説明

貼合装置に用いる保護シート剥離装置

【課題】剥離作業には使用済みの粘着テープを巻き取るためのモータが必要となるなど、装置自体が大型化し、装置の製造コストが高くなり、かつ貼合作業に比較的多大な電力を消費していた。
【解決手段】平板状部材の平板部分を重ね合わせて貼合する貼合装置に用い、平板状部材30aをカバーする保護シート40を粘着テープ10を利用して剥離する保護シート剥離装置であって、剥離作業が済んだ前記粘着テープ10の一部を切断することにより、前記保護シート40に粘着した前記粘着テープ10と前記平板状部材30aから剥離した前記保護シート40とを一体のまま廃棄することを特徴とする保護シート剥離装置

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状部材の平板部分を重ね合わせて貼合する貼合装置に用い、平板状部材に貼った保護シートを剥離する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平板状部材を貼り合せて積層体(製品)を製造する前に一方の平板状部材をカバーする保護シートを粘着テープを粘着させて剥離していた。そして、当該剥離作業が済んだ粘着テープは巻取りドラムにモータを利用して巻き取り(例えば、特許文献1および2参照。)、保護シートは粘着テープと切り離して廃棄されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−331583公報(図1)
【特許文献2】特開2005−314033公報(図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、当該剥離作業には使用済みの粘着テープを巻き取るためのモータが必要となるなど、装置自体が大型化し、装置の製造コストが高くなり、かつ貼合作業に比較的多大な電力を消費していた。
【0005】
また当該剥離作業を手動で行う場合保護シートを剥離する方向によっては貼合側平板状部材が装置から浮き上がり、位置決めがずれることが往々にして発生し、それを防ぐために貼合側平板状部材のバキュームなどの吸引力を大きくする必要があり、同じように装置自体が大型化し、装置の製造コストが高くなり、かつ貼合作業に比較的多大な電力を消費していた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
貼合装置に用い、平板状部材をカバーする保護シートを粘着テープを利用して剥離する保護シート剥離装置であって、剥離作業が済んだ前記粘着テープを切断することにより、前記保護シートに粘着した前記粘着テープと前記平板状部材から剥離した前記保護シートとを一体のまま廃棄する構造である。
【0007】
また「特許請求の範囲」第2項記載の手段は、当該保護シート剥離装置であって、粘着テープを保持し、かつ繰り出すローラを前記平板状部材に対して上下方向および前進・後退の水平方向に移動可能とし、前記粘着テープを前記平板状部材側および前進方向に加圧する押し当て部を設け、前記ローラから繰り出された前記粘着テープと前記保護シートとのなす角度を鋭角に保持した状態で前記押し当て部によって前記粘着テープに前進方向の押力を与え、かつ前記ローラの後退によって前記粘着テープに前記押力と逆方向の引張り力を与えることによって前記保護シートを前記平板状部材から剥離する構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、剥離し終えた保護シートを粘着テープとともに廃棄できるようにしたため、粘着テープを巻き取るためのモータが不要となり、装置全体の小型化、低廉化、省エネ化が可能となり、従来装置の抱える課題を一挙に解決するものである。
【0009】
また「特許請求の範囲」第2項記載の手段による効果は、粘着テープに相反する2方向の力を作用させることにより粘着テープを剥離可能とし、かつ剥離し終えた保護シートを粘着テープとともに廃棄できるようにしたため、装置全体の小型化、低廉化、省エネ化が可能となり、従来装置の抱える課題を一挙に解決するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 本発明の保護シート剥離装置を貼合装置に取り付けた正面図
【図2】 回転ベースを回転させて平板状部材を重合させた平面図
【図3】 回転ベースを回転させて平板状部材を重合させた断面模式図
【図4】 本発明の保護シート剥離装置の正面図
【図5】 同側面図
【図6】 剥離工程を示す一部拡大図
【図7】 図6の工程から更に進行した工程を示す剥離装置の正面図
【図8】 図7の工程から更に進行した工程を示す剥離装置の正面図
【図9】 ローラのブレーキ装置を表す一部断面図
【図10】 から
【図14】 第2実施例の模式説明図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
図1から図3において、Aは、2個の平板状部材30a(例えば機能フィルムなど)、30b(例えば樹脂板やガラスなど)をそれぞれのベース70a、70bにバキュームなどの吸引力で固定し、回転中心Oを中心として一方の回転ベース70aを他方の静止ベース70b側に回転させることにより、平板状部材30a、30bを重合させ、平板状部材30a、30bの重合部の接着材30cにより、両者を貼合してディスプレイなどの製品を製造する貼合装置である。
【0012】
前記平板状部材30aと前記平板状部材30bの一方の全面または一部には、接着材30cが塗布されており、また当該接着材30c表面の防塵等のために保護シート40が貼られている。
【0013】
なお当該貼合装置の貼合機構は前記したベース回転式の他種々の形式があるが、既存のものであるので、その詳細な説明を省略する。また平板状部材30a、30bは異質のものでも同質のものでもよい。また貼合装置は本例のようにベース70a、70bに各1枚をセットし重合させて一工程で1枚の製品を製造するものでも良いし、同時に複数枚をセットし一工程で複数枚の製品を製造するものでもよい。また前記接着材30cを設けず、静電気などによる吸着力により前記平板状部材30aの一面に前記保護シート40を吸着したものにも使用できる。
【0014】
Bは貼合装置Aに取り付けた本発明に係る保護シート剥離装置である。なお、当該保護シート剥離装置Bは貼合装置Aに組み込んでも良いし、個別に構成した後に貼合装置Aに固定的に取り付けても良い。
【0015】
図4から図9により本発明に係る保護シート剥離装置Bの一つの実施例を説明する。
まず保護シート剥離装置B本体は、垂直多間接ロボットなどの制御装置により作業腕が図7に示すように前進・後退方向および上下運動の動作や図2に示すように作動位置や退避位置に回転できるように貼合装置Aに固定される。20は前記粘着テープ10を保持し、かつ繰り出すローラであって、軸21によって回転自在に装置Bの作業腕に取り付けられ前記平板状部材に対して上下方向および前進・後退の水平方向に移動可能としている。
【0016】
前記粘着テープ10は、片面に接着材10cを塗布し、前記ローラ20から繰り出した先端部分は2個のガイドローラ22にガイドされて、前記保護シート40に接着して前記保護シート40を剥離する。
【0017】
50は、弾性体51を介して移動手段60に取り付ける押し当て部であり、前記粘着テープ10を前記保護シート40に加圧接触する際の抵抗を少なくするために軸52周りに回転自在な中空円筒状に形成するとともに、前記粘着テープ10の全幅にわたって加圧するために前記粘着テープ10の幅より若干長い前記軸52方向の長さを有する。なお、押し当て部50は、前記のように軸52周りに回転自在な中空円筒状に形成する以外に、バネ製の前記弾性体51と一体に形成しても良いし、前記弾性体51と別体に形成し前記弾性体51に回転不能に固定してもよい。要するに前記押し当て部50の形状と構造は本発明とは本質的に関係が無い。
【0018】
また前記押し当て部50は、エアシリンダーC1などにより前記粘着テープ10を前進方向に加圧接触するとともに、装置Bの作業腕に取り付けた板バネ製などの弾性体51によって、前記保護シート40に押力50bを与える。
【0019】
次に図4および図6から図8に基づいて、前記保護シート40が全面的に前記平板状部材30aから剥離させる構造について説明する。
【0020】
まず図4で示すように、前記ローラ20が上方に移動した初期状態では、前記粘着テープ10は前記保護シート40の方向に下垂しているだけで、前記保護シート40と接触していない。
【0021】
前記ローラ20が下方に移動することによって前記粘着テープ10の接着材10cが前記保護シート40と接する。このとき、前記押し当て部は前記粘着テープ10の先端部分を前記保護シート40側に押力50bにより押圧する。
【0022】
次いで前記ローラ20が前進方向(図4の左方向)に水平移動するとその分だけ前記ローラ20から前記粘着テープ10が繰り出され、図6の状態になる。
【0023】
次に前記ローラ20からの前記粘着テープ10の繰り出しをストップさせた状態で、前記エアシリンダーC1によって前記押し当て部50に前進方向の押力50aを付与するとともに、剥離装置Bの作業腕を後退させると、前記押力50aと逆方向の引っ張り力が前記粘着テープ10に作用する(図7参照)。
【0024】
図7に示すように、前記押し当て部50が前記粘着テープ10に前進方向の押力50aを作用させている位置において、前記ローラ20から繰り出された前記粘着テープ10(図6の10L)と前記保護シート(図6の40L)とのなす角度(θ)は、鋭角に保持され、また前記押し当て部50の前記保護シート40側への押力50bが前記保護シート40の剥れの接触点と作用しながら、剥離装置Bの作業腕の後退にともなう前記保護シート40の緊張力によって前記保護シート40が剥離し始める。
【0025】
図8に示すように、剥離装置Bの作業腕を更に後退させると、前記保護シート40の前記平板状部材30aとの剥れ力よりも前記粘着テープ10の接着強度(S1)が強いように設定するので、前記保護シート40はほぼ前記粘着テープ10の接着強度(S1)のみにより(前記押力50aおよび50bは作用しない)、前記平板状部材30aの接着材30cが全て露出するまで前記粘着テープ10と一体となって前記平板状部材30aから剥がされる。
【0026】
この一体となった前記粘着テープ10と前記保護シート40は、剥離装置Bに設けたカット手段または手動でカットし廃棄する。
【0027】
図9において、20aはローラのブレーキ装置のために設けたローラ20の延長部で、ローラ20と一体回転する。23はゴム製などのブレーキシューで、剥離装置Bの作業腕に設けたエアシリンダーC2によりローラ延長部20aの外周に接触し所定のタイミングでローラ20の回転にブレーキをかけ前記粘着テープ10の繰り出しを阻止する。
【0028】
24は、同じく剥離装置Bの作業腕に設けたロータリーダンパーで、オイルの粘性抵抗などにより発生するブレーキ力を利用してローラ回転軸21周辺のローラ延長部20a側面から所定のタイミングでローラ20の回転にブレーキをかける。このロータリーダンパーは停電などによってエアシリンダーC2引いてはブレーキシュー23が作動しない場合の安全装置としても機能する。
【0029】
なお、これらのブレーキ装置は、本発明の保護シート剥離装置Bに付属的に設けたものであって、本発明の本質に係るものではなく省略できる。
【0030】
次に本発明に係る保護シート剥離装置Bの一連の動作を説明する。
(1)初期状態
【0031】
図1に示すように、平板状部材30a(例えば機能フィルムなど)、30b(例えば樹脂板やガラスなど)を貼合装置Aのベース70a、70bにセットする。このとき剥離装置Bの作業腕は、ベース70aが回転中心Oを中心としてベース70b側に回転できるように図2に示す退避位置b0にある。
(2)剥離装置Bの作業腕を図2に示す作動位置b1まで回転させる。このときローラ20に保持された粘着テープ10の先端部分は2個のガイドローラ22にガイドされて、保護シート40の方向に下垂している。
(3)ローラ20を保護シート40の方向に下降させ、粘着テープ10の先端部分の接着材10cにより粘着テープ10を保護シート40に接着させる。このとき押し当て部50は初期位置a1にあり、弾性体51によって粘着テープ10を保護シート40に加圧する。
(4)ローラ20が前進方向(図4の左方向)に水平移動し、粘着テープ10を繰り出す。このとき、ロータリーダンパー24はローラ20の回転に一定の抵抗を与え、ローラ20が回り過ぎないようにすることで不要な粘着テープ10の繰り出しを防止する。
(5)エアシリンダーC2によりローラ20の延長部20aの外周にブレーキシュー23を押し当てローラ20の回転を止め粘着テープ10の繰り出しをストップする。
(6)エアシリンダーC1によって押し当て部50が前進移動するとともに、粘着テープ10に前進方向の押力50aを付与するとともに、ローラ20を逆方向に水平移動(後退)させる。このローラ20の後退にともない保護シート40が剥離し始める。
(7)更にローラ20の後退にともない保護シート40全体は平板状部材30aから剥がれ、平板状部材30aの接着材30cが全面的に露出する。
(8)剥離装置Bの作業腕を保護シート40と反対方向に上昇させ、ついで退避位置b0まで回転させる。このとき平板状部材30aから剥がれた保護シート40は粘着テープ10と一体となって剥離装置Bの作業腕と連動して移動する。
(9)エアシリンダーC1圧力解除によって前記押し当て部50が初期位置a1まで後退する。
(10)エアシリンダーC2圧力解除によりブレーキシュー23をローラの延長部20aの外周から開放させ、ローラ20が自由に回転することによって粘着テープ10の繰り出しができる状態にする。
(11)粘着テープ10の繰り出された一部を切断することによって、一体となっている保護シート40と粘着テープ10とを廃棄。このとき、ロータリーダンパー24の作動により、切断した粘着テープ10の先端部分が初期位置a1からずれないようにローラ20の回転にブレーキをかける。
(12)ベース70aを回転中心Oを中心としてベース70b側に回転させ、図3に示すように、平板状部材30a、30bを重合させ、平板状部材30a、30bの重合部の接着材30cにより、両者を貼合してディスプレイなどの製品を製造する。
【0032】
次に図10から図14により、本発明の第2実施例について説明する。
【0033】
この第2実施例の構造は、基本的には第1実施例と同じである。異なるのは、構造が非常にシンプル化されており、第1実施例の移動手段60(エアシリンダーC1)、押し当て部50、弾性体51を無くす一方で、バネ性を有する板材で押し当て体53を形成し、多端を保護シート40側に下垂させて設けた点である。
【0034】
第2実施例は以上の構成であるから、図10の初期状態で粘着テープ10は2個のガイドローラ22,22でガイドされながら、その下端が前記押し当て体53と接触した形で前記保護シート40側に下垂している。
【0035】
次に、図11に示すように、前記ローラ20が前記保護シート40側に下降移動すると、前記押し当て体53にガイドされた状態で前記粘着テープ10が前記保護シート40に接触し粘着し始め、更に前記ローラ20が下降および前進方向(図面左方向)に水平移動すると、前記粘着テープ10が必要な長さだけ前記保護シート40に粘着し終える(図12参照)。
【0036】
次に、図13に示すように、前記ローラ20が前記保護シート40と反対側に上昇移動および後退方向(図面右方向)に水平移動すると、前記粘着テープ10に引き剥がしの引っ張り力が作用し、前記粘着テープ10の粘着力により前記保護シート40が一体となって、前記保護シート40が平板状部材30aから剥れ始め、更に前記ローラ20を後退方向(図面右方向)に水平移動および上昇移動すると、完全に前記保護シート40が平板状部材30aから剥れる。
【0037】
そして、剥離装置Bの作業腕を退避位置b0まで回転させて、粘着テープ10の一部を切断することによって、一体となっている保護シート40と粘着テープ10とを廃棄する。
【0038】
なお、前記押し当て体53はバネ性を有する板材で作成するから、一連の粘着作業に柔軟に対応する。また前記押し当て体53を図示するように前記ガイドローラ22と一体に形成するとコストダウンに寄与するが、前記ガイドローラ22とは別体に形成し剥離装置Bの作業腕側の部材に固定してもよい。
【符号の説明】
A 貼合装置
B 保護シート剥離装置
O 回転中心
a1 初期位置
a2 前進位置
b0 保護シート剥離装置の退避位置
b1 保護シート剥離装置の作動位置
10 粘着テープ
10c 接着材
20 ローラ
20a ローラの延長部
21 ローラ回転軸
22 ガイドローラ
23 ブレーキシュー
24 ロータリーダンパー
30a 平板状部材(例えば機能フィルムなど)
30b 平板状部材(例えば樹脂板やガラスなど)
30c 接着材
40 保護シート
50 押し当て部
50a 押し当て部の前進方向の押力
50b 押し当て部の保護シート側への押力
51 弾性体
52 軸
53 押し当て体
60 移動手段
70a ベース
70b ベース
C1 エアシリンダー
C2 エアシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状部材の平板部分を重ね合わせて貼合する貼合装置に用い、平板状部材をカバーする保護シートを粘着テープを利用して剥離する保護シート剥離装置であって、剥離作業が済んだ前記粘着テープの一部を切断することにより、前記保護シートに粘着した前記粘着テープと前記平板状部材から剥離した前記保護シートとを一体のまま廃棄することを特徴とする保護シート剥離装置
【請求項2】
粘着テープを保持し、かつ繰り出すローラを前記平板状部材に対して上下方向および前進・後退の水平方向に移動可能とし、前記粘着テープを前記平板状部材側および前進方向に加圧する押し当て部を設け、前記ローラから繰り出された前記粘着テープと前記保護シートとのなす角度を鋭角に保持した状態で前記押し当て部によって前記粘着テープに前進方向の押力を与え、かつ前記ローラの後退によって前記粘着テープに前記押力と逆方向の引張り力を与えることによって前記保護シートを前記平板状部材から剥離することを特徴とする請求項1記載の保護シート剥離装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−218770(P2011−218770A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102669(P2010−102669)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(500093085)三共株式会社 (1)
【Fターム(参考)】