説明

質量分析装置

【課題】 制御部と電圧発生部とを接続する信号線が断線しても、互いに近接したエンドキャップ電極とフライトチューブとに逆極性の高電圧が印加され放電が生じることを防止する。
【解決手段】 正極性、負極性を指示する信号線8A、8Bを独立に設け、共に「H」でアクティブ、「L」で非アクティブとし、各信号線8A、8Bの電圧発生部5、6の入力端にはプルダウン抵抗51、52、61、62を接続する。さらに処理回路53、54により両信号線8A、8Bが共に「H」であるときには「L」を出力し、スイッチ56、57、66、67をオフさせる。これにより、信号線8A、8Bの一方で断線が生じたときでも、その断線箇所の後方で信号レベルは「L」に固定され、他方の断線の無い電圧発生部と同一極性の電圧を出力する又は0Vを出力する。したがって、電極13とフライトチューブ31とに逆極性の高電圧が印加されることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は質量分析装置に関し、更に詳しくは、イオントラップと飛行時間型質量分析器(TOFMS)とを組み合わせた質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行時間型質量分析装置は、通常、加速したイオンを電場及び磁場を有さない飛行空間内に導入し、イオン検出器に到達するまでの飛行時間に応じて各種イオンを質量数(質量/電荷)毎に分離するものである。こうした飛行時間型質量分析装置のイオン源として、イオントラップを利用したものが知られている(例えば特許文献1など参照)。
【0003】
図4はイオントラップ飛行時間型質量分析装置の概略構成図である。典型的なイオントラップ1は、図4に示すように、中央のリング電極11と、該リング電極11を挟んで両側に設けられた一対のエンドキャップ電極12、13とにより構成される。通常、リング電極11に高周波電圧を印加してイオントラップ1内部のイオン捕捉空間14に四重極電場を形成し、MALDI2等のイオン発生部で発生したイオンを該電場によって捕捉して蓄積する。イオンはイオントラップ1の内部で生成される場合もあり得る。
【0004】
イオントラップ1の内部では、分析目的等に応じて、単にイオンを蓄積するのみならず、場合によっては、分析対象のイオンの質量数に応じて高周波電圧の大きさを変化させ、イオン捕捉のポテンシャルを最適値に保つことによりイオンの振動運動のクーリングを行ったり、質量数によるイオンの分離選別を行ったり、或いは、イオンの構造解析を行うために選別されたイオンを解離させたりする、といった処理が行われる。こうした各種の処理によりイオントラップ1内部に分析対象となるイオンが用意された時点で、リング電極11への高周波電圧の印加を停止する。引き続いて、エンドキャップ電極12、13にイオン引き出し用の電圧を印加して、イオントラップ1内部にイオン引き出し用電場を形成する。この電場によりイオンは加速されてイオン通過穴13aを通ってイオントラップ1から飛び出す。
【0005】
TOFMS3は内部に飛行空間を形成するフライトチューブ31とイオン検出器32とを備え、イオントラップ1から飛び出したイオンはフライトチューブ31内に導入されて、そのイオンの質量数に応じた速度で飛行しイオン検出器32に到達する。即ち、様々なイオンは質量数に応じて異なる飛行時間を以てイオン検出器32に到達するので、その飛行時間に基づいてイオンの質量数を取得することができる。
【0006】
出口側エンドキャップ電極13やフライトチューブ31に印加される電圧の極性は分析対象のイオンの極性に応じて変える必要があり、そのために、従来、制御系の配線は図5(a)に示すようになっている。即ち、制御部4とエンドキャップ電極電圧発生部5との間は、エンドキャップ電極電圧の印加タイミングを指示するためのイオン排出指示信号線7と、分析対象のイオンの極性(正/負)に応じて出力電圧の極性を指示するための極性指示信号線8とが接続され、フライトチューブ電圧発生部6には極性指示信号線8のみが接続されている。信号線7、8の信号レベルは「H」(=論理「1」)又は「L」(=論理「0」)の2状態であり、極性指示信号線8上の信号POS/NEGは正電圧を印加する際に「H」、負電圧を印加する際に「L」となるように規定されている。他方、イオン排出指示信号線7上の信号はイオントラップ1からイオンを排出する際に「H」、それ以外の期間に「L」となるように規定されている。
【0007】
制御部4は上記のような規定に従って制御信号を送出するから、正イオンの分析を行う際には、図6に示すように、極性指示信号線8には「L」を出力し(図6(a))、イオン排出指示信号線7にはイオン排出期間にのみ「H」となる矩形波信号を出力する(図6(b))。これによって、フライトチューブ31には連続的に−10kVの高電圧が印加され(図6(c))、出口側エンドキャップ電極13にはイオン排出期間にのみステップ状に−10kVの高電圧が印加され(図6(d))、イオントラップ1から排出された正イオンがフライトチューブ31内を飛行して質量分析される。
【0008】
しかしながら、上記のような従来の構成では次のような問題がある。即ち、例えば図5(b)に示すように極性指示信号線8にあってフライトチューブ電圧発生部6の手前で断線が発生した場合、フライトチューブ電圧発生部6における信号線8の入力端の論理レベルはその入力回路の構成によって「H」又は「L」のいずれかに固定される。いま、例えばその入力端が「H」レベルに固定されてしまうとすると、フライトチューブ電圧発生部6は正極性が指示されているものとして動作し、フライトチューブ31に連続的に+10kVの高電圧を印加する。一方、エンドキャップ電極電圧発生部5は極性指示信号線8上の信号により負極性が指示されているものとして動作し、イオン排出時に−10kVの高電圧を出口側エンドキャップ電極13に印加する。このように出口側エンドキャップ電極13とフライトチューブ31とに極性の相違する高電圧が印加される事態になると、近接した部分で放電が生じ、電源回路の故障の原因となる。
【0009】
フライトチューブ電圧発生部6における信号線8の入力端の論理レベルが「L」レベルに固定されてしまう場合には、負イオンの分析時に上記と同様の問題が生じる。また、正負イオンの分析を交互に行うような分析モードでは、フライトチューブ電圧発生部6の入力端の論理レベルが「H」、「L」のいずれに固定される場合でも、上記のように出口側エンドキャップ電極13とフライトチューブ31とに極性の相違する高電圧が印加される状況となり、異常な放電が発生することになる。さらにまた、断線のみならず、信号線8が接地側(「L」レベル)、デジタル電源側(「H」レベル)のいずれかと短絡するような不具合が起きた場合でも同様の問題が生じ得る。
【0010】
【特許文献1】特開2004-214077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、イオントラップと飛行時間型質量分析装置とを組み合わせた質量分析装置において、制御信号線の断線や短絡などの不具合が発生した場合であっても、イオントラップの出口側エンドキャップ電極とフライトチューブとの間での放電を防止して、故障の拡大を回避することができる質量分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明は、エンドキャップ電極を含む複数の電極で囲まれる空間に形成した電場によってイオンを捕捉するイオントラップと、該イオントラップから外側に引き出されたイオンをフライトチューブ内に形成される飛行空間に導入して質量分析する飛行時間型質量分析器と、を有する質量分析装置において、
イオントラップからイオンを引き出す際に分析対象のイオンの極性(正/負)に応じて該極性と逆の極性の高電圧を出口側のエンドキャップ電極に印加する第1の電圧発生手段と、
分析対象のイオンの極性(正/負)に応じて該極性と逆の極性の高電圧をフライトチューブに印加する第2の電圧発生手段と、
第1及び第2の電圧発生手段に対して分析対象のイオンの極性又は印加電圧の極性を指示するとともに、第1の電圧発生手段に対してはさらにイオンの引き出しタイミングを指示する制御手段と、を具備し、
前記制御手段と第1及び第2の電圧発生手段との間に、信号レベルがH又はLのいずれか一方で正極性を指示しH又はLの他方で指示無しを示す正極性指示信号線と、信号レベルがH又はLのいずれか一方で負極性を指示しH又はLの他方で指示無しを示す負極性指示信号線との2本の極性指示信号線を配設し、
第1及び第2の電圧発生手段にあって前記2本の極性指示信号線の入力端にそれぞれ、指示無しを示す信号レベル側に該入力端をプルダウン又はプルアップする抵抗を挿入したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
従来、極性指示信号線は1本のみであって、例えばHで正極性、Lで負極性を示すというようにH、Lいずれもがアクティブとされていたのに対し、この発明に係る質量分析装置では、極性指示信号線は正極性、負極性毎に1本ずつ分離して設けられ、H又はLのいずれかがアクティブ(つまり正極性又は負極性の選択を意味する)、H又はLの他方が非アクティブ(つまり選択しないことを意味する)とされている。そして、第1及び第2の電圧発生手段の入力端では、抵抗によって2本の極性指示信号線がそれぞれ非アクティブ側にプルアップ又はプルダウンされている。したがって、2本の極性指示信号線のいずれか一方が断線した場合に、その断線が生じた箇所よりも後方の電圧発生手段の入力端では、その信号線はプルダウン又はプルアップによって非アクティブ側に固定される。非アクティブはその信号線上で極性が指示されていないことを意味するから、少なくとも他方の断線が発生していない極性指示信号線上で極性が指示されているときに、断線した側で誤って逆極性の指示が与えられることを回避することができる。
【0014】
それによって、第2の電圧発生手段は第1の電圧発生手段と同一極性の電圧をフライトチューブに印加するか、或いはフライトチューブに電圧を印加しないことになる。したがって本発明に係る質量分析装置によれば、極性指示信号線に断線が発生した場合でも、出口側エンドキャップ電極とフライトチューブとに互いに極性の相違する高電圧が印加されることが回避され、両者の間に異常な放電が発生することはない。それによって、軽度の不具合が電源回路の故障のような大きな不具合に拡大することを防止することができる。
【0015】
また、極性指示信号線の断線ではなく短絡や制御手段に何らかの不具合が生じた場合を考えると、2本の極性指示信号線が共にアクティブ、又は共に非アクティブになることがあり得る。通常、共に非アクティブの場合には電圧発生手段は高電圧を出力しないから特に問題とはならないが、共にアクティブである場合、回路構成によっては正極性の高電圧と負極性の高電圧とを同時に出力しようと動作して短絡等の問題が生じる。そこで、本発明に係る質量分析装置において、第1及び第2の電圧発生手段は、正極性指示信号線及び負極性指示信号線でそれぞれ正極性及び負極性を指示する信号レベルが同時に入力されたときに、いずれの指示も無効として処理する処理回路を有する構成とすることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、短絡等の不具合によって2本の極性指示信号線がそれぞれ正極性の選択指示、負極性の選択指示を行った場合に、こうした選択指示は異常であると判断してそれに従わないようにすることができる。それによって、上述したような正極性の高電圧と負極性の高電圧との同時出力による短絡が発生することがなく、さらに一層、装置の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の質量分析装置の一実施例について図面を参照して説明する。図1は本実施例によるイオントラップ飛行時間型質量分析装置の要部の構成図である。既に説明した図面と同一又は相当する構成要素には同一符号を付して、特に要しない限り説明を省略する。
【0018】
本実施例の構成では、制御部4とエンドキャップ電極電圧発生部5とを接続する信号線として従来の極性指示信号線8の代わりに、正極性指示信号線8A、負極性指示信号線8Bの2本の極性指示信号線が配設されている。正極性指示信号線8A及び負極性指示信号線8B上ではそれぞれ、信号レベルが「H」であるときに正極性電圧の出力、負極性電圧の出力(つまりアクティブ)を意味し、信号レベルが「L」であるときにはそれらの指示が無いこと(つまり非アクティブ)を意味する。通常、制御部4は正極性又は負極性のいずれかを必ず選択するから、正極性指示信号線8A上の信号POSと負極性指示信号線8B上の信号NEGとの組み合わせは、正極性を選択する場合には(POS,NEG)=(H,L)であり、負極性を選択する場合には(POS,NEG)=(L,H)である。(POS,NEG)=(L,L)又は(H,H)は信号の組み合わせとしては考え得るが、必ず極性を選択するという点から実際の制御では使用しない。
【0019】
各電圧発生部5、6において、正極性指示信号線8A及び負極性指示信号線8Bの入力端にはそれぞれプルダウン抵抗51、52、61、62が接続され、その後に処理回路53、63に入力されている。そして処理回路53、63を通した極性指示信号<POS>及び<NEG>は、正電圧発生部54、64の出力をオン/オフするスイッチ56、66、及び負電圧発生部55、65の出力をオン/オフするスイッチ57、67にオン/オフ切替制御信号として与えられている。スイッチ56、57の出力は接続されて、さらにスイッチ58を通して出口側エンドキャップ電極13に接続されている。また、スイッチ66、67の出力は接続され、そのままフライトチューブ31に接続されている。スイッチ56、57、58、66、67はいずれも切替制御信号が「H」であるときにオン(導通)し、「L」であるとオフ(遮断)する。
【0020】
処理回路53、63の基本的な機能は、上述したように正常な状態ではあり得ない(POS,NEG)=(H,H)という組み合わせの信号が入力された場合でも、スイッチ56と57、或いはスイッチ66と67とが同時にオンして正負の電圧発生部54と55、64と65の出力が短絡することを防止することにある。図2はこの処理回路53、63の一例を示す論理回路図である。正極性指示信号POS及び負極性指示信号NEGはエクスクルーシブORゲート71に入力され、その出力端は2個のANDゲート72、73の一入力端にそれぞれ接続されている。それら2個のANDゲート72、73の他方の入力端には正極性指示信号POS及び負極性指示信号NEGがそれぞれ入力されている。
【0021】
この処理回路53、63の動作を説明すると、エクスクルーシブORゲート71は2つの入力端の信号レベルが同一でないときのみ「H」を出力するから、(POS,NEG)=(H,L)又は(L,H)のとき出力は「H」になる。換言すれば、(POS,NEG)=(L,L)又は(H,H)のように本来起こり得ない(つまり入力が異常であると判断できるような)組み合わせのときに出力は「L」となる。ANDゲート72、73は2つの入力端の信号が共に「H」であるときにのみ「H」を出力し、他は「L」を出力するから、上述したように(POS,NEG)が異常であるような組み合わせとなる場合にはANDゲート72、73の出力はいずれも「L」となる。したがって、(POS,NEG)=(H,H)であった場合にも、(<POS>,<NEG>)=(L,L)となり、スイッチ56、57、66、67はいずれもオフ状態となる。
【0022】
上記構成の装置で、極性指示信号線8A、8Bに異常が発生した場合について図3を参照しながら考える。いま例えば図3(a)に示すように負極性指示信号線8Bに断線が生じた場合、その断線箇所よりも後段のフライトチューブ電圧発生部6ではプルダウン抵抗62により信号レベルは「L」に固定される。このとき他方の正極性指示信号線8A上の信号POSが「H」である場合には信号NEGはそもそも「L」である筈であるから、フライトチューブ電圧発生部6は正常時と同様に動作してフライトチューブ31に正の高電圧(例えば+10kV)を印加する。エンドキャップ電極電圧発生部5は正常に動作してイオン排出時には出口側エンドキャップ電極13に正の高電圧を印加するから、放電等の異常は発生しない。
【0023】
また、他方の極性指示信号線8A上の信号POSが「L」である場合には信号NEGは本来「H」である筈であるから、エンドキャップ電極電圧発生部5ではイオン排出時に出口側エンドキャップ電極13に負電圧を印加する。このときフライトチューブ電圧発生部6では(POS,NEG)=(L,L)となりスイッチ66、67はいずれもオフしてフライトチューブ31への印加電圧は0Vとなる。したがって、この場合にも出口側エンドキャップ電極13と逆極性の電圧がフライトチューブ31に印加されることは免れるから、放電等の異常は発生しない。
【0024】
なお、負極性指示信号線8Bではなく正極性指示信号線8Aに断線が発生した場合でも上記と同様である。また、エンドキャップ電極電圧発生部5の手前で断線が発生した場合でも同様である。
【0025】
次に極性指示信号線8A又は8Bが短絡した場合を考えると、例えば極性指示信号線8A、8Bが接地側に短絡した場合、信号POS又はNEGは強制的に「L」になるわけであるから、上述したように断線が発生してプルダウン抵抗により信号レベルが「L」になるのと同じことである。他方、極性指示信号線8A、8Bがデジタル電源線(制御部4の電源)に短絡した場合、信号POS又はNEGは強制的に「H」になる。例えば短絡の結果、(POS,NEG)=(H,H)となったとすると、上述したように処理回路53、63の機能により(<POS>,<NEG>)=(L,L)となって出口側エンドキャップ電極13又はフライトチューブ31への印加電圧は0Vとなる。したがって、他方に正電圧又は負電圧のいずれが印加された場合でも放電は発生しない。
【0026】
以上説明したように、本実施例の構成では、如何なる状況であっても出口側エンドキャップ電極13とフライトチューブ31とに逆極性の高電圧が印加されることは免れるので、極性指示信号線の断線や短絡などの比較的軽微な異常から電圧発生部の故障といった大きな2次的被害に至ることを確実に防止することができる。
【0027】
なお、上記説明における極性指示信号線8A、8B上の信号レベルとスイッチのオン/オフとの対応関係は反転することができる。即ち、「L」をアクティブとしてスイッチがオンするようにしてもよい。もちろん、その場合には、プルダウン抵抗の代わりにプルアップ抵抗を配し、処理回路の論理も信号レベルに合わせて適宜変更する必要があることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例によるイオントラップ飛行時間型質量分析装置の要部の構成図。
【図2】図1中の処理回路の一例を示す図。
【図3】本実施例の質量分析装置の動作を説明するための図。
【図4】イオントラップ飛行時間型質量分析装置の概略構成図。
【図5】従来の質量分析装置の動作を説明するための図。
【図6】従来の質量分析装置の動作を説明するためのタイミング図。
【符号の説明】
【0029】
1…イオントラップ
11…リング電極
12…入口側エンドキャップ電極
13…出口側エンドキャップ電極
13a…イオン通過穴
14…イオン捕捉空間
2…MALDI
3…TOFMS
31…フライトチューブ
32…イオン検出器
4…制御部
5…エンドキャップ電極電圧発生部
51、52、61、62…プルダウン抵抗
53、63…処理回路
54、64…正電圧発生部
55、65…負電圧発生部
56、57、58、66、67…スイッチ
6…フライトチューブ電圧発生部
7…イオン排出指示信号線
8A…正極性指示信号線
8B…負極性指示信号線
71…エクスクルーシブORゲート
72、73…ANDゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドキャップ電極を含む複数の電極で囲まれる空間に形成した電場によってイオンを捕捉するイオントラップと、該イオントラップから外側に引き出されたイオンをフライトチューブ内に形成される飛行空間に導入して質量分析する飛行時間型質量分析器と、を有する質量分析装置において、
イオントラップからイオンを引き出す際に分析対象のイオンの極性(正/負)に応じて該極性と逆の極性の高電圧を出口側のエンドキャップ電極に印加する第1の電圧発生手段と、
分析対象のイオンの極性(正/負)に応じて該極性と逆の極性の高電圧をフライトチューブに印加する第2の電圧発生手段と、
第1及び第2の電圧発生手段に対して分析対象のイオンの極性又は印加電圧の極性を指示するとともに、第1の電圧発生手段に対してはさらにイオンの引き出しタイミングを指示する制御手段と、を具備し、
前記制御手段と第1及び第2の電圧発生手段との間に、信号レベルがH又はLのいずれか一方で正極性を指示しH又はLの他方で指示無しを示す正極性指示信号線と、信号レベルがH又はLのいずれか一方で負極性を指示しH又はLの他方で指示無しを示す負極性指示信号線との2本の極性指示信号線を配設し、
第1及び第2の電圧発生手段にあって前記2本の極性指示信号線の入力端にそれぞれ、指示無しを示す信号レベル側に該入力端をプルダウン又はプルアップする抵抗を挿入したことを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
第1及び第2の電圧発生手段は、正極性指示信号線及び負極性指示信号線でそれぞれ正極性及び負極性を指示する信号レベルが同時に入力されたときに、いずれの指示も無効として処理する処理回路を有することを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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