号に対する補正が行えるため、図24に示すようにアナログ信号を補正するのに比べて、補正が容易となる。
【0121】
増幅器802と負荷変動部803との間に設けられたインピーダンス変換器(λ/4線路)850は、負荷変動部803が生じさせる負荷の変動範囲Z〜Zが、増幅器802として必要な範囲となるようにインピーダンス変換を行うものである。
【0122】
負荷の変動に応じて、増幅器802の出力信号の振幅を変動させるには、負荷変動部803の負荷は、増幅器802の出力インピーダンスと整合する値Zampから、それよりも高いインピーダンスZxの範囲Zamp〜Zx(Zx>Zamp)で変動することが望まれる。
【0123】
しかし、負荷変動部803の負荷変動範囲Z〜Zが、増幅器802からみた望ましい負荷変動範囲Zamp〜Zxにあるとは限らない。
そこで、インピーダンス変換器850は、増幅器802からみた負荷変動範囲が、増幅器802からみた望ましい負荷変動範囲に来るように、インピーダンス変換を行っている。
【0124】
ここで、負荷変動部803の負荷変動範囲Z〜Zを、インピーダンス変換によって別の範囲に変換するには、2通りの変換が考えられる。
一つは、負荷変動部803の負荷変動範囲Z〜Zの最大値Zを、増幅器802と整合するインピーダンスZampに対応させてインピーダンス変換する場合である。
もう一つは、負荷変動部803の負荷変動範囲Z〜Zの最小値Zを、増幅器802と整合するインピーダンスZampに対応させてインピーダンス変換する場合である。
【0125】
両者のうち、増幅器802からみた望ましい負荷変動範囲がZamp〜Zxであるという観点からは、前者のように、Zを、増幅器802と整合するインピーダンスZampに一致させるようにインピーダンス変換するのが好ましい。
【0126】
つまり、最大値Zを増幅器802と整合するインピーダンスZampに対応させ、最小値ZをZxに対応させてインピーダンス変換する場合、インピーダンス変換器850のインピーダンスをZlineとすると、
Zline=Zamp×Z
Zline=Zx×Z
となる。
【0127】
したがって、
Zx=Zline/Z=(Zamp×Z)/Z=(Z/Z)×Zamp
となる。
>Zであるから、Zxは、Zampよりも大きいインピーダンスとなる。したがって、増幅器802の出力インピーダンスと整合する値Zampから、それよりも高いインピーダンスZxの範囲Zamp〜Zx(Zx>Zamp)で負荷変動するという、LM方式において望ましい状態が得られる。
【0128】
一方、最小値Zを増幅器802と整合するインピーダンスZampに対応させ、最大値ZをZxに対応させてインピーダンス変換する場合、
Zline=Zamp×Z
Zline=Zx×Z
となる。
【0129】
したがって、
Zx=Zline/Z=(Zamp×Z)/Z=(Z/Z)×Zamp
となる。
>Zであるから、Zxは、Zampよりも小さいインピーダンスとなる。したがって、増幅器802の出力インピーダンスと整合する値Zampから、それよりも低いインピーダンスの範囲で負荷変動することになる。Zampよりも低い範囲でインピーダンスが変動すると、効率が低下し、LM方式として望ましくない。
【0130】
したがって、負荷変動部803の負荷変動範囲Z〜Zの最大値Zを、増幅器802と整合するインピーダンスZampに対応させてインピーダンス変換するのが好ましいこことになる。
【0131】
[6.9 負荷変動部の低ロス化]
図27は、図20、図23、及び図24に示す可変インピーダンス3021,3022、並びに図25に示す可変インピーダンス821,822の具体例のバリエーションを示している。
ブランチラインカプラの第3ポートP3又は第4ポートP4に接続される可変インピーダンス3021,3022,821,822は、前述のように、インダクタと可変容量ダイオード(バラクタダイオード)によって構成することができる。図27(a)(b)は、インダクタ3025と可変容量ダイオード(バラクタダイオード)3026によって構成した可変インピーダンス3021,3022,821,822の例を示しており、図27(c)は、可変容量ダイオード3026を具備するが、インダクタ3025を具備しない可変インピーダンスの例を示している。なお、可変インピーダンス3021,3022,821,822は、インダクタと可変容量ダイオード以外の回路要素を含んでいても良い。
【0132】
可変容量ダイオード3026は、例えば、バラクタダイオードによって構成されている。バラクタダイオード3026は、カソードが、第3ポートP3又は第4ポートP4側に接続され、アノードが、グランド側に接続されている。
【0133】
インダクタ3025は、集中定数素子として構成されたインダクタ(チップインダクタ)であってもよいし、分布定数線路(マイクロストリップライン)として構成されたインダクタ3025aであってもよい。
インダクタ3025は、図27(a)に示すように、可変容量ダイオード3026のアノード側に接続することができる。つまり、可変容量ダイオード3026のアノードは、インダクタ3025を介して、グランドに接続することができる。
また、インダクタ3025は、図27(b)に示すように、可変容量ダイオード3026のカソード側に接続することもできる。つまり、可変容量ダイオード3036のカソードは、インダクタ3025を介して、第3ポートP3又は第4ポートP4に接続することもできる。
【0134】
図27(a)(b)に示すようにインダクタ3025を設けることで、図27(c)に示すようにインダクタ3025を設けない場合に比べて、負荷変動部3001,803における損失(ロス)を低減することができる。
【0135】
図28は、図27(a)に示すようにインダクタ3025を設けた可変インピーダンス3021,3022,821,822を備えた負荷変動部3001,803のロス率、及び、図27(c)に示すようにインダクタ3025を省略した可変インピーダンス3021,3022,821,822を備えた負荷変動部3001,803のロス率の測定結果を示している。なお、測定に際しては、インダクタ3025として、集中定数素子を用いた。
【0136】
ここで、ロス率は、次のように定義する。まず、負荷変動部3001,803のロスがゼロである場合における、負荷変動部3001,803の第1ポート(入力ポート)P1の反射電力S11(図20参照)と、負荷変動部3001,803の第1ポート(入力ポート)P1から第2ポート(出力ポート)P2への通過電力S12(図20参照)と、の和を、1とする。ロス率は、反射電力及び通過電力を用いて次のように表される。
ロス率=1−(反射電力+通過電力)
【0137】
図28の測定結果を得るため、P3,P4に接続された可変容量ダイオード3026それぞれに付加される電圧を変化させて、ロス率の測定を行った。可変容量ダイオード3026それぞれに付加される電圧の組み合わせは、360通りに設定した。図28において、横軸は、1〜360の組み合わせ番号を示す。
図28に示すように、可変インピーダンス3021,3022,821,822にインダクタ2025を設けない場合、ロス率は、0.26−0.18(26%−18%)程度となる一方、可変インピーダンス3021,3022,821,822にインダクタ3025を設けた場合、ロス率は、0.22−0.14(22%−14%)程度となり、ロス率が改善したことがわかる。
【0138】
また、インダクタ3025を設けると、可変容量ダイオード3026の反射係数の振れ幅が大きくなり、負荷変動部3011,803のインピーダンスの振れ幅も大きくなる。つまり、インダクタ3025を設けると、負荷変動部3001,803の可変範囲を大きくする効果も得られる。
【0139】
インダクタ3025が集中定数素子(チップインダクタ)によって構成されている場合、インダクタ3025の位置は、図27(a)に示す位置であっても、図27(b)に示す位置であっても、回路としては等価であるため、同様の損失低減効果が得られる。
一方、インダクタ3025が分布定数線路(マイクロストリップライン)3025aによって構成されている場合、インダクタ3025の位置は、図27(a)に示す位置よりも、図27(b)に示す位置のほうが、損失の低減の観点からは優れていることが、シミュレーションの結果、判明した。
【0140】
ここで、負荷変動部3001,803の損失を低減するには、可変インピーダンス3021,3022,821,822において、電力が浪費されるのを防止すればよい。つまり、第3ポートP3又は第4ポートP4側からみたときの、可変インピーダンス3021,3022,821,822からの反射電力が大きければ、負荷変動部3001,803の損失を低減することができる。換言すると、可変インピーダンス3021,3022,821,822の反射係数を大きくすることで、損失を低減できる。
【0141】
マイクロストリップライン3025aは、インピーダンス変換回路として機能する。そこで、第3ポートP3又は第4ポートP4側への反射電力が大きくなるようにインピーダンス変換回路3025aを設けることで、損失を低減できる。
【0142】
図29に示すように、インピーダンス変換回路3025aのインピーダンス(特性インピーダンス)は、3dBブランチラインカプラにおける系のインピーダンスZ(例えば、50Ω)とは異なる値のインピーダンスに設定される。異なる値のインピーダンスとすることで、第3ポートP3又は第4ポートP4側への反射電力を大きくすることができる。
【0143】
インピーダンス変換回路(インダクタ)3025aのインピーダンスを、Z(=50Ω)よりも大きくする場合、インピーダンス変換回路3025aのインピーダンスは、60Ω以上とするのが好ましい。つまり、インピーダンス変換回路3025aのインピーダンスは、Zの120%以上とするのが好ましい。さらには、インピーダンス変換回路3025aのインピーダンスは、70Ω(Zの140%以上)とするのがより好ましい。
【0144】
インピーダンス変換回路3025aの特性インピーダンスを、Zよりも小さくすることで、Zよりも大きくする場合に比べて、可変インピーダンス3021,3022,821,822における熱損失が小さくなり、損失を、比較的小さくすることができる。
インピーダンス変換回路(インダクタ)3025aのインピーダンスを、Z(=50Ω)よりも小さくする場合、インピーダンス変換回路3025aのインピーダンスは、40Ω以下とするのが好ましい。つまり、インピーダンス変換回路3025aのインピーダンスは、Zの80%以下とするのが好ましい。さらには、インピーダンス変換回路3025aのインピーダンスは、30Ω(Zの60%以下)とするのがより好ましい。
【0145】
このように、インダクタ3025を分布定数線路で構成した場合、インダクタ3025は、第3ポートP3又は第4ポートP4と可変容量ダイオード3026との間にあり、かつ、Z未満とするのが好ましい。
【0146】
なお、増幅装置801の出力にアンテナが接続される場合、当該アンテナの特性インピーダンスZ(多くの場合50Ω又は75Ω)に整合するように、増幅装置801の伝送路(増幅装置801によって増幅された信号の伝送路)の特性インピーダンスZ(50Ω又は75Ω)が設定される。したがって、3dBブランチラインカプラにおける系のインピーダンスZも、50Ω又は75Ωに設定される。
【0147】
[6.10 インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部]
図30は、図20(図23、図24)に示す負荷変動部(負荷変動器)3001において、インピーダンスが離散的に変化するように構成したものを示している。図30に示す負荷変動部3001は、図25に示す増幅装置801の負荷変動部803としても利用できる。
【0148】
図30に示す負荷変動部3001において、第3ポートP3及び第4ポートP4それぞれに接続された可変インピーダンス3021,3022は、インピーダンスが離散的に変化するよう構成されている。
第3ポートP3に接続された第1可変インピーダンス3021は、インピーダンスの異なる複数のインピーダンスZ,Z,・・・Zを備えている。さらに、第1可変インピーダンス3021は、複数のインピーダンスZ,Z,・・・Zのうちの一つを選択して、選択したインピーダンスを第3ポートP3側に接続させる制御素子(スイッチング素子;高周波スイッチング素子)3028を備えている。
第4ポートP4に接続された第2可変インピーダンス3022も、インピーダンスの異なる複数のインピーダンスZ,Z,・・・Zを備えている。さらに、第2可変インピーダンス3022は、複数のインピーダンスZ,Z,・・・Zのうちの一つを選択して、選択したインピーダンスを第4ポートP4側に接続させる制御素子(スイッチング素子;高周波スイッチング素子)3028を備えている。
【0149】
第1可変インピーダンス3021及び第2可変インピーダンス3022の制御素子3028を制御部3031によって制御し、任意のインピーダンスZ,Z,・・・Zを選択することで、可変インピーダンス3021,3022のインピーダンスの値を独立して調整可能である。
つまり、可変インピーダンス3021,3022のインピーダンス差も離散的に変化し、その結果、入力ポートP1−出力ポートP2間での反射電力・通過電力のバランスが離散的に変化し、負荷変動部3001の入力インピーダンスが離散的に変化する。
インピーダンスを離散的に変化させるようにすることで、連続的にインピーダンスを変化させる場合に比べて、高速化が容易となる。
【0150】
[6.11 可変位相器を複数用いた負荷変動部]
図31は、可変位相器を複数(2つ)用いた負荷変動部(負荷変動器)4001を示している。
図31に示す負荷変動部4001は、図14に示す負荷変動部1001の位相調整器1003a,1003bとして、それぞれ、図20に示す可変位相器(負荷変動部3001)を利用したものに相当する。
【0151】
つまり、図31に示す負荷変動部4001は、第1位相調整器4003a及び第2位相調整器4003bを備えている。第1位相調整器4003a及び第2位相調整器4003bには、それぞれ、増幅器4002の出力信号(負荷変動部4001を通過する信号)を複数に分波した分波出力信号が与えられる。なお、位相調整器4003a,4003bは、位相だけが調整される必要はなく、例えば、インピーダンス変換が併せて行われていても良い。
【0152】
位相調整器4003a,4003bによって位相が調整された分波出力信号それぞれは、λ/4線路からなるインピーダンス変換器4003c,4003dを通って、合成部4003eによって合成される。合成された出力信号は、無線通信装置のアンテナ4010から出力される。
【0153】
第1位相調整器4003a及び第2位相調整器4003bそれぞれは、図20に示す可変位相器(負荷変動部3001)と同様の構成を有している。
つまり、第1位相調整器4003a及び第2位相調整器4003bそれぞれは、図20に示すものと同様に、ブランチラインカプラによって構成することができる。この場合、第1位相調整器4003a及び第2位相調整器4003bそれぞれは、第1ポートP1,第2ポートP2,第3ポートP3,及び第4ポートP4を有する4ポート回路(3dBブランチラインカプラ)を有し、各ポートP1,P2,P3,P4の間には、4つの伝送路4111,4112,4113,4114が設けられている。各伝送路4111,4112,4113,4114は、λ/4線路である。
【0154】
第1ポートP1と第3ポートP3との間の伝送路4111のインピーダンス、及び、第2ポートP2と第4ポートP4との間の伝送路4114のインピーダンスは、それぞれ、Z/(√2)である(Zは3dBブランチラインカプラにおける系のインピーダンス)。また、第1ポートP1と第2ポートP2との間の伝送路4112のインピーダンス、及び第3ポートP3と第4ポートP4との間の伝送路4113のインピーダンスは、Zである。
【0155】
第1ポートP1は、分波出力信号が入力される入力ポートであり、第2ポートは、信号が出力される出力ポートである。
第1位相調整器4003a及び第2位相調整器4003bそれぞれにおける第3ポートP3及び第4ポートP4には、それぞれ、可変インピーダンス4121,4122が接続されている。可変インピーダンス4121,4222は、例えば、インダクタと可変容量ダイオード(バラクタダイオード)によって構成されている。可変インピーダンス4121,4222としては、図27(a)(b)(c)に示す3つの構成のいずれを採用してもよい。また、可変インピーダンス4121,4222としては、図30に示す可変インピーダンス(インピーダンスが離散的に変化する可変インピーダンス)3028を採用してもよい。
【0156】
可変位相器である第1位相調整器4003a及び第2位相調整器4003bによって、複数の分波出力信号間の位相差を調整することで、負荷変動部4001の負荷(インピーダンス)を変化させることができる。
【0157】
負荷変動部4001において、4つの可変インピーダンス4121,4122の値は、制御部4031によって、独立して調整可能である。
第1位相調整器4003a及び第2位相調整器4003bそれぞれの可変インピーダンス4121,4122の値を、制御部4031の制御信号(第1制御信号〜第4制御信号)に従って、適切に調整すると、負荷変動部4001の入力インピーダンス(増幅器4002側からみたインピーダンス)を変動させつつ、負荷変動部4001の出力インピーダンス(アンテナ4010側からみたインピーダンス)を略一定にすることができる。これは、可変インピーダンス4121,4122の値を調整することで、第1位相調整器4003a及び第2位相調整器4003bそれぞれの反射電力及び通過電力のバランスを調整でき、負荷変動部4001の出力インピーダンスを変動させずに、入力インピーダンスを変動させることが可能となるからである。
したがって、図31に示す負荷変動部4001では、出力インピーダンスの変動を抑制するためにアイソレータを設ける必要がない(ただし、アイソレータを設けてもよい)。
例えば、第1位相調整器4003a及び第2位相調整器4003bそれぞれの可変インピーダンス4121,4122の電圧反射係数Γ(i=1〜4)値を、次のように設定することで、負荷変動部4001の出力インピーダンス(50Ω)を一定にしつつ、負荷変動部4001の入力インピーダンスを変動(50Ω,82Ω,120Ω)させることができる。
【表1】


表1において、Γは、第1位相調整器4003aの可変インピーダンス4121の反射係数であり、Γは第1位相調整器4003aの可変インピーダンス4122の反射係数であり、Γは第2位相調整器4003aの可変インピーダンス4121の反射係数であり、Γは第2位相調整器4003aの可変インピーダンス4122の反射係数である。Z,Z,Z,Zは、上記のZの式に従ってΓ1,Γ2,Γ3,Γ4から算出される可変インピーダンス4121,4122のインピーダンスである。
なお、表1では、反射係数の絶対値の大きさと位相角とを変化させて、所望の入力インピーダンスを設定しているが、絶対値の大きさを変えず、位相角だけを変化させることでも、同様に入力インピーダンスを設定することが可能である。
【0158】
図31の負荷変動部4001は、位相器4140及び位相補正部4141を備えている。位相器4140及び位相補正部4141は、図23及び図24に示す位相器3040及び位相補正部3041と同様のものである。
【0159】
つまり、位相器4140は、位相を適宜回転させることで、負荷変動部4001のインピーダンスを、図21のS1〜S5から、図21のS1’〜S5’のように変化させて、負荷変動部4001を抵抗にみせるか、又は、所望のインピーダンス特性が得られるようにするためのものである。
また、位相補正部4141は、信号が負荷変動部4001を通過する際に生じる位相の変化を補正するためのものである。
【0160】
図31において、負荷変動部4001には、インピーダンス変換器4150が接続されている。インピーダンス変換器4150は、λ/4伝送線路によって構成されており、図25に示す増幅装置801におけるインピーダンス変換器850と同じ機能を有する。つまり、インピーダンス変換器4150を設けることで、負荷変動部4001のインピーダンスを高く変動させることができる。
【0161】
[6.12 可変位相器を用いた負荷変動部を有する増幅装置]
図32は、可変位相器を用いた負荷変動部を有する増幅装置901を示している。図32の増幅装置901は、図25に示す増幅装置801において、負荷変動部803を、図31の負荷変動部4001に置換したものと等価である。つまり、図32の増幅装置901は、図31の負荷変動部4001と同様の負荷変動部903を備えている。
なお、図32の増幅装置901において、増幅器902は、スイッチング増幅器であるが、スイッチング増幅器でなくてもよい。
【0162】
図32の増幅装置901では、負荷制御部として、第1〜第4制御信号を生成する制御部904cを備えている。制御部904cは、入力信号の振幅情報rに基づいて、第1位相調整器4003a及び第2位相調整器4003bそれぞれの可変インピーダンス4121,4122の値を制御し、負荷変動部903における負荷(抵抗)を変動させる。なお、第1〜第4制御信号は、4つの可変インピーダンス4121,4122を制御する信号である。
【0163】
なお、制御部904cと可変インピーダンス4121,4122との間には、(第1〜第4)制御信号それぞれに対する遅延調整を行う遅延調整部905a,905b,905c,905dが設けられている。遅延調整部905a,905b,905c,905dにて遅延調整を行うことで、増幅器902の出力信号との間で信号タイミングを一致させることができる。
【0164】
なお、図32の増幅装置901においても、位相補正部4141に対応する機能(位相補正機能)は、歪補償部909にて行うことができる。
また、増幅器902と負荷変動部903との間に設けられたインピーダンス変換器(λ/4線路)950は、負荷変動部903が生じさせる負荷の変動範囲Z〜Zが、増幅器902として必要な範囲となるようにインピーダンス変換を行うものである。
【0165】
図32の増幅装置901では、1つのスイッチング増幅器902出力信号を分波した分波出力信号を二つの位相調整器4003a,4003bに与える。
ただし、図16の増幅装置601のように、直交変調器906の出力である変調信号が2つに分波され、分波された変調信号が2つ(複数)の増幅器に入力されてもよい。
また、図18の増幅装置701のように、分派された信号を、複数(2つ)の増幅器による増幅の前に、位相調整器4003a,4003bにて位相調整してもよい。
【0166】
[6.13 インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部]
図33及び図34は、インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部5001を示している。
この負荷変動部5001は、並列接続された複数(2つ)のインピーダンス変換部5011,5012を備えている。
第1インピーダンス変換部(第1伝送線路)5011及び第2インピーダンス変換部(第2伝送線路)5012は、それぞれ、マイクロストリップラインによって構成されたλ/4伝送線路(線路長さがλ/4である伝送線路)である。
【0167】
二つのインピーダンス変換部5011,5012のうち、一方のインピーダンス変換部(第2インピーダンス変換部)5012には、高周波スイッチング素子(制御素子)5021を備えている。
図34では、二つのインピーダンス変換部5011,5012の線路幅が異なっているため、両者の線路インピーダンスは異なるが、同じであってもよい。
【0168】
スイッチング素子5021は、例えば、PINダイオード5021aによって構成することができ、導通状態又は非導通状態に切り替わることができる。図34に示すように、スイッチング素子5021にインダクタ(付加素子)5022を並列接続することで、スイッチング素子5021及びインダクタ5022とで共振回路を構成すると、より完全な導通状態又は非導通状態を得ることができる。なお、なお、付加素子5022は、インダクタに限られず、スイッチング素子5021のインピーダンス特性に応じて、共振回路を得るための適当な素子であればよい。
【0169】
スイッチング素子5021は、第2インピーダンス変換部(第2伝送線路)5012の中央位置に接続されている。換言すると、スイッチング素子5021は、λ/4伝送線路5012の端部からの線路長さがλ/8である位置に接続されている。スイッチング素子5021が接続された位置は、λ/4伝送線路5012を、2つのλ/8伝送線路5012a,5012bに分割する位置となっている。
【0170】
図33(b)に示すように、スイッチング素子5021が、非導通状態(OFF)である場合、スイッチング素子5021の存在は無視できる。したがって、負荷変動部5001全体は、2つの伝送線路5011,5012の並列回路となる。この場合、負荷変動部5001のインピーダンスは、第1インピーダンス変換部5011の線路インピーダンスZと第2インピーダンス変換部5012の線路インピーダンスZの合成インピーダンス(Z//Z)となる。
【0171】
一方、図33(c)に示すように、スイッチング素子5021が、導通状態(ON)である場合、第2伝送線路5012は、2つのスタブ(ショートスタブ)5012a,5012bとなる。したがって、負荷変動部5001全体は、λ/4の第1伝送線路5011の両側に2つのλ/8ショートスタブ5012a,5012bが接続されたπ型の回路となる。この場合、負荷変動部5001のインピーダンスは、π型回路における合成インピーダンスとなる。
【0172】
このように、スイッチング素子5021の素子状態(導通状態/非導通状態)を切り替えることで、負荷変動部5001を、伝送線路5011,5012の並列回路又はπ型回路に切り替えることができる。伝送線路5011,5012の並列回路とπ型回路とでは、インピーダンスが異なるため、スイッチング素子5021の導通状態/非導通状態を切り替えることで、インピーダンスを変化させることができる。
つまり、負荷変動部5001のインピーダンスは、伝送線路5011,5012の並列回路の第1インピーダンス及びπ型回路の第2インピーダンスの2つのインピーダンス値をとることができる。このように、負荷変動部5001は、インピーダンスが、2種類の値に離散的に変化する。
なお、負荷変動部5001のインピーダンスを離散的に変化させる必要がない場合、制御素子5021としては、スイッチング素子に限らず、可変インピーダンス素子であってもよい。
【0173】
図33において、負荷変動部5001には、補助インピーダンス変換部5002が接続されている。補助インピーダンス変換部5002は、λ/4伝送線路によって構成されており、図25に示す増幅装置801におけるインピーダンス変換器850と同じ機能を有する。つまり、補助インピーダンス変換部5002を設けることで、負荷変動部5001のインピーダンスを高く変動させることができる。
【0174】
負荷変動部5001を構成するインピーダンス変換部(伝送線路)5011,5012の数は、2つに限られず、図35(a)に示すように3つであってもよい。図35(a)に、3つのインピーダンス変換部5011,5012,5013を有する負荷変動部5001を示した。負荷変動部5001を構成するインピーダンス変換部の数は、3以上であってもよい。
【0175】
図35(a)の負荷変動部5001では、負荷変動部5001を構成する全てのインピーダンス変換部5011,5012,5013それぞれに、第1〜第3スイッチング素子(制御素子)5021a,5021b,5021cが接続されている。この場合、図35(b)に示すように、第1〜第3スイッチング素子5021a,5021b,5021cそれぞれのON/OFF(導通/非導通)を適宜切り替えることで、負荷変動部5001全体のインピーダンスを、Z〜Zに離散的に変化させることができる。
【0176】
図36及び図37に示すように、スイッチング素子(制御素子)5021は、第2インピーダンス変換部5012の中途位置に介在するように直列接続されていてもよい。つまり、2つの分離したλ/8伝送線路5012a,5012bの間に、スイッチング素子5021を直列接続してもよい。
【0177】
図36(b)に示すように、スイッチング素子5021が、導通状態(ON)である場合、2つのλ/8伝送線路5012a,5012bは、直列接続され、1つのλ/4伝送線路5012となる。したがって、負荷変動部5001全体は、2つの伝送線路5011,5012の並列回路となる。この場合、負荷変動部5001のインピーダンスは、第1インピーダンス変換部5011の線路インピーダンスZと第2インピーダンス変換部5012の線路インピーダンスZの合成インピーダンス(Z//Z)となる。
【0178】
一方、図36(c)に示すように、スイッチング素子5021が、非導通状態(OFF)である場合、第2伝送線路5012は、2つのスタブ(オープンスタブ)5012a,5012bとなる。したがって、負荷変動部5001全体は、λ/4の第1伝送線路5011の両側に2つのλ/8オープンスタブ5012a,5012bが接続されたπ型の回路となる。この場合、負荷変動部5001のインピーダンスは、π型回路における合成インピーダンスとなる。
この結果、図36及び図37に示す負荷変動部5001においても、インピーダンスが、2種類の値に離散的に変化することができる。
【0179】
図38に示す負荷変動部5001は、図33〜図37に示す負荷変動部5001を一つの部分負荷変動部とし、複数(3つ)の部分負荷変動部5001a,5001b,5001cを組み合わせて構成されたものである。
【0180】
図38において、複数の部分負荷変動部5001a,5001b,5001cは直列にカスケード接続されている。
複数(3つ)の部分負荷変動部5001a,5001b,5001cそれぞれには、制御部5031から、制御信号(第1〜第3制御信号)が与えられる。部分負荷変動部5001a,5001b,5001cのスイッチング素子5021それぞれは、制御信号によってON/OFF制御される。
【0181】
負荷変動部5001が、複数の部分負荷変動部5001a,5001b,5001cを備えることで、負荷変動部5001のインピーダンスの値の種類を増やすことができる。
一つの部分負荷変動部において、離散的に変化するインピーダンスの値の種類をAとし、負荷変動部5001を構成する部分負荷変動部の数をNとすると、負荷変動部5001全体で、インピーダンスの値の種類は、Aとなる。
【0182】
特に、部分負荷変動部を図33(図34)及び図36(図37)のように構成した場合、一つの部分負荷変動部が有するスイッチング素子5021の数は一つであるから、N個のスイッチング素子5021で、A種類のインピーダンスを実現することができる。つまり、3つの部分負荷変動部で負荷変動部を構成した場合、3つのスイッチング素子で、2=8種類のインピーダンスを表現することができる。
このように、比較的少ない数のスイッチング素子5021によって、多様なインピーダンスを実現できる。
【0183】
複数の部分負荷変動部5001a,5001b,5001cを直列に接続する場合、図39(a)に示すように、隣接する部分負荷変動部5001a,5001b,5001c同士を近接して配置した場合、隣接する部分負荷変動部5001a,5001b,5001c間で干渉が生じる。
【0184】
一方、図39(b)に示すように、干渉を避けるために、隣接する部分負荷変動部5001a,5001b,5001c間に伝送線路を介在させて、隣接する部分負荷変動部同士を離すと、その伝送線路によって、負荷変動部5001全体のインピーダンスが影響を受ける。伝送線路による影響を避けるには、線路長がλであるλ伝送線路とすることで、隣接する部分負荷変動部5001a,5001b,5001c同士を近接して配置した場合と同じ特性にする必要がある。λ伝送線路を設ける必要があると負荷変動部5001が大型化する。
【0185】
そこで、図40に示すように、複数の部分負荷変動部5001a,5001b,5001cを、回路基板(両面基板)5050の表面5051と裏面5052とに互い違いに位置させることで、干渉を回避しつつ、大型化を防止できる。
【0186】
例えば、図40に示す負荷変動部5001は、表裏両面に回路パターンが形成される回路基板5050の表面5051に第1部分負荷変動部5001aが形成されている。第1部分負荷変動部5001aに隣接する第2部分負荷変動部5001bは、裏面5052に形成され、スルーホール5053を介して、表面5051に形成された第1部分負荷変動部5001aと接続されている。第2部分負荷変動部5001bに隣接する第3部分負荷変動部5001cは、表面5051に形成され、スルーホール5054を介して、裏面5052に形成された第2部分負荷変動部5001bと接続されている。
【0187】
なお、複数の部分負荷変動部を有する負荷変動部において、複数の部分負荷変動部は一列に直列接続されている必要はない。例えば、負荷変動部5001は、図41(a)に示すように、複数(2つ)の部分負荷変動部5001a,5001bが直列接続されたものと、別の複数(2つの)部分負荷変動部5001c,5001dが直列接続されたものと、を並列接続して構成されていてもよい。
【0188】
また、図41(b)に示すように、負荷変動部5001は、図41(a)に示すように接続された部分負荷変動部5001a,5001b,5001c,5001dに対して、さらに別の部分負荷変動部5001eを直列接続してもよい。このように、多様な接続方法によって、複数の部分負荷変動部を接続することが可能である。
図41に示すように、複数の部分負荷変動部が、できるだけ、並列接続されるようにすることで、全ての部分負荷変動部を直列接続した場合に比べて、損失を抑えることができる。
【0189】
[6.14 インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部を有する増幅装置]
図42は、インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部を有する増幅装置951を示している。図42の増幅装置951は、図25に示す増幅装置において、負荷変動部803を、図38の負荷変動部5001に置換したものと、略等価である。つまり、図42の増幅装置951は、図38の負荷変動部5001と同様の負荷変動部953を備えている。負荷変動部953の負荷は離散的に変化する。
なお、図42の増幅装置951において、増幅器952は、スイッチング増幅器であるが、スイッチング増幅器でなくてもよい。
【0190】
図42の増幅装置951では、負荷制御部として、負荷変動部953を構成する部分負荷変動部5001a,5001b,5001cそれぞれのスイッチング素子5021の制御(ON/OFF切替)を行うための第1〜第3制御信号(ON/OFF信号)を生成する制御部954cを備えている。制御部954cは、入力信号の振幅情報rに基づいて、それぞれのスイッチング素子5021の制御を行い、負荷変動部903における負荷を変動させる。
【0191】
なお、制御部954cと部分負荷変動部5001a,5001b,5001cとの間には、(第1〜第3)制御信号それぞれに対する遅延調整を行う遅延調整部955a,955b,955cが設けられている。遅延調整部955a,955b,955cにて遅延調整を行うことで、増幅器902の出力信号との間で信号タイミングを一致させることができる。
【0192】
なお、図42の増幅装置951においても、位相補正部に対応する機能を設けることができる。つまり、負荷変動部5001において生じる通過位相の変化を、位相補正部にて補正することができる。ただし、図42において、位相補正部の機能は、歪補償部959にて行うことができる。
また、増幅器952と負荷変動部953との間には、インピーダンス変換器(λ/4線路)960が設けられている。このインピーダンス変換器960は、負荷変動部953が生じさせる負荷の変動範囲Z〜Zが、増幅器952として必要な範囲となるようにインピーダンス変換を行うものである。
【0193】
また、負荷変動部953には、アイソレータ5003が設けられている。負荷変動部953の最終段に、アイソレータ5003を設けることで、増幅器952からみた負荷(負荷変動部953の入力インピーダンス)が変動しても、負荷変動部953の出力インピーダンスの変動を抑えることができる。負荷変動部953の出力インピーダンスの変動を抑えることで、負荷変動部953の出力側に接続されたアンテナとの整合を確保することができ、動作が安定する。
【0194】
[6.15 インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部の他の例]
図43は、インピーダンスが離散的に変化する負荷変動部6001を示している。負荷変動部6001は、インピーダンスの異なる複数の負荷部6011,6012,6014,6014,6015を備えている。負荷部6011〜6015は、例えば、インピーダンス変換部(伝送線路;マイクロストリップライン)によって構成することができる。
【0195】
負荷変動部6001は、複数の負荷部6011〜6015のいずれかを択一的に選択するためのスイッチ部6021,6022を備えている。スイッチ部6021,6022それぞれは、複数のスイッチング素子(高周波スイッチング素子)を備えている。
負荷変動部6001の負荷(インピーダンス)は、複数の負荷部6001〜6015のうち選択された負荷部のインピーダンスとなる。つまり、負荷変動部6001は、インピーダンスが離散的に変化する。
【0196】
図43の負荷変動部6001は、負荷変動部6001がとり得るインピーダンスの値の個数に比べて、スイッチング素子の数が多くなり易いが、構成が単純であるため、設計が容易である。
【0197】
[6.16 インピーダンスを離散的に変化させる方法]
ロードモジュレーション方式の増幅装置では、増幅装置の入力信号(変調信号)の時間的変動に応じて、負荷変動部の負荷(インピーダンス)の値が変動する。つまり、増幅装置の入力信号(変調信号)は、負荷を変動させる基準となる基準信号(時間変動する信号)となっている。
【0198】
ここで、ナイキストの定理によれば、信号の変調帯域幅の2倍以上の周波数で離散化を行えば、信号の帯域内の情報をすべて保存することができる。
したがって、負荷変動部のインピーダンスを離散的に変化させようとする場合には、負荷変動の基準となる基準信号の帯域幅(伝送帯域幅)の2倍以上のレートで離散的に負荷の値を変更すればよい。その結果、負荷を離散的に変化させても、負荷を連続的に変化させたのと同様の結果が得られる。
【0199】
しかも、負荷(インピーダンス)の変化を離散的に行うことで、連続的に行う場合に比べて、負荷の変化の高速化が容易である。
【0200】
図44は、既に説明した数々の増幅装置を、負荷変動部における負荷の変動速度の観点から説明するためのものである。
図44において、ロードモジュレーション方式の増幅装置11は、増幅器12と、増幅器12の出力側に接続された負荷変動部(負荷変動器)13と、を備えている。
【0201】
負荷変動部13は、信号(通過信号)が入力される入力部13aと、入力部13aに入力された信号に対する負荷の値を変更可能な負荷変動部本体(負荷変動器本体)13bと、負荷変動部本体13bから出力された信号を出力する出力部13cと、負荷変動部本体13bの負荷の値を変更するための制御信号が入力される制御信号入力部13dと、を備えている。
【0202】
負荷変動部13が、増幅装置の他の回路素子とは独立してユニット化(チップ化)された回路によって構成されている場合、入力部13a、出力部13c、及び制御信号入力部13dそれぞれは、例えば、ユニット化された回路における信号入出力のための端子が相当する。
また、負荷変動部13が、ユニット化されていない場合、入力部13a、出力部13c、及び制御信号入力部13dそれぞれは、増幅装置における他の回路素子から、負荷変動部13に接続される配線部が相当する。
【0203】
入力部13aは、増幅器12の出力側に接続されており、出力部13cは、アンテナ側に接続されており、制御信号入力部13dは、負荷制御部14cに接続されている。
【0204】
負荷制御部14cは、負荷変動部本体13bの負荷の変化を制御するためのものである。負荷制御部14cは、入力信号の振幅情報rに基づいて、負荷変動部本体13bの負荷を変化させる制御信号(スイッチング素子のON/OFF信号など)を生成する。負荷制御部14cが生成する制御信号は、入力信号の帯域をf[Hz]とした場合、fの2倍(2×f[Hz])以上のレートで、負荷変動部本体13bの負荷を離散的に変化させるデジタル信号である。つまり、制御信号の信号レートは、2×f[Hz]以上となっている。
【0205】
負荷変動部13(負荷変動部本体13b)の動作レートも、制御信号の信号レートと同じであり、fの2倍(2×f[Hz])以上のレートとなる。したがって、負荷変動部13は、入力信号(基準信号)の帯域の2倍以上のレートで、負荷が離散的に変化する。
【0206】
[7.付記]
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0207】
101:増幅装置
102:増幅器(スイッチング増幅器)、103:負荷変動部、104:処理部、104a:振幅演算部、104b:位相演算部、104c:負荷制御部、105:遅延調整部、106:位相変調器
【0208】
201:増幅装置
202:増幅器(スイッチング増幅器)、203:負荷変動部、204:処理部、204a:振幅演算部、204b-1,204b-2:演算部、204c:負荷制御部、205:遅延調整部、206:直交変調器
【0209】
301:増幅装置、302:増幅器(スイッチング増幅器)、303:負荷変動部、304:処理部、304a:振幅演算部、304c:負荷制御部、305:遅延調整部、306:直交変調器
【0210】
401:増幅装置
402:増幅器(スイッチング増幅器)、403:負荷変動部、404:処理部、404a:振幅演算部、404c:負荷制御部、405:遅延調整部、406:直交変調器、407,408,409:歪補償部
【0211】
501:増幅装置
502:増幅器(スイッチング増幅器)、503:負荷変動部、504:処理部、504a:振幅演算部、504c:負荷制御部、505:遅延調整部、506:直交変調器、508:電源変調部、
【0212】
601:増幅装置
602:増幅器(スイッチング増幅器)、602a,602b 増幅器(スイッチング増幅器)、603:負荷変動部、603a,603b:位相調整器、603e:合成部、603f:アイソレータ、604:処理部、604a:振幅演算部、604c−1,604c−2:負荷制御部、605a,605b:遅延調整部、606:直交変調器
【0213】
701:増幅装置
702a,702b:増幅器(スイッチング増幅器)、703:負荷変動部、703a,703b:位相調整器、703e:合成部、703f:アイソレータ、704:処理部、704a:振幅演算部、704c−1,704c−2:負荷制御部、705a,705b:遅延調整部、706:直交変調器、709:歪補償部
【0214】
801:増幅装置
802:増幅器(スイッチング増幅器)、803:負荷変動部、804:処理部、804a:振幅演算部、804c−1,804c−2:負荷制御部、805a,805b:遅延調整部、806:直交変調器、809:歪補償部、821,822:可変インピーダンス、840:位相器、843:アイソレータ、850:インピーダンス変換器
【0215】
901:増幅装置
902:増幅器(スイッチング増幅器)、903:負荷変動部、904:処理部、904a:振幅演算部、904c:負荷制御部、905a,905b,905c,905d:遅延調整部、906:直交変調器、909:歪補償部、950:インピーダンス変換器
【0216】
951:増幅装置
952:増幅器(スイッチング増幅器)、953:負荷変動部、954:処理部、9454a:振幅演算部、954c:負荷制御部、905a,905b,905c:遅延調整部、956:直交変調器、959:歪補償部、960:インピーダンス変換器
【0217】
1001:負荷変動器(負荷変動部)
1002:増幅器、1003a,1003b:位相調整器、1003c,1003d:インピーダンス変換器、1003e:合成部、1003f:アイソレータ、1010:アンテナ、1011:位相制御部
【0218】
2001 増幅装置
2002a,2002b:増幅器、2003e:合成部、2004:信号処理部、2006a,2006b:位相変調器
【0219】
3001 負荷変動器(負荷変動部)
3011,3012,3013,3014:伝送路、3021,3022:可変インピーダンス、3035:可変容量ダイオード、3025:インダクタ、3025a:分布定数線路、3028:制御素子(スイッチング素子)、3031:制御部、3040:位相器、3041:位相補正部、3043:アイソレータ、P1:第1ポート、P2:第2ポート、P3:第3ポート、P4:第4ポート
【0220】
4001:負荷変動器(負荷変動部)
4002:増幅器、4003a,4003b:位相調整器、4010:アンテナ、4111,4112,4113,4114:伝送線路、4121,4122:可変インピーダンス、4140:位相器、4141:位相補正部、4150:インピーダンス変換器、4031:負荷制御部
【0221】
5001:負荷変動器(負荷変動部)
5001a,5001b,5001c,5001d,5001e:部分負荷変動部、5002:補助インピーダンス変換部、5011,5012,5013:インピーダンス変換部、5012a,5012b:λ/8伝送線路、5021,5021a,5021b,5021c:制御素子(スイッチング素子;高周波スイッチング素子;PINダイオード)、5022:付加素子(インダクタ)、5023、共振回路、5031:負荷制御部、5050:両面基板、5051:表面、5052:裏面、5053,5054:スルーホール
【0222】
6001:負荷変動器(負荷変動部)
6011〜6015:負荷部、6021,6021:スイッチ部
【0223】
11:増幅装置
12:増幅器(スイッチング増幅器)、13:負荷変動部(負荷変動器)、13a:入力部、13b:負荷変動部本体(負荷変動器本体)、13c:出力部、13d:制御信号入力部、14c:負荷制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過信号に対する負荷の値を変更可能な負荷変動器であって、
通過信号が入力される入力部と、
前記入力部に入力された通過信号に対する負荷の値を変更可能な負荷変動器本体と、
前記負荷変動器本体から出力された通過信号を出力する出力部と、
負荷を変動させる基準となる基準信号の時間的変動に応じて前記負荷変動器本体の負荷の値を変更するための制御信号が入力される制御信号入力部と、
を備え、
前記制御信号は、前記基準信号の帯域幅の2倍以上のレートのデジタル信号であり、
前記負荷変動器本体は、前記制御信号に基づいて、負荷の値を、前記基準信号の帯域幅の2倍以上のレートで離散的に変更する
ことを特徴とする負荷変動器。
【請求項2】
信号を増幅する増幅装置であって、
増幅器と、
前記増幅器の出力側に接続された負荷変動器と、
を備え、
前記負荷変動器は、請求項1記載の負荷変動器である
ことを特徴とする増幅装置。
【請求項3】
前記基準信号は、前記増幅器によって増幅されるべき信号である
請求項2記載の増幅装置。
【請求項4】
前記負荷変動器を通過する信号の位相の変化を補正する位相補正部を更に備えている
請求項2又は3記載の増幅装置。
【請求項5】
前記増幅装置は、ロードモジュレーション方式である
請求項2〜4のいずれか1項に記載の増幅装置。
【請求項6】
請求項2記載の増幅装置を通信信号の増幅のために備えた無線通信装置。
【請求項7】
負荷の値を変更可能な負荷変動器の動作方法であって、
負荷を変動させる基準となる基準信号の時間的変動に応じて前記負荷変動器の負荷の値を変更させる際に、前記基準信号の帯域幅の2倍以上のレートで離散的に負荷の値を変更する
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2013−66154(P2013−66154A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67635(P2012−67635)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】