説明

赤外線センサの製造方法

【課題】赤外線センサのチップの収量を増やすことが可能で、且つ、多数の赤外線センサを形成したシリコンウェハから個々の赤外線センサに分離する際のパーティクルの発生を抑制できる赤外線センサの製造方法を提供する。
【解決手段】保護膜60を形成する前に積層構造部の一部を構成する複数の絶縁膜(第1のシリコン酸化膜31とシリコン窒化膜32とで構成される第1の絶縁膜、第2の絶縁膜51、第3の絶縁膜52、第4の絶縁膜53、第5の絶縁膜50)それぞれをパターニングする複数の絶縁膜パターニング工程では、シリコンウェハ10においてダイシングレーンDL内で当該ダイシングレーンDLに対応する格子状部に沿った所定の格子状領域を含む部位に対応する部分が開口されたマスク層を形成し、マスク層をマスクとして絶縁膜をウェットエッチングするようにしてシリコンウェハ10の格子状領域が露出したときの撥水にてエッチングの終点検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコン基板と、赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収部および当該赤外線吸収部の温度変化を検出する熱電変換部を有しシリコン基板の一表面側に形成されてシリコン基板に支持された多層構造の積層構造部とを備え、シリコン基板において積層構造部の一部の直下に空洞部が形成された赤外線センサの製造方法であって、シリコン基板の基礎となるシリコンウェハに多数の赤外線センサを形成する前工程を行った後でダイシングレーンに沿って個々の赤外線センサに分割するダイシング工程を行うようにした赤外線センサの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来から、半導体装置の製造方法において、半導体ウェハに多数の半導体装置を形成する前工程(いわゆるウェハ工程)で、ドライエッチングによるエッチングの終点検出を行うために、半導体ウェハ面内に半導体装置の形成領域である素子形成領域とは別途に専用のモニター領域を設けることが知られている(例えば、特許文献2参照)。なお、上記特許文献2には、モニター領域を設けることなくエッチングの終点検出を行う発明が記載されているが、絶縁膜下に高融点金属膜もしくは高融点金属珪化物膜が形成された特別な構造の場合にしか、採用できない。
【0004】
一方、シリコン酸化膜などの絶縁膜をウェットエッチングによりパターニングする際に目視で終点検出を行う技術に関しては、シリコン酸化膜の下地の多結晶シリコン膜やシリコン基板の表面の一部(モニター領域)が露出したときの撥水にてエッチングの終点を確認する方法が知られている(例えば、特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−124178号公報(段落〔0026〕−〔0078〕、および図1−7)
【特許文献2】特許第2734951号公報
【特許文献3】特開平9−266244号公報(段落〔0017〕)
【特許文献4】特開2005−283159号公報(段落〔0030〕,〔0031〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載の赤外線センサの製造方法においても、エッチングの終点検出のための専用のモニター領域を赤外線センサの形成領域(センサ形成領域)とは別に設けた場合、モニター領域には赤外線センサを形成することができないので、1枚のシリコンウェハ当たりの収量がモニター領域に起因して制限されてしまう。
【0007】
また、上記特許文献1に記載された赤外線センサの製造方法では、ダイシングブレードによりシリコンウェハをダイシングレーンに沿ってダイシングするが、ダイシングレーンの全域にわたって積層構造部の一部が形成されているので、ダイシング工程においてダイシングレーンに対応する部位の積層構造部に起因してパーティクルが発生してしまい、収率の低下によるコスト増加だけでなく、使用時においてパーティクルにより赤外線が遮断されて感度が低下してしまうことが考えられる。
【0008】
なお、ダイシング工程において、シリコンウェハのダイシングレーンに沿ってレーザ光を照射して切断するレーザダイシングを行うことが考えられるが、この場合にも、ダイシング工程においてダイシングレーンに対応する部位の積層構造部に起因してパーティクルが発生してしまい、収率や感度が低下することが考えられる。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、赤外線センサのチップの収量を増やすことが可能で、且つ、多数の赤外線センサを形成したシリコンウェハから個々の赤外線センサに分離する際のパーティクルの発生を抑制できる赤外線センサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、シリコン基板と、赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収部および当該赤外線吸収部の温度変化を検出する熱電変換部を有しシリコン基板の一表面側に形成されてシリコン基板に支持された多層構造の積層構造部とを備え、シリコン基板において積層構造部の一部の直下に空洞部が形成された赤外線センサの製造方法であって、シリコン基板の基礎となるシリコンウェハに多数の赤外線センサを形成する前工程を行った後でダイシングレーンに沿って個々の赤外線センサに分割するダイシング工程を行うようにし、前工程のうち、積層構造部の最表層の保護膜を形成する保護膜形成工程よりも前に積層構造部の一部を構成する複数の絶縁膜それぞれをウェットエッチングによりパターニングする複数の絶縁膜パターニング工程では、積層構造部を形成する前のシリコンウェハにおいてダイシングレーン内で当該ダイシングレーンに対応する格子状部に沿った所定の格子状領域を含む部位に対応する部分が開口されたマスク層を形成し、当該マスク層をマスクとして絶縁膜をウェットエッチングするようにしてシリコンウェハの前記格子状領域が露出したときの撥水にてエッチングの終点検出を行うことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、前工程のうち、積層構造部の最表層の保護膜を形成する保護膜形成工程よりも前に積層構造部の一部を構成する複数の絶縁膜それぞれをウェットエッチングによりパターニングする複数の絶縁膜パターニング工程では、積層構造部を形成する前のシリコンウェハにおいてダイシングレーン内で当該ダイシングレーンに対応する格子状部に沿った所定の格子状領域を含む部位に対応する部分が開口されたマスク層を形成し、当該マスク層をマスクとして絶縁膜をウェットエッチングするようにしてシリコンウェハの前記格子状領域が露出したときの撥水にてエッチングの終点検出を行うので、エッチングの終点検出のための専用のモニター領域を別途に設ける必要がなく、赤外線センサのチップの収量を増やすことが可能となり、しかも、工程数を増やさずとも、前工程の終了時に前記格子状領域に複数の絶縁膜が残存していることがないから、前工程の製造コストを増加することがなく、多数の赤外線センサを形成したシリコンウェハから個々の赤外線センサに分離する際のダイシング工程でのパーティクルの発生を抑制できる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記保護膜形成工程では、前記保護膜のパターニング時に前記シリコンウェハの前記格子状領域上に形成された部分を残すようにし、前記前工程では、前記保護膜形成工程よりも後で、アルカリ系溶液を用いた異方性エッチングにより前記空洞部を形成する空洞部形成工程を行うことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、前記空洞部形成工程において前記シリコンウェハの前記ダイシングレーンに対応する部位が異方性エッチングされないので、前記ダイシングレーンに対応する部位付近で前記積層構造部の直下にアンダーカットが生じるのを防止でき、前記保護膜のパターニング時に前記シリコンウェハの前記格子状領域上に形成された部分をエッチングする場合に比べて、前記ダイシング工程でのパーティクルの発生を抑制できる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記保護膜形成工程では、前記保護膜のパターニング時のウェットエッチングに際して、前記シリコンウェハの前記格子状領域が露出したときの撥水にてエッチングの終点を確認するようにし、前記前工程において前記保護膜形成工程よりも後でアルカリ系溶液を用いた異方性エッチングにより前記空洞部を形成する空洞部形成工程では、前記シリコンウェハの前記格子状領域および前記格子状領域の周辺部を保護用マスクで保護した状態で前記異方性エッチングを行うことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、保護膜のパターニング時に前記シリコンウェハの前記格子状領域上に形成された部分をエッチングするようにしながらも、前記空洞部形成工程において前記シリコンウェハの前記ダイシングレーンに対応する部位が異方性エッチングされず、前記ダイシングレーンに対応する部位付近で前記積層構造部の直下にアンダーカットが生じるのを防止できるから、保護用マスクを除去してから前記ダイシング工程を行うことによって、請求項2の発明のように前記格子状領域上に保護膜が残存した状態で前記ダイシング工程を行う場合に比べて、前記ダイシング工程でのパーティクルの発生をより抑制できる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記保護膜のパターニング時のウェットエッチングに際して、前記シリコンウェハの前記格子状領域が露出したときの撥水にてエッチングの終点を確認するようにし、前記前工程では、前記保護膜形成工程よりも後で、アルカリ系溶液を用いた異方性エッチングにより前記空洞部を形成する空洞部形成工程を行うようにし、前記空洞部形成工程よりも前にp形不純物のイオン注入を行うイオン注入工程において、前記格子状領域から前記シリコンウェハにp形不純物をイオン注入することにより、前記空洞部形成工程でエッチングストッパ層として機能させるp形不純物層を形成することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、前記シリコンウェハの前記格子状領域上に形成された部分をエッチングするようにしながらも、前記空洞部形成工程において前記シリコンウェハの前記ダイシングレーンに対応する部位が異方性エッチングされるのを、新たな工程を追加することなく形成したp形不純物層により抑制でき、前記ダイシングレーンに対応する部位付近で前記積層構造部の直下にアンダーカットが生じるのを防止できるから、請求項2の発明のように前記格子状領域上に保護膜が残存した状態で前記ダイシング工程を行う場合に比べて、前記ダイシング工程でのパーティクルの発生をより抑制できる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記複数の絶縁膜パターニング工程のうち、前記熱電変換部を覆った絶縁膜をパターニングして前記格子状領域に比べて微細なコンタクトホールを形成する絶縁膜パターニング工程では、予め測定した前記格子状領域に対応する部位のエッチングレートとコンタクトホールに対応する部位のエッチングレートとの差に応じて前記終点検出からのオーバーエッチング時間を設定することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、前記コンタクトホールの抜け不良を防止することができ、製造歩留まりの向上を図れる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明は、赤外線センサのチップの収量を増やすことが可能で、且つ、多数の赤外線センサを形成したシリコンウェハから個々の赤外線センサに分離する際のパーティクルの発生を抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態の赤外線センサの製造方法の説明図であり、(a)は前工程が終了した状態でのウェハの概略平面図、(b)は(a)の要部Bの拡大図、(c)は(b)のD−D’概略断面図である。
【図2】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図3】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図4】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図5】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図6】同上の赤外線センサにおける画素部の平面レイアウト図である。
【図7】同上の赤外線センサにおける画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図8】同上の赤外線センサにおける画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図9】同上の赤外線センサにおける画素部の平面レイアウト図である。
【図10】同上の赤外線センサの平面レイアウト図である。
【図11】同上の赤外線センサにおける画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図12】同上の赤外線センサにおける画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図13】同上の赤外線センサにおける冷接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図14】同上の赤外線センサにおける温接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図15】同上の赤外線センサにおける画素部の要部の概略断面図である。
【図16】同上の赤外線センサにおける画素部の要部の概略断面図である。
【図17】同上の赤外線センサの要部説明図である。
【図18】同上の赤外線センサの等価回路図である。
【図19】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図20】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図21】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図22】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態の赤外線センサについて図6〜図18に基づいて説明してから、その基本的な製造方法について図19〜図22に基づいて説明し、その後、製造方法についての特徴点を図1〜5を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態の赤外線センサAは、赤外線アレイセンサであって、熱型赤外線検出部3と画素選択用スイッチング素子であるMOSトランジスタ4とを有する複数の画素部2(図10参照)がベース基板1の一表面側においてアレイ状(ここでは、2次元アレイ状)に配列されている。ここで、ベース基板1は、シリコン基板1aを用いて形成されている。本実施形態では、1つのベース基板1の上記一表面側にm×n個(図10および図18に示した例では、8×8個)の画素部2が形成されているが、画素部2の数や配列は特に限定するものではない。また、本実施形態では、熱型赤外線検出部3の感温部30が、複数個(ここでは、6個)のサーモパイル30a(図6参照)を直列接続することにより構成されており、図18では、熱型赤外線検出部3における感温部30の等価回路を、当該感温部30の熱起電力に対応する電圧源Vsで表してある。なお、本実施形態では、感温部30が、熱電変換部を構成している。
【0024】
また、本実施形態の赤外線センサAは、図6、図11および図18に示すように、各列の複数の熱型赤外線検出部3の感温部30の一端が上述のMOSトランジスタ4を介して各列ごとに共通接続された複数の垂直読み出し線7と、各行の熱型赤外線検出部3の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続された複数の水平信号線6と、各列のMOSトランジスタ4のp形ウェル領域41が各列ごとに共通接続された複数のグラウンド線8と、各グラウンド線8が共通接続された共通グラウンド線9と、各列の複数個の熱型赤外線検出部3の感温部30の他端が各列ごとに共通接続された複数の基準バイアス線5とを備えており、全ての熱型赤外線検出部3の感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。要するに、本実施形態の赤外線センサAは、ベース基板1の上記一表面側に熱型赤外線検出部3と当該熱型赤外線検出部3に並設され当該熱型赤外線検出部3の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4とを有する複数の画素部2が形成されている。
【0025】
ここで、MOSトランジスタ4は、ゲート電極46が水平信号線6に接続され、ソース電極48が感温部30を介して基準バイアス線5に接続され、各基準バイアス線5が共通基準バイアス線5aに共通接続され、ドレイン電極47が垂直読み出し線7に接続されており、各水平信号線6それぞれが各別の画素選択用パッドVselに電気的に接続され、各垂直読み出し線7それぞれが各別の出力用パッドVoutに電気的に接続され、共通グラウンド線9がグラウンド用パッドGndに電気的に接続され、共通基準バイアス線5aが基準バイアス用パッドVrefと電気的に接続され、シリコン基板1aが基板用パッドVddに電気的に接続されている。
【0026】
しかして、MOSトランジスタ4が順次オン状態になるように各画素選択用パッドVselの電位を制御することで各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。例えば、基準バイアス用パッドVrefの電位を1.65、グラウンド用パッドGndの電位を0V、基板用パッドVddの電位を5Vとしておき、画素選択用パッドVselの電位を5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、出力用パッドVoutから画素部2の出力電圧(1.65V+感温部30の出力電圧)が読み出され、画素選択用パッドVselの電位を0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、出力用パッドVoutから画素部2の出力電圧は読み出されない。なお、図10では、画素選択用パッドVsel、基準バイアス用パッドVref、グラウンド用パッドGnd、出力用パッドVoutなどを区別せずに全てパッド80として図示してある。
【0027】
以下、熱型赤外線検出部3およびMOSトランジスタ4それぞれの構造について説明する。なお、本実施形態では、上述のシリコン基板1aとして、導電形がn形で上記一表面が(100)面の単結晶シリコン基板を用いている。
【0028】
熱型赤外線検出部3は、シリコン基板1aの上記一表面側の各画素部2それぞれにおける熱型赤外線検出部3の形成用領域A1(図11参照)に形成されており、MOSトランジスタ4は、シリコン基板1aの上記一表面側の各画素部2それぞれにおけるMOSトランジスタ4の形成用領域A2(図11参照)に形成されている。
【0029】
ところで、各画素部2は、赤外線を吸収する赤外線吸収部33(図6および図11(b)参照)を備えており、各画素部2では、シリコン基板1aに赤外線吸収部33を当該ベース基板1から熱絶縁するための空洞部(掘込部)11が形成され、シリコン基板1aの上記一表面側で平面視において空洞部11の内周線の内側に赤外線吸収部33を有し空洞部11を覆う薄膜構造部3aが形成されている。また、各画素部2では、薄膜構造部3aが複数の線状のスリット13により空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位(平面視で空洞部11を囲む部位)から内方へ延長された複数(図6に示した例では、6つ)の小薄膜構造部3aaに分離され、各小薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aが設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなるように全てのサーモパイル30aが直列接続されており、隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されている。以下では、赤外線吸収部33のうち各小薄膜構造部3aaそれぞれに対応して分割された各部位を分割赤外線吸収部33aと称する。
【0030】
本実施形態では、薄膜構造部3aに形成された複数のサーモパイル30aの全て、上述の例では、6つ全てのサーモパイル30aを直列接続した接続関係としてあるが、これに限らず、例えば、それぞれ3個のサーモパイル30aの直列回路を並列接続するようにしてもよく、この場合には、6つ全てのサーモパイル30aが並列接続されている場合や各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて感度を高めることができ、また、6つ全てのサーモパイル30aが直列接続されている場合に比べて、感温部30の電気抵抗を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比が向上する。ここにおいて、薄膜構造部3aにおける小薄膜構造部3aaの数に等しいサーモパイル30aの数は4以上の偶数であればよく、半数のサーモパイル30aを直列接続し、その直列回路を並列接続した接続関係とすれば、同様に感度を高めることができるとともにS/N比を向上できる。
【0031】
ここで、画素部2では、小薄膜構造部3aaごとに、熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位と分割赤外線吸収部33aとを連結する2つの平面視短冊状のブリッジ部3bb,3bbが空洞部11の内周方向に離間して形成されており、当該2つのブリッジ部3bb,3bbと分割赤外線吸収部33aとを空間的に分離し空洞部11に連通する平面視コ字状のスリット14が形成されている。ここにおいて、熱型赤外線検出部3のうち平面視において薄膜構造部3aを囲む部位は矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bbは、赤外線吸収部33および熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位それぞれとの連結部位以外の部分が上述の各スリット13,14により分割赤外線吸収部33aおよび熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位と空間的に分離されている。
【0032】
本実施形態では、小薄膜構造部3aaの熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位からの延長方向の寸法を93μm、小薄膜構造部3aaの延長方向に直交する幅方向の寸法を75μm、各ブリッジ部3bbの幅寸法を23μm、各スリット13,14の幅を5μmに設定してあるが、これらの値は一例であって特に限定するものではない。
【0033】
上述の薄膜構造部3aは、シリコン基板1aの上記一表面側に形成されたシリコン酸化膜1bと、当該シリコン酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、当該シリコン窒化膜32上に形成された感温部30と、シリコン窒化膜32の表面側で感温部30を覆うように形成されたBPSG膜からなる層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたPSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。
【0034】
本実施形態では、シリコン窒化膜32のうち薄膜構造部3aのブリッジ部3bb,3bb以外の部位が上述の赤外線吸収部33を構成し、シリコン基板1aとシリコン酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とでベース基板1を構成している。また、本実施形態では、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1とMOSトランジスタ4の形成用領域A2とに跨って形成されているが、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成された部分が赤外線吸収膜70(図11(b)参照)を兼ねている。ここで、赤外線吸収膜70の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、赤外線吸収膜70の厚さt2をλ/4nに設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n=1.4、λ=10μmの場合には、t2≒1.8μmとすればよい。なお、本実施形態では、層間絶縁膜50の膜厚を0.8μm、パッシベーション膜60の膜厚を1μm(PSG膜の膜厚を0.5μm、NSG膜の膜厚を0.5μm)としてある。また、赤外線吸収膜70は、上述の構成に限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。
【0035】
また、各画素部2では、空洞部11の内周形状が矩形状であり、連結片3cは、平面視十字状に形成されており、小薄膜構造部3aaの延長方向に交差する斜め方向において隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士、小薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士、小薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
【0036】
サーモパイル30aは、シリコン窒化膜32上に形成され小薄膜構造部3aaとベース基板1とに跨って形成された細長のn形ポリシリコン層(第1の熱電要素)34と細長のp形ポリシリコン層(第2の熱電要素)35との一端部同士を分割赤外線吸収部33aの赤外線入射面側で金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる第1の接続金属部36により電気的に接続した複数個(図6に示した例では、9個)の熱電対を有しており、ベース基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のn形ポリシリコン層34の他端部とp形ポリシリコン層35の他端部とが金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる第2の接続金属部37により接合され電気的に接続されている。ここで、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と第1の接続金属部36とで分割赤外線吸収部33a側の温接点T1を構成し、n形ポリシリコン層34の上記他端部とp形ポリシリコン層35の上記他端部と第2の接続金属部37とでベース基板1側の冷接点T2を構成している。要するに、サーモパイル30aの各温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる領域に形成され、各冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない領域に形成されている。なお、本実施形態の赤外線センサAでは、サーモパイル30aの各n形ポリシリコン層34および各p形ポリシリコン層35それぞれにおいて上述のブリッジ部3bb,3bbに形成されている部位およびベース基板1のシリコン窒化膜32上に形成されている部位でも赤外線を吸収することができる。
【0037】
また、本実施形態の赤外線センサAでは、上述の空洞部11の形状が四角錘状であり、平面視における中央部の方が周部に比べて深さ寸法が大きくなっているので、薄膜構造部3aの中央部に温接点T1が集まるように各画素部2におけるサーモパイル30aの平面レイアウトを設計してある。すなわち、図6の上下方向における真ん中の2つの小薄膜構造部3aaでは、図6および図7に示すように、3つの小薄膜構造部3aaの並設方向に沿って温接点T1を並べて配置してあるのに対し、当該上下方向における上側の2つの小薄膜構造部3aaでは、図6および図8に示すように、3つの小薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の小薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してあり、当該上下方向における下側の2つの小薄膜構造部3aaでは、図6に示すように、3つの小薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の小薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。しかして、本実施形態の赤外線センサAでは、図6の上下方向における上側、下側の小薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置が、真ん中の小薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置と同じである場合に比べて、温接点T1の温度変化を大きくできるので、感度を向上できる。
【0038】
また、小薄膜構造部3aaは、シリコン窒化膜32の赤外線入射面側においてサーモパイル30aを形成していない領域に、小薄膜構造部3aaの反りを抑制するとともに赤外線を吸収するn形ポリシリコン層からなる赤外線吸収層39(図6、図11および図15参照)が形成されている。また、隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cには、当該連結片3cを補強するn形ポリシリコン層からなる補強層39b(図7参照)が設けられている。ここで、補強層39bは、赤外線吸収層39と連続一体に形成されている。しかして、本実施形態の赤外線センサAでは、連結片3cが補強層39bにより補強されているので、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止でき、また、製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。なお、本実施形態では、図12に示す連結片3cの長さ寸法L1を24μm、幅寸法L2を5μm、補強層39bの幅寸法L3を1μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。ただし、本実施形態のようにベース基板1がシリコン基板1aを用いて形成され、補強層39bがn形ポリシリコン層により形成される場合には、空洞部11の形成時に補強層39bがエッチングされるのを防止するために、補強層39bの幅寸法は、連結片3cの幅寸法よりも小さく設定し、平面視において補強層39bの両側縁が連結片3cの両側縁よりも内側に位置する必要がある。
【0039】
また、本実施形態の赤外線センサAは、図12および図17(b)に示すように、連結片3cの両側縁と小薄膜構造部3aaの側縁との間にそれぞれ面取り部3d,3dが形成され、十字状の連結片3cの略直交する側縁間にも面取り部3eが形成されている。しかして、本実施形態の赤外線センサAでは、図17(a)に示すように面取り部が形成されていない場合に比べて連結片3cと小薄膜構造部3aaとの連結部位での応力集中を緩和でき、製造時に発生する残留応力を低減できるとともに製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。また、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止できる。なお、図12に示した例では、各面取り部3d,3eをRが3μmのR面取り部としてあるが、R面取り部に限らず、例えば、C面取り部としてもよい。
【0040】
ところで、本実施形態の赤外線センサAは、通電されることにより発生するジュール熱により温接点T1を温める自己診断用ヒータ部(故障診断用配線)139を備えている。ここにおいて、自己診断用ヒータ部139は、熱型赤外線検出部3においてシリコン基板1aの空洞部11に重なる領域でサーモパイル30aと重ならないように配置されている。ここで、熱型赤外線検出部3は、全ての小薄膜構造部3aaに跨って自己診断用ヒータ部139が形成されている。
【0041】
具体的には、本実施形態の赤外線センサAは、各画素部2に、熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位と一方のブリッジ部3bbと分割赤外線吸収部33aと他方のブリッジ部3bbと熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位とに跨るように引き回された自己診断用ヒータ部139を設けて、全ての自己診断用ヒータ部139を直列接続してある。しかして、本実施形態の赤外線センサAでは、製造途中での検査時や使用時において、m×n個の自己診断用ヒータ部139の直列回路への通電の有無によって、ブリッジ部3bbの折れや自己診断用ヒータ部139の断線などを検出することができる。また、本実施形態の赤外線センサでは、上述の検査時や使用時において、m×n個の自己診断用ヒータ部139の直列回路へ通電して各感温部30の出力を検出することにより、感温部30の断線の有無や感度のばらつき(感温部30の出力のばらつき)などを検知することが可能となる。ここにおいて、感度のばらつきに関しては、画素部2ごとの感度のばらつきを検知することが可能であり、例えば、薄膜構造部3aの反りや薄膜構造部3aのシリコン基板1aへのスティッキングなどに起因した感度のばらつきを検知することが可能となる。ここで、本実施形態の赤外線センサAでは、平面視において、自己診断用ヒータ部139を複数の温接点T1の群の付近において折り返され蛇行した形状としてあるので、自己診断用ヒータ部139へ通電することにより発生するジュール熱によって、各温接点T1を効率良く温めることができる。ここにおいて、自己診断用ヒータ部139は、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35と同一平面上に同一厚さで形成されている。
【0042】
上述の赤外線吸収層39、補強層39bおよび自己診断用ヒータ部139は、第1の熱電要素であるn形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ不純物濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34に同時に形成されている。また、p形ポリシリコン層35のp形不純物として例えばボロンを採用すればよく、不純物濃度を例えば1018〜1020cm−3程度の範囲で適宜設定すればよい。本実施形態では、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、熱電対の抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図れる。なお、赤外線吸収層39、補強層39bおよび自己診断用ヒータ部139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてあるが、これに限らず、例えば、第2の熱電要素であるp形ポリシリコン層35と同じ不純物を同じ不純物濃度でドーピングするようにしてもよい。
【0043】
ところで、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、補強層39bおよび自己診断用ヒータ部139の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、補強層39bおよび自己診断用ヒータ部139それぞれの厚さt1をλ/4nに設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。
【0044】
また、本実施形態では、n形ポリシリコン層24、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、補強層39bおよび自己診断用ヒータ部139それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であるので、赤外線の吸収率を高くしつつ赤外線の反射を抑制することができて、感温部30の出力のS/N比を高めることができ、また、赤外線吸収層39、補強層39bおよび自己診断用ヒータ部139をn形ポリシリコン層34と同一工程で形成できるから、低コスト化を図れる。
【0045】
ここで、感温部30の第1の接続金属部36と第2の接続金属部37とは、シリコン基板1aの上記一表面側において上述の層間絶縁膜50により絶縁分離されている(図13および図14参照)。すなわち、温接点T1側の第1の接続金属部36は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50a,50aを通して両ポリシリコン層34,35の上記各一端部と電気的に接続され、冷接点T2側の第2の接続金属部37は、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50a,50aを通して両ポリシリコン層34,35の上記各他端部と電気的に接続されている。
【0046】
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、シリコン基板1aの上記一表面側における各画素部2それぞれにおけるMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。ここで、MOSトランジスタ4は、図11および図16に示すように、シリコン基板1aの上記一表面側にp形ウェル領域41が形成され、p形ウェル領域41内に、n形ドレイン領域43とn形ソース領域44とが離間して形成されている。また、p形ウェル領域41内には、n形ドレイン領域43とn形ソース領域44とを囲むp++形チャネルストッパ領域42が形成されている。また、p形ウェル領域41においてn形ドレイン領域43とn形ソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を介してn形ポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。また、n形ドレイン領域43上には金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるドレイン電極47が形成され、n形ソース領域44上には金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるソース電極48が形成されている。ここで、ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の層間絶縁膜50により絶縁分離されている。すなわち、ドレイン電極47は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50dを通してn形ドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50eを通してn形ソース領域44と電気的に接続されている。
【0047】
ところで、本実施形態の赤外線センサAの各画素部2では、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の一端とが電気的に接続され、感温部30の他端が基準バイアス線5に電気的に接続されている。また、本実施形態の赤外線センサAの各画素部2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が垂直読み出し線7と電気的に接続され、ゲート電極46が当該ゲート電極46と連続一体に形成されたn形ポリシリコン配線からなる水平信号線6と電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のp++形チャネルストッパ領域42上に金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるグラウンド用電極49が形成されており、当該グラウンド用電極49が、当該p++形チャネルストッパ領域42をn形ドレイン領域43およびn形ソース領域44よりも低電位にバイアスして素子分離するための共通グラウンド線8と電気的に接続されている。なお、グラウンド用電極49は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50fを通してp++形チャネルストッパ領域42と電気的に接続されている。
【0048】
以上説明した本実施形態の赤外線センサAによれば、通電されることにより発生するジュール熱により温接点T1を温める自己診断用ヒータ部139を備えているので、自己診断用ヒータ部139へ通電してサーモパイル30aの出力を測定することにより、サーモパイル30aの断線などの故障の有無を判断することが可能となって、信頼性の向上を図れ、しかも、自己診断用ヒータ部139は、熱型赤外線検出部3において支持基板であるシリコン基板1aの空洞部11に重なる領域でサーモパイル30aと重ならないように配置されているので、自己診断用ヒータ部139によるサーモパイル30aの温接点T1の熱容量の増大を防止でき、感度および応答速度の向上を図れる。
【0049】
ここにおいて、本実施形態の赤外線センサAは、使用時において自己診断を行わない通常時は、自己診断用ヒータ部139も外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。なお、本実施形態の赤外線センサAでは、赤外線吸収層39および補強層39bも外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。
【0050】
また、本実施形態の赤外線センサAでは、薄膜構造部3aが、複数の線状のスリット13により空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位から内方へ延長された複数の小薄膜構造部3aaに分離され、各小薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aの温接点T1が設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されているので、応答速度および感度の向上を図れ、しかも、全ての小薄膜構造部3aaに跨って自己診断用ヒータ部139が形成されているので、熱型赤外線検出部3の全てのサーモパイル30aを一括して自己診断することが可能となる。また、本実施形態の赤外線センサAでは、隣接する小薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されていることにより、各小薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。
【0051】
また、本実施形態の赤外線センサAでは、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と補強層39bと自己診断用ヒータ部139とが同一の厚さに設定されているので、小薄膜構造部3aaの応力バランスの均一性が向上し、小薄膜構造部3aaの反りを抑制することができ、製品ごとの感度のばらつきや、画素部2ごとの感度のばらつきを低減できる。
【0052】
また、本実施形態の赤外線センサAは、赤外線吸収部33および自己診断用ヒータ部139を備えた複数の画素部2が支持基板であるシリコン基板1aの上記一表面側でアレイ状に設けられているので、製造時や使用時の自己診断に際して各画素部2それぞれの自己診断用ヒータ部139に通電することにより各画素部2それぞれの感温部30の感度のばらつきを把握することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の赤外線センサAは、各画素部2ごとに感温部30の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4を有しているので、出力用パッドVoutの数を少なくでき、小型化および低コスト化を図れる。
【0054】
以下、本実施形態の赤外線センサAの製造方法について図19〜図22を参照しながら簡説明する。
【0055】
まず、シリコン基板1aの上記一表面側に第1の所定膜厚(例えば、0.3μm)の第1のシリコン酸化膜(熱酸化膜)31を形成する第1酸化膜形成工程、第2の所定膜厚(例えば、0.1μm)のシリコン窒化膜32を形成する窒化膜形成工程を順次行うことにより、第1のシリコン酸化膜31とシリコン窒化膜32との積層膜からなる絶縁層を形成し(つまり、第1酸化膜形成工程と窒化膜形成工程とからなる絶縁層形成工程で絶縁層を形成し)、その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して当該絶縁層のうち熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に対応する部分の一部を残してMOSトランジスタ4の形成用領域A2に対応する部分をエッチング除去するように絶縁層をパターニングする絶縁層パターニング工程を行うことによって、図19(a)に示す構造を得る。ここにおいて、第1のシリコン酸化膜31は、シリコン基板1aを所定温度(例えば、1100℃)で熱酸化することにより形成し、シリコン窒化膜32は、LPCVD法により形成している。
【0056】
上述の絶縁層パターニング工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側にp形ウェル領域41を形成するウェル領域形成工程を行い、続いて、シリコン基板1の上記一表面側におけるp形ウェル領域41内にp++形チャネルストッパ領域42を形成するチャネルストッパ領域形成工程を行うことによって、図19(b)に示す構造を得る。ここで、ウェル領域形成工程では、シリコン基板1aの上記一表面側の露出部位を所定温度で熱酸化することにより第2のシリコン酸化膜(熱酸化膜)51を選択的に形成する第2酸化膜形成工程を行い、その後、p形ウェル領域41を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第2のシリコン酸化膜51をパターニングする第2酸化膜パターニング工程を行い、続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、p形ウェル領域41を形成する。また、チャネルストッパ領域形成工程では、シリコン基板1aの上記一表面側を所定温度で熱酸化することにより第3のシリコン酸化膜(熱酸化膜)52を選択的に形成する第3酸化膜形成工程を行い、その後、p++形チャネルストッパ領域42を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第3のシリコン酸化膜52をパターニングする第3酸化膜パターニング工程を行い、続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、p++形チャネルストッパ領域42を形成する。なお、第1のシリコン酸化膜31が、上述のシリコン基板1aの上記一表面側のシリコン酸化膜1bを構成している。また、上述の説明から分かるように、第2のシリコン酸化膜52および第3のシリコン酸化膜53は、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により形成されている。
【0057】
上述のチャネルストッパ領域形成工程の後、p形ウェル領域41におけるn形ドレイン領域43およびn形ソース領域44それぞれの形成予定領域にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn形ドレイン領域43およびn形ソース領域44を形成するソース・ドレイン形成工程を行い、当該ソース・ドレイン形成工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側に熱酸化により所定膜厚(例えば、600Å)の第4のシリコン酸化膜(熱酸化膜)を選択的に形成する第4シリコン酸化膜形成工程を行い、その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第4のシリコン酸化膜をパターニングすることでパターニングされた第4のシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜45を形成するゲート絶縁膜形成工程を行う。続いて、シリコン基板1aの上記一表面側の全面にゲート電極46、水平信号線6(図11参照)、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、補強層39bおよび自己診断用ヒータ部139の基礎となる所定膜厚(例えば、0.69μm)のノンドープポリシリコン層をLPCVD法により形成するポリシリコン層形成工程を行い、その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記ノンドープポリシリコン層のうちゲート電極46、水平信号線6、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、補強層39bおよび自己診断用ヒータ部139それぞれに対応する部分が残るようにパターニングするポリシリコン層パターニング工程を行う。続いて、上記ノンドープポリシリコン層のうちp形ポリシリコン層35に対応する部分にp形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりp形ポリシリコン層35を形成するp形ポリシリコン層形成工程を行い、その後、上記ノンドープポリシリコン層のうちn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、補強層39b、自己診断用ヒータ部139、ゲート電極46および水平信号線6に対応する部分にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、補強層39b、自己診断用ヒータ部139、ゲート電極46および水平信号線6を形成するn形ポリシリコン層形成工程を行うことによって、図20(a)に示す構造を得る。なお、上述の説明から分かるように、第4のシリコン酸化膜は、LOCOS法により形成されている。また、p形ポリシリコン層形成工程とn形ポリシリコン層形成工程との順序は逆でもよい。
【0058】
上述のp形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程が終了した後、シリコン基板1aの上記一表面側に層間絶縁膜50を形成する層間絶縁膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して層間絶縁膜50に上記各コンタクトホール50a,50a,50a,50a,50d,50e,50f(図13、図14および図16参照)を形成するコンタクトホール形成工程を行うことによって、図20(b)に示す構造を得る。ここで、層間絶縁膜形成工程では、シリコン基板1aの上記一表面側に所定膜厚(例えば、0.8μm)のBPSG膜をCVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより平坦化された層間絶縁膜50を形成する。
【0059】
上述のコンタクトホール形成工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側の全面に第1の接続金属部36、第2の接続金属部37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなど(図18参照)の基礎となる所定膜厚(例えば、2μm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法などにより形成する金属膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることで第1の接続金属部36、第2の接続金属部37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなどを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図21(a)に示す構造を得る。なお、金属膜パターニング工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、この金属膜パターニング工程を行うことにより、温接点T1および冷接点T2(図13参照)が形成される。
【0060】
上述の金属膜パターニング工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側(つまり、層間絶縁膜50の表面側)に所定膜厚(例えば、0.5μm)のPSG膜と所定膜厚(例えば、0.5μm)のNSG膜との積層膜からなる保護膜(パッシベーション膜)60をCVD法により形成する保護膜形成工程を行うことによって、図21(b)に示す構造を得る。なお、保護膜60は、PSG膜とNSG膜との積層膜に限らず、例えば、シリコン窒化膜でもよい。
【0061】
上述の保護膜形成工程の後、シリコン酸化膜31とシリコン窒化膜32との積層膜からなる熱絶縁層と、当該熱絶縁層上に形成された感温部30と、熱絶縁層の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成された保護膜60との積層構造部をパターニングすることにより上述の小薄膜構造部3aaを形成する積層構造部パターニング工程を行うことによって、図22(a)に示す構造を得る。なお、積層構造部パターニング工程において、上述の各スリット13,14を形成している。
【0062】
上述の積層構造部パターニング工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndを露出させるパッド用開口部(図示せず)を形成するパッド用開口部形成工程を行い、続いて、上述の各スリット13,14をエッチャント導入孔として所定のエッチャントを導入してシリコン基板1aを異方性エッチングすることによりシリコン基板1aに空洞部11を形成する空洞部形成工程を行うことによって、図20(b)に示す構造の画素部2が2次元アレイ状に配列された赤外線センサAを得る。ここで、パッド用開口部形成工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、空洞部形成工程では、上記所定のエッチャントとして所定温度(例えば、85℃)に加熱したTMAH溶液からなるアルカリ系溶液を用いているが、上記エッチャントはTMAH溶液に限らず、他のアルカリ系溶液(例えば、エチレンジアミンピロカテコール:EDPなど)を用いてもよい。本実施形態の赤外線センサの製造方法では、空洞部形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行う(後述するように図1に示すシリコンウェハ10を用いて行う)ので、空洞部形成工程が終了した後、個々の赤外線センサAに分離するダイシング工程を行えばよい。要するに、本実施形態の赤外線センサの製造方法では、シリコン基板1aの基礎となるシリコンウェハ10に多数の赤外線センサを形成する前工程(上述の例では、第1酸化膜形成工程〜空洞部形成工程までの全工程)を行った後でダイシングレーンDLに沿って個々の赤外線センサに分割するダイシング工程を行う。
【0063】
また、上述の説明から分かるように、MOSトランジスタ4の製造方法に関してみれば、周知の一般的なMOSトランジスタの製造方法を採用しており、熱酸化による熱酸化膜の形成、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術による熱酸化膜のパターニング、不純物のイオン注入、ドライブイン(不純物の拡散)の基本工程を繰り返すことにより、p形ウェル領域41、p++形チャネルストッパ領域42、n形ドレイン領域43とn形ソース領域44を形成している。
【0064】
次に、上述した赤外線センサの製造方法における特徴点について図1および図2を参照しながら説明する。ここにおいて、図1は、(a)が、前工程が終了した状態のシリコンウェハ10の平面図であり、(b)が当該シリコンウェハ10におけるダイシングレーンDL付近の概略平面図、(c)が当該シリコンウェハ10におけるダイシングレーンDL付近の概略断面図を示している。
【0065】
シリコンウェハ10の一表面側に第1のシリコン酸化膜31を形成する第1酸化膜形成工程、シリコン窒化膜32を形成する窒化膜形成工程を順次行い、続いて、第1のシリコン酸化膜31とシリコン窒化膜32との積層膜からなる絶縁層(以下、第1の絶縁膜と称する)をパターニングする絶縁層パターニング工程(以下、第1の絶縁膜パターニング工程と称する)を行うことによって、図2(a)に示す構造を得る。ここにおいて、第1の絶縁膜パターニング工程では、積層構造部を形成する前のシリコンウェハ10においてダイシングレーンDL内で当該ダイシングレーンDLに対応する格子状部に沿った所定の格子状領域を含む部位(ここでは、第1のモニター兼用領域M1)に対応する部分が開口されたレジスト層からなるマスク層(以下、第1のマスク層と称する)を形成し、当該第1のマスク層をマスクとして第1の絶縁膜をウェットエッチングするようにしてシリコンウェハ10の格子状領域が露出したとき(実際には、格子状領域よりも幅広の第1のモニター兼用領域M1が露出したとき)の撥水を目視で確認することによりエッチングの終点検出を行う。
【0066】
上述の絶縁層パターニング工程(第1の絶縁膜パターニング工程)の後、ウェル領域形成工程を行うことによって、図2(b)に示す構造を得る。すなわち、ウェル形成工程において、シリコンウェハ10の上記一表面側に第2のシリコン酸化膜(以下、第2の絶縁膜と称する)51を選択的に形成する第2酸化膜形成工程(以下、第2の絶縁膜形成工程と称する)を行い、その後、第2の絶縁膜である第2のシリコン酸化膜51をパターニングする第2酸化膜パターニング工程(第2の絶縁膜パターニング工程と称する)を行うことによって、図2(b)に示す構造が得られる。ここにおいて、第2の絶縁膜パターニング工程では、積層構造部を形成する前のシリコンウェハ10において上記格子状部に沿った上記所定の格子状領域を含む部位(ここでは、第2のモニター兼用領域M2)に対応する部分が開口されたレジスト層からなるマスク層(以下、第2のマスク層と称する)を形成し、当該第2のマスク層をマスクとして第2の絶縁膜51をウェットエッチングするようにしてシリコンウェハ10の格子状領域が露出したとき(実際には、格子状領域よりも幅広の第2のモニター兼用領域M2が露出したとき)の撥水を目視で確認することによりエッチングの終点検出を行う。
【0067】
上述のウェル形成工程の後、チャネルストッパ領域形成工程を行うことによって、図2(c)に示す構造を得る。すなわち、チャネルストッパ領域形成工程において、シリコンウェハ10の上記一表面側に第3のシリコン酸化膜(以下、第3の絶縁膜と称する)52を選択的に形成する第3酸化膜形成工程(以下、第3の絶縁膜形成工程と称する)を行い、その後、第3の絶縁膜である第3のシリコン酸化膜52をパターニングする第3酸化膜パターニング工程(以下、第3の絶縁膜パターニング工程と称する)を行うことによって、図2(c)に示す構造が得られる。ここにおいて、第3の絶縁膜パターニング工程では、積層構造部を形成する前のシリコンウェハ10において上記格子状部に沿った上記所定の格子状領域を含む部位(ここでは、第3のモニター兼用領域M3)に対応する部分が開口されたレジスト層からなるマスク層(以下、第3のマスク層と称する)を形成し、当該第3のマスク層をマスクとして第3の絶縁膜52をウェットエッチングするようにしてシリコンウェハ10の格子状領域が露出したとき(実際には、格子状領域よりも幅広の第3のモニター兼用領域M3が露出したとき)の撥水を目視で確認することによりエッチングの終点検出を行う。
【0068】
上述のチャネルストッパ領域形成工程の後、ソース・ドレイン形成工程を行い、当該ソース・ドレイン形成工程の後、シリコンウェハ10の上記一表面側に第4のシリコン酸化膜(以下、第4の絶縁膜と称する)53を選択的に形成する第4シリコン酸化膜形成工程(以下、第4の絶縁膜形成工程と称する)を行い、その後、第4の絶縁膜である第4のシリコン酸化膜53をパターニングするゲート絶縁膜形成工程(以下、第4の絶縁膜パターニング工程)を行うことによって、図2(d)に示す構造が得られる(なお、第4のシリコン酸化膜53の一部が図19(b)のゲート絶縁膜45を構成する)。ここにおいて、第4の絶縁膜パターニング工程では、積層構造部を形成する前のシリコンウェハ10において上記格子状部に沿った上記所定の格子状領域を含む部位(ここでは、第4のモニター兼用領域M4)に対応する部分が開口されたレジスト層からなるマスク層(以下、第4のマスク層と称する)を形成し、当該第4のマスク層をマスクとして第4の絶縁膜53をウェットエッチングするようにしてシリコンウェハ10の格子状領域が露出したとき(実際には、格子状領域よりも幅広の第4のモニター兼用領域M4が露出したとき)の撥水を目視で確認することによりエッチングの終点検出を行う。
【0069】
上述のゲート絶縁膜形成工程の後、ポリシリコン層形成工程、ポリシリコン層パターニング工程、p形ポリシリコン層形成工程、n形ポリシリコン層形成工程を順次行い、その後、シリコンウェハ10の上記一表面側に層間絶縁膜(以下、第5の絶縁膜と称する)50を形成する層間絶縁膜形成工程(以下、第5の絶縁膜形成工程と称する)を行う。続いて、第5の絶縁膜である層間絶縁膜50に上記各コンタクトホール50a,50a,50a,50a,50d,50e,50f(図13、図14および図16参照)を形成するコンタクトホール形成工程(第5の絶縁膜をパターニングする第5の絶縁膜パターニング工程)を行うことによって、図2(e)に示す構造を得る。ここにおいて、第5の絶縁膜パターニング工程では、積層構造部を形成する前のシリコンウェハ10において上記格子状部に沿った上記所定の格子状領域を含む部位(ここでは、第5のモニター兼用領域M5)に対応する部分が開口されたレジスト層からなるマスク層(以下、第5のマスク層と称する)を形成し、当該第5のマスク層をマスクとして第5の絶縁膜50をウェットエッチングするようにしてシリコンウェハ10の格子状領域が露出したとき(ここでは、第5のモニター兼用領域M5が露出したとき)の撥水を目視で確認することによりエッチングの終点検出を行う。ここで、熱電変換部であるサーモパイル30aを覆った第5の絶縁膜50をパターニングして格子状領域に比べて微細なコンタクトホールを形成する第5の絶縁膜パターニング工程では、予め測定した格子状領域に対応する部位のエッチングレートとコンタクトホール50a,50a,50a,50a,50d,50e,50fに対応する部位のエッチングレートとの差に応じて終点検出からのオーバーエッチング時間を設定することにより、コンタクトホール50a,50a,50a,50a,50d,50e,50fの抜け不良を防止することができ、製造歩留まりの向上を図れる。なお、上述の第1〜第4の絶縁膜パターニング工程においても、ジャストエッチング時間でエッチングを終了するのではなく、適宜のオーバーエッチング時間を設定することは勿論である。また、コンタクトホール50a,50a,50a,50a,50d,50e,50fを形成する第5の絶縁膜パターニング工程において高アスペクト比の加工が要求される場合には、金属膜形成工程での金属膜のカバレッジの向上や当該第5の絶縁膜パターニング工程でのエッチングダメージの低減のために、第5の絶縁膜の厚み方向の途中までドライエッチングを行い、その後、ウェットエッチングを行うようにして撥水の目視確認により終点検出を行ってもよい。
【0070】
上述のコンタクトホール形成工程の後、金属膜形成工程、金属膜パターニング工程を順次行い、その後、シリコンウェハ10の上記一表面側に保護膜60を形成する保護膜形成工程を行うことによって、図2(f)に示す構造を得る。
【0071】
上述の保護膜形成工程の後、積層構造部パターニング工程、パッド用開口部形成工程を順次行い、続いて、シリコンウェハ10をアルカリ系溶液を用いて異方性エッチングすることによりシリコンウェハ10に空洞部11を形成する空洞部形成工程を行うことによって、図20(b)に示す構造の画素部2が2次元アレイ状に配列された赤外線センサAを得る。上述のように、第1酸化膜形成工程から空洞部形成工程までの全工程により前工程が構成される。
【0072】
上述の前工程が終了した後、ダイシングレーンDLに沿って個々の赤外線センサAに分割するダイシング工程を行う。ダイシング工程では、ダイシングブレード(ダイシングソー)によりシリコンウェハ10をダイシングレーンDLに沿ってダイシングするが、ダイシングブレードを用いた方法に限らず、シリコンウェハ10のダイシングレーンDLに沿ってレーザ光を照射してシリコンウェハ10を分割するための起点となる改質部を形成した後でシリコンウェハ10に外力を加えて個々の赤外線センサAに分割するステルスダイシングを行ってもよい。ところで、本実施形態では、各モニター兼用領域M1〜M5およびダイシングレーンDLの中心線が一致するように上記各マスク層を形成する際に用いるレチクル(フォトマスク)を設計してあり、各モニター兼用領域M1〜M5およびダイシングレーンDLの幅寸法を、ダイシング工程での切削幅(最大幅)よりも広く設定してある。
【0073】
ここで、本実施形態では、幅寸法の大小関係に関して、〔ダイシングレーンDL〕≧〔第1のモニター兼用領域〕>〔第2のモニター兼用領域〕>〔第3のモニター兼用領域M3〕>〔第4のモニター兼用領域M4〕>〔第5のモニター兼用領域〕≧〔所定の格子状領域〕>〔切削幅〕となるように設定しているので、積層構造部のうちダイシング後のシリコン基板1aの外周縁と面一となる部分の厚み(本実施形態では、保護膜60の1層のみの厚みとなる)を低減でき、パーティクルの発生をより抑制することができる。また、本実施形態では、第1〜第5のモニター兼用領域M1〜M5のうち最も幅寸法の小さな第5のモニター兼用領域M5が上記所定の格子状領域を構成しているが、所定の格子状領域は撥水の目視確認が可能な幅寸法を有していればよく、第5のモニター兼用領域M5よりも幅寸法がやや小さな領域を所定の格子状領域としてもよい。なお、撥水の確認は作業者の目視に限らず、カメラなどの撮像装置を用いて自動で行うようにしてもよい。
【0074】
以上説明した本実施形態の赤外線センサの製造方法では、シリコン基板1aの基礎となるシリコンウェハ10に多数の赤外線センサAを形成する前工程を行った後でダイシングレーンに沿って個々の赤外線センサAに分割するダイシング工程を行うようにし、前工程のうち、積層構造部の最表層の保護膜60を形成する保護膜形成工程よりも前に積層構造部の一部を構成する複数の絶縁膜(第1のシリコン酸化膜31とシリコン窒化膜32とで構成される第1の絶縁膜、第2の絶縁膜51、第3の絶縁膜52、第4の絶縁膜53、第5の絶縁膜50)それぞれをウェットエッチングによりパターニングする複数の絶縁膜パターニング工程では、積層構造部を形成する前のシリコンウェハ10においてダイシングレーンDL内で当該ダイシングレーンDLに対応する格子状部に沿った所定の格子状領域を含む部位に対応する部分が開口されたマスク層(第1のマスク層、第2のマスク層、第3のマスク層、第4のマスク層、第5のマスク層)を形成し、当該マスク層をマスクとして絶縁膜(第1のシリコン酸化膜31とシリコン窒化膜32とで構成される第1の絶縁膜、第2の絶縁膜51、第3の絶縁膜52、第4の絶縁膜53、第5の絶縁膜50)をウェットエッチングするようにしてシリコンウェハ10の格子状領域が露出したときの撥水にてエッチングの終点検出を行う。
【0075】
しかして、本実施形態の赤外線センサの製造方法によれば、エッチングの終点検出のための専用のモニター領域をダイシングレーンDL以外の領域に別途に設ける必要がなく、赤外線センサAのチップの収量を増やすことが可能となり、しかも、工程数を増やさずとも、前工程の終了時に格子状領域に複数の絶縁膜(第1のシリコン酸化膜31とシリコン窒化膜32とで構成される第1の絶縁膜、第2の絶縁膜51、第3の絶縁膜52、第4の絶縁膜53、第5の絶縁膜50)が残存していることがないから、前工程の製造コストを増加することがなく、多数の赤外線センサAを形成したシリコンウェハ10から個々の赤外線センサAに分離する際のダイシング工程でのパーティクルの発生を抑制できる。
【0076】
ところで、図3(a)に示すように、保護膜形成工程において、保護膜60のパターニング時に、シリコンウェハ10の格子状領域上に形成された部分をウェットエッチングするようにして、シリコンウェハ10の格子状領域が露出したとき(ここでは、実際には、第5のモニター兼用領域M5よりも幅狭の第6のモニター兼用領域M6が露出したとき)の撥水を目視で確認することによりエッチングの終点検出を行うことも考えられる。しかしながら、この場合には、第6のモニター兼用領域M6が露出した状態で空洞部形成工程を行うと、図3(b)に示すように、シリコンウェハ10のダイシングレーンDLに対応する部位が異方性エッチングされて、ダイシングレーンDLに対応する部位付近で積層構造部の直下にアンダーカットが生じてしまい、ダイシング工程でパーティクルが発生しやすくなってしまう。
【0077】
これに対して、上述した本実施形態の赤外線センサの製造方法によれば、保護膜形成工程では、保護膜60のパターニング時に保護膜60のうちシリコンウェハ10の格子状領域上に形成されている部分を残すようにし、保護膜形成工程よりも後で、アルカリ系溶液を用いた異方性エッチングにより空洞部を形成する空洞部形成工程を行うから、空洞部形成工程においてシリコンウェハ10のダイシングレーンDLに対応する部位が異方性エッチングされないので、ダイシングレーンDLに対応する部位付近で積層構造部の直下にアンダーカットが生じるのを防止でき、保護膜60のパターニング時にシリコンウェハ10の格子状領域上に形成された部分をエッチングする場合に比べて、ダイシング工程でのパーティクルの発生を抑制できる。
【0078】
ただし、図4(a)に示すように、保護膜形成工程において、保護膜60のパターニング時に、シリコンウェハ10の格子状領域上に形成された部分をウェットエッチングするようにして、シリコンウェハ10の格子状領域が露出したとき(ここでは、実際には、第5のモニター兼用領域M5よりも幅狭の第6のモニター兼用領域M6が露出したとき)の撥水を目視で確認するようにした場合でも、空洞部形成工程において、あらかじめ図4(b)に示すように、シリコンウェハ10の上記一表面側に格子状領域(モニター兼用領域M6)および積層構造部における格子状領域の周辺部を覆う保護用マスク90を形成し、その後、異方性エッチングを行い、続いて、保護用マスク90を除去すれば、図4(c)に示すように、シリコンウェハ10のダイシングレーンDLに対応する部位が異方性エッチングされず、ダイシングレーンDLに対応する部位付近で積層構造部の直下にアンダーカットが生じるのを防止できるから、保護用マスク90を剥離液により除去してからダイシング工程を行うことによって、図1のように格子状領域上に保護膜60が残存した状態でダイシング工程を行う場合に比べて、ダイシング工程でのパーティクルの発生をより抑制できる。
【0079】
ここにおいて、保護用マスク90の材料としては、空洞部形成工程において空洞部11を形成するために用いるアルカリ系溶液に対するエッチング耐性があり、且つ、シリコンウェハ10をエッチングしない剥離液で剥離可能な材料を採用すればよく、樹脂材料の場合には、例えば、brewer science社のProTEK(登録商標) PSB coatingなどを用いればよく、金属材料の場合には、AlやAuなどを採用すればよい。ここで、樹脂材料および金属材料のいずれの場合も保護用マスク90のパターニングはフォトリソグラフィ技術などを利用すればよく、保護用マスク90の剥離は溶剤によるエッチングにより行えばよい。
【0080】
また、保護用マスク90を設ける代わりに、空洞部形成工程よりも前にp形不純物のイオン注入を行うイオン注入工程において、格子状領域からシリコンウェハ10にp形不純物をイオン注入することにより、空洞部形成工程でエッチングストッパ層として機能させるp形不純物層100(図5参照)を形成するようにしてもよい。なお、図5に示した例では、シリコンウェハ10の上記一表面側に上述のp++形チャネルストッパ領域42(図11参照)を形成するチャネルストッパ領域形成工程においてp形不純物層100を同時に形成するが、これに限らず、シリコンウェハ10の上記一表面側にp形ウェル領域41を形成するウェル領域形成工程においてp形不純物層100を同時に形成するようにしてもよいし、MOSトランジスタ4の構成要素とは関係なく、p形ポリシリコン層35を形成するp形ポリシリコン層形成工程においてp形不純物層100を同時に形成するようにしてもよい(要するに、MOSトランジスタ4の有無に関わらず、元々備えている工程においてp形不純物層100を同時に形成すればよい)。
【0081】
このような製造方法によれば、保護膜パターニング工程において保護膜60のうちシリコンウェハ10の格子状領域上に形成された部分をエッチングするようにしながらも、空洞部形成工程においてシリコンウェハ10のダイシングレーンDLに対応する部位が異方性エッチングされるのを、新たな工程を追加することなく形成したp形不純物層100により抑制でき、ダイシングレーンDLに対応する部位付近で積層構造部の直下にアンダーカットが生じるのを防止できるから、格子状領域上に保護膜60が残存した状態でダイシング工程を行う場合に比べて、ダイシング工程でのパーティクルの発生をより抑制できる。
【0082】
ところで、上述の赤外線センサAは、各画素部2にMOSトランジスタ4を設けてあるが、MOSトランジスタ4は必ずしも設ける必要はない。また、赤外線センサAは、必ずしも画素部2をアレイ状に備えた赤外線アレイセンサである必要はなく、少なくとも1つのサーモパイル30aを備えたものであればよい。また、積層構造部の構造も特に限定するものではなく、熱電変換部も、サーモパイル30aに限らず、例えば、抵抗ボロメータ、サーミスタなどでもよい。
【符号の説明】
【0083】
A 赤外線センサ
1a シリコン基板
10 シリコンウェハ
11 空洞部
30a サーモパイル(熱電変換部)
31 第1のシリコン酸化膜
32 シリコン窒化膜
33 赤外線吸収部
50 層間絶縁膜(第5の絶縁膜)
50a,50a,50a,50a,50d,50e,50f コンタクトホール
51 第2のシリコン酸化膜(第2の絶縁膜)
52 第3のシリコン酸化膜(第3の絶縁膜)
53 第4のシリコン酸化膜(第4の絶縁膜)
60 保護膜
90 保護用マスク
100 エッチングストッパ層
DL ダイシングレーン
M1 第1のモニター兼用領域
M2 第2のモニター兼用領域
M3 第3のモニター兼用領域
M4 第4のモニター兼用領域
M5 第5のモニター兼用領域(所定の格子状領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収部および当該赤外線吸収部の温度変化を検出する熱電変換部を有しシリコン基板の一表面側に形成されてシリコン基板に支持された多層構造の積層構造部とを備え、シリコン基板において積層構造部の一部の直下に空洞部が形成された赤外線センサの製造方法であって、シリコン基板の基礎となるシリコンウェハに多数の赤外線センサを形成する前工程を行った後でダイシングレーンに沿って個々の赤外線センサに分割するダイシング工程を行うようにし、前工程のうち、積層構造部の最表層の保護膜を形成する保護膜形成工程よりも前に積層構造部の一部を構成する複数の絶縁膜それぞれをウェットエッチングによりパターニングする複数の絶縁膜パターニング工程では、積層構造部を形成する前のシリコンウェハにおいてダイシングレーン内で当該ダイシングレーンに対応する格子状部に沿った所定の格子状領域を含む部位に対応する部分が開口されたマスク層を形成し、当該マスク層をマスクとして絶縁膜をウェットエッチングするようにしてシリコンウェハの前記格子状領域が露出したときの撥水にてエッチングの終点検出を行うことを特徴とする赤外線センサの製造方法。
【請求項2】
前記保護膜形成工程では、前記保護膜のパターニング時に前記シリコンウェハの前記格子状領域上に形成された部分を残すようにし、前記前工程では、前記保護膜形成工程よりも後で、アルカリ系溶液を用いた異方性エッチングにより前記空洞部を形成する空洞部形成工程を行うことを特徴とする請求項1記載の赤外線センサの製造方法。
【請求項3】
前記保護膜形成工程では、前記保護膜のパターニング時のウェットエッチングに際して、前記シリコンウェハの前記格子状領域が露出したときの撥水にてエッチングの終点を確認するようにし、前記前工程において前記保護膜形成工程よりも後でアルカリ系溶液を用いた異方性エッチングにより前記空洞部を形成する空洞部形成工程では、前記シリコンウェハの前記格子状領域および前記格子状領域の周辺部を保護用マスクで保護した状態で前記異方性エッチングを行うことを特徴とする請求項1記載の赤外線センサの製造方法。
【請求項4】
前記保護膜のパターニング時のウェットエッチングに際して、前記シリコンウェハの前記格子状領域が露出したときの撥水にてエッチングの終点を確認するようにし、前記前工程では、前記保護膜形成工程よりも後で、アルカリ系溶液を用いた異方性エッチングにより前記空洞部を形成する空洞部形成工程を行うようにし、前記空洞部形成工程よりも前にp形不純物のイオン注入を行うイオン注入工程において、前記格子状領域から前記シリコンウェハにp形不純物をイオン注入することにより、前記空洞部形成工程でエッチングストッパ層として機能させるp形不純物層を形成することを特徴とする請求項1記載の赤外線センサの製造方法。
【請求項5】
前記複数の絶縁膜パターニング工程のうち、前記熱電変換部を覆った絶縁膜をパターニングして前記格子状領域に比べて微細なコンタクトホールを形成する絶縁膜パターニング工程では、予め測定した前記格子状領域に対応する部位のエッチングレートとコンタクトホールに対応する部位のエッチングレートとの差に応じて前記終点検出からのオーバーエッチング時間を設定することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の赤外線センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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