説明

質の保証された生物学的サンプルおよびこのサンプルを含む組成物を生成するための方法

【課題】薬剤調製物または血漿誘導剤の生産に関連して、微生物(ウイルス)の充填に関し、核酸増幅法により質の保証された生物学的サンプルのプールを生成する、安価かつ単純な方法を提供する。
【解決手段】PCRによる核酸増幅法を使用して、肝炎ウイルス、レトロウイルス、およびパルボウイルス等の微生物の充填に関して、個々の血液提供物、血漿、血清および細胞培養バッチからなる群より選択される、質の保証された生物学的サンプルのプールを生成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸増幅法を使用する、微生物の充填に関して保証された質を有する生物学
的サンプルのプールを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的サンプル(例えば、血漿の提供物または細胞培養物の上清のバッチ)は、所望
でない微生物(特に、ウイルスまたは外来DNA)が、混入し得る。これらの混入は、こ
のような生物学的調製物から生成され、そして、ヒトに投与される調製物において、所望
でない反応を導き得る。
【0003】
とりわけ、ヒト血漿は、血漿誘導剤を生成するため(特に、血漿成分の遺伝的欠失また
は後天性欠失における補充療法のため)の開始物質として、臨床的に非常に重要である。
この種の薬学的調製物は、一般に、単一の提供物(donation)から生産されるの
ではなく、大多数の個体の提供物からなる血漿のプールから生産される。
【0004】
しかし、ヒト血漿を使用する場合、薬学的調製物または血漿誘導剤に移され得るいずれ
の感染病原体も含まないように注意しなければならない。血液中におそらく存在し得る感
染病原体は、とりわけ、血液(血行性ウイルス)(例えば、HIウイルスまたは肝炎ウイ
ルス(A、B、C、D、EまたはG)およびパルボウイルス)を介して移され得るウイル
スである。
【0005】
血漿誘導剤を含む薬物の大きな要求のために、これらの薬物の経済的な生産は、工業的
規模に基づいてのみ可能である。
【0006】
血漿は、ドナーから獲得され、そして、薬学的調製物の生成のためにプールされる。通
常のプールは約2000〜6000の個体の血漿の提供物からなる。従って、全血漿プー
ルが、単一のウイルスが混入した血漿提供物によって汚染される危険が存在する。20世
紀の前半の終わりまでに加熱することによって、ヒトアルブミンをウイルスに安全な調製
物に処理する際、すでに成功を収めたが、これは、血漿から獲得可能な全ての他の薬物と
一緒の場合、それらの熱に対する感受性のために、最初は可能ではなかった。今日までに
、適切に調製されたアルブミン調製物の使用が何百万回も存在したが、ヒトの血液で発生
するウイルスの感染は全くなかった。
【0007】
対照的に、いくつかのウイルス感染(特に、肝炎ウイルスの感染)は、血漿由来の多数
の他の薬物と共に報告されており、そして、1980年代以降、AIDSウイルスの感染
の報告が増加している。
【0008】
1980年頃、熱処理によってウイルス混入物の不活化を達成する目的で、熱処理が、
適切に安定した第VIII因子の濃縮物で、初めて実行された。しかし、まず第VIII
因子の活性の多大な喪失を受け入れなければならず、そして、実際の不活化能力は、不明
のままであった。
【0009】
最後に、熱不活化方法の改良および他の新しい不活化方法の使用を介して、ほとんどの
場合に受容体におけるウイルス感染を生じない血漿由来の薬物を生成することは可能であ
る。この開発はまた、ウイルス血症の可能性および従ってウイルス混入血漿が存在する全
てのドナーおよび提供物を除外する目的で、ドナーおよび提供物の選択の改善と協力して
いた。
【0010】
長い間、陽性の結果を生じる提供物を除外すること、および、血液産物の生成のための
開始物質として機能することが意図されたより大きい血漿プールにウイルスを導入しない
ようにすることは、血液中の特定のウイルスへの抗原またはそれに対する抗体のどちらか
の検出を介して、試みられてきた。個々のドナーが、全ての試験において、疾患のいずれ
の症状または病理学的試験結果を有さない場合でも、特定のウイルスは、長期間高濃度で
さえ血中に存在し得る。現在、そのような特定のウイルスによるウイルス血症の発生は、
増幅方法の補助を使用して、明白に検出され得る。
【0011】
ウイルスの混入した単一の血漿提供物はもちろん、血漿単位のプール化を介して希釈さ
れ得るが、増幅反応の補助を使用するウイルスゲノム配列の検出は、非常に敏感であるた
め、これらの希釈液におけるウイルスゲノムまたはこれらの配列はそれぞれ、明白に決定
され得、そして、上記のように、それらが特定の検出限界以下の場合、感染の可能性に関
する限り、これらはいずれの臨床的関連性も有さない。
【0012】
「EEC Regulatory Document Note for Guida
nce,Guidelines for Medicinal Procucts De
rived from Human Blood and Plasma」(Biolo
gicals 1992,20:159−164)に従うECガイドラインは、血漿ドナ
ーまたは血漿提供物の制御のための質保証システムを提案する。従って、全ての血漿提供
物は、B型肝炎抗原、HIV−1抗体およびHIV−2抗体などのウイルスマーカーの不
在について有効な試験で試験されなければならない。なぜなら、これらは、血漿ドナーの
ウイルス感染に対応する指標であるためである。C型肝炎感染を除外するための試験もま
た、行なわれる。
【0013】
ヨーロッパの薬局方(European Pharmacopoeia、第2版、第2
部、1994年、853−4頁)によると、全ての提供物におけるC型肝炎ウイルス抗体
およびHIV抗体について、B型肝炎表面抗原を決定するために、特別な試験が行なわれ
ることが必要とされる。
【0014】
1995年3月14日のFDAガイドラインは、さらなる安全要素として目的産物(免
疫グロブリン産物)のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)試験を提供する。
【0015】
提案された試験にも関わらず、ECガイドラインでは、これら全てのウイルスマーカー
のみのコントロールによる個々の血漿提供物の安全は十分ではないことが強調されている
。血漿サンプルにおけるこのマーカーの不在が確認される場合でも、ドナーのウイルス血
症は、除外され得ない。ウイルス抗原および対応する抗体は、必ずしも感染後、直ぐに検
出可能というわけではない。ウイルス感染の最初のマーカーは、感染性物質との接触後、
何週間または何か月後まで、惹起されない。感染の後および抗体の発生の前の重要な期間
は、一般的に「潜伏期間」(window period)と特徴付けられる。しかし、
最初のウイルスマーカーが検出可能な感染後の時間は、ウイルスによって変化する。
【0016】
さらに、血漿から生成される多数の薬物について、生成プロセスの一部として、欠失お
よび不活化が発生し、そして、そのような産物自身は、ウイルスに非常に安全であること
もまた、公知である。
【0017】
けれども、血漿誘導剤のウイルス不活化が、工業規模で、極めて首尾良く行なわれてき
た。それにもかかわらず、まれな場合に、AIDS、A型、B型およびC型肝炎のような
血行性ウイルスの伝達が存在してきた。従って、定常的生産方法(Lancet 340
,305−306(1992);MMWR 43(28),505−509(1994)
;Thromb.Haemost.68,781(1992))にも関わらず、少数の生
産バッチにおける生産者によって、ウイルスが混入した産物が生産されてきたと想定しな
ければならない。このことの原因は、おそらく、特定の開始バッチの極めて高度な混入に
求められるべきである。間接的な方法のみが、血漿の生産におけるウイルスの混入した血
漿提供物を除外するのに利用可能であるので、開始物質は非常に高度に混入しているため
別の成功したウイルス不活化方法およびウイルス欠失化方法は、ウイルスに安定な目的産
物を生成するのにもはや十分ではない可能性がある。
【0018】
大部分のヒト病原性ウイルスについてのヒト感染用量は未知であり、そして、現在のと
ころ、血漿プールを試験する際に検出可能でさえないので、混入した個々のサンプルを同
定することによって、全ての単一の混入を見つけることが所望である。従って、使用され
る核酸増幅試験は、確かに極めて感受性であるが、非常に費用がかかる。それで、それら
の使用は、既知のヒト病原性ウイルスで、正当化されるが、ヒトの病原性効果が、全く知
られていないかまたは記載されていない他の微生物について、または、非常に高い病原体
用量のみで感染性である他の微生物について、この費用は必要でない。
【0019】
特に、特許文献1および特許文献2は、核酸増幅方法および/または抗体試験を使用する血漿プールについての試験系を記載する。特許文献3は、血漿プールを試験するための方法を開示する。この方法を使用して、第1のプールを調製し、そして、PCR法によって試験する。このPCR試験が陽性の場合、第2のより小さいサブプールが調製され、そしてPCR法によって再び試験される。このプロセスは、混入した個々の提供物が同定されるまで、繰り返される。スクリーニング方法の一部として開示される、抗体試験または前もってセットされた規定限界値の維持はまた、特許文献4に従って想定される。
【0020】
しかし、記載された核酸増幅方法は、当業者が、最も優れた感受性を可能とする増幅方
法を常に使用しようと試みる事実を共有する。しかし、記載されるように、これらの高い
感受性のPCR試験は、非常に費用がかかる(特に、個々の生物学的サンプルのプールの
一連の試験において)。しかし、より低い感受性を有するPCR試験(それは、はるかに
費用において好ましい)は、一般的にそのような試験において避けられる。なぜなら、(
低い)検出限界下の混入の危険が、付随して高くなるためである。
同様に、組換え細胞培養由来の上清を使用してでさえ、微生物または宿主細胞由来の核
酸によって、混入が、発生し続け得る。このような混入は、もちろん、存在すべきでない
か、または、その上清より精製されるべき薬学的調製物において特定の最大値(限界値)
においてのみ存在すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第96/35437号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5591573号明細書
【特許文献3】米国特許第5591573号明細書
【特許文献4】国際公開第96/35437号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は、従って、微生物(特にウイルス)の充填に関して、質が保証された核
酸増幅方法を使用する生物学的サンプルのプールを生成する方法、他方で、混入した個々
のサンプル(特に高度に混入した個々のサンプル)の信頼できる同定、ならびに、プール
におけるそのような混入についての特定の限界値への固執を可能とする方法を利用可能と
する方法であり、他方、費用の低減および先行技術から公知のプール試験方法より単純な
方法をもたらすことである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に従って、この課題は、以下の工程によって特徴付けられる核酸増幅法を使用す
る微生物の充填に関して質が保証された生物学的サンプルのプールを生成する方法によっ
て解決され、この工程は以下を含む:
−生物学的サンプルからアリコートを取る工程、
−そのアリコートをスクリーニングプールと組み合わせる工程、
−第1の核酸増幅プロセス(それは、試験される微生物に関して、特定の選択された検
出限界DL−1を有する)によって、微生物のゲノム等価物の存在または含有量について
、スクリーニングプールを試験する工程、
−スクリーニングプールを試験する際、ゲノム等価物の現在の限界値を超えた場合、よ
り小さいプールに取られるアリコートを組換えることによって、スクリーニングプールを
スクリーニングサブプールに分ける工程、
−さらなる核酸増幅プロセス(試験される微生物について特定の選択検出限界DL−2
を有し、ここで、DL−1<DL−2である)によって試験される微生物のゲノム等価物
の存在または含有量について、スクリーニングサブプールを再試験する工程、
−DL−2を超えるこれらのサンプルを同定および除去する工程、ならびに
−非除去サンプルを、質が保証されたプールに組み合わせる工程。
【0024】
本発明に従って、それらの感受性に関して異なる少なくとも2つの核酸増幅プロセスを
提供することによって、効率的な(プール試験の高い感受性のために)およびそれにもか
かわらず費用のかからない方法が、利用可能であり得る。なぜなら、サブプールの試験は
、前もっての核酸のさらなる抽出なしで、より感受性でない核酸増幅法(従って、それは
、決定的により費用がかからずそしてより高価でない)によって、個々のサンプルについ
て実行されるためである。
【0025】
従って、本発明の方法を使用して、第1の工程において、スクリーニングプールは、非
常に感受性および定量的な方法を使用して、核酸混入について試験された。非常に費用の
かかる混入した個々のサンプルまたは提供物の決定(それは、はるかに多数のさらなる試
験を含む)は、より感受性でない核酸増幅法を使用して決定される。そうする際、関連し
た混入が見過ごされる危険は全くない。なぜなら、スクリーニングプール試験は、できる
だけ感受性な方法を使用して、行なっているためである。しかし、他方、混入した個々の
サンプルまたは群についての除去方法の費用および時間の消費は、決定的に減少する。そ
のような混入した個々の提供物が、これらの理由のために、現在までに実行されていない
、これらの場合では、本発明の方法は、初めて、価値のある原材料(それは、個々の提供
物を表す)を使用する可能性を、低費用で提供し、そして、これらのサンプルが廃棄され
ることを防ぐ。
【0026】
核酸増幅法の感度は、本発明に従って、関連した核酸増幅法を使用してさらに検出可能
であるゲノム等価物の量として、設定される。正確に確立された限界値を使用してこの種
の方法を提供することは、当業者にとって容易に可能であり、通常の知識の一部である。
【0027】
本発明は従って、以下を提供する。
(1) 質の保証された生物学的サンプルのプールを生成するための方法であって、この
方法は、以下の工程:
−上記生物学的サンプルからアリコートを取る工程;
−上記収集されたアリコートを、スクリーニングプールに組み合わせる工程;
−上記試験される微生物についての検出限界(DL−1)を有する第1の核酸増幅プロ
セスによって、微生物のゲノム等価物の存在または含有量について、スクリーニングプー
ルを試験する工程;
−上記スクリーニングプールを試験する際、ゲノム等価物の現在の限界値を超える場合
、上記収集されたアリコートを、より小さいプールに組み換えることによって、上記スク
リーニングプールを、スクリーニングサブプールに分ける工程;
−第2の核酸増幅プロセス(上記プロセスは、上記試験される微生物についての選択さ
れた検出限界値(DL−2)を有し、ここで、DL−1<DL−2)によって試験される
上記微生物のゲノム等価物の存在または含有量について、上記スクリーニングサブプール
を再試験する工程;
−DL−2を超えるサンプルを除去する工程;ならびに
−上記質の保証された生物学的サンプルのプールを生成するために残りのサンプルを組
み合わせる工程;
を包含する、方法。
(2) 上記核酸増幅法がPCRである、項目1に記載の方法。
(3) 上記試験される微生物がウイルスである、項目1に記載の方法。
(4) 上記試験される微生物が肝炎ウイルス、レトロウイルス、およびパルボウイルス
からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(5) 上記スクリーニングプールを試験する際の上記限界値が、DL−1と10ゲノ
ム等価物/mLとの間に設定される、項目1に記載の方法。
(6) 上記生物学的サンプルが、個々の血液提供物、血漿、血清および細胞培養バッチ
からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(7) 上記スクリーニングプールが512の生物学的サンプルから形成され、そして、
24のサブプールに分けられる、項目1に記載の方法。
(8) 上記さらなる核酸増幅法が、上記第1の核酸増幅法の後すぐに行われる、項目1
に記載の方法。
(9) 項目1に記載の方法によって獲得された、質の保証された生物学的サンプルのプ
ール。
(10) 項目9に記載のプールおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物

(11) 血漿タンパク質、および組換え的に産生されたタンパク質からなる群より選択
される少なくとも1つの成分を含む、項目10に記載の薬学的組成物。
(12) 上記肝炎ウイルスが、HAV、HBV、HCV、HDV、HEVおよびHGV
からなる群より選択される、項目4に記載の方法。
(13) 上記レトロウイルスが、HIV−1およびHIV−2からなる群より選択され
る、項目4に記載の方法。
(14) 上記パルボウイルスがパルボB−19である、項目4に記載の方法。
(15) 上記限界値が約10ゲノム等価物/mlに設定される、項目5に記載の方法

(16) 上記血漿タンパク質または組換えタンパク質が酵素である、項目11に記載の
組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の方法は、とりわけ、微生物の充填に関するプールの質の保証について適してお
り、その微生物は、病原性または毒性が低いか、または、確立された限界値以下に存在す
る充填は、それぞれの場合において、薬学的調製物の調製まで続く精製プロセスの経路に
おいて、除去されると想定され得るか、または、この種の薬学的調製物におけるこの限界
値に対応する混入の量が無毒であり、そして、副作用がないと想定され得る。この特定の
例は、パルボウイルスの混入からなり、特にパルボB19からなる。
【0029】
パルボウイルスB19は、脂質膜を有さず、従って、ウイルス不活化法に対して比較的
抵抗性である32nmの直径を有する一本鎖DNAウイルスである。従って、多数の不活
化法は、例えば、低温殺菌(60℃、12時間)のような物理的方法または有機性溶媒(
TNBPおよび/または界面活性剤)のような科学的処理は、満足する結果を有さない。
感熱処理のみが、効果的であると証明されたようである。
【0030】
パルボウイルスB19は、無毒な感染性紅斑(erythma invectiosu
m)の原因病原体であり、関節痛および関節炎がときどき観察される。これらは、しばし
ば、致死に至るので、子宮内の感染は恐れられている。B19の限られた循環に脅かされ
る患者としては、慢性的な溶血性貧血を有する患者、骨髄移植を伴う患者、先天性/後天
性免疫不全を有する患者ならびに妊娠した女性が挙げられる(Sibrowskiら、B
eitr Infusionsther.Basel,Karger,1990,26,
22−26)。
【0031】
産業国における血清有病率は、5歳以下の子供では、2〜10%、そして、20歳以上
の成人では、40〜60%であり、そして、70歳以上の成人では、85%である。従っ
て、この高い血清有病率は、血漿プール試験において、大多数の陽性結果を生じ、従って
、高度に混入した個々のサンプルを決定するために、大多数のさらなる試験の必要性を生
じる。
【0032】
EP−A−0 922 771は、パルボウイルスDNAが、DNA含量が10〜1
ゲノム等価物/mLを上回るサンプル中だけでのみ検出され得るように、抽出、増幅
または検出における準最適条件の使用を介して、PCRの感度が減少する、血液血漿にお
ける高いウイルス濃度を検出するための方法を記載する。しかし、この方法は、これがプ
ールの試験に適していないという不利益を有する。
【0033】
それにもかかわらず、細菌またはウイルスのように発生する全ての微生物は、本発明に
従って、分析され得、ここで、とりわけ、ウイルスに関する質の保証が、血液および血漿
提供物の試験において、特に重要である。
【0034】
好ましくは、肝炎ウイルス(特に、HAV、HBV、HCV、HDV、HEVおよびH
GV)、レトロウイルス(特に、HIV−1およびHIV−2)ならびにパルボウイルス
(特に、パルボB19)は、本発明に従う方法を使用して試験されるか、または、血漿プ
ールは、これらの種類のウイルスに関して、質が保証されている。
【0035】
種々のバッチの組換えタンパク質の産生を試験する際、宿主細胞核酸(本明細書中では
、真核生物細胞もしくは原核生物細胞またはDNAもしくはRNAは、本明細書中では微
生物として検出される)の混入あるいは特定の細菌もしくはウイルス混入を有する混入の
特定の(規定の)限界値の維持が試験される。
【0036】
本発明に従う、特に好ましい方法の変形型は、第1の核酸増幅法の検出限界DL−1と
10ゲノム等価物/mLとの間のスクリーニングプールを試験する際に、限界値を設定
することからなり、ここで、例えば、特に約10ゲノム等価物/mLの値が、パルボB
19について特に効率的であると証明されてきた。好ましくは、相対限界はまた、相対検
出値と一致し得る。
【0037】
第1の核酸増幅法についての検出限界DL−1は、好ましくは、10〜10ゲノム
等価物/mLの範囲に位置するが(しかし、10〜50GE/mLまでなり得るか、また
は、例外の場合では、より低くなりえる)、一方、検出限界DL−2は、通常10〜1
ゲノム等価物/mLとなるように選択される。DL−1およびDL−2は、好ましく
は、少なくとも10のうち1の能力だけ異なるが、10のうち約2の能力の相違が、本発
明に従って、特に効率的である。なぜなら、この方法において、混入した個々の提供物は
なお、信頼して同定され(これは、本発明に従って、必要である)、他方、スクリーニン
グプロセスについてのコストおよび費用は、既知の方法と比較してかなり減少され得る。
【0038】
核酸の増幅は、本発明に従って、文献中に記載される一連の増幅プロセスによって、行
なわれ得る;PCR法は、本明細書中で、特に効果的であることが証明され、そして、広
範な用法および産業的有効性ならびにこのコストのために、PCR法はまた、好ましい。
PCR増幅法は、Mullisらによって、1983年に最初に記載された(米国特許第
4,683,195号および米国特許第4,683,202号)。ウイルスゲノム配列は
また、「ネスト化PCR」によって増幅され得る(Methods Enzymol.1
55(1987),335−350)。RNAの増幅および検出のために、RNAは、最
初に、DNAに転写されなければならない。この方法は、逆転写酵素を使用して行なわれ
、そして、RT−PCRと呼ばれる(Cell 50(1987),831−840)。
【0039】
増幅産物の分析は、伸長プロセスおよびその後続くハイブリダイゼーションまたは産物
のゲル電気泳動分離における標識されたヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドプライマ
ーの使用を介して行なわれ得る。
【0040】
増幅DNAフラグメントの検出は、例えば、2つの蛍光色素を有するプローブの方法に
よって、行なわれ得る。この方法は、例えば、Livakらによって記載される(PCR
Method and Appl.1995;4:357−362)。このプローブの
特別な性質は、プローブの5’末端に付着された色素(FAM)の蛍光(レポーター)が
、第2の蛍光色素(TAMRA)(消光剤)の存在によって減少され、これが、プライマ
ーの3’末端に配置されるという事実に依存する。
【0041】
増幅中には、新しいDNA鎖が、熱安定性のDNAポリメラーゼ、好ましくは、Taq
ポリメラーゼの効果の元で、すぐに合成される。そうする際に、DNAポリメラーゼは、
個々の鎖からプローブを置換するだけではなく、そのヌクレオチド鎖切断活性によって分
解し、従って、2つの蛍光色素を放出する。レポーター染色の蛍光は、消光剤によっても
はや抑制されず、増加する。この蛍光の増加は、PCR中にABI prism 770
0において連続的に記録される。閾値(蛍光の増加が陽性シグナルとして評価されて開始
する)は、いくつかの陰性コントロールと比較して測定される。
【0042】
未知のサンプルにおける微生物(例えば、パルボB19)を使用する充填の定量化は、
外部の検量線を介して行なわれる。キャリアプラスミド(これは、増幅される配列を含む
)におけるパルボB19 DNAのクローニングされた断片は、さらに10コピー/反
応物から10コピー/反応物までの濃度で、直鎖状形態で同時増幅される。閾値(レポー
ター色素の蛍光シグナルがまず、ベースラインを超えて上昇する、1回のPCRサイクル
に対応する)を確立することによって、検量線は、この閾値を超える未知のサンプルのパ
ルボB19 DNAの含有量が定量されるプログラムにおいて確立される。
【0043】
PCRについての代替的な方法としては、EP 0 320 308 AおよびEP
0 336 731 Aと関連するリガーゼ連鎖反応(LCR)、ならびに核酸配列ベー
ス増幅(NASBA)、EP 0 310 229に関連した自立配列複製(SSR)、
または、EP 0 373 960 Aに関連した転写ベース増幅系(TAS)が挙げら
れる。DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼのような増幅において同時にかまた
は段階的に使用され得る多数の酵素は、これらの方法において使用され得る。
【0044】
好ましくは、本発明に従って、内部標準(これを使用して、増幅の基本的機能が保証さ
れる)は、核酸増幅において加えられ得る。慣例的な試験において、本発明の方法に従っ
て得られる結果の理解は、通常、以下のように調べられる:
a)内部標準が全く検出されない(すなわち、可視バンドが全くない):例えば、増幅
反応の結果として(例えば、PCR)、決定が機能しなかった;この方法では、誤った陰
性結果が、除外され得る。
【0045】
b)内部標準のみが検出可能である(例えば、標準バンドのみが可視である):決定(
増幅反応(例えば、PCR)を含む)が機能し、サンプルは陰性である;
c)標準およびサンプル核酸は、検出可能である(例えば、両方のバンドが、可視であ
る):陽性サンプル。
【0046】
本発明に従って、試験について優先である生物学的サンプルは、個々の血液提供物、血
漿、血清または細胞培養バッチの群より選択される。予想される混入は、特に、これらの
生物学的サンプルで発生し、そして、これらはまた、生体の供給源由来の薬物の工業的製
造において優先して使用される。
【0047】
本発明に従う方法は、ロボット制御を使用する自動化バージョンで実行され得、従来の
基本骨格は、これに特に適している。当業者は、このようなスクリーニングプールの生成
について多数の異なった可能性について気付いている。例えば、Mortimer(Vo
x Sang.1997,73:93−96)は、二次元(2D)、三次元(3D)およ
び四次元(4D)プールでさえ記載する。例えば、512(8×8×8)の個々のサンプ
ルから生成された3Dプールを溶解するために、当業者は、明白に混入した個々のサンプ
ルを同定し得るために、例えば、24のサブプールを使用する。
【0048】
本発明に従って、第2の核酸増幅プロセスは、好ましくは、第1の核酸増幅後に、サブ
プールから直接実行される。このことは、さらなる核酸の抽出は、全く起こらず、むしろ
、サブプール中で、直接決定される。
【0049】
別の局面に従って、本発明はまた、生物学的サンプルの質が保証されたプール(これは
、本発明に従う方法を介して獲得され得る)および本発明に従う質の保証された調製物に
基づいて産生されるかまたは産生され得る薬学的調製物に関する。これらの薬学的調製物
は、好ましくは、タンパク質(特に、血漿タンパク質および組換え産生タンパク質、なら
びに酵素)の群から選択される少なくとも1つの構成成分を含む。
【0050】
本発明は、以下の実施例の方法によって、以下により詳細に例示されるが、これは、制
限されることを意図しない。
【実施例】
【0051】
(プール化)
512の血漿提供物のアリコートは、スクリーニングプールおよび24のサブプールに
対する3次元スキームの方法によってプールされる。
【0052】
(抽出)
スクリーニングプールからの核酸抽出は、QIAGENからのQIAmpバイアルキッ
トの改変プロトコールの方法によって実行する。このために、1mLのスクリーニングプ
ールを、超遠心分離に供し、上清を140μLに減少させた。QIAGENキットに従っ
て、560μL AVL溶解緩衝液を加えた後、混合物を、熱振盪器中で56℃で10分
間インキュベートした。この溶解物を、シリカカラムに適用し、これを8000rpmで
遠心分離することによって、強制的に通過させた。0.5mL洗浄緩衝液AWIおよびA
W2を使用して、それぞれ洗浄した後、カラムに吸着した核酸を、50μL HOを使
用して溶解した。
【0053】
(増幅)
20μL抽出物を、30μL Mastermixに添加することによって、パルボB
19 DNAの小フラグメントを増幅した。
【0054】
(5μL 10×TaqMan緩衝液、14μL 25mM MgCl、4μL 2
.5mM dNTP、1.5μL 10μM PT1.f(5’GACAGTTATCT
GACCACCCCCA3’)(配列番号Nr.1)、1.5μL 10μM PT1.
r(5’GCTAACTTGCCCAGGCTTGT3’)(配列番号Nr.2)、1μ
L 5μM PT1.p(5’6−FAM−CCAGTAGCAGTCATGCAGAA
CCTAGAGGAGA−TAMRA3’)(配列番号Nr.3)、1μL Tween
20(1%)、1.25μL ゼラチン(2%)、0.5μL AmpErase UN
G(1U/μL)、0.25μL AmpliTaq Gold(5U/μL)を使用す
るTaqMan PCR Core Reagent Kit、Perkin Elme
r)。
【0055】
増幅は、ABI prism 7700で、以下の条件下で、行なった:
1.AmpErase UNG反応、50℃、2分間
2.最初の変性、95℃、10分間
3.95℃、15秒間および58℃、1分間のサイクル。
【0056】
PCRは、PCR間の蛍光の増加によって評価する。閾値(すなわち、基底ノイズを超
えてシグナルが増加するサイクル)は、定量化のために役立つ。この場合のパルボB19
ゲノムのクローニングされたフラグメントを有する一連の標準直鎖状プラスミドの閾値は
、スクリーニングプールの抽出におけるパルボB19濃度を測定するためのベースライン
として役立つ。
【0057】
サンプル中で測定されるゲノム等価物の数が、スクリーニングプール中における10
GE/mLの限界値より低い場合、このプールに含まれるサンプルは、使用のためにクリ
アーしている。他方、閾値が限界値を超える場合、スクリーニングプールは溶解される。
【0058】
(溶解)
スクリーニングプールの24サブプールを、自動の方法によっていくつかの工程で、H
O中で、1:200に希釈し、そして、TaqMan PCRにおける抽出なしで使用
する。
【0059】
(溶解物の増幅)
パルボB19 DNAの小フラグメントを、20μLサブプール希釈液(サブプールの
0.1μLに対応する)を30μLマスターミックスに添加することによって、増幅する

【0060】
(5μL 10×TaqMan緩衝液、14μL 25mM MgCl、4μL 2
.5mM dNTP、1.5μL 10μM PT1.f(5’GACAGTTATCT
GACCACCCCCA3’)、1.5μL 10μM PT1.r(5’GCTAAC
TTGCCCAGGCTTGT3’)、1μL 5μM PT1.p(5’6−FAM−
CCAGTAGCAGTCATGCAGAACCTAGAGGAGA−TAMRA3’)
、1μL Tween20(1%)、1.25μL ゼラチン(2%)、0.5μL A
mpErase UNG(1U/μL)、0.25μL AmpliTaq Gold(
5U/μL)を使用するTaqMan Gold Kit、Perkin Elmer)

【0061】
増幅は、ABI prism 7700で、以下の条件下で、行なう:
1.AmpErase UNG反応、50℃、2分間
2.最初の変性、95℃、10分間
3.95℃、15秒間および58℃、1分間のサイクル。
【0062】
(評価)
PCRは、PCR間の蛍光の増加によって評価する。同時に増幅された既知の
シリーズの値と比較して、閾値(すなわち、基底ノイズを超えてシグナルが増加するサイ
クル)を決定することによって、スクリーニングサンプルの抽出物中のゲノム等価物の数
を決定する。
【0063】
供給物が0.1μL物質である場合、少なくとも10GE/mLの含有量を有するサ
ンプルのみが、シグナルを生成し得るので、溶解物中で陽性として認識される個々の提供
物は廃棄され、そして、残渣は、使用のために放出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明

【公開番号】特開2010−110327(P2010−110327A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282277(P2009−282277)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【分割の表示】特願2005−344684(P2005−344684)の分割
【原出願日】平成12年8月14日(2000.8.14)
【出願人】(501056094)バクスター アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】