説明

貫流ボイラ

【課題】燃焼灰に起因するボイラ効率の低下や燃焼ガス流路の閉塞といった弊害が生じることを抑制することが可能になるバイオマス燃料を用いた貫流ボイラを提供する。
【解決手段】内部に燃焼室14が形成される燃焼炉1の上下部に各々配置された上下部ヘッダー17、16と、上下部ヘッダーに各々上下端部が接続され、燃焼炉の内壁に沿って設けられた環状の外側水管群21および外側水管群の内側に間隔をおいて設けられた環状の内側水管群23とを備え、内側水管群の内側水管19間に第1の開口部25を形成して内側水管群と外側水管群との間に燃焼室に連通する燃焼ガス流路24を形成し、外側水管群の外側水管18間に燃焼ガス流路と排ガス通路とを連通させる第2の開口部26を形成するとともに、外側水管18の下端部に下部ヘッダーとの接続部から上方に向けて漸次上記内壁側に向かうR部18aを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材チップやペレット等の固形のバイオマス燃料を燃焼させて蒸気を発生させる貫流ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止のための二酸化炭素(CO2)削減対策の一つとして、石炭や石油等の化石燃料に代えて、木材をチップ状やペレット状等に加工した固形のバイオマス燃料を用いた燃焼熱の利用が注目されている。
このようなバイオマス燃料を用いた燃焼装置によれば、CO2の発生量を抑制することができるのみならず、燃料自体が廉価であるために、経済性にも優れるという利点がある。
【0003】
そこで、近年、上記燃焼装置の一種である小型貫流ボイラの燃料として、上記バイオマス燃料を用いる試みが始まっている。この小型貫流ボイラは、多数の垂直水管と、内径150mm以下の上下のヘッダーとを備え、伝熱面積が10m2以下に制限した小型でシンプルな構造のものであり、保有水量が少ないために、本質的に安全性が高く、法的規制が緩く取扱が容易であることを特徴とするものである。
【0004】
例えば、下記特許文献1においては、内方に円形の燃焼室を形成する環状の内側の水冷壁と、内側の水冷壁の外方位置に配置された環状の外側の水冷壁と、内側の水冷壁と外側の水冷壁との間に形成されて燃焼室および煙道にそれぞれ連通する環状の燃焼ガス通路と、両水冷壁の各水管の上端部および下端部にそれぞれ連通状に接続された上部ヘッダーおよび下部ヘッダーと、燃焼室の下部に配設され、木質ペレットを燃料として燃焼させる燃焼装置とを備え、燃焼室の上部に設けた木質ペレット供給口から燃焼室内に木質ペレットを投入して燃焼装置により燃焼させ、発生した燃焼ガスおよび焼却灰を燃焼室から燃焼ガス通路を通して煙道へ排出するようにした木質ペレット焚き蒸気ボイラが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−64370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の貫流ボイラは、一般に内径150m以下の上下のヘッダーに、多数本の50〜60mmφ程度の直管によって形成された内列水管と外列配管を連結した構造であるために、内列水管と外列配管との間の燃焼ガス流路が極めて狭いものになる。このため、特にバイオマス燃料のような灰分が多い燃料を使用した場合には、燃焼ガス中の燃焼灰が熱交換を行う上記水管の外周面に付着したり、あるいは燃焼ガス流路に堆積したりして、ボイラ効率を低下させるとともに、甚だしい場合には燃焼ガス流路を塞ぐことによって燃焼そのものを阻害するという問題点があった。
【0007】
特に、上記従来の木質ペレット焚き蒸気ボイラにあっては、木質ペレットを燃焼室の上部に設けた供給口から投入して燃焼装置によって燃焼させているために、上記木質ペレットの搬送中等に砕けた粒子径の細かいものが、炉床まで落下せずに燃料ガスと同伴して、未燃のまま排出されてしまうという問題点がある。
【0008】
加えて、燃焼灰も燃焼ガスに同伴して排気ガスの出口まで搬送されるために、当該排ガス中に混じった未燃分が多く、この結果煙道中で上記未燃分によってスートファイアを起こしたり、あるいは煙突から火の粉が飛散したりする問題点も生じる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、バイオマス燃料を燃料源として用いた場合においても、燃焼灰に起因するボイラ効率の低下や燃焼ガス流路の閉塞といった弊害が生じることを抑制することが可能になる貫流ボイラを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の貫流ボイラは、内部に燃焼室が形成される燃焼炉と、この燃焼炉に接続された排ガス通路と、上記燃焼炉の上下部に各々配置された上部ヘッダーおよび下部ヘッダーと、これら上部ヘッダーおよび下部ヘッダーに各々上下端部が接続され、上記燃焼炉の内壁に沿って間隔をおいて設けられるとともに平板状のフィンによって互いに連結された複数本の外側水管からなる環状の外側水管群と、上部ヘッダーおよび下部ヘッダーに各々上下端部が接続され、上記外側水管群の内側に間隔をおいて設けられるとともに平板状のフィンによって互いに連結された複数本の内側水管からなる環状の内側水管群とを備えてなり、上記内側水管群の上記内側水管間に第1の開口部を形成することにより、上記内側水管群と外側水管群との間に上記燃焼室に連通する燃焼ガス流路を形成し、かつ上記外側水管群の上記外側水管間に上記燃焼ガス流路と上記排ガス通路とを連通させる第2の開口部を形成するとともに、少なくとも上記外側水管の下端部に、上記下部ヘッダーとの接続部から上方に向けて漸次上記内壁側に向かうR部を形成したことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記R部の上記外側水管間に、第3の開口部を形成し、当該第3の開口部の下方に、灰・煤受けスペースを形成したことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記排ガス通路の下流側に、上記下部ヘッダーへの給水を予熱するエコノマイザを設けてなり、かつ当該エコノマイザは、上下端部が閉じられた円筒状をなし、上部に上記排ガス通路が接続される本体と、この本体の内側に間隔を形成して配置され、下端部が上記本体内の下部に開口するとともに、上端部が上記本体から外方に延出されて排ガス管となる筒状の内管とを備え、上記本体と上記内管との間に、上下方向に螺旋を描く上記給水の予熱管が配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、上記排ガス通路は、上記本体の上部であって、かつ当該本体の接線方向に接続されていることを特徴とするものであり、さらに請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、上記本体は、少なくともその下部が、上方から下方に向けて内径が漸次小さくなるテーパー状に形成され、かつ下端部に灰受け箱が連結されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜4のいずれかに記載の発明によれば、少なくとも外側水管の下端部に、下部ヘッダーとの接続部から上方に向けて漸次上記内壁側に向かうR部を形成しているために、内側水管群と外側水管群との間に形成される燃焼ガス流路の流路幅を、従来よりも一段と広く採ることができる。この結果、上記燃焼ガス流路における燃焼ガスの流速を遅くして、当該燃焼ガス流路に流入した燃焼ガスから、同伴した燃焼灰を落下させることができ、よって上記燃焼灰が熱交換部である内側水管群や外側水管群の表面に付着したり、あるいは燃焼ガス流路を塞いたりすることを未然に防止することができる。
【0015】
この際に、特に請求項2に記載の発明によれば、外側水管の下端部に形成したR部間に第3の開口部を形成するとともに、当該第3の開口部の下方に、灰・煤受けスペースを形成しているために、落下する燃焼灰を上記第3の開口部から、灰・煤受けスペースに落下させて捕集することができる。このため、燃焼灰が燃焼ガスに同伴して、煙道中でスートファイアを起こしたり、煙突から火の粉が飛散したりすることも防ぐことが可能になる。
【0016】
ところで、この種の貫流ボイラの排ガス通路の下流側に、当該排ガスの熱を利用して給水を予熱するエコノマイザを設ける場合に、上記給水の予熱管を螺旋状(コイル状)に形成して円筒状の排ガスの流路内に設置すると、当該予熱管の中央空間内を通過する排ガスは、何等熱交換に寄与することなく通過してしまうために、効果的に上記排ガスの熱を利用することが難しい。また、上記予熱管のコイル直径を小さくするにしても、予熱管が扁平化してしまうために限界がある。
【0017】
この点、請求項3に記載の発明においては、排ガス通路の下流側に給水を予熱するエコノマイザを設けた場合に、エコノマイザを、円筒状の本体と筒状の内管との2重管構造とし、これら本体と内管との間に予熱管を上下方向に螺旋を描くように配管し、かつ本体の上部に排ガス通路を接続するとともに、内管の下端部を本体の下部に開口させてその上端部を本体から外方に延出させた排ガス管としている。
【0018】
このため、排ガス通路から送られてくる燃焼ガスは、本体の上部から内管との間に導入され、旋回流となって下方へと流れる過程において、予熱管と熱交換して内部の給水を予熱するために、排ガスが直線流である場合と比較して、一層伝熱効率を高めることができ、よって効率的に上記給水を予熱することができる。しかも、予熱管を、扁平化しない直径に曲げ加工して、上下方向への螺旋形状とすることにより、所望とする伝熱面積を確保することができ、かつスペースの無駄なく、上記本体と内管との間に設置することができる。
【0019】
加えて、上記燃焼ガスに同伴した燃焼灰や煤を、上記旋回流による遠心力および内管の下端部から上方へと流れ方向が変化する際の下方への速度成分によって、本体の内壁から下方へと落下させて分離することができる。
【0020】
この結果、燃焼灰が燃焼ガスに同伴して、排ガス管から下流側の煙道において、スートファイアを起こしたり、煙突から火の粉が飛散したりすることを、一層確実に防止することが可能になる。
【0021】
この際に、特に請求項4に記載の発明のように、上記排ガス通路を、上記本体の上部の接線方向に接続すれば、円滑に上記旋回流を生じさせることができるとともに、さらに請求項5に記載の発明のように、上記本体の少なくとも下部を、上方から下方に向けて内径が漸次小さくなるテーパー状に形成すれば、所謂サイクロン効果によって、一段と燃焼灰や煤の分離効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る貫流ボイラの一実施形態を示す全体の縦断面図である。
【図2】図1のA−A線視した横断面図である。
【図3】図1のエコノマイザの要部を拡大して示す縦断面図である。
【図4】図3の横断面図である。
【図5】図2のX部の正面図である。
【図6】図2のY部の正面図である。
【図7】本発明の他の実施形態における上下部ヘッダーと外側水管および内側水管との形状を示す縦断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態における上下部ヘッダーと外側水管および内側水管との配置を模式的に示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態におけるエコノマイザを示す縦断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態におけるエコノマイザを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図6は、本発明に係る貫流ボイラの一実施形態を示すもので、この貫流ボイラは、天井部が塞がれた円筒状の燃焼炉1と、この燃焼炉1の底部に設けられた燃焼装置2と、この燃焼装置2に木材をチップ状に加工したバイオマス燃料を供給する燃料供給装置3と、燃焼炉1から燃焼ガスを排出する排ガス通路4と、この排ガス通路4の下流側に設けられたエコノマイザ5とから概略構成されたものである。
【0024】
ここで、燃焼装置2の中央部には、円筒状の燃料導入管6が配置されており、この燃料導入管6の外周に、大気に開放された下方から燃焼炉1内に燃焼一次空気を流入させるための流路7が形成されている。また、この燃料導入管6の外周部上方には、耐火煉瓦8が円環状に配置されるとともに、当該耐火煉瓦8の外周には、燃焼二次空気を噴出させるための空気噴出管9が立設されている。そして、燃料導入管6の下端部が、燃料供給装置3に接続されている。
【0025】
この燃料供給装置3は、上記バイオマス燃料が投入される燃料ピット10と、一端部にこの燃料ピット10の下端部が接続されるとともに、他端部に燃料導入管6の下端部が接続されたストーカーボックス11と、このストーカーボックス11内に回転自在に設けられて燃料ピット10から供給される固形燃料を燃料導入管6へと送る螺旋翼を備えたストーカースクリュー12と、このストーカースクリュー12の回転軸12aを回転駆動するギアモータ13とから構成されている。以上により、この貫流ボイラにおいては、底部からバイオマス燃料を供給する、いわゆる下込め式になっている。
【0026】
他方、燃焼炉1は、内部に燃焼室14が形成されるとともに、外周部が断熱材15によって覆われており、その側面に上記排ガス通路4が接続されている。そして、この燃焼炉1の下部には、円環状の下部ヘッダー16が配置されるとともに、当該下部ヘッダー16と対向する上部には、同径の円環状の上部ヘッダー17が設けられている。
【0027】
さらに、これら下部ヘッダー16および上部ヘッダー17には、鉛直方向に配設された複数本の外側水管18および内側水管19の上下端部が接続されている。
ここで、複数本の外側水管18は、燃焼炉1の断熱材15の内壁に沿って円周方向に等間隔をおいて配管されており、隣接する外側水管18同士は、帯板状のフィン20によって接続されている。これにより、複数本の外側水管18とフィン20とからなる外観略円筒状の外側水管群21が形成されている。
【0028】
そして、各々の外側水管18は、下端部に、下部ヘッダー16との接続部から上方に向けて漸次断熱材15に向かうR部18aが形成されるとともに、上端部に、上部ヘッダー17との接続部から下方に向けて漸次断熱材15に向かうR部18bが形成されている。
【0029】
これに対して、各々の内側水管19は、直管によって形成されており、外側水管群21の内側に円周方向に等間隔をおいて配置されている。そして、これら内側水管19も、隣接するもの同士が帯板状のフィン22によって接続されている。これにより、複数本の内側水管19とフィン22とからなる外観略円筒状の内側水管群23が形成されている。
この結果、外側水管群21と内側水管群23との間には、燃焼ガス流路24が形成されている。
【0030】
そして、図2および図5に示すように、排ガス通路4の接続部の近傍に位置する3本の内側水管19の上部間には、燃焼室14と燃焼ガス流路24とを連通させる開口部(第1の開口部)25が形成されている。また、排ガス流路4の接続部に臨む3本の外側水管18の中央部間には、燃焼ガス流路24と排ガス流路4を連通させる開口部(第2の開口部)26が形成されている。
【0031】
さらに、これら開口部25、26間に位置する外側水管18と内側水管19との間には、上記開口部25、26が直接的に連通することを阻止する帯板状の壁部27が設けられている。これにより、燃焼室14から燃焼ガス流路24のほぼ全周を回って排ガス流路4に至る燃焼ガスの流れ経路が形成されている。
【0032】
また、燃焼炉1の最下部外周には、全周にわたって灰・煤受けスペース28が形成されている。そして、図6に示すように、この灰・煤受けスペース28に露出する外側水管18の下部およびR部18a間には、フィンが設けられないことにより、開口部(第3の開口部)29が形成されている。
【0033】
他方、排ガス流路4の下流側に接続されたエコノマイザ5は、図3および図4に示すように、上下端部が閉塞された円筒状の本体30と、この本体30内に設けられた円筒状の内管31とによって2重管構造となっている。そして、これら本体30と内管31との間に、上下方向に2重の螺旋を描くようにして、予熱管32が配管されている。なお、図中符号32aは、予熱される給水の入口管であり、32bは出口管であって、出口管32bが燃焼炉1内に下部ヘッダー16に接続されている。
【0034】
また、排ガス通路4は、本体30の上端部において、当該本体30の接線方向に接続されている。さらに、内管31は、下端部が本体30の下部に開口するとともに、上部が本体30の天板を貫通して排ガス管33として外部に引き出されている。そして、排ガス管33の下流側に、排ガスファン34が設けられている。
【0035】
以上の構成からなるバイオマス燃料炊きの貫流ボイラにおいては、排ガスファン34の吸引力によって、燃焼装置2の底部から燃焼一次空気を導入しつつ、燃料ピット10に投入されて燃料供給装置3により燃料導入管6へと送られてくるバイオマス燃料を燃焼させる。また、これと併行して、空気噴出管9からから燃焼室14の中央方向と周方向へと燃焼二次空気を噴出させることにより、上記燃焼ガスを、燃焼室14内において旋回流となって上昇させる。これにより、燃焼室14内における燃焼ガスの滞留時間が大幅に長くなり、よって未燃ガス、炎および燃焼空気を効率的に混合することができる。なお、燃焼装置2において燃焼したバイオマス燃料の灰は、下方の灰受け箱35へと排出される。
【0036】
次いで、燃焼室14内を上昇した燃焼ガスは、内側水管群23の内側水管19間に形成された開口部25から燃焼ガス流路24に流入し、内側水管群23と外側水管群21との間のほぼ全周を流れて、エコノマイザ5によって予熱された給水をさらに加熱し、蒸気を発生させる。この際に、燃焼ガス流路24において、燃焼ガスに同伴した燃焼灰および煤は、外側水管群21に沿って落下し、外側水管群21の下部に形成された開口部29から灰・煤受けスペース28に捕集される。このようにして灰・煤受けスペース28に落下した燃焼灰や煤は、掃除口28aから清掃除去される。
【0037】
そして、燃焼ガス流路24内を流れた燃焼ガスは、外側水管群21に形成された開口部26から排ガス通路4へと排出され、下流側のエコノマイザ5における本体30と内管31との間に、接線方向から導入される。これにより、燃焼ガスは、本体30と内管31との間を、螺旋を描きながら下方へと流れることにより、予熱管32内の給水を予熱する。そして、最終的に内管31の下端部から当該内管31の内部を上昇して排ガス管33へと吸引されて行く。
【0038】
この際に、上記燃焼ガスは、本体30と内管31との間を旋回流となって下方へと流れる過程において、予熱管32と熱交換して内部の給水を予熱するために、効率的に上記給水を予熱することができる。これにより、予熱管32の大きさ(伝熱面積)を3割程度小型化することができる。加えて、上記燃焼ガスに同伴した燃焼灰や煤を、上記旋回流による遠心力および内管31の下端部から上方へと流れ方向が変化する際の下方への速度成分によって、本体30内管の内壁から下方へと落下させて分離することができる。
【0039】
以上のように、上記構成からなる貫流ボイラによれば、バイオマス燃料を下込め式の燃焼装置2によって燃焼させるとともに、燃焼二次空気によって未燃分の燃焼を促進することができることに加えて、外側水管18の下端部にR部を形成することにより、内側水管群23と外側水管群21との間に形成される燃焼ガス流路24の流路幅を、従来よりも一段と広く採ることができるために、燃焼ガス流路24における燃焼ガスの流速を遅くして、同伴した燃焼灰を落下させることができ、よって燃焼灰が熱交換部である内側水管群23や外側水管群21の表面に付着したり、あるいは燃焼ガス流路を塞いたりすることを未然に防止することができる。
【0040】
しかも、外側水管18の下端部に形成したR部18a間に、開口部29を形成し、この開口部29の下方に、灰・煤受けスペース28を形成しているために、燃焼ガス中から落下する燃焼灰を、円滑に開口部29から灰・煤受けスペース28に落下させて捕集することができる。
【0041】
さらに、燃焼炉1から排出された燃焼ガスを2重管構造のエコノマイザ5に送って、下方への旋回流を生じさせつつ予熱管32と熱交換を行わせているために、燃焼ガス中に残存した燃焼灰や煤も、このエコノマイザ5において分離・捕集することができ、よって排ガス管から下流側の煙道において、スートファイアを生じたり、煙突から火の粉が飛散したりすることも、確実に防止することができる。
【0042】
なお、上記実施の形態においては、外側水管18の下端部に、下部ヘッダー16との接続部から上方に向けて漸次断熱材15に向かうR部18aを形成し、かつ上端部に、上部ヘッダー17との接続部から下方に向けて漸次断熱材15に向かうR部18bを形成することにより、内側水管群23との間に流路幅の広い燃焼ガス流路24を形成した場合についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
すなわち、図7(a)に示すように、外側水管18の下端部のみに上記R部18aを形成し、上端部分を直管として上部ヘッダー17に接続するとともに、内側水管19の上端部に、上部ヘッダー17との接続部から下方に向けて漸次燃焼室14の中央部側に向かうR部19bを形成することによっても、同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
また、図7(b)に示すように、外側配管18および内側配管19の上下端部に、それぞれ同様のR部18a、18b、19a、19bを形成すれば、より一層流路幅の広い燃焼ガス流路24を形成することが可能になる。
【0045】
また、本実施形態においては、円筒状の燃焼炉1に、円環状の上部ヘッダー17および下部ヘッダー16を設けたものに適用した場合について説明したが、図8に示すように、角筒状の燃焼炉(図示を略す。)の両側上下部に、各々直管状の上部ヘッダー17aおよび下部ヘッダー16aが設けられた貫流ボイラに対しても、同様に適用することが可能である。
【0046】
さらに、エコノマイザ5の構造についても、上記実施形態に示したものに限定されるものではない。
例えば、上記エコノマイザ5に代えて、図9に示すような、本体30の下部に上方から下方に向けて内径が漸次小さくなるテーパー部30aを形成するとともに、このテーパー部30aの下端部に灰受け箱36を連結したエコノマイザ37を用いることもできる。
【0047】
このようなエコノマイザ37を用いた貫流ボイラによれば、予熱管32における所望の予熱効果とともに、本体30に形成したテーパー部30aによって、所謂サイクロン効果によって、一段と燃焼灰や煤の分離効果を向上させることができ、さらに分離された燃焼灰等を直接的に灰受け箱36において捕集することができるという効果も得られる。
さらに、図10に示すように、上記本体30におけるテーパー部30aの長さ寸法を大きくしたエコノマイザ38によれば、一層燃焼灰や煤の捕集効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
木材チップやペレット等の固形のバイオマス燃料を燃焼させて蒸気を発生させる貫流ボイラとして利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 燃焼炉
2 燃焼装置
3 燃料供給装置
4 排ガス通路
5、37、38 エコノマイザ
14 燃焼室
16 下部ヘッダー
17 上部ヘッダー
18 外側水管
18a、18b、19a、19b R部
19 内側水管
20、22 フィン
21 外側水管群
23 内側水管群
24 燃焼ガス流路
25 開口部(第1の開口部)
26 開口部(第2の開口部)
28 灰・煤受けスペース
29 開口部(第3の開口部)
30 本体
30a テーパー部
31 内管
33 排ガス管
36 灰受け箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に燃焼室が形成される燃焼炉と、この燃焼炉に接続された排ガス通路と、上記燃焼炉の上下部に各々配置された上部ヘッダーおよび下部ヘッダーと、これら上部ヘッダーおよび下部ヘッダーに各々上下端部が接続され、上記燃焼炉の内壁に沿って間隔をおいて設けられるとともに平板状のフィンによって互いに連結された複数本の外側水管からなる環状の外側水管群と、上部ヘッダーおよび下部ヘッダーに各々上下端部が接続され、上記外側水管群の内側に間隔をおいて設けられるとともに平板状のフィンによって互いに連結された複数本の内側水管からなる環状の内側水管群とを備えてなり、
上記内側水管群の上記内側水管間に第1の開口部を形成することにより、上記内側水管群と外側水管群との間に上記燃焼室に連通する燃焼ガス流路を形成し、かつ上記外側水管群の上記外側水管間に上記燃焼ガス流路と上記排ガス通路とを連通させる第2の開口部を形成するとともに、上記外側水管の下端部に、上記下部ヘッダーとの接続部から上方に向けて漸次上記内壁側に向かうR部を形成したことを特徴とする貫流ボイラ。
【請求項2】
上記R部の上記外側水管間に、第3の開口部を形成し、当該第3の開口部の下方に、灰・煤受けスペースを形成したことを特徴とする請求項1に記載の貫流ボイラ。
【請求項3】
上記排ガス通路の下流側に、上記下部ヘッダーへの給水を予熱するエコノマイザを設けてなり、かつ当該エコノマイザは、上下端部が閉じられた円筒状をなし、上部に上記排ガス通路が接続される本体と、この本体の内側に間隔を形成して配置され、下端部が上記本体内の下部に開口するとともに、上端部が上記本体から外方に延出されて排ガス管となる筒状の内管とを備え、上記本体と上記内管との間に、上下方向に螺旋を描く上記給水の予熱管が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の貫流ボイラ。
【請求項4】
上記排ガス通路は、上記本体の上部であって、かつ当該本体の接線方向に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の貫流ボイラ。
【請求項5】
上記本体は、少なくともその下部が、上方から下方に向けて内径が漸次小さくなるテーパー状に形成され、かつ下端部に灰受け箱が連結されていることを特徴とする請求項4に記載の貫流ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−255887(P2010−255887A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104332(P2009−104332)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(591032954)株式会社巴商会 (9)
【Fターム(参考)】