説明

貼付剤

【課題】簡易に投薬管理が可能な貼付剤の提供。
【解決手段】支持体の片面に薬物を含有する薬物含有層が積層され、前記薬物含有層の表面が剥離シートによって覆われた貼付剤であって、支持体の非積層側表面に、時刻表示欄、又は日付若しくは曜日表示欄及び時刻表示欄からなる投薬記録表示部が設けられてなることを特徴とする貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体の表面に投薬時期を記録するための表示欄を設けた貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に適用されるパップ剤、プラスター剤等の貼付剤は、標的組織に対する直接効果、効果の持続化、全身性副作用の軽減化、投薬管理の簡便化・明確化などの特徴を持ち、密封効果を発揮させることにより、他の外用剤に比べより高い効果が期待できることから、汎用性の高い製剤である。また、最近では、薬剤を確実に、かつ至適濃度で目標部位に輸送するという、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の採用が奨励され、貼付剤はそれに応える剤形として、様々な製剤の開発が進められている。
【0003】
斯かる貼付剤を用いて薬物を投与する場合、定期的に当該製剤を張り替える処置が必要となる。斯かる投薬管理を容易ならしめるために、例えば、1)貼付剤の支持体である不織布に、貼付日時や貼付時間等の記入欄を設けた貼付剤(特許文献1)や、2)支持体に製剤の交換時期を表示したテープ製剤(特許文献2)等が提案されている。
【0004】
しかしながら、1)の製剤では、支持体の表面にペン等で文字を記入する必要がある。外観を損ねないためにはできるだけ小さな範囲に文字を記入することが望まれるが、不織布等の素材を支持体とする場合は細かい文字が記入しづらく、大きな文字で記入せざるを得ないという問題がある。更に、大きな文字で記入を行った場合は、、インクがはじかれたり、後で脱落したりして、清潔感や外観を損ねたり、衣服を汚すという問題が顕著になる。また、2)の製剤では、投与時期が固定されていることから、限られた製剤にしか適用できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−323925号公報
【特許文献2】実開昭61−180128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡易に投薬管理が可能な貼付剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の1)〜3)に係るものである。
1)支持体の片面に薬物を含有する薬物含有層が積層され、前記薬物含有層の表面が剥離シートによって覆われた貼付剤であって、支持体の非積層側表面に、時刻表示欄、又は日付若しくは曜日表示欄及び時刻表示欄からなる投薬記録表示部が設けられてなることを特徴とする貼付剤。
2)投薬記録表示部が、曜日表示欄と時刻表示欄が座標表示された1)に記載の貼付剤。
3)更に投薬記録表示部に、切り取り加工又はくり抜き加工が施された1)又は2)に記載の貼付剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貼付日時や貼付時間等を文字や数字で記入する必要がないため、清潔感や外観を損ねたり、衣服を汚すことなく、容易に投薬管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】24時間の時刻表示欄からなる投薬記録表示部を設けた貼付剤の平面図
【図2】図1の時刻表示欄に○印を付けてマークした状態を示した図
【図3】日付表示欄と24時間の時刻表示欄からなる投薬記録表示部を設けた貼付剤の平面図
【図4】図3の日付表示欄と時刻表示欄に穴を開けてマークした状態を示した図
【図5】曜日表示欄と午前・午後/12時間の時刻表示欄を設け、更に切り取り用の切り込みをつけた投薬記録表示部を設けた貼付剤の平面図
【図6】図5の曜日表示欄と時刻表示欄の一部を切り込みに沿って切り取り、マークした状態を示した図
【図7】曜日表示欄と午前・午後/12時間の時刻表示欄を設け、更にくり抜き用の切り込みつけた投薬記録表示部を設けた貼付剤の平面図
【図8】図7の曜日表示欄と時刻表示欄の一部を切り込みに沿ってくり抜き、マークした状態を示した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の貼付剤は、支持体の片面に薬物を含有する薬物含有層が積層され、前記薬物含有層の表面を覆うための剥離シートを備えたものであり、支持体、薬物含有層及び剥離シートがこの順序で積層された積層体である。
斯かる構造を有する貼付剤の剤形としては、例えば、硬膏剤、パップ剤、プラスター剤(テープ剤)等を挙げることができる。
【0011】
本発明において用いられる支持体としては、安全性が確保されており、かつ貼付時に柔軟性を有し、かつ薬物含有層中の薬物の揮散や移行を防止する役目を果たすものであれば特に制限はない。斯かる支持体の素材としては、例えば、紙、樹脂フィルム、不織布、天然又は合成繊維の織布、金属シート及びこれらの積層体が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエステル、可塑化(酢酸ビニル−塩化ビニル)共重合体、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂性フィルムが挙げられ、金属シートとしては、例えばアルミニウムシート等が挙げられる。
【0012】
上記支持体素材は、単層で用いられてもよく、2種以上の積層体として用いられてもよい。例えば、ポリエステルフィルムと不織布又は他の単層樹脂フィルムとの積層体とすることが挙げられる。また、ペンによるマークの記入を容易にするために、表面処理(親水、凹凸等)や支持体素材に滲み防止処理(撥水等)を施したものを用いても良い。
【0013】
当該支持体の非積層側表面、すなわち薬物含有層が積層されていない面上には、時刻表示欄、又は日付若しくは曜日表示欄及び時刻表示欄からなる投薬記録表示部が設けられている。
なお、本発明において投薬記録表示部とは、マークを付与することにより任意の時期を選択できるように、選択され得る時期を示す表示が予め設けられたものをいう。
投薬記録表示部における表示は、薬剤の用法に合わせて、時刻表示欄のみを設けるか、日付若しくは曜日表示欄と時刻表示欄を組み合わせて設けるかを適宜選択することができる。また、日付若しくは曜日表示欄と時刻表示欄を組み合わせた場合には、時刻表示欄は、午前及び午後のみの表示とすることもでもよい。
日付、曜日及び時刻の表記は、それらが認識できる表示であれば特に限定されず、日付や時刻については、算用数字、漢数字或いは目盛表示等、曜日については、日本語標記、英語標記、略号等の何れでもよい。また、日付若しくは曜日表示欄、時刻表示欄の配置も限定されるものではなく、両者を共に記載する場合においても、縦又は横に並べて表示すること、縦及び横に座標表示すること等、如何様に配置してもよい。
【0014】
そして、貼付開始に際し、当該投薬記録表示部に表示された日付、曜日、時刻をマークすることにより、貼付開始時期又は貼付終了予定時期が記録される。
マークする手段は、記録できれば何れの方法でもよく、ペンで、時刻を示す数字や目盛を丸印等で囲んだり、チェックマークを付すことにより行えばよく、チェックマークはペンで印を付ける他に、パンチで穴を開けること、あるいは、その一部を切り取って切り欠きを作ることや、くり抜いて穴を開けることでもよい。切り欠きやくり抜き穴でマークする場合は、投薬記録表示部に切り取り加工やくり抜き加工を施すこと、例えばミシン目や不連続のスリット等の切り込みを設けることで、簡単に切り欠きやくり抜き穴(マーク)を作ることができる。このような投薬記録表示部に切り取り加工やくり抜き加工を施した貼付剤は、上記の様にマークする際にペンやパンチなどを用いずに簡単にチェックが可能なため好ましい。
以下に投薬記録表示部の表示例を示す。
【0015】
1)時刻表示欄のみを設けた例
この表示は、24時間以内の投与が予定されている薬剤に対して使用される。
図1に24時間を横一列に表示した例を示した。時刻表示は、支持体の面積に応じて、午前(AM)及び午後(PM)を併記した12時間表示とすることでもよい。
また、図2にチェックマークとして、貼付開始時刻(又は貼付終了予定時刻)に丸印を付けた例を示す。
【0016】
2)日付表示欄と時刻表示欄を設けた例
この表示は、1日以上の投与が予定されている薬剤に対しても適用できるようにしたものである。
図3に日付表示欄(上欄)と24時間の時刻表示欄(下欄)を設けた例を示す。
また、図4にチェックマークとして、貼付開始日時(又は貼付終了予定日時)(「18日、19時30分」)にパンチで穴を開けた場合の例を示す。
チェックマークとして、貼付剤そのものに穴を開ける手段を採用する場合、貼付剤の剤形は、支持体の強度が優れ、薬物含有層と支持体の接着性が良く、薬物含有層が外部に漏出しないものである必要があり、斯かる貼付剤としては、プラスター剤(テープ剤)が好適である。
【0017】
3)曜日表示欄と時刻表示欄を設けた例
この表示は、1週間以内の投与が予定されている薬剤に対して使用される。
図5及び図7に曜日表示欄と午前・午後/12時間の時刻表示欄を座標表示し、更に切り取り用又はくり抜き用の切り込みをつけた例を示す。
この場合、曜日及び時刻のチェックは、図5ではミシン目を切り取って切り欠きを作ることにより、図7ではスリットをくり抜いて穴を開けることにより行われる。
図6及び図8に、貼付開始日時(又は貼付終了予定日時)の指示箇所を切り取って、又はくり抜いて「木曜日、午後6時」を示した場合の例を示す。尚、図6中、1は支持体、2は薬物含有層、3は剥離シートを示す。
チェックマークとして、貼付剤の一部を切り取る手段又はくり抜く手段を採用する場合、貼付剤の剤形は、上記2)の場合と同様、支持体の強度が優れ、薬物含有層と支持体の接着性が良く、薬物含有層が外部に漏出しないもので、且つ切断が容易な、プラスター剤(テープ剤)が好適である。
【0018】
斯かる投薬記録表示部における各表示は、通常、支持体表面に直接印刷することにより作製できるが、エンボス加工等により支持体に文字を刻印しても良い。
ここで、印刷方法としては、一般の印刷方法が挙げられ、例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、凸版印刷等が好適であるが、パーソナルコンピューターを用いた簡易印刷でもよい。
【0019】
また、投薬記録表示部又はその周辺には、日付若しくは曜日表示欄、時刻表示欄の他に、主薬名、使用期限、使用上の注意事項等が表示されていてもよい。
【0020】
上記投薬記録表示部の表面は、必要に応じて保護フィルムによって覆われていてもよい。この保護フィルムは、貼付時に違和感を与えないような薄い樹脂フィルムであって、投薬記録表示部の記述が透視できるように透明又は半透明な材料から形成されていることが好ましい。このような材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂フィルムが挙げられる。また、逆に保護フィルムを隠蔽性のある材料として表示を目立たなくさせるようにしてもよい。
この保護フィルムは、少なくとも投薬記録表示部全体を覆うことができる程度の大きさがあればよく、支持体の表示のない部分と部分的に接着又はヒートシールすることにより、支持体上に固定することができる。
【0021】
上記支持体の片面には、薬物含有層が積層される。
本発明の貼付剤をパップ剤の形態で用いる場合、当該薬物含有層は、薬物、基剤、溶媒、添加物、水等から構成され、通常の作製方法で調製すればよい。ここで、基剤として用いられる成分としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ゼラチン、プルラン、ペクチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル等の水溶性高分子物質が挙げられる。また、添加物としては、架橋剤、硬化調整剤、油成分、鉱物性粉末、吸収促進剤、安定化剤及び界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
また、本発明の貼付剤をプラスター剤の形態で用いる場合、薬物含有層において基剤として用いられる成分としては、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体等の合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、水素添加石油樹脂、ロジン、水素添加ロジン、テルペン樹脂、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等よりなる粘着剤を使用することができる。さらに、ポリブテン、ポリイソブチレン等の液状ゴム、流動パラフィン、植物油、ラノリン等の軟化剤を配合することもでき、必要に応じて、脂肪酸エステル類、高級アルコール類等の経皮吸収促進剤を配合することもできる。
【0023】
本発明の貼付剤において用いられる薬物としては、特に限定されないが、例えば、骨カルシウム調整剤、抗ヒスタミン剤、鎮吐剤、胃腸運動促進剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、H2受容体拮抗剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗真菌剤、糖尿病治療剤、抗リウマチ剤、抗ウィルス剤、眼科用手術補助剤、殺菌剤、非ステロイド性抗炎症剤、角質軟化剤、潰瘍治療剤、β−ブロッカー、HMG−CoA還元酵素阻害剤、前立腺疾患治療剤、不整脈治療剤、血管拡張剤、尿失禁治療剤、強心剤、抗精神病薬、抗血小板凝集剤、プロトンポンプ阻害剤、睡眠誘導剤、抗不安剤、ホルモン、免疫抑制剤、にきび治療剤、コルチコステロイド剤、陽性変力作用物質、抗ロイコトリエン剤、強心配糖剤、結膜炎治療剤、局所麻酔剤、降圧剤、ビタミンE、ビタミンK等が挙げられる。
【0024】
剥離シートは、薬物含有層から容易に剥離可能であり、医療用としての安全性が確保されていれば、特に限定されるものではないが、例えば、紙、フィルム等の基材の表面に、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、クレー等のバリヤー層を設け、このバリヤー層上に離型剤をコーティングしたものが一般的に用いられる。
【0025】
当該剥離シートは、薬物含有層から再剥離可能な状態で積層されているが、積層方法としては、例えば、支持体上に、天然ゴム又は合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の微粘着性の粘着剤層を形成して、ナイフコーター、ロールコーター等の装置により貼り合わせる方法が挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0027】
実施例1 プラスター剤の調製
ポリエステル製の支持体の表面に、図5に示すような配置で曜日表示欄とAM・PM/12時間の時刻表示欄をスクリーン印刷により印刷した。
次に、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(クレイトン D-1161JP:クレイトンポリマージャパン(株))30.0g、テルペン樹脂(YSレジン PX1150N:ヤスハラケミカルズ(株))24.0g、ポリブテン(日石ポリブテン HV-300F:新日本石油(株))20.0g及び軽質流動パラフィン(CARNATION,J72:エクソンモービル(有))22.0gを混合後、150℃にて溶解し、粘着剤相を得た後、インドメタシン1.0gをマクロゴール400(マクロゴール400:日油(株))3gに加えて溶解を確認後、先に調製した粘着剤相を加え充分に混合し薬物含有液を得た。この薬物含有液をPET製の剥離シート(10000cm2)上に展延し、薬物含有層とした。引き続き、薬物含有層が冷めないうちに、これと先の支持体の非印刷面とをラミネート加工により貼り合わせた。
得られた積層体を刃付の金型(外枠の刃の内側にミシン目を形成するための櫛状の刃を設けたもの)を用いて、木槌により打ち抜き、投薬記録表示部に切り取り加工を施したプラスター剤(10cm×6cm)(図5及び図6参照)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に薬物を含有する薬物含有層が積層され、前記薬物含有層の表面が剥離シートによって覆われた貼付剤であって、支持体の非積層側表面に、時刻表示欄、又は日付若しくは曜日表示欄及び時刻表示欄からなる投薬記録表示部が設けられてなることを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
投薬記録表示部が、曜日表示欄と時刻表示欄が座標表示された請求項1記載の貼付剤。
【請求項3】
更に投薬記録表示部に、切り取り加工又はくり抜き加工が施された請求項1又は2記載の貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−254646(P2010−254646A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109216(P2009−109216)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】