説明

貼付材組成物用添加剤、それを含む貼付材組成物及びその製造方法

【課題】
混合性や分散性に優れ、貼付材における貼付性能、冷却保持性、保水性、フィルム離型性、染み出し防止能等の特性を優れたものとすることができ、しかも貼付材に要求される安全性を満たすことができる貼付材組成物用添加剤、それを含む貼付材組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
ポリアクリル酸中和塩を含む貼付材組成物用添加剤であって、上記貼付材組成物用添加剤は、ポリアクリル酸中和塩100質量%に対して水溶性二価金属塩0.05〜12質量%を必須成分とする貼付材組成物用添加剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付材組成物用添加剤、それを含む貼付材組成物及びその製造方法に関する。より詳しくは、例えば、パップ剤、冷却材等に特に好適であり、貼付特性、冷却保持性、保水性等の特性を有する貼付材組成物用添加剤、それを含む貼付材組成物、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貼付材組成物は、人体やその他の対象物に対する貼付材における粘着層を形成するためのものであり、粘着性や安全性を有する高分子組成物が用いられている。貼付材としては、例えば、パップ剤等の医薬部外品、化粧品等として用いられる貼付材の他、発熱時や炎症時の冷却材、飲料・食品の冷却材、治療器や健康器具のパッド等が挙げられる。このような貼付材を形成する貼付材組成物や貼付材組成物を調製するために用いられる貼付材組成物用添加剤においては、通常では、粘度を増加させてある程度の厚みのある粘着層を形成するために、すなわち保形性を発揮するようにするために増粘特性をもつ高分子化合物が配合されることになる。
【0003】
近年では、簡便に熱を冷ますことができ、また動いていても体から取れないことから、子供用、大人用の冷却材の需用が高まっていて、冷却材用の貼付材組成物の性能向上が望まれているところである。このような貼付材組成物としては、水性ゲルが用いられている。水性ゲルを人体等の対象物に貼付すると、ゲル中の水分が蒸発する際に気化熱が生じ、それに伴って対象物から熱を奪い、冷却作用を発揮することになる。冷却材としての性能は、貼付した部分を一定温度以下に維持することができる時間(有効冷却時間)で表わすことができ、これが長いほど冷却効果に優れることになる。したがって、冷却材用の貼付材組成物としては、組成物中の水分含有量を多くすることができ、また乾燥が徐々に進行して冷却効果が長時間持続するものほど、冷却効果に優れるといえる。
【0004】
従来の貼付材組成物としては、例えば、ポリアクリル酸類及び多価金属類を含有する冷却用組成物が開示されている(例えば、特許文献1−3参照)。これらは、高分子量のポリアクリル酸類を使用し、更に架橋性のアルミニウム化合物等も併用することにより、貼付性能、増粘性、保形性等を向上させたものである。また特定の粘着特性を満足するポリアクリル酸系パップ剤用粘着基剤が開示されている(例えば、特許文献4参照)。このような粘着基剤は、賦形性等に良好であることが記載されている。これら冷却用組成物やパップ剤用粘着基剤については、増粘によって水性ゲルを形成することになるが、逆に組成物を調製する際の混合性や分散性については考慮されていなかった。これらの特性が劣ると、製品自体の品質や性能に影響する他、製造時の負荷や作業性等にも悪影響を及ぼすことになる。
更に、貼付材としての重要な特性である貼付性能、保水性、冷却保持性、フィルム離型性、染み出し防止能等を向上させるために、これらの特性を発揮できるものとするための改良の余地があった。パップ剤等における水性ゲルの上述した特性を改良してより品質・性能に優れた製品を供給するという課題については、上述した特許文献には提示されていない。パップ剤等の近年の需用の高まりから、これらの特性を改良することができ、しかも人体等に用いるという点から、安全性が高いということを維持することができる貼付材組成物の技術開発が待たれるところであった。
【特許文献1】特開2002−241746号公報(第2、8、9頁等)
【特許文献2】特開2002−241747号公報(第2、8、9頁等)
【特許文献3】特開2005−211528号公報(第2、4頁等)
【特許文献4】特開平8−53346号公報(第2、8頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、混合性や分散性に優れ、貼付材における貼付性能、冷却保持性、保水性、フィルム離型性、染み出し防止能等の特性を優れたものとすることができ、しかも貼付材に要求される安全性を満たすことができる貼付材組成物用添加剤、それを含む貼付材組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、パップ剤、冷却材等に好適な貼付材組成物用添加剤について種々検討したところ、先ず、ポリアクリル酸中和塩を添加剤として配合すれば、粘着性や安全性、水性ゲルを形成するための増粘性等の基本性能を有する貼付材組成物を調製できることに着目した。そして、これに水溶性二価金属塩を必須成分とすることにより、貼付材の特性に大いに影響するポリアクリル酸中和塩の分子量や使用量を変化させることなく粘度を低下させ、適切に調整して混合性に優れたものとすることができ、組成物中のポリアクリル酸中和塩や無機充填材等のその他の成分の分散性を向上することができることを見出した。また水溶性二価金属塩を配合することにともなって、ポリアクリル酸中和塩によって構成される貼付材組成物の種々の特性が向上し、例えば、貼付材における貼付性能、冷却保持性、保水性、フィルム離型性、染み出し防止能等の特性を優れたものとすることができ、しかも貼付材に要求される安全性を維持し満たすことができることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
なお、従来の貼付材組成物においては、金属塩としてはアルミニウム化合物等を使用する場合があったが、これはあくまでも増粘させるためのものであり、本発明のようにポリアクリル酸中和塩が配合された貼付材組成物の粘度を低下させるものではない。本発明においては、ポリアクリル酸重合体の中和塩の分子量を低下させずに粘度を低下させることになるが、上述したようにこのような課題や主題が提示・示唆された技術文献はない。またポリアクリル酸中和塩に対して水溶性二価金属塩を選択的に特定量使用すること、それによってパップ剤、冷却材等に好適な貼付材組成物を提供することが提示・示唆された技術文献もない。
【0007】
すなわち本発明は、ポリアクリル酸中和塩を含む貼付材組成物用添加剤であって、上記貼付材組成物用添加剤は、ポリアクリル酸中和塩100質量%に対して水溶性二価金属塩0.05〜12質量%を必須成分とする貼付材組成物用添加剤である。
本発明はまた、上記貼付材組成物用添加剤を含有する貼付材組成物である。
本発明は更に、上記貼付材組成物を調製する貼付材組成物の製造方法である。
本発明はそして、ポリアクリル酸中和塩を含む貼付材組成物を製造する方法であって、
該製造方法は、貼付材組成物にポリアクリル酸中和塩100質量%に対して水溶性二価金属塩0.05〜12質量%を必須成分として配合する工程を含む貼付材組成物の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の貼付材組成物用添加剤は、ポリアクリル酸中和塩100質量%に対して水溶性二価金属塩0.05〜12質量%を必須成分とするものである。
本発明においては、貼付材組成物用添加剤がポリアクリル酸中和塩に対して特定量の水溶性二価金属塩を必須成分とすることにより、貼付材組成物用添加剤を含有する貼付材組成物の粘度が適切に調整されて調製時の混合性が向上し、また組成物中の成分の分散性が優れたものとなるうえに、貼付材としての種々の特性が優れたものとなる。種々の特性としては、例えば、長期間にわたり充分に粘着性能を保持し、貼付材として繰り返し使用することができる貼付性能、また水分が乾燥する際の気化熱で対象物を冷却する際に、乾燥が遅く、乾燥が徐々に進行することにより長期間にわたって冷却効果が持続する乾燥特性(冷却保持性)、含水量を多くして冷却能力を高めるために必要となる優れた保水性等を挙げることができる。本発明の貼付材組成物用添加剤、貼付材組成物はこれらの性能を優れたものとすることができ、ここに従来の貼付材組成物用添加剤、貼付材組成物と区別し得る本発明の技術的意義がある。
【0009】
上記水溶性二価金属塩としては、水に溶解することができ、二価の原子価を取り得る金属を有する塩化合物であればよく、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。二価金属としては、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、バリウム等が挙げられ、水溶性二価金属塩としては、それら二価金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
例えば、水溶性マグネシウム塩、水溶性カルシウム塩、水溶性ニッケル塩、水溶性バリウム塩、これらの水和物等が挙げられ、これらの中でも、水溶性マグネシウム塩及び/又は水溶性カルシウム塩であることが好ましい。より好ましくは、水溶性マグネシウム塩又は水溶性カルシウム塩である。中でも、上記水溶性二価金属塩が、水溶性マグネシウム塩であることが本発明の好適な実施形態である。上記水溶性マグネシウム塩としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられ、中でも、硫酸マグネシウム及び/又は硫酸マグネシウムの水和物が特に好ましい。水溶性カルシウム塩としては、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム等、水溶性ニッケル塩としては、硝酸ニッケル、塩化ニッケル等、水溶性バリウム塩としては、塩化バリウム、酢酸バリウム等が挙げられる。
上述した好ましい形態であれば、工業的に入手し易く、また本発明の効果を充分に発揮することができる。
【0010】
上記水溶性二価金属塩の配合割合は、ポリアクリル酸中和塩100質量%に対して、下限が0.1質量%、上限が11質量%であることが好ましい。より好ましくは、下限が0.2質量%、上限が10質量%である。更に好ましくは、下限が0.5質量%であり、上限が5質量%である。特に好ましくは、下限が4質量%である。0.1質量%未満であると、粘度の低減効果が充分とはならず、貼付材の柔軟性が低下するおそれがあり、11質量%を超えると、粘度が低くなりすぎて組成物を調製する際の保形性等を損なうおそれがある。
また本発明の貼付材組成物用添加剤は、ポリアクリル酸完全中和塩100質量%に対して、水溶性二価金属塩0.5〜200質量%を必須成分とするものであることが好ましい。より好ましくは、3〜30質量であり、更に好ましくは、5〜20質量%である。
これらの配合量範囲により、組成物の作業性をより良好なものとすることができ、上述した貼付材組成物としての特性を優れたものとすることができる。
【0011】
本発明における貼付材組成物用添加剤を構成するポリアクリル酸中和塩は、アクリル酸(塩)系単量体を必須とする単量体成分を重合して得られるものである。ポリアクリル酸中和塩、すなわちカルボキシル基の一部が中和されたポリアクリル酸部分中和塩又は実質的にカルボキシル基の全てが中和されたと評価し得るポリアクリル酸完全中和塩であることにより、本願発明の貼付材組成物用添加剤を特定量の水溶性二価金属塩を含有するものに特定する技術的意義があり、従来の技術に対する有利な効果の顕著性が認められることになる。すなわち、ポリアクリル酸中和塩を用いることによって、貼付性能、増粘性、保形性、安全性等を発揮して水性ゲル等を形成することが可能となり、これに特定量の水溶性二価金属塩を含有することによって、組成物の粘度が調整されて混合性等が優れたものとなる。また貼付材が貼付性能、冷却保持性、保水性等に優れたものとなり、しかも貼付材に要求される安全性を維持し満たすことができる。
【0012】
上記ポリアクリル酸部分中和塩の重量平均分子量は、20万〜600万であることが好ましい。より好ましくは、30万〜500万であり、更に好ましくは、80万〜400万である。20万未満であると、充分な粘着性、増粘性を維持することができなくなるおそれがあり、600万を超えると、このようなポリアクリル酸部分中和塩の入手が困難であり、またパップ剤、冷却材等を形成する貼付材組成物として適切なものでなくなるおそれがある。
上記ポリアクリル酸完全中和塩の重量平均分子量は、30万〜800万であることが好ましい。より好ましくは、50万〜600万であり、更に好ましくは、100万〜500万である。30万未満であると、充分な貼付性能、増粘性等を維持することができなくなるおそれがあり、800万を超えると、このようなポリアクリル酸完全中和塩の入手が困難であり、またパップ剤、冷却材等を形成する貼付材組成物として適切なものでなくなるおそれがある。
上記重量平均分子量は、以下のように光散乱法により測定することが好適である。例えば、ダイナミック光散乱光度計を用いて以下の条件により測定することができる。
(光散乱法における測定条件)
装置:ダイナミック光散乱光度計(大塚電子社製、商品名:DSL−700)
溶媒:0.16mol/LのNaClの水溶液
試料濃度:0.05〜2mg/ml
pH:10(at25℃)
測定温度:25℃
【0013】
上記ポリアクリル酸部分中和塩は、中和度80モル%以下のポリアクリル酸部分中和塩を用いることが好ましい。より好ましい上限は、70モル%である。好ましい下限としては、20モル%であり、より好ましい下限は、30モル%である。
【0014】
上記中和度は、ポリアクリル酸部分中和塩が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%としたときの、中和された状態の基の含有量(モル%)により算出される。
上記中和された形態の基とは、酸基における解離し得る水素イオンが他のカチオンで置換された基である。したがって中和度の求め方としては、例えば、(メタ)アクリル酸をxモル、(メタ)アクリル酸塩をyモル、ノニオン性単量体をnモル含むとし、ノニオン性単量体がイオン性ではなく、中和された形態ではないために、下記式により求められることになる。
【0015】
【数1】

【0016】
上記式において、分母はアクリル酸が有する酸基量とアクリル酸塩が有する中和された形態の基量のモル数の和である。分子は中和された形態の基量である。上記式により中和度(中和された形態の基の含有割合)をモル%として得ることができる。
【0017】
次に、上記ポリアクリル酸中和塩を形成することになるアクリル酸(塩)系単量体を必須とする単量体成分について説明する。
なお、本明細書において、単に「単量体成分」という場合には、ポリアクリル酸中和塩を構成することになる単量体成分を意味するものとする。すなわち、アクリル酸(塩)系単量体を必須とする単量体成分を意味し、アクリル酸(塩)系単量体だけを含む形態、後述するようにアクリル酸(塩)系単量体と共重合可能な他の単量体も含む場合にはアクリル酸(塩)系単量体とそれと共重合可能な他の単量体とを含む形態がある。
【0018】
上記アクリル酸(塩)系単量体としては、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸塩であるが、(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物、すなわち、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム等が好適である。
これらの中でも、1価金属塩がより好ましい。更に好ましくは、(メタ)アクリル酸ナトリウムである。
(メタ)アクリル酸のみを単量体成分として重合を行った場合は、得られたポリアクリル酸を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和することによりポリアクリル酸中和塩を得ることができる。中でも、1価金属で中和してポリアクリル酸一価塩とすることが好ましい。
【0019】
上記単量体成分は、上記(メタ)アクリル酸(塩)系単量体と重合可能な他の単量体(以下、共重合単量体ともいう。)を用いてもよい。
上記共重合単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スルホン酸系単量体;上記不飽和スルホン酸系単量体を、1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和又は完全中和してなる中和物;3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、α−ヒドロキシアクリル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸メチルエステル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等の含リン単量体;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体;上記不飽和ジカルボン酸系単量体を、1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和又は完全中和してなる中和物;メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体;上記不飽和モノカルボン酸系単量体を、1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和又は完全中和してなる中和物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら共重合単量体は、必要に応じて、一種類を用いてもよく、また、二種類以上を用いてもよい。
【0020】
上記ポリアクリル酸中和塩の製造方法としては、ポリアクリル酸中和塩は、逆相懸濁重合法、溶液重合法等の種々の重合方法を挙げることができる。また通常の熱重合や光重合等の重合方法によって製造することができる。
上述したようなポリアクリル酸中和塩の好ましい形態とするためには、上記重合方法を選択し、重合条件を適宜調整すればよい。
【0021】
本発明の貼付材組成物用添加剤においては、ポリアクリル酸中和塩と水溶性二価金属塩によって構成されることになればよく、その他の成分については必要に応じて含有していてもよい。このような本発明の貼付材組成物用添加剤の実施形態としては、貼付材組成物用添加剤を添加して貼付材組成物を調製するものであればよく、例えば、(1)ポリアクリル酸中和塩と水溶性二価金属塩との混合物を添加する形態であってもよく、(2)互いに混合されていないポリアクリル酸中和塩と水溶性二価金属塩とをそれぞれ添加する形態であってもよい。
上記(1)の形態において、本発明の貼付材組成物用添加剤は、ポリアクリル酸中和塩と水溶性二価金属塩とを混合することになる。また、ポリアクリル酸中和塩及び/又は水溶性二価金属塩に必要に応じてその他の成分を配合することにより調製してもよい。
上述したように本発明の貼付材組成物用添加剤を調製する方法は、本願発明の好ましい実施形態の一つである。
【0022】
本発明はまた、本発明の貼付材組成物用添加剤を含有する貼付材組成物でもある。
本発明の貼付材組成物は、本発明の貼付材組成物用添加剤を含有することにより、組成物の粘度が適切に調整されて組成物調製時の混合性が向上し、また組成物中のポリアクリル酸中和塩やその他の成分の分散性が優れたものとなるうえに、貼付材としての上述した種々の特性が優れたものとなる。
【0023】
本発明の貼付材組成物は、本発明の貼付剤組成物用添加剤を含有することになるものであればよく、例えば上述したように(1)ポリアクリル酸中和塩と水溶性二価金属塩との混合物を添加することによって得ることができ、(2)互いに混合されていないポリアクリル酸中和塩と水溶性二価金属塩とをそれぞれ添加することによっても得ることができる。
本発明の貼付材組成物におけるポリアクリル酸中和塩及び水溶性二価金属塩の好ましい形態は、上述した本発明の貼付材組成物用添加剤におけるのと同様である。
上記添加剤以外のその他の成分としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸(塩)以外の高分子物質、三価金属塩、分散媒、無機充填材、生理活性物質等が好適である。中でも、ポリアクリル酸を含むものであることが好ましい。更に、三価金属塩、分散媒及び無機充填材を含むものであることが好ましい。
本発明の貼付材組成物の調製においては、適宜攪拌、混合等を行うことになるが、ポリアクリル酸中和塩と水溶性二価金属塩とを混合した後、水等の媒体を徐々に添加して混練することが好ましい。なお、本発明の貼付材組成物用添加剤の実施形態及び貼付材組成物の調製方法において、添加物、添加される対象物、添加順序は、特に限定されるものではない。
【0024】
本発明の貼付材組成物は、貼付材組成物100質量%に対して上記ポリアクリル酸完全中和塩を0.01〜3質量%含有することが好ましい。0.01質量%未満であると、充分な貼付性能、増粘性等を維持することができなくなるおそれがあり、3質量%を超えると、パップ剤、冷却材等を形成する貼付材組成物として適切なものでなくなるおそれがある。より好ましくは、0.1〜2質量%である。
本発明の貼付材組成物は、貼付材組成物100質量%に対して上記ポリアクリル酸中和塩を1〜30質量%含有することが好ましく、2〜20質量%含有することがより好ましく、3〜10質量%含有することが更に好ましい。1質量%より低いと、貼付性能や保水性能が充分でなくなるおそれがある。30質量%を超えると、パップ剤、冷却材等を形成する貼付材組成物として適切なものでなくなるおそれがある。
【0025】
本発明の貼付材組成物用添加剤又は組成物においては、例えばポリアクリル酸完全中和塩とポリアクリル酸部分中和塩とを混合する形態、ポリアクリル酸完全中和塩とポリアクリル酸とを混合する形態、ポリアクリル酸部分中和塩とポリアクリル酸とを混合する形態、ポリアクリル酸完全中和塩、ポリアクリル酸部分中和塩及びポリアクリル酸を混合する形態が挙げられる。
このように中和の程度が低いポリアクリル酸と中和の程度が高いポリアクリル酸とを混合することにより、両者がそれぞれ有する性能、すなわち、貼付性能、冷却保持性、賦形性等を向上させることが可能になる。
上述したポリアクリル酸完全中和塩とポリアクリル酸部分中和塩とを混合する形態、ポリアクリル酸完全中和塩とポリアクリル酸とを混合する形態、ポリアクリル酸部分中和塩とポリアクリル酸とを混合する形態において、中和度が低いポリアクリル酸と中和度が高いポリアクリル酸との混合比としては、例えば、質量比で1/50〜50/1が好ましく、1/10〜10/1がより好ましく、1/4〜4/1が更に好ましい。
【0026】
上記ポリアクリル酸完全中和塩、ポリアクリル酸部分中和塩及びポリアクリル酸を混合する形態において、ポリアクリル酸完全中和塩、ポリアクリル酸部分中和塩及びポリアクリル酸の混合比(質量比)としては、ポリアクリル酸完全中和塩の混合比をxとし、ポリアクリル酸部分中和塩の混合比をyとし、ポリアクリル酸の混合比をzとすると、x:y:z=0.1〜20:0.1〜20:1であることが好ましい。より好ましくは、x:y:z=0.2〜10:0.2〜10:1であり、更に好ましくは、x:y:z=1〜3:1〜3:1である。
中でも、ポリアクリル酸完全中和塩とポリアクリル酸部分中和塩とを混合する形態、ポリアクリル酸完全中和塩とポリアクリル酸とを混合する形態、ポリアクリル酸完全中和塩、ポリアクリル酸部分中和塩及びポリアクリル酸を混合する形態が特に好ましい。
このような形態により、粘度を調整し、また分散性能を向上させると共に、貼付性能を向上させ、乾燥特性をより優れたものとすることができる。
【0027】
本発明の貼付材組成物は、ポリアクリル酸を含有することが好ましい。ポリアクリル酸を含有することにより、貼付材組成物の粘着性を良好にすることができる。中でも、本発明の貼付材組成物が、貼付材組成物100質量%に対して、ポリアクリル酸を0.1〜10質量%含有することが本発明の好適な実施形態である。これにより、貼付性能が向上することになり、貼付材組成物の用途、特にパップ剤等の用途に好適なものとなる。より好ましくは、0.15〜8質量%であり、更に好ましくは、0.2〜5質量%である。
【0028】
本発明の貼付材組成物は、更にポリアクリル酸(塩)以外の高分子物質を含有していてもよい。上記ポリアクリル酸(塩)以外の高分子物質を含有することにより、貼付材組成物の加工性を良好にし、ゲルの安定化を向上させ、また粘度の調整を更に容易にすることができる。
上記ポリアクリル酸(塩)以外の高分子物質としては、例えば、多糖類、ポリアクリル酸(塩)以外のビニル系の高分子化合物等が挙げられる。
上記多糖類としては、例えばセルロース、セルロースの誘導体、デンプン、デンプンの誘導体等を挙げることができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記セルロースの誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースフタレートメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸セルロースヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースまたはそれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。デンプンの誘導体としては、カルボキシメチルデンプンやヒドロキシプロピルデンプンを挙げることができる。
中でも、セルロース又はその誘導体がより好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩が特に好ましい。
上記多糖類の配合量は、貼付材組成物100重量部当たり、好ましくは0.05〜20重量部の範囲から適宜選択して用いられる。より好ましくは、0.1〜10質量%であり、更に好ましくは、1〜8質量%である。
【0029】
上記ポリアクリル酸(塩)以外のビニル系の高分子化合物としては、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、カルボキシルビニルポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルアルキルアミノアクリル酸共重合体、スチレンマレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−ポリビニルアルコール共重合体、N−ビニルアセトアミド重合体等が挙げられる。
これらのポリアクリル酸(塩)以外の高分子物質の配合量は、貼付材組成物100重量部当たり、好ましくは0.01〜20重量部の範囲から適宜選択して用いられる。より好ましくは、0.05〜10重量部であり、更に好ましくは、0.1〜5重量部である。
【0030】
本発明の貼付材組成物は、水溶性二価金属塩以外の金属塩を含有することができる。例えば、三価金属塩を含有することが好ましい。これにより充分に増粘させることができ、貼付材組成物の貼付性能、保形性をより優れたものとすることができる。
上記三価金属塩としては、特に限定されないが、アルミニウム塩であることが好ましく、例えば、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム又はこれらの水和物等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の水溶性三価金属塩が特に好ましい。
本発明の貼付材組成物は、貼付材組成物100質量%に対して、三価金属塩を0.01〜20質量%含有するものであることが好ましい。0.01質量%未満であると、充分な粘度とならず、貼付材組成物の保形性が低下するおそれがあり、20質量%を超えると、粘度が高くなりすぎて組成物を調製する際の混合性等を損なうおそれがある。より好ましくは、0.02〜10質量%であり、更に好ましくは、下限が0.05〜5質量%である。
本発明の貼付材組成物は、ポリアクリル酸中和塩100質量%に対して、三価金属塩を1〜12質量%含有することが好ましい。1質量%未満であると、充分な粘度とならず、貼付材組成物の保形性が低下するおそれがあり、12質量%を超えると、粘度が高くなりすぎて組成物を調製する際の混合性等を損なうおそれがある。より好ましくは、下限が2質量%、上限が11質量%であり、更に好ましくは、下限が4質量%、上限が10質量%である。
また水溶性二価金属塩の配合量は、貼付材組成物中の三価金属塩の配合量を考慮して、水溶性二価金属塩による作用効果と三価金属塩による作用効果とのバランスから、貼付材組成物中の三価金属塩100質量%に対して、下限が1質量%、上限が500質量%であることが好ましい。より好ましくは、下限が2質量%、上限が300質量%であり、更に好ましくは、下限が3質量%、上限が250質量%である。特に好ましくは、下限が12.5質量%である。
【0031】
本発明の貼付材組成物は、分散媒を含有することが好ましい。分散媒とは、本発明の貼付材組成物中のポリアクリル酸中和塩やその他の成分を分散させる媒体をいう。分散媒を含有することにより、ポリアクリル酸等のカルボキシル基に起因する粘着性を充分なものとすることができ、またポリアクリル酸中和塩等の分散性を向上させるとともに、保水性をより優れたものとすることができる。
上記分散媒は、多価アルコールを含むものであることが好ましい。これにより、上述した性能を更に向上させることができる。
上記多価アルコールとしては、特に限定されるものではないが、具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−または1,4−ブチレングリコール、エチレン−プロピレングリコール共重合体、ソルビトール等が挙げられ、これらは1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンがより好ましい。
【0032】
本発明の貼付材組成物は、貼付材組成物100質量%に対して、分散媒を3〜90質量%含有することが好ましい。3質量%未満であると、保水性を充分なものとすることができないおそれがある。90質量%を超えると、パップ剤、冷却材等を形成する貼付材組成物として適切なものでなくなるおそれがある。より好ましくは、4〜80質量%であり、更に好ましくは、5〜55質量%である。
【0033】
本発明の貼付材組成物は、無機充填材を含有することが好ましい。無機充填材を含有することにより、貼付材組成物の賦形性、強度をより充分なものとすることができる。
上記無機充填材としては、例えばカオリン、タルク、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、カオリン、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムがより好ましい。
本発明の貼付材組成物は、貼付材組成物100質量%に対して、無機充填材を0.05〜40質量%含有することが好ましい。0.05質量%未満であると、賦形性、強度が充分なものでなくなるおそれがあり、40質量%を超えると、貼付材組成物の種々の特性が低下するおそれがある。より好ましくは、0.1〜20質量%含有するものであり、更に好ましくは、0.2〜12質量%含有するものである。
例えば、本発明の貼付材組成物が、貼付材組成物100質量%に対して、三価金属塩を0.01〜20質量%含有し、分散媒を3〜90質量%含有し、無機充填材を0.05〜40質量%含有する形態は、本発明の好適な実施形態である。
【0034】
本発明の貼付材組成物は、パップ剤、冷却材等とする場合、好ましい形態の一つとして生理活性物質を含有する形態が挙げられる。これにより、鎮痙、消炎作用を発揮することができる。
上記生理活性物質としては、例えばL−メントール、カンフル、サリチル酸メチル、チモール、ハッカ油、塩酸ジフェンヒドラミン、トウガラシエキス、マレイン酸クロロフェニラミン、インドメタシン、フェルビナック、ケトプロフェン、フルルビプロフェン等を適宜添加することができる。中でもL−メントールを用いることが好ましい。
【0035】
本発明の貼付材組成物のpHとしては、pH4.5〜7であることが好ましく、pH5〜6.5であることがより好ましい。pHが4.5未満であったり、7を超えると保形性や冷却作用に劣るおそれがある。本発明の貼付材組成物に配合されるpH調整剤としては、例えば酒石酸、クエン酸等の有機酸、及び、塩酸、りん酸等の無機酸が挙げられるが、中でも有機酸が好ましく、酒石酸がより好ましい。
【0036】
更に、本発明の貼付材組成物には、その物性に影響を及ぼさない範囲で、上記各成分に加えて必要に応じて、更に防腐剤、保存剤、安定剤、香料、着色料、リモネン等の清涼化剤、保湿剤、刺激剤、除菌剤、抗菌剤、粘着付与剤、保型剤、増粘剤等を配合することができる。
【0037】
本発明の貼付材組成物は、上述したようにポリアクリル酸を含有することが好ましいが、ポリアクリル酸を含有する場合は、ポリアクリル酸を多価アルコール等の分散媒中に分散又は溶解させる形態が好ましい。これにより、パップ剤、冷却材等における貼付特性を向上させることができる。例えば、粉末状のポリアクリル酸及びポリアクリル酸部分中和塩を多価アルコール等の分散媒に添加し、充分に撹拌して分散又は溶解させたもの(A液)を製造し、この(A液)を、三価金属塩を含有する水溶液(B液)中に、同時に、又は、徐々に加えてよく混練することによって貼付材組成物を製造することが好ましい。粉末状のポリアクリル酸及びポリアクリル酸部分中和塩を多価アルコール等の分散媒に添加し、撹拌する際の多価アルコール等の分散媒の温度は、分散又は溶解させやすいことから、室温から60℃が好ましい。水溶性二価金属塩は、上記(A液)及び/又は(B液)中に含有させればよく、また上記(A液)及び/又は(B液)には、必要に応じて無機充填材等のその他の成分を含むことができる。
【0038】
なお、上述したように本発明の貼付材組成物がポリアクリル酸を含む場合に(A液)を(B液)中に加えて混練することによって貼付材組成物を製造するとき、上記(A液)は、(B液)に接触させるまで水溶液状態とすることは避けた方が好ましい。
(A液)が(B液)に接触するまでに水溶液状態となった場合、すなわち水成分が作用する程度に水成分を混合した場合は、ポリアクリル酸部分中和塩が水の介在によってイオン化し、例えばポリアクリル酸部分ナトリウム塩の場合はナトリウムイオンを放出し、このナトリウムイオンがポリアクリル酸を部分中和塩とし、本来ポリアクリル酸が有する粘着性を低下させることになり、パップ剤、冷却材等の貼付特性に劣ることになるおそれがある。多価アルコール等の分散媒の会合による保護コロイド効果によってこれを避けるようにした方が好ましい。
上記パップ剤、冷却材等に薬効成分を添加する場合は、例えば、薬効成分を(A液)及び/又は(B液)中に混合することにより添加することができる。
【0039】
本発明の貼付材組成物は、パップ剤や冷却材等として用いる場合は、組成物の各成分を水に溶解及び/又は分散することによって製造することができる。
中でも、組成物の各成分を混合して水に溶解及び/又は分散することが好ましい。例えば、分散媒にポリアクリル酸中和塩及び水溶性二価金属塩、必要に応じてその他の成分等を混合し、この混合物を水に徐々に添加して混練し、ゲル状に調製する方法が挙げられる。通常では、混合物を水に添加して混練した後、酸を添加してpHを調整することになる。このような製造方法により、貼付性能、冷却保持性、保水性等のパップ剤や冷却材等として好適な特性を発揮する貼付材組成物を調製することができる。
【0040】
本発明の貼付材組成物は、例えば、織布、不織布、紙、フィルム等の支持体上に直接塗布する、又は、剥離処理された基材上に塗布してこれらの支持体上に展着させる等の方法でパップ剤や冷却材等を得ることができる。
【0041】
上記織布又は不織布としては、特に制限されないが、例えば綿、麻、毛等の天然繊維、レーヨン、アセテート、ナイロン、ビニロン等の合成繊維等が挙げられる。
上記フィルムとしては、その素材は特に制限されないが、具体的にはスチロール、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等が挙げられる。
【0042】
本発明は更に、本発明の貼付材組成物を調製する貼付材組成物の製造方法である。
本発明の製造方法により、粘度が適切に調整されて混合性が向上し、各種用途における性能が向上した貼付材組成物を容易に調製することができる。また組成物中の成分の分散性を向上させた貼付材組成物を製造することができる。本発明の上記実施形態によって製造された貼付材組成物から形成される貼付材は、上述した種々の特性、例えば、貼付性能、冷却保持性、保水性、フィルム離型性、染み出し防止能等が優れたものとなる。
【0043】
本発明はそして、ポリアクリル酸中和塩を含む貼付材組成物を製造する方法であって、上記製造方法は、貼付材組成物にポリアクリル酸中和塩100質量%に対して水溶性二価金属塩0.05〜12質量%を必須成分として配合する工程を含む貼付材組成物の製造方法でもある。
貼付材組成物は、ポリアクリル酸中和塩を含有することにより、貼付性能、増粘性等の物性が向上し、特に、ポリアクリル酸完全中和塩を含有する形態が好適であるが、一方で、粘度が高くなり過ぎて混合性等が充分とはならない。粘度を調整するためには、ポリアクリル酸中和塩の分子量や使用量を調整することも考えられるが、それだけでは、ポリアクリル酸中和塩により発揮される性能が低下することになる。
これに対して、本発明の製造方法は、このような貼付材組成物中にポリアクリル酸中和塩に対して特定量の水溶性二価金属塩を含有させることにより、貼付材組成物の粘度を低下させることができるものである。このような形態により、高分子量のポリアクリル酸中和塩の含有する貼付材組成物がこてこてにならない、すなわち高粘度状態とならず、混合しやすい低い粘度とすることができるところに本発明の技術的意義がある。具体的には、高い分子量で通常はすぐこてこてになり混合しにくいが、驚くべきことに、特定量の水溶性二価金属塩を配合すると、特定量の水溶性二価金属塩を配合する前の特定量の水溶性二価金属塩を含有しない貼付材組成物と較べて貼付材組成物の粘度を低下させることができ、従来の配合組成では、非常に高粘性の組成物になってしまう相当な高分子量物のポリアクリル酸中和塩の配合物であっても、比較的低粘度状態をキープしやすくなり、作業性、混合性が格段に良好になった。又、パップ剤として適用した場合も、パップ剤組成物の経時的な低粘度化によるべたつきや、各成分の染み出しなどもおこりにくくなり、又、過剰な低粘度化も起こりにくいものとなり、パップ剤を効率よく製造するための非常に良好な製造方法であるといえる。更に、このように特定量の水溶性二価金属塩を配合することにより製造された組成物は、粘度を充分に低下して作業性を向上させたうえで、高分子量のポリアクリル酸中和塩が有する性能を発揮することができ、組成物中の各成分の分散性、貼付材を繰り返して使用することができる貼付性能、長時間冷却作用を保持できる冷却保持性、組成物中に水を多く含有して冷却能力を高めることができる保水性等に優れることになり、貼付材組成物の用途、パップ剤や冷却材等の貼付材の用途等に好適なものとなる。
本発明の貼付材組成物の製造方法における各種成分の配合量、配合方法の好ましい形態、好ましいpH等は、上述した本発明の好ましい形態と同様である。
【0044】
本発明の貼付材組成物の製造方法による粘度低下の度合いについては、貼付材組成物の用途、特にパップ剤や冷却材等の用途に好適なものとなるように、貼付材組成物に配合されるポリアクリル酸中和塩や必要により他の配合成分の種類や量を考慮して、水溶性二価金属塩の種類や量を上記の範囲内で適宜設定することによって調整することができる。具体的な粘度低下の度合いについては、貼付材組成物が用いられる用途、貼付材組成物の配合等によって異なることから、一概には言えないが、水溶性二価金属塩が配合されていない形態の貼付材組成物がパップ剤や冷却材等の用途において取り扱いにくいほど粘度が高いと評価される場合に本発明を適用すれば、取り扱い性が改善された、又は、取り扱い性が際立って良好であると評価されるほどに低下させることができる。
また本発明の貼付材組成物の製造方法によれば、貼付材組成物によって形成される貼付材の粘着性や、冷却材等の用途における有効冷却時間等の性能を向上させることができる。
本発明の貼付材組成物を製造する方法を適用して本発明の貼付材組成物を製造する方法もまた、本発明の好ましい実施形態である。
【発明の効果】
【0045】
本発明の貼付材組成物用添加剤、それを含む貼付材組成物は、上述の構成よりなり、組成物の粘度が調整されることにより組成物を調製する際の混合性が優れたものとなり、また組成物中の各成分の分散性に優れ、貼付材として好適な貼付性能、冷却保持性、保水性等の特性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0047】
<パップ剤の調製>
実施例1
容量250mlのプラスチック製容器に、重量平均分子量が72万のポリアクリル酸粉末(粒度32メッシュパス)1.0部、重量平均分子量が430万のポリアクリル酸完全中和ナトリウム塩4.0部、グリセリン39.4部、プロピレングリコール12.0部及びカオリン6.0部を入れ、ステンレス製スパチュラで混合しA液とした。
次に、別の容量250mlのプラスチック製容器に、イオン交換水37.0部、塩化アルミニウム・6水塩0.4部及び硫酸マグネシウム・3水塩0.2部を入れ、ステンレス製スパチュラで混合しB液とした。B液中では塩化アルミニウム・6水塩及び硫酸マグネシウム・3水塩は完全に溶解していた。
次に、A液の入った容器にB液の全量を添加し、スパチュラで撹拌した。徐々に粘度が上がり始め、粘度が安定したところで撹拌を止めた。このようにして、貼付材組成物(パップ剤用膏体)1を得た。該貼付材組成物1の性能を以下のようにして測定し、その結果を表1に示した。
【0048】
<膏体(ゲル)の粘度>
粘度が安定した膏体(ゲル)をスパチュラで撹拌した際の粘度感触を5段階評価した。
評価
1;非常に低粘度
2;低粘度
3;普通
4;やや高粘度
5;かなり高粘度
【0049】
<フィルム離型性試験>
パップ剤基布(不織布、商品名EL−5600、日本バイリーン社製)を約15cm×20cm程度の大きさにハサミで裁断した。該裁断された不織布上に上記膏体10gを正確に10cm×14cmの広さに展延した。次に、該不織布の軟体が付着した面にポリエチレンフィルムを貼り、密封した容器に一晩放置後、フィルムを手で剥がした時の膏体のフィルムへの移行の程度を官能評価した。
【0050】
<染み出し>
上記フィルム剥離性試験で使用した軟体が付着した不織布の軟体が付着した面の反対側からの液の染み出し有無を肉眼観察した。
<粘着性>
JIS Z 0237:2000(「粘着テープ・粘着シート試験方法」、財団法人日本規格協会発行、平成13年5月25日、p.9−10)に記載されている傾斜式ボールタック法に準じて行った。
上記フィルム離型性試験で得られた膏体が付着した部分の不織布(10cm×14cm)をハサミで切り取り、傾きが30度の傾斜台に貼り付けた後、膏体の上方10cmの位置よりステンレス製ボールを転がし、膏体上にボールが1分間停止する時のボールの最大径(インチ)を調べた。
上記傾斜台は、傾斜面にアクリル板が貼付された木製の台である。
【0051】
実施例2〜8、比較例1〜7
組成物比を下記表1、2に示した通りとした他は実施例1と同様にして貼付材組成物(パップ剤)を調製した。
下記表1〜4において、ポリアクリル酸は、中和度0モル%、重量平均分子量72万である。ポリアクリル酸部分中和ナトリウム塩は、中和度50モル%、重量平均分子量310万である。ポリアクリル酸完全中和ナトリウム塩は、中和度100モル%、重量平均分子量430万である。重量平均分子量は、ダイナミック光散乱光度計を用いて以下の条件により測定した。
装置:ダイナミック光散乱光度計(大塚電子社製、商品名:DSL−700)
溶媒:0.16mol/LのNaClの水溶液
試料濃度:0.05〜2mg/ml
pH:10(at25℃)
測定温度:25℃
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
なお、実施例1においてA液にB液を添加したことで粘度が上昇したが、この粘度上昇においては、水溶性二価金属塩の作用によってB液中の三価金属塩(塩化アルミニウム・6水塩)による過度な増粘が結果として見かけ上は抑えられ、粘度が調整されている。水溶性二価金属塩である硫酸マグネシウム・3水塩を配合した貼付材組成物の粘度が、水溶性二価金属塩が配合されていない形態の貼付材組成物の粘度と比べて低いものとなっている(例えば、実施例1と比較例1とを比較)ことから、水溶性二価金属塩を配合したことにより組成物の粘度が低下して調整されたことが明らかである。
【0055】
<冷却材の調製>
実施例9
1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール及びグリセリンを混合した混合液にポリアクリル酸部分中和塩、ポリアクリル酸完全中和塩、乾燥水酸化アルミニウムゲル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、水溶性金属塩(硫酸マグネシウム・3水塩)を分散混合させ、これをイオン交換水中に徐々に添加して混練した。
次いで、L−酒石酸を添加して貼付材組成物(冷却材)を得た。
【0056】
実施例10〜13、比較例8〜10
組成物比を表3、表4に示した通りとした他は実施例9と同様にして貼付材組成物(冷却材)を得た。
<有効冷却時間>
実施例9〜13、比較例8〜10の貼付材組成物をポリプロピレン製の剥離紙(5cm×11cm)の上に約4mmの厚さに塗布し、その上に不織布を圧着して冷却材を調製した。該冷却材について、温度25℃、湿度50〜60%の環境下で0.7Wの電流が常時流れるように設定したホットプレート上に各冷却材を貼り、経時的に貼付剤直下のホットプレート上の温度を測定し、冷却効果を評価した。ホットプレート上の温度は、冷却材中の水分が蒸発して少なくなるにつれて次第に温度が上昇するようになる。そして、貼付剤の冷却力が完全になくなって温度が上昇しなくなった時点で測定を終了し、その時点の温度を終点温度とした。
【0057】
下記式(1)から、各測定時点での冷却温度を求めた。冷却温度が−3℃以下に保持されている時間を、実効ある冷却効果を発揮している有効冷却時間(hr)とした。
【0058】
冷却温度(℃)=(各測定時点における温度−終点温度)+4 (1)
上記式において4を加算しているのは、ホットプレートの金属板はヒトの皮膚とは比熱が異なり冷却温度がより下降する傾向があるため、実際のヒトの皮膚に適用する場合に適合させるためである。
【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
本実施例は、本発明の貼付材組成物が発揮する効果を、薬効成分を添加しないで検証したものである。本発明の貼付材組成物を実際にパップ剤として用いる場合には、更に組成物中に薬効成分が含まれることになる。
【0062】
本発明の貼付材組成物の製造方法に起因する粘度低下について述べる。
ポリアクリル酸中和塩ポリアクリル酸中和塩100質量%に対して水溶性二価金属塩を例えば0.04質量%配合した場合(比較例2)、粘度が安定した膏体(ゲル)をスパチュラで撹拌した際の粘度感触は「5」である。これに対して、水溶性二価金属塩を0.05質量%配合した場合(実施例7)、上記粘度感触は「4」となる。水溶性二価金属塩を0.04質量%配合した場合は、ポリアクリル酸部分中和塩を製造する際に装置に負荷がかかることになるが、0.5質量%配合した場合は、ポリアクリル酸部分中和塩が装置に負荷をかけることなく製造可能であるレベルである。
更に、水溶性二価金属塩を4〜10質量%配合した場合(実施例1、3〜6、9、11〜13)は、粘度感触の評価が「1」〜「2」と評価され得るものとなり、粘度の低下の度合いがより大きくなり、組成物調製の際の混合性等の点でより好ましい形態であるといえる。
ポリアクリル酸部分中和塩をパップ剤や冷却材等として使用するために工業的に製造した場合、このような効果は際立ったものである。
【0063】
上述した実施例及び比較例から、本発明の数値範囲の臨界的意義については、次のようにいえることがわかった。すなわち、ポリアクリル酸中和塩100質量%に対して、水溶性二価金属塩0.05〜12質量%を必須成分とすることにより、混合性や分散性、貼付材における貼付性能、冷却保持性、保水性、フィルム離型性、染み出し防止能等の特性において有利な効果を発揮し、それが顕著であることがわかった。
【0064】
数値範囲の下限の技術的意義については、実施例7(0.05質量%)と、下限値を下回る比較例2(0.04質量%)と比較すると明らかである。実施例7では、粘度が「4」、粘着性が「11」であり、染み出しが「なし」であるが、それに対して、比較例2では、粘度が「5」、粘着性が「10」であり、染み出しが「あり」である。実施例7では、ポリアクリル酸部分中和塩が装置に負荷をかけることなく製造可能であるレベルであり、貼付材組成物としての優れた特性を有するものであるが、比較例2では、ポリアクリル酸部分中和塩を製造する際に装置に負荷がかかることになり、また貼付材組成物としての特性に劣るものである。ポリアクリル酸部分中和塩をパップ剤や冷却材等として使用するために工業的に製造した場合、このような効果が際立ったものであるということはいうまでもない。
【0065】
数値範囲の上限の技術的意義については、実施例8(12質量%)と、上限値を上回る比較例3(12.5質量%)と比較すると明らかである。実施例8では、粘着性が「11」であり、染み出しが「なし」であるが、それに対して、比較例3では、粘着性が「7」であり、染み出しが「あり」である。実施例8では、貼付材組成物としての優れた特性を有するものであるが、比較例3では、当該特性に劣ることになる。工業的生産に適用した場合に、このような効果、つまり貼付材組成物としての優れた特性を有するという効果は、際立ったものであるということはいうまでもない。実施例1〜6、9〜13では、水溶性二価金属塩0.5〜10質量%を必須成分としているが、これらの実施例においては、更に本発明の効果が顕著に現れることになる。
【0066】
なお、上述した実施例及び比較例では、アクリル酸由来の単量体単位のみからなるポリアクリル酸中和塩を調製しているが、一般にポリアクリル酸中和塩といえる重合体である限り、アクリル酸(塩)以外のその他の単量体由来の単量体単位を含むもの、すなわちアクリル酸(塩)以外のその他の単量体を重合して得られる構造を有するポリアクリル酸中和塩であっても、貼付材組成物として使用できる可能性のあるものであれば、粘度が高くなりすぎて混合性に劣ること、分散性、貼付性能、冷却保持性、保水性等の特性が充分でないことといった問題を生じさせる機構は同様である。したがって、ポリアクリル酸中和塩に対して、0.05〜12質量%の水溶性二価金属塩を必須成分とすれば、本発明の有利な効果を発現することは確実であるといえる。少なくとも、アクリル酸(塩)系単量体を必須とする単量体成分を重合して、特にアクリル酸(塩)系単量体を主体とする単量体成分を重合してポリアクリル酸中和塩を調製する場合においては、上述した実施例及び比較例で充分に本発明の有利な効果が立証され、本発明の技術的意義が裏付けられている。
【0067】
上述した実施例及び比較例では、水溶性二価金属塩として水溶性マグネシウム塩又は水溶性カルシウム塩を用いているが、ポリアクリル酸中和塩100質量%に対して水溶性二価金属塩0.05〜12質量%を必須成分とする形態である限り、本発明の効果を生じさせる作用機構は同様である。すなわち、ポリアクリル酸中和塩と特定量の水溶性二価金属塩とを必須成分とするところに本発明の本質的特徴があり、水溶性二価金属塩が同様の化学的特徴を有するものであれば、この実施例で示されるような効果を奏することになる。したがって、本発明における必須成分によって構成される貼付材組成物とすれば、本発明の有利な効果を発現することになる。少なくとも、水溶性マグネシウム塩又は水溶性カルシウム塩を必須成分とする場合においては、上述した実施例及び比較例で充分に本発明の有利な効果が立証され、本発明の技術的意義が裏付けられている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸中和塩を含む貼付材組成物用添加剤であって、
該貼付材組成物用添加剤は、ポリアクリル酸中和塩100質量%に対して水溶性二価金属塩0.05〜12質量%を必須成分とすることを特徴とする貼付材組成物用添加剤。
【請求項2】
前記水溶性二価金属塩は、水溶性マグネシウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の貼付材組成物用添加剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の貼付材組成物用添加剤を含有することを特徴とする貼付材組成物。
【請求項4】
前記貼付材組成物は、貼付材組成物100質量%に対して、ポリアクリル酸完全中和塩を0.01〜3質量%含有することを特徴とする請求項3に記載の貼付材組成物。
【請求項5】
前記貼付材組成物は、貼付材組成物100質量%に対して、ポリアクリル酸を0.1〜10質量%含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の貼付材組成物。
【請求項6】
前記貼付材組成物は、貼付材組成物100質量%に対して、三価金属塩を0.01〜20質量%含有し、分散媒を3〜90質量%含有し、無機充填材を0.05〜40質量%含有することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の貼付材組成物。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の貼付材組成物を調製することを特徴とする貼付材組成物の製造方法。
【請求項8】
ポリアクリル酸中和塩を含む貼付材組成物を製造する方法であって、
該製造方法は、貼付材組成物にポリアクリル酸中和塩100質量%に対して水溶性二価金属塩0.05〜12質量%を必須成分として配合する工程を含むことを特徴とする貼付材組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−161618(P2009−161618A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340645(P2007−340645)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】