説明

貯湯器

【課題】本発明の課題は、貯湯タンクと、外層部を被覆する保温具からなる貯湯器において、該保温具に用いられる断熱材の飛散防止性、脱気梱包性、取り扱い作業性などに優れた貯湯器を提供することである。
【解決手段】金属製の貯湯タンクの外層部を、袋に収納された断熱材で被覆されてなる貯湯器において、該断熱材が、主に繊径0.1〜15μmの無機質繊維成形体からなり、該袋が、通気性を有する布帛と、非通気性のフイルムからなり、袋全面積に対して、布帛面積が5%以上70%以下で構成され、且つ、袋の端部接合強度が1N/25mm以上であることを特徴とする貯湯器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯器に関する。更に詳しくは、お湯を貯蔵する金属製の貯湯タンクを、通気性の布帛と非通気性のフイルムからなる袋に断熱材を収納した保温具で被覆された貯湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石綿、ロックウール、グラスウール、ガラス繊維などは、不燃性、保温性、価格面などの優れた特徴から断熱材として広く利用されている。
しかし、スリット加工、穴あけ加工、裁断加工などの取り扱い作業中に、無機繊維が空気中に飛散し、作業者の肌に接触すると、チクチクするなどの作業性、環境問題などが生じた。その対策として、飛散防止用ポリエチレンフイルムなどが使用されている。上記の問題点は、非通気性フイルムの袋に断熱材を入れることで防止できるが、脱気梱包ができず嵩高い袋となり、フイルムで断熱材を挟むことにより飛散が完全には防止できないが、少なくすることで対応している状況である。
また、貯湯器の保温対策として、貯湯器形状に成型加工した、ポリスチレン樹脂の発泡成型体が使用されている。この対策は、保温性には優れているが、貯湯器形状が変わると、金型が必要となるなどの費用がかかること、嵩高なことで、大きな作業場所を要し、且つ、輸送費用が高くなるなどの問題がある。
【0003】
特許文献1には、有機繊維不織布と無機繊維マットを重ね、有機繊維側からニードルパンチ加工して、無機繊維の飛散防止がなされている。これによると、緻密化された断熱材で成形加工性等が向上するが、断熱材の飛散防止が改善できないことが問題である。
ガラス繊維の飛散防止の表面材として、アスベスト紙やアスファルト含浸紙などが使用されていたが環境上および衛生上の問題が懸念され、使用が限定されるという問題がある。
特許文献2には、アルミナゾルを紙の生産時に混抄することが提案されているが、アルミナの歩留まりに限界があり、難燃性の効果が不十分であることが問題となる。
特許文献3には、シリコーン樹脂を用いることが提案されているが、難燃性を充分得る為には、配合量を多くしなければならないことなどが問題である。
特許文献4は、難燃性の無機粉体とバインダーの併用が提案されている。難燃性を充分にするためには、付着量が多くなることとなり、風合いが硬くなるなどの問題がある。
更に、難燃性を得る目的で、熱可塑性合成繊維不織布に難燃剤を付与することが考えられるが、銅製、アルミ製、鉄製などの鋼管の断熱材に使用した場合、腐食するなどの問題が生じた。
【0004】
【特許文献1】特開平11−221872号公報
【特許文献2】特開昭57−205600号公報
【特許文献3】特開昭54−068470号公報
【特許文献4】特許第3256019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記従来の問題を解決することである。
すなわち、高温のお湯を貯槽するための金属製貯湯タンクの外層部を、断熱材を袋状物に収納した通気性を有する保温具で被覆した貯湯器であり、従って、該保温具が、高温の保温性に優れ、無機質繊維の飛散防止でき、取り扱い作業性、輸送梱包性に優れた保温具を用いた貯湯器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、金属製貯湯タンクの外層部を、通気性を有する布帛と遮蔽性を有するフィルムとを特定の占有割合とした袋状物に断熱材を収納した保温具で被覆することで、断熱材の飛散防止性に優れ、作業性、保温性に優れる、貯湯器を見出し、本発明に到達した。本願で特許請求される発明は、以下の通りである。
【0007】
1.金属製の貯湯タンクの外層部が、断熱材を袋状物に収納した保温具で被覆されてなる貯湯器であって、該断熱材が、繊径0.1〜15μmの無機質繊維成形体からなり、該袋状物が、通気性を有する布帛と、非通気性のフイルムとからなり、布帛の占有面積が5〜70%の範囲であり、該袋状物の端部接合強度が1N/25mm以上であることを特徴とする貯湯器。
2.前記袋状物において、布帛の通気性が10〜400cc/cm/secであり、非通気性フィルムの厚みが10〜100μmであることを特徴とする上記1に記載の貯湯器。
3.前記袋状物において、布帛が不織布であり、構成繊維の径が1〜30μmであり、目付が10〜100g/mであることを特徴とする上記1又は2に記載の貯湯器。
4.前記袋状物において、布帛が難燃性を有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の貯湯器。
5.前記不織布がポリエステル系長繊維不織布からなることを特徴とする上記3に記載の貯湯器。
【0008】
6.前記袋状物において、袋端部がホットメルト系接着剤で接合されていることを特徴とする上記3に記載の貯湯器。
7.前記無機質繊維成形体の嵩密度が、5〜300kg/mであることを特徴とする上記1〜6のいずれか1項に記載の貯湯器。
8.前記無機質繊維成形体が、ロックウール、グラスウール、ガラス繊維のニードルマット及びグラスウールとガラス繊維のニードルマットの積層体であることを特徴とする上記1〜7のいずれか1項に記載の貯湯器。
9.前記無機質繊維成形体の厚みが1〜300mm、幅5〜2000mm、長さ10〜40000mmに成形されていることを特徴とする上記1〜8のいずれか1項に記載の貯湯器。
10.前記無機質繊維成形体が、少なくとも一箇所に丸、四角、三角及び異形形状の部分打ち抜き加工、部分スリット加工が施され、部分的加工個所の端部周囲が、前記フイルムで密封されていることを特徴とする上記1〜9のいずれか1項に記載の貯湯器。
【発明の効果】
【0009】
本発明の貯湯器は、金属製の貯湯タンクの外層部を保温具で被覆してなり、該保温具は、断熱材を通気性の布帛と非通気性のフイルムからなる袋に収納、密封包装したものである。従って、繊維の飛散が防止でき、且つ、保温性に優れていることで、電気温水器、ガス温水器、エコ給湯器、魔法瓶などの貯湯器に広く用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の貯湯器に用いる保温具は、袋状物に断熱材を収納したものである。具体的には、袋全面積に対して5%以上70%以下からなる通気性を有する布帛と、非通気性のフイルムとの構成からなる袋に、無機質繊維成形体からなる断熱材を収納し、充填密封したものが好ましい。
布帛は、適度な通気性を有し、断熱材が飛散せず、しかも真空脱気することが可能な程度の通気性が好ましい。保温具を真空脱気することで、コンパクト化でき、運搬効率、取り扱い性が格段に向上する。
フィルムは非通気性であり、断熱材を完全に遮蔽し、飛散防止できる。
布帛とフィルムとの占有面積を特定割合にすることで、通気性と遮蔽性に優れる袋状物の形成が可能となる。
【0011】
本発明に用いる袋の具体的な構成としては、非通気性のフイルムの少なくとも1箇所以上に通気性を有する布帛を設けていることである。例えば、袋全面積に対して、5%以上70%以下、好ましくは、10〜60%が通気性を有する布帛の構成とする。
布帛の面積率が5%未満では、袋の通気性が低下し、断熱材の収納時に、脱気梱包性が低下し、袋内部の空気が多くなり嵩高な袋体となり、取り扱い性が低下し、脱気梱包時に、破れなどが生じ易くなる。一方、70%超えると、通気性は大きくなるが、脱気梱包性は向上するが、柔軟性、被覆性、価格などが問題となる。
【0012】
本発明に用いる布帛は、10〜400cc/cm/sec、好ましくは20〜350cc/cm/secの通気性を有するものであればよく、不織布、メッシュ状物、ワリフ、テープ状クロス、ネット、織物、編物などが好ましく用いられる。より好ましくは、取り扱い性、断熱材の遮蔽性、から不織布や織編み物である。特に、切断面の処理などの必要がないなどの取り扱い性などから不織布が好ましい。
通気性が10cc/cm/sec未満では、脱気梱包時の圧縮などのよる破れ、及び、脱気時間が多くかかる。一方400cc/cm/secを超えると、脱気時間は、短縮できるが、飛散防止性が低下する。
【0013】
本発明の袋状物に用いる不織布としては、繊径1〜30μm、好ましくは7〜25μmの短繊維、長繊維、及びその組み合わせなどからなり、強度、通気性、形状の追従性を有する柔軟性に優れることが必要である。
不織布の製造方法は、合成樹脂を溶融さる溶融紡糸法のスパンボンド方式、バインダー繊維を混繊させたサーマルボンド方式、柱状流交絡方式、ニードルパンチ方式、フラッシュ紡糸方式、メルトブロー方式などの単独、又は2種以上により得られる。
不織布の構成繊維としては、特に限定するものでないが、薄くて強度に優れ、被覆性に優れていることであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミド繊維などのポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンン、共重合ポリプロピレンなどのオレフイン系繊維、レーヨン繊維、セルロース繊維、アクリル繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステルなどの低融点成分と、芯がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6などの高融点成分殻なる芯鞘構造、サイドバイサイド構造などの複合繊維などの合成繊維が挙げられ、その中ではポリエステル系長繊維が、耐熱性、難燃性、製袋加工性に優れ、強度が大きく、熱加工性に優れる点から、好ましく用いられる。
【0014】
本発明の袋状物に用いる布帛においては、難燃性があることが好ましく、保温具が燃焼した時に燃え広がらず、自己消化性を有することが好ましい態様である。布帛の難燃性は、原料の樹脂に難燃剤を練り込む原料難燃方法、又は、布帛に難燃剤を塗布させる方法がある。金属製の貯湯タンクに腐食を生じさせなければ特に限定されないが、練り込みタイプのほうが繊維表面に難燃材が露出せず、腐食防止の点で好ましい。
【0015】
例えば、難燃剤としては、トリメチルホスフエート、トリエチルホスフエート、トリブチルホスフエート、トリフエニルホスフエート、トリクレジルホスフエートなどの非ハロゲンリン酸エステル類、ポリホスフエート、芳香族ポリホスフエートなどの特殊リン酸エステル類、含ハロゲンリン酸エステル類、デカブロモジフエニルオキサイド、オクタブロモジフエニルオキサイドなどのデカブロ系などの臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、燐酸グアニジン誘導体、燐窒素系化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシュウムなどの無機充填剤などの1種又は2種以上を0.5〜30wt%、好ましくは0.1〜20wt%添加して用いられる。特に、3−メチルホスフイニコプロピオン酸エステルなどの非ハロゲンリン酸エステル類0.3〜3wt%含有させたジメチルテレフタレート・エチレングリコールのエステル共重合体などが好ましく用いられる。
更に、アクリル系難燃性繊維、エステル系難燃性繊維などの混合などにより、難燃性を調整することが好ましく用いられる。
【0016】
本発明に用いられる長繊維不織布は部分熱圧着することで、薄くて、柔軟性、強度に優れたの布帛となる。例えば、凹凸を有するエンボスロールと平滑ロール間で加熱、圧着して接合される。加熱温度は、繊維の軟化温度以上の温度から融点以下の温度範囲である。しかし、低融点繊維の熱劣化を考慮した場合、上下ロールの温度差を150℃以下、好ましくは130℃以下が好ましい。熱圧着の圧力は10〜1000kPa/cm、好ましくは50〜700kPa/cmである。
【0017】
長繊維不織布の部分熱圧着率は、5〜35%が好ましく、より好ましくは7〜30%である。エンボス模様は、丸状、楕円状、菱形状、円柱状、四角状などの、平行均等配置、千鳥状配置などの均等配置することが好ましい。熱圧着部一個の面積は、0.3〜1.5mm、好ましくは、0.4〜1.2mmであり、熱圧着の間隔は、0.3〜3mm、好ましくは、0.5〜2.5mmの均等配置させる。
部分熱圧着率が10%未満では、接合面積が少なくなり、磨耗強度が低下する。一方、30%超えると、磨耗強度が高くなるが、風合いがペーパーライクとなる。
本発明の布帛の目付けは、10〜100g/m、好ましくは、15〜80g/mである。目付けが10g/m未満では、繊維の緻密性が低下して、間隙がひろくなり、被覆しても、断熱材の飛散防止性が低下する。一方、100g/m超えると、保温材の飛散防止性が向上するが、風合いが硬くなり、厚みが大きくなり、袋体の製袋加工性が低下する。
【0018】
本発明の袋に用いる非通気性のフイルムは、厚みが10〜100μm、好ましくは15〜70μmであり、無機質繊維の飛散が防止でき、充填作業、梱包作業、輸送などで破れないこと、及び、布帛との製袋作業性に優れていることが必要である。
従って、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフイン共重合体、その他のエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、オレフイン系樹脂として、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、6−ナイロン、66−ナイロン、ポリアミド樹脂などの一種、2種以上を組み合わせた熱可塑性樹脂が用いられる。
本発明の袋に用いる非通気性のフイルムは難燃性を有することが好ましい。従って、樹脂に難燃剤を0.1〜30wt%添加し、難燃性のフイルムにする事がこのましい。例えば、臭素系難燃剤、メラミン系難燃剤、燐酸グアニジン誘導体、燐窒素系化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシュウムなどの無機充填剤などの1種又は2種以上が用いられる。
【0019】
本発明に用いる袋は、前記通気性の布帛が、袋全面積に対して、5%以上、70%以下、好ましくは、10%〜60%である。従って、袋形状としては、断熱材が収納できれば形状は限定されないが、例えば、筒状、3方シール平袋、サイドガセット袋などが用いられる。具体的事例として、(1)非通気性の片面フイルム、他面に通気性布帛の2枚貼り合わせた袋、(2)片面に非通気性フイルム、他面の部分に通気性布帛を接合した非通気性フイルムとの2枚貼り合わせ袋などが選定できる。
【0020】
本発明に用いる袋の製袋加工は、接合方法は特に限定しないが、シール幅を1mm〜20mm、好ましくは、3mm〜15mmで、接合強度が1N/25mm以上、好ましくは、2N/25mm〜100N/25mmである。接合強度が1N/25mm未満では、断熱材の充填作業、及び脱気作業などで破袋するなどの問題が生じ易くなる。
接合方法としては、熱シール、超音波シール、高周波シールなどの融着方式で加工するか、ホットメルト系樹脂、粘着性樹脂などの接着剤方式、ミシン糸などのミシン縫製などが用いられる。
接着剤方式の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、共重合ポリエチレン系樹脂、共重合ポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などの1種又は2種以上の樹脂が用いられる。
【0021】
本発明に用いる保温具には、通気性を有する袋に収納して用いる為、材質、厚み、密度、繊維径などの異なる無機質繊維成形体が選択できる。
本発明に用いる貯湯器の場合は、タンク下部の加熱ヒーターでお湯がタンク上部に溜まるので、タンク上部の温度が高く、タンク下部が低い温度と成っている。例えば、比較的低温領域(0〜70℃)は、嵩密度の小さい保温具の構成とし、高温領域(70〜95℃)では、嵩密度の高いガラス繊維のニードルマットを積層させた保温具の構成を用いることでより効果的な保温性とすることができる。
具体的事例としては、低温領域の保温具は、厚みが、15〜100mm、好ましくは20〜70mm、嵩密度が5〜30kg/m、好ましくは10〜25kg/mである。高温領域としては、厚みが1〜15mm、好ましくは2〜10mm、嵩密度が80〜500kg/m、好ましくは90〜200kg/mの高密度保温具と、低密度保温具とを組み合わせた保温具とすることでより効果的な保温性を得ることができる。
【0022】
本発明に用いる無機質繊維成形体は、繊径0.1〜15μm、好ましくは0.5〜10μmのロックウール、グラスウール、ガラス繊維のニードルマット及びグラスウールとガラス繊維のニードルマットの積層体から構成され、その形状は目的とする貯湯タンクの形状に応じて自由に選択できる。繊径0.1μm以下は、緻密構成であり、保温性が優れるが、繊維の飛散性が多くなり、厚みの保持が難しくなる。一方繊径が15μ超えると、剛性、厚みの保持性が高くなるが、粗構成となり、保温性が低下すなどの問題が生じる。
例えば、厚みが1〜300mm、好ましくは3〜250mmであり、幅が5〜2000mm、好ましくは7〜1500mm、長さ10〜40000mm、好ましくは、20〜35000mmであり、嵩密度が5〜300kg/mであることが好ましい。嵩密度の低い場合は、熱伝導率が低くできるが、厚みの保持性が低下する。一方、嵩密度が大きい場合は、熱伝導率がやや高くなるが、厚みの保持性が向上し、高温領域で熱伝導率がやや低くなる。(温度依存性が嵩密度により異なる、低い嵩密度は、温度依存性がやや高い、一方高い嵩密度では、温度依存性がやや低くなる。)
また、外形は細幅テープ状から、丸、四角、などの形状、広い面積を被覆する形状まで特に形状の限定はない。
【0023】
更に、鋼管、電気部品、電気配線などの取り付け部分を有する貯湯タンクは、保温目的で無機質繊維成形体に成形加工が行われる。例えば、成形加工として、例えば、四角形状、長方形状、丸形状などの少なくとも一箇所に、丸、四角、三角、及び異形形状の部分打ち抜き加工、部分スリット加工及びテープ形状などに成形加工が施される。従って、断熱材の形状に特に限定されないが、無機質繊維成形体の周囲は全て、不織布の端部を接合して密封被覆されていることが必要である。
部分的にスリット加工、打ち抜き加工した個所の補修方法は、例えば、断熱材の厚み+接着部を有する大きさの筒状のフイルム、又は不織布を補修個所に装着して、上下から加熱、又は接着性シートにより接着して、密封包装される。
上記の成形加工においては、貯湯器の現場組立工事に先だって、予め、事前に、別の場所で成形加工して袋状物に収納加工し、保温具として脱気梱包して輸送すると、保温具の輸送時、現場工事の取り扱い性が格段に向上する。さらに、貯湯器の現場組立工事での煩雑性がなく、断熱材の飛散が減少し、環境対策上に優れた効果を発揮する。
【0024】
本発明の貯湯器に用いる保温具は、通気性を有する袋に収納された嵩高な無機質繊維成形体である。従って、嵩高な状態で保管、及び輸送すると、保管スペースが多く必要となり、且つ、輸送コストが高くなるなどの問題が生じる。その対策として、圧縮梱包、又は、脱気梱包することで、保管スペースが極端に小さくでき、且つ、輸送コストを下げられる。
具体的には、保温具の袋体を3〜50枚重ねて、加圧することで、コンパクトに圧縮でき、更に、非通気性のフイルムに入れ、脱気することで、よりコンパクトな梱包ができる。
本発明の貯湯器は、ステンレスなどの金属製タンクの外層部を保温具で被覆される。通常円筒形状のタンクに、厚みの変形が少なく、且つ、隙間がないように密着被覆することが良好な保温性を得るのに必要なことである。
本発明に用いる保温具は、タンク形状に馴染み易い柔軟性を有し、取り付け作業で、紐、粘着テープ、ホチキス、クリップなどの止め具で容易に装着できる。
本発明に用いる収納用袋体の熱伝導率は、高温領域で大きくなり、熱伝導性が向上する。熱伝導率は20℃では、0.02〜0.04Kcal/mh℃の範囲が好ましく、90℃における熱伝導率は、0.03〜0.05Kcal/mh℃の範囲が好ましい。
【実施例】
【0025】
本発明を実施例に基づいて説明する。
測定方法は以下のとおりである。
(1)目付(g/m):縦20cm×横25cmの試料を3カ所切り取り、重量を測定し、その平均値を単位当たりの質量に換算して求める。
(JIS−L−1906)
(2)平均繊維径(μm):顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、10本の平均値で求める。
(3)厚み(mm):荷重10kPaでJIS−L−1906に準拠。
(4)平均みかけ密度(g/cm):目付け/厚みから得た。
(5)通気性:JIS−L−1906フラジュール法に準拠。
(6)発塵性:試料表面を金属棒で叩くことにより発塵させる。次いで、発塵したガラス繊維を吸引ロートに捕集し、捕集繊維を顕微鏡を用いて繊維の本数を測定した。
発塵条件:振とう速度210回/分、時間3分
【0026】
(7)腐食性:銅製金属板を2cm角に切断し、不織布を5cm角2枚切り取り、厚み5mmのガラス板2枚を用いて、ガラス板/不織布/銅板/不織布/ガラス板に重ねて、荷重1kg/cmで、温度65℃×湿度85%の恒温高湿槽で7日間処理し、腐食状態を観察して下記の基準で判定した。
5級:金属片の表面の変色・腐食がまったくない。
4級:金属片の表面の変色が僅かにある。
3級:金属片の表面の変色・腐食が僅かにあるが目立たない。
2級:金属片の表面の変色・腐食が少しある。
1級:金属片の表面の変色・腐食が甚だしい。
【0027】
(8)引張強力(N/5cm):定長引張試験機を用い、試料幅5cm長さ30cmを切り取り、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minで、引張強度をタテ、ヨコ各々3カ所測定し、最大強度(タテ+ヨコ)/2の平均値で示す。
(9)接合強度(N):定長引張試験機を用い、試料幅25mm長さ200mmを切り取り、接合部分を約50mm上下方向に剥離し、180度剥離するように各々取り付け、つかみ間隔100mm、引張速度10cm/minで、剥離強度をタテ、ヨコ各々3カ所測定し最大強度の平均値で示す。
(10)難燃性:JIS−L−1091 A−3法(水平法)に準じる。
合格:燃焼長さ10cm以下 残燃時間20秒以下
(11)熱伝導率(Kcal/mh℃):JIS−A−9505件列比較法に準ずる。
【0028】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレートをスパンボンド用紡糸口金から、紡糸温度300℃で平均繊径14μm、目付け50g/m熱可塑性長繊維ウェブを捕集ネット上に形成させ、圧着面積率が、15%エンボスロール、線圧350N/cm、上下温度を230℃/235℃で熱圧着して長繊維不織布を得た。
次いで、厚み30μmの低密度ポリエチレンフイルムと前記長繊維不織布の袋を作った。前記フイルムと不織布を、各々タテ52cm、ヨコ62cmに切りとり、2枚を重ね、3方向の端部1cm内側に、温度120℃、圧力3kg/cmの幅3mmの加熱シールバーで熱シールし、3方シールの袋を得た。不織布の占有面積率は50%である。
前記3方シール袋に、厚み50mm、繊維径3μ、嵩密度12kg/mのグラスウールの断熱材をタテ30cm、ヨコ40cmの四角形状に打ち抜き加工し、得られた無機質繊維成形体を、前記の3方シール袋に収納した後、熱シールで密封包装して本発明の貯湯器に用いる保温具を得た。
得られた保温具の発塵性、腐食性の測定結果を表−1に記載した。
表−1から、本発明の貯湯器に用いる保温具は、発塵性、腐食性、保温性に優れたものであった。
【0029】
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレートをスパンボンド用紡糸口金から、紡糸温度300℃で平均繊径12μm、目付け30g/m熱可塑性長繊維ウェブを捕集ネット上に形成させ、圧着面積率が、25%エンボスロール、線圧350N/cm、上下温度を230℃/235℃で熱圧着して長繊維不織布を得た。次いで、厚み30μmの低密度ポリエチレンフイルムと前記長繊維不織布からなる袋を以下のとおり製造した。
前記フイルムをタテ122cm、ヨコ202cm、タテ122cm、ヨコ142cmとを切り取り、前記不織布をタテ122cm、ヨコ31cmを2枚切り取り、前記フイルムのタテ122cm、ヨコ142cmの両端1cmの部分をフイルムと不織布とを2枚かさねて、1cm内側の部分を幅3mmの熱シールバーで接着させて通気性フイルムを得る。次いで、前記非通気性フイルムと通気性フイルムとを2枚重ねて、端部から内側から1cmの部分に幅3mmで熱シールして3方シール袋を得る。(但し、熱シールは、温度110℃、圧力3kg/cm)不織布の占有面積率は15%である。
前記3方シール袋に、厚み50mm、繊維径3μ、嵩密度16kg/mのグラスウールと、厚み5mm、繊維径7μ、嵩密度120kg/mのガラスニードルマットの断熱材を、各々タテ100cm、ヨコ180cmの四角形状に打ち抜き加工した無機質繊維成形体を、前記の3方シール袋に収納した後、熱シールで密封包装して本発明の貯湯器に用いる保温具を得た。
得られた保温材の発塵性、腐食性の測定結果を表−1に記載した。
表−1から、本発明の貯湯器に用いる保温具は、発塵性、腐食性、脱気梱包性に優れたものであった。
【0030】
[実施例3]
エチレングリコールとジメチレンテレフタレートに、3−メチルホスフイニコプロピオン酸エステルを1.2wt%添加して共重合した難燃性の共重合ポリエチレンテレフタレートをスパンボンド用紡糸口金から、紡糸温度290℃で平均繊径16μm、目付け50g/mの熱可塑性長繊維ウェブを捕集ネット上に形成させ、圧着面積率が、15%エンボスロール、線圧350N/cm、上下温度を220℃/225℃で熱圧着して実施例1の難燃性エステル不織布を得た。
次いで、厚み50μmの窒素化合物のメラニン系難燃剤15wt%添加した低密度ポリエチレンフイルムと前記難燃性長繊維不織布の袋を作った。前記フイルムと不織布を、各々タテ72cm、ヨコ72cmに切りとり、2枚を重ね、3方向のそれぞれの端部から1cm内側を、温度120℃、圧力3kg/cmの幅5mmの加熱シールバーで熱シールし、3方シールの袋を得た。不織布の占有面積率は50%である。
前記3方シール袋に、厚み50mm、繊維径3μ、嵩密度12kg/mのガラスウールの断熱材をタテ50cm、ヨコ50cmの四角形状に打ち抜き加工した無機質繊維成形体を、前記の3方シール袋に収納した後、熱シールで密封包装して本発明の貯湯器に用いる保温具を得た。
得られた保温具の発塵性、腐食性の測定結果を表−1に記載した。
表−1から、本発明の貯湯器に用いる保温具は、発塵性、腐食性、脱気梱包性に優れたものであった。
[実施例4]
タテ30cmヨコ40cm高さ100cmのステンレス製の角形金属タンクに実施例1及び2の保温具を用いて本願発明の貯湯器を作った。この時、実施例2の保温具に、直径7cmの供給パイプ用穴2箇所の打ち抜き加工を行った。その後、厚み30μmの非通気フイルムを用いて打ち抜き穴を補修し、密封包装とした。(直径7cm、長さ15cmの筒状フイルムを用いて、上下それぞれから、表面温度110℃のアイロンで接着した。)
貯湯器に95℃のお湯を一杯入れ、8時間後のお湯の温度を測定した結果は91℃であり、目的とする保温性を有する貯湯器であった。また、その後の目視検査でも問題となる腐食は発生しなかった。
【0031】
[比較例1] 袋のないガラスウールのみ
厚み50mm、繊維径3μ、嵩密度12kg/mのガラスウールの断熱材をタテ50cm、ヨコ50cmの四角形状に打ち抜き加工した無機質繊維成形体を保温具とした。
表−1から保温具の発塵は多く発生し問題であった。
【0032】
[比較例2] 非通気性袋(フイルムのみ)
厚み50mm、繊維径3μ、嵩密度12kg/mのガラスウールの断熱材をタテ50cm、ヨコ50cmの四角形状に打ち抜き加工した無機質繊維成形体を実施例1に用いた非通気性フイルムの袋に収納させた。
表−1から保温具の発塵はないが、嵩高な包装形態となり、作業性、梱包性が問題となった。
【0033】
[比較例3] 布帛面積が5%未満の通気性袋
実施例1の袋で、布帛面積を2%に変えて行った。他は実施例1と同様に行った。
表−1から保温具の発塵はないが、嵩高な包装形態となり、作業性、及び、重ねて圧縮しても、中々袋内の空気が逃げないなどの現象が生じ、脱気梱包に時間が多くかかるなどの問題が生じた。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の貯湯器は、お湯を貯蔵することのできる金属製の貯湯タンクを、袋に断熱材を収納し、充填包装した保温具で外層部を被覆してなる。該断熱材は、グラスウール、ガラス繊維、ロックウールなどの無機質繊維成形体からなり、該袋が、通気性の布帛と非通気性のフイルムで構成され、断熱材の繊維飛散が防止でき、貯湯タンク表面の腐食しないで、且つ、貯湯タンク外層部の被覆取り付け作業が容易であり、保温性に優れて、圧縮梱包、脱気梱包性などの作業性が良好にでき、コンパクト化ができる。
従って、電気温水器、ガス温水器、エコ給湯器、魔法瓶などの貯湯器に広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の貯湯タンクの外層部が、断熱材を袋状物に収納した保温具で被覆されてなる貯湯器であって、該断熱材が、繊径0.1〜15μmの無機質繊維成形体からなり、該袋状物が、通気性を有する布帛と、非通気性のフイルムとからなり、布帛の占有面積が5〜70%の範囲であり、該袋状物の端部接合強度が1N/25mm以上であることを特徴とする貯湯器。
【請求項2】
前記袋状物において、布帛の通気性が10〜400cc/cm/secであり、非通気性フィルムの厚みが10〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の貯湯器。
【請求項3】
前記袋状物において、布帛が不織布であり、構成繊維の径が1〜30μmであり、目付が10〜100g/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯器。
【請求項4】
前記袋状物において、布帛が難燃性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の貯湯器。
【請求項5】
前記不織布がポリエステル系長繊維不織布からなることを特徴とする請求項3に記載の貯湯器。
【請求項6】
前記袋状物において、袋端部がホットメルト系接着剤で接合されていることを特徴とする請求項3に記載の貯湯器。
【請求項7】
前記無機質繊維成形体の嵩密度が、5〜300kg/mであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の貯湯器。
【請求項8】
前記無機質繊維成形体が、ロックウール、グラスウール、ガラス繊維のニードルマット及びグラスウールとガラス繊維のニードルマットの積層体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の貯湯器。
【請求項9】
前記無機質繊維成形体の厚みが1〜300mm、幅5〜2000mm、長さ10〜40000mmに成形されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の貯湯器。
【請求項10】
前記無機質繊維成形体が、少なくとも1箇所に丸、四角、三角及び異形形状の部分打ち抜き加工、部分スリット加工が施され、部分的加工個所の端部周囲が、前記フイルムで密封されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の貯湯器。

【公開番号】特開2009−299967(P2009−299967A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153621(P2008−153621)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【出願人】(507371423)株式会社大和工業所 (2)
【Fターム(参考)】