説明

貫入ロッド、並びにこれを用いた貫入試験機および貫入試験方法

【課題】ロッドとその先端に配置されるスクリューポイントから成る貫入ロッドを地盤に回転貫入してその回転負荷トルクを検出する貫入試験において、スクリューポイントの回転負荷トルクを検出するための貫入ロッド、並びにこれを用いた貫入試験機および貫入試験方法を提供する。
【解決手段】上記課題は、ロッドとスクリューポイントとを連結する連結具を有し、この連結具は前記スクリューポイントが連結される外管と、前記ロッドが連結される棒材とによる二重管構造を成し、これら外管および棒材は、通常、円周方向に係合して一体に回転する一方、ロッドを引き上げて棒材を軸方向に移動させると、円周方向の係合が解かれてロッドだけが回転するよう構成されていることを特徴とする貫入ロッド、並びにこれを用いた貫入試験機および貫入試験方法によって解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドとその先端に配置されるスクリューポイントから成る貫入ロッドを地盤に回転貫入して、スクリューポイントの回転負荷トルクを検出する貫入試験機および貫入試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地盤の土質を判定する方法の一つとして、非特許文献1に示すスウェーデン式サウンディング試験方法が知られている。この試験は、ロッドの先端に取付けられたスクリューポイントを地盤に貫入する際、その抵抗を計測することで地盤の硬軟を計測するものである。貫入方法は、備え付けの錘により最大1KNまで6段階の荷重を加えて荷重のみで自沈貫入を行う荷重段階と、最大荷重1KNにおいてもロッドが貫入しない場合に、その荷重下でロッドないしスクリューポイントを回転させて回転貫入を行う回転段階の2段階で行われる。貫入抵抗に対する計測項目は、荷重段階では、スクリューポントが所定深度貫入した時点での荷重(Wsw)、回転段階では貫入量1m当りに換算されたスクリューポイントの半回転数(Nsw)である。この半回転数は、スクリューポイントの一回転を2回として計数した回転回数である。
【0003】
前述のスェーデン式サウンディング試験を自動化した試験機としては、特許文献1(特開平9−111745)に示すものがある。この貫入試験機は、昇降用モータの駆動により支柱に沿って昇降可能な昇降台を有しており、この昇降台にはチャックが配置されている。このチャックは、チャック用モータの駆動を受けて回転するように構成されており、このチャックにはロッドが一体に回転可能に保持されている。このロッドの先端にはスクリュイーポイントが取付けられており、このスクリューポイントを地盤に突き刺して貫入試験が行われる。
【0004】
前記昇降台の後部には、スプロケットが回転可能に設けられている。このスプロケットは、支柱に配置されたチェーン部材に常時噛合しており、このスプロケットがチェーン部材に沿って回転することで昇降台が昇降するように構成されている。また、スプロケットは、パウダブレーキの作動により制動されるようになっており、これにより昇降台に付与される荷重を制御することで、ロッドおよびスクリューポイントに付与する荷重が変更される。
【0005】
前記ロッドとスクリューポイントとから成る貫入ロッドが地中に貫入していく過程で、貫入ロッドの貫入速度は土質に応じて変化するため、この貫入速度ができるだけ一定になるよう、回転の付与/停止、荷重の変更等、貫入条件の変更が行われる。この貫入条件が変更された時と、貫入ロッドが所定深度貫入する毎とに、制御ユニットにより試験データが取得される。
【0006】
試験データは、前回試験データを取得した位置からの貫入ロッドの貫入量、その間の貫入ロッドの半回転数(貫入ロッドの一回転を2としてカウントした回転数)及びその間の荷重値で成る。地盤が固ければ、半回転数が多くなるため、この半回転数により貫入深さ毎の地盤強度を知り、その土地の地耐力を調べることができる。
【0007】
【非特許文献1】日本工業規格A1221 スウェーデン式サウンディング試験方法
【特許文献1】特開平9−111745
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の貫入試験機および貫入試験方法では、ロッドの回転中、このロッドに地中の抵抗が付加されるので、スクリューポイントにのみ付加される抵抗に基づいて試験データを算出することは困難であった。これでは、本来スクリューポイントが到達した地層における硬度を測定すべきはずが、実際にはスクリューポイントが到達した地層よりも上層の影響を受けてしまい、正確な試験データを得られない問題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の貫入試験機は、前記課題に鑑みて創成されたものであり、ロッドとその先端に配置されるスクリューポイントから成り、当該スクリューポイントを地面に突き刺して地中に貫入する貫入ロッドと、支柱に沿って昇降自在な昇降台と、前記昇降台を昇降させる昇降ユニットと、前記昇降台に取付けられて前記貫入ロッドを回転可能に保持するチャックと、前記貫入ロッドに回転駆動を付与するチャック用モータと、前記貫入ロッドの回転負荷を検出するトルクセンサと、前記ロッドとスクリューポイントを連結する一方、所定の動作によりこれらの連結を解除する連結具と、前記ロッドとスクリューポイントが連結されているとき、ロッドとスクリューポイントの回転負荷を測定する一方、ロッドとスクリューポイントの連結が解除されているとき、ロッドの回転負荷を測定して、ロッドとスクリューポイントの回転負荷からロッドの回転負荷を減ずることによりスクリューポイントの回転負荷を算出する制御ユニットとを備えていることを特徴とする。
【0010】
また、前記連結具は、昇降台が所定の高さ上昇することによりロッドとスクリューポイントの連結を解除することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の貫入試験方法も、前記課題に鑑みて創成されたものであり、ロッドとその先端に配置されるスクリューポイントとから成る貫入ロッドを地中に貫入して回転させることによりスクリューポイントの回転負荷を測定する貫入試験において、ロッドとスクリューポイントの回転負荷を計測した後、ロッドの回転負荷を計測して、ロッドとスクリューポイントの回転負荷からロッドの回転負荷を減ずることによりスクリューポイントの回転負荷を算出することを特徴とする。
【0012】
また、前記貫入試験方法においては、ロッドとスクリューポイントの回転負荷を計測するときには、これらロッドとスクリューポイントを両方回転させる一方、ロッドの回転負荷を計測するときには、スクリューポイントは回転させずにロッドだけを回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の貫入試験機および貫入試験方法においては、貫入試験中、ロッドとスクリューポイントから成る貫入ロッドの回転負荷を測定する一方、ロッドにかかる回転負荷だけを測定するようにも構成されている。そのため、ロッドとスクリューポイントの回転負荷からロッドの回転負荷を減ずることにより、スクリューポイントにかかる回転負荷だけをを得ることができるので、各地層における地盤の硬度を正確に試験することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1において、
1は貫入試験機であり、支柱2に沿って昇降可能な昇降台3と、この昇降台3に回転可能に設けられたチャック10と、このチャック10を回転駆動するチャック用モータ11と、前記チャック10に保持されるロッド8とその先端に取付けられるスクリューポイント7から成る貫入ロッド4と、前記昇降台3を支柱2に沿って昇降させる昇降ユニット40とを有する。
【0015】
前記支柱2は、脚部5に立設されており、その背面には、案内路の一例としてチェーン部材6が直線上に配置固定されている。このチェーン部材6には、詳細を後述する昇降ユニット40のスプロケット44が噛合する。
【0016】
前記チャック10は、図2に示すように、昇降台3に回転可能に配置されており、ロッド8が挿通可能かつ回転可能に支持された中空スリーブ12を備えている。この中空スリーブ12は、ロッド8に形成された長溝8aに係合する剛球13が配置されるとともに、中空スリーブ12の下部にはスプロケット14が設けられている。前記剛球13は、ばね15で常時付勢されたスライドスリーブ16によって常時中空スリーブ12の中空穴部12aに突出する位置に支持されており、この状態でロッド8の長溝8aに係合する。なお、スライドスリーブ16をばね15の付勢に抗して押し下げると、剛球13は動作可能となり、ロッド8の保持を解くことができる。
【0017】
前記チャック用モータ11の出力軸11aには遊星歯車機構20を介して第2出力軸26が連結されている。この第2出力軸26の下部にはスプロケット17が一体に固定されており、このスプロケット17と前記中空スリーブ12の下部に設けられたスプロケット14とは環状チェーン18を巻き掛けて連結されている。チャック側のスプロケット14の歯に対向する位置には、このスプロケット14が回転する時の歯の通過を検出してON/OFFする近接センサ(図示せず)が取付けられている。この近接センサの信号は制御ユニット50に取得される。制御ユニット50は貫入ロッド4の半回転数を算出するとともにチャック用モータ11の駆動を制御するように構成されている。
【0018】
前記遊星歯車機構20はフランジ19に収容されており、このフランジ19の上方には前記チャック用モータ11が配置してある。また、前記遊星歯車機構20は、図3に示すように、前記チャック用モータ11の出力軸11aと一体に回転するように取付けられた太陽ギア21と、この太陽ギア21と噛合し、かつ当該太陽ギア21を中心としてその周囲を自転しつつ公転する複数の遊星ギア22,23,24と、リング状に形成され内歯を有するインターナルギア25とから構成されている。このインターナルギア25は、その内歯が前記複数の遊星ギア22,23,24と噛合して、これら遊星ギア22,23,24の自転および公転を案内するように構成されている。これら遊星ギア22,23,24の下面には前記第2出力軸26が当該遊星ギア22,23,24と一体に回転可能に取付けられて、この第2出力軸26と前記チャック用モータ11の出力軸11aとは同一軸線上に配置されている。また、前記遊星ギア22,23,24の間には、それぞれキャリア27,28,29が介在しており、これらキャリア27,28,29は前記第2出力軸26に一体成形されている。
【0019】
前記フランジ19の内周面には、内方を向いた梁31,32が当該フランジに一体成形されており、これら梁31,32は前記インターナルギア25を挟んで互いに対向するように位置している。これら梁31,32には前記インターナルギア25が固定されており、前記遊星ギア22,23,24の回転に伴って回転しないようになっている。この梁31の側面には前記インターナルギア25が貫入ロッド4による回転反力を受け、この回転反力が当該梁31に作用する方向で互いに対向するようにして歪みゲージ33,34が取付けられており、同様にもう一方の梁32にも歪みゲージ35、36が取付けられている。これら合計4個の歪みゲージと2個の梁によって前記トルクセンサ30が構成され、これら4個の歪みゲージはホイートストンブリッジ回路に組み込まれている。そして、これら合計4個の歪みゲージ33,34,35,36が当該梁31,32の捻れに応じた歪みを電気信号として検出するように構成されおり、これら歪みゲージ33,34,35,36の信号から制御ユニット50においてスクリューポイント7とロッド8の回転負荷トルク、あるいはロッド8の回転負荷トルクが計測されるようになっている。なお、このトルクセンサ30においては、これら4個の歪みゲージ33,34,35,36を組み込んだホイストーンブリッジ回路により抵抗値を測定する所謂4アクティブケージ法を採用している。
【0020】
前記昇降ユニット40は、図4に示すように、前記スプロケット44を回転駆動する昇降用モータ41と、このスプロケット44の回転を制御するブレーキ手段42とを備えている。このスプロケット44は、昇降用モータ41と一方向クラッチ43および前記ブレーキ手段42を介して連結されており、一方向クラッチ43の作用で、昇降台3を上昇させる方向にスプロケット44を回転させるよう昇降用モータ41が駆動した時、これらがスプロケット44に伝達されるようになっている。一方、逆方向にスプロケット44を回転させるように昇降用モータ41を駆動したときはには一方向クラッチ43は空転を生じる。このため、スクリューポイント7が地盤に接している状態で昇降用モータ41が逆駆動すると、貫入ロッド4には、昇降台3等の質量による荷重が負荷される。この荷重は、ブレーキ手段42がスプロケット44を制動する力を変更することで0Nから1KNまで自在に変更することができる。なお、前記ブレーキ手段42としてはパウダークラッチまたはパウダブレーキであるこが望ましい。
【0021】
前記貫入ロッド4は、図5(a)および(b)に示すように、ロッド8と、その先端に連結具60を介して取付けられるスクリューポイント7から成り、スクリューポイント7を地面に突き刺して地中に貫入するように構成されている。また、この連結具60は、前記ロッド8の先端とスタッドボルトBで連結されて当該ロッド8と一体に回転する棒材61と、中空状の外管62とから構成されている。この棒材61には弾付部61aが形成されており、図5(a)に示すように、前記外管62には上方から、当該外管62の上端と、棒材61の弾付部61aとを係合させるようにして当該棒材61が挿入されている。さらに、外管62の下端にはキャップ63がその上部を当該外管62に挿入させるようにして当該外管62と一体に回転可能に取付けられており、一方当該キャップ63の下端にはスクリューポイント7がスタッドボルトBにより当該キャップ63と一体に回転可能に取付けられている。
【0022】
また、前記外管62の上端には突部62aが形成されており、一方前記棒材61の弾付部61aには当該突部62aと係合可能な溝61bが形成されている。この突部62aが弾付部61aの溝61bに挿入されている状態において、ロッド8に回転方向の力が作用した場合には、これら突部62aと溝61bは係合し、一方ロッド8を上方させる方向の力が作用した場合には、図5(b)に示すように、棒材61と、外管62の係合は解除されて棒材61の弾付部61aは外管62の上端から離脱する。具体的には、図6(a)に示すように、棒材61と外管62が係合している場合においてロッド8に回転方向の力が作用した場合には、ロッド8とスクリューポイント7は一体に回転し、一方図6(b)に示すように、棒材61と外管62の係合を解除してロッド8に回転方向に力が作用した場合には、ロッド8は回転して、スクリューポイント7は回転しないように構成されている。
【0023】
さらに、前記外管62の孔の下部には弾付状の規制部62bが形成されており、この規制部62bと前記キャップ63の上端により、前記外管62の孔の下方には穴空間が形成されている。また、前記棒材61は下端に規制部材61cを備えており、この規制部材61cは下方から当該棒材61の下端にねじ留めされている。この規制部材61cは、前述の穴空間に収納されて当該穴空間内で移動可能な一方、前記ロッド8が上方に引き上げれた場合には規制部62bにより移動が制限される。
【0024】
以下、本発明の貫入試験機1を用いた貫入試験方法を述べる。本貫入試験機1では、貫入ロッド4の先端のスクリューポイント7をを地表に接する位置から貫入試験をスタートする。この位置では制御ユニット50に備えられたマニュアル操作ボタンを押して昇降用モータ41を逆駆動し、昇降台3を下降させる。この位置からスタート信号を押してスタート信号を与えると、制御ユニット50は自動で貫入ロッド4の地中への貫入を開始する。すなわち、制御ユニット50は試験スタート信号の入力を受けて、昇降用モータ41を逆駆動するとともに、チャック用モータ11を回転させる。これにより、貫入ロッド4に昇降台3等の質量による荷重を負荷して、貫入ロッド4を回転させながら地中に貫入する。
【0025】
試験中、制御ユニット50はブレーキ手段42を制御し、貫入ロッド4に負荷される荷重を最小荷重50Nから150N、250N、500N、750N、1000Nの順に増加させる。そして、各荷重下での貫入ロッド4にかかる回転負荷トルクと、貫入ロッド4の半回転数、貫入量および回転速度の増分を求めて記憶する。これを貫入ロッド4が25cm貫入する区間を単位区間として、この単位区間毎に行う。ここで、貫入ロッド4に作用する回転負荷トルクは、前記トルクセンサ30から得る。
【0026】
前記トルクセンサ30は、前述のとおり前記梁31,32と歪みゲージ33,34,35,36とから構成されており、合計4個の歪みゲージが当該梁の捻れに応じた歪みを電気信号として検出するように構成されている。具体的には、前記チャック用モータ11が回転すると、この出力軸11aに取付けられた太陽ギア21が回転する。この太陽ギア21が回転すると、これと噛合している遊星ギア22,23,24も回転し、これら遊星ギア22,23,24は、前記梁31,32に固定されたインターナルギア25の内歯に噛合して案内される。これら遊星ギア22,23,24の回転反力はインターナルギア25によって受け止められるので、当該遊星ギア22,23,24の回転力は、前記第2出力軸26に伝達され、前記環状チェーン18を介して、貫入ロッド4に伝達される。このとき貫入ロッド4の回転反力は、前記環状チェーン18及び第2出力軸26を介してインターナルギア25に伝達され、当該インターナルギア25によって受け止めらる。このインターナルギア25は、前記梁31,32に固定されているので、当該インターナルギア25によって受け止められた前記貫入ロッド4の回転反力は、当該梁31,32に曲げモーメントとして伝達される。すると、これら梁31,32が歪み、この歪みを前記歪みゲージ33,34ならびに歪みゲージ35,36が電気信号として検出して、これを制御ユニット50に送信する。
【0027】
また、貫入ロッド4の貫入量の増分は、スプロケット44の回転を検出するロータリエンコーダ45の信号からスプロケット44の回転回数を算出し、これにスプロケット44の一回転当りの貫入量を乗じることで算出することができる。また、制御ユニット50は、この貫入量の増分を積算することでスクリューポイント7の貫入深度を算出して記憶するとともに、単位時間当りの貫入量からスクリューポイント7の貫入速度を割り出す。制御ユニット50は、以上の処理を繰り返し行って所定の深度までスクリューポイント7を貫入する。
【0028】
地中での各深度におけるスクリューポイント7の回転負荷トルクTsを算出するには、図5(a)に示すように、まず、貫入ロッド4に所定の荷重を付与した状態で貫入ロッド4を回転させる。このとき、図6(a)に示すように、棒材61の溝61bには外管62の突部62aが下方から挿入された状態なので、ロッド8の回転に伴って連結具60およびスクリューポイント7は一体に回転する。このときの歪みを前記トルクセンサ30が検出することにより、貫入ロッド4の回転負荷トルクTr+s、つまりロッド8にかかる回転負荷トルクTrとスクリューポイント7にかかる回転負荷トルクTsを合算した負荷トルクTr+sが得られる。なお、連結具60の外径はスクリューポイント7の外径よりも小さく、かつ表面積はロッド8よりも十分に小さく形成されている。従って、当該連結具60にかかる回転負荷トルクは、ロッド8あるいはスクリューポイント7にかかる回転負荷トルクに比べ十分に小さいものであり、試験結果に重大な影響を与えるものではないので無視する。
【0029】
続いて、ロッド8にかかる回転負荷トルクTrを計測するには、図5(b)に示すように、前述の図5(a)の状態から所定の高さ昇降台3を上昇させる。この上昇量は、前記ロッド8の長溝4aの長さよりも大きく、さらに棒材61の溝に挿入されて係合している外管62の突部62aが溝61bから外れる程度である。このように昇降台3を上昇させると、ロッド8の長溝4aの下方で嵌合していた剛球13は、昇降台3上昇に伴って長溝4aに沿って当該長溝4aの上方に到達し、さらに上昇を続けると長溝4aの上方で嵌合してロッド8および連結具60の棒材61も上昇する。すると、図6(b)に示すように、棒材61の溝61bに挿入されて係合している外管62の突部62aが溝61bから外れて、連結具60の棒材61と外管62との回転方向に対する係合は解かれる。この状態でロッド8を回転させると、連結具60の外管62およびスクリューポイント7は回転せず、ロッド8と棒材61だけが回転する。このときの歪みをトルクセンサ30が検出することにより、ロッド8にかかる回転負荷トルクTrが得られる。
【0030】
前記貫入ロッド4の回転負荷トルクTr+sから前記ロッド8の回転負荷トルクTrを減ずることによりスクリューポイント7の回転負荷トルクTsを算出することができる。このスクリューポイント7に負荷される各荷重Wと回転負荷トルクTsによる貫入時のエネルギは、δE=πTsδn+Wδsと表すことができる。ここでδnは各荷重下での半回転数(半回転数の増分)、δsは各荷重かでの貫入量の増分である。また、右辺のπTsδnは回転付加による貫入エネルギ、Wδsは荷重による貫入エネルギであり、つまりエネルギδEは、荷重にる貫入エネルギと回転による貫入エネルギの総和で表される。そして、これらの試験を地中の各深度で行うことで地中の各層における硬度等を判定する。
【0031】
地中の所定深度の試験が終了すると昇降台を上昇させて貫入ロッド4を引き抜く必要がある。この場合、図5(b)に示す状態よりもさらに昇降台3を上昇させると、前述の規制部材61cと規制部62bの作用により、これらは上昇方向において係合して、昇降台3の上昇に伴って上昇するロッド8と連結具60の棒材61の上昇に伴って、連結具60の外管62およびロッド8も上昇するのでスクリューポイント7を引き抜くことができる。
【0032】
このように、本発明の貫入試験機および貫入試験方法によれば、スクリューポイント7にかかる回転負荷トルクTsだけを精度よく検出することができるので、地中の硬度をより正確に判定することが可能となる。また、この検出データに基づいて算出される回転付加による貫入エネルギと、荷重による貫入エネルギとの総和を算出することができるので、これらエネルギの総和を解析することで、例えば含水比の異なる粘土質で構成される洪積層と沖積層と腐植土層等、従来の試験方法では判定が困難だった地層を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る貫入試験機の正面図である。
【図2】本発明に係る貫入試験機のチャック部分の拡大断面図である。
【図3】図2のA−A線要部拡大断面図である。
【図4】図1のB−B線要部拡大断面図である。
【図5】本発明の貫入ロッドの動作説明図であり、(a)はロッドとスクリューポイントが連結されている状態であり、(b)は連結が解除されている状態を示す図である。
【図6】(a)は図5(a)のC−C線拡大断面図であり、(b)は図5(b)のD−D線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 貫入試験機
2 支柱
3 昇降台
4 貫入ロッド
4a 長溝
5 脚部
6 チェーン部材
7 スクリューポイント
8 ロッド

10 チャック
11 チャック用モータ
11a 出力軸
12 中空スリーブ
12a 中空穴部
13 剛球
14 スプロケット
15 ばね
16 スライドスリーブ
17 スプロケット
18 環状チェーン
19 フランジ

20 遊星歯車機構
21 太陽ギア
22 遊星ギア
23 遊星ギア
24 遊星ギア
25 インターナルギア
26 第2出力軸
27 キャリア
28 キャリア
29 キャリア
30 トルクセンサ
31 梁
32 梁
33 歪みゲージ
34 歪みゲージ
35 歪みゲージ
36 歪みゲージ

40 昇降ユニット
41 昇降用モータ
42 ブレーキ手段
43 一方向クラッチ
44 スプロケット
45 ロータリエンコーダ

50 制御ユニット

60 連結具
61 棒材
61a 弾付部
61b 溝
61c 規制部材
62 外管
62a 突部
62b 規制部
63 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドとその先端に配置されるスクリューポイントから成り、当該スクリューポイントを地面に突き刺して地中に貫入する貫入ロッドと、
支柱に沿って昇降自在な昇降台と、
前記昇降台を昇降させる昇降ユニットと、
前記昇降台に取付けられて前記貫入ロッドを回転可能に保持するチャックと、
前記貫入ロッドに回転駆動を付与するチャック用モータと、
前記貫入ロッドの回転負荷を検出するトルクセンサと、
前記ロッドとスクリューポイントを連結する一方、所定の動作によりこれらの連結を解除する連結具と、
前記ロッドとスクリューポイントが連結されているとき、ロッドとスクリューポイントの回転負荷を測定する一方、ロッドとスクリューポイントの連結が解除されているとき、ロッドの回転負荷を測定して、ロッドとスクリューポイントの回転負荷からロッドの回転負荷を減ずることによりスクリューポイントの回転負荷を算出する制御ユニットと
を備えていることを特徴とする貫入試験機。
【請求項2】
前記連結具は、昇降台が所定の高さ上昇することによりロッドとスクリューポイントの連結を解除することを特徴とする請求項1に記載の貫入試験機。
【請求項3】
ロッドとその先端に配置されるスクリューポイントとから成る貫入ロッドを地中に貫入して回転させることによりスクリューポイントの回転負荷を測定する貫入試験において、 ロッドとスクリューポイントの回転負荷を計測した後、ロッドの回転負荷を計測して、ロッドとスクリューポイントの回転負荷からロッドの回転負荷を減ずることによりスクリューポイントの回転負荷を算出することを特徴とする貫入試験方法。
【請求項4】
ロッドとスクリューポイントの回転負荷を計測するときには、これらロッドとスクリューポイントを両方回転させる一方、ロッドの回転負荷を計測するときには、スクリューポイントは回転させずにロッドだけを回転させることを特徴とする請求項3に記載の貫入試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−95949(P2010−95949A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269191(P2008−269191)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】