説明

赤外線センサ

【課題】ICチップの発熱に起因した赤外線センサチップの面内でのS/N比のばらつきを抑制することが可能な赤外線センサを提供する。
【解決手段】赤外線センサは、赤外線センサチップ100と、ICチップ200と、パッケージ300とを備える。パッケージ300は、赤外線センサチップ100が一面側に実装されICチップ200が他面側に実装されるベース基板部301と、ベース基板部301の上記一面側でベース基板部301から突設され赤外線センサチップ100を囲む第1壁部302と、ベース基板部301の上記他面側でベース基板部301から突設されICチップ200を囲む第2壁部303とを備える。赤外線センサは、赤外線センサチップ100とICチップ200とが、ベース基板部301を介して対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外線センサと、この赤外線センサの出力信号を信号処理する信号処理ICチップと、赤外線センサおよび信号処理ICチップが収納されたパッケージとを備えた赤外線センサモジュールが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上述の赤外線センサは、例えば、サーモパイルからなる感温部を具備する複数の画素が、ベース基板の一表面側においてアレイ状に配置されている。ここにおいて、ベース基板は、シリコン基板を用いて形成されている。
【0004】
また、パッケージは、赤外線センサおよび信号処理ICチップが横並びで実装されたパッケージ本体と、このパッケージ本体との間に赤外線センサおよび信号処理ICチップを囲む形でパッケージ本体に覆着されたパッケージ蓋とで構成されている。ここにおいて、パッケージ蓋は、赤外線センサへ赤外線を収束するレンズを備えている。
【0005】
上述の赤外線センサは、各画素において、感温部を備えた熱型赤外線検出部が、ベース基板の上記一表面側に形成されてベース基板に支持されている。また、赤外線センサは、熱型赤外線検出部の一部の直下に空洞が形成されている。また、赤外線センサは、感温部を構成しているサーモパイルの温接点が、熱型赤外線検出部において空洞に重なる領域に形成され、冷接点が熱型赤外線検出部において空洞に重ならない領域に形成されている。なお、赤外線センサは、各画素の各々に、上述の熱型赤外線検出部と画素部選択用スイッチング素子であるMOSトランジスタとを有している。
【0006】
特許文献1には、赤外線センサの製造方法に関して、空洞を形成する空洞形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行い、空洞形成工程が終了した後、個々の赤外線センサ(つまり、赤外線センサチップ)に分離する分離工程を行う旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−78451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の赤外線センサモジュールでは、赤外線センサの各画素それぞれの出力信号(出力電圧)に、信号処理ICチップの発熱に起因したオフセット電圧を含み、しかも、赤外線センサにおいて信号処理ICチップからの距離が異なる画素で温度がばらつき、赤外線センサの面内でS/N比がばらついてしまうことがあった。なお、信号処理ICチップからパッケージ本体を通る経路で赤外線センサのベース基板へ伝わる熱は、主に冷接点の温度を上昇させるのでマイナスのオフセット電圧を発生させる要因となる。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、ICチップの発熱に起因した赤外線センサチップの面内でのS/N比のばらつきを抑制することが可能な赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の赤外線センサは、赤外線センサチップと、前記赤外線センサチップの出力信号を信号処理するICチップと、パッケージとを備え、前記赤外線センサチップは、複数の熱型赤外線検出部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであり、前記パッケージは、前記赤外線センサチップが一面側に実装され前記ICチップが他面側に実装されるベース基板部と、前記ベース基板部の前記一面側で前記ベース基板部から突設され前記赤外線センサチップを囲む第1壁部と、前記ベース基板部の前記他面側で前記ベース基板部から突設され前記ICチップを囲む第2壁部と、前記ベース基板部と前記第1壁部とで構成される第1パッケージ本体部の第1凹所を閉塞する第1パッケージ蓋とを備え、前記第1パッケージ蓋が、前記赤外線センサチップでの検知対象の赤外線を透過する機能を有し、前記赤外線センサチップと前記ICチップとが、前記ベース基板部を介して対向していることを特徴とする。
【0011】
この赤外線センサにおいて、前記ICチップの厚み方向に沿った中心線を含む少なくとも1つの断面において前記赤外線センサチップの外形サイズが前記ICチップの外形サイズよりも大きい場合、当該大きい断面における前記赤外線センサチップおよび前記ICチップの外形サイズをそれぞれA、Bとし、前記ベース基板部の厚み寸法をCとするとき、
C≧(A−B)/2
の関係を満たすように前記ベース基板部の厚み寸法を規定してなることが好ましい。
【0012】
この赤外線センサにおいて、前記ベース基板部に実装され前記ICチップと協働する電子部品を備え、前記電子部品は、前記ベース基板部と前記第2壁部とで構成される第2パッケージ本体部の第2凹所内に前記ICチップとともに収納されてなることが好ましい。
【0013】
この赤外線センサにおいて、前記ベース基板部に、前記赤外線センサチップと前記ICチップとを電気的に接続する配線が埋設されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の赤外線センサにおいては、ICチップの発熱に起因した赤外線センサチップの面内でのS/N比のばらつきを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1の赤外線センサの概略断面図である。
【図2】実施形態1の赤外線センサの要部説明図である。
【図3】実施形態1における赤外線センサチップの平面レイアウト図である。
【図4】実施形態1における赤外線センサチップの等価回路図である。
【図5】実施形態1における赤外線センサチップの要部等価回路図である。
【図6】実施形態1における赤外線センサチップの画素部の平面レイアウト図である。
【図7】実施形態1における赤外線センサチップの画素部の概略平面レイアウト図である。
【図8】実施形態1における赤外線センサチップの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図9】実施形態1における赤外線センサチップの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図10】実施形態1における赤外線センサチップの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図11】実施形態1における赤外線センサチップの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図12】実施形態1における赤外線センサチップの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図13】実施形態1における赤外線センサチップの冷接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図14】実施形態1における赤外線センサチップの温接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図15】実施形態1における赤外線センサチップの画素部の要部の概略断面図である。
【図16】実施形態1における赤外線センサチップの画素部の要部の概略断面図である。
【図17】実施形態1における赤外線センサチップの要部説明図である。
【図18】実施形態1における赤外線センサチップに関し、(a)は要部の平面レイアウト図、(b)は、(a)のツェナダイオードの拡大図、(c)はツェナダイオードの概略断面図である。
【図19】実施形態1における赤外線センサチップの他の構成例の要部概略断面図である。
【図20】実施形態1における赤外線センサチップの更に他の構成例の要部概略断面図である。
【図21】実施形態1における赤外線センサチップの別の構成例の要部概略断面図である。
【図22】実施形態2の赤外線センサの要部説明図である。
【図23】実施形態3の赤外線センサの概略断面図である。
【図24】実施形態4の赤外線センサの概略断面図である。
【図25】実施形態5の赤外線センサの概略断面図である。
【図26】実施形態6の赤外線センサの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態の赤外線センサは、図1に示すように、赤外線センサチップ100と、赤外線センサチップ100の出力信号を信号処理するICチップ200と、パッケージ300とを備えている。
【0017】
赤外線センサチップ100は、後述のように複数の熱型赤外線検出部3(図8、図9など参照)が半導体基板1(図8、図9など参照)の一表面側においてアレイ状に配置されたものである。
【0018】
パッケージ300は、赤外線センサチップ100が一面側に実装されICチップ200が他面側に実装されるベース基板部301を備えている。また、パッケージ300は、ベース基板部301の上記一面側でベース基板部301から突設され赤外線センサチップ100を囲む第1壁部302を備えている。また、パッケージ300は、ベース基板部301の上記他面側でベース基板部301から突設されICチップ200を囲む第2壁部303とを備えている。
【0019】
パッケージ300は、ベース基板部301と第1壁部302とで構成される第1パッケージ本体部332の第1凹所334を閉塞する第1パッケージ蓋304を備える。第1パッケージ蓋304は、第1パッケージ本体部332に気密的に接合されている。また、パッケージ300は、ベース基板部301と第2壁部303とで構成される第2パッケージ本体部333の第2凹所335を閉塞する第2パッケージ蓋305とを備えている。また、第2パッケージ蓋305は、第2パッケージ本体部333に気密的に接合されている。
【0020】
パッケージ300は、第1パッケージ蓋304が、赤外線センサチップ100での検知対象の赤外線を透過する機能を有している。
【0021】
本実施形態の赤外線センサは、赤外線センサチップ100とICチップ200とが、ベース基板部301を介して対向している。
【0022】
以下、赤外線センサの各構成要素について詳細に説明する。
【0023】
まず、赤外線センサチップ100について図1〜図18に基づいて説明する。
【0024】
赤外線センサチップ100は、図3に示すように、i×j個(図示例では、8×8個)の画素部2が、半導体基板1の一表面側においてi行j列(図示例では、8行8列)の2次元アレイ状に配置されている。なお、図示例では、i=8、j=8としてあるが、i≧2、j≧2であればよい。
【0025】
画素部2は、図4〜図9に示すように、赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換する熱電変換部である感温部30および感温部30の出力電圧を取り出すためのMOSトランジスタ4を具備している。
【0026】
上述のMOSトランジスタ4は、図8、図9および図16に示すように、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形のウェル領域41内で、第2導電形のソース領域44と第2導電形のドレイン領域43とが離間して形成されている。本実施形態では、ウェル領域41がチャネル形成用領域を構成している。なお、図4には、第1導電形をp形、第2導電形をn形としてMOSトランジスタ4をnチャネルMOSトランジスタとした場合の赤外線センサチップ100の等価回路図を示してある。また、図4の等価回路図では、感温部30を抵抗の図記号で表してある。
【0027】
図4、図6および図8から分かるように、赤外線センサチップ100は、各列のj個(8個)の画素部2の感温部30の一端がMOSトランジスタ4のソース領域44−ドレイン領域43を介して各列ごとに共通接続されたj個の第1の配線101を備えている。
【0028】
また、赤外線センサチップ100は、各行の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続されたi個(8個)の第2の配線102を備えている。また、赤外線センサチップ100は、各行のMOSトランジスタ4のウェル領域41が各列ごとに共通接続されたj個の第3の配線103と、各列のi個の感温部30の他端が各列ごとに共通接続されたj個の第4の配線104とを備えている。
【0029】
また、赤外線センサチップ100は、第1の配線101が各別に接続された出力用のj個の第1のパッドVout1〜Vout8と、第2の配線102が各別に接続された画素部選択用のi個の第2のパッドVsel1〜Vsel8とを備えている。さらに、赤外線センサチップ100は、各第3の配線103が共通接続された第3のパッドVchと、第4の配線104が共通接続された基準バイアス用の第4のパッドVrefinとを備えている。しかして、赤外線センサチップ100は、全ての感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。赤外線センサでは、ICチップ200によって、MOSトランジスタ4が順次、オン状態になるように各画素部2を選択するための第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位を制御することで、ICチップ200が、各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。なお、各パッドVout1〜Vout8、Vsel1〜Vsel8、Vch、Vrefinそれぞれについて区別する必要がない場合には、説明の便宜上、各パッドVout1〜Vout8、Vsel1〜Vsel8、Vch、Vrefinのいずれも、パッド80として説明する。
【0030】
ここで、第1のパッドVout1〜Vout8の電位をVout、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位をVs、第3のパッドVchの電位をVwell、第4のパッドVrefinの電位をVrefとする。また、感温部30の出力電圧をVo、チャネル形成用領域であるウェル領域41とソース領域44とで構成される第1の寄生ダイオードおよびウェル領域41とドレイン領域43とで構成される第2の寄生ダイオードのしきい値電圧をVthとする。
【0031】
ICチップ200は、MOSトランジスタ4がnMOSトランジスタである場合、第2の配線102に接続されたi個のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVonとする。また、ICチップ200は、第2の配線102に接続されたi個のMOSトランジスタ4をオフ状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVoffとする。ICチップ200は、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVonとしたときに、
−Vth<{Vwell−(Vref+Vo)}<Vth
の関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で赤外線センサチップ100を制御することが好ましい。
【0032】
また、ICチップ200は、MOSトランジスタ4がpMOSトランジスタである場合、
−Vth<{(Vref+Vo)−Vwell}<Vth
の関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で赤外線センサチップ100を制御することが好ましい。
【0033】
本実施形態では、半導体基板1として第2導電形のシリコン基板を用いており、第1の寄生ダイオードおよび第2の寄生ダイオードの逆方向のブレークダウン電圧が−10V程度になる一方で、Vthが0.6V〜0.7V程度となる。したがって、ICチップ200が、例えば、第4のパッドVrefの電位Vrefを1.2V、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2V、第2の配線102に接続されたi個のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVonを5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧(Vref+Vo)を読み出すことが可能となる。また、第2の配線102に接続されたi個のMOSトランジスタ4をオフ状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVoffを0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧は読み出されない。
【0034】
また、赤外線センサチップ100は、各MOSトランジスタ4のゲート電極46・ソース電極48間に過電圧が印加されるのを防止するために、複数のツェナダイオードZD(図4、図5および図18参照)を備えている。各ツェナダイオードZDは、各第2の配線102それぞれにカソードが接続されている。ツェナダイオードZDは、図18に示すように、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形の第1拡散領域81内に第2導電形の第2拡散領域82が形成されたものである。そして、赤外線センサチップ100は、各ツェナダイオードZDの第1拡散領域81が共通接続された第5のパッドVzdを備えている。ここで、第5のパッドVzdの電位をVhogoとするとき、ICチップ200は、VhogoとVwellとを異ならせることが好ましい。そして、ICチップ200は、例えば、上述のように、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2Vとする場合、第5のパッドVzdの電位Vhogoを0Vとすることが好ましい。
【0035】
また、赤外線センサチップ100は、半導体基板1が接続された基板バイアス用の第6のパッドVsuを備えている。ここで、第6のパッドVsuの電位をVsubとするとき、ICチップ200は、Vwell=Vsubとすることが好ましい。すなわち、ICチップ200は、例えば、上述のように、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2Vとする場合、第6のパッドVsuの電位Vsubを1.2Vとすることが好ましい。なお、図5の等価回路図には、ウェル領域41と半導体基板1とで構成される第3の寄生ダイオードD3、第1拡散領域81と半導体基板1とで構成される第4の寄生ダイオードD4も記載してある。また、第5のパッドVzdおよび第6のパッドVsuも、それぞれ、図3におけるパッド80を構成しているので、説明の便宜上、区別する必要がない場合には、いずれも、パッド80として説明する。
【0036】
赤外線センサチップ100は、感温部30が埋設された熱型赤外線検出部3とMOSトランジスタ4とを有する複数(i×j個)の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側において2次元アレイ状に配置されている。ここで、半導体基板1の上記一表面は、Si(100)面としてある。感温部30は、複数個(ここでは、6個)のサーモパイル30a(図6参照)を直列接続することにより構成されている。
【0037】
各画素部2の熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の形成用領域A1(図8、図9参照)に形成されている。また、各画素部2のMOSトランジスタ4は、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2(図8、図9参照)に形成されている。
【0038】
赤外線センサチップ100は、図6〜図9に示すように、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成されている。熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側で空洞部11の周部に形成された支持部3dと、半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aとを備えている。第1の薄膜構造部3aは、赤外線を吸収する赤外線吸収部33を備えている。ここで、第1の薄膜構造部3aは、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、隣接する第2の薄膜構造部3aa同士を連結する連結片3c(図6参照)とを有している。なお、図6における熱型赤外線検出部3では、複数の線状のスリット13を設けることにより、第1の薄膜構造部3aが6つの第2の薄膜構造部3aaに分離されている。以下では、赤外線吸収部33(第1の赤外線吸収部33と称する)のうち第2の薄膜構造部3aaそれぞれに対応して分割された各部位を第2の赤外線吸収部33aと称する。
【0039】
熱型赤外線検出部3は、第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aが設けられている。ここで、サーモパイル30aは、温接点T1が、第2の薄膜構造部3aaに設けられ、冷接点T2が、支持部3dに設けられている。要するに、温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる領域に形成され、冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない領域に形成されている。
【0040】
また、熱型赤外線検出部3の感温部30は、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で、全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。図6における感温部30は、6個のサーモパイル30aを直列接続してある。ただし、上述の接続関係は、複数個のサーモパイル30aの全てを直列接続する接続関係に限らない。例えば、赤外線センサチップ100は、それぞれ3個のサーモパイル30aの直列回路を並列接続した感温部30とすれば、6個のサーモパイル30aが並列接続されている場合や、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて、感度を高めることができる。しかも、このような赤外線センサチップ100は、6個のサーモパイル30aの全てが直列接続されている場合の感温部30に比べて、感温部30の電気抵抗を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比が向上する。
【0041】
熱型赤外線検出部3では、第2の薄膜構造部3aaごとに、支持部3dと第2の赤外線吸収部33aとを連結する2つの平面視短冊状のブリッジ部3bb,3bbが空洞部11の周方向に離間して形成されている。これにより、赤外線センサチップ100は、2つのブリッジ部3bb,3bbと第2の赤外線吸収部33aとを空間的に分離し空洞部11に連通する平面視コ字状のスリット14が形成されている。熱型赤外線検出部3のうち、平面視において第1の薄膜構造部3aを囲む部位である支持部3dは、矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bbは、上述の各スリット13,14により、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dそれぞれとの連結部位以外の部分が、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dと空間的に分離されている。ここで、第2の薄膜構造部3aaは、支持部3dからの延長方向の寸法を93μm、この延長方向に直交する幅方向の寸法を75μmとし、各ブリッジ部3bbの幅寸法を23μm、各スリット13,14の幅を5μmに設定してあるが、これらの値は一例であって特に限定するものではない。
【0042】
第1の薄膜構造部3aは、半導体基板1の上記一表面側に形成された熱酸化膜1bと、熱酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、シリコン窒化膜32上に形成された感温部30と、シリコン窒化膜32の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。層間絶縁膜50は、BPSG膜により構成してある。パッシベーション膜60は、PSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜により構成してあるが、これに限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。
【0043】
上述の熱型赤外線検出部3では、シリコン窒化膜32のうち第1の薄膜構造部3aのブリッジ部3bb,3bb以外の部位が第1の赤外線吸収部33を構成している。また、支持部3dは、熱酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とで構成されている。
【0044】
また、赤外線センサチップ100は、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、半導体基板1の上記一表面側において、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1とMOSトランジスタ4の形成用領域A2とに跨って形成されている。そして、赤外線センサチップ100は、この積層膜のうち、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成された部分が赤外線吸収膜70(図8(b)、図9(b)参照)を兼ねている。ここで、赤外線吸収膜70の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、赤外線吸収膜70の厚さt2をλ/4nに設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n=1.4、λ=10μmの場合には、t2≒1.8μmとすればよい。なお、本実施形態では、層間絶縁膜50の膜厚を0.8μm、パッシベーション膜60の膜厚を1μm(PSG膜の膜厚を0.5μm、NSG膜の膜厚を0.5μm)としてある。
【0045】
また、各画素部2は、空洞部11の内周形状が矩形状である。各画素部2における連結片3cは、図6および図12(a)に示すように、平面視X字状に形成されており、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に交差する斜め方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
【0046】
サーモパイル30aは、シリコン窒化膜32上で第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨って形成されたn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35との一端部同士を第2の赤外線吸収部33aの赤外線入射面側で接続部36により電気的に接続した複数個(図6に示した例では、9個)の熱電対を有している。接続部36は、金属材料(例えば、Al−Siなど)により形成されている。また、サーモパイル30aは、半導体基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のn形ポリシリコン層34の他端部とp形ポリシリコン層35の他端部とが接続部37により接合され電気的に接続されている。接続部37は、金属材料(例えば、Al−Siなど)により形成されている。サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と接続部36とで温接点T1を構成している。また、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記他端部とp形ポリシリコン層35の上記他端部と接続部37とで冷接点T2を構成している。なお、赤外線センサチップ100は、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35の各々において、上述のブリッジ部3bb,3bbに形成されている部位および半導体基板1の上記一表面側のシリコン窒化膜32上に形成されている部位でも赤外線を吸収することができる。
【0047】
また、赤外線センサチップ100は、空洞部11の形状が、四角錐状であり、平面視における中央部の方が周部に比べて深さ寸法が大きくなっているので、第1の薄膜構造部3aの中央部に温接点T1が集まるように各画素部2におけるサーモパイル30aの平面レイアウトを設計してある。ここで、図6の上下方向における真ん中の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図6および図10に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向に沿って温接点T1を並べて配置してある。これに対し、図6の上下方向における上側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図6および図11に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。また、図6の上下方向における下側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。しかして、本実施形態の赤外線センサチップ100では、図6の上下方向における上側、下側の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置が、真ん中の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置と同じである場合に比べて、温接点T1の温度変化を大きくできるので、感度を向上させることが可能となる。なお、本実施形態では、空洞部11の最深部の深さを所定深さdp(図8(b)、図9(b)参照)とするとき、所定深さdpを200μmに設定してあるが、この値は一例であり、特に限定するものではない。
【0048】
また、第2の薄膜構造部3aaは、シリコン窒化膜32の赤外線入射面側においてサーモパイル30aを形成していない領域に、赤外線を吸収するn形ポリシリコン層からなる赤外線吸収層39が形成されている。この赤外線吸収層39は、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制する機能も有している。また、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cには、当該連結片3cを補強するn形ポリシリコン層からなる補強層39b(図12参照)が設けられている。ここで、補強層39bは、赤外線吸収層39と連続一体に形成されている。しかして、赤外線センサチップ100では、連結片3cが補強層39bにより補強されているので、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止することが可能となり、また、製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図ることが可能となる。なお、本実施形態では、図12に示す連結片3cの長さ寸法L1を24μm、幅寸法L2を5μm、補強層39bの幅寸法L3を1μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。ただし、半導体基板1としてシリコン基板を用いており、補強層39bがn形ポリシリコン層により形成される場合には、空洞部11の形成時に補強層39bがエッチングされるのを防止するために、補強層39bの幅寸法は、連結片3cの幅寸法よりも小さく設定し、平面視において補強層39bの両側縁が連結片3cの両側縁よりも内側に位置する必要がある。
【0049】
また、赤外線センサチップ100は、図12および図17(b)に示すように、連結片3cの両側縁と第2の薄膜構造部3aaの側縁との間にそれぞれ面取り部3d,3dが形成され、X字状の連結片3cの略直交する側縁間にも面取り部3eが形成されている。しかして、赤外線センサチップ100では、図12(a)に示すように面取り部が形成されていない場合に比べて、連結片3cと第2の薄膜構造部3aaとの連結部位での応力集中を緩和でき、製造時に発生する残留応力を低減できるとともに製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。また、赤外線センサチップ100は、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止できる。なお、図12に示した例では、各面取り部3d,3eをR(アール)が3μmのR面取り部としてあるが、R面取り部に限らず、例えば、C面取り部としてもよい。
【0050】
また、赤外線センサチップ100は、図6、図10および図11に示すように、各熱型赤外線検出部3に、支持部3dと一方のブリッジ部3bbと第2の赤外線吸収部33aと他方のブリッジ部3bbと支持部3dとに跨るように引き回されたn形ポリシリコン層からなる故障診断用配線(故障診断用のヒータ)139を設けてある。また、赤外線センサチップ100は、全ての故障診断用配線139を直列接続してある。しかして、赤外線センサチップ100のi×j個の故障診断用配線139の直列回路へ通電することで、ブリッジ部3bbの折れなどの破損の有無を検出することが可能である。
【0051】
要するに、赤外線センサチップ100は、製造途中での検査時や使用時において、i×j個の故障診断用配線139の直列回路への通電の有無によって、ブリッジ部3bbの折れや故障診断用配線139の断線などを検出することが可能である。また、赤外線センサチップ100では、上述の検査時や使用時において、i×j個の故障診断用配線139の直列回路へ通電して各感温部30の出力を検出することにより、感温部30の断線の有無や感度のばらつき(感温部30の出力のばらつき)などを検知することが可能となる。ここにおいて、感度のばらつきに関しては、画素部2ごとの感度のばらつきを検知することが可能であり、例えば、第1の薄膜構造部3aの反りや第1の薄膜構造部3aの半導体基板1へのスティッキングなどに起因した感度のばらつきを検知することが可能となる。ここで、赤外線センサチップ100では、平面視において、故障診断用配線139を複数の温接点T1の群の付近において折り返され蛇行した形状としてある。したがって、この赤外線センサチップ100では、故障診断用配線139へ通電することにより発生するジュール熱によって、各温接点T1を効率良く温めることが可能となる。上述の故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35と同一平面上に同一厚さで形成されている。
【0052】
上述の赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ不純物濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34と同時に形成されている。また、p形ポリシリコン層35のp形不純物として例えばボロンを採用すればよく、不純物濃度を例えば1018〜1020cm−3程度の範囲で適宜設定すればよい。本実施形態の赤外線センサチップ100では、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、熱電対の抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図ることが可能となる。なお、赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてあるが、これに限らず、例えば、p形ポリシリコン層35と同じ不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてもよい。
【0053】
ところで、赤外線センサチップ100は、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの厚さt1をλ/4nに設定するようにしている。しかして、赤外線センサチップ100では、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図ることが可能となる。例えば、n=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。
【0054】
また、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であるので、赤外線の吸収率を高くしつつ赤外線の反射を抑制することができて、感温部30の出力のS/N比を高めることが可能となる。また、本実施形態における赤外線センサチップ100では、赤外線吸収層39および故障診断用配線139をn形ポリシリコン層34と同一工程で形成できるから、低コスト化を図れる。
【0055】
また、赤外線センサチップ100は、図9、図13および図14に示すように、感温部30の接続部36と接続部37とが、半導体基板1の上記一表面側において、層間絶縁膜50によって絶縁分離されている。すなわち、温接点T1側の接続部36は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50a,50aを通して、両ポリシリコン層34,35の上記各一端部と電気的に接続されている。また、冷接点T2側の接続部37は、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50a,50aを通して、両ポリシリコン層34,35の上記各他端部と電気的に接続されている。
【0056】
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。
【0057】
MOSトランジスタ4は、図8、図9および図16に示すように、半導体基板1の上記一表面側に第1導電形であるp形(p)のウェル領域41が形成され、ウェル領域41内に、第2導電形であるn形(n)のドレイン領域43と第2導電形であるn形(n)のソース領域44とが離間して形成されている。さらに、ウェル領域41内には、ドレイン領域43とソース領域44とを囲む第1導電形であるp形(p++)のチャネルストッパ領域42が形成されている。
【0058】
ウェル領域41においてドレイン領域43とソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を介してn形ポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。
【0059】
また、ドレイン領域43上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるドレイン電極47が形成され、ソース領域44上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるソース電極48が形成されている。
【0060】
ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の層間絶縁膜50によって絶縁分離されている。ここで、ドレイン電極47は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50dを通してドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50eを通してソース領域44と電気的に接続されている。
【0061】
赤外線センサチップ100の各画素部2では、図4、図6に示すように、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の一端とが電気的に接続され、感温部30の他端が第4の配線104に電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が、第1の配線101と電気的に接続され、ゲート電極46が、n形ポリシリコン配線からなる第2の配線102と電気的に接続されている。また、各画素部2では、図8、図9に示すように、MOSトランジスタ4のチャネルストッパ領域42上に、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる電極49が形成されている。しかして、ウェル領域41は、チャネルストッパ領域42および電極49を介して、第3の配線103と電気的に接続されている。なお、電極49は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50fを通してチャネルストッパ領域42と電気的に接続されている。
【0062】
また、上述のツェナダイオードZDは、図18に示すように、第1拡散領域81上にアノード電極83が形成され、第2拡散領域82上に2つのカソード電極84a,84bが形成されている。このツェナダイオードZDは、アノード電極83が、第5のパッドVzdと電気的に接続され、一方のカソード電極84aが、1つの第2の配線102を介して当該第2の配線102に接続されたMOSトランジスタ4のゲート電極46と電気的に接続され、他方のカソード電極84bが、当該第2の配線102に接続された第2のパッドVsel1〜Vsel8の1つと電気的に接続されている。
【0063】
上述の赤外線センサチップ100によれば、通電されることにより発生するジュール熱によって温接点T1を温める故障診断用配線139を備えているので、故障診断用配線139へ通電してサーモパイル30aの出力を測定することにより、サーモパイル30aの断線などの故障の有無を判断することが可能となって、信頼性の向上を図れる。しかも、赤外線センサチップ100は、故障診断用配線139が、熱型赤外線検出部3において半導体基板1の空洞部11に重なる領域でサーモパイル30aと重ならないように配置されているので、故障診断用配線139によるサーモパイル30aの温接点T1の熱容量の増大を防止でき、感度および応答速度の向上を図ることが可能となる。
【0064】
ここで、赤外線センサチップ100は、使用時において自己診断を行わない通常時において、故障診断用配線139も外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図ることが可能となる。なお、赤外線センサチップ100では、赤外線吸収層39および補強層39bも外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図ることが可能となる。また、赤外線センサチップ100の使用時の自己診断は、例えば、ICチップ200に設けられた自己診断回路により定期的に行うようにすればよいが、必ずしも定期的に行う必要はない。
【0065】
また、赤外線センサチップ100は、第1の薄膜構造部3aが、複数の線状のスリット13を設けることによって、空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位である支持部3dから内方へ延長された複数の第2の薄膜構造部3aaに分離されている。そして、赤外線センサチップ100は、各第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aの温接点T1が設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されているので、応答速度および感度の向上を図ることが可能となる。また、赤外線センサチップ100では、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されていることにより、各第2の薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。
【0066】
また、赤外線センサチップ100は、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と補強層39bと故障診断用配線139とが同一の厚さに設定されているので、第2の薄膜構造部3aaの応力バランスの均一性が向上し、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制することができ、製品ごとの感度のばらつきや、画素部2ごとの感度のばらつきを低減することが可能となる。
【0067】
また、赤外線センサチップ100は、故障診断用配線139が、第1の熱電要素であるn形ポリシリコン層34もしくは第2の熱電要素であるp形ポリシリコン層35と同じ材料により形成されているので、故障診断用配線139を第1の熱電要素もしくは第2の熱電要素と同時に形成することが可能となり、製造プロセスの簡略化による低コスト化を図れる。
【0068】
また、赤外線センサチップ100は、赤外線吸収部33および故障診断用配線139を備えた複数の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側で2次元アレイ状に設けられている。したがって、この赤外線センサチップ100の構成では、製造時や使用時の自己診断に際して各画素部2それぞれの故障診断用配線139に通電することにより、各画素部2それぞれの感温部30の感度のばらつきを把握することが可能となる。
【0069】
上述の赤外線センサチップ100の外周形状は矩形状(正方形状ないし長方形状)である。
【0070】
上述の赤外線センサチップ100では、半導体基板1として上記一表面が(100)面の単結晶のシリコン基板を用いて、エッチング速度の結晶面方位依存性を利用した異方性エッチングにより形成する空洞部11を四角錐状の形状としてあるが、四角錐状の形状に限らず、四角錐台状の形状でもよい。また、半導体基板1の上記一表面の面方位は特に限定するものではなく、例えば、半導体基板1として上記一表面が(110)面の単結晶のシリコン基板を用いてもよい。
【0071】
また、半導体基板1の導電形は、n形に限らず、例えば、図19〜図21に示すようにp形でもよい。図19は、p形の半導体基板1がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をn形(n)とする例である。また、図20は、p形の半導体基板1に形成したp形(p)のウェル領域41がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をn形(n)とする例である。また、図21は、p形の半導体基板1に形成したn形のウェル領域41がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をp形(p)とする例である。
【0072】
なお、上述の赤外線センサチップ100において、半導体基板1の空洞部11は、半導体基板1の厚み方向に貫通する形で形成してもよく、この場合は、空洞部11を形成する空洞部形成工程において、半導体基板1の上記一表面とは反対の他表面側から、半導体基板1における空洞部11の形成予定領域を、例えばICP型のドライエッチング装置を用いた異方性エッチング技術を利用して形成すればよい。また、赤外線センサチップ100は、熱電変換部である感温部30を具備する複数の画素部2が半導体基板1の一表面側においてアレイ状に配置されているが、構造は特に限定するものではなく、感温部30を構成するサーモパイル30aの数も複数に限らず、1つでもよい。また、感温部30は、1ないし複数のサーモパイル30aにより構成されるものに限らず、例えば、熱電対でもよいし、抵抗ボロメータでもよいし、焦電素子でもよく、感温部30の構成に応じて、ICチップ200の回路構成を適宜変更すればよい。
【0073】
また、上述の赤外線センサチップ100では、第1の熱電要素の材料としてn形ポリシリコン層、第2の熱電要素の材料としてp形ポリシリコンを採用しているが、これらに限らず、例えば、第1の熱電要素の材料としてn形シリコンゲルマニウム、第2の熱電要素の材料としてp形シリコンゲルマニウムを採用してもよい。
【0074】
ICチップ200は、ASIC(:Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されている。このICチップ200の外周形状は、矩形状(正方形状ないし長方形状)である。なお、ICチップ200は、ASICに限定するものではなく、適宜の集積回路が形成されたチップであればよい。
【0075】
ICチップ200は、主表面側に、回路部(図示せず)が形成されている。この回路部は、例えば、赤外線センサチップ100を制御する制御回路を備えている。また、この回路部は、赤外線センサチップ100の複数の出力用のパッド80に電気的に接続された複数の入力用のパッドの出力電圧を増幅する増幅回路と、複数の入力用のパッドの出力電圧を択一的に上記増幅回路に入力するマルチプレクサとを備えている。ここで、上記増幅回路の出力は、画素部2における温接点T1と冷接点T2との温度差に応じた出力である。そして、ICチップ200は、外部の表示装置に、赤外線画像を表示させることができる。また、回路部は、上述の自己診断回路も備えている。ICチップ200の回路部の回路構成は、特に限定するものではない。また、赤外線センサは、パッケージ300のベース基板部301の上記一面側にサーミスタ(図示せず)を実装して、このサーミスタとICチップ200とを電気的に接続し、上記増幅回路の出力とサーミスタの出力とに基づいて各画素部2の温度を求める演算回路を設けるようにしてもよい。
【0076】
本実施形態の赤外線センサは、パッケージ300の内部空間(気密空間)を、窒素ガス(ドライ窒素ガス)雰囲気としてあるが、これに限らず、例えば、真空雰囲気としてもよい。
【0077】
パッケージ300のベース基板部301は、平板状のセラミック基板を用いて形成されており、上記一面側に、赤外線センサチップ100のパッド80がワイヤ381を介して電気的に接続される第1導体パターン312が形成され、上記他面側に、ICチップ200のパッド280がワイヤ382を介して電気的に接続される第2導体パターン313が形成されている。また、ベース基板部301は、赤外線センサチップ100が接続された第1導体パターン312とICチップ200が接続された第2導体パターン313とを接続する配線314が埋設されている。なお、ベース基板部301は、セラミック基板に限らず、例えば、プリント基板を用いて形成したものでもよい。ワイヤ381,382としては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いることが好ましい。
【0078】
赤外線センサチップ100およびICチップ200は、ベース基板部301に対して、ダイボンド剤を用いて実装されている。ダイボンド剤としては、エポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などの絶縁性接着剤、半田(鉛フリー半田、Au−Sn半田など)や銀ペーストなどの導電性接着剤を用いることができる。また、ダイボンド剤を用いずに、例えば、常温接合法や、Au−Sn共晶もしくはAu−Si共晶を利用した共晶接合法などにより接合してもよい。
【0079】
また、パッケージ300は、上述のようにベース基板部301から突設され赤外線センサチップ100を囲む第1壁部302と、ベース基板部301から突設されICチップ200を囲む第2壁部303とを備えている。第1壁部302および第2壁部303は、矩形枠状に形成されている。
【0080】
パッケージ300は、ベース基板部301と第1壁部302とで構成される第1パッケージ本体部332の第1凹所334を閉塞する第1パッケージ蓋304を備えている。また、パッケージ300は、ベース基板部301と第2壁部303とで構成される第2パッケージ本体部333の第2凹所335を閉塞する第2パッケージ蓋305を備えている。
【0081】
パッケージ300は、第1パッケージ蓋304が、赤外線センサチップ100での検知対象の赤外線を透過する機能を有している。そして、パッケージ300は、第2壁部303の先端面に外部接続電極306が形成されている。外部接続電極306は、配線パターン315を介して導体パターン313と電気的に接続されている。
【0082】
第2壁部303は、セラミック基板を用いて形成されている。したがって、ベース基板部301がセラミック基板を用いて形成されている場合には、ベース基板部301と第2壁部303とを多層セラミック基板により形成することができる。第1壁部302は、例えば、セラミック基板を用いて形成することができ、この場合、ベース基板部301と第2壁部303と第1壁部302を多層セラミック基板により形成することができる。そして、第1壁部302とベース基板301と第2壁部303とに、電磁シールド層を容易に形成することが可能となる。ただし、第1壁部302の材料として、樹脂を採用してもよい。この場合、第1壁部302の材料としての樹脂は、熱伝導率が低い樹脂が好ましく、また、ポリエチレンのような赤外線を透過する樹脂以外の樹脂を用いる必要がある。また、可視光が透過しない樹脂が好ましい。
【0083】
第1パッケージ蓋304は、平板状の蓋本体341と、赤外線センサチップ100の検知対象の赤外線を透過する機能を有する赤外線透過部材343とを有している。ここで、蓋本体341は、赤外線センサチップ100の受光面の前方に開口部342を有している。一方、赤外線透過部材343は、蓋本体341の開口部342を閉塞するように蓋本体341に接合されている。
【0084】
第1パッケージ蓋304は、蓋本体341が金属板により形成される一方で、赤外線透過部材343が半導体基板により形成されており、蓋本体341と赤外線透過部材343とが導電性材料からなる接合部345を介して接合され、全体として導電性を有している。
【0085】
金属板の材料としては、例えば、コバールなどを採用することができる。また、半導体基板の材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどを採用することができる。
【0086】
第1パッケージ蓋304と第1壁部302との接合方法は、特に限定するものではなく、例えば、シーム溶接法や、樹脂接合法などを採用することができる。
【0087】
赤外線透過部材343は、平板状の板材としてあるが、これに限らず、例えば、レンズにより構成してもよい。本実施形態の赤外線センサでは、赤外線透過部材343をレンズにより構成すれば、赤外線透過部材343を平板状の板材とする場合に比べて、赤外線センサチップ100での受光効率の向上を図れる。また、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100の検知エリアを赤外線透過部材343により設定することが可能となる。
【0088】
赤外線透過部材343を構成するレンズとしては、平凸型の非球面レンズが好ましい。これにより、赤外線センサは、レンズの薄型化を図りながらも、赤外線センサチップ100での赤外線の受光効率の向上による高感度化を図ることが可能となる。
【0089】
上述のレンズにより構成される赤外線透過部材343は、赤外線センサチップ100の半導体基板1とは別の半導体基板を用いて形成されている。更に説明すれば、レンズは、所望のレンズ形状に応じて半導体基板(ここでは、シリコン基板)との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成した後に半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成してから当該多孔質部を除去することにより形成された半導体レンズ(ここでは、シリコンレンズ)により構成されている。しかして、レンズは、導電性を有している。なお、この種の陽極酸化技術を応用した半導体レンズの製造方法については、例えば、特許第3897055号公報、特許第3897056号公報などに開示されている半導体レンズの製造方法を適用することができる。
【0090】
本実施形態では、赤外線センサチップ100の検知エリアを上述の半導体レンズからなるレンズにより設定することができ、また、レンズとして、球面レンズよりも短焦点で且つ開口径が大きく収差が小さな半導体レンズを採用することができるから、短焦点化により、パッケージ300の薄型化を図ることが可能となる。本実施形態の赤外線センサは、赤外線センサチップ100の検知対象の赤外線として、人体から放射される10μm付近の波長帯(8μm〜13μm)の赤外線を想定しており、レンズの材料として、硫化亜鉛や砒化ガリウムなどに比べて環境負荷が少なく且つ、ゲルマニウムに比べて低コスト化が可能であり、しかも、硫化亜鉛に比べて波長分散が小さなシリコンを採用している。
【0091】
また、赤外線透過部材343は、蓋本体341における開口部342の周部に導電性接着剤(例えば、鉛フリー半田、銀ペーストなど)により固着されている。また、赤外線透過部材343は、蓋本体341においてベース基板部301側である一表面とは反対の他表面側に配置してあるが、これに限らず、ベース基板部301側である上記一表面側に配置してもよい。
【0092】
上述の赤外線透過部材343には、赤外線センサチップ100での検知対象の赤外線の波長を含む所望の波長域の赤外線を透過し当該波長域以外の赤外線を反射する光学多層膜(多層干渉フィルタ膜)からなるフィルタ部(図示せず)を設けることが好ましい。このようなフィルタ部を設けることにより、所望の波長域以外の不要な波長域の赤外線や可視光をフィルタ部によりカットすることが可能となり、太陽光などによるノイズの発生を抑制することが可能となり、高感度化を図ることが可能となる。
【0093】
第2パッケージ蓋305は、平板状であり、外周形状が矩形状となっている。第2パッケージ蓋305の材料は、赤外線および可視光を遮断する材料が好ましく、コバールなどの金属が好ましい。
【0094】
第2パッケージ蓋305と第2壁部303との接合方法は、特に限定するものではなく、例えば、シーム溶接法や、樹脂接合法などを採用することができる。
【0095】
以上説明した本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100とICチップ200とが、ベース基板部301を介して対向している。要するに、赤外線センサは、パッケージ300内で赤外線センサチップ100とICチップ200とがベース基板部301の厚み方向において離れて配置されている。しかして、本実施形態の赤外線センサでは、ICチップ200の発熱に起因した赤外線センサチップ100の面内でのオフセット電圧のばらつきを抑制できて、赤外線センサチップ100の面内でのS/N比のばらつきを抑制することが可能となる。要するに、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100の各熱型赤外線検出部3の出力のS/N比のばらつきを抑制することが可能となる。ここにおいて、赤外線センサは、赤外線センサチップ100およびICチップ200を、赤外線センサチップ100の厚み方向に沿った中心線とICチップ200の厚み方向に沿った中心線とが略一致するように配置することが好ましい。図1に示した例では、赤外線センサチップ100の外形サイズ(チップサイズ)がICチップ200の外形サイズ(チップサイズ)よりも大きく設定されており、赤外線センサチップ100およびICチップ200が、赤外線センサチップ100の厚み方向への投影領域内にICチップ200が収まるように配置されている。
【0096】
また、本実施形態の赤外線センサでは、ICチップ200をベース基板部301に対してフェースアップ構造で実装してある。これにより、赤外線センサは、ICチップ200をフェースダウン構造で実装する場合に比べて、ICチップ200の回路部と赤外線センサチップ100との距離を長くすることが可能となる。
【0097】
本実施形態の赤外線センサでは、ICチップ200の厚み方向におけるICチップ200と赤外線センサチップ100との距離は、ベース基板部301の厚みと、ICチップ200とベース基板部301との接合部392の厚み寸法と、赤外線センサチップ100とベース基板部301との接合部391の厚み寸法との合計値により規定することができる。したがって、本実施形態の赤外線センサでは、ベース基板部301の厚み寸法によって、赤外線センサチップ100とICチップ200との間の距離を調整することが可能となる。ここにおいて、ベース基板部301の厚み寸法に比べて、各接合部391,392の厚み寸法は無視できる程度に小さい。
【0098】
ところで、赤外線センサは、ICチップ200から赤外線センサチップ100へ伝達される熱により半導体基板1の他表面が均熱化されるように、ICチップ200の外形サイズと赤外線センサチップ100の外形サイズとの大小関係に基づいてベース基板部301の厚み寸法を規定してある。これにより、本実施形態の赤外線センサでは、ICチップ200の発熱に起因した赤外線センサチップ100の面内でのS/N比のばらつきを抑制することが可能となる。
【0099】
ここで、本実施形態の赤外線センサでは、ICチップ200の厚み方向に沿った中心線を含む断面において赤外線センサチップ100の外形サイズがICチップ200の外形サイズよりも大きい。このような場合は、図2(b)に示すように、当該大きい断面における赤外線センサチップ100およびICチップ200の外形サイズをそれぞれA、Bとし、ベース基板部301の厚み寸法をCとするとき、
C≧(A−B)/2
の関係を満たすようにベース基板部301の厚み寸法を規定してなることが好ましい。なお、図2(b)では、C=(A−B)/2の場合を例示してあるが、図1では、C>(A−B)/2の場合を例示してある。
【0100】
上述の関係を満たすのが好ましいのは、ICチップ200からベース基板部301の上記他面に伝熱された熱が、ベース基板301の上記一面側へ略45度の放射角度をもって広がるからである(図2(b)中の2本の一点鎖線で囲まれた範囲は、ベース基板部301において熱が伝わる範囲を模式的に示している)。これにより、赤外線センサは、ICチップ200から赤外線センサチップ100側へ熱伝導する熱を赤外線センサチップ100における半導体基板1の他表面の全域で受けることが可能となる。したがって、図2(b)に示した本実施形態の赤外線センサでは、図2(a)に示した比較例の赤外線センサのように、C<(A−B)/2となる場合に比べて、赤外線センサチップ100の画素部2の温度が、ICチップ200からの熱に起因して赤外線センサチップ100の面内でばらつくのを抑制することが可能となる。なお、図2(a)中の2本の一点鎖線で囲まれた範囲は、ベース基板部301において熱が伝わる範囲を模式的に示している。
【0101】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100における各画素部2の各々の出力信号(出力電圧)に関して、ICチップ200の発熱に起因したオフセット電圧を低減することが可能となり、また、オフセット電圧のばらつきを低減することが可能となる。
【0102】
本実施形態の赤外線センサにおいては、ベース基板部301に実装されICチップ200と協働する電子部品(図示せず)を備えていてもよい。この場合、電子部品は、ベース基板部301と第2壁部303とで構成される第2パッケージ本体部333の第2凹所335内にICチップ200とともに収納されてなることが好ましい。これにより、赤外線センサは、電子部品として表面実装型の電子部品を採用した場合でも、製造時において、電子部品の実装時に半田から発生するフラックスなどの有機成分が、赤外線センサチップ100に付着するのを防止することが可能となる。その結果、赤外線センサは、赤外線センサチップ100への有機成分の付着に起因した感度の低下を防止することが可能となる。なお、電子部品としては、例えば、チップ抵抗やチップコンデンサなどを用いることができる。
【0103】
また、本実施形態の赤外線センサにおいては、ベース基板部301に、赤外線センサチップ100とICチップ200とを電気的に接続する配線314が埋設されていることが好ましい。これにより、パッケージ300の平面サイズの小型化を図ることが可能となる。
【0104】
(実施形態2)
本実施形態の赤外線センサは、実施形態1と略同じ構成であり、図22に示すように赤外線センサチップ100の外形サイズとICチップ200の外形サイズとの関係が相違するだけである。なお、他の構成は実施形態1と同じなので、図示および説明を省略する。
【0105】
本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100およびICチップ200の形状が、両方とも長方形状である。そして、本実施形態の赤外線センサは、ICチップ200をベース基板部301の上記一面側に投影したときに赤外線センサチップ100の外周線における長辺とICチップ200の外周線における長辺とが交差するように、赤外線センサチップ100およびICチップ200が配置されている。
【0106】
したがって、本実施形態の赤外線センサでは、ICチップ200の厚み方向に沿った中心線を含む少なくとも1つの断面において赤外線センサチップ100の外形サイズがICチップ200の外形サイズよりも大きい。そして、当該大きい断面における赤外線センサチップ100およびICチップ200の外形サイズをそれぞれA、Bとし、ベース基板部301の厚み寸法をCとするとき、本実施形態の赤外線センサでは、
C≧(A−B)/2
の関係を満たすようにベース基板部301の厚み寸法を規定してあることが好ましい。これにより、赤外線センサは、ICチップ200から赤外線センサチップ100側へ熱伝導する熱を赤外線センサチップ100における半導体基板1の他表面の全域で受けることが可能となる。したがって、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100の画素部2の温度が、ICチップ200からの熱に起因して赤外線センサチップ100の面内でばらつくのを抑制することが可能となる。
【0107】
(実施形態3)
本実施形態の赤外線センサは、実施形態1と略同じ構成であり、図23に示すように、赤外線センサチップ100の外形サイズよりもICチップ200の外形サイズが大きい点が相違するだけである。
【0108】
本実施形態の赤外線センサでは、ベース基板部301の厚み寸法に関係なく、ICチップ200から赤外線センサチップ100側へ熱伝導する熱を赤外線センサチップ100における半導体基板1の他表面の全域で受けることが可能となる。したがって、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100の画素部2の温度が、ICチップ200からの熱に起因して赤外線センサチップ100の面内でばらつくのを抑制することが可能となる。
【0109】
(実施形態4)
本実施形態の赤外線センサは、実施形態1と略同じ構成であり、図24に示すように、実施形態1で説明した第2パッケージ蓋305(図1参照)を設ける代わりに、第2パッケージ本体部333に収納されているICチップ200などを封止する封止材料からなる封止部395を設けてある点が相違するだけである。封止材料としては、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの樹脂を採用することができる。
【0110】
本実施形態の赤外線センサでは、実施形態1の赤外線センサのように第2パッケージ蓋305を備えている場合に比べて、低コスト化を図ることが可能となるとともに、製造が容易になる。
【0111】
(実施形態5)
本実施形態の赤外線センサは、実施形態1と略同じ構成であり、図25に示すように、外部接続電極306が、ベース基板部301の上記一面側において、第1壁部302よりも外側に配置されている点などが相違する。
【0112】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、外部接続電極306と、当該赤外線センサを実装する回路基板(図示せず)の導電パターンとをワイヤを介して電気的に接続することが可能となる。
【0113】
(実施形態6)
本実施形態の赤外線センサは、実施形態1と略同じ構成であり、図26に示すように、第1壁部302と蓋本体341とが金属材料で一体に形成され、第1壁部302がベース基板部301にシーム溶接により接合されている点などが相違する。
【0114】
しかして、本実施形態の赤外線センサでは、第1壁部302と蓋本体341とが別体であり、第1壁部302がセラミック基板により形成されている場合に比べて、赤外線センサチップ100と赤外線透過部材343との距離の精度を高めることが可能となる。これにより、赤外線センサは、赤外線透過部材343としてレンズを採用する場合、レンズと赤外線センサチップとの距離の精度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0115】
100 赤外線センサチップ
200 ICチップ
300 パッケージ
301 ベース基板部
302 第1壁部
303 第2壁部
304 第1パッケージ蓋
305 第2パッケージ蓋
314 配線
332 第1パッケージ本体部
334 第1凹所
333 第2パッケージ本体部
335 第2凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線センサチップと、前記赤外線センサチップの出力信号を信号処理するICチップと、パッケージとを備え、前記赤外線センサチップは、複数の熱型赤外線検出部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであり、前記パッケージは、前記赤外線センサチップが一面側に実装され前記ICチップが他面側に実装されるベース基板部と、前記ベース基板部の前記一面側で前記ベース基板部から突設され前記赤外線センサチップを囲む第1壁部と、前記ベース基板部の前記他面側で前記ベース基板部から突設され前記ICチップを囲む第2壁部と、前記ベース基板部と前記第1壁部とで構成される第1パッケージ本体部の第1凹所を閉塞する第1パッケージ蓋とを備え、前記第1パッケージ蓋が、前記赤外線センサチップでの検知対象の赤外線を透過する機能を有し、前記赤外線センサチップと前記ICチップとが、前記ベース基板部を介して対向していることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
前記ICチップの厚み方向に沿った中心線を含む少なくとも1つの断面において前記赤外線センサチップの外形サイズが前記ICチップの外形サイズよりも大きい場合、当該大きい断面における前記赤外線センサチップおよび前記ICチップの外形サイズをそれぞれA、Bとし、前記ベース基板部の厚み寸法をCとするとき、
C≧(A−B)/2
の関係を満たすように前記ベース基板部の厚み寸法を規定してなることを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記ベース基板部に実装され前記ICチップと協働する電子部品を備え、前記電子部品は、前記ベース基板部と前記第2壁部とで構成される第2パッケージ本体部の第2凹所内に前記ICチップとともに収納されてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記ベース基板部に、前記赤外線センサチップと前記ICチップとを電気的に接続する配線が埋設されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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