説明

貯湯式電気温水器

【課題】サーミスタを追加することなく湯の使用を正確に検知することにより「おまかせ節電」を実施する時間帯を的確に設定し、優れた節電効果を得ることのできる貯湯式電気温水器を提供する。
【解決手段】貯湯式電気温水器10は、貯湯タンク11と、給水経路30に設けられた電磁弁19と、貯湯タンク11内の水を加熱するヒータ12と、貯湯タンク11内の湯温を検知するサーミスタ13と、制御手段14と、を備え、制御手段14は、サーミスタ13の検知温度に基づきヒータ12への通電を制御する機能と、湯側スイッチ15h、水側スイッチ15cからの信号に基づいて電磁弁19,20を開閉する機能とを有する。制御手段14は、電磁弁19の開状態を計時するタイマを有し、単位時間当たりの前記タイマの累積時間が少ない時間帯は貯湯タンク11内のヒータ12に対し節電通電が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁を内蔵した比較的小型の貯湯式電気温水器に関する。
【背景技術】
【0002】
洗面台などの下方などに配置される貯湯式電気温水器として、従来、湯を使用する時間帯をマイコンが自動的に記憶し、使用頻度が低い時間帯はタンクの貯湯温度を節電温度(例えば、60℃)に下げることによって節電を行う、いわゆる「おまかせ節電」機能を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−164079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の貯湯式電気温水器の場合、給水源から貯湯タンクへ供給される水の温度が季節の影響などで変動すると、水の供給量と貯湯タンク内の湯温の変化量との関係も変動するため、サーミスタによる温度検知方式では貯湯タンク内の湯の使用量を正確に把握することができない。このため、少量の湯が使用されても節電通電が解除されることがあり、節電効果が低くなるといった不具合が生じる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、サーミスタを追加することなく湯の使用を正確に検知することにより「おまかせ節電」を実施する時間帯を的確に設定し、優れた節電効果を得ることのできる貯湯式電気温水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の貯湯式電気温水器は、貯湯タンクと、給水源からの水を前記貯湯タンクへ供給する給水路に設けられた給水弁と、前記貯湯タンク内の水を加熱する発熱部と、前記貯湯タンク内の湯温を所定の保温温度に保つために前記発熱部への通電を制御する機能及び外部からの信号に基づいて前記給水弁を開閉する機能を有する制御手段と、を備え
前記給水弁の開状態を計時するタイマを前記制御手段に設け、単位時間当たりの前記タイマの累積時間が少ない時間帯は前記貯湯タンク内を前記保温温度より低温に保つために前記発熱部に対し節電通電を行うことを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、サーミスタを追加しなくても、貯湯タンク内の湯の使用を確実に検知することができ、また、湯の使用量が少ない場合は、そのまま節電通電を継続して、節電効果を高めることができる。従って、「おまかせ節電」(節電通電)を実施する時間帯を的確に設定し、優れた節電効果を得ることができる。
【0008】
給水源から貯湯タンクへ供給される水の温度が季節等の影響で変動すると、水の供給量と貯湯タンク内の湯温の変化量との関係が変動するため、従来のサーミスタによる温度検知方式では貯湯タンク内の湯の使用量を正確に把握することができなかったが、本発明は、給水弁の開状態を計時するので、湯の使用量を正確に把握することができる。なお、給水源から貯湯タンクへの給水経路に単位時間当たりに流量を一定に保つ定流量弁を設ければ、給水弁の開状態を計時することによって湯の使用量をさらに正確に把握することができる。
【0009】
ここで、前記給水弁の開弁時に前記貯湯タンクから排出される湯と給水源から供給される水とを混合する混合弁を備えることが望ましい。このような構成とすれば、貯湯タンクに貯留された湯の使用量を抑制しながら所定場所へ給湯することができるため、比較的長時間に渡って、所定の給湯温度を維持することができる。
【0010】
また、前記単位時間よりも長い第二単位時間を前記制御手段に設定し、前記第二単位時間内における前記タイマの累積時間の長短に基づいて、前記節電通電を行うか否かの判断基準となる閾時間を設定することができる。
【0011】
このような構成とすれば、設置場所(利用状況)に適した閾時間を設定することが可能となるため、設置場所(利用状況)に即した優れた節電効果を得ることができる。
【0012】
この場合、前記第二単位時間を24時間に設定し、当該24時間内における前記タイマの累積時間が所定時間より短いときはパーソナル利用と判断し、前記節電通電を行うか否かの判断基準となる前記閾時間をパブリック利用の場合よりも短く設定することが望ましい。
【0013】
このような構成とすれば、人間の生活リズムである24時間を第二単位時間とすることにより、設置場所(利用状況)における使用者の行動パターンを正確に把握することできるため、設置場所(利用状況)に最適な閾時間を設定することができ、節電効果の実効を図ることができる。ここで、「パーソナル利用」とは当該貯湯式電気温水器を、その使用者が限定される建物(例えば、一般の住宅や老人ホーム)に設置したときの利用状態をいい、「パブリック利用」とは当該貯湯式電気温水器を不特定多数が使用する公共施設に設置したときの利用状態をいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、サーミスタを追加せずに、貯湯タンク内の湯の使用を正確に検知することにより「おまかせ節電」(節電通電)を実施する時間帯を的確に設定し、優れた節電効果を得ることのできる貯湯式電気温水器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態である貯湯式電気温水器の構成を示す図、図2は図1に示す貯湯式電気温水器における使用頻度の算出過程を示す図、図3は湯使用状態判定ルーチンを示すフローチャート、図4は節電設定ルーチンを示すフローチャート、図5は閾値設定ルーチンを示すフローチャートである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の貯湯式電気温水器10は、貯湯タンク11と、給水源(図示せず)からの水を貯湯タンク11へ供給する給水経路30に設けられた給水弁である電磁弁19と、貯湯タンク11内の水を加熱する電導発熱部であるヒータ12と、貯湯タンク11内の湯温を検知するサーミスタ13と、制御手段14と、を備えている。制御手段14は、サーミスタ13の検知温度に基づいて、貯湯タンク11内の湯温が所定の保温温度となるようにヒータ12への通電を制御する機能と、湯側スイッチ15h、水側スイッチ15cからの信号に基づいて電磁弁19,20をそれぞれ開閉する機能と、を有する。
【0017】
前述したように、貯湯タンク11へ水を補給するための給水経路30が止水栓17から貯湯タンク11の底部に接続されている。給水経路30の途中には、下流側に向かって定流量弁21,逆止弁18及び電磁弁19が配置されている。また、給水経路30の途中から分岐した混合バイパス経路31の下流側が混合バルブ24に接続されている。定流量弁21は、止水栓17から供給される水の単位時間当たりの流量を一定に保つ機能を有している。
【0018】
貯湯タンク11の上部には湯を流出させるための出湯経路35の基端部が接続され、その下流側は逆止弁22を経由して混合バルブ24に接続されている。また、混合バイパス経路31の途中から分岐したバイパス経路33が逆止弁23を経由して、逆止弁22と混合バルブ24との間の出湯経路35に接続されている。
【0019】
混合バルブ24の下流側から水栓16に向かって吐水経路36が設けられ、逆止弁18と電磁弁19との間の給水経路30から分岐した給水経路32の下流側が電磁弁20を経由して吐水経路36に接続されている。また、前述したように、電磁弁19,20を開閉するための湯側スイッチ15h、水側スイッチ15cが水栓16の近傍に設けられている。
【0020】
貯湯タンク11内の湯が所定温度(例えば、80℃)に保持されている状態で湯側スイッチ15hをONすると電磁弁19が開き、給水経路30を経由して貯湯タンク11の底部へ水が送り込まれるとともに、混合バイパス経路31を経由して混合バルブ24へ水が送られる。給水経路30からの給水によって押し出された貯湯タンク11内の湯が、その上部に接続された出湯経路35を通って流出し、混合バルブ24において混合バイパス経路31からの水と混合された後、適温となった湯が吐水経路36を通って水栓16から吐出される。また、湯側スイッチ15hをOFFすると、電磁弁19が閉止され貯湯タンク11への給水が止まるので、水栓16からの湯の吐出が停止する。
【0021】
このように、湯側スイッチ15hをON、OFF操作すると、貯湯タンク11内の湯と混合バイパス経路31から送給される水とが、混合バルブ24において所定割合で混合されることによって形成された適温の湯が水栓16から吐出、停止される。また、水側スイッチ15cをON,OFF操作すると電磁弁20が開閉し、給水経路30,32及び吐水経路36を経由した水が水栓16から吐出、停止される。
【0022】
一方、貯湯式電気温水器10においては、制御手段14に、電磁弁19の開状態を計時するタイマ(図示せず)が設けられ、単位時間当たりの前記タイマの累積時間が少ない時間帯は貯湯タンク11内の湯温を所定の保温温度(例えば、80℃)よりも低温(例えば、60℃)に保つため、ヒータ12に対し節電通電(以下、「おまかせ節電」という。)が行われる。
【0023】
なお、給水源から貯湯タンク11へ供給される水の温度が季節等の影響で変動すると、水の供給量と貯湯タンク11内の湯温の変化量との関係が変動するため、従来の温度検知方式では貯湯タンク11内の湯の使用量を正確に把握することができなかったが、本実施形態の貯湯式電気温水器10においては、給水弁である電磁弁19の開状態を計時するので、湯の使用量を正確に把握することができる。また、止水栓17からの給水経路30に単位時間当たりの流量を一定に保つ定流量弁21を設けているため、給水弁である電磁弁19の開状態を計時するだけで、湯の使用量を極めて正確に把握することができる。
【0024】
図1に示すように、貯湯式電気温水器10は、電磁弁19の開弁時に貯湯タンク11から排出される湯と、給水源から供給される水と、を混合する混合バルブ24を備えている。従って、貯湯タンク11に貯留された湯の使用量を抑制しながら水栓16へ給湯することが可能となり、比較的長時間に渡って、所定の給湯温度を維持することができる。
【0025】
さらに、制御手段14には、サーミスタ13の検知温度に基づいてヒータ12の通電制御を行う制御回路(図示せず)と、使用頻度を演算、学習するマイコン(図示せず)と、が設けられ、電磁弁19の累積開時間を指標として、使用の有無を判断する。この場合、数日分の情報を学習して使用頻度を時間帯別に算出する。そして、時間帯別の使用頻度に応じて、貯湯タンク11内の湯の沸かし上げ温度を時間帯別に変更する。
【0026】
例えば、図2に示すように、1日(24時間)を32の時間帯に分割して「0.75時間」を単位時間とし、この単位時間ごとの電磁弁19の累積開時間を実績情報として記憶する。そして、8日分の実績情報を蓄積し、これに基づいて、各時間帯を未使用時帯または使用時帯のいずれかに分類する。未使用時帯と判断された時間帯においてはおまかせ節電が実行され、貯湯タンク11内の湯温は低温(例えば、60℃)に保たれ、使用時帯と判断された時間帯は所定の保温温度(例えば、80℃)に保たれる。これに関する詳しい内容については、後述する図3〜図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0027】
従来のおまかせ節電システムの場合、温度調整用及びおまかせ節電用の二つのサーミスタが必要であったが、本実施形態の貯湯式電気温水器10のように、定流量弁21を備え、電磁弁19の開時間を計測する方式とすれば使用した湯の量が正確に把握できるため、節電効果が向上するだけでなく、一つのサーミスタ13のみで機能するので、おまかせ節電用のサーミスタが不要となる。
【0028】
ここで、図3に基づいて、湯使用状態判定ルーチンについて説明する。図3は湯使用状態判定ルーチンを示すフローチャートである。湯使用状態判定ルーチンがスタートすると(S20)、電磁弁19が開いているか否かの判断が行われ(S21)、開放中と判断されたときはタイマT1が動作を開始し(S22)、電磁弁19の開時間を計時し、リターンする(S24)。一方、電磁弁19が開いているか否かの判断(S21)において、閉止中と判断されたときはタイマT1がストップし、積算タイマ1にT1が加算され、積算タイマ2にT2が加算され(S23)、その後、タイマT1がリセットされ(S25)、リターンする(S24)。
【0029】
次に、図4に基づいて、節電設定ルーチンについて説明する。図4は節電設定ルーチンを示すフローチャートである。節電設定ルーチンがスタートすると(S30)、タイマ(図示せず)によって単位時間1が経過しているか否かの判断が行われ(S31)、単位時間1が経過していると判断されたときは積算タイマT1の積算値と閾値との比較が行われる(S32)。ここで、単位時間1としては、前述した0.75時間が該当する。また、閾値としては3分程度を設定しておく。そして、積算タイマT1の積算値が閾値より大であると判断されたときは「使用」と設定され(S33)、閾値より小であると判断されたときは「未使用」と設定される(S36)。
【0030】
この後、積算タイマT1がリセットされ(S34)、その後、過去8日間中4日以上「使用」と判断されていたか否かの判断が行われる(S35)。
【0031】
過去8日間中4日以上使用されたか否かの判断(S35)において、4日以上使用されたと判断されると使用時間帯と判断されて通常通電に設定された後(S37)、リターンし(S38)、4日以上使用されていないと判断されると非使用時間帯と判断されて節電に設定された後(S39)、リターンする(S38)。このような過程により、通常通電、節電通電の設定が行われる。
【0032】
次に、図5に基づいて、閾値設定ルーチンについて説明する。図5は閾値設定ルーチンを示すフローチャートである。閾値設定ルーチンがスタートすると(S40)、24時間が経過しているか否かの判断が行われ(S41)、24時間が経過していると判断されたとき積算タイマT2の積算値が所定値より大であるか否かの判断が行われる(S42)。
【0033】
積算タイマT2の積算値が所定値より小さいときは閾値V1が設定され(S43)、その後、積算タイマT2がリセットされ、積算タイマT2の積算値が所定値より大きいときは閾値V2が設定される(S44)。その後、積算タイマT2がリセットされ(S45)、リターンする(S46)。一方、24時間が経過しているか否かの判断(S41)において、24時間が経過していないと判断されたときもリターンする(S46)。
【0034】
このように、貯湯式電気温水器10においては、前記単位時間よりも長い第二単位時間を制御手段14に設定し、第二単位時間内におけるタイマの累積時間の長短に基づいて、節電通電を行うか否かの判断基準となる閾時間を設定する。従って、設置場所(利用状況)に適した閾時間を設定することが可能となり、設置場所(利用状況)に即した優れた節電効果を得ることができる。
【0035】
この場合、第二単位時間を24時間に設定し、当該24時間内におけるタイマの累積時間が所定時間より短いときはパーソナル利用と判断し、前記節電通電を行うか否かの判断基準となる閾時間をパブリック利用の場合よりも短く設定する。このように、人間の生活リズムである24時間を第二単位時間とすることにより、設置場所(利用状況)における使用者の行動パターンを正確に把握することできるため、設置場所(利用状況)に最適な閾時間を設定することが可能となり、節電効果の実効を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の貯湯式電気温水器は、個人住宅や公共施設などにおける給湯手段として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態である貯湯式電気温水器の構成を示す図である。
【図2】図1に示す貯湯式電気温水器における使用頻度の算出過程を示す図である。
【図3】湯使用状態判定ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】節電設定ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】閾値設定ルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
10 貯湯式電気温水器
11 貯湯タンク
12 ヒータ
13 サーミスタ
14 制御手段
15c 水側スイッチ
15h 湯側スイッチ
16 水栓
17 止水弁
18,22,23 逆止弁
19,20 電磁弁
21 定流量弁
24 混合バルブ
30,32 給水経路
31 混合バイパス経路
33 バイパス経路
35 出湯経路
36 吐水経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、給水源からの水を前記貯湯タンクへ供給する給水路に設けられた給水弁と、前記貯湯タンク内の水を加熱する発熱部と、前記貯湯タンク内の湯温を所定の保温温度に保つために前記発熱部への通電を制御する機能及び外部からの信号に基づいて前記給水弁を開閉する機能を有する制御手段と、を備え
前記給水弁の開状態を計時するタイマを前記制御手段に設け、単位時間当たりの前記タイマの累積時間が少ない時間帯は前記貯湯タンク内を前記保温温度より低温に保つために前記発熱部に対し節電通電を行うことを特徴とする貯湯式電気温水器。
【請求項2】
前記給水弁の開弁時に前記貯湯タンクから排出される湯と給水源から供給される水とを混合する混合弁を備えたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式電気温水器。
【請求項3】
前記単位時間よりも長い第二単位時間を前記制御手段に設定し、前記第二単位時間内における前記タイマの累積時間の長短に基づいて、前記節電通電を行うか否かの判断基準となる閾時間を設定することを特徴とする請求項1または2記載の貯湯式電気温水器。
【請求項4】
前記第二単位時間を24時間に設定し、当該24時間における前記タイマの累積時間が所定時間より短いときはパーソナル利用と判断し、前記節電通電を行うか否かの判断基準となる前記閾時間をパブリック利用の場合よりも短く設定することを特徴とする請求項3記載の貯湯式電気温水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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