説明

赤外吸収インキ印刷物

【課題】
低コストで、赤外吸収機能が維持されて赤外吸収機能に優れる赤外吸収インキ印刷物を提供する。
【解決手段】
紙基材11に対する赤外吸収インキの印刷物であって、少なくとも、紙基材11の一方の面に目止め印刷層25と赤外吸収インキ印刷層21をこの順に有し、前記目止め印刷層25が紫外線硬化インキであることを特徴とし、上記赤外吸収インキ印刷層21も紫外線硬化インキであり、上記赤外吸収インキ印刷層の含まれる赤外吸収材料が赤外吸収性染料であり、上記紙基材11の他方の面の、上記赤外吸収インキ印刷層25に相対する部分に反り低減印刷層23を有することも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外吸収インキ印刷物に関し、さらに詳しくは、紙基材へ赤外吸収インキ印刷層を設けても、赤外吸収機能に優れる赤外吸収インキ印刷物に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「UV」は「紫外線」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明の赤外吸収インキ印刷物の主なる用途としては、通常環境では視認しにくく、赤外線照射して赤外線検出装置により画像を検出できる赤外吸収インキを用いたセキュリティ印刷物で、チケットやクジなどの金券やプリペイドカードなどの有価証券類、パスポート、あるいはIDカードなどの偽造を防止することが必要とされているものである。 しかしながら、紙基材へ赤外吸収インキ印刷層を設ける用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)従来、金券や有価証券類などの偽造防止が必要とされている印刷物については、セキュリティ性を高めるために、通常環境である可視光下で肉眼により視認しがたく、赤外線を照射することにより赤外線検出カメラなどにより画像を検出することが可能となる赤外吸収インキが開発されている。該赤外吸収インキとしては、可視光領域に吸収を実質的に持たず、赤外領域に吸収を有する材料を含有させた透明な赤外吸収インキが知られている。このような赤外吸収インキの利用法としては、赤外吸収インキによりバーコードを印刷し、赤外線検出器などによりそのコード情報を利用する方法や、赤外吸収インキにより印刷物中にあるパターンを印刷しておき、赤外線カメラにより確認する方法などが知られている。しかしながら、紙基材に直接印刷した赤外吸収インキ印刷物の赤外吸収インキ印刷層は液状で印刷されるために、赤外吸収インキの一部が紙基材の内部へ吸収又は浸透してしまって、赤外吸収機能が劣化する。このために、該赤外吸収インキ印刷層へ赤外線を照射して、赤外線検出カメラなどで画像を検出することが、不可となったり、検出精度が低下する。
そこで、赤外吸収インキ印刷物は、低コストで、紙基材へ赤外吸収インキを印刷しても、赤外吸収インキが紙基材の内部へ吸収又は浸透しにくく、また、印刷後でも赤外吸収インキ印刷層の赤外吸収材料が紙基材へ移行しにくいので、赤外吸収機能が維持されて赤外吸収機能に優れることが求められている。
【0005】
(先行技術) 従来、受領証部などを備える表示基材と、受領証部の下層に剥離層と、受領証部を剥離可能に接着する透明若しくは半透明な目止め層と、伝達情報表示層と、前記表示基材を荷物に貼付可能な粘着剤層とを有する配送伝票が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、該目止め層は表示基材を粘着剤層から剥離し易くするもので、層間での物質の移行を防止はできないという問題点がある。
また、基材として多孔性な紙を用い、液体が染み込みにくくするために、紙に例えば、ポリエチレン、クレー、ポリビニルアルコール、澱粉等の塗布液を、予め紙に塗布して乾燥して形成した目止め処理がが知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、これらの目止め処理では液体は染み込みにくくできるが、層間での物質の移行を防止はできないという問題点がある。
さらに、被印刷物の面上に目止め剤を塗布または印刷し、その上に酸素検知インキ組成物を塗布または印刷した酸素インジケーターラベル、又は酸素検知インキ組成物が知られている(例えば、特許文献3〜4参照。)。しかしながら、目止め剤の材料については記載も示唆もされず、特許文献3〜4の明細書からは、特許文献2と同様に、多孔性な紙へ単に液体が染み込みにくくするだけのものである。
【0006】
【特許文献1】特開平11−28875号公報
【特許文献2】特開2005−250301号公報
【特許文献3】特開平03−17553号公報
【特許文献4】特開2004−323740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、低コストで、赤外吸収機能が維持されて赤外吸収機能に優れる赤外吸収インキ印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる赤外吸収インキ印刷物は、紙基材に対する赤外吸収インキの印刷物であって、少なくとも、紙基材の一方の面に目止め印刷層と赤外吸収インキ印刷層をこの順に有し、前記目止め印刷層が紫外線硬化インキであるように、したものである。
請求項2の発明に係わる赤外吸収インキ印刷物は、上記赤外吸収インキ印刷層も紫外線硬化インキであるように、したものである。
請求項3の発明に係わる赤外吸収インキ印刷物は、上記赤外吸収インキ印刷層の含まれる赤外吸収材料が赤外吸収性染料であるように、したものである。
請求項4の発明に係わる赤外吸収インキ印刷物は、上記紙基材の他方の面の、上記赤外吸収インキ印刷層に相対する部分に反り低減印刷層を有するように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、紙基材に対する赤外吸収インキの印刷物であっても、紙基材の一方の面に目止め印刷層と赤外吸収インキ印刷層をこの順に有し、目止め印刷層を紫外線硬化インキとすることにより、赤外吸収インキが紙基材の内部へ吸収又は浸透しにくく、また、印刷後でも赤外吸収インキ印刷層の赤外吸収材料が紙基材へ移行しし難い作用で課題を解決し、赤外吸収インキ印刷層へ赤外線を照射して、赤外線検出カメラなどで画像が、検出精度よく検出することができる赤外吸収インキ印刷物を完成すべく、本発明者らは鋭意研究を進め本発明に至ったものである。
請求項1の本発明によれば、紙基材に液状の赤外吸収インキで印刷しても、赤外吸収インキが紙基材の内部へ吸収又は浸透しにくく、低コストで、赤外吸収機能が維持されて赤外吸収機能に優れる赤外吸収インキ印刷物が提供される。
請求項2の本発明によれば、印刷後でも赤外吸収インキ印刷層の赤外吸収材料が紙基材へ移行し難いので、赤外吸収機能が長期間にわたって維持できる赤外吸収インキ印刷物が提供される。
請求項3の本発明によれば、請求項1〜3の効果に加えて、染料系の赤外吸収材料が用いれるので、より性能が高く、透明性である赤外吸収インキ印刷物が提供される。
請求項4の本発明によれば、請求項1〜3の効果に加えて、反りの発生が少なく、製本、丁合、梱包などの後加工の生産性が低下しないので、より低コストで、実使用する際にも取扱いやすく容易である赤外吸収インキ印刷物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、従来例を示す赤外吸収インキ印刷物の断面図である。
図2は、本発明の1実施例を示す赤外吸収インキ印刷物の断面図である。
図3は、本発明の1実施例を示す赤外吸収インキ印刷物の断面図である。
図4は、本発明の1実施例を示す赤外吸収インキ印刷物の断面図である。
【0011】
(赤外吸収インキ印刷物)本発明の赤外吸収インキ印刷物10は、図2に示すように、少なくとも、紙基材11の一方の面に、目止め印刷層25と赤外吸収インキ印刷層21をこの順に有し、赤外吸収インキ印刷層21/目止め印刷層25/紙基材11からなり、前記目止め印刷層25を紫外線硬化インキとする。また、好ましくは、赤外吸収インキ印刷層21も紫外線硬化インキとする。さらにまた、図4に示すように、紙基材11の他方の面の、上記赤外吸収インキ印刷層21に相対する部分に反り低減印刷層23を設けて、赤外吸収インキ印刷層21/目止め印刷層25/紙基材11/反り低減印刷層23の構成として、紙基材11を挟んで赤外吸収インキ印刷層21と反り低減印刷層23とが対称する構造となるので、反りの発生を防止できる。
【0012】
(変形形態)本発明は、次のように変形して実施することを含むものである。
図3に示すように、目止め印刷層25を赤外吸収インキ印刷層21に替えて、赤外吸収インキ印刷層21/赤外吸収インキ印刷層21/紙基材11の構成としてもよく、赤外吸収インキ印刷層21を2層、又は2層以上設けてもよい。この場合、少なくとも紙基材11側の赤外吸収インキ印刷層21は紫外線硬化インキとする。もちろん、2層とも紫外線硬化インキとしてもよい。
【0013】
(目止め印刷なし)図1は目止め印刷層25を設けず、赤外吸収インキ印刷層21/紙基材11からなり、紙基材に液状の赤外吸収インキで印刷するので、赤外吸収インキが紙基材の内部へ吸収又は浸透してしまい、赤外吸収機能が低下する。また、紙基材11へ目止め印刷層25を設けても、先行技術で述べた目止め印刷層の材料では、印刷後の乾燥状態でも、赤外吸収インキ印刷層の赤外吸収材料が目止め印刷層へ移行したり、さらに該目止め印刷層を透過して紙基材へまで移行する恐れあり、赤外吸収機能が長期間にわたって維持することができず、特に染料系の赤外吸収材料を用いると、赤外吸収材料の移行が早く、量的にも多いので、機能の低下が早いのである。
【0014】
この赤外吸収材料の移行は、当業者ではブリードアウト現象とも呼ばれ、赤外吸収材料の濃度差を均一化するために起こるものである。この移行の程度と速さは、赤外吸収材料と目止め印刷層25の材料などにより決まり、目止め印刷層25のガラス転移温度、赤外吸収材料の目止め印刷層25への溶解度や拡散速度によると推測されている。このために、本発明では、目止め印刷層25として、架橋構造を有する紫外線硬化インキを用いることで、赤外吸収材料が目止め印刷層25へ溶解しにくく、拡散しにくくでき、また、ガラス転移温度も高められるので、より機能が維持される。さらに好ましくは、赤外吸収インキ印刷層21も紫外線硬化インキとすることで、赤外吸収材料が赤外吸収インキ印刷層21の層中での移動も低下し、より機能が維持される。
【0015】
(紙基材)紙基材11としては、具体的には、賦型性、耐屈曲性、剛性等を持たせる紙を主体とする基材であり、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは純白ロール紙、クラフト紙、板紙、上質紙、OCR用紙、アート紙、コート紙、ミラーコート紙、コンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類や、ポリエステル、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリルなどのプラスティックフィルム、銅、アルミニウムなどの金属類などを組み合わせた加工紙などの複合紙基材としてもよい。
【0016】
上記の紙層を構成する紙基材11の坪量としては特に制限はないが、通常40〜1000g/m2程度のもの、好ましくは、60〜600g/m2位のものである。また、赤外吸収画像パターンを正しく検出するためには、赤外線を80%以上反射する材質であることが好ましい。基体として要求される物性、例えば強度、剛性、隠蔽性、光不透過性などを考慮して、上記材料から適宜選択すればよい。
【0017】
(赤外吸収インキ印刷層)赤外吸収インキ印刷層21は赤外吸収インキを印刷した層であり、該赤外吸収インキは赤外吸収材料とビヒクルとからなり、必要に応じて、充填剤、可塑剤、分散剤、潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防黴剤、などの添加剤を、適宜加えても良く、無色でも有色でもよい。これらの組成物を、分散、混練して、また、必要に応じて、溶剤で固形分量や粘度を調整して、インキ組成物とすればよい。有色はシアン、マゼンタ、イエロー、赤、緑、青など、何色でもよく、可視光下での色調の限定はない。
【0018】
前記赤外吸収性材料としては、赤外線を吸収する物質であって、赤外吸収性顔料と赤外吸収性染料に大別することができる。可視光をほとんどあるいは全く吸収しない無色の赤外吸収性顔料と、可視領域にある程度の吸収帯を持つ有色の赤外吸収性顔料とに大別できるが、無色のものは高価であり、本発明においては有色のものでも赤外吸収により形成する画像パターンの隠蔽性に優れているので、製造コストを低減する目的で有色の赤外吸収性顔料を用いることが好ましい。
【0019】
赤外吸収性顔料としては、鉄、銅、クロム、コバルト、ニッケルなどの遷移金属化合物及び錯体を用いることができる。例えば、鉄錯体(鉄フェリシアン化錯体)であるミロリーブルー顔料が好ましく用いられる。また、上記の化合物を単独で使用するほか、2種以上を混合して使用することもできる。また、赤外吸収性染料としては、ポリメチン系(シアニン色素)、フタロシアニン系、ナフトキノン系、アントラキノン系、ジチオール系、トリフェニルメタン系などの色素を用いることができる。
【0020】
耐光性(赤外線に対する褪色性)などの点においては、赤外吸収性染料よりも赤外吸収性顔料の方が優れており、上記の金属顔料などの無機物を使用することが好ましい。また、一般的にも染料系は移行しやすいので、赤外吸収性染料を用いると、赤外吸収材料の移行が早く、量的にも多いので、機能の低下が早いが、本発明のように、目止め印刷層25として、架橋構造を有する紫外線硬化インキを用いることで、赤外吸収性染料でも目止め印刷層25へ溶解しにくく、拡散しにくくでき、また、ガラス転移温度も高いので、より機能を維持することができる。
【0021】
また、紙基材11へ目止め印刷層25を設けても、先行技術で述べた目止め印刷層の材料では、印刷後の乾燥状態でも、赤外吸収インキ印刷層の赤外吸収材料が目止め印刷層へ移行したり、さらに該目止め印刷層を透過して紙基材へまで移行する恐れあり、赤外吸収機能が長期間にわたって維持することができない。
【0022】
赤外吸収性インキを構成する組成全体に対する赤外吸収性顔料の含有量は、十分な赤外吸収強度と印刷する紙基体への接着性の双方の向上を図る上で0.5〜35重量%が好ましい。含有量が少ないと赤外吸収強度が十分でなく赤外吸収により形成した画像パターンを判別できなくなる可能性がある。また、含有量が多いと印刷性が悪化する。
【0023】
(目止め印刷)目止め印刷層25は、赤外吸収インキ印刷層21インキが紙基材への浸透を抑止するための印刷層である。通常は、無色のメジウムインキを印刷した印刷層が用いられる。メジウムインキは、透明樹脂(ビヒクル)と溶剤からなるインキで僅かに添加剤が添加される場合もある。現今、オフセット印刷インキまたは活版印刷インキには、酸化重合型インキと紫外線硬化型インキが多用されているが、目止め効果の点からは前記のように紫外線硬化インキが、紙基材への浸透が少ない点から好ましく、本発明では、少なくとも、目止め印刷層25は紫外線硬化型インキを硬化させた紫外線硬化インキとする。該紫外線硬化型インキは印刷後に紫外線を照射することで、直ちに硬化するので、紙基材11へ浸透することなく、層を形成できる。
【0024】
(ビヒクル)赤外吸収インキ印刷層21及び/又は目止め印刷層25の印刷方法を公知で一般的な印刷技術であるオフセット印刷及び/又は活版印刷で行うことで、より低コストにすることができる。該赤外吸収インキ印刷層21及び目止め印刷層25のビヒクルは、同様なものでよい。通常、オフセット印刷インキ又は活版印刷インキには、酸化重合型インキと紫外線硬化型インキが適用できるが、紙基材への浸透の少ない点から紫外線硬化型インキが好ましい。
【0025】
酸化重合型インキは、油性インキと呼ばれ、ビヒクルの酸化重合による固化、不溶化によって皮膜をつくるもので、乾性油ワニス、乾性アルキドなどがこの部類に入る。酸化促進剤としてコバルトやマンガンが添加されている。さらに、必要に応じて乾燥、粘度、分散性の向上や、印刷後のインキ表面の耐摩擦性などの耐久性の向上のためのの各種反応剤などの補助剤を適宜添加することができる。
【0026】
紫外線硬化型インキの樹脂形成材料としては、プレポリマーまたはオリゴマーとして、ポリオールアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、アルキッドアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系等、モノマーとしては、モノアクリレート系、ジアクリレート系、トリアクリレート系等を使用したインキが挙げられる。このようなインキを印刷し乾燥して、必要に応じて、温度30℃〜70℃で適宜エージングしたり、紫外線硬化型インキは紫外線を照射すれば反り低減印刷層23が形成できる。
【0027】
(印刷方法)赤外吸収インキ印刷層21及び/又は目止め印刷層25の印刷方法を公知で一般的な印刷技術であるオフセット印刷及び/又は活版印刷で行うことで、より低コストにすることができる。特に好ましくは、赤外吸収インキ印刷層21及び/又は目止め印刷層25の印刷を、同じインキ系を用いて、同じ印刷方法で行うことである。同じインキ系とは、赤外吸収インキ印刷層21と目止め印刷層25の印刷インキが紫外線硬化インキであり、同じ印刷方法とは、赤外吸収インキ印刷層21と目止め印刷層25を印刷オフセット印刷又は活版印刷で行うことである。このようにすると、赤外吸収インキ印刷層及び目止め印刷層の絵柄印刷と、品名、デザイン及び説明文などの他の一般印刷層とを、同様な印刷方法で印刷でき、多色印刷機で同時に印刷できるので、より低コストとすることができる。
【0028】
(絵柄)赤外吸収インキ印刷層21と目止め印刷層25の絵柄は略同一の絵柄とする。目止め印刷層25の絵柄は、図1に示すように赤外吸収インキ印刷層21と同一、又は覆うようにすればよい。また、赤外吸収インキ印刷層21の絵柄はベタ印刷だけでなく、文字、イラスト、写真、網点、及び/又はバーコードなどでもよい。目止め印刷層25の絵柄は少なくとも赤外吸収インキ印刷層21を覆っていればよい。赤外吸収インキ印刷層21の絵柄は赤外線検出器などを用いて、目視で観察してもよく、また、赤外吸収インキによるパターンと可視インキによるパターンを印刷しておき、不可視の赤外吸収インキによるパターンを赤外線カメラにより確認し、可視インキによるパターンと照合したり、してもよい。さらに、赤外吸収インキによりバーコードを印刷し、赤外線検出器などによりそのコード情報を利用して、機械的に偽造かどうかを確認することもできる。
【0029】
(他の印刷層)赤外吸収インキ印刷層21/目止め印刷層25紙基材11の構成において、各層間、又は表裏表面に、図2中に図示しない反り低減印刷層23、中間層及び保護層などを形成してもよい。
【0030】
(反り低減印刷層)反り低減印刷層23は紙基材11の他方の面(裏面)の赤外吸収インキ印刷層21に相対する部分に設ける。反り低減印刷層23のインキは、特に制限はないが、好ましくは、赤外吸収インキ印刷層21の赤外吸収剤を含まないメジウムインキである。該メジウムインキには透明樹脂(ビヒクル)と溶剤からなるインキであるが、必要に応じて、充填剤、可塑剤、分散剤、潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防黴剤、などの添加剤を、適宜加えても良く、無色でも有色でもよい。これらの組成物を、分散、混練して、また、必要に応じて、溶剤で固形分量や粘度を調整して、インキ組成物とすればよい。
【0031】
保護層としては、上述の赤外吸収インキ印刷層21の赤外吸収性インキのビヒクル成分を構成する樹脂として例示したものを用いることができる。特に溶剤を用いない光重合硬化型のものが好ましく、例えばアクリル系樹脂などがある。これは、前述のアクリル系モノマーを用いて形成することができる。尚、前述のように重合開始剤などの添加剤が含有されるが、これらの添加剤も可視光及び赤外線に対して透過性の高いものが適宜選択すればよい。また、最表面にはメジウムなどのオフセット印刷などによりOP層を形成してもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)紙基材11として上質紙(64g/m2)を用いた。該上質紙の一方の面に、オフセット枚葉印刷機を用いて、無色の紫外線硬化型メジウムインキ(ザ・インクテック社製、商品名UV−BF−SGメジウム)を使用し、UVオフセット印刷で、後述する赤外吸収インキ印刷層21の絵柄と同じ絵柄である文字「OK」を繰返し印刷絵柄を印刷し紫外線を照射して目止め印刷層25とした。
該目止め印刷層25面へ、赤外吸収インキとしてUV−M−SDP10(ザ・インテック社製、商品名)を用いて、UVオフセット印刷で、文字「OK」を繰返し印刷絵柄を、目止め印刷層25の絵柄と見当を合わせて印刷し紫外線を照射して、赤外吸収インキ印刷層21をとした。同時に品名、写真、説明分などの通常印刷も行って、赤外吸収インキ印刷層21/目止め印刷層25/紙基材11の構成の実施例1の赤外吸収インキ印刷物を得た。
【0034】
(実施例2)実施例1と同じ構成で、同じ紙基材、同じインキを用いるが、多色UVオフセット印刷機で、紙基材11の表面へ目止め印刷層25と、品名、写真や説明分などの通常4色印刷と、赤外吸収インキ印刷層21とを、6色印刷し紫外線を照射して、実施例2の赤外吸収インキ印刷物を得た。
【0035】
(実施例3)実施例1と同じ構成で、同じ紙基材、同じインキを用いるが、目止め印刷層の代わりに赤外吸収インキ印刷層とした、赤外吸収インキ印刷層21/赤外吸収インキ印刷層21/紙基材11の構成の実施例3の赤外吸収インキ印刷物を得た。
【0036】
(実施例4)実施例2に加えて、紙基材11の裏面へ、無色の紫外線硬化型メジウムインキ(ザ・インクテック社製、商品名UV−BF−SGメジウム)を使用し、表裏面UVオフセット印刷機で、赤外吸収インキ印刷層21の相対する部分に、鏡像模様(一方側から透かしてみる同じ絵柄)を、裏面へ印刷して反り低減印刷層23を設けて、実施例4の赤外吸収インキ印刷物を得た。
【0037】
(比較例1)目止め印刷層25を設けない以外は実施例1と同様にして、比較例1の赤外吸収インキ印刷物を得た。
【0038】
(評価)実施例及び比較例の赤外吸収インキ印刷物を赤外線検出カメラで観察した。実施例1〜4の赤外吸収インキ印刷物では、「OK」の文字を検出できた。比較例1の赤外吸収インキ印刷物では、「OK」の文字を判読できるが、機械的な読み取りは不可であった。実施例4の赤外吸収インキ印刷物を100mm×100mmに切断して、常温で平らな常盤上に静置したところ、端部の浮き上がりも5mm以下と反りが少なく、75mm×150mmに断裁してチケットにしたところ、取扱い性に支障はなかった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来例を示す赤外吸収インキ印刷物の断面図である。
【図2】本発明の1実施例を示す赤外吸収インキ印刷物の断面図である。
【図3】本発明の1実施例を示す赤外吸収インキ印刷物の断面図である。
【図4】本発明の1実施例を示す赤外吸収インキ印刷物の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10:赤外吸収インキ印刷物
11:紙基材
21:赤外吸収インキ印刷層
23:反り低減印刷層
25:目止め印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材に対する赤外吸収インキの印刷物であって、少なくとも、紙基材の一方の面に目止め印刷層と赤外吸収インキ印刷層をこの順に有し、前記目止め印刷層が紫外線硬化インキであることを特徴とする赤外吸収インキ印刷物。
【請求項2】
上記赤外吸収インキ印刷層も紫外線硬化インキであることを特徴とする請求項1記載の赤外吸収インキ印刷物。
【請求項3】
上記赤外吸収インキ印刷層の含まれる赤外吸収材料が赤外吸収性染料であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の赤外吸収インキ印刷物。
【請求項4】
上記紙基材の他方の面の、上記赤外吸収インキ印刷層に相対する部分に反り低減印刷層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の赤外吸収インキ印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−245440(P2007−245440A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70146(P2006−70146)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】