負荷電流制御用抵抗器
【課題】温度ヒューズの溶断時、溶融ヒューズの落下地点における溶融ヒューズによる導体間の短絡を防止する。
【解決手段】負荷電流制御用抵抗器3は、樹脂材によるベース40上に抵抗体や温度ヒューズ23を配置し、それらを金属板によるプロテクタ30で覆っている。回路の異常時に作動する温度ヒューズは第1ヒューズターミナル11aの第1ヒューズ取付部14aと、プロテクタと共用している第2ヒューズターミナル30の第2ヒューズ取付部35との間をはんだ付けされるはんだヒューズである。温度ヒューズの直下の溶融ヒューズの落下地点には、ベース上面40a上に凹部である長溝46が形成されている。この溶融ヒューズ23dを長溝46の凹部に捉えて溜めることにより、第1および第2ヒューズ取付部のそれぞれの直下の導体である第1および第2ベース接触部18、39間の接続を遮断して、確実に短絡を防止することができる。
【解決手段】負荷電流制御用抵抗器3は、樹脂材によるベース40上に抵抗体や温度ヒューズ23を配置し、それらを金属板によるプロテクタ30で覆っている。回路の異常時に作動する温度ヒューズは第1ヒューズターミナル11aの第1ヒューズ取付部14aと、プロテクタと共用している第2ヒューズターミナル30の第2ヒューズ取付部35との間をはんだ付けされるはんだヒューズである。温度ヒューズの直下の溶融ヒューズの落下地点には、ベース上面40a上に凹部である長溝46が形成されている。この溶融ヒューズ23dを長溝46の凹部に捉えて溜めることにより、第1および第2ヒューズ取付部のそれぞれの直下の導体である第1および第2ベース接触部18、39間の接続を遮断して、確実に短絡を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷電流制御用抵抗器に関し、特に、その抵抗器に用いられる温度ヒューズの溶断時の溶融ヒューズによる短絡防止を可能にする負荷電流制御用抵抗器に関する。本発明の負荷電流制御用抵抗器は、送風機等の速度制御用抵抗器として用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、送風機の送風量を切り替えるための負荷電流制御用抵抗器として、ベース上にコイルタイプの抵抗体を配置するとともに、この抵抗体に異常電流が流れて抵抗体が異常発熱する場合に、その熱により溶断して抵抗器の回路を遮断する温度ヒューズを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この温度ヒューズには、はんだが用いられる場合があるが、近年の鉛フリー対応などで、従来使用していたSn63Pb37の組成をもつはんだヒューズを、鉛フリー化するために、温度ヒューズとしての作動温度が比較的高い高温はんだを用いる必要がある。
【0004】
このヒューズ作動温度が高くなることにより、温度ヒューズの作動に要する時間が長めになり、その結果、温度ヒューズの両端の温度差が小さくなる傾向にある。
【0005】
すなわち、図10において、(a)に示すように、はんだで構成される温度ヒューズ100の両端部101、102でそれぞれヒューズターミナル110、120に接合されている状態で、温度ヒューズ100の、特に右側ヒューズターミナル110側の周囲温度が上昇するような使用環境を考える。この場合、周囲温度の上昇に応じて右側ヒューズターミナル110の温度Taが温度ヒューズ100の作動温度TCより高くなり、左側ヒューズターミナル120の温度TbがTCより低い場合(Ta>TC>Tb)は、図10(b)に示すように、温度ヒューズ100は右側ヒューズターミナル110側の端部101で溶断し、左側ヒューズターミナル120側の端部102では溶断しない片側溶断が発生する。この片側溶断では、温度ヒューズ100の溶融量は少なく、落下する可能性は比較的小さく、あるいは、落下しても、その溶融量に応じて落下量も少ない。
【0006】
一方、温度ヒューズ100の周辺温度が高く、温度ヒューズ100全体が作動温度TCより高い温度にまで加熱されるような使用環境では、温度ヒューズ100の両端温度差が小さくなる(Ta≒Tb>TC)。この場合は、図10(c)に示すように、温度ヒューズ100の両端側101、102で溶断し、溶融した温度ヒューズ103の落下量が多くなり、場合によっては温度ヒューズ100の全量が落下してしまう可能性がある。
【特許文献1】特開平9−231892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、温度ヒューズの溶断時、その溶融量が少ないことや溶融ヒューズの落下方向の調整などにより、溶融したヒューズの落下部位における溶融ヒューズの広がりによる導体間の短絡を防止する対策は不要とされていた。しかし、溶融ヒューズの落下量の増加および落下方向や形態の変化などにより、その落下地点における溶融ヒューズによる導体間の短絡が発生する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記点に鑑み、温度ヒューズの溶断時、溶融ヒューズの落下地点における溶融ヒューズによる導体間の短絡を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、絶縁体で構成されたベース(40)の上面(40a)側に抵抗体(20、21、22)と温度ヒューズ(23)とが組みつけられた負荷電流制御用抵抗器(3)において、温度ヒューズ(23)の両端を導体部材である第1および第2ヒューズターミナル(11a、30)の各第1および第2ヒューズ取付部(14a、35)に接合して、これら第1および第2ヒューズターミナル(11a、30)を絶縁体部材であるベース上面(40a)上に配置する。温度ヒューズ(23)が溶断して溶融ヒューズがベース上に落下する場合のベース(40)上の落下部位は、第1および第2ヒューズターミナル(11a、30)がそれぞれ備える互いに離間して配置される第1および第2ベース接触部(14a、35)の間に位置するようになっている。このベース上面(40a)の溶融ヒューズの落下部位において、溶融ヒューズによる第1および第2ベース接触部(18、39)間の短絡を防止する溶融ヒューズ短絡防止手段(46、47a、47b)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
これにより、温度ヒューズ(23)が溶断して、溶融したヒューズがベース(40)上に落下しても、溶融ヒューズ短絡防止手段(36、47a、47b)により第1および第2ベース接触部(18、39)間の短絡、すなわち第1および第2ヒューズターミナル(11a、30)間の短絡が防止されるので、確実に温度ヒューズ(23)としての回路遮断機能を達成することができる。
【0011】
この溶融ヒューズ短絡防止手段(46、47a、47b)は、ベース面(40a)上の落下部位に、落下方向に凹部または凸部のいずれか、または両方の形状を形成することにより実現することができる。このようにすることにより、落下部位における第1および第2ベース接触部(18、39)間、すなわち導体間のベース面に沿った距離を長くすることができるので、落下部位に溶融した温度ヒューズが落下してベース面上を広がろうとしてもこれが溶融ヒューズ短絡防止手段により分断され、距離が長くなっている導体間を短絡することができない。
【0012】
さらに、溶融ヒューズ短絡防止手段としての凹部(46)であれば、落下した溶融ヒューズがこの凹部(46)に捉えられ凹部(46)の周辺部にある導体との連なりが断たれるので、導体間の短絡防止を可能にする。
【0013】
また、溶融ヒューズ短絡防止手段としての凸部(47a、47b)であれば、この凸部(47a、47b)の表面に沿った距離が長くなること、および/または、この凸部(47a、47b)の頂点部で溶融ヒューズの連なりが断たれることにより、導体間の短絡防止を可能にする。
【0014】
抵抗器が備える抵抗体(20、21、22)および温度ヒューズ(23)を保護するためのプロテクタ(30)がベース上面(40a)を覆う場合、このプロテクタ(30)の溶融ヒューズの落下方向におけるベース上面(40a)より最も離れたプロテクタ天井面(32)に近づけるように温度ヒューズ(23)を配置する。すなわち、温度ヒューズ(23)を、ベース上面(40a)より落下方向になるべく離すように配置することにより、溶融ヒューズの落下距離、すなわち、落下に要する時間を長くすることができるので、溶融ヒューズが落下中に冷却されて、ベース上面(40a)に達したときに、ベース面(40a)上に広がることを抑制することができる。これにより、溶融ヒューズによる導体間の短絡を防止する効果を増大させることができる。
【0015】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態は、本発明を車両空調用送風機の速度制御用抵抗器に適用したものである。すなわち本実施形態の速度制御用抵抗器は、図示しない車両空調用送風機の風下側の通風路内に配置され、送風機モータの印加電圧を段階的に調整することにより、送風機の風量を可変とする。
【0017】
図1は、本実施形態の送風機モータ1の駆動回路を示す図である。送風機モータ1と電源であるバッテリ2との間に、直列に接続された3つの抵抗体、すなわち、第1抵抗体20、第2抵抗体21、および第3抵抗体22を備えた速度制御用抵抗器(以下、抵抗器という)3が接続されている。すなわち、抵抗器3は負荷である送風機モータ1に流れる負荷電流、すなわち送風機モータ1に印加される電圧を調節して、送風機モータ1の速度を制御するものである。
【0018】
これら第1ないし第3抵抗体20〜22に直列に温度ヒューズ23が接続されている。温度ヒューズ23は、後述するようにはんだヒューズを用いており、抵抗器3の異常加熱により溶断して、送風機モータ1への印加電圧を0とするものである。なお、本実施形態の各抵抗体20〜22は、コイルタイプの抵抗素子を用いている。
【0019】
抵抗器3のコネクタ41には、4つのコネクタ端子34、14b、14c、14dが設けられている。コネクタ41には、切替えスイッチ4が接続されている。なお、各コネクタ端子34、14b、14c、14dは、それぞれ、後述するプロテクタ30の第2ヒューズ取付部35、ターミナル部材11b、11c、11dに導通している。
【0020】
切替えスイッチ4は、図示しない車両のインパネ等に配置され、乗員により送風量を切り替えるために、抵抗器3の第1ないし第3抵抗体20〜22のうち通電する抵抗体を選択して回路抵抗値を変更するものである。
【0021】
すなわち、切替えスイッチ4がHiに設定されているときは、抵抗器3において抵抗体20〜22のいずれも導通しないため、送風機モータ1への印加電圧(または負荷電流)は最大となり、送風機モータ1は最大電力運転を行い最高風量(Hi)が発生する。
【0022】
一方、切替えスイッチ4がLoに設定されているときは、抵抗器3において直列接続された第1ないし第3抵抗体20〜22が通電されて、抵抗器3の抵抗値は3つの第1ないし第3抵抗体20〜22の各抵抗値の和となる。これにより抵抗器3における電圧降下が最大、すなわち送風機モータ1への印加電圧(または負荷電流)が最小となり、送風機モータ1は最低電力運転を行い最低風量(Lo)が発生する。
【0023】
また、切替えスイッチ4がM1に設定されているときは、抵抗器3において第1抵抗体20および第2抵抗体21が通電され、抵抗器3の抵抗値は第1抵抗体20および第2抵抗体21の抵抗値の和となる。さらに、切替えスイッチ4がM2に設定されているときは、抵抗器3において第1抵抗体20のみが通電される。
【0024】
したがって、抵抗器3における電圧降下の大きさが小さくなるに応じて送風機モータ1への印加電圧(または負荷電流)が増加して負荷である送風機モータ1の電力量が増加し、送風量も増加する。すなわち、送風量の大きさはLo<M1<M2<Hiである。なお、上述のごとく、第3抵抗体22は低速(Lo)運転時のみ導通しているが、第1抵抗体20は最低風量の低速(Lo)運転時から大風量の高速(M2)運転時まで、常に導通している。
【0025】
本実施形態の抵抗器3は、後述する組み付け状態をあらわす図8(a)正面図、同(b)左側面図、および、図9(a)背面図、同(b)(a)の左側面図に示すように、抵抗器3を車両側に取り付けるためのベース40と、ベース40に組み付け、固定されている第1ないし第4ターミナル部材11a〜11dと、各ターミナル部材11a〜11dに固定、および電気接続されている第1ないし第3抵抗体20〜22と、各抵抗体20〜22および各ターミナル部材11a〜11dを保護するプロテクタ30とを備えている。
【0026】
なお、各ターミナル部材11a〜11dは、後述するように組み立て前は一体構造部品としてのターミナル板10であり、組み付け過程においてそれぞれの部材を連結するブリッジ部を切断除去して、図8に示すように、それぞれ個別の部材とされたものである。
【0027】
以下、組み付け前の個々の部材についてそれぞれ説明し、その後、これら部材を用いた抵抗器3の組み立て過程について説明する。
【0028】
図2は、第1〜第4ターミナル部材11a〜11dをベース40への組み付ける前の一体構造部品でとしてのターミナル板10を示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は右側面図を示す。なお、以下では、図2(a)における左右方向を横方向という。
【0029】
ターミナル板10は、導体部材である1枚の金属板をプレス加工により形成したもので、第1ないし第4ターミナル部材11a、11b、11c、11dと、それらを互いに連結する5つのブリッジ部17a、17b、17c、17d、17eとを備えている。すなわち、ターミナル板10において、第1ターミナル部材11a、第3ターミナル部材11c、第4ターミナル部材11dおよび第2ターミナル部材11bは、図2(a)中、右から左へ、平面Pの方向に横一列の状態で形成されている。
【0030】
なお、以下の各ターミナル部材11a〜11dの説明においては、第1〜第3抵抗体20〜22の直列接続順、すなわち、それぞれのリード線部20a〜22bを固定する順に、対応するターミナル部材について順次説明する。
【0031】
第1ターミナル部材11aは、ターミナル板10の右端、すなわち右外側に位置し、第1抵抗体20の一方の端のリード線部20aを固定するための2つの第1接続部13a1、13a2が設けられている。これら第1接続部13a1、13a2は、第1ターミナル部材11aに設けられた破線で示された第1平板部12aの平面上に切り起こし部としてプレス加工にて形成されている。
【0032】
図2(b)に示すように、第1接続部13a1、13a2は、ともに第1平板部12aの面方向に平行で、上下方向に形成された穴として切り起こされている。すなわち、本実施形態では図2(b)に示すように、穴の開口は第1平板部12aの面方向に対して垂直方向に形成され、穴形状は、第1抵抗体20のリード線部20aが挿入できる程度の空隙を備えたV字形状またはU字形状をなしている。なお、穴形状は、V字またはU字形状以外にも、台形形状等でもよい。
【0033】
また、第1接続部13a1、13a2は、挿入されるリード線部20aの線方向に沿って、図2(a)、(c)において上下方向に2つ設けられ、1つのリード線部20aをこれら2つの第1接続部13a1、13a2で固定するようになっている。この上下方向は、各ターミナル部材11a〜11dの配列方向である横方向に対して垂直方向である。
【0034】
なお、以下の各平板部12b〜12fは、図2(a)に示すように第1平板部12aと同様、それぞれ破線で示され、また、各平板部12b〜12fでそれぞれ設けられる接続部13b1〜13f2は、図2(b)の下方側の同一面側に、第1接続部13a1、13a2と同様に、各リード線部の線方向に沿って、すなわち、上下方向に2つ設けられている。ただし、それぞれの接続部の切り起こし高さは、それぞれ挿入されるリード線部の太さに応じて設定されている。
【0035】
第1ターミナル部材11aには、第1平板部12aの下部に、第1抵抗体20の第1ターミナル部材11aにおける位置決めのために、リード線部20aのストッパ16aが切り起こされている。
【0036】
第1ターミナル部材11aの下方端には、ベース40へ固定するための固定部15a、15bが形成されている。固定部15aは、金属板のプレス加工により、横方向に対して直角方向の縦方向に、左右方向に形成される第1ベース接触部18において固定部15bより離すように曲げられている。また、第1ターミナル部材11aの上方端には、温度ヒューズ23の一方の端を取り付けるための第1ヒューズ取付部14aが設けられている。すなわち、第1ターミナル部材11aは、第1ヒューズターミナルに相当する。
【0037】
第2ターミナル部材11bは、第1抵抗体20の他方の端のリード線部20bを固定するためのもので、ターミナル板10の左端、すなわち左外側に位置するよう形成されている。すなわち、第1抵抗体20に対して、その固定部材である第1および第2ターミナル部材11a、11bは、横方向において互いにターミナル板10の外側端に位置している。
【0038】
第2ターミナル部材11bには、2つの平板部である第2および第3平板部12b、12cが設けられている。第2平板部12bの表面には、第1抵抗体20のリード線部20bを固定するための2つの第2接続部13b1、13b2が、第1接続部13a1、13a2と同様の形態で、上下方向に設けられている。
【0039】
第2平板部12bの面方向は、第1抵抗体20の他方のリード線部20aを固定するための第1接続部13a1、13a2が設けられている第1平板部12aの面方向と、同一平面P上に位置するよう配置されている。
【0040】
このように、第1抵抗体20の一対のリード線部20a、20bをそれぞれ固定するための第1平板部12aと第2平板部12bとは、それぞれの面方向が平行、詳しくは同一平面Pの面方向である横方向において互いに離間した状態で形成されている。この離間距離は、第1抵抗体20の長手方向長さに応じた距離である。
【0041】
第3平板部12cの表面には、第2抵抗体21の一方のリード線部21aを固定するための2つの第3接続部13c1、13c2が設けられている。なお、第2平板部12bと第3平板部12cとは、本実施形態では第2ターミナル部材11bにおいて同一平面P上に形成されている。さらに、第2平板部12bと第3平板部12cとは、それぞれが異なる抵抗体20、21に対する固定部となるので、互いに離間する必要はなく、互いに接触していても、あるいは重なっていてもよい。
【0042】
第2ターミナル部材11bの下方端には、ベース40へ固定するための固定部15cと、固定部15cより縦方向(奥行き方向)に離れるように曲げられた第1コネクタ端子14bとが形成されている。この第1コネクタ端子14bは、図1に示すように、第1抵抗体20と第2抵抗体21との接続点に対応し、切替えスイッチ4においてM2端子に接続される端子である。
【0043】
なお、第2ターミナル部材11bには、第2平板部12bの下部には、第1抵抗体20の第2ターミナル部材11bにおける位置決めのために、リード線部20bのストッパ16bが切り起こされている。また、第3平板部12cの下部には、第2抵抗体21の第2ターミナル部材11bにおける位置決めのために、リード線部21aのストッパ16cが切り起こされている。
【0044】
第3ターミナル部材11cは、第2抵抗体21の他方の端のリード線部21b、および第3抵抗体22の一方の端のリード線部22aをそれぞれ固定するためのもので、ターミナル板10の右側において、第1ターミナル部材11aの内側、すなわち左隣に位置するよう形成されている。
【0045】
第3ターミナル部材11cには、2つの平板部である第4および第5平板部12d、12eが設けられている。第4平板部12dの表面には、第2抵抗体21のリード線部21bを固定するための2つの第3接続部13d1、13d2が、第1接続部13a1、13a2と同様の形態で、上下方向に設けられている。
【0046】
第4平板部12dの面方向は、第2抵抗体21の他方のリード線部21aを固定するための第3接続部13c1、13c2が設けられている第3平板部12cの面方向と同一平面P上に位置するよう配置されている。
【0047】
このように、第2抵抗体21の一対のリード線部21a、21bをそれぞれ固定するための第3平板部12cと第4平板部12dとは、それぞれの面方向が平行、詳しくは同一平面Pの面方向である横方向において互いに離間した状態で形成されている。この離間距離は、第2抵抗体21の長手方向長さに応じた距離である。
【0048】
第5平板部12eの表面には、第3抵抗体22の一方のリード線部22aを固定するための2つの第5接続部13e1、13e2が設けられている。なお、第4平板部12dと第5平板部12eとは、本実施形態では第3ターミナル部材11cにおいて同一平面P上に形成されている。さらに、第4平板部12dと第5平板部12eとの横方向距離は、それぞれが異なる抵抗体21、22に対する固定部となるので、互いに離間する必要はない。
【0049】
第3ターミナル部材11cの下方端には、ベース40へ固定するための固定部15eと、固定部15eより縦方向(奥行き方向)に離れるように曲げられた第2コネクタ端子14cとが形成されている。この第2コネクタ端子14cは、図1に示すように、第2抵抗体21と第3抵抗体22との接続点に対応し、切替えスイッチ4においてM1端子に接続される端子である。
【0050】
第4ターミナル部材11dは、第3抵抗体22の他方の端のリード線部22bを固定するためのもので、ターミナル板10において、第3ターミナル部材11cの内側、すなわち左隣に位置するよう形成されている。なお、第4ターミナル部材11dの外側に相当する左隣には第2ターミナル部材11bが位置している。
【0051】
第4ターミナル部材11dには、第6平板部12fが設けられている。第6平板部12fの表面には、第3抵抗体22のリード線部22bを固定するための2つの第6接続部13f1、13f2が、第1接続部13a1、13a2と同様の形態で、上下方向に設けられている。
【0052】
第6平板部12fの面方向は、第3抵抗体22の他方のリード線部22aを固定するための第5接続部13e1、13e2が設けられている第5平板部12eの面方向と同一平面P上に位置するよう配置されている。
【0053】
このように、第3抵抗体22の一対のリード線部22a、22bをそれぞれ固定するための第5平板部12eと第6平板部12fとは、それぞれの面方向が平行、詳しくは同一平面Pの面方向である横方向において互いに離間した状態で形成されている。この離間距離は、第3抵抗体22の長手方向長さに応じた距離である。
【0054】
第4ターミナル部材11dの下方端には、ベース40へ固定するための固定部15fと、固定部15fより縦方向(奥行き方向)に離れるように曲げられた第3コネクタ端子14dとが形成されている。この第3コネクタ端子14dは、図1に示すように、第3抵抗体22のリード線部22bに対応し、切替えスイッチ4においてLo端子に接続される端子である。
【0055】
さらに、ターミナル板10には、隣接する第1ターミナル部材11aと第3ターミナル部材11cとを連結する2つのブリッジ部17b、17cと、隣接する第2ターミナル部材11bと第4ターミナル部材11dとを連結する2つのブリッジ部17a、17eと、隣接する第3ターミナル部材11cと第4ターミナル部材17dとを連結する17a、17dとを備えている。なお、ブリッジ部17aは、第2、第3および第4ターミナル部材11b、11c、11dを連結している。
【0056】
このように、各ブリッジ部17a〜17eで隣接する各ターミナル部材11a〜11dを連結して、一体構造部品としてのターミナル板10を構成する。このターミナル板10は、1枚の金属板をプレス加工することにより形成することができるので、部品点数を1つにすることができる。したがって、この一体構造のターミナル板10を用いることにより、抵抗器3を組み立てるための工程および工数を、従来に比べて低減することができる。
【0057】
次に、抵抗器3のプロテクタ30について説明する。図3(a)は、曲げ加工前の切断加工されたプロテクタ30の平面図である。図3(b)は、曲げ加工後のプロテクタ30の正面図であり、図2と同様の配置方向を矢印で示している。
【0058】
プロテクタ30は、1面を開口した直方体形状をなし、ベース40上で各抵抗体20〜22を覆うように組みつけられるもので、外部からの異物進入抑制と最外部温度抑制機能を持つものである。プロテクタ30の4つの側面31a〜31dには、多数の通気孔33が設けられている。対向する長辺の側面31a、31cの下端開口部には固定部36a、36bと36c、36dとが設けられている。なお、プロテクタ30の天井面32には通気孔33は設けられていない。
【0059】
また、側面31cの下端開口部には、抵抗器3のHi端子としてのコネクタ端子34が設けられている。なお、プロテクタ30は薄板で成形されているため、このコネクタ端子34の部分のみ、折り返し部34a、34bを折り返して2倍の厚みに成形することにより、図示しない他のコネクタのターミナルとのオスメス嵌合時にコネクタ端子34における導通に必要な板厚を得るようにしている。
【0060】
長辺側の側面31a、31cの上部隅には、それぞれの面31a、31c上の対向する位置に、第2ヒューズ取付部35と矩形のはんだ付け作業用の窓38とが設けられている。なお、短辺側の側面31b、31dの下端部には、変形防止用の突片37a、37bが設けられている。
【0061】
第2ヒューズ取付部35が形成されている側面31aの下方端には、左右方向に第2ベース接触部39が形成されている。この第2ベース接触部39は、プロテクタ30のベース40への取付時、ベース40の上面40aと、線状で近接または接するように配置される。
【0062】
次に、ベース40について説明する。図4は、ベース40を示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は下面図、(d)は左側面図である。ベース40は、第1〜第3抵抗体20〜22が固定された第1〜第4ターミナル部材11a〜11dおよびプロテクタ30を組み付けて抵抗器3とし、車両側へ取り付ける部品であり、コネクタハウジングの役割も備えている。
【0063】
なお、ベース40は、絶縁性材料であるフェノール、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、あるいはポリフェニレンサルファイド(PPS)などの樹脂材料により成型されている。
【0064】
ベース40には、これらターミナル部材11a〜11dおよびプロテクタ30の固定部15a〜15f、36a〜36dが挿入される固定用の穴43a〜43f、44a〜44dと、各コネクタ端子34、14b〜14dが挿入されるコネクタ端子用の穴42a〜42dとが、上面40aから下面40bへ貫通するように設けられている。
【0065】
すなわち、ターミナル板10に形成されている6つの固定部15a、15b、15c、15d、15e、15fにそれぞれ対応する位置に、固定部用穴43a、43b、43c、43d、43e、43fが設けられている。また、ターミナル板10に形成されている第1〜第3コネクタ端子14b、14c、14dにそれぞれ対応する位置に、コネクタ端子用穴42b、42c、42dが設けられている。
【0066】
また、プロテクタ30に形成されている4つの固定部36a、36b、36c、36dにそれぞれ対応する位置に、固定部用穴44a、44b、44c、44dが設けられている。さらに、プロテクタ30に設けられたコネクタ端子(Hi端子)34に対応する位置にコネクタ端子用穴42aが設けられている。そして、ベース40の下面40b側には、これら4つのコネクタ端子34、14b、14c、14dを囲むようにコネクタ部41が設けられている。
【0067】
なお、ベース40の上面40a側には、プロテクタ30の変形を防止するための突片37a、37bを挿入するためのスリット45a、45bと、リード線部21b、22a、22bの各端部を止めるための凹部としてのストッパ16d、16e、16fとが設けられている。
【0068】
また、ベースの上面40a側には、長溝46が横方向に、すなわち、ベース40に組み付けられる第1〜第4ターミナル部材11a〜11dとプロテクタ30の側面31aとの間にあって、両者に沿う方向に形成されている。この長溝46は、温度ヒューズ23が溶断した場合に溶け落ちた溶融ヒューズが、ベース上面40aの落下部位上で広がって、第2ヒューズターミナルとしてのプロテクタ30と第1ヒューズターミナルとしての第1ターミナル部材11aおよび第2〜第4ターミナル部材11b〜11dとを接続することを防止するために、溶け落ちた溶融ヒューズをここで捉えて溜まるようにして、広がらないようにするためのものである。すなわち、この長溝46は溶融ヒューズ短絡防止手段に相当する。
【0069】
さらに、ベース上面40aには、第1〜第4ターミナル部材11a〜11dが配列される範囲の両端の外側にあるスリット45a、45bのそれぞれ内側部位に、縦方向(奥行き方向)に溶融ヒューズ短絡防止手段としての凸部47a、47bが設けられている。これら凸部47a、47bは、その頂点部で、落下した溶融ヒューズの広がりを断つことができ、これにより凸部47a、47bの近傍のプロテクタの側面31d、31bと第1ターミナル部材11aおよび第2ターミナル部材11bとのそれぞれの導通、すなわち短絡を防止することができる。
【0070】
なお、これら2つの凸部のうち、凸部47bは、第1および第2ヒューズ取付部14a、35の直下より離れた位置である、横方向の一方の端部である第2ターミナル部材11bの近傍に設けている。これにより、抵抗器3を搭載する車両(図示せず)の走行状態、特に車体の姿勢に応じて、溶断した溶融ヒューズの落下地点が第1および第2ヒューズ取付部14a、35の直下からずれ、第2ターミナル部材11bの方向へ落下しても、落下地点に形成された凸部47bにより溶融ヒューズが分断され、プロテクタ側面31bとこれに近接する第2ターミナル部材11bとの接続を断って、Hi端子とM2端子との短絡を防止することができ、異常状態に対応した回路の遮断を可能にしている。
【0071】
次に、抵抗器3の組み立て手順を、図5ないし図9を用いて説明する。まず、図5の正面図に示すように、一体構造部品であるターミナル板10をA方向よりベース40の上面40a側へ組み付ける。このとき、各固定部15a〜15fおよび各コネクタ端子14b〜14dを、それぞれそれらに一致するようベース40に設けられた各穴43a〜43fおよび42b〜42dに挿入する。
【0072】
次に、図6の一部断面図で示すように、固定部用の各穴43a〜43fにおいて、ターミナル板10の各固定部15a〜15fを曲げることにより、ターミナル板10をベース40に固定する。本実施形態では、固定部15a、15dは、横方向(左右方向)に広げるように曲げられて固定され、他の固定部15b、15c、15e、15fは、前後方向(奥行き方向)に曲げられて固定される。なお、固定部15bは図6において省略されている。
【0073】
このように、1つの部品であるターミナル板10をベース40の上面40aに組み付け、固定するので、挿入工程を1つにすることができる。また。ターミナル板10が一体構造であるので、ベース40への固定工程では、各ターミナル部材11a〜11d間の平行度や離間距離の変動を少なくすることができる。
【0074】
すなわち、本実施形態では、各ターミナル部材11a〜11dに設けられた各平板部12a〜12fは、ターミナル板10を構成する同一平面P上に形成されているので、少ない作業工数で組み付け精度を向上させることができる。
【0075】
ターミナル板10をベース40に組み付け、固定した後に、図7の平面図で示すように、ターミナル板10のブリッジ部17a〜17eを切断除去する。この切断除去部を図7においてハッチングで示す。各ターミナル部材11a〜11dおよびブリッジ部17a〜17eは、ターミナル板10を形成する同一平面P上に設けられているので、この切断工程では、一方向からプレス機により各ブリッジ部17a〜17eを切断することができる。あるいは、全ブリッジ部を一度に切断しない場合でも、ターミナル板10の面を反転させることなく、一方向から、ターミナル板10を平行移動させるのみで順次、各ブリッジ部を切断することができる。
【0076】
なお、このターミナル板10をベース上面40aに組み付けることにより、第1ヒューズターミナルとしての第1ターミナル部材11aは、第1ベース接触部18において、ベース上面40aの面上に接するように配置される。また、他の第3、第4および第2ターミナル部材11d、11c、11bについても同様に、ベース上面40aの面上に接する位置にそれぞれ第1ベース接触部18が形成される。
【0077】
各ターミナル部材11a〜11dの間を分離した後に、コイルタイプの第1〜第3抵抗体20〜22を各接続部13a1〜13f2の切り起こし部の穴に挿入し、図8(a)、(b)に示すように各接続部13a1〜13f2をかしめ固定する。図8(a)は正面図、同(b)は左側面図を示す。
【0078】
その挿入工程を説明すると、まず、第3抵抗体22の一方の端のリード線部22aを第5接続部13e1、13e2へ挿入し、他方の端のリード線部22bを第6接続部13f1、13f2へ挿入する。このときの第3抵抗体22の姿勢を、第3抵抗体22の長手方向が各ターミナル部材11a〜11dの配列方向である横方向に一致し、両端のリード線部22a、22bの線方向が上記横方向に対し垂直な上下方向となるようにする。
【0079】
さらに、ベース40側に凹部として形成されているストッパ16e、16fによって、リード線部22a、22bの端部が止められ、第3抵抗体22の第3および第4ターミナル部材11c、11dへの位置決めがなされる。これらにより、挿入工程を簡便にすることができる。
【0080】
次に、これらリード線部22a、22bが挿入された第5および第6接続部13e1、13e2、13f1、13f2の各切り起こし部を、一方向から同時にかしめることにより、第3抵抗体22と第3および第4ターミナル部材11c、11dとの電気接続および固定が完了する。
【0081】
このように、第5および第6平板部12e、12fを同一平面P上に配置しているので、第3抵抗体22の両端のリード線部22a、22bを一方向から一括してかしめ作業を簡便に行うことができる。また、1つのリード線部に対してかしめによる接続部を2箇所設けているので、はんだ等を用いることなく、リード線部22a、22bと平板部12e、12fとの接触抵抗を十分小さくすることができる。
【0082】
次に、第2抵抗体21の姿勢を上述の第3抵抗体22の挿入時と同様に保って、第2抵抗体21の一方の端のリード線部21aを第3接続部13c1、13c2へ挿入し、他方の端のリード線部21bを第4接続部13d1、13d2へ挿入する。このとき、第2ターミナル部材11bに設けられたストッパ16cによりリード線部21aの端部が止められ、ベース40に凹部として形成されているストッパ16dによりリード線部21bが止められて、第2抵抗体21の第2および第3ターミナル部材11b、11cへの位置決めがなされる。
【0083】
次に、上記第3抵抗体22と同様、リード線部21a、21bが挿入された第3および第4接続部13c1、13c2、13d1、13d2の各切り起こし部を、一方向から同時にかしめることにより、第2抵抗体21と第2および第3ターミナル部材11b、11cとの電気接続および固定が完了する。この第2抵抗体21の固定工程における効果は、上記第3抵抗体22におけるのと同様である。
【0084】
最後に、第1抵抗体20の姿勢を上述の第3抵抗体22および第2抵抗体21の各挿入時と同様に保って、第1抵抗体20の一方の端のリード線部20aを第1接続部13a1、13a2へ挿入し、他方の端のリード線部20bを第2接続部13b1、13b2へ挿入する。このとき、第1ターミナル部材11aに設けられたストッパ16aによりリード線部20aの端部が止められ、第2ターミナル部材11bに設けられたストッパ16bによりリード線部20bが止められて、第1抵抗体20の第1および第2ターミナル部材11a、11bへの位置決めがなされる。
【0085】
次に、上記第3および第2抵抗体22、21と同様、第1および第2接続部13a1、13a2、13b1、13b2の各切り起こし部を、一方向から同時にかしめることにより、第1抵抗体20と第1および第2ターミナル部材11a、11bとの電気接続および固定が完了する。この第1抵抗体20の固定工程における効果は、上記第2および第3抵抗体21、22におけるのと同様である。
【0086】
図8(b)に示すように、これら第1〜第3抵抗体20〜22の第1〜第4ターミナル部材11a〜11dへの組み付けおよび固定により、第3抵抗体22、第2抵抗体21および第1抵抗体20の順に、ベース40より上方へ離れるように配置される。また、第1〜第3抵抗体20〜22は、第1〜第6平板部12a〜12fと同一平面P上に配置される。これにより、本実施形態の抵抗器3は、図8(b)における手前から奥への縦方向の長さを短くすることができる。
【0087】
各抵抗体20〜22を各ターミナル部材11a〜11dに固定したのちに、プロテクタ30で抵抗体20〜22およびターミナル部材11a〜11dを覆う。図9に、プロテクタ30をベース40に組み付け、温度ヒューズ23を取り付けた状態を示す。なお図9(a)は、図8(a)等に対する背面図であり、図9(b)は図9(a)の左側面図で示す。また、図9(b)は、一部が切除されてプロテクタ30の内部の状態を示している。
【0088】
すなわち、プロテクタ30をベース40の上面40a側へ組み付ける。この場合、プロテクタ30の下端開口部に設けられた固定部36a、36b、36c、36dを、それぞれベース40に設けられた固定部用穴44a、44b、44c、44dへ挿入する。同時に、プロテクタ30の下端開口部に設けられたコネクタ端子(Hi端子)34を、ベース40に設けられたコネクタ端子用穴42aに挿入する。このとき、プロテクタの側面31aの下端側に形成されている第2ベース接触部39は、ベース上面40aと線状で近接または接するように配置される。なお、プロテクタ30の各突片37a、37bはそれぞれベース40のスリット45a、45bに差し込まれる。
【0089】
プロテクタ30の固定部36a〜36dは、各穴44a〜44dにおいて曲げられてプロテクタ30のベース40への固定を完了する。
【0090】
これにより、第1ヒューズターミナルとしての第1ターミナル部材11aに設けられた第1ヒューズ取付部14aと、第2ヒューズターミナルとしてのプロテクタ30に設けられた第2ヒューズ取付部35とは、抵抗器3の縦方向(奥行き方向)において、温度ヒューズ23の長さに相当する距離隔てて対向するよう配置される。さらに、第1〜第4ターミナル部材11a〜11dのベース上面40aとの接触部である各第1ベース接触部18とプロテクタ側面31aの第2ベース接触部39とは、長溝46を挟んで並行に配置される。
【0091】
ここまでの固定工程が終了したのち、はんだヒューズで構成される棒状の温度ヒューズ23を、プロテクタ30のヒューズ取付部35の穴よりプロテクタ30内部に挿入し、その先端部を第1ターミナル部材11aのヒューズ取付部14aの穴まで到達させる。蓋が開けられたはんだ付け作業用の窓38より温度ヒューズ23の先端部とヒューズ取付部14aの穴とのはんだ付けを実施し、プロテクタ30のヒューズ取付部35においても温度ヒューズ23をはんだ付けする。そののち、窓38の蓋が閉じられて、図1に示す抵抗器3の回路を形成する。
【0092】
ここで、温度ヒューズ23の配置位置について説明する。本実施形態では、温度ヒューズ23は、送風量が小から大、すなわち送風機モータ1が低速(Lo)運転からHiを除く高速(M2)運転まで、常に導通状態となる第1抵抗体20の近傍に配置される。これにより、送風機モータ1の異常停止等により抵抗器3に異常電流が流れる場合でも、送風量がLoからM2までの変化範囲で第1抵抗体20には常に電流が流れ、これにより確実に温度ヒューズ23を加熱、溶断させることができ、異常状態を感知して回路保護を行うことができる。
【0093】
また、温度ヒューズ23の上下方向における配置位置は、溶融ヒューズの落下方向においてベース上面40aより最も離れた位置にあるプロテクタ天井面32に近接した位置としている。
【0094】
すなわち、温度ヒューズ23を、ベース上面40aより落下方向になるべく離すように配置することにより、溶融した温度ヒューズの落下距離、すなわち、落下に要する時間を長くすることができるので、溶融ヒューズが落下中に冷却されて、ベース上面40aに達したときに、ベース面40a上に広がることを抑制することができる。
【0095】
これにより、溶融ヒューズの落下地点における第1ヒューズターミナルとしての第1ターミナル部材11aと第2ヒューズターミナルとしてのプロテクタ30との導通、すなわち導体間の短絡を防止する効果を高めることができる。
【0096】
なお、プロテクタ30は、各抵抗体20〜22を覆う構造になっているため、各抵抗体20〜23の発する熱の輻射の影響も受けて、これらにより温度上昇する。したがって、温度ヒューズ23をプロテクタ30に近接した位置に配置すると、第1および第2ヒューズ取付部14a、35および温度ヒューズ23の温度は高くなり、これにより温度ヒューズ23は両側溶断して溶融量が多くなって、ベース上面40aに落下することとなる。以上のことから、温度ヒューズ23のプロテクタ30の各側面31a〜31dからの離間距離が設定されている。
【0097】
次に、この温度ヒューズ23の溶断時の溶融ヒューズの落下状態について説明する。図11および図12は、図9(b)と同じ方向から見た抵抗器3の断面概略図であり、紙面の上下方向を抵抗器3の配置方向の上下と一致させている。図11(a)は溶融した温度ヒューズ23aの落下直後の様子を示し、図11(b)は従来のベース上面40aに溶融ヒューズ短絡防止手段である凹部または凸部が形成されていない場合の落下した溶融ヒューズ23bを示し、図11(c)は溶融ヒューズ23cが落下後に従来のベース上面40a上に広がる様子を示している。
【0098】
この図11(c)に示すように、従来のベース上面40a上に凹部または凸部などが形成されていない平面である場合、ここに溶融ヒューズ23bが落下すると、この溶融ヒューズ23dは落下地点で平面上に広がり、第1ヒューズターミナルとしての第1ターミナル部材11aの下部の第1ベース接触部18と第2ヒューズターミナルとしてのプロテクタ側面31aの下部の第2ベース接触部39との間を導通させる。
【0099】
これは、送風機モータ1の駆動回路の異常状態に対応して温度ヒューズ23が作動して、温度ヒューズ23の本来の取り付け部である第1および第2ヒューズ取付部14a、35間を遮断しても、別の部位である第1および第2ベース接触部18、39間が短絡されることとなり、結局、駆動回路を遮断することができないことを意味している。
【0100】
これに対して、図12は、本実施形態における、ベース上面40a上に溶融ヒューズ短絡防止手段である凹部としての長溝46が形成されている場合の、落下した溶融ヒューズ23dの状態を示している。
【0101】
図12に示すように、本実施形態では溶断して落下した溶融ヒューズ23dは、落下地点のベース上面40a上に形成された長溝46の凹部に捉えられ、ここに溜まることにより、この長溝46を挟んで対向して配置されている第1ヒューズ取付部14aの下部の第1ベース接触部18と第2ヒューズ取付部35の下部の第2ベース接触部39との間の接続が断たれ、両者の導通、すなわち短絡を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本実施形態の送風機モータの駆動回路を示す図である。
【図2】ターミナル板を示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は右側面図である。
【図3】(a)は曲げ加工前のプロテクタの平面図であり、(b)は曲げ加工後のプロテクタの正面図である。
【図4】ベースを示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は下面図、(d)は左側面図である。
【図5】ターミナル板をベースに組み付ける方向を示す正面図である。
【図6】ターミナル板の固定部がベースに固定されている状態を示す一部断面図である。
【図7】ターミナル板の切断部位を示す正面図である。
【図8】抵抗体のターミナル部材への配置状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
【図9】プロテクタをベースに組み付けた状態を示す図であり、(a)は背面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図10】(a)はヒューズターミナル間に温度ヒューズが接続されている状態を示す図、(b)は温度ヒューズが片側溶断した状態を示す図、(c)温度ヒューズが両側溶断した状態を示す図である。
【図11】図9(b)と同じ方向から見た従来技術に基づく抵抗器の断面概略を示す図であり、(a)は溶断した溶融ヒューズの落下直後を示す図、(b)は平面の落下地点に溶融ヒューズが落下した状態を示す図、(c)落下後の溶融ヒューズが平面上で広がった状態を示す図である。
【図12】本実施形態における溶融ヒューズが落下地点の凹部に溜まる状態を示す図である。
【符号の説明】
【0103】
10…ターミナル板、11a…第1ターミナル部材(第1ヒューズターミナル)、
11b〜11d…第2〜第4ターミナル部材、14a…第1ヒューズ取付部、
18…第1ベース接触部、23…温度ヒューズ、
30…プロテクタ(第2ヒューズターミナル)、31a〜31d…側面、
32…天井面、34…コネクタ端子、35…第2ヒューズ取付部、
39…第2ベース接触部、40…ベース、41…コネクタ部、
46…長溝(溶融ヒューズ短絡防止手段)、
47a、47b…凸部(溶融ヒューズ短絡防止手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷電流制御用抵抗器に関し、特に、その抵抗器に用いられる温度ヒューズの溶断時の溶融ヒューズによる短絡防止を可能にする負荷電流制御用抵抗器に関する。本発明の負荷電流制御用抵抗器は、送風機等の速度制御用抵抗器として用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、送風機の送風量を切り替えるための負荷電流制御用抵抗器として、ベース上にコイルタイプの抵抗体を配置するとともに、この抵抗体に異常電流が流れて抵抗体が異常発熱する場合に、その熱により溶断して抵抗器の回路を遮断する温度ヒューズを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この温度ヒューズには、はんだが用いられる場合があるが、近年の鉛フリー対応などで、従来使用していたSn63Pb37の組成をもつはんだヒューズを、鉛フリー化するために、温度ヒューズとしての作動温度が比較的高い高温はんだを用いる必要がある。
【0004】
このヒューズ作動温度が高くなることにより、温度ヒューズの作動に要する時間が長めになり、その結果、温度ヒューズの両端の温度差が小さくなる傾向にある。
【0005】
すなわち、図10において、(a)に示すように、はんだで構成される温度ヒューズ100の両端部101、102でそれぞれヒューズターミナル110、120に接合されている状態で、温度ヒューズ100の、特に右側ヒューズターミナル110側の周囲温度が上昇するような使用環境を考える。この場合、周囲温度の上昇に応じて右側ヒューズターミナル110の温度Taが温度ヒューズ100の作動温度TCより高くなり、左側ヒューズターミナル120の温度TbがTCより低い場合(Ta>TC>Tb)は、図10(b)に示すように、温度ヒューズ100は右側ヒューズターミナル110側の端部101で溶断し、左側ヒューズターミナル120側の端部102では溶断しない片側溶断が発生する。この片側溶断では、温度ヒューズ100の溶融量は少なく、落下する可能性は比較的小さく、あるいは、落下しても、その溶融量に応じて落下量も少ない。
【0006】
一方、温度ヒューズ100の周辺温度が高く、温度ヒューズ100全体が作動温度TCより高い温度にまで加熱されるような使用環境では、温度ヒューズ100の両端温度差が小さくなる(Ta≒Tb>TC)。この場合は、図10(c)に示すように、温度ヒューズ100の両端側101、102で溶断し、溶融した温度ヒューズ103の落下量が多くなり、場合によっては温度ヒューズ100の全量が落下してしまう可能性がある。
【特許文献1】特開平9−231892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、温度ヒューズの溶断時、その溶融量が少ないことや溶融ヒューズの落下方向の調整などにより、溶融したヒューズの落下部位における溶融ヒューズの広がりによる導体間の短絡を防止する対策は不要とされていた。しかし、溶融ヒューズの落下量の増加および落下方向や形態の変化などにより、その落下地点における溶融ヒューズによる導体間の短絡が発生する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記点に鑑み、温度ヒューズの溶断時、溶融ヒューズの落下地点における溶融ヒューズによる導体間の短絡を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、絶縁体で構成されたベース(40)の上面(40a)側に抵抗体(20、21、22)と温度ヒューズ(23)とが組みつけられた負荷電流制御用抵抗器(3)において、温度ヒューズ(23)の両端を導体部材である第1および第2ヒューズターミナル(11a、30)の各第1および第2ヒューズ取付部(14a、35)に接合して、これら第1および第2ヒューズターミナル(11a、30)を絶縁体部材であるベース上面(40a)上に配置する。温度ヒューズ(23)が溶断して溶融ヒューズがベース上に落下する場合のベース(40)上の落下部位は、第1および第2ヒューズターミナル(11a、30)がそれぞれ備える互いに離間して配置される第1および第2ベース接触部(14a、35)の間に位置するようになっている。このベース上面(40a)の溶融ヒューズの落下部位において、溶融ヒューズによる第1および第2ベース接触部(18、39)間の短絡を防止する溶融ヒューズ短絡防止手段(46、47a、47b)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
これにより、温度ヒューズ(23)が溶断して、溶融したヒューズがベース(40)上に落下しても、溶融ヒューズ短絡防止手段(36、47a、47b)により第1および第2ベース接触部(18、39)間の短絡、すなわち第1および第2ヒューズターミナル(11a、30)間の短絡が防止されるので、確実に温度ヒューズ(23)としての回路遮断機能を達成することができる。
【0011】
この溶融ヒューズ短絡防止手段(46、47a、47b)は、ベース面(40a)上の落下部位に、落下方向に凹部または凸部のいずれか、または両方の形状を形成することにより実現することができる。このようにすることにより、落下部位における第1および第2ベース接触部(18、39)間、すなわち導体間のベース面に沿った距離を長くすることができるので、落下部位に溶融した温度ヒューズが落下してベース面上を広がろうとしてもこれが溶融ヒューズ短絡防止手段により分断され、距離が長くなっている導体間を短絡することができない。
【0012】
さらに、溶融ヒューズ短絡防止手段としての凹部(46)であれば、落下した溶融ヒューズがこの凹部(46)に捉えられ凹部(46)の周辺部にある導体との連なりが断たれるので、導体間の短絡防止を可能にする。
【0013】
また、溶融ヒューズ短絡防止手段としての凸部(47a、47b)であれば、この凸部(47a、47b)の表面に沿った距離が長くなること、および/または、この凸部(47a、47b)の頂点部で溶融ヒューズの連なりが断たれることにより、導体間の短絡防止を可能にする。
【0014】
抵抗器が備える抵抗体(20、21、22)および温度ヒューズ(23)を保護するためのプロテクタ(30)がベース上面(40a)を覆う場合、このプロテクタ(30)の溶融ヒューズの落下方向におけるベース上面(40a)より最も離れたプロテクタ天井面(32)に近づけるように温度ヒューズ(23)を配置する。すなわち、温度ヒューズ(23)を、ベース上面(40a)より落下方向になるべく離すように配置することにより、溶融ヒューズの落下距離、すなわち、落下に要する時間を長くすることができるので、溶融ヒューズが落下中に冷却されて、ベース上面(40a)に達したときに、ベース面(40a)上に広がることを抑制することができる。これにより、溶融ヒューズによる導体間の短絡を防止する効果を増大させることができる。
【0015】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態は、本発明を車両空調用送風機の速度制御用抵抗器に適用したものである。すなわち本実施形態の速度制御用抵抗器は、図示しない車両空調用送風機の風下側の通風路内に配置され、送風機モータの印加電圧を段階的に調整することにより、送風機の風量を可変とする。
【0017】
図1は、本実施形態の送風機モータ1の駆動回路を示す図である。送風機モータ1と電源であるバッテリ2との間に、直列に接続された3つの抵抗体、すなわち、第1抵抗体20、第2抵抗体21、および第3抵抗体22を備えた速度制御用抵抗器(以下、抵抗器という)3が接続されている。すなわち、抵抗器3は負荷である送風機モータ1に流れる負荷電流、すなわち送風機モータ1に印加される電圧を調節して、送風機モータ1の速度を制御するものである。
【0018】
これら第1ないし第3抵抗体20〜22に直列に温度ヒューズ23が接続されている。温度ヒューズ23は、後述するようにはんだヒューズを用いており、抵抗器3の異常加熱により溶断して、送風機モータ1への印加電圧を0とするものである。なお、本実施形態の各抵抗体20〜22は、コイルタイプの抵抗素子を用いている。
【0019】
抵抗器3のコネクタ41には、4つのコネクタ端子34、14b、14c、14dが設けられている。コネクタ41には、切替えスイッチ4が接続されている。なお、各コネクタ端子34、14b、14c、14dは、それぞれ、後述するプロテクタ30の第2ヒューズ取付部35、ターミナル部材11b、11c、11dに導通している。
【0020】
切替えスイッチ4は、図示しない車両のインパネ等に配置され、乗員により送風量を切り替えるために、抵抗器3の第1ないし第3抵抗体20〜22のうち通電する抵抗体を選択して回路抵抗値を変更するものである。
【0021】
すなわち、切替えスイッチ4がHiに設定されているときは、抵抗器3において抵抗体20〜22のいずれも導通しないため、送風機モータ1への印加電圧(または負荷電流)は最大となり、送風機モータ1は最大電力運転を行い最高風量(Hi)が発生する。
【0022】
一方、切替えスイッチ4がLoに設定されているときは、抵抗器3において直列接続された第1ないし第3抵抗体20〜22が通電されて、抵抗器3の抵抗値は3つの第1ないし第3抵抗体20〜22の各抵抗値の和となる。これにより抵抗器3における電圧降下が最大、すなわち送風機モータ1への印加電圧(または負荷電流)が最小となり、送風機モータ1は最低電力運転を行い最低風量(Lo)が発生する。
【0023】
また、切替えスイッチ4がM1に設定されているときは、抵抗器3において第1抵抗体20および第2抵抗体21が通電され、抵抗器3の抵抗値は第1抵抗体20および第2抵抗体21の抵抗値の和となる。さらに、切替えスイッチ4がM2に設定されているときは、抵抗器3において第1抵抗体20のみが通電される。
【0024】
したがって、抵抗器3における電圧降下の大きさが小さくなるに応じて送風機モータ1への印加電圧(または負荷電流)が増加して負荷である送風機モータ1の電力量が増加し、送風量も増加する。すなわち、送風量の大きさはLo<M1<M2<Hiである。なお、上述のごとく、第3抵抗体22は低速(Lo)運転時のみ導通しているが、第1抵抗体20は最低風量の低速(Lo)運転時から大風量の高速(M2)運転時まで、常に導通している。
【0025】
本実施形態の抵抗器3は、後述する組み付け状態をあらわす図8(a)正面図、同(b)左側面図、および、図9(a)背面図、同(b)(a)の左側面図に示すように、抵抗器3を車両側に取り付けるためのベース40と、ベース40に組み付け、固定されている第1ないし第4ターミナル部材11a〜11dと、各ターミナル部材11a〜11dに固定、および電気接続されている第1ないし第3抵抗体20〜22と、各抵抗体20〜22および各ターミナル部材11a〜11dを保護するプロテクタ30とを備えている。
【0026】
なお、各ターミナル部材11a〜11dは、後述するように組み立て前は一体構造部品としてのターミナル板10であり、組み付け過程においてそれぞれの部材を連結するブリッジ部を切断除去して、図8に示すように、それぞれ個別の部材とされたものである。
【0027】
以下、組み付け前の個々の部材についてそれぞれ説明し、その後、これら部材を用いた抵抗器3の組み立て過程について説明する。
【0028】
図2は、第1〜第4ターミナル部材11a〜11dをベース40への組み付ける前の一体構造部品でとしてのターミナル板10を示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は右側面図を示す。なお、以下では、図2(a)における左右方向を横方向という。
【0029】
ターミナル板10は、導体部材である1枚の金属板をプレス加工により形成したもので、第1ないし第4ターミナル部材11a、11b、11c、11dと、それらを互いに連結する5つのブリッジ部17a、17b、17c、17d、17eとを備えている。すなわち、ターミナル板10において、第1ターミナル部材11a、第3ターミナル部材11c、第4ターミナル部材11dおよび第2ターミナル部材11bは、図2(a)中、右から左へ、平面Pの方向に横一列の状態で形成されている。
【0030】
なお、以下の各ターミナル部材11a〜11dの説明においては、第1〜第3抵抗体20〜22の直列接続順、すなわち、それぞれのリード線部20a〜22bを固定する順に、対応するターミナル部材について順次説明する。
【0031】
第1ターミナル部材11aは、ターミナル板10の右端、すなわち右外側に位置し、第1抵抗体20の一方の端のリード線部20aを固定するための2つの第1接続部13a1、13a2が設けられている。これら第1接続部13a1、13a2は、第1ターミナル部材11aに設けられた破線で示された第1平板部12aの平面上に切り起こし部としてプレス加工にて形成されている。
【0032】
図2(b)に示すように、第1接続部13a1、13a2は、ともに第1平板部12aの面方向に平行で、上下方向に形成された穴として切り起こされている。すなわち、本実施形態では図2(b)に示すように、穴の開口は第1平板部12aの面方向に対して垂直方向に形成され、穴形状は、第1抵抗体20のリード線部20aが挿入できる程度の空隙を備えたV字形状またはU字形状をなしている。なお、穴形状は、V字またはU字形状以外にも、台形形状等でもよい。
【0033】
また、第1接続部13a1、13a2は、挿入されるリード線部20aの線方向に沿って、図2(a)、(c)において上下方向に2つ設けられ、1つのリード線部20aをこれら2つの第1接続部13a1、13a2で固定するようになっている。この上下方向は、各ターミナル部材11a〜11dの配列方向である横方向に対して垂直方向である。
【0034】
なお、以下の各平板部12b〜12fは、図2(a)に示すように第1平板部12aと同様、それぞれ破線で示され、また、各平板部12b〜12fでそれぞれ設けられる接続部13b1〜13f2は、図2(b)の下方側の同一面側に、第1接続部13a1、13a2と同様に、各リード線部の線方向に沿って、すなわち、上下方向に2つ設けられている。ただし、それぞれの接続部の切り起こし高さは、それぞれ挿入されるリード線部の太さに応じて設定されている。
【0035】
第1ターミナル部材11aには、第1平板部12aの下部に、第1抵抗体20の第1ターミナル部材11aにおける位置決めのために、リード線部20aのストッパ16aが切り起こされている。
【0036】
第1ターミナル部材11aの下方端には、ベース40へ固定するための固定部15a、15bが形成されている。固定部15aは、金属板のプレス加工により、横方向に対して直角方向の縦方向に、左右方向に形成される第1ベース接触部18において固定部15bより離すように曲げられている。また、第1ターミナル部材11aの上方端には、温度ヒューズ23の一方の端を取り付けるための第1ヒューズ取付部14aが設けられている。すなわち、第1ターミナル部材11aは、第1ヒューズターミナルに相当する。
【0037】
第2ターミナル部材11bは、第1抵抗体20の他方の端のリード線部20bを固定するためのもので、ターミナル板10の左端、すなわち左外側に位置するよう形成されている。すなわち、第1抵抗体20に対して、その固定部材である第1および第2ターミナル部材11a、11bは、横方向において互いにターミナル板10の外側端に位置している。
【0038】
第2ターミナル部材11bには、2つの平板部である第2および第3平板部12b、12cが設けられている。第2平板部12bの表面には、第1抵抗体20のリード線部20bを固定するための2つの第2接続部13b1、13b2が、第1接続部13a1、13a2と同様の形態で、上下方向に設けられている。
【0039】
第2平板部12bの面方向は、第1抵抗体20の他方のリード線部20aを固定するための第1接続部13a1、13a2が設けられている第1平板部12aの面方向と、同一平面P上に位置するよう配置されている。
【0040】
このように、第1抵抗体20の一対のリード線部20a、20bをそれぞれ固定するための第1平板部12aと第2平板部12bとは、それぞれの面方向が平行、詳しくは同一平面Pの面方向である横方向において互いに離間した状態で形成されている。この離間距離は、第1抵抗体20の長手方向長さに応じた距離である。
【0041】
第3平板部12cの表面には、第2抵抗体21の一方のリード線部21aを固定するための2つの第3接続部13c1、13c2が設けられている。なお、第2平板部12bと第3平板部12cとは、本実施形態では第2ターミナル部材11bにおいて同一平面P上に形成されている。さらに、第2平板部12bと第3平板部12cとは、それぞれが異なる抵抗体20、21に対する固定部となるので、互いに離間する必要はなく、互いに接触していても、あるいは重なっていてもよい。
【0042】
第2ターミナル部材11bの下方端には、ベース40へ固定するための固定部15cと、固定部15cより縦方向(奥行き方向)に離れるように曲げられた第1コネクタ端子14bとが形成されている。この第1コネクタ端子14bは、図1に示すように、第1抵抗体20と第2抵抗体21との接続点に対応し、切替えスイッチ4においてM2端子に接続される端子である。
【0043】
なお、第2ターミナル部材11bには、第2平板部12bの下部には、第1抵抗体20の第2ターミナル部材11bにおける位置決めのために、リード線部20bのストッパ16bが切り起こされている。また、第3平板部12cの下部には、第2抵抗体21の第2ターミナル部材11bにおける位置決めのために、リード線部21aのストッパ16cが切り起こされている。
【0044】
第3ターミナル部材11cは、第2抵抗体21の他方の端のリード線部21b、および第3抵抗体22の一方の端のリード線部22aをそれぞれ固定するためのもので、ターミナル板10の右側において、第1ターミナル部材11aの内側、すなわち左隣に位置するよう形成されている。
【0045】
第3ターミナル部材11cには、2つの平板部である第4および第5平板部12d、12eが設けられている。第4平板部12dの表面には、第2抵抗体21のリード線部21bを固定するための2つの第3接続部13d1、13d2が、第1接続部13a1、13a2と同様の形態で、上下方向に設けられている。
【0046】
第4平板部12dの面方向は、第2抵抗体21の他方のリード線部21aを固定するための第3接続部13c1、13c2が設けられている第3平板部12cの面方向と同一平面P上に位置するよう配置されている。
【0047】
このように、第2抵抗体21の一対のリード線部21a、21bをそれぞれ固定するための第3平板部12cと第4平板部12dとは、それぞれの面方向が平行、詳しくは同一平面Pの面方向である横方向において互いに離間した状態で形成されている。この離間距離は、第2抵抗体21の長手方向長さに応じた距離である。
【0048】
第5平板部12eの表面には、第3抵抗体22の一方のリード線部22aを固定するための2つの第5接続部13e1、13e2が設けられている。なお、第4平板部12dと第5平板部12eとは、本実施形態では第3ターミナル部材11cにおいて同一平面P上に形成されている。さらに、第4平板部12dと第5平板部12eとの横方向距離は、それぞれが異なる抵抗体21、22に対する固定部となるので、互いに離間する必要はない。
【0049】
第3ターミナル部材11cの下方端には、ベース40へ固定するための固定部15eと、固定部15eより縦方向(奥行き方向)に離れるように曲げられた第2コネクタ端子14cとが形成されている。この第2コネクタ端子14cは、図1に示すように、第2抵抗体21と第3抵抗体22との接続点に対応し、切替えスイッチ4においてM1端子に接続される端子である。
【0050】
第4ターミナル部材11dは、第3抵抗体22の他方の端のリード線部22bを固定するためのもので、ターミナル板10において、第3ターミナル部材11cの内側、すなわち左隣に位置するよう形成されている。なお、第4ターミナル部材11dの外側に相当する左隣には第2ターミナル部材11bが位置している。
【0051】
第4ターミナル部材11dには、第6平板部12fが設けられている。第6平板部12fの表面には、第3抵抗体22のリード線部22bを固定するための2つの第6接続部13f1、13f2が、第1接続部13a1、13a2と同様の形態で、上下方向に設けられている。
【0052】
第6平板部12fの面方向は、第3抵抗体22の他方のリード線部22aを固定するための第5接続部13e1、13e2が設けられている第5平板部12eの面方向と同一平面P上に位置するよう配置されている。
【0053】
このように、第3抵抗体22の一対のリード線部22a、22bをそれぞれ固定するための第5平板部12eと第6平板部12fとは、それぞれの面方向が平行、詳しくは同一平面Pの面方向である横方向において互いに離間した状態で形成されている。この離間距離は、第3抵抗体22の長手方向長さに応じた距離である。
【0054】
第4ターミナル部材11dの下方端には、ベース40へ固定するための固定部15fと、固定部15fより縦方向(奥行き方向)に離れるように曲げられた第3コネクタ端子14dとが形成されている。この第3コネクタ端子14dは、図1に示すように、第3抵抗体22のリード線部22bに対応し、切替えスイッチ4においてLo端子に接続される端子である。
【0055】
さらに、ターミナル板10には、隣接する第1ターミナル部材11aと第3ターミナル部材11cとを連結する2つのブリッジ部17b、17cと、隣接する第2ターミナル部材11bと第4ターミナル部材11dとを連結する2つのブリッジ部17a、17eと、隣接する第3ターミナル部材11cと第4ターミナル部材17dとを連結する17a、17dとを備えている。なお、ブリッジ部17aは、第2、第3および第4ターミナル部材11b、11c、11dを連結している。
【0056】
このように、各ブリッジ部17a〜17eで隣接する各ターミナル部材11a〜11dを連結して、一体構造部品としてのターミナル板10を構成する。このターミナル板10は、1枚の金属板をプレス加工することにより形成することができるので、部品点数を1つにすることができる。したがって、この一体構造のターミナル板10を用いることにより、抵抗器3を組み立てるための工程および工数を、従来に比べて低減することができる。
【0057】
次に、抵抗器3のプロテクタ30について説明する。図3(a)は、曲げ加工前の切断加工されたプロテクタ30の平面図である。図3(b)は、曲げ加工後のプロテクタ30の正面図であり、図2と同様の配置方向を矢印で示している。
【0058】
プロテクタ30は、1面を開口した直方体形状をなし、ベース40上で各抵抗体20〜22を覆うように組みつけられるもので、外部からの異物進入抑制と最外部温度抑制機能を持つものである。プロテクタ30の4つの側面31a〜31dには、多数の通気孔33が設けられている。対向する長辺の側面31a、31cの下端開口部には固定部36a、36bと36c、36dとが設けられている。なお、プロテクタ30の天井面32には通気孔33は設けられていない。
【0059】
また、側面31cの下端開口部には、抵抗器3のHi端子としてのコネクタ端子34が設けられている。なお、プロテクタ30は薄板で成形されているため、このコネクタ端子34の部分のみ、折り返し部34a、34bを折り返して2倍の厚みに成形することにより、図示しない他のコネクタのターミナルとのオスメス嵌合時にコネクタ端子34における導通に必要な板厚を得るようにしている。
【0060】
長辺側の側面31a、31cの上部隅には、それぞれの面31a、31c上の対向する位置に、第2ヒューズ取付部35と矩形のはんだ付け作業用の窓38とが設けられている。なお、短辺側の側面31b、31dの下端部には、変形防止用の突片37a、37bが設けられている。
【0061】
第2ヒューズ取付部35が形成されている側面31aの下方端には、左右方向に第2ベース接触部39が形成されている。この第2ベース接触部39は、プロテクタ30のベース40への取付時、ベース40の上面40aと、線状で近接または接するように配置される。
【0062】
次に、ベース40について説明する。図4は、ベース40を示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は下面図、(d)は左側面図である。ベース40は、第1〜第3抵抗体20〜22が固定された第1〜第4ターミナル部材11a〜11dおよびプロテクタ30を組み付けて抵抗器3とし、車両側へ取り付ける部品であり、コネクタハウジングの役割も備えている。
【0063】
なお、ベース40は、絶縁性材料であるフェノール、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、あるいはポリフェニレンサルファイド(PPS)などの樹脂材料により成型されている。
【0064】
ベース40には、これらターミナル部材11a〜11dおよびプロテクタ30の固定部15a〜15f、36a〜36dが挿入される固定用の穴43a〜43f、44a〜44dと、各コネクタ端子34、14b〜14dが挿入されるコネクタ端子用の穴42a〜42dとが、上面40aから下面40bへ貫通するように設けられている。
【0065】
すなわち、ターミナル板10に形成されている6つの固定部15a、15b、15c、15d、15e、15fにそれぞれ対応する位置に、固定部用穴43a、43b、43c、43d、43e、43fが設けられている。また、ターミナル板10に形成されている第1〜第3コネクタ端子14b、14c、14dにそれぞれ対応する位置に、コネクタ端子用穴42b、42c、42dが設けられている。
【0066】
また、プロテクタ30に形成されている4つの固定部36a、36b、36c、36dにそれぞれ対応する位置に、固定部用穴44a、44b、44c、44dが設けられている。さらに、プロテクタ30に設けられたコネクタ端子(Hi端子)34に対応する位置にコネクタ端子用穴42aが設けられている。そして、ベース40の下面40b側には、これら4つのコネクタ端子34、14b、14c、14dを囲むようにコネクタ部41が設けられている。
【0067】
なお、ベース40の上面40a側には、プロテクタ30の変形を防止するための突片37a、37bを挿入するためのスリット45a、45bと、リード線部21b、22a、22bの各端部を止めるための凹部としてのストッパ16d、16e、16fとが設けられている。
【0068】
また、ベースの上面40a側には、長溝46が横方向に、すなわち、ベース40に組み付けられる第1〜第4ターミナル部材11a〜11dとプロテクタ30の側面31aとの間にあって、両者に沿う方向に形成されている。この長溝46は、温度ヒューズ23が溶断した場合に溶け落ちた溶融ヒューズが、ベース上面40aの落下部位上で広がって、第2ヒューズターミナルとしてのプロテクタ30と第1ヒューズターミナルとしての第1ターミナル部材11aおよび第2〜第4ターミナル部材11b〜11dとを接続することを防止するために、溶け落ちた溶融ヒューズをここで捉えて溜まるようにして、広がらないようにするためのものである。すなわち、この長溝46は溶融ヒューズ短絡防止手段に相当する。
【0069】
さらに、ベース上面40aには、第1〜第4ターミナル部材11a〜11dが配列される範囲の両端の外側にあるスリット45a、45bのそれぞれ内側部位に、縦方向(奥行き方向)に溶融ヒューズ短絡防止手段としての凸部47a、47bが設けられている。これら凸部47a、47bは、その頂点部で、落下した溶融ヒューズの広がりを断つことができ、これにより凸部47a、47bの近傍のプロテクタの側面31d、31bと第1ターミナル部材11aおよび第2ターミナル部材11bとのそれぞれの導通、すなわち短絡を防止することができる。
【0070】
なお、これら2つの凸部のうち、凸部47bは、第1および第2ヒューズ取付部14a、35の直下より離れた位置である、横方向の一方の端部である第2ターミナル部材11bの近傍に設けている。これにより、抵抗器3を搭載する車両(図示せず)の走行状態、特に車体の姿勢に応じて、溶断した溶融ヒューズの落下地点が第1および第2ヒューズ取付部14a、35の直下からずれ、第2ターミナル部材11bの方向へ落下しても、落下地点に形成された凸部47bにより溶融ヒューズが分断され、プロテクタ側面31bとこれに近接する第2ターミナル部材11bとの接続を断って、Hi端子とM2端子との短絡を防止することができ、異常状態に対応した回路の遮断を可能にしている。
【0071】
次に、抵抗器3の組み立て手順を、図5ないし図9を用いて説明する。まず、図5の正面図に示すように、一体構造部品であるターミナル板10をA方向よりベース40の上面40a側へ組み付ける。このとき、各固定部15a〜15fおよび各コネクタ端子14b〜14dを、それぞれそれらに一致するようベース40に設けられた各穴43a〜43fおよび42b〜42dに挿入する。
【0072】
次に、図6の一部断面図で示すように、固定部用の各穴43a〜43fにおいて、ターミナル板10の各固定部15a〜15fを曲げることにより、ターミナル板10をベース40に固定する。本実施形態では、固定部15a、15dは、横方向(左右方向)に広げるように曲げられて固定され、他の固定部15b、15c、15e、15fは、前後方向(奥行き方向)に曲げられて固定される。なお、固定部15bは図6において省略されている。
【0073】
このように、1つの部品であるターミナル板10をベース40の上面40aに組み付け、固定するので、挿入工程を1つにすることができる。また。ターミナル板10が一体構造であるので、ベース40への固定工程では、各ターミナル部材11a〜11d間の平行度や離間距離の変動を少なくすることができる。
【0074】
すなわち、本実施形態では、各ターミナル部材11a〜11dに設けられた各平板部12a〜12fは、ターミナル板10を構成する同一平面P上に形成されているので、少ない作業工数で組み付け精度を向上させることができる。
【0075】
ターミナル板10をベース40に組み付け、固定した後に、図7の平面図で示すように、ターミナル板10のブリッジ部17a〜17eを切断除去する。この切断除去部を図7においてハッチングで示す。各ターミナル部材11a〜11dおよびブリッジ部17a〜17eは、ターミナル板10を形成する同一平面P上に設けられているので、この切断工程では、一方向からプレス機により各ブリッジ部17a〜17eを切断することができる。あるいは、全ブリッジ部を一度に切断しない場合でも、ターミナル板10の面を反転させることなく、一方向から、ターミナル板10を平行移動させるのみで順次、各ブリッジ部を切断することができる。
【0076】
なお、このターミナル板10をベース上面40aに組み付けることにより、第1ヒューズターミナルとしての第1ターミナル部材11aは、第1ベース接触部18において、ベース上面40aの面上に接するように配置される。また、他の第3、第4および第2ターミナル部材11d、11c、11bについても同様に、ベース上面40aの面上に接する位置にそれぞれ第1ベース接触部18が形成される。
【0077】
各ターミナル部材11a〜11dの間を分離した後に、コイルタイプの第1〜第3抵抗体20〜22を各接続部13a1〜13f2の切り起こし部の穴に挿入し、図8(a)、(b)に示すように各接続部13a1〜13f2をかしめ固定する。図8(a)は正面図、同(b)は左側面図を示す。
【0078】
その挿入工程を説明すると、まず、第3抵抗体22の一方の端のリード線部22aを第5接続部13e1、13e2へ挿入し、他方の端のリード線部22bを第6接続部13f1、13f2へ挿入する。このときの第3抵抗体22の姿勢を、第3抵抗体22の長手方向が各ターミナル部材11a〜11dの配列方向である横方向に一致し、両端のリード線部22a、22bの線方向が上記横方向に対し垂直な上下方向となるようにする。
【0079】
さらに、ベース40側に凹部として形成されているストッパ16e、16fによって、リード線部22a、22bの端部が止められ、第3抵抗体22の第3および第4ターミナル部材11c、11dへの位置決めがなされる。これらにより、挿入工程を簡便にすることができる。
【0080】
次に、これらリード線部22a、22bが挿入された第5および第6接続部13e1、13e2、13f1、13f2の各切り起こし部を、一方向から同時にかしめることにより、第3抵抗体22と第3および第4ターミナル部材11c、11dとの電気接続および固定が完了する。
【0081】
このように、第5および第6平板部12e、12fを同一平面P上に配置しているので、第3抵抗体22の両端のリード線部22a、22bを一方向から一括してかしめ作業を簡便に行うことができる。また、1つのリード線部に対してかしめによる接続部を2箇所設けているので、はんだ等を用いることなく、リード線部22a、22bと平板部12e、12fとの接触抵抗を十分小さくすることができる。
【0082】
次に、第2抵抗体21の姿勢を上述の第3抵抗体22の挿入時と同様に保って、第2抵抗体21の一方の端のリード線部21aを第3接続部13c1、13c2へ挿入し、他方の端のリード線部21bを第4接続部13d1、13d2へ挿入する。このとき、第2ターミナル部材11bに設けられたストッパ16cによりリード線部21aの端部が止められ、ベース40に凹部として形成されているストッパ16dによりリード線部21bが止められて、第2抵抗体21の第2および第3ターミナル部材11b、11cへの位置決めがなされる。
【0083】
次に、上記第3抵抗体22と同様、リード線部21a、21bが挿入された第3および第4接続部13c1、13c2、13d1、13d2の各切り起こし部を、一方向から同時にかしめることにより、第2抵抗体21と第2および第3ターミナル部材11b、11cとの電気接続および固定が完了する。この第2抵抗体21の固定工程における効果は、上記第3抵抗体22におけるのと同様である。
【0084】
最後に、第1抵抗体20の姿勢を上述の第3抵抗体22および第2抵抗体21の各挿入時と同様に保って、第1抵抗体20の一方の端のリード線部20aを第1接続部13a1、13a2へ挿入し、他方の端のリード線部20bを第2接続部13b1、13b2へ挿入する。このとき、第1ターミナル部材11aに設けられたストッパ16aによりリード線部20aの端部が止められ、第2ターミナル部材11bに設けられたストッパ16bによりリード線部20bが止められて、第1抵抗体20の第1および第2ターミナル部材11a、11bへの位置決めがなされる。
【0085】
次に、上記第3および第2抵抗体22、21と同様、第1および第2接続部13a1、13a2、13b1、13b2の各切り起こし部を、一方向から同時にかしめることにより、第1抵抗体20と第1および第2ターミナル部材11a、11bとの電気接続および固定が完了する。この第1抵抗体20の固定工程における効果は、上記第2および第3抵抗体21、22におけるのと同様である。
【0086】
図8(b)に示すように、これら第1〜第3抵抗体20〜22の第1〜第4ターミナル部材11a〜11dへの組み付けおよび固定により、第3抵抗体22、第2抵抗体21および第1抵抗体20の順に、ベース40より上方へ離れるように配置される。また、第1〜第3抵抗体20〜22は、第1〜第6平板部12a〜12fと同一平面P上に配置される。これにより、本実施形態の抵抗器3は、図8(b)における手前から奥への縦方向の長さを短くすることができる。
【0087】
各抵抗体20〜22を各ターミナル部材11a〜11dに固定したのちに、プロテクタ30で抵抗体20〜22およびターミナル部材11a〜11dを覆う。図9に、プロテクタ30をベース40に組み付け、温度ヒューズ23を取り付けた状態を示す。なお図9(a)は、図8(a)等に対する背面図であり、図9(b)は図9(a)の左側面図で示す。また、図9(b)は、一部が切除されてプロテクタ30の内部の状態を示している。
【0088】
すなわち、プロテクタ30をベース40の上面40a側へ組み付ける。この場合、プロテクタ30の下端開口部に設けられた固定部36a、36b、36c、36dを、それぞれベース40に設けられた固定部用穴44a、44b、44c、44dへ挿入する。同時に、プロテクタ30の下端開口部に設けられたコネクタ端子(Hi端子)34を、ベース40に設けられたコネクタ端子用穴42aに挿入する。このとき、プロテクタの側面31aの下端側に形成されている第2ベース接触部39は、ベース上面40aと線状で近接または接するように配置される。なお、プロテクタ30の各突片37a、37bはそれぞれベース40のスリット45a、45bに差し込まれる。
【0089】
プロテクタ30の固定部36a〜36dは、各穴44a〜44dにおいて曲げられてプロテクタ30のベース40への固定を完了する。
【0090】
これにより、第1ヒューズターミナルとしての第1ターミナル部材11aに設けられた第1ヒューズ取付部14aと、第2ヒューズターミナルとしてのプロテクタ30に設けられた第2ヒューズ取付部35とは、抵抗器3の縦方向(奥行き方向)において、温度ヒューズ23の長さに相当する距離隔てて対向するよう配置される。さらに、第1〜第4ターミナル部材11a〜11dのベース上面40aとの接触部である各第1ベース接触部18とプロテクタ側面31aの第2ベース接触部39とは、長溝46を挟んで並行に配置される。
【0091】
ここまでの固定工程が終了したのち、はんだヒューズで構成される棒状の温度ヒューズ23を、プロテクタ30のヒューズ取付部35の穴よりプロテクタ30内部に挿入し、その先端部を第1ターミナル部材11aのヒューズ取付部14aの穴まで到達させる。蓋が開けられたはんだ付け作業用の窓38より温度ヒューズ23の先端部とヒューズ取付部14aの穴とのはんだ付けを実施し、プロテクタ30のヒューズ取付部35においても温度ヒューズ23をはんだ付けする。そののち、窓38の蓋が閉じられて、図1に示す抵抗器3の回路を形成する。
【0092】
ここで、温度ヒューズ23の配置位置について説明する。本実施形態では、温度ヒューズ23は、送風量が小から大、すなわち送風機モータ1が低速(Lo)運転からHiを除く高速(M2)運転まで、常に導通状態となる第1抵抗体20の近傍に配置される。これにより、送風機モータ1の異常停止等により抵抗器3に異常電流が流れる場合でも、送風量がLoからM2までの変化範囲で第1抵抗体20には常に電流が流れ、これにより確実に温度ヒューズ23を加熱、溶断させることができ、異常状態を感知して回路保護を行うことができる。
【0093】
また、温度ヒューズ23の上下方向における配置位置は、溶融ヒューズの落下方向においてベース上面40aより最も離れた位置にあるプロテクタ天井面32に近接した位置としている。
【0094】
すなわち、温度ヒューズ23を、ベース上面40aより落下方向になるべく離すように配置することにより、溶融した温度ヒューズの落下距離、すなわち、落下に要する時間を長くすることができるので、溶融ヒューズが落下中に冷却されて、ベース上面40aに達したときに、ベース面40a上に広がることを抑制することができる。
【0095】
これにより、溶融ヒューズの落下地点における第1ヒューズターミナルとしての第1ターミナル部材11aと第2ヒューズターミナルとしてのプロテクタ30との導通、すなわち導体間の短絡を防止する効果を高めることができる。
【0096】
なお、プロテクタ30は、各抵抗体20〜22を覆う構造になっているため、各抵抗体20〜23の発する熱の輻射の影響も受けて、これらにより温度上昇する。したがって、温度ヒューズ23をプロテクタ30に近接した位置に配置すると、第1および第2ヒューズ取付部14a、35および温度ヒューズ23の温度は高くなり、これにより温度ヒューズ23は両側溶断して溶融量が多くなって、ベース上面40aに落下することとなる。以上のことから、温度ヒューズ23のプロテクタ30の各側面31a〜31dからの離間距離が設定されている。
【0097】
次に、この温度ヒューズ23の溶断時の溶融ヒューズの落下状態について説明する。図11および図12は、図9(b)と同じ方向から見た抵抗器3の断面概略図であり、紙面の上下方向を抵抗器3の配置方向の上下と一致させている。図11(a)は溶融した温度ヒューズ23aの落下直後の様子を示し、図11(b)は従来のベース上面40aに溶融ヒューズ短絡防止手段である凹部または凸部が形成されていない場合の落下した溶融ヒューズ23bを示し、図11(c)は溶融ヒューズ23cが落下後に従来のベース上面40a上に広がる様子を示している。
【0098】
この図11(c)に示すように、従来のベース上面40a上に凹部または凸部などが形成されていない平面である場合、ここに溶融ヒューズ23bが落下すると、この溶融ヒューズ23dは落下地点で平面上に広がり、第1ヒューズターミナルとしての第1ターミナル部材11aの下部の第1ベース接触部18と第2ヒューズターミナルとしてのプロテクタ側面31aの下部の第2ベース接触部39との間を導通させる。
【0099】
これは、送風機モータ1の駆動回路の異常状態に対応して温度ヒューズ23が作動して、温度ヒューズ23の本来の取り付け部である第1および第2ヒューズ取付部14a、35間を遮断しても、別の部位である第1および第2ベース接触部18、39間が短絡されることとなり、結局、駆動回路を遮断することができないことを意味している。
【0100】
これに対して、図12は、本実施形態における、ベース上面40a上に溶融ヒューズ短絡防止手段である凹部としての長溝46が形成されている場合の、落下した溶融ヒューズ23dの状態を示している。
【0101】
図12に示すように、本実施形態では溶断して落下した溶融ヒューズ23dは、落下地点のベース上面40a上に形成された長溝46の凹部に捉えられ、ここに溜まることにより、この長溝46を挟んで対向して配置されている第1ヒューズ取付部14aの下部の第1ベース接触部18と第2ヒューズ取付部35の下部の第2ベース接触部39との間の接続が断たれ、両者の導通、すなわち短絡を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本実施形態の送風機モータの駆動回路を示す図である。
【図2】ターミナル板を示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は右側面図である。
【図3】(a)は曲げ加工前のプロテクタの平面図であり、(b)は曲げ加工後のプロテクタの正面図である。
【図4】ベースを示す図であり、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は下面図、(d)は左側面図である。
【図5】ターミナル板をベースに組み付ける方向を示す正面図である。
【図6】ターミナル板の固定部がベースに固定されている状態を示す一部断面図である。
【図7】ターミナル板の切断部位を示す正面図である。
【図8】抵抗体のターミナル部材への配置状態を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
【図9】プロテクタをベースに組み付けた状態を示す図であり、(a)は背面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図10】(a)はヒューズターミナル間に温度ヒューズが接続されている状態を示す図、(b)は温度ヒューズが片側溶断した状態を示す図、(c)温度ヒューズが両側溶断した状態を示す図である。
【図11】図9(b)と同じ方向から見た従来技術に基づく抵抗器の断面概略を示す図であり、(a)は溶断した溶融ヒューズの落下直後を示す図、(b)は平面の落下地点に溶融ヒューズが落下した状態を示す図、(c)落下後の溶融ヒューズが平面上で広がった状態を示す図である。
【図12】本実施形態における溶融ヒューズが落下地点の凹部に溜まる状態を示す図である。
【符号の説明】
【0103】
10…ターミナル板、11a…第1ターミナル部材(第1ヒューズターミナル)、
11b〜11d…第2〜第4ターミナル部材、14a…第1ヒューズ取付部、
18…第1ベース接触部、23…温度ヒューズ、
30…プロテクタ(第2ヒューズターミナル)、31a〜31d…側面、
32…天井面、34…コネクタ端子、35…第2ヒューズ取付部、
39…第2ベース接触部、40…ベース、41…コネクタ部、
46…長溝(溶融ヒューズ短絡防止手段)、
47a、47b…凸部(溶融ヒューズ短絡防止手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体で構成されたベース(40)の上面(40a)側に抵抗体(20、21、22)と温度ヒューズ(23)とが組みつけられた負荷電流制御用抵抗器(3)であって、
第1ヒューズ取付部(14a)と第1ベース接触部(18)とを備える導体部材であって、前記第1ヒューズ取付部(14a)に前記温度ヒューズ(23)の両端の一方を取り付け、前記第1ベース接触部(18)が前記ベース上面(40a)に接するように配置される第1ヒューズターミナル(11a)と、
第2ヒューズ取付部(35)と第2ベース接触部(39)とを備える導体部材であって、前記第2ヒューズ取付部(35)に前記温度ヒューズ(23)の両端の他方を取り付け、前記第2ベース接触部(39)が前記ベース上面(40a)に接し、かつ前記ベース上面(40a)上において前記第1ベース接触部(18)と離間して配置される第2ヒューズターミナル(30)と、を備え、
前記ベース上面(40a)には、前記第1ベース接触部(18)と第2ベース接触部(39)との間の前記温度ヒューズ(23)の溶断による溶融ヒューズの落下部位において、前記溶融ヒューズによる前記第1および第2ベース接触部(18、39)間の短絡を防止する溶融ヒューズ短絡防止手段(46、47a、47b)が設けられていることを特徴とする負荷電流制御用抵抗器。
【請求項2】
前記溶融ヒューズ短絡防止手段は、前記ベース上面に形成された凹部(46)であることを特徴とする請求項1に記載の負荷電流制御用抵抗器。
【請求項3】
前記溶融ヒューズ短絡防止手段は、前記ベース上面(40a)に沿って配置される前記第2ベース接触部(39)に平行に形成された凹状の長溝(46)であることを特徴とする請求項2に記載の負荷電流制御用抵抗器。
【請求項4】
前記溶融ヒューズ短絡防止手段は、前記ベース上面に形成された凸部(47a、47b)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載に記載の負荷電流制御用抵抗器。
【請求項5】
前記第2ヒューズターミナルは、前記抵抗体(20、21、22)および温度ヒューズ(23)を保護するために前記ベース上面(40a)を覆うプロテクタに設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の負荷電流制御用抵抗器。
【請求項6】
前記プロテクタ(30)は、前記溶融ヒューズの落下方向において前記ベース上面(40a)より最も離れた位置にプロテクタ天井面(32)を備え、
前記第1および第2ヒューズ取付部(14a、35)は、前記プロテクタ(30)の前記ベース上面(40a)よりも前記プロテクタ天井面(32)の方に近接した部位に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の負荷電流制御用抵抗器。
【請求項1】
絶縁体で構成されたベース(40)の上面(40a)側に抵抗体(20、21、22)と温度ヒューズ(23)とが組みつけられた負荷電流制御用抵抗器(3)であって、
第1ヒューズ取付部(14a)と第1ベース接触部(18)とを備える導体部材であって、前記第1ヒューズ取付部(14a)に前記温度ヒューズ(23)の両端の一方を取り付け、前記第1ベース接触部(18)が前記ベース上面(40a)に接するように配置される第1ヒューズターミナル(11a)と、
第2ヒューズ取付部(35)と第2ベース接触部(39)とを備える導体部材であって、前記第2ヒューズ取付部(35)に前記温度ヒューズ(23)の両端の他方を取り付け、前記第2ベース接触部(39)が前記ベース上面(40a)に接し、かつ前記ベース上面(40a)上において前記第1ベース接触部(18)と離間して配置される第2ヒューズターミナル(30)と、を備え、
前記ベース上面(40a)には、前記第1ベース接触部(18)と第2ベース接触部(39)との間の前記温度ヒューズ(23)の溶断による溶融ヒューズの落下部位において、前記溶融ヒューズによる前記第1および第2ベース接触部(18、39)間の短絡を防止する溶融ヒューズ短絡防止手段(46、47a、47b)が設けられていることを特徴とする負荷電流制御用抵抗器。
【請求項2】
前記溶融ヒューズ短絡防止手段は、前記ベース上面に形成された凹部(46)であることを特徴とする請求項1に記載の負荷電流制御用抵抗器。
【請求項3】
前記溶融ヒューズ短絡防止手段は、前記ベース上面(40a)に沿って配置される前記第2ベース接触部(39)に平行に形成された凹状の長溝(46)であることを特徴とする請求項2に記載の負荷電流制御用抵抗器。
【請求項4】
前記溶融ヒューズ短絡防止手段は、前記ベース上面に形成された凸部(47a、47b)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載に記載の負荷電流制御用抵抗器。
【請求項5】
前記第2ヒューズターミナルは、前記抵抗体(20、21、22)および温度ヒューズ(23)を保護するために前記ベース上面(40a)を覆うプロテクタに設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の負荷電流制御用抵抗器。
【請求項6】
前記プロテクタ(30)は、前記溶融ヒューズの落下方向において前記ベース上面(40a)より最も離れた位置にプロテクタ天井面(32)を備え、
前記第1および第2ヒューズ取付部(14a、35)は、前記プロテクタ(30)の前記ベース上面(40a)よりも前記プロテクタ天井面(32)の方に近接した部位に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の負荷電流制御用抵抗器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−141560(P2007−141560A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331404(P2005−331404)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(591280511)中村電機工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(591280511)中村電機工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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